説明

半導体発光素子、発光装置及び半導体発光素子の製造方法

【課題】信頼性の高い半導体発光素子、該半導体発光素子を備える発光装置及び前記半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1のボンディング電極51は、抵抗層(R1)を介して1組の半導体発光層(LED1、LED2)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続してある。また、第2のボンディング電極52は、抵抗層(R2)を介して当該1組の半導体発光層(LED1、LED2)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続してある。また、第1のボンディング電極51は、抵抗層(R3)を介して1組の半導体発光層(LED3、LED4)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続してある。また、第2のボンディング電極52は、抵抗層(R4)を介して当該1組の半導体発光層(LED3、LED4)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成された半導体発光素子、該半導体発光素子を備える発光装置及び前記半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源として用いられてきた蛍光灯又は白熱灯などに比べて、省電力かつ長寿命であるという理由で、発光ダイオードが光源として注目を浴びており、照明用の光源だけでなく、照明スイッチ、バックライト光源、イルミネーション光源、アミューズメント機器の装飾など、広い分野で使用されるようになった。
【0003】
このような発光ダイオードは、用途に合わせて、青色、青緑色、緑色、赤色など所要の単色を発光することができるもの、あるいは1つのパッケージで赤色、緑色、青色のマルチカラーを発光するものもある。また、蛍光体との組み合わせにより白色を発光することができる発光ダイオードも製品化されている。
【0004】
例えば、LEDチップ(半導体発光素子)を包囲する包囲部を備え、所定の波長光で励起されて発光する蛍光体を含み、良好な発光効率及び発光光度を有する白色の発光ダイオード(発光装置)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−161789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の発光ダイオード(発光装置)にあっては、パッケージ内に1個のLEDチップ(半導体発光素子)を備えており、当該LEDチップには、1個のLED構造が形成されている。このため、LEDチップ内のLED構造が不良になった場合、例えば、PN接合構造の両端でオープン状態になった場合、発光ダイオードが発光しなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、信頼性の高い半導体発光素子、該半導体発光素子を備える発光装置及び前記半導体発光素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る半導体発光素子は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成された半導体発光素子において、前記基板上に相互に離隔した複数の半導体発光層を形成してあり、一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成してあり、各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続した第1のボンディング電極と、前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続した第2のボンディング電極とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る半導体発光素子は、第1発明において、前記半導体発光層と前記第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を備えることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る半導体発光素子は、第2発明において、前記抵抗層は、一部を切除した切除痕を有することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る発光装置は、前述の発明のいずれか1つに係る半導体発光素子と、該半導体発光素子を収容する収容部とを備えることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る半導体発光素子の製造方法は、基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した複数の半導体発光層が形成された半導体発光素子の製造方法において、一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成するステップと、各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続される第1のボンディング電極を形成するステップと、前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続される第2のボンディング電極を形成するステップと、前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層と前記第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を形成するステップと、前記抵抗層の一部を切除するステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
第1発明にあっては、前記基板上に相互に離隔した複数の半導体発光層を形成してあり、一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成してある。各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続した第1のボンディング電極と、各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続した第2のボンディング電極とを備える。すなわち、第1のボンディング電極と第2のボンディング電極との間には、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を並列に複数接続してある。これにより、1つのLED構造が不良となり、例えば、オープン状態になったとしても、別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を増やすことにより、さらに信頼性が向上する。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を備えることにより、直流電圧だけでなく交流電圧で駆動するができ、交流電源しかない場合でも使用することができるので、用途を拡大することができる。
【0014】
第2発明にあっては、半導体発光層と第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を備える。すなわち、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組に対して直列に内部抵抗を備える。これにより、1つのLED構造が不良となり、例えば、短絡状態になったとしても、ボンディング電極間には、抵抗層(内部抵抗)を介して別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、1つの半導体発光素子内に半導体発光層と抵抗層とを含むので、半導体発光素子に流れる電流を設定するための抵抗素子などの外部回路が不要になる。また、抵抗層の抵抗値を所要の値にすることにより、所定の電圧を印加するだけで所要の電流を流すことができる、いわゆる電圧駆動が可能な半導体発光素子を実現することができる。
【0015】
第3発明にあっては、抵抗層は、一部に切除痕を有する。切除痕は、例えば、抵抗層の抵抗値を調整した後の調整痕である。抵抗層の一部をレーザ等により切除することにより抵抗層の抵抗値を所望の値に設定することができ、半導体発光素子に所定の電圧を駆動(印加)した場合に流れる電流を調整することができるので、半導体発光素子の明るさを所望の明るさに制御することができる。
【0016】
第4発明にあっては、半導体発光素子と、当該半導体発光素子を収容する収容部とを備える。これにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0017】
第5発明にあっては、一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成する。各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続される第1のボンディング電極を形成し、当該各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続される第2のボンディング電極を形成する。当該各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層と第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を形成する。そして、抵抗層の一部を切除する。これにより、第1のボンディング電極と第2のボンディング電極との間には、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を並列に複数接続する。そして、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組に対して直列に一部が切除された抵抗層を接続する。
【0018】
これにより、1つのLED構造が不良となり、例えば、オープン状態になったとしても、別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を増やすことにより、さらに信頼性が向上する。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を備えることにより、直流電圧だけでなく交流電圧で駆動するができ、交流電源しかない場合でも使用することができるので、用途を拡大することができる。また、半導体発光素子に流れる電流を設定するための抵抗素子などの外部回路が不要になり、抵抗層の抵抗値を所要の値に調整することにより、所定の電圧を印加するだけで所要の電流を流すことができる、いわゆる電圧駆動が可能な半導体発光素子を実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、1つのLED構造が不良となり、例えば、オープン状態になったとしても、別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を増やすことにより、さらに信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態1の半導体発光素子の構成の配置例を示す模式図である。
【図2】実施の形態1の半導体発光素子の回路構成の一例を示す説明図である。
【図3】図1のIII−III線における断面構造の一例を示す断面図である。
【図4】実施の形態1の半導体発光素子の製造工程を示す説明図である。
【図5】実施の形態1の半導体発光素子の製造工程を示す説明図である。
【図6】実施の形態2の半導体発光素子の構成の配置例を示す模式図である。
【図7】実施の形態3の半導体発光素子の構成の配置例を示す模式図である。
【図8】本実施の形態の発光装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は実施の形態1の半導体発光素子100の構成の配置例を示す模式図であり、図2は実施の形態1の半導体発光素子100の回路構成の一例を示す説明図であり、図3は図1のIII−III線における断面構造の一例を示す断面図である。
【0022】
本実施の形態の半導体発光素子100(以下、「LEDチップ」、「発光素子」ともいう。)は、複数の発光素子が形成されたウェハを所定の寸法で直方体状に切断して各発光素子を分離したものであり、例えば、LEDチップである。図1乃至図3において、1はサファイア基板である。サファイア基板1(以下、「基板」という。)は平面視が矩形状であって、縦横寸法は、例えば、350μmである。なお、寸法はこれに限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、半導体発光素子100は、矩形状の基板1の一面に発光用のn型半導体層2、活性層(不図示)及びp型半導体層3を積層した半導体発光層(LED構造)を相互に離隔して4つ形成してある。それぞれのLED構造をLED1、LED2、LED3、LED4とも称する。
【0024】
半導体発光層(LED1〜LED4)は、それぞれ、基板1上に、AlNバッファ層(不図示)、約1μmの厚みのアンドープGaN層(不図示)、n型半導体層2、活性層(不図示)、p型半導体層3がこの順に積層してある。n型半導体層2は、例えば、約1μm程度のn−GaN(窒化ガリウム)層、n−AlGaInNクラッド層などから成る。また、活性層は、GaN/InGaN−MQW(Multi-quantum Well、多重量子井戸層)型活性層などから成る。また、p型半導体層3は、p−AlGaInN層、約0.2μm程度のp−GaN層、コンタクト層としてのp−InGaN層などから成る。なお、アンドープGaN層を形成しない構成であってもよい。
【0025】
基板1の対向する縁辺の中央部には、第1のボンディング電極51及び第2のボンディング電極52を形成してある。
【0026】
また、基板1の縁辺に沿って、第1のボンディング電極51の両側には、半導体発光層のn型半導体層2とは離隔したn型半導体層により形成され、相互に離隔した2つの抵抗層(R1、R3とも称する)を形成してある。また、基板1の縁辺に沿って、第2のボンディング電極52の両側には、半導体発光層のn型半導体層2とは離隔したn型半導体層により形成され、相互に離隔した2つの抵抗層(R2、R4とも称する)を形成してある。なお、図1の例では、4つの抵抗層(R1、R2、R3、R4)を備える構成であるが、抵抗層を具備しない構成でもよく、あるいは抵抗層(R1)及び(R2)のいずれか一方のみを具備する構成でもよく、抵抗層(R3)及び(R4)のいずれか一方のみを具備する構成でもよい。
【0027】
図1に示すように、一方の半導体発光層(LED1)のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと、当該一方の半導体発光層から離隔して形成された他方の半導体発光層(LED2)のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層(LED1、LED2)を基板1の一面に形成してある。また、一組の半導体発光層(LED1、LED2)と離隔して、一方の半導体発光層(LED3)のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと、当該一方の半導体発光層から離隔して形成された他方の半導体発光層(LED4)のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層(LED3、LED4)を基板1の一面に形成してある。
【0028】
第1のボンディング電極51は、抵抗層(R1)を介して1組の半導体発光層(LED1、LED2)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続してある。また、第2のボンディング電極52は、抵抗層(R2)を介して当該1組の半導体発光層(LED1、LED2)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続してある。
【0029】
また、第1のボンディング電極51は、抵抗層(R3)を介して1組の半導体発光層(LED3、LED4)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続してある。また、第2のボンディング電極52は、抵抗層(R4)を介して当該1組の半導体発光層(LED3、LED4)の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続してある。
【0030】
すなわち、図2に示すように、第1のボンディング電極51と第2のボンディング電極52との間には、逆並列に接続したLED構造(LED1とLED2)と、当該LED構造(LED1とLED2)に直列に接続した抵抗R1及びR2とが接続されてあるとともに、逆並列に接続したLED構造(LED3とLED4)と、当該LED構造(LED3とLED4)に直列に接続した抵抗R3及びR4とが接続されてある。これにより、半導体発光素子100の電圧特性は、無極性とすることができ、交流電圧で駆動することが可能となる。
【0031】
なお、抵抗R1乃至R4を省略した場合には、半導体発光素子100は、第1のボンディング電極51と第2のボンディング電極52との間に、逆並列に接続した半導体発光層の組(LED1とLED2との組、及びLED3とLED4との組)を並列に接続した構成となる。この場合も、半導体発光素子100の電圧特性は、無極性とすることができ、交流電圧で駆動することが可能となる。
【0032】
図3に示すように、半導体発光層(LED構造)のp型半導体層3の表面には、電流拡散層4を形成してある。電流拡散層4は、例えば、導電性の透明膜であるITO膜(インジウム錫酸化膜)である。電流拡散層4の膜厚は、例えば、250nmであるが、これに限定されるものではない。
【0033】
基板1上には、発光用の半導体発光層(LED構造)のn型半導体層2と分離させて抵抗層としてのn型半導体層2を形成してある。図3の例では、抵抗R1及びR2に対応する抵抗層が図示されている。
【0034】
半導体層(LED構造)のn型半導体層2の表面、電流拡散層4の表面、及び抵抗層としてのn型半導体層2の表面には、配線層5を形成してある。配線層5は、例えば、真空蒸着によりCr/Auを成膜し、リフトオフ法でパターニングを行うことで形成することができる。
【0035】
配線層5は、第1のボンディング電極51と抵抗層(R1、R3)との間、抵抗層(R1)とLED構造(LED1)のp型半導体層との間、抵抗層(R1)とLED構造(LED2)のn型半導体層との間、抵抗層(R3)とLED構造(LED3)のp型半導体層との間、抵抗層(R3)とLED構造(LED4)のn型半導体層との間を接続する。
【0036】
また、配線層5は、第2のボンディング電極52と抵抗層(R2、R4)との間、抵抗層(R2)とLED構造(LED1)のn型半導体層との間、抵抗層(R2)とLED構造(LED2)のp型半導体層との間、抵抗層(R4)とLED構造(LED3)のn型半導体層との間、抵抗層(R4)とLED構造(LED4)のp型半導体層との間を接続する。
【0037】
n型半導体層2、p型半導体層3、電流拡散層4及び配線層5などの側面及び上面であって、電気的に接続されていない部分は、保護膜6を成膜してある。保護膜6は、例えば、SiO2 膜などである。
【0038】
本実施の形態では、基板1上に相互に離隔した複数の半導体発光層(LED)構造を形成してあり、一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成してある。そして、各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続した第1のボンディング電極51と、各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続した第2のボンディング電極52とを備える。
【0039】
すなわち、第1のボンディング電極51と第2のボンディング電極52との間には、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を並列に複数接続してある。これにより、1つのLED構造が不良となり、例えば、オープン状態になったとしても、別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を増やすことにより、さらに信頼性が向上する。また、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組を備えることにより、直流電圧だけでなく交流電圧で駆動するができ、交流電源しかない場合でも使用することができるので、用途を拡大することができる。また、半導体発光素子100及び半導体発光素子100を備えた発光装置は、極性を持たないので、回路基板等に組み込む場合、発光装置の方向(極性)を考慮する必要がなく組立作業が容易になる。
【0040】
また、本実施の形態では、半導体発光層と第1のボンディング電極51及び第2のボンディング電極52の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を備える。すなわち、逆並列に接続した半導体発光層(LED構造)の組に対して直列に内部抵抗を備える。これにより、1つのLED構造が不良となり、例えば、短絡状態になったとしても、ボンディング電極間には、抵抗層(内部抵抗)を介して別のLED構造が並列に接続されているので、発光を維持することができ、高い信頼性を確保することができる。また、1つの半導体発光素子内に半導体発光層と抵抗層とを含むので、半導体発光素子に流れる電流を設定するための抵抗素子などの外部回路が不要になる。また、抵抗層の抵抗値を所要の値にすることにより、所定の電圧を印加するだけで所要の電流を流すことができる、いわゆる電圧駆動が可能な半導体発光素子を実現することができる。
【0041】
次に実施の形態1の半導体発光素子100の製造方法について説明する。図4及び図5は実施の形態1の半導体発光素子100の製造工程を示す説明図である。図4Aに示すように、有機金属化学気相成長法(MO−CVD法)により、基板(サファイア基板)1上に、最初に約400℃でAlNバッファ層(不図示)を成長させる。その後、約1μmのアンドープGaN層、約1μmのn−GaN層及びn−AlGaInNクラッド層などからなるn型半導体層2、GaN/InGaN−MQW型の活性層(不図示)、さらに、p−AlGaInN層、約0.2μm程度のp−GaN層及びコンタクト層としてのp−InGaN層などからなるp型半導体層3をこの順に形成したLED構造を生成する。MO−CVD装置から取り出した基板1に紫外線を照射しながら、約400℃に加熱し、p型半導体層3の活性化を行う。
【0042】
図4Bに示すように、フォトリソグラフィとドライエッチングにより、フォトレジストをマスクとして、n型電極と接続するためのn型半導体層2(発光用の半導体発光層及び抵抗層を含む)を露出させる。なお、エッチングの深さは、抵抗層の所要の抵抗値を得るのに必要な値とすればよいが、例えば、500nmである。
【0043】
図4Cに示すように、真空蒸着あるいはスパッタリング等の成膜法によりITO膜(インジウム錫酸化膜)の透明の電流拡散層4を約250nm成膜し、リフトオフ法によりパターニングする。この後、窒素及び酸素の混合雰囲気中でチューブ炉により約500℃に加熱し、電流拡散層4のアニールを行う。
【0044】
次に、図5Dに示すように、任意の幅及び長さの抵抗層を形成するため、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、抵抗層を形成する周辺のn型半導体層2を基板1が露出するまでエッチングを行う。これにより、半導体発光層(LED構造)と分離した形態で抵抗層を形成することができる。
【0045】
次に、図5Eに示すように、プラズマCVDにより、SiO2 膜(保護膜)6を全面に成膜し、希釈フッ酸により、第1のボンディング電極51、第2のボンディング電極52及び配線層5を設ける部分のSiO2 膜6を除去する。なお、図5Eには、ボンディング電極51、52を設ける部分は図示されていない。
【0046】
次に、図5Fに示すように、真空蒸着によりCr/Auを成膜し、リフトオフ法でパターニングを行って配線層5を形成する。
【0047】
これにより、1つのLEDチップ(半導体発光素子)内に抵抗と、該抵抗に直列に接続され、逆並列に接続されたLED構造とで構成される回路が2つ並列に接続した構造の半導体発光素子が完成する。
【0048】
完成した半導体発光素子(LEDチップ)をウェハプローバ等で測定する。逆並列に接続されたLED構造に直列に接続される内部抵抗は、約2.0kΩであった。その後、レーザスクライビングにより素子分離を行って半導体発光素子を完成させる。完成した半導体発光素子は、パッケージに組み立てられることにより発光装置が完成する。
【0049】
(実施の形態2)
図6は実施の形態2の半導体発光素子120の構成の配置例を示す模式図である。実施の形態1では、半導体発光素子100は、LED1〜LED4の4つのLED構造を備える構成であったが、実施の形態2では、半導体発光素子120は、逆並列に接続された1組のLED構造を3つ並列に接続した構造をなす。また、1組のLED構造(LED1、LED2)に直列に抵抗(R1、R4)を接続してあり、1組のLED構造(LED3、LED4)に直列に抵抗(R2、R5)を接続してあり、1組のLED構造(LED5、LED6)に直列に抵抗(R3、R6)を接続してある。なお、1組のLED構造に直列に接続される抵抗は1つでもよく、抵抗を具備しない構成でもよい。これにより、仮に2組のLED構造に不良が生じても、残りのLED構造により発光を維持することができるので、さらに信頼性を向上させることができる。
【0050】
実施の形態2の半導体発光素子120の製造方法は、実施の形態1の場合と同様であるので、説明は省略する。
【0051】
(実施の形態3)
図7は実施の形態3の半導体発光素子140の構成の配置例を示す模式図である。実施の形態1との相違点は、抵抗層(R1〜R4)の一部をレーザ等により切除する点である。すなわち、図7に示すように、例えば、抵抗層(R2、R3)の略L字状の領域20は、レーザ等により一部を切除した切除痕であり、例えば、抵抗層の抵抗値を調整した後の調整痕である。
【0052】
実施の形態3の半導体発光素子140の製造方法は、実施の形態1の場合と同様であるが、各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層と第1のボンディング電極51及び第2のボンディング電極52の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を形成し、抵抗層の一部を切除する点が異なる。
【0053】
すなわち、ウェハプローバ等により半導体発光素子140の電気的特性の測定を行うと同時に、レーザ等により抵抗層の一部を切除する。抵抗層の形状を加工することにより、電流の流れるパス、あるいは断面積を変えることができ、抵抗値を所望の値に設定することができる。本実施の形態では、LED構造に直列に接続する抵抗の抵抗値を、例えば、0.01kΩから20kΩ程度の範囲で設定することができる。なお、レーザ等により抵抗層の形状を加工(切除)するタイミングは、素子分離前でもよく、素子分離後でもよい。
【0054】
抵抗層の一部をレーザ等により切除することにより抵抗層の抵抗値を所望の値に設定することができ、半導体発光素子に所定の電圧を駆動(印加)した場合に流れる電流を調整することができるので、半導体発光素子の明るさを所望の明るさに制御することができる。
【0055】
図8は本実施の形態の発光装置200の構成の一例を示す模式図である。発光装置200は、発光ダイオードであって上述の半導体発光素子100、120、140のいずれかと、収容部とを備える。
【0056】
図8に示すように、発光装置(発光ダイオード)200は、リードフレーム201及び202を備え、リードフレーム201の一端部には収容部としての凹部201aが設けられている。凹部201aの底部には、半導体発光素子(LEDチップ)100がダイボンディングにより接着固定されている。
【0057】
LEDチップ100の一方のボンディング電極は、ワイヤ204によりリードフレーム201とワイヤボンディングされ、他方のボンディング電極はワイヤ204によりリードフレーム202とワイヤボンディングされている。凹部201a内には、透光性の樹脂が充填されることによって、LEDチップ100を覆う被覆部203を形成している。なお、被覆部203内にLEDチップ100の発光色に応じた蛍光体205を含有させることもできる。
【0058】
被覆部203が形成されたリードフレーム201及び202の端部は、先端部が凸状のレンズ206に収納されている。レンズ206は、エポキシ樹脂等の透光性の樹脂で形成されている。
【0059】
発光装置(発光ダイオード)200は、上述の半導体発光素子100を収容してある。これにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【0060】
上述の実施の形態1〜3では、GaN系の半導体発光層を用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、AlGaInP等の半導体発光層を用いることもできる。
【0061】
上述の実施の形態1〜3では、基板1の縦横寸法が、350μmであったが、これに限定されるものではない。
【0062】
上述の実施の形態1〜3では、抵抗層としてn型半導体層を用いる構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、抵抗層として電流拡散層4、酸化膜などを用いることができる。
【0063】
上述の実施の形態3では、抵抗層の一部を切除して抵抗値を所望の値に設定する構成であったが、これに限定されるものではなく、例えば、抵抗層の異なる箇所それぞれに配線を複数形成しておき、いずれかの配線を切断することにより、電流の流れる箇所を変更して抵抗値を調整することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 サファイア基板(基板)
2 n型半導体層
3 p型半導体層
4 電流拡散層
5 配線層
51 第1のボンディング電極
52 第2のボンディング電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した半導体発光層が形成された半導体発光素子において、
前記基板上に相互に離隔した複数の半導体発光層を形成してあり、
一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成してあり、
各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続した第1のボンディング電極と、
前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続した第2のボンディング電極と
を備えることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体発光層と前記第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記抵抗層は、
一部を切除した切除痕を有することを特徴とする請求項2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の半導体発光素子と、該半導体発光素子を収容する収容部とを備えることを特徴とする発光装置。
【請求項5】
基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を積層した複数の半導体発光層が形成された半導体発光素子の製造方法において、
一方の半導体発光層のn型半導体層及びp型半導体層それぞれと他方の半導体発光層のp型半導体層及びn型半導体層それぞれとが接続された一組の半導体発光層を離隔して複数形成するステップと、
各組の半導体発光層の相互に接続されたn型半導体層及びp型半導体層の一方に接続される第1のボンディング電極を形成するステップと、
前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層の他方に接続される第2のボンディング電極を形成するステップと、
前記各組の半導体発光層の相互に接続したn型半導体層及びp型半導体層と前記第1のボンディング電極及び第2のボンディング電極の少なくとも一方との間に接続された抵抗層を形成するステップと、
前記抵抗層の一部を切除するステップと
を含むことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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