説明

半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置

【課題】終端回路から半導体素子に高周波信号の反射波が逆流して半導体素子が誤動作するのを防ぐことができる半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置を提供すること。
【解決手段】 終端用回路基板8は、その上面に一端が半導体素子5に電気的に接続され他端が終端抵抗8dを介して接地される高周波信号を伝送する線路導体8aと、一端が線路導体8aの途中に接続され他端が直流電源に接続される直流バイアス供給用のバイアス線路8cとを具備しており、バイアス線路8cは、その途中に線路導体8aの特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体8eが挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号で作動する半導体素子を収納するための半導体素子収納用パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信分野や、マイクロ波帯、ミリ波帯などの高周波信号分野において用いられる各種半導体素子を収納する半導体素子収納用パッケージ(以下半導体パッケージともいう)には、半導体素子を電気的に接地させるための線路導体が設けられている。この半導体パッケージを図6に断面図で示す。同図において101は基体、102は枠体、106は中継用回路基板、108は終端用回路基板である。また、図7は終端用回路基板108の平面図であり、図8は図7の終端用回路基板108の等価回路図である。図7,図8において、108aは線路導体、108cはバイアス線路、108dは終端抵抗、108eは抵抗体、108fは終端用回路基板108の下面の接地導体層108bと線路導体108cとを接続する側面導体である。
【0003】
基体101は鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金や銅(Cu)−タングステン(W)の焼結材料等から成る四角形状の板状体であり、その上側主面のほぼ中央部に、IC,LSI,半導体レーザー(LD),フォトダイオード(PD)などの半導体素子105や中継用回路基板106、終端用回路基板108を載置する載置部101aが形成されている。載置部101aには半導体素子105が、例えばアルミナ(Al),窒化アルミニウム(AlN),ムライト(3Al・2SiO)などのセラミックから成る中継用回路基板106に搭載された状態で載置固定される場合もある。中継用回路基板106や終端用回路基板108の下面には、それぞれ接地導体層106b,接地導体層108bが被着形成されており、銀(Ag)ろう、Ag−銅(Cu)ろう等のろう材や半田によって接地導体層106b,108bと載置部101aとが強固に接着固定される。
【0004】
なお、載置部101aに搭載された半導体素子105は、その電極が中継用回路基板106に被着形成されている中継用回路基板106の高周波信号を伝送する線路導体106aと終端用回路基板108の高周波信号を伝送する線路導体108aの一端にそれぞれボンディングワイヤ107a,107bを介して電気的に接続されている。
【0005】
終端用回路基板108の線路導体108aは、終端抵抗108dおよび側面導体108fを介して接地導体108bに接続されることにより、他端が電気的に接地されている。終端抵抗108dは、線路導体108aに流れる高周波信号が接地導体に接地されることにより生じる高周波信号の反射を防ぎ、この反射波が半導体素子105に逆流して半導体素子105が誤動作することを防ぐ。
【0006】
また、線路導体108aには半導体素子105を駆動するための直流バイアス供給用のバイアス線路108cの一端が接続され、バイアス線路108cの他端は外部導通端子(図示せず)を介して外部回路(図示せず)のバイアス供給配線に接続される。バイアス線路108cには線路導体108aを流れる高周波信号が流れ込むことを防ぐために抵抗体108eが挿入されている。なお、一般に高周波信号の流れ込みを防ぐためにはコイルが適しているが、コイルは大きなスペースを必要とするため、小型化が可能な抵抗体108eが用いられている。
【0007】
そして、基体101、枠体102から成る容器内部に半導体素子105を収容し、枠体102の上面に蓋体104をろう付けやシームウエルド法などの溶接法により接合して容器内部を気密に封止することによって製品としての半導体装置とされる。
【特許文献1】特開2002−319645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の光通信分野やマイクロ波,ミリ波帯用の高周波用半導体素子105を搭載した上記従来の半導体パッケージにおいては、終端用回路基板108の線路導体108aを伝わる高周波信号の一部が、終端用回路基板108の線路導体108aに接続されたバイアス線路108cにも分岐して流れ込むのを抵抗体108eで阻止するのが困難になり、分岐してバイアス線路108cに流れ込んだ高周波信号の分が損失となったり、線路導体108aにインピーダンスの異なるバイアス線路108cの一端が接続されることにより線路導体108aのインピーダンスが変わって高周波信号が反射されて損失を生じたりするという問題点があった。
【0009】
また、線路導体108aのインピーダンスが変わることにより反射された高周波信号の反射波が半導体素子105に逆流して半導体素子105に誤動作を発生させるという問題点を有していた。
【0010】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、終端回路から半導体素子に高周波信号の反射波が逆流して半導体素子が誤動作するのを防ぐことができる半導体素子収納用パッケージおよび半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導体素子収納用パッケージは、上側主面に半導体素子および中継用回路基板および終端用回路基板を載置するための載置部を有する基体と、この基体の前記上側主面の外周部に前記載置部を囲むように接合された枠体と、前記載置部に載置された前記中継用回路基板および前記終端用回路基板とを具備した半導体素子収納用パッケージにおいて、前記終端用回路基板は、その上面に一端が前記半導体素子に電気的に接続され他端が終端抵抗を介して接地される高周波信号を伝送する線路導体と、一端が前記線路導体の途中に接続され他端が直流電源に接続された直流バイアス供給用のバイアス線路とを具備しており、このバイアス線路は、その途中に前記線路導体の特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体が挿入されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の半導体素子収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記バイアス線路は、その前記一端から前記抵抗体までの部位と前記抵抗体から前記他端までの部位のうち長い方の長さが、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の半導体素子収納用パッケージにおいて、好ましくは、前記抵抗体は複数の抵抗体部分が接続されて成り、前記バイアス線路は、その前記一端からそれに最も近い前記抵抗体部分までの部位と前記複数の抵抗体部分の間の部位と前記他端に最も近い抵抗体部分から前記他端までの部位とのうち最も長い部位の長さが、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の半導体装置は、上記本発明の半導体素子収納用パッケージと、前記載置部に載置されるとともに前記終端用回路基板の前記線路導体および前記中継用回路基板の線路導体に電気的に接続された前記半導体素子と、前記枠体の上面に前記枠体の内側を塞ぐように接合された蓋体とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、終端用回路基板は、その上面に一端が半導体素子に電気的に接続され他端が終端抵抗を介して接地される高周波信号を伝送する線路導体と、一端が線路導体の途中に接続され他端が直流電源に接続された直流バイアス供給用のバイアス線路とを具備しており、このバイアス線路は、その途中に線路導体の特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体が挿入されていることから、線路導体の特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体によって線路導体を伝送する高周波信号がバイアス線路に流れ込むのを抑制することができる。これにより、高周波信号をバイアス線路側と終端抵抗側とに分岐することなく線路導体の他端側で終端抵抗を介して確実に接地することができ、線路導体に流れる高周波信号の反射を防ぎ、半導体素子が誤動作することを防ぐ。
【0016】
また、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、上記構成において、バイアス線路は、その一端から抵抗体までの部位と抵抗体から他端までの部位のうち長い方の長さが、線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であるときには、バイアス線路の一端から抵抗体までの部位と抵抗体から他端までの部位のいずれの部位においても線路導体を流れる高周波信号との電磁結合によりバイアス線路に誘導された高周波信号が共振しないので、その共振した高周波信号が線路導体に流れ込むことはない。従って、線路導体に流れる高周波信号の反射を防ぎ、半導体素子を正常に動作させ得る半導体素子収納用パッケージとできる。
【0017】
また、本発明の半導体素子収納用パッケージによれば、上記構成において、抵抗体は複数の抵抗体部分が接続されて成り、バイアス線路は、その一端からそれに最も近い抵抗体部分までの部位と複数の抵抗体部分の間の部位と他端に最も近い抵抗体部分から他端までの部位とのうち最も長い部位の長さが、線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であるときには、バイアス線路の一端からそれに最も近い抵抗体部分までの部位または複数の抵抗体部分の間の部位または他端に最も近い抵抗体部分から他端までの部位のいずれの部位においても線路導体を流れる高周波信号との電磁結合によりバイアス線路に誘導された高周波信号が共振しないので、その共振した高周波信号が線路導体に流れ込むことはない。従って、線路導体に流れる高周波信号の反射を防ぎ、半導体素子を正常に動作させ得る半導体素子収納用パッケージとできる。
【0018】
また、本発明の半導体装置によれば、上記本発明の半導体素子収納用パッケージと、載置部に載置されるとともに終端用回路基板の線路導体および中継用回路基板の線路導体に電気的に接続された半導体素子と、枠体の上面に枠体の内側を塞ぐように接合された蓋体とを具備することから、高周波信号を終端用回路基板の線路導体の他端側に形成された終端抵抗により、良好に接地する事ができ、半導体素子を所望の特性で動作させることができる半導体装置とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の半導体素子収納用パッケージ(以下、半導体パッケージともいう)について図に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の半導体パッケージの実施の形態の一例を示す断面図であり、1は基体、2は枠体、6は中継用回路基板、8は終端用回路基板を示す。また、図2は終端用回路基板8の実施の形態の一例を示す平面図であり、図3は終端用回路基板8の動作を説明する等価回路図である。図2,図3において、8aは線路導体、8cはバイアス線路、8dは終端抵抗、8eは抵抗体を示す。なお、図2に示されていない終端用回路基板8の下面には接地導体層8bが形成されている。
【0020】
そして、本発明の半導体パッケージは、上側主面に半導体素子5および中継用回路基板6および終端用回路基板8を載置するための載置部1aを有する基体1と、基体1の上側主面の外周部に載置部1aを囲むように接合された枠体2と、載置部1aに載置された中継用回路基板6および終端用回路基板8とを具備し、終端用回路基板8は、その上面に一端が半導体素子5に電気的に接続され他端が終端抵抗8dを介して接地導体層8bに接地される高周波信号を伝送する線路導体8aと、一端が線路導体8aの途中に接続され他端が直流電源(図示せず)に接続された直流バイアス供給用のバイアス線路8cとを具備しており、ハイアス線路は、その途中に線路導体8aの特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体8eが挿入されている。
【0021】
基体1は、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金等の金属や銅(Cu)−タングステン(W)の焼結材料等から成る四角形状等の板状体であり、そのインゴットに圧延加工や打ち抜き加工などの従来周知の金属加工法、または押出成形と切削加工とを組み合わせて施すこと等によって、所定の形状に製作される。基体1の上側主面のほぼ中央部には、IC,LSI,LD,PDなどの半導体素子5を載置するための載置部1aが形成されており、載置部1aには半導体素子5が、金(Au)−錫(Sn)半田や鉛(Pb)−Sn半田などの半田や、銀(Ag)ペーストなどの樹脂接着材などで載置固定される。中継用回路基板6の下面には接地導体層6bが被着されており、Agろう、Ag−Cuろうなどのろう材や金(Au)−錫(Sn)半田や鉛(Pb)−Sn半田などの半田などや、エポキシなどを主成分とした樹脂接着材によって接地導体層6bと載置部1aが強固に接着固定される。終端用回路基板8も中継用回路基板6と同様にその接地導体層8bが載置部1aに接着固定される。
【0022】
半導体素子5は、その電極が中継用回路基板6の上面に被着形成されている線路導体6aおよび終端用回路基板8の線路導体8aにそれぞれボンディングワイヤ7a、7bを介して電気的に接続されている。
【0023】
終端用回路基板8は、例えばアルミナ(Al)セラミックスから成る場合、以下のようにして作製される。まず、Al,酸化珪素(SiO),酸化カルシウム(CaO),酸化マグネシウム(MgO)などの原料粉末に適当な有機バインダや可塑剤,分散剤,溶剤などを添加混合して泥漿状となし、従来周知のドクターブレード法でシート状となすことによってセラミックグリーンシートを得る。しかる後に、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工等を施し、これらセラミックグリーンシートを積層し、積層体を製作する。または、Al,SiO,CaO,MgOなどの原料粉末を金型に充填しプレス成型することによって、所定の形状に成形し、セラミック積層体を製作する。
【0024】
次に、W,モリブデン(Mo),マンガン(Mn)などの高融点金属粉末に適当な有機バインダや溶剤を添加混合してペースト状となした金属ペーストを、終端用回路基板8の線路導体8aや直流バイアス線路8c,接地導体層8b等の導体層となる部位に従来周知のスクリーン印刷法を採用して印刷する。その後、還元雰囲気中で約1,600℃の温度で焼成することによって製作される。
【0025】
なお、終端用回路基板8の線路導体8a、および接地導体層8bは薄膜成形法によって形成されていても良く、その場合、終端用回路基板8の導体層は、窒化タンタル(TaN),ニクロム(Ni−Cr合金),チタン(Ti),パラジウム(Pd),白金(Pt),Auなどから形成されセラミックグリーンシートを焼成した後に形成される。
【0026】
また、基体1の上側主面の外周部には載置部1aを囲むようにして枠体2が立設されており、枠体2は基体1とともにその内側に半導体素子5を収納する空所を形成する。この枠体2は、基体1と同様にFe−Ni−Co合金やCu−Wの焼結材料等またはセラミックスなどの誘電体材料などから成り、基体1と一体成形されるか、または枠体2部分を作製した後基体1に銀ろうなどのろう材を介してろう付け、またはシーム溶接法などの溶接法により接合されることによって基体1の上側主面の外周部に立設される。枠体2がセラミックスから成る場合は、その上下面にメタライズ層などの導体層が形成されているのが好ましい。
【0027】
枠体2の側面には同軸コネクタ3が搭載される貫通孔2aが形成されており、貫通孔2a内には同軸コネクタ3を嵌め込むとともにAu−Sn半田やPb−Sn半田などの接着材を貫通孔2aとの隙間に挿入し、しかる後に、加熱して接着材を溶融させ、溶融した接着材を毛細管現象により同軸コネクタ3と貫通孔2aの内壁との隙間に充填させることによって、同軸コネクタ3が貫通孔2a内に半田などの封着材を介して嵌着接合される。
【0028】
同軸コネクタ3は、半導体パッケージの内部に収納する半導体素子5を外部電気回路(図示せず)に接続された同軸ケーブルに電気的に接続させるものであり、Fe−Ni−Co合金などの金属から成る円筒形などの筒状の外周導体に、ガラスなどの絶縁体が充填され中心軸にFe−Ni−Co合金などの金属から成る中心導体3aが固定されて成る。中心導体3aが半田などから成る導電性接着材を介して中継用回路基板6の線路導体6aに電気的に接続される。そして、半導体素子5の電極と中継用回路基板6の上面に形成された線路導体6aとがボンディングワイヤ7aにより電気的に接続され、同軸コネクタ3に、外部より同軸ケーブルが装着されることによって、内部に収納された半導体素子5が同軸コネクタ3の中心導体3aを介して外部電気回路に電気的に接続されることとなる。
【0029】
終端用回路基板8の上面には線路導体8aが形成され、下面には接地導体層8bが形成されている。終端用回路基板8の上面に形成された線路導体8aは、図2に示すように、一端が半導体素子5に電気的に接続され、他端が終端用回路基板8の上面の周縁部に達しており、かつ途中に終端抵抗8dが設けられている。なお、終端抵抗8dとバイアス線路8cの接続部との間に、線路導体8aに流れる直流成分を遮断するためのコンデンサ9が挿入されてもよい。このコンデンサ9にはセラミックチップコンデンサ等が使用され、バイアス線路8cから供給される直流電流が終端抵抗8dへ流れないようにする。
【0030】
また、線路導体8aには半導体素子5を駆動するためのバイアス線路8cの一端が接続され、バイアス線路8cの他端が外部導通端子(図示せず)を介して外部回路(図示せず)と接続されている。バイアス線路8cにはその途中に線路導体8aからの高周波信号の流れ込みを防ぐための抵抗体8eが挿入されている。高周波信号の流れ込みを防ぐための一般的な方法としてはコイルが用いられるが、コイルは大きなスペースを必要とするため、小型化の観点より小スペースで実現可能な抵抗体8eが用いられている。
【0031】
終端用回路基板8の線路導体8aの途中に設けられた終端抵抗8d、バイアス線路8cの抵抗体8eは、TaN、Ni−Cr合金等から成り、これら金属粉末に適当な有機バインダや溶剤,添加物等を添加混合してペースト状となしたものを従来周知のスクリーン印刷法を採用して終端回路基板8に印刷塗布した後に焼成するか、真空蒸着等の薄膜形成法により形成され、所望の抵抗値を有する厚み,幅,形状になるように形成される。抵抗値を微小調整するために、終端抵抗部8d、抵抗部8eの一部をレーザー加工によって除去することもできる。
【0032】
本発明においては、バイアス線路8cに挿入されている抵抗体8eのインピーダンスが線路導体8aの特性インピーダンスの2倍以上とされている。これにより、線路導体8aに伝送される高周波信号は抵抗体8eによってブロックされ、高周波信号がバイアス線路8cに流れるのを防ぐことができる。
【0033】
線路導体8aは、通常、線路導体8aの抵抗成分を極力少なくし、インダクタンス成分とキャパシタンス成分との比の平方根が例えば50Ωとなるような特性インピーダンスの線路となるように設計される。従って、このような線路導体8aに接続されるバイアス線路8cの抵抗体8eは、その抵抗値が特性インピーダンスの2倍の100Ω以上となるようにすることにより、高周波信号がバイアス線路8cに流れるのを防ぐのに十分な機能を果たすことができる。
【0034】
抵抗体8eの抵抗値は大きくするほど良いが、バイアス線路8cに直流電流が流れるため、抵抗体8eの抵抗値を大きくしすぎると、抵抗体8eにて消費される消費電力が大きくなってしまう。このため、抵抗体8eは5000Ω以下とすることが望ましい。これにより、高周波信号がバイアス線路8cに流れ込むのを抑制することができ、高周波信号の大部分は終端抵抗8dの方へ流れる。そして、終端抵抗8dの方へ流れた高周波信号は、終端抵抗8dによって確実に接地されるとともに、終端抵抗8dの作用によって半導体素子5の方へ反射されることを防げるので、半導体素子が誤動作することを防ぐ。
【0035】
本発明の半導体パッケージにおいて、好ましくは図3に示すように、バイアス線路8cは、その一端から抵抗体8eまでの部位と抵抗体8eから他端までの部位のうち長い方の長さLが、線路導体8aを伝送する高周波信号の波長の1/2(λ/2)未満であるときには、バイアス線路8cの一端から抵抗体8eまでの部位と抵抗体8eから他端までの部位のいずれの部位においても線路導体8aを流れる高周波信号との電磁結合によりバイアス線路8cに誘導された高周波信号が共振しないので、その共振した高周波信号が線路導体に流れ込むことはない。従って、高周波信号が線路導体8aで反射することなく線路導体8aを進行して他端側の終端抵抗8dを介して確実に接地される。なお、図3においては、抵抗体8eからバイアス線路8eの他端までの部位の長さの方が一端から抵抗体8eまでの部位の長さよりも長いとして、抵抗体8eからバイアス線路8cの他端側の部位に符号Lを付している。
【0036】
またバイアス線路8cの抵抗体8eは、直列に複数の抵抗体8e部分が接続されることがより好ましく、図4,図5は、このような終端用回路基板の実施の形態の他の例を示す平面図および等価回路図である。この場合、バイアス線路8cは、その一端からそれに最も近い抵抗体8e部分までの部位の長さLと複数の抵抗体8e部分の間の部位の長さLと他端に最も近い抵抗体8e部分から他端までの部位の長さLとのうち最も長い部位の長さが、線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であるときには、バイアス線路8cの一端からそれに最も近い抵抗体8e部分までの部位または複数の抵抗体8e部分の間の部位または他端に最も近い抵抗体8e部分から他端までの部位のいずれの部位においても線路導体8aを流れる高周波信号との電磁結合によりバイアス線路8cに誘導された高周波信号が共振しないので、その共振した高周波信号が線路導体8aに流れ込むことはない。従って、高周波信号が線路導体8aで反射することなく線路導体8aを進行して他端側の終端抵抗8dを介して確実に接地される。
【0037】
なお、バイアス線路8cの一端からそれに最も近い抵抗体8e部分までの部位とは、バイアス線路8cの一端からそれに最も近い抵抗体8eのバイアス線路と抵抗体8eとの境界までのバイアス線路8cの長さを意味する。他の抵抗体8e部分の意味も同様に各抵抗体8eのバイアス線路と抵抗体8eとの境界を基点とすることを意味する。
【0038】
例えば、特性インピーダンスが50Ωの線路導体8aに接続されるバイアス線路8cの複数の抵抗体8eであれば、複数の抵抗体8eの個々の抵抗値が100Ω以上であればよく、また、複数の抵抗体8eの合成抵抗が5000Ω以下が好ましい。
【0039】
最後に、上記構成の半導体パッケージの枠体2の上面に枠体の内側を塞ぐようにFe−Ni−Co合金などの金属から成る蓋体4を半田付けやシームウエルド法により接合することにより製品としての半導体装置となる。蓋体4により、容器内部に収容した半導体素子5を気密に収容し、半導体素子5を長期にわたり正常かつ安定に作動させることができる。また、この半導体装置は、基体1が外部電気回路基板に実装され、同軸コネクタ3に外部電気回路の同軸ケーブルを接続することにより、内部に収容した半導体素子5が外部電気回路に電気的に接続され、半導体素子5が高周波信号で作動するとともに、半導体素子に直流電源からバイアス線路8cを介して良好に直流バイアスを供給でき、高周波信号を終端用回路基板8の線路導体8aの他端側に形成された終端抵抗8dにより、良好に接地することができ、半導体素子5を所望の特性で動作させることができる半導体装置とできる。
【0040】
なお、半導体素子5に入出力される高周波信号の好ましい周波数は1〜15GHz程度であり、この場合に高周波信号の伝送特性を特に良好なものとすることができる。
【実施例】
【0041】
以下に本発明の実施例について説明する。
本発明および比較用の終端用回路基板8を図4のように構成することとし、高周波3次元構造シミュレータ(アンソフト社製HFSS(High Frequency Structure Simulator))を用いて1GHz〜15GHzの範囲で最も悪い反射係数S11を示すものをシミュレーションにより評価した。
【0042】
まず、終端用回路基板8は、比誘電率が9.6のアルミナセラミックスからなる縦6mm×横2mm×厚み1mmの基板を採用して形成するものとし、その上側主面に幅が0.98mm、長さが5mm、厚みが0.002mmの線路導体8aを配置した。
【0043】
次に、線路導体8aの他端側を側面導体層8fを介して接地導体層8bと電気的に接続し、さらに縦1.2mm×横0.6mm×高さ0.6mm、容量0.1μFのチップコンデンサ9および線路導体8aの特性インピーダンスとマッチングする抵抗値の終端抵抗8dを配置した。また、線路導体8aのチップコンデンサ9の手前には抵抗体8eが挿入されたバイアス線路8cが接続されて配置されている。ここで、複数の抵抗体8eは2個とし、2個の抵抗値は同じとし、その合成直流抵抗値をそれぞれ表1の抵抗値Rとした。なお、この構成における線路導体8aの特性インピーダンスは50Ωである。
【0044】
これら、抵抗値Rが0Ωおよび100Ωの比較用の試料1,2および本発明の半導体素子収納用パッケージの終端用回路基板8の試料3〜5を、1GHz〜15GHzの範囲でシミュレーションにより評価し、最も悪い反射係数S11の値を表1に示す。
【表1】

【0045】
表1より、試料No.3,4,5については、反射係数S11が実際に半導体装置が正常に動作するレベルである−15dB以下と良好な特性が得られることが分かった。これに対し、比較用の試料No,1,2においては反射係数S11が−15dBを超える(−15dBより大きい)ことが分かった。
【0046】
さらに同じ終端用回路基板8の抵抗体8eの個々の抵抗値を500Ωとし、バイアス線路8cの一端から1番目の抵抗体8eまでの長さをL、1番目の抵抗体8eと2番目の抵抗体8eとの間の長さをL、2番目の抵抗体8eから他端までの長さをLとしたときのL〜Lまでの値を表2に示すように設定し、シミュレーションにより評価した反射係数S11の値を表2に示す。
【表2】

【0047】
表2において、試料No.6〜10における上記1〜15GHzの周波数範囲における最も悪い反射係数S11の値を表2に示す。また、1〜15GHzの高周波信号の15GHzの波長の1/2の長さは3.19mmである。
【0048】
表2より、L〜Lが全て3.19mm以下である試料No.9,10は、反射係数S11が−20dB以下となりより良好な特性が得られることが分かった。
【0049】
なお、本発明は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更は可能である。例えば中継用回路基板6と終端用回路基板8とを一体形成し、一体化された回路基板上に半導体素子5を実装しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の半導体素子収納用パッケージの実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の半導体素子収納用パッケージの終端用回路基板の実施の形態の一例を示す平面図である。
【図3】図2の終端用回路基板の等価回路図である。
【図4】本発明の半導体素子収納用パッケージの終端用回路基板の実施の形態の他の例を示す平面図である。
【図5】図4の終端用回路基板の等価回路図である。
【図6】従来の半導体素子収納用パッケージの例を示す断面図である。
【図7】従来の半導体素子収納用パッケージの終端用回路基板の例を示す平面図である。
【図8】図7の終端用回路基板の等価回路図である。
【符号の説明】
【0051】
1・・・基体
1a・・載置部
2・・・枠体
2a・・貫通孔
3・・・同軸コネクタ
3a・・中心導体
4・・・蓋体
5・・・半導体素子
6・・・中継用回路基板
6a・・線路導体
6b・・接地導体層
7a,7b・・・ボンディングワイヤ
8・・・終端用回路基板
8a・・線路導体
8b・・接地導体層
8c・・バイアス線路
8d・・終端抵抗
8e・・抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側主面に半導体素子および中継用回路基板および終端用回路基板を載置するための載置部を有する基体と、該基体の前記上側主面の外周部に前記載置部を囲むように接合された枠体と、前記載置部に載置された前記中継用回路基板および前記終端用回路基板とを具備した半導体素子収納用パッケージにおいて、前記終端用回路基板は、その上面に一端が前記半導体素子に電気的に接続され他端が終端抵抗を介して接地される高周波信号を伝送する線路導体と、一端が前記線路導体の途中に接続され他端が直流電源に接続された直流バイアス供給用のバイアス線路とを具備しており、該バイアス線路は、その途中に前記線路導体の特性インピーダンスの2倍以上のインピーダンスを有する抵抗体が挿入されていることを特徴とする半導体素子収納用パッケージ。
【請求項2】
前記バイアス線路は、その前記一端から前記抵抗体までの部位と前記抵抗体から前記他端までの部位のうち長い方の長さが、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であることを特徴とする請求項1記載の半導体素子収納用パッケージ。
【請求項3】
前記抵抗体は複数の抵抗体部分が接続されて成り、前記バイアス線路は、その前記一端からそれに最も近い前記抵抗体部分までの部位と前記複数の抵抗体部分の間の部位と前記他端に最も近い抵抗体部分から前記他端までの部位とのうち最も長い部位の長さが、前記線路導体を伝送する高周波信号の波長の1/2未満であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体素子収納用パッケージ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の半導体素子収納用パッケージと、前記載置部に載置されるとともに前記終端用回路基板の前記線路導体および前記中継用回路基板の線路導体に電気的に接続された前記半導体素子と、前記枠体の上面に前記枠体の内側を塞ぐように接合された蓋体とを具備することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−13351(P2006−13351A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191725(P2004−191725)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】