説明

半導体素子の電極パッド評価方法

【課題】 ワイヤボンディングする前の電極パッドの良否を適切に評価する。
【解決手段】 ワイヤボンディングする電極パッドの良否を評価する半導体素子の電極パッド評価において、電極パッド1,2に光を照射し電極パッド1,2からの光の反射率を求め、該反射率によって電極パッド1,2を評価する。ワイヤボンディングしたときのワイヤボンディング材料と電極パッド材料との合金化率と反射率との相関関係を予め破壊検査によって求めておき、前記反射率で良否を判定する閾値を前記相関関係から決める。前記反射率を求める光の波長は紫外光を含む全波長(250nm〜830nm)であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子をパッケージ化するときワイヤボンディングされる電極パッドの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子をパッケージ化するとき、パッケージ側に設けられる端子と半導体素子側に設けられる電極パッドとを金線等でワイヤボンディングするが、電極パッドの表面が荒れていると、ワイヤボンディングが不良になってしまう。
【0003】
例えば、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子は、半導体基板にフォトダイオードや信号読出回路、電極パッド等を集積回路技術を用いて形成した後、その上に、カラーフィルタ層,平坦化層,マイクロレンズ層等の有機材料層を何層も積層し、1層積層する毎に、電極パッド上に形成された有機材料層をフォトエッチングで除去する工程を繰り返す。このため、電極パッドは何回も現像液と水と光に曝されて光電池効果により表面が荒れてしまい、また、アルミ層の膜厚も薄くなってしまう。
【0004】
斯かる電極パッドの良否をワイヤボンディングする前に評価する適切な方法が従来はなく、電極パッドにワイヤボンディングした後の後工程により、その良否が判定される様になっている。
【0005】
尚、電極パッドに関連する従来技術として、下記特許文献1記載のものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平7―312418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体素子の電極パッドの良否をワイヤボンディングする前に適切に評価できれば、半導体素子の歩留まり予測が可能となり、また、不良品の市場への流出を防止可能になる。更に、評価結果を前工程にフィードバックすることで、半導体素子の製造歩留まりを向上させ、コストダウンを図ることも可能になる。
【0008】
本発明の目的は、ワイヤボンディングする前に半導体素子の電極パッドを適切に評価することができる半導体素子の電極パッド評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体素子の電極パッド評価方法は、ワイヤボンディングする電極パッドの良否を評価する半導体素子の電極パッド評価方法において、前記電極パッドに光を照射し該電極パッドからの光の反射率を求め、該反射率によって該電極パッドを評価することを特徴とする。
【0010】
本発明の半導体素子の電極パッド評価方法は、ワイヤボンディングしたときのワイヤボンディング材料と電極パッド材料との合金化率と前記反射率との相関関係を予め破壊検査によって求めておき、前記反射率で良否を判定する閾値を前記相関関係から決めることを特徴とする。
【0011】
本発明の半導体素子の電極パッド評価方法は、前記反射率を求める光の波長が250nm〜830nm以下であることを特徴とする。
【0012】
本発明の半導体素子の電極パッド評価方法は、前記半導体素子が固体撮像素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電極パッドの良否をワイヤボンディング前に非破壊的に評価できるため、半導体素子の歩留まり予測が可能となり、また、不良品の市場への流出が防止でき、更に、評価結果を前工程にフィードバックすることで、半導体素子の製造歩留まりを向上させコストダウンを図ることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、電極パッドを形成する一般的材料であるアルミ(Al)膜に光を照射したときの反射率と照射する光の波長との関係を例示するグラフである。2つの電極パッドに対して、固体撮像素子を製造するときと同様に、有機材料層を積層しその後にフォトエッチングで電極パッド上の有機材料層を除去する工程を何回か繰り返す。
【0016】
このフォトエッチング時の遮光状態が悪いと、現像液と水と光とに曝された電極パッドは光電池効果によって腐食,変質が進むため不良品となる確率が高くなり、遮光状態が良好であると現像液と水に曝されるだけのため電極パッドの腐食や変質は進まず、良品となる確率は高くなる。良品の電極パッドに光を照射したときの反射率特性が特性線Iであり、不良品の電極パッドに光を照射したときの反射率特性が特性線IIである。
【0017】
この図1のグラフでは、波長250nm〜830nmにおける反射率を示しており、図示する例では、600nm以下で特性線I,IIで反射率に差がでてきている。特に、波長400nm以下の短波長領域においては、特性線I,IIの差が確実且つ顕著となり、光の反射率が電極パッドの良品,不良品の評価に使えることを示している。
【0018】
図2は、電極パッドに対して金線をワイヤボンディングした後に金線を除去したときの写真を図として表したものである。図2(a)は、全波長域(紫外光を含む波長250nm〜830nm)の反射率の平均値が73.9%である電極パッド1を示し、図2(b)はその反射率が38.0%の電極パッド2を示している。
【0019】
図中の破線で示す丸3,4は、ワイヤボンディングした範囲を示し、丸3,4中の黒い(ハッチングを施した)部分5,6は、電極パッド1,2の材料であるアルミ(Al)とワイヤボンディング材料である金線とが合金化した範囲を示している。
【0020】
電極パッドの表面状態が良いと、アルミと金線とが合金化する面積が増えて電気接続が良好になるが、電極パッドの表面が荒れると、合金化する面積が狭くなって電気接続が不良となる。図中に示す合金化率とは、破線で示す丸3(または4)の面積に対する合金化した黒い部分5(または6)の面積割合を示しており、反射率の高い電極パッド1では合金化率が45.0%であるのに対し、反射率の低い電極パッド2では合金化率は26.4%となっている。
【0021】
合金化率は、ワイヤボンディングの良否を示す評価値であるが、金線を電極パッドから引き外さないと検出できない値すなわち破壊検査によって評価される値である。
【0022】
図1,図2で説明した通り、全波長250nm〜830nm(特に波長400nm以下)の光の反射率が高い電極パッド1は、合金化率が高いため良品の電極パッドであると評価でき、反射率が低い電極パッド2は合金化率が低いため不良品の電極パッドであると評価できる。
【0023】
図3は、合金化率と反射率との相関を示す図である。図中の黒丸の各点が夫々実験データを示し、直線IIIが最小二乗法によって求めた相関グラフである。良品と不良品とを分ける合金化率の閾値は、半導体素子の種類によって異なるため一律に論ずることはできないが、図示する例では、良品,不良品を分ける合金化率の閾値を40%としている。
【0024】
上述した様に、合金化率は破壊検査を行わなければ得られない数値であるが、本実施形態の評価方法によれば、全波長250nm〜830nmの光の反射率を光学顕微鏡や反射率測定器等を用いて非破壊的にモニタでき、図3に示す例では、反射率が61.7%以上であれば、合金化率40%以上のワイヤボンディングが行われていると評価することができることを示している。
【0025】
評価対象とする半導体素子の種類は様々であるが、特に、固体撮像素子の電極パッドを評価する場合には、固体撮像素子が半導体ウェハ上に形成された段階で行われるウェハテストで各固体撮像素子の受光面にテスト用の光を照射してシェーディングの有無や画素欠陥の有無等を検査するため、このとき一緒に電極パッドの状態も評価すれば、評価を短時間で行うことができ好適である。
【0026】
尚、反射率を求める照射光は、250nm〜830nmでの反射率の平均値を用いているが、400nm以下の短波長領域を用いることでも良い。
【0027】
また、上述した実施形態では、電極パッドの腐食,変質を例に説明したが、電極パッドに異物が混入した場合や割れ等の欠陥が発生した場合でも本実施形態は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明に係る電極パッド評価方法は、半導体素子を破壊検査することなく電極パッドの適切な評価を行うことができるため、半導体素子の製造工程に適用すると有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る半導体素子の電極パッド評価方法を説明する電極パッドからの光の反射率と波長との関係を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態に係る半導体素子の電極パッド評価方法を説明する電極パッドの合金化率を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る半導体素子の電極パッド評価方法を説明する電極パッドの反射率と合金化率との相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0030】
1 良品の電極パッド
2 不良品の電極パッド
3,4 ワイヤボンディング範囲
5,6 合金化した部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤボンディングする電極パッドの良否を評価する半導体素子の電極パッド評価方法において、前記電極パッドに光を照射し該電極パッドからの光の反射率を求め、該反射率によって該電極パッドを評価することを特徴とする半導体素子の電極パッド評価方法。
【請求項2】
ワイヤボンディングしたときのワイヤボンディング材料と電極パッド材料との合金化率と前記反射率との相関関係を予め破壊検査によって求めておき、前記反射率で良否を判定する閾値を前記相関関係から決めることを特徴とする請求項1に記載の半導体素子の電極パッド評価方法。
【請求項3】
前記反射率を求める光の波長が250nm〜830nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体素子の電極パッド評価方法。
【請求項4】
前記半導体素子が固体撮像素子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体素子の電極パッド評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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