半導体発光素子
【課題】発光効率の高い半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子は、窒化物半導体を含むn形半導体層及びp形半導体層と、発光層と、を備える。発光層は、III族元素を含む障壁層と、n形半導体層からp形半導体層に向けた方向に障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有する。障壁層を、n形半導体層側の第1部分と、p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低い。井戸層を、n形半導体層側の第3部分と、p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高い。障壁層及び井戸層のIn組成比は、発光層に電圧を印加した状態において井戸層及び障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になるような組成比である。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子は、窒化物半導体を含むn形半導体層及びp形半導体層と、発光層と、を備える。発光層は、III族元素を含む障壁層と、n形半導体層からp形半導体層に向けた方向に障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有する。障壁層を、n形半導体層側の第1部分と、p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低い。井戸層を、n形半導体層側の第3部分と、p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高い。障壁層及び井戸層のIn組成比は、発光層に電圧を印加した状態において井戸層及び障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になるような組成比である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物系III−V族化合物半導体は、ワイドバンドギャップというその特徴を活かし、高輝度の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、レーザダイオード(LD:Laser Diode)などに応用されている。
【0003】
これらの発光素子は、n形半導体層と、p形半導体層と、その間に設けられ、量子井戸層と障壁層とを有する発光層と、を有している。
このような半導体発光素子において、高い発光効率を実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−234545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発光効率の高い半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体発光素子は、窒化物半導体を含むn形半導体層と、窒化物半導体を含むp形半導体層と、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられた発光層と、を備える。
前記発光層は、III族元素を含む障壁層と、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう方向に前記障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有する。
前記障壁層を、前記n形半導体層側の第1部分と、前記p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、前記第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低い。
前記井戸層を、前記n形半導体層側の第3部分と、前記p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、前記第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高い。
前記障壁層のIn組成比及び前記井戸層のIn組成比は、前記発光層に電圧を印加した状態において前記井戸層及び前記障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になるような組成比である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
【図2】実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
【図3】(a)〜(b)は、発光層のIn組成比を例示する図である。
【図4】(a)〜(d)は、エネルギーバンド及びキャリア濃度分布を例示する図である。
【図5】半導体発光素子の特性を示す図である。
【図6】(a)〜(b)は、In組成比を示す図である。
【図7】(a)〜(b)は、In組成比及びエネルギーバンドを示す図である。
【図8】(a)〜(b)は、In組成比及びエネルギーバンドを示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、他のIn組成比を例示する模式図である。
【図10】(a)〜(h)は、In組成比の傾斜の例を示す模式図である。
【図11】内部量子効率を例示する図である。
【図12】(a)〜(b)は、内部量子効率を例示する図である。
【図13】(a)〜(b)は、内部量子効率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
図2は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層20と、p形半導体層50と、n形半導体層20とp形半導体層50との間に設けられた発光層40と、を備える。半導体発光素子110においては、発光層40と、n形半導体層20と、の間に積層体30が設けられていてもよい。
【0010】
n形半導体層20及びp形半導体層50は、窒化物半導体を含む。
発光層40は、例えば活性層である。積層体30は、例えば超格子層である。
【0011】
半導体発光素子110においては、例えばサファイヤからなる基板10の主面(例えばc面)に、例えばバッファ層11が設けられ、その上に、例えばアンドープのGaN下地層21と、n形GaNコンタクト層22と、が設けられる。n形GaNコンタクト層22は、n形半導体層20に含まれる。なお、GaN下地層21は、便宜的にn形半導体層20に含まれるものとしてもよい。
【0012】
n形GaNコンタクト層22の上には、積層体30が設けられている。積層体30においては、例えば、第1結晶層31と、第2結晶層32と、が交互に積層されている。
【0013】
積層体30の上には、発光層40(活性層)が設けられている。発光層40は、例えば多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有する。すなわち、発光層40は、複数の障壁層41及び複数の井戸層42が、交互に繰り返し積層された構造を含んでいる。障壁層41及び井戸層42の詳しい構成については後述する。
【0014】
発光層40の上には、p形AlGaN層51、p形の例えばMgドープGaN層52、及び、p形GaNコンタクト層53が、この順に設けられている。なお、p形AlGaN層51は、電子オーバフロー抑制層の機能を有する。p形AlGaN層51、MgドープGaN層52及びp形GaNコンタクト層53は、p形半導体層50に含まれる。また、p形GaNコンタクト層53の上には、透明電極60が設けられている。
【0015】
そして、n形半導体層20であるn形GaNコンタクト層22の一部、その一部に対応する積層体30、発光層40及びp形半導体層50が除去され、n形GaNコンタクト層22の上にn側電極70が設けられる。n側電極70には、例えばTi/Pt/Auの積層構造が用いられる。一方、透明電極60の上には、p側電極80が設けられる。
このように、本実施形態に係る本具体例の半導体発光素子110は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。
【0016】
半導体発光素子110は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、有機洗浄、酸洗浄した例えばc面サファイヤの基板10を、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置の反応炉に導入し、反応炉のサセプタ上で約1100℃に加熱する。これにより、基板10の表面の酸化膜が除去される。
【0017】
次に、基板10の主面(c面)の上に、30nmの厚さでバッファ層11を成長させる。さらに、バッファ層11の上に、3マイクロメートル(μm)の厚さでアンドープのGaN下地層21を成長させる。さらに、GaN下地層21の上に、2μmの厚さで、SiドープのGaNによるn形GaNコンタクト層22を成長させる。
【0018】
次に、n形GaNコンタクト層22の上に、InxGa1−xNである第1結晶層31と、InyGa1−yNである第2結晶層32と、を交互に30周期積層し、積層体30を形成する。
【0019】
次に、積層体30の上に、障壁層41と井戸層42とを交互に積層する。
さらに、最も上の障壁層41の上に、Alの組成比が0.003で5nmの厚さのAlGaN層を成長させ、この後、Alの組成比が0.1で10nmの厚さのMgドープAlGaN層51と、80nmの厚さのMgドープp形GaN層52(Mg濃度は2×1019/cm3)、及び、10nm程度の厚さの高濃度MgドープGaN層53(Mg濃度は1×1021/cm3)をそれぞれ積層させる。この後、上記の結晶が成長した基板10を、MOCVD装置の反応炉から取り出す。
【0020】
次に、上記の多層膜構造の一部をn形GaNコンタクト層22の途中までドライエッチングして露出させ、この上に、Ti/Pt/Auのn側電極70を形成する。また、高濃度MgドープGaN層53の表面上に、ITO(Indium Tin Oxide)である透明電極60を形成し、その一部に、例えば直径80μmのNi/Auによるp側電極80を形成する。これにより、半導体発光素子110が作製される。
【0021】
なお、上記においては、成膜法としてMOCVD(有機金属気相)法を用いる例について説明したが、例えば分子線エピタキシ(MBE)法やハライド気相成長(HVPE)法などの他の方法も適用可能である。
【0022】
次に、発光層40の多重量子井戸構造について説明する。
図1に表したように、発光層40の多重量子井戸構造は、複数の障壁層41(1)〜41(n)と、複数の井戸層42(1)〜42(n)と、を有する。なお、符号に含まれる”n”は層の番号に対応した2以上の整数である。
【0023】
本明細書において、複数の障壁層41(1)〜41(n)を区別せずに総称するときは障壁層41といい、複数の井戸層42(1)〜42(n)を区別せずに総称するときは井戸層42ということにする。
【0024】
複数の障壁層41は、n形半導体層20からp形半導体層50に向けて第1番目の障壁層41(1)、第2番目の障壁層41(2)、…、第(n−1)番目の障壁層41(n−1)、第n番目の障壁層41(n)を有する。
【0025】
複数の井戸層42は、n形半導体層20からp形半導体層50に向けて第1番目の井戸層42(1)、第2番目の井戸層42(2)、…、第(n−1)番目の井戸層42(n−2)、第n番目の井戸層42(n)を有する。
【0026】
障壁層41及び井戸層42は、III族元素を含む。なお、障壁層41及び井戸層42には、微量のAl等が含まれていてもよい。
井戸層42には、例えばInを含む窒化物半導体が用いられる。障壁層41のバンドギャップエネルギは、井戸層42のバンドギャップエネルギよりも大きい。
【0027】
例えば、障壁層41は、InbGa1−bN(b≧0)を含む。障壁層41の厚さは、厚さtb(ナノメートル)である。障壁層41の厚さtbは、例えば10ナノメートル(nm)以下である。
井戸層42は、InwGa1−wN(0<w<1)を含む。井戸層42の厚さは、厚さtw(ナノメートル)である。井戸層42の厚さtwは、例えば2.5nm以上6nm以下である。
【0028】
ここで、井戸層42のバンドギャップは、障壁層41のバンドギャップよりも低い。これは、例えば、障壁層41をInbGa1−bNとし、井戸層42をInwGa1−wNとする系の場合であれば、b<wと等価である。
【0029】
図3(a)〜(b)は、発光層のIn組成比のプロファイルを例示する図である。
図3(a)〜(b)において、横軸は発光層40の位置(厚さ方向の位置)を表し、縦軸はIn組成比を表している。
図3(a)には、実施形態に係る半導体発光素子110での発光層40のIn組成比のプロファイル110Pの一部が示されている。
図3(b)には、参考例に係る半導体発光素子190での発光層のIn組成比のプロファイル190Pの一部が示されている。
いずれの図でも、説明を分かりやすくするため、2つの井戸層42と、これら2つの井戸層42の間に設けられた1つの障壁層41と、のIn組成比を表している。
【0030】
図3(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成のプロファイル110Pでは、障壁層41のIII族元素中におけるInの組成比は、n形半導体層20からp形半導体層50に向かう方向(第1方向D1)に減少し、井戸層42のIII族元素中におけるInの組成比は、第1方向D1に増加する。
【0031】
すなわち、1つの障壁層41を、n形半導体層20側の第1部分411と、p形半導体層50側の第2部分412と、に分けた場合、第2部分412の厚さで平均したInの組成比は、第1部分411の厚さで平均したInの組成比よりも低くなる。
ここで、層の厚さで平均したInの組成比を、平均In組成比ということにする。
【0032】
障壁層41のIII族元素中におけるInの組成比が第1方向D1に減少すると、障壁層41のバンドギャップは、n形半導体層20に近いほど小さく、p形半導体層50に近いほど大きくなる。つまり、1つの障壁層41におけるバンドギャップは、第1方向D1に段階的に大きくなる。
【0033】
一方、1つの井戸層42を、n形半導体層20側の第3部分423と、p形半導体層50側の第4部分424と、に分けた場合、第4部分424の平均In組成比は、第3部分423の平均In組成比よりも高くなる。
【0034】
井戸層42のIII族元素中におけるInの組成比が第1方向D1に増加すると、井戸層42のバンドギャップは、n形半導体層20に近いほど大きく、p形半導体層に近いほど小さくなる。つまり、1つの井戸層42におけるバンドギャップは、第1方向D1に段階的に小さくなる。
【0035】
上記のバンドギャップの段階的な変化は、例えば障壁層41をInbGa1−bNとし、井戸層42をInwGa1−wNとする系の場合であれば、障壁層41のIn組成比bを第1方向D1に段階的に小さくし、井戸層42のIn組成比wを第1方向D1に段階的に大きくすればよい。
【0036】
このように、障壁層41におけるIII族元素中におけるInの組成比を第1方向D1に減少させ、井戸層42におけるIII族元素中におけるInの組成比を第1方向D1に増加させることで発光層40におけるバンド構造を変調し、発光層40に電圧が印加された際のバンド構造を最適化する。これにより、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率の低下を抑制して、発光効率の向上を達成する。
【0037】
図3(b)に表した参考例に係る半導体発光素子190のIn組成比のプロファイル190Pでは、障壁層41’及び井戸層42’のいずれについても、第1方向D1に向かうIn組成比が一定である。
【0038】
ここで、c軸方向に成長したウルツ鉱構造の窒化物半導体による量子井戸層において、層内に生じる内部電界は、LEDなどの発光素子の発光再結合やキャリアの注入効率を低下させる。これは、井戸層42及び42’を構成する結晶(例えば、InGaN)の格子定数と、障壁層41及び41’を構成する結晶(例えば、井戸層42’とは異なるIn組成比のInGaN)の格子定数との不整合が発光層40内の格子ひずみを生じさせ、これによってピエゾ電界が発生するためである。ピエゾ電界によって発光層40のバンド構造が変調されると、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率を低下させる。
参考例に係る半導体発光素子190では、上記のピエゾ電界によるバンド構造の変調により、発光効率が低下する。
【0039】
これに対し、実施形態に係る半導体発光素子110では、図3(a)に表したように障壁層41のIn組成比及び井戸層42のIn組成比に、第1方向D1に変化を与えることで、発光層40に電界が印加された際のバンド構造を、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率が高まるように最適化している。
【0040】
なお、複数の障壁層41及び複数の井戸層42が設けられたMQW構造において、図3(a)に表したような障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加するプロファイルは、複数の障壁層41及び複数の井戸層42の全てに適用しても、一部の障壁層41及び一部の井戸層42に適用してもよい。
【0041】
次に、実施形態に係る半導体発光素子110の障壁層41及び井戸層42の具体例について説明する。
なお、発光層40は、複数の障壁層41と、複数の井戸層42と、を有するが、説明を簡単にするために、複数の障壁層41のそれぞれにおける平均In組成比は互いに同じであり、複数の障壁層41の厚さも互いに同じである場合として説明する。また、同様に、複数の井戸層42のそれぞれにおける平均In組成比は互いに同じであり、複数の井戸層42の厚さも互いに同じであるとして説明する。
【0042】
具体例に係る半導体発光素子110においては、障壁層41の厚さtbは、10nm以下と薄くする。これにより、p形半導体層50から注入されるホールが効率的に発光層40に効率的に供給され、半導体発光素子110の発光効率が高まる。また、半導体発光素子110の動作電圧は、実用上要求されている程度に低下する。
【0043】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、井戸層42の厚さtwは、厚いほどよく、望ましくは3nm以上とし、より好ましくは4nm以上とする。
【0044】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、1つの障壁層41におけるn形半導体層20側の界面でのIn組成比をbnとし、障壁層41のp形半導体層50側の界面でのIn組成比をbpとしたとき、bnを0.02以上とすることが望ましく、より好ましくは0.04程度である。
【0045】
1つの障壁層41では、第1方向D1に向かって、このIn組成比bを段階的に減少させる。なお、p形半導体層50側の界面におけるIn組成比bpは0.00にすることが望ましい。In組成比bpが低いほど、障壁層41の結晶性を劣化させずに発光効率の向上が達成される。
また、In組成比bnとIn組成比bpとの差の絶対値(Δb)は、例えば0.02よりも大きく、0.06よりも小さいことが好ましく、より好ましくは0.04程度である。
【0046】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、1つの井戸層42(例えば、障壁層41のp形半導体層50側に隣り合う井戸層42)におけるn形半導体層20側の界面でのIn組成比をwnとし、井戸層42のp形半導体層50側の界面でのIn組成比をwpとしたとき、青色に発光するLEDであれば、In組成比wnを0.10以下とすることが望ましく、より好ましくは0.06程度である。
【0047】
1つの井戸層42では、第1方向D1に向かって、このIn組成比wを段階的に増加させる。なお、p形半導体層50側の界面におけるIn組成比wpを0.14以上にすることが望ましく、より望ましくは0.18程度である。このような組成比変調を施すことにより、井戸層42の結晶性を劣化させずに発光効率の向上を図る。
また、In組成比wnとIn組成比wpとの差の絶対値(Δw)は、例えば0.04よりも大きく0.12よりも小さいことが望ましく、より好ましく0.06以上、さらに好ましくは0.10程度である。
【0048】
上記のような、障壁層41の厚さ及びIn組成比の段階的な変化と、井戸層42の厚さ及びIn組成比の段階的な変化と、によって生ずる相補的なエネルギーバンドの構成によって、半導体発光素子110の高発光効率が実現される。
【0049】
図4(a)〜(d)は、エネルギーバンド図及びキャリア濃度分布を例示する図である。
図4(a)〜(d)のいずれの図においても、横軸は位置(厚さ方向の位置)を表している。図4(a)〜(d)の横軸では、p形半導体層50側の3つの井戸層42(n)、42(n−1)及び42(n−2)と、これらの間の2つの障壁層41(n)及び41(n−1)を含む一部の位置が示されている。
また、図4(a)は伝導体のエネルギーバンド図、図4(b)は価電子帯のエネルギーバンド図、図4(c)は電子の濃度、図4(d)はホールの濃度を示している。
図4(a)〜(d)においては、それぞれ、図3(a)に表した本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイル110Pの場合と、図3(b)に表した参考例に係る半導体発光素子190のIn組成のプロファイル190Pの場合と、を示している。
【0050】
なお、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイル110Pとしては、井戸層42のIn組成比wn=0.10、In組成比wp=0.18、すなわちΔw=0.08、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04である。また、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0051】
また、参考例に係る半導体発光素子190のIn組成比のプロファイル190Pとしては、井戸層42’のIn組成比w=0.13、障壁層41’のIn組成比b=0.00である。また、井戸層42’の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0052】
図4(a)及び(b)に表したように、参考例に係るIn組成のプロファイル190Pを適用した場合に比べて、本実施形態に係るIn組成のプロファイル110Pを適用すると、伝導体及び価電子帯のそれぞれのエネルギーバンド図に変化が生じる。
特に、図4(b)に表した価電子帯のエネルギーバンド図に大きな変化が現れている。本実施形態に係るIn組成のプロファイル110Pを適用することにより、内部電界による発光層40での価電子帯の変調が抑制される。すなわち、障壁層41及び井戸層42のIn組成比の互いの増減によって価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になる。
【0053】
これによって、図4(d)に表したように、井戸層42と障壁層41との界面でのホールの局在が抑制される。また、井戸層42と障壁層41とで電子とホールとの空間的な解離が抑制される。さらに、ホールのn形半導体層20側の井戸層42への注入効率が増大する。これらの結果によって、本実施形態に係る半導体発光素子110では、参考例に係る半導体発光素子190に比べて、飛躍的に発光効率が高まる。
【0054】
以下、上記のような条件を見いだす基となった検討結果について説明する。
この検討では、発光層40の構成(障壁層41の厚さやIn組成比の変調のさせ方、井戸層42の厚さやIn組成比の変調のさせ方)を変えて半導体発光素子を構成し、その各場合の内部量子効率を比較する。
【0055】
(実施例)
実施例に係る半導体発光素子111において、障壁層41と井戸層42との数は8周期である。
半導体発光素子111において、障壁層41のn形半導体層20側の界面のInの組成比bnは0.04であり、p形半導体層50側の界面のIn組成比bpは0.00であり、層内のIn組成比は線形に変化する。
【0056】
また、半導体発光素子111において、井戸層42のn形半導体層20側の界面のIn組成比wnは0.08であり、p形半導体層50側の界面のIn組成比wpは0.18であり、層内のIn組成比は線形に変化する。
【0057】
また、参考例に係る半導体発光素子191において、障壁層41’と井戸層42’との数は8周期である。参考例に係る半導体発光素子191では、障壁層41’のIn組成比bは0.00で層内で一定(すなわちGaN)であり、井戸層42’のIn組成比wは0.13で層内で一定(すなわちIn0.13Ga0.87N)である。
【0058】
半導体発光素子110及び190のいずれにおいても、障壁層41の厚さtbは5nmで一定であり、井戸層42の厚さtwは3nmで一定である。
【0059】
図5は、半導体発光素子に関する検討結果を例示する図である。
図5では、横軸に電流I(アンペア:A)、縦軸に内部量子効率QEを表している。
図5には、実施形態に係る半導体発光素子111の内部量子効率と、参考例に係る半導体発光素子191の内部量子効率が表示されている。
なお、図5において、内部量子効率は、参考例に係る半導体発光素子191での内部量子効率のピークトップの値を1とした相対値で表示されている。
【0060】
図5に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111の内部量子効率は、参考例に係る半導体発光素子191の内部量子効率に比べて明らかに上昇することがわかる。
【0061】
図6(a)〜(b)は、3次元アトムプローブによるIn組成比の分析結果の一例を示す図である。
図6(a)〜(b)に示す横軸は位置、縦軸はIn組成比である。
図6(a)〜(b)には、第n番目の井戸層42(n)、第n番目の障壁層41(n)及び第(n−1)番目の井戸層42(n−1)のIn組成比が表されている。
【0062】
図6(a)には、井戸層42(InwGa1−wN)のIn組成比wを第1方向D1に増加させた例が示されている。この例では、第n番目の井戸層42(n)のIn組成比wは、第1方向D1に0.08から0.12に増加している。
【0063】
図6(b)には、障壁層41(InbGa1−bN)のIn組成比bを第1方向D1に減少させ、井戸層42(InwGa1−wN)のIn組成比wを第1方向D1に増加させた例である。この例では、第n番目の障壁層41(n)のIn組成比bは、第1方向D1に0.07から0.03に減少し、第n番目の井戸層42(n)のIn組成比wは、第1方向D1に0.14から0.16に増加している。
【0064】
図6(a)及び(b)に表したように、障壁層41のIn組成比b及び井戸層42のIn組成比wは、微小な増減を含みながら減少または増加する。実施形態において、障壁層41のIn組成比bが減少すること、及び井戸層42のIn組成比wが増加することには、このような微小な増減を含む減少または増加も含まれる。
【0065】
図7(a)〜図8(b)は、井戸層のIn組成比の変化によるエネルギーバンド図の変化について示す図である。
【0066】
図7(a)には、井戸層42のIn組成比wn=0.11、In組成比wp=0.15、すなわちΔw=0.04、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04の場合のIn組成比のプロファイルが表されている。なお、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0067】
図7(b)には、図7(a)に表したIn組成比のプロファイルでの価電子帯のエネルギーバンド図が表されている。なお、図7(b)では、発光層40に流れる電流量を変化させた場合のエネルギーバンド図が表されている。電流量J1は74A/cm2、電流量J2は184A/cm2、電流量J3は280A/cm2である。
【0068】
図7(a)及び(b)に表したように、電流量J1〜J3の変化によるエネルギーバンド図の変化は少ない。一方、In組成比の差Δwが0.04の場合には、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状にならない。
【0069】
図8(a)には、井戸層42のIn組成比wn=0.07、In組成比wp=0.19、すなわちΔw=0.12、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04の場合のIn組成比のプロファイルが表されている。なお、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0070】
図8(b)には、図8(a)に表したIn組成比のプロファイルでの価電子帯のエネルギーバンド図が表されている。なお、図8(b)では、発光層40に流れる電流量を変化させた場合のエネルギーバンド図が表されている。電流量J4は82A/cm2、電流量J5は176A/cm2、電流量J3は268A/cm2である。
【0071】
図8(a)及び(b)に表したように、電流量J4〜J6の変化によるエネルギーバンド図の変化は少ない。一方、In組成比の差Δwが0.12の場合には、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状にならない。
【0072】
図4(a)〜(d)に表した本実施形態に係る半導体発光素子110では、In組成比の差Δwが0.08である。すなわち、半導体発光素子110におけるIn組成比の差Δwは、図7(a)〜(b)に表したIn組成比の差Δwと、図8(a)〜(b)に表したIn組成比の差Δwと、の間である。
この場合には、図4(c)に表したように、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状になる。
上記の結果から、井戸層42のIn組成比の差Δwは、0.04よりも大きく、0.12よりも小さいことが望ましいことが分かる。
【0073】
図9(a)〜(d)は、In組成比の増減のプロファイルを例示する模式図である。
本実施形態に係る半導体発光素子110では、障壁層41のIn組成比は第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比は第1方向D1に増加する。
図9(a)〜(d)では、このIn組成比の増減の例を模式的に表している。
【0074】
図9(a)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に曲線的に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に曲線的に増加する例である。
図9(b)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に階段状に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に階段状に増加する例である。
【0075】
図9(c)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に微小な増減を繰り返しながら減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に微小な増減を繰り返しながら増加する例である。
図9(d)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41及び井戸層42の境界位置において、In組成比の変化に鈍りが生じている例である。
【0076】
上記図9(a)〜(d)に表したいずれの例でも、障壁層41のIn組成比は第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比は第1方向D1に増加することに含まれる。
なお、In組成比の増減のプロファイルは上記以外であってもよい。また、図9(a)〜(d)のプロファイルを適宜組み合わせたものであってもよい。
【0077】
図10(a)〜(h)は、障壁層及び井戸層のIn組成比の傾斜の組合せ例を示す模式図である。
図10(a)〜(h)では、縦軸にIn組成比、横軸に位置を表している。なお、これらの図では、説明を分かりやすくするために、障壁層41及び井戸層42のそれぞれ1つずつのIn組成比のプロファイルを表している。
【0078】
図10(a)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が一定、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(a)に表したIn組成比のプロファイルをP(a)とする。
【0079】
図10(b)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が一定、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(b)に表したIn組成比のプロファイルをP(b)とする。
【0080】
図10(c)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が一定の例である。図10(c)に表したIn組成比のプロファイルをP(c)とする。
【0081】
図10(d)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が一定の例である。図10(d)に表したIn組成比のプロファイルをP(d)とする。
【0082】
図10(e)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(e)に表したIn組成比のプロファイルをP(e)とする。
【0083】
図10(f)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(f)表したIn組成比のプロファイルをP(f)とする。
プロファイルP(f)は、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルである。
【0084】
図10(g)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(g)に表したIn組成比のプロファイルをP(g)とする。
【0085】
図10(h)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(h)に表したIn組成比のプロファイルをP(h)とする。
【0086】
図11は、内部量子効率を例示する図である。
図11では、図10(a)〜(h)に表したIn組成比のプロファイルP(a)〜P(h)に対応した内部量子効率IQEをシミュレーション計算した結果を表している。
【0087】
この内部量子効率の計算では、障壁層41の厚さtbを5nm、井戸層42の厚さtwを2.9nmとした。また、障壁層41のIn組成比に傾斜がある場合のIn組成比は0.00から0.04(差Δb=0.04)、井戸層42のIn組成比に傾斜がある場合のIn組成比は0.08〜0.16(差Δw=0.08)である。
いずれも、8層の障壁層41及び井戸層42を積層し、8層全ての障壁層41及び井戸層42について、図10(a)〜(h)に表したIn組成比のプロファイルとした。
【0088】
図11に表したように、8つのプロファイルP(a)〜P(h)の内部量子効率としては、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルP(f)が最もよい。
【0089】
ここで、プロファイルP(e)も、プロファイルP(f)と同様な内部量子効率を得ている。しかし、図10(e)に表したプロファイルP(e)のように、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加する構成では、障壁層41の第1方向D1に隣接する井戸層42側のIn組成比が高くなる。このため、この障壁層41の上に積層される井戸層42の結晶性に劣化が発生しやすい。
したがって、内部量子効率及び結晶性ともに良好な本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルであるプロファイルP(f)が最適である。
【0090】
図12(a)〜図13(b)は、障壁層のIn組成比と内部量子効率との関係を例示する図である。
なお、いずれの図においても、8層の障壁層41のうち最もp形半導体層50に近い8層目の障壁層41のみIn組成比を傾斜させた場合のシミュレーション結果である。また、内部量子効率IQEは、発光層40に電流量170A/cm2の電流を流した場合のシミュレーション結果である。
【0091】
図12(a)には、障壁層41のIn組成比の差Δbと内部量子効率IQEとの関係が示されている。図12(a)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率IQEが例示されている。
図12(a)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41のIn組成比の差Δbに最適値があることが分かる。また、障壁層41の厚さによって最適値が異なることも分かる。
【0092】
図12(b)には、障壁層41の単位厚さ当たりのIn組成比の差(In組成比の勾配(Δb/tb))と内部量子効率IQEとの関係が示されている。図12(b)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率が例示されている。障壁層41のIn組成比の勾配とは、In組成比の差Δbを厚さtbで除した値である。
図12(b)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41の厚さにかかわらず、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)に最適値があることが分かる。
【0093】
図13(a)には、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)と内部量子効率上昇率IQE_AVとの関係が示されている。図13(a)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率上昇率IQE_AVが例示されている。
図13(a)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41の厚さが厚いほど、内部量子効率上昇率IQE_AVが高いことが分かる。
【0094】
図13(b)には、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)と、井戸層42の単位厚さ当たりのIn組成比の差(In組成比の勾配(Δw/tw))と、の比率R((Δb/tb)/(Δw/tw))と、内部量子効率上昇率IQE_AVとの関係が示されている。図13(b)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率上昇率IQE_AVが例示されている。
図13(b)に表したシミュレーション結果によれば、比率Rに最適値があることが分かる。また、障壁層41の厚さが厚いほど、内部量子効率上昇率IQE_AVが高いことが分かる。
【0095】
図13(b)に表したシミュレーション結果から、比率Rは、例えば0.1以上0.4以下が好ましく、より好ましくは0.2以上0.3以下である。
【0096】
上記説明した実施形態及び実施例では、障壁層41及び井戸層42のIII族元素中におけるInの組成について説明したが、In以外の組成であっても適用可能である。
また、実施形態及び実施例では、発光層40にMQW構造を有する例を説明したが、SQW(Single Quantum Well)構造を有する発光層40に上記説明した障壁層41及び井戸層42のIn組成比のプロファイルを適用してもよい。
【0097】
実施形態によれば、発光効率の高い半導体発光素子が提供される。
【0098】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BαInβAlγGa1−α−β−γN(0≦α≦1,0≦β≦1,0≦γ≦1,α+β+γ≦1)なる化学式において組成比α、β及びγをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成比の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電形などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、活性層、井戸層、障壁層、電極、基板、バッファ層各要素の具体的な構成の、形状、サイズ、材質、配置関係などに関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
10…基板、11…バッファ層、20…n形半導体層、21…下地層、22…コンタクト層、30…積層体、31…第1結晶層、32…第2結晶層、40…発光層、41…障壁層、42…井戸層、50…p形半導体層、51…p形AlGaN層、52…MgドープGaN層、53…コンタクト層、60…透明電極、70…n側電極、80…p側電極、110,111,190,191…半導体発光素子、411…第1部分、412…第2部分、423…第3部分、424…第4部分、D1…第1方向
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)などの窒化物系III−V族化合物半導体は、ワイドバンドギャップというその特徴を活かし、高輝度の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)や、レーザダイオード(LD:Laser Diode)などに応用されている。
【0003】
これらの発光素子は、n形半導体層と、p形半導体層と、その間に設けられ、量子井戸層と障壁層とを有する発光層と、を有している。
このような半導体発光素子において、高い発光効率を実現することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−234545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、発光効率の高い半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る半導体発光素子は、窒化物半導体を含むn形半導体層と、窒化物半導体を含むp形半導体層と、前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられた発光層と、を備える。
前記発光層は、III族元素を含む障壁層と、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう方向に前記障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有する。
前記障壁層を、前記n形半導体層側の第1部分と、前記p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、前記第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低い。
前記井戸層を、前記n形半導体層側の第3部分と、前記p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、前記第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高い。
前記障壁層のIn組成比及び前記井戸層のIn組成比は、前記発光層に電圧を印加した状態において前記井戸層及び前記障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になるような組成比である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
【図2】実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
【図3】(a)〜(b)は、発光層のIn組成比を例示する図である。
【図4】(a)〜(d)は、エネルギーバンド及びキャリア濃度分布を例示する図である。
【図5】半導体発光素子の特性を示す図である。
【図6】(a)〜(b)は、In組成比を示す図である。
【図7】(a)〜(b)は、In組成比及びエネルギーバンドを示す図である。
【図8】(a)〜(b)は、In組成比及びエネルギーバンドを示す図である。
【図9】(a)〜(d)は、他のIn組成比を例示する模式図である。
【図10】(a)〜(h)は、In組成比の傾斜の例を示す模式図である。
【図11】内部量子効率を例示する図である。
【図12】(a)〜(b)は、内部量子効率を例示する図である。
【図13】(a)〜(b)は、内部量子効率を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
(実施形態)
図1は、実施形態に係る半導体発光素子の一部の構成を例示する模式的断面図である。
図2は、実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2に表したように、本実施形態に係る半導体発光素子110は、n形半導体層20と、p形半導体層50と、n形半導体層20とp形半導体層50との間に設けられた発光層40と、を備える。半導体発光素子110においては、発光層40と、n形半導体層20と、の間に積層体30が設けられていてもよい。
【0010】
n形半導体層20及びp形半導体層50は、窒化物半導体を含む。
発光層40は、例えば活性層である。積層体30は、例えば超格子層である。
【0011】
半導体発光素子110においては、例えばサファイヤからなる基板10の主面(例えばc面)に、例えばバッファ層11が設けられ、その上に、例えばアンドープのGaN下地層21と、n形GaNコンタクト層22と、が設けられる。n形GaNコンタクト層22は、n形半導体層20に含まれる。なお、GaN下地層21は、便宜的にn形半導体層20に含まれるものとしてもよい。
【0012】
n形GaNコンタクト層22の上には、積層体30が設けられている。積層体30においては、例えば、第1結晶層31と、第2結晶層32と、が交互に積層されている。
【0013】
積層体30の上には、発光層40(活性層)が設けられている。発光層40は、例えば多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)構造を有する。すなわち、発光層40は、複数の障壁層41及び複数の井戸層42が、交互に繰り返し積層された構造を含んでいる。障壁層41及び井戸層42の詳しい構成については後述する。
【0014】
発光層40の上には、p形AlGaN層51、p形の例えばMgドープGaN層52、及び、p形GaNコンタクト層53が、この順に設けられている。なお、p形AlGaN層51は、電子オーバフロー抑制層の機能を有する。p形AlGaN層51、MgドープGaN層52及びp形GaNコンタクト層53は、p形半導体層50に含まれる。また、p形GaNコンタクト層53の上には、透明電極60が設けられている。
【0015】
そして、n形半導体層20であるn形GaNコンタクト層22の一部、その一部に対応する積層体30、発光層40及びp形半導体層50が除去され、n形GaNコンタクト層22の上にn側電極70が設けられる。n側電極70には、例えばTi/Pt/Auの積層構造が用いられる。一方、透明電極60の上には、p側電極80が設けられる。
このように、本実施形態に係る本具体例の半導体発光素子110は、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。
【0016】
半導体発光素子110は、例えば以下のようにして製造できる。
まず、有機洗浄、酸洗浄した例えばc面サファイヤの基板10を、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)装置の反応炉に導入し、反応炉のサセプタ上で約1100℃に加熱する。これにより、基板10の表面の酸化膜が除去される。
【0017】
次に、基板10の主面(c面)の上に、30nmの厚さでバッファ層11を成長させる。さらに、バッファ層11の上に、3マイクロメートル(μm)の厚さでアンドープのGaN下地層21を成長させる。さらに、GaN下地層21の上に、2μmの厚さで、SiドープのGaNによるn形GaNコンタクト層22を成長させる。
【0018】
次に、n形GaNコンタクト層22の上に、InxGa1−xNである第1結晶層31と、InyGa1−yNである第2結晶層32と、を交互に30周期積層し、積層体30を形成する。
【0019】
次に、積層体30の上に、障壁層41と井戸層42とを交互に積層する。
さらに、最も上の障壁層41の上に、Alの組成比が0.003で5nmの厚さのAlGaN層を成長させ、この後、Alの組成比が0.1で10nmの厚さのMgドープAlGaN層51と、80nmの厚さのMgドープp形GaN層52(Mg濃度は2×1019/cm3)、及び、10nm程度の厚さの高濃度MgドープGaN層53(Mg濃度は1×1021/cm3)をそれぞれ積層させる。この後、上記の結晶が成長した基板10を、MOCVD装置の反応炉から取り出す。
【0020】
次に、上記の多層膜構造の一部をn形GaNコンタクト層22の途中までドライエッチングして露出させ、この上に、Ti/Pt/Auのn側電極70を形成する。また、高濃度MgドープGaN層53の表面上に、ITO(Indium Tin Oxide)である透明電極60を形成し、その一部に、例えば直径80μmのNi/Auによるp側電極80を形成する。これにより、半導体発光素子110が作製される。
【0021】
なお、上記においては、成膜法としてMOCVD(有機金属気相)法を用いる例について説明したが、例えば分子線エピタキシ(MBE)法やハライド気相成長(HVPE)法などの他の方法も適用可能である。
【0022】
次に、発光層40の多重量子井戸構造について説明する。
図1に表したように、発光層40の多重量子井戸構造は、複数の障壁層41(1)〜41(n)と、複数の井戸層42(1)〜42(n)と、を有する。なお、符号に含まれる”n”は層の番号に対応した2以上の整数である。
【0023】
本明細書において、複数の障壁層41(1)〜41(n)を区別せずに総称するときは障壁層41といい、複数の井戸層42(1)〜42(n)を区別せずに総称するときは井戸層42ということにする。
【0024】
複数の障壁層41は、n形半導体層20からp形半導体層50に向けて第1番目の障壁層41(1)、第2番目の障壁層41(2)、…、第(n−1)番目の障壁層41(n−1)、第n番目の障壁層41(n)を有する。
【0025】
複数の井戸層42は、n形半導体層20からp形半導体層50に向けて第1番目の井戸層42(1)、第2番目の井戸層42(2)、…、第(n−1)番目の井戸層42(n−2)、第n番目の井戸層42(n)を有する。
【0026】
障壁層41及び井戸層42は、III族元素を含む。なお、障壁層41及び井戸層42には、微量のAl等が含まれていてもよい。
井戸層42には、例えばInを含む窒化物半導体が用いられる。障壁層41のバンドギャップエネルギは、井戸層42のバンドギャップエネルギよりも大きい。
【0027】
例えば、障壁層41は、InbGa1−bN(b≧0)を含む。障壁層41の厚さは、厚さtb(ナノメートル)である。障壁層41の厚さtbは、例えば10ナノメートル(nm)以下である。
井戸層42は、InwGa1−wN(0<w<1)を含む。井戸層42の厚さは、厚さtw(ナノメートル)である。井戸層42の厚さtwは、例えば2.5nm以上6nm以下である。
【0028】
ここで、井戸層42のバンドギャップは、障壁層41のバンドギャップよりも低い。これは、例えば、障壁層41をInbGa1−bNとし、井戸層42をInwGa1−wNとする系の場合であれば、b<wと等価である。
【0029】
図3(a)〜(b)は、発光層のIn組成比のプロファイルを例示する図である。
図3(a)〜(b)において、横軸は発光層40の位置(厚さ方向の位置)を表し、縦軸はIn組成比を表している。
図3(a)には、実施形態に係る半導体発光素子110での発光層40のIn組成比のプロファイル110Pの一部が示されている。
図3(b)には、参考例に係る半導体発光素子190での発光層のIn組成比のプロファイル190Pの一部が示されている。
いずれの図でも、説明を分かりやすくするため、2つの井戸層42と、これら2つの井戸層42の間に設けられた1つの障壁層41と、のIn組成比を表している。
【0030】
図3(a)に表したように、実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成のプロファイル110Pでは、障壁層41のIII族元素中におけるInの組成比は、n形半導体層20からp形半導体層50に向かう方向(第1方向D1)に減少し、井戸層42のIII族元素中におけるInの組成比は、第1方向D1に増加する。
【0031】
すなわち、1つの障壁層41を、n形半導体層20側の第1部分411と、p形半導体層50側の第2部分412と、に分けた場合、第2部分412の厚さで平均したInの組成比は、第1部分411の厚さで平均したInの組成比よりも低くなる。
ここで、層の厚さで平均したInの組成比を、平均In組成比ということにする。
【0032】
障壁層41のIII族元素中におけるInの組成比が第1方向D1に減少すると、障壁層41のバンドギャップは、n形半導体層20に近いほど小さく、p形半導体層50に近いほど大きくなる。つまり、1つの障壁層41におけるバンドギャップは、第1方向D1に段階的に大きくなる。
【0033】
一方、1つの井戸層42を、n形半導体層20側の第3部分423と、p形半導体層50側の第4部分424と、に分けた場合、第4部分424の平均In組成比は、第3部分423の平均In組成比よりも高くなる。
【0034】
井戸層42のIII族元素中におけるInの組成比が第1方向D1に増加すると、井戸層42のバンドギャップは、n形半導体層20に近いほど大きく、p形半導体層に近いほど小さくなる。つまり、1つの井戸層42におけるバンドギャップは、第1方向D1に段階的に小さくなる。
【0035】
上記のバンドギャップの段階的な変化は、例えば障壁層41をInbGa1−bNとし、井戸層42をInwGa1−wNとする系の場合であれば、障壁層41のIn組成比bを第1方向D1に段階的に小さくし、井戸層42のIn組成比wを第1方向D1に段階的に大きくすればよい。
【0036】
このように、障壁層41におけるIII族元素中におけるInの組成比を第1方向D1に減少させ、井戸層42におけるIII族元素中におけるInの組成比を第1方向D1に増加させることで発光層40におけるバンド構造を変調し、発光層40に電圧が印加された際のバンド構造を最適化する。これにより、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率の低下を抑制して、発光効率の向上を達成する。
【0037】
図3(b)に表した参考例に係る半導体発光素子190のIn組成比のプロファイル190Pでは、障壁層41’及び井戸層42’のいずれについても、第1方向D1に向かうIn組成比が一定である。
【0038】
ここで、c軸方向に成長したウルツ鉱構造の窒化物半導体による量子井戸層において、層内に生じる内部電界は、LEDなどの発光素子の発光再結合やキャリアの注入効率を低下させる。これは、井戸層42及び42’を構成する結晶(例えば、InGaN)の格子定数と、障壁層41及び41’を構成する結晶(例えば、井戸層42’とは異なるIn組成比のInGaN)の格子定数との不整合が発光層40内の格子ひずみを生じさせ、これによってピエゾ電界が発生するためである。ピエゾ電界によって発光層40のバンド構造が変調されると、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率を低下させる。
参考例に係る半導体発光素子190では、上記のピエゾ電界によるバンド構造の変調により、発光効率が低下する。
【0039】
これに対し、実施形態に係る半導体発光素子110では、図3(a)に表したように障壁層41のIn組成比及び井戸層42のIn組成比に、第1方向D1に変化を与えることで、発光層40に電界が印加された際のバンド構造を、電子とホールとの再結合確率やキャリアの注入効率が高まるように最適化している。
【0040】
なお、複数の障壁層41及び複数の井戸層42が設けられたMQW構造において、図3(a)に表したような障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加するプロファイルは、複数の障壁層41及び複数の井戸層42の全てに適用しても、一部の障壁層41及び一部の井戸層42に適用してもよい。
【0041】
次に、実施形態に係る半導体発光素子110の障壁層41及び井戸層42の具体例について説明する。
なお、発光層40は、複数の障壁層41と、複数の井戸層42と、を有するが、説明を簡単にするために、複数の障壁層41のそれぞれにおける平均In組成比は互いに同じであり、複数の障壁層41の厚さも互いに同じである場合として説明する。また、同様に、複数の井戸層42のそれぞれにおける平均In組成比は互いに同じであり、複数の井戸層42の厚さも互いに同じであるとして説明する。
【0042】
具体例に係る半導体発光素子110においては、障壁層41の厚さtbは、10nm以下と薄くする。これにより、p形半導体層50から注入されるホールが効率的に発光層40に効率的に供給され、半導体発光素子110の発光効率が高まる。また、半導体発光素子110の動作電圧は、実用上要求されている程度に低下する。
【0043】
本実施形態に係る半導体発光素子110においては、井戸層42の厚さtwは、厚いほどよく、望ましくは3nm以上とし、より好ましくは4nm以上とする。
【0044】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、1つの障壁層41におけるn形半導体層20側の界面でのIn組成比をbnとし、障壁層41のp形半導体層50側の界面でのIn組成比をbpとしたとき、bnを0.02以上とすることが望ましく、より好ましくは0.04程度である。
【0045】
1つの障壁層41では、第1方向D1に向かって、このIn組成比bを段階的に減少させる。なお、p形半導体層50側の界面におけるIn組成比bpは0.00にすることが望ましい。In組成比bpが低いほど、障壁層41の結晶性を劣化させずに発光効率の向上が達成される。
また、In組成比bnとIn組成比bpとの差の絶対値(Δb)は、例えば0.02よりも大きく、0.06よりも小さいことが好ましく、より好ましくは0.04程度である。
【0046】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、1つの井戸層42(例えば、障壁層41のp形半導体層50側に隣り合う井戸層42)におけるn形半導体層20側の界面でのIn組成比をwnとし、井戸層42のp形半導体層50側の界面でのIn組成比をwpとしたとき、青色に発光するLEDであれば、In組成比wnを0.10以下とすることが望ましく、より好ましくは0.06程度である。
【0047】
1つの井戸層42では、第1方向D1に向かって、このIn組成比wを段階的に増加させる。なお、p形半導体層50側の界面におけるIn組成比wpを0.14以上にすることが望ましく、より望ましくは0.18程度である。このような組成比変調を施すことにより、井戸層42の結晶性を劣化させずに発光効率の向上を図る。
また、In組成比wnとIn組成比wpとの差の絶対値(Δw)は、例えば0.04よりも大きく0.12よりも小さいことが望ましく、より好ましく0.06以上、さらに好ましくは0.10程度である。
【0048】
上記のような、障壁層41の厚さ及びIn組成比の段階的な変化と、井戸層42の厚さ及びIn組成比の段階的な変化と、によって生ずる相補的なエネルギーバンドの構成によって、半導体発光素子110の高発光効率が実現される。
【0049】
図4(a)〜(d)は、エネルギーバンド図及びキャリア濃度分布を例示する図である。
図4(a)〜(d)のいずれの図においても、横軸は位置(厚さ方向の位置)を表している。図4(a)〜(d)の横軸では、p形半導体層50側の3つの井戸層42(n)、42(n−1)及び42(n−2)と、これらの間の2つの障壁層41(n)及び41(n−1)を含む一部の位置が示されている。
また、図4(a)は伝導体のエネルギーバンド図、図4(b)は価電子帯のエネルギーバンド図、図4(c)は電子の濃度、図4(d)はホールの濃度を示している。
図4(a)〜(d)においては、それぞれ、図3(a)に表した本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイル110Pの場合と、図3(b)に表した参考例に係る半導体発光素子190のIn組成のプロファイル190Pの場合と、を示している。
【0050】
なお、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイル110Pとしては、井戸層42のIn組成比wn=0.10、In組成比wp=0.18、すなわちΔw=0.08、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04である。また、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0051】
また、参考例に係る半導体発光素子190のIn組成比のプロファイル190Pとしては、井戸層42’のIn組成比w=0.13、障壁層41’のIn組成比b=0.00である。また、井戸層42’の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0052】
図4(a)及び(b)に表したように、参考例に係るIn組成のプロファイル190Pを適用した場合に比べて、本実施形態に係るIn組成のプロファイル110Pを適用すると、伝導体及び価電子帯のそれぞれのエネルギーバンド図に変化が生じる。
特に、図4(b)に表した価電子帯のエネルギーバンド図に大きな変化が現れている。本実施形態に係るIn組成のプロファイル110Pを適用することにより、内部電界による発光層40での価電子帯の変調が抑制される。すなわち、障壁層41及び井戸層42のIn組成比の互いの増減によって価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になる。
【0053】
これによって、図4(d)に表したように、井戸層42と障壁層41との界面でのホールの局在が抑制される。また、井戸層42と障壁層41とで電子とホールとの空間的な解離が抑制される。さらに、ホールのn形半導体層20側の井戸層42への注入効率が増大する。これらの結果によって、本実施形態に係る半導体発光素子110では、参考例に係る半導体発光素子190に比べて、飛躍的に発光効率が高まる。
【0054】
以下、上記のような条件を見いだす基となった検討結果について説明する。
この検討では、発光層40の構成(障壁層41の厚さやIn組成比の変調のさせ方、井戸層42の厚さやIn組成比の変調のさせ方)を変えて半導体発光素子を構成し、その各場合の内部量子効率を比較する。
【0055】
(実施例)
実施例に係る半導体発光素子111において、障壁層41と井戸層42との数は8周期である。
半導体発光素子111において、障壁層41のn形半導体層20側の界面のInの組成比bnは0.04であり、p形半導体層50側の界面のIn組成比bpは0.00であり、層内のIn組成比は線形に変化する。
【0056】
また、半導体発光素子111において、井戸層42のn形半導体層20側の界面のIn組成比wnは0.08であり、p形半導体層50側の界面のIn組成比wpは0.18であり、層内のIn組成比は線形に変化する。
【0057】
また、参考例に係る半導体発光素子191において、障壁層41’と井戸層42’との数は8周期である。参考例に係る半導体発光素子191では、障壁層41’のIn組成比bは0.00で層内で一定(すなわちGaN)であり、井戸層42’のIn組成比wは0.13で層内で一定(すなわちIn0.13Ga0.87N)である。
【0058】
半導体発光素子110及び190のいずれにおいても、障壁層41の厚さtbは5nmで一定であり、井戸層42の厚さtwは3nmで一定である。
【0059】
図5は、半導体発光素子に関する検討結果を例示する図である。
図5では、横軸に電流I(アンペア:A)、縦軸に内部量子効率QEを表している。
図5には、実施形態に係る半導体発光素子111の内部量子効率と、参考例に係る半導体発光素子191の内部量子効率が表示されている。
なお、図5において、内部量子効率は、参考例に係る半導体発光素子191での内部量子効率のピークトップの値を1とした相対値で表示されている。
【0060】
図5に表したように、実施形態に係る半導体発光素子111の内部量子効率は、参考例に係る半導体発光素子191の内部量子効率に比べて明らかに上昇することがわかる。
【0061】
図6(a)〜(b)は、3次元アトムプローブによるIn組成比の分析結果の一例を示す図である。
図6(a)〜(b)に示す横軸は位置、縦軸はIn組成比である。
図6(a)〜(b)には、第n番目の井戸層42(n)、第n番目の障壁層41(n)及び第(n−1)番目の井戸層42(n−1)のIn組成比が表されている。
【0062】
図6(a)には、井戸層42(InwGa1−wN)のIn組成比wを第1方向D1に増加させた例が示されている。この例では、第n番目の井戸層42(n)のIn組成比wは、第1方向D1に0.08から0.12に増加している。
【0063】
図6(b)には、障壁層41(InbGa1−bN)のIn組成比bを第1方向D1に減少させ、井戸層42(InwGa1−wN)のIn組成比wを第1方向D1に増加させた例である。この例では、第n番目の障壁層41(n)のIn組成比bは、第1方向D1に0.07から0.03に減少し、第n番目の井戸層42(n)のIn組成比wは、第1方向D1に0.14から0.16に増加している。
【0064】
図6(a)及び(b)に表したように、障壁層41のIn組成比b及び井戸層42のIn組成比wは、微小な増減を含みながら減少または増加する。実施形態において、障壁層41のIn組成比bが減少すること、及び井戸層42のIn組成比wが増加することには、このような微小な増減を含む減少または増加も含まれる。
【0065】
図7(a)〜図8(b)は、井戸層のIn組成比の変化によるエネルギーバンド図の変化について示す図である。
【0066】
図7(a)には、井戸層42のIn組成比wn=0.11、In組成比wp=0.15、すなわちΔw=0.04、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04の場合のIn組成比のプロファイルが表されている。なお、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0067】
図7(b)には、図7(a)に表したIn組成比のプロファイルでの価電子帯のエネルギーバンド図が表されている。なお、図7(b)では、発光層40に流れる電流量を変化させた場合のエネルギーバンド図が表されている。電流量J1は74A/cm2、電流量J2は184A/cm2、電流量J3は280A/cm2である。
【0068】
図7(a)及び(b)に表したように、電流量J1〜J3の変化によるエネルギーバンド図の変化は少ない。一方、In組成比の差Δwが0.04の場合には、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状にならない。
【0069】
図8(a)には、井戸層42のIn組成比wn=0.07、In組成比wp=0.19、すなわちΔw=0.12、障壁層41のIn組成比bp=0.00、In組成比bn=0.04、すなわちΔb=0.04の場合のIn組成比のプロファイルが表されている。なお、井戸層42の厚さtwは3nm、障壁層41の厚さtbは5nmである。
【0070】
図8(b)には、図8(a)に表したIn組成比のプロファイルでの価電子帯のエネルギーバンド図が表されている。なお、図8(b)では、発光層40に流れる電流量を変化させた場合のエネルギーバンド図が表されている。電流量J4は82A/cm2、電流量J5は176A/cm2、電流量J3は268A/cm2である。
【0071】
図8(a)及び(b)に表したように、電流量J4〜J6の変化によるエネルギーバンド図の変化は少ない。一方、In組成比の差Δwが0.12の場合には、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状にならない。
【0072】
図4(a)〜(d)に表した本実施形態に係る半導体発光素子110では、In組成比の差Δwが0.08である。すなわち、半導体発光素子110におけるIn組成比の差Δwは、図7(a)〜(b)に表したIn組成比の差Δwと、図8(a)〜(b)に表したIn組成比の差Δwと、の間である。
この場合には、図4(c)に表したように、価電子帯のエネルギーバンド図は矩形状になる。
上記の結果から、井戸層42のIn組成比の差Δwは、0.04よりも大きく、0.12よりも小さいことが望ましいことが分かる。
【0073】
図9(a)〜(d)は、In組成比の増減のプロファイルを例示する模式図である。
本実施形態に係る半導体発光素子110では、障壁層41のIn組成比は第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比は第1方向D1に増加する。
図9(a)〜(d)では、このIn組成比の増減の例を模式的に表している。
【0074】
図9(a)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に曲線的に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に曲線的に増加する例である。
図9(b)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に階段状に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に階段状に増加する例である。
【0075】
図9(c)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に微小な増減を繰り返しながら減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に微小な増減を繰り返しながら増加する例である。
図9(d)に表したIn組成比の増減のプロファイルでは、障壁層41及び井戸層42の境界位置において、In組成比の変化に鈍りが生じている例である。
【0076】
上記図9(a)〜(d)に表したいずれの例でも、障壁層41のIn組成比は第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比は第1方向D1に増加することに含まれる。
なお、In組成比の増減のプロファイルは上記以外であってもよい。また、図9(a)〜(d)のプロファイルを適宜組み合わせたものであってもよい。
【0077】
図10(a)〜(h)は、障壁層及び井戸層のIn組成比の傾斜の組合せ例を示す模式図である。
図10(a)〜(h)では、縦軸にIn組成比、横軸に位置を表している。なお、これらの図では、説明を分かりやすくするために、障壁層41及び井戸層42のそれぞれ1つずつのIn組成比のプロファイルを表している。
【0078】
図10(a)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が一定、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(a)に表したIn組成比のプロファイルをP(a)とする。
【0079】
図10(b)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が一定、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(b)に表したIn組成比のプロファイルをP(b)とする。
【0080】
図10(c)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が一定の例である。図10(c)に表したIn組成比のプロファイルをP(c)とする。
【0081】
図10(d)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が一定の例である。図10(d)に表したIn組成比のプロファイルをP(d)とする。
【0082】
図10(e)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(e)に表したIn組成比のプロファイルをP(e)とする。
【0083】
図10(f)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に増加する例である。図10(f)表したIn組成比のプロファイルをP(f)とする。
プロファイルP(f)は、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルである。
【0084】
図10(g)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(g)に表したIn組成比のプロファイルをP(g)とする。
【0085】
図10(h)に表したIn組成比の傾斜の例においては、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に減少し、井戸層42のIn組成比が第1方向D1に減少する例である。図10(h)に表したIn組成比のプロファイルをP(h)とする。
【0086】
図11は、内部量子効率を例示する図である。
図11では、図10(a)〜(h)に表したIn組成比のプロファイルP(a)〜P(h)に対応した内部量子効率IQEをシミュレーション計算した結果を表している。
【0087】
この内部量子効率の計算では、障壁層41の厚さtbを5nm、井戸層42の厚さtwを2.9nmとした。また、障壁層41のIn組成比に傾斜がある場合のIn組成比は0.00から0.04(差Δb=0.04)、井戸層42のIn組成比に傾斜がある場合のIn組成比は0.08〜0.16(差Δw=0.08)である。
いずれも、8層の障壁層41及び井戸層42を積層し、8層全ての障壁層41及び井戸層42について、図10(a)〜(h)に表したIn組成比のプロファイルとした。
【0088】
図11に表したように、8つのプロファイルP(a)〜P(h)の内部量子効率としては、本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルP(f)が最もよい。
【0089】
ここで、プロファイルP(e)も、プロファイルP(f)と同様な内部量子効率を得ている。しかし、図10(e)に表したプロファイルP(e)のように、障壁層41のIn組成比が第1方向D1に増加する構成では、障壁層41の第1方向D1に隣接する井戸層42側のIn組成比が高くなる。このため、この障壁層41の上に積層される井戸層42の結晶性に劣化が発生しやすい。
したがって、内部量子効率及び結晶性ともに良好な本実施形態に係る半導体発光素子110のIn組成比のプロファイルであるプロファイルP(f)が最適である。
【0090】
図12(a)〜図13(b)は、障壁層のIn組成比と内部量子効率との関係を例示する図である。
なお、いずれの図においても、8層の障壁層41のうち最もp形半導体層50に近い8層目の障壁層41のみIn組成比を傾斜させた場合のシミュレーション結果である。また、内部量子効率IQEは、発光層40に電流量170A/cm2の電流を流した場合のシミュレーション結果である。
【0091】
図12(a)には、障壁層41のIn組成比の差Δbと内部量子効率IQEとの関係が示されている。図12(a)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率IQEが例示されている。
図12(a)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41のIn組成比の差Δbに最適値があることが分かる。また、障壁層41の厚さによって最適値が異なることも分かる。
【0092】
図12(b)には、障壁層41の単位厚さ当たりのIn組成比の差(In組成比の勾配(Δb/tb))と内部量子効率IQEとの関係が示されている。図12(b)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率が例示されている。障壁層41のIn組成比の勾配とは、In組成比の差Δbを厚さtbで除した値である。
図12(b)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41の厚さにかかわらず、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)に最適値があることが分かる。
【0093】
図13(a)には、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)と内部量子効率上昇率IQE_AVとの関係が示されている。図13(a)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率上昇率IQE_AVが例示されている。
図13(a)に表したシミュレーション結果によれば、障壁層41の厚さが厚いほど、内部量子効率上昇率IQE_AVが高いことが分かる。
【0094】
図13(b)には、障壁層41のIn組成比の勾配(Δb/tb)と、井戸層42の単位厚さ当たりのIn組成比の差(In組成比の勾配(Δw/tw))と、の比率R((Δb/tb)/(Δw/tw))と、内部量子効率上昇率IQE_AVとの関係が示されている。図13(b)では、障壁層41の厚さが5nmの場合と、10nmの場合での内部量子効率上昇率IQE_AVが例示されている。
図13(b)に表したシミュレーション結果によれば、比率Rに最適値があることが分かる。また、障壁層41の厚さが厚いほど、内部量子効率上昇率IQE_AVが高いことが分かる。
【0095】
図13(b)に表したシミュレーション結果から、比率Rは、例えば0.1以上0.4以下が好ましく、より好ましくは0.2以上0.3以下である。
【0096】
上記説明した実施形態及び実施例では、障壁層41及び井戸層42のIII族元素中におけるInの組成について説明したが、In以外の組成であっても適用可能である。
また、実施形態及び実施例では、発光層40にMQW構造を有する例を説明したが、SQW(Single Quantum Well)構造を有する発光層40に上記説明した障壁層41及び井戸層42のIn組成比のプロファイルを適用してもよい。
【0097】
実施形態によれば、発光効率の高い半導体発光素子が提供される。
【0098】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BαInβAlγGa1−α−β−γN(0≦α≦1,0≦β≦1,0≦γ≦1,α+β+γ≦1)なる化学式において組成比α、β及びγをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成比の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むものや、導電形などを制御するために添加される各種のドーパントのいずれかをさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0099】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、半導体発光素子に含まれるn形半導体層、p形半導体層、活性層、井戸層、障壁層、電極、基板、バッファ層各要素の具体的な構成の、形状、サイズ、材質、配置関係などに関して当業者が各種の変更を加えたものであっても、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
10…基板、11…バッファ層、20…n形半導体層、21…下地層、22…コンタクト層、30…積層体、31…第1結晶層、32…第2結晶層、40…発光層、41…障壁層、42…井戸層、50…p形半導体層、51…p形AlGaN層、52…MgドープGaN層、53…コンタクト層、60…透明電極、70…n側電極、80…p側電極、110,111,190,191…半導体発光素子、411…第1部分、412…第2部分、423…第3部分、424…第4部分、D1…第1方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物半導体を含むn形半導体層と、
窒化物半導体を含むp形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられた発光層と、
を備え、
前記発光層は、III族元素を含む障壁層と、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう方向に前記障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有し、
前記障壁層を、前記n形半導体層側の第1部分と、前記p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、前記第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低く、
前記井戸層を、前記n形半導体層側の第3部分と、前記p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、前記第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高く、
前記障壁層のIn組成比及び前記井戸層のIn組成比は、前記発光層に電圧を印加した状態において前記井戸層及び前記障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になような組成比である半導体発光素子。
【請求項2】
前記障壁層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記方向に減少し、
前記井戸層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記方向に増加する請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記障壁層の単位厚さ当たりのIn組成比の差と、前記井戸層の単位厚さ当たりのIn組成比の差と、の比率は、0.1以上0.4以下である請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記障壁層における前記n形半導体層側のIn組成比と前記p形半導体層側のIn組成比との差は、0.02よりも大きく0.06よりも小さい請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記井戸層における前記n形半導体層側のIn組成比と前記p形半導体層側のIn組成比との差は、0.04よりも大きく0.12よりも小さい請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記障壁層の厚さは、10ナノメートル以下であり、
前記井戸層の厚さは、2.5ナノメートル以上6ナノメートル以下である請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
複数の前記障壁層が設けられ、
複数の前記井戸層が設けられ、
前記複数の障壁層と、前記複数の井戸層とは、交互に積層される請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記複数の障壁層のすべてにおいて、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に減少し、
前記複数の井戸層のすべてにおいて、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に増加する請求項7記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記複数の障壁層の一部において、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に減少し、
前記複数の井戸層の一部において、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に増加する請求項7記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記障壁層は、InbGa1−bN(b≧0)を含み、
前記井戸層は、InwGa1−wN(w>b)を含み、
前記障壁層におけるInの組成比は、前記方向に減少し、
前記井戸層におけるInの組成比は、前記方向に増加する請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、線形状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、階段状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、曲線状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項1】
窒化物半導体を含むn形半導体層と、
窒化物半導体を含むp形半導体層と、
前記n形半導体層と前記p形半導体層との間に設けられた発光層と、
を備え、
前記発光層は、III族元素を含む障壁層と、前記n形半導体層から前記p形半導体層に向かう方向に前記障壁層と積層されIII族元素を含む井戸層と、を有し、
前記障壁層を、前記n形半導体層側の第1部分と、前記p形半導体層側の第2部分と、に分けた場合、前記第2部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第1部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも低く、
前記井戸層を、前記n形半導体層側の第3部分と、前記p形半導体層側の第4部分と、に分けた場合、前記第4部分のIII族元素中におけるIn組成比は、前記第3部分のIII族元素中におけるIn組成比よりも高く、
前記障壁層のIn組成比及び前記井戸層のIn組成比は、前記発光層に電圧を印加した状態において前記井戸層及び前記障壁層の価電子帯のエネルギーバンド図が矩形状になような組成比である半導体発光素子。
【請求項2】
前記障壁層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記方向に減少し、
前記井戸層のIII族元素中におけるIn組成比は、前記方向に増加する請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記障壁層の単位厚さ当たりのIn組成比の差と、前記井戸層の単位厚さ当たりのIn組成比の差と、の比率は、0.1以上0.4以下である請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記障壁層における前記n形半導体層側のIn組成比と前記p形半導体層側のIn組成比との差は、0.02よりも大きく0.06よりも小さい請求項1〜3のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記井戸層における前記n形半導体層側のIn組成比と前記p形半導体層側のIn組成比との差は、0.04よりも大きく0.12よりも小さい請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記障壁層の厚さは、10ナノメートル以下であり、
前記井戸層の厚さは、2.5ナノメートル以上6ナノメートル以下である請求項1〜5のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
複数の前記障壁層が設けられ、
複数の前記井戸層が設けられ、
前記複数の障壁層と、前記複数の井戸層とは、交互に積層される請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記複数の障壁層のすべてにおいて、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に減少し、
前記複数の井戸層のすべてにおいて、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に増加する請求項7記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記複数の障壁層の一部において、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に減少し、
前記複数の井戸層の一部において、III族元素中におけるIn組成比が、前記方向に増加する請求項7記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記障壁層は、InbGa1−bN(b≧0)を含み、
前記井戸層は、InwGa1−wN(w>b)を含み、
前記障壁層におけるInの組成比は、前記方向に減少し、
前記井戸層におけるInの組成比は、前記方向に増加する請求項1〜9のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項11】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、線形状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項12】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、階段状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項13】
前記障壁層におけるIn組成比及び前記井戸層におけるIn組成比は、曲線状に変化する請求項1〜10のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−84978(P2013−84978A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277463(P2012−277463)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2011−224365(P2011−224365)の分割
【原出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2011−224365(P2011−224365)の分割
【原出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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