説明

半導体装置、情報不正取得防止方法、情報不正取得防止プログラムおよびプログラム記録媒体

【課題】内部情報の不正取得状況を容易かつ確実に検出することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】CPU等を搭載するシステムブロック1やICカード2と接続するICカードコネクタ3を実装する基板上の温度分布を検出する1ないし複数の温度検出器4〜11を備え、各動作時の正常状態における内部の温度分布情報を正常時内部温度分布情報としてあらかじめ記憶し、実動作時において温度検出器4〜11により実動作時内部温度分布情報として測定された内部の温度分布情報が、記憶された正常時内部温度分布情報とあらかじめ定めた閾値以上に大きい差になった場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、装置動作を停止する。さらに、筐体外側の温度検出器12にて測定した周囲温度の変化に基づいて、あらかじめ記憶される正常時内部温度分布情報および実動作時における実動作時内部温度分布情報を正規化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、情報不正取得防止方法、情報不正取得防止プログラムおよびプログラム記録媒体に関し、特に、装置内に記憶された内部情報が不正に取得されることを防止する技術に関する。半導体装置として、内部情報を記録しているICカード内蔵の携帯通信端末やICカードの読み書きを行うICカードリーダ/ライタに好適に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
携帯通信端末は、今日では、利用範囲が広がり、クレジットカードと同様なサービス等を実現するようになってきている。これらのサービスを実現する上で、携帯通信端末内部では、契約者情報等の内部情報が記録されたICカードとの間の通信を行い、携帯通信端末が正規の状態で使用されているか否かの認証を行っている。このICカードとの通信は暗号化されることによって、内部情報のセキュリティを保持している。
【0003】
しかし、ハードウェア上のスキミング自体に関しては防止することができなく、一方では、暗号化情報の解読の手段、手法が日々発達していることから、スキミングされた内部情報が解読され、内部情報が流出する可能性が大きい。
【0004】
そのため、より確実なセキュリティを実現するためには、スキミング自体を検出し、内部情報の流出を防止することが必要である。特許文献1の特開2003−150451号公報「半導体装置およびICカード」においては、半導体装置の仕様範囲を超えた物理条件が加えられていることを検出することによって、強制的な誤動作により内部情報を推測しようとするスキミング攻撃から内部情報を守るという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−150451号公報(第6−9頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、現状では、多くの携帯通信端末は、内部に契約者情報等の内部情報が記録されたICカードおよびICカードを接続するためのコネクタを有している。該ICカードとの通信は、ハードウェア的にコネクタを有するため、携帯通信端末を分解して、該コネクタを介して内部情報をモニタリングすることにより、当該ICカードに記憶された契約者情報等の内部情報の不正取得(スキミング)が容易になる可能性が大きい。
【0007】
ICカードとの間で通信される情報そのものは暗号化により保護されてはいるが、前述のように、暗号化解析に必要な技術は日々向上しており、不正取得された情報が暗号化されていたとしても安全であるとは言い難い。したがって、安全対策として、内部情報の不正取得動作そのものを検出し、内部情報の流出を未然に防止することが望ましい。
【0008】
前記特許文献1の技術は、物理的な条件を、仕様範囲を超えた状態にするによって、携帯通信端末等の半導体装置を誤動作させて、そのときの出力をモニタリングすることによって内部情報を推測するという不正アクセスに対する技術であり、電圧や周波数や温度等の物理的な条件が仕様範囲を超えたことを検出する仕組みを組み込むことを提案しているが、仕様範囲と比較するための大掛かりな仕組みを必要とするのみならず、前述のようなコネクタを介して内部情報をモニタリングするような不正アクセスに対しては、対応することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、ハードウェア的なスキミングを用いて内部情報に対して不正アクセスしている状況を容易かつ確実にモニタリングすることが可能な半導体装置、情報不正取得防止方法、情報不正取得防止プログラムおよびプログラム記録媒体を提供することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明による半導体装置は、次のような特徴的な構成を採用している。
【0011】
(1)内部に格納している内部情報により動作を行う半導体装置において、装置内部に実装される基板上の温度分布を検出する1ないし複数の温度検出器と、各動作時における正常状態において前記温度検出器により測定された装置内部の温度分布情報を正常時内部温度分布情報としてあらかじめ記憶するデータベースとを備え、実動作時において前記温度検出器により実動作時内部温度分布情報として測定された内部の温度分布情報と、前記データベースに当該実動作時と同一の動作時としてあらかじめ記憶された前記正常時内部温度分布情報とを比較した結果、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、装置動作を停止する半導体装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導体装置、情報不正取得防止方法、情報不正取得防止プログラムおよびプログラム記録媒体によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0013】
携帯通信端末やICカードリーダ/ライタ等の半導体装置の装置内部の温度分布情報を正常状態時における装置内部の温度分布情報と比較することによって、半導体装置の内部情報の不正取得状態を検出する仕組みとしているので、ハードウェア的およびソフトウェア的に小さな負荷で、情報不正取得防止を実施することができることにある。
【0014】
また、本発明の半導体装置の一例である携帯通信端末の多くは、従来より、機能動作上の温度補正を行うために温度検出器を既に備えており、本発明は、かかる温度検出器を複数個追加して配置するものであるので、比較的安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の一例を説明するための配置図である。
【図2】図1に示す携帯通信端末の正常時の各動作における温度検出器の各位置の正常時温度分布情報をデータベースとしてあらかじめ保持している一例を示すテーブル構成図である。
【図3】図1に示す携帯通信端末の実動作時における温度検出器の各位置の温度分布情報の検出結果の一例を示すテーブルである。
【図4】本発明による情報不正取得防止方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の図1とは異なる配置例を説明するための配置図である。
【図6】本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の図1とはさらに異なる配置例を説明するための配置図である。
【図7】本発明による情報不正取得防止方法の図4とは異なる例を説明するためのフローチャートである。
【図8】図1に示す携帯通信端末の装置内部の温度分布のシミュレーション結果の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による半導体装置、情報不正取得防止方法、情報不正取得防止プログラムおよびプログラム記録媒体の好適な実施例について添付図を参照して説明する。なお、以下の説明においては、本発明による半導体装置および情報不正取得防止方法について説明するが、かかる情報不正取得防止方法をコンピュータにより実行可能な情報不正取得防止プログラムとして実施するようにしても良いし、あるいは、情報不正取得防止プログラムをコンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録するようにしても良いことは言うまでもない。また、内部情報の流出を防止するために、かかる情報不正取得防止用の仕組みを備えた半導体装置としては、契約者情報等の内部情報をICカード等に格納している携帯通信端末に適用するようにしても良いし、各種の情報を格納しているICカードの読み書きを行うICカードリーダ/ライタ例えばPC(Personal Computer)に搭載されるカード型通信データ端末についても好適に適用することができる。
【0017】
(本発明の特徴)
本発明の実施形態の説明に先立って、本発明の特徴についてその概要をまず説明する。本発明は、装置内の内部温度の分布を検出する温度検出器を搭載し、内部温度の分布情報の変化をモニタリングすることによって、内部情報への不正アクセスを検出することを主要な特徴としている。すなわち、装置内部の温度分布情報の変化を用いることにより、内部情報に関する情報不正取得を防止することを特徴としており、例えば携帯通信端末やICカードリーダ/ライタ等の半導体装置において、ハードウェア的な手段を用いた内部情報の不正取得状態、つまり、例えば装置を分解して内部のICカードのコネクタを介して内部情報を不正に読み出そうとする状態における装置内部の温度分布の変化から、不正なアクセス状態を検出することによって、内部情報の流出を防止することを可能としている。
【0018】
(実施形態の構成例)
以下の説明においては、本実施形態で使用される半導体装置として、携帯通信端末を用いる場合について説明する。図1は、本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の一例を説明するための配置図であり、図1(A)は、携帯通信端末内部に実装されている基板上の部品配置例を示し、図1(B)は、携帯通信端末筐体外側の部品配置例を示している。
【0019】
図1(A)に示すように、携帯通信端末100は、内部に実装されている基板上に、従来の携帯通信端末の装置構成と同様に、通信や装置制御機能を実現するためのシステムブロック1と、契約者情報等の内部情報が記録されたICカード2と、ICカード2に記録された契約者情報等の内部情報を読み書きするためのICカードコネクタ3を備えていることに加えて、さらに、装置内部の温度分布を測定するための1ないし複数個の温度検出器4〜11を備えている。さらに、図1(B)に示すように、携帯通信端末100の筐体外側には、携帯通信端末100の周囲温度を測定するための温度検出器12を備えている。
【0020】
ここで、システムブロック1は、図示していないが、携帯通信端末100の通信や装置制御を実現するために必要な回路にて構成されており、通信に必要な無線回路や装置制御に必要なCPU、メモリ、電源回路等を少なくとも含んで構成される。
【0021】
また、ICカード2およびICカードコネクタ3は、本来、システムブロック1に含まれる部品であるが、本実施形態においては、ハードウェア的に、内部情報に不正にアクセスされて、内部情報が不正に取得される可能性がある個所として、ICカードコネクタ3の部分を想定しているため、システムブロック1とは別に記載している。ここで、ICカード2は、携帯通信方式の一つであるW−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式を用いる携帯通信端末100の場合であれば、契約者情報等の内部情報を記録するUSIM(Universal Subscriber Identity Module)カードに該当している。
【0022】
温度検出器4〜11は、携帯通信端末100の内部の温度分布を測定するために設けられたサーミスタ等の温度検出素子であり、システムブロック1に接続されていて、検出した内部温度情報は、システムブロック1に送信される。なお、温度検出器4〜11は、携帯通信端末100の内部において、ハードウェア的に不正にアクセスすることがあり得ると想定される箇所の近傍に配置されることが望ましい。例えば、温度検出器4〜7は、各種の内部情報の処理を行っているシステムブロック1を囲むように配置し、温度検出器8は、システムブロック1内のCPUやメモリが実装されるシステムブロック1の中央位置近傍に配置する。さらに、温度検出器9〜11は、ハードウェア的な不正アクセスが行われる可能性があるICカードコネクタ3を囲むように配置する。
【0023】
一方、温度検出器12は、携帯通信端末100の周囲温度を測定するために設けられたサーミスタ等の温度検出素子であり、同様に、システムブロック1に接続されていて、検出した周囲温度情報は、システムブロック1に送信される。なお、温度検出器12は、携帯通信端末100の周囲温度を測定することが目的であるため、携帯通信端末100の自己発熱の影響をなるべく受けない位置、つまり、携帯通信端末100内部に実装されている発熱素子からなるべく離れた位置に設置することが望ましい。
【0024】
(実施形態の動作の説明)
次に、図1に示す携帯通信端末100の動作について説明する。まず、本実施形態において使用される図1の携帯通信端末100に対する不正アクセスがない正常な各動作時において、温度検出器4〜11の各位置における装置内部の温度分布情報を、温度検出器4〜11を用いて測定し、システムブロック1に、データベースとしてあらかじめ保持することが必要である。
【0025】
ここで、各動作時における装置内部の温度分布情報は、携帯通信端末100の周囲温度の影響を受けるため、データベースとして保持する情報は、携帯通信端末100の筐体外側に備えた温度検出器12によって測定した周囲温度情報により正規化したものを、正常時温度分布情報として設定する。また、装置内部の温度分布情報は、各動作開始からの時間的な経過の影響を受けるため、各動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定の時間経過毎の装置内部の温度分布情報を測定し、データベースには、経過時間付き正常時温度分布情報として保持することが必要である。
【0026】
図2は、図1に示す携帯通信端末100の正常時の各動作における温度検出器4〜11の各位置の正常時温度分布情報(つまり経過時間付き正常時温度分布情報)をデータベースとしてあらかじめ保持している一例を示すテーブル構成図であり、携帯通信端末100の動作状態として、待ち受け中においてはスリープ状態にある場合とスリープ以外の状態にある場合とに分けて、通信中においては送信出力レベルが−20dBmの場合と+0dBmの場合とに分けて、…等、各動作の状態毎の装置内部の温度分布を、経過時間に対応する形で、携帯通信端末100の周囲温度の変化に応じて正規化した温度値として保持している例を示している。
【0027】
次に、図1の携帯通信端末100の実運用時において、内部情報を不正に取得することを防止する仕組みについて、本発明による情報不正取得防止方法の一例として、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、本発明による情報不正取得防止方法の一例を説明するためのフローチャートであり、図1の携帯通信端末100の実動作時における装置内部の温度分布情報に基づいて、不正アクセスの有無を判定し、内部情報の流出を防止する例を示している。
【0028】
ここで、本実施例においては、図3に示すように、実動作時として、例えば、送信出力が+0dBmの通信中の状態にあった場合の装置内部の温度分布情報が得られた場合を例にとって説明する。図3は、図1に示す携帯通信端末の実動作時における温度検出器の各位置の温度分布情報の検出結果の一例を示すテーブルであり、携帯通信端末100の実動作時として、送信出力が+0dBmの通信中の状態にあった場合の装置内部の温度分布情報を、周囲温度の変化に応じて正規化して示している。
【0029】
図4のフローチャートにおいて、本発明の半導体装置の一例である図1に示す携帯通信端末100は、実運用時において、通信等の各動作開始後、温度検出器4〜11を用いて、装置内部の温度分布情報を測定する(ステップS41)。さらに、ステップS41で測定した装置内部の温度分布情報を正規化するために、携帯通信端末100の周囲温度情報を、温度検出器12を用いて測定する(ステップS42)。しかる後、携帯通信端末100の周囲温度情報の変化に基づいて、ステップS41で測定した装置内部の温度分布情報を正規化する(ステップS43)。この結果、実動作時において送信出力が+0dBmの通信中の状態であった場合には、図3に示すような装置内部の温度分布情報が得られる。
【0030】
次に、温度測定時における携帯通信端末100の動作状態および当該動作開始から温度の測定までの経過時間を用いて、ステップS43において正規化された装置内部の温度分布情報つまり実動作時検出温度分布情報と、システムブロック1にデータベースとして登録されている各正常動作時の装置内部の温度分布情報つまり経過時間付き正常時温度分布情報との比較を行う(ステップS44)。
【0031】
実動作時検出温度分布情報と経過時間付き正常時温度分布情報とを比較した結果、両者の装置内部の温度分布にあらかじめ定めた一定の閾値以上の差があるか否かにより、正常状態にあるかあるいは内部情報の不正取得状態(異常状態)にあるかを判定する(ステップS45)。つまり、携帯通信端末100を分解して、ICカードコネクタ3を介して内部情報を不正にモニタリングしている場合、携帯通信端末100の装置内部の温度分布が、分解による空気状態の違いにより、正常状態時とは異なることを利用して、あらかじめ定めた一定の閾値以上の差が認められた場合には、内部情報の不正取得状態であるものと判定する。なお、該閾値となる一定の差については、携帯通信端末100のバラツキや温度測定におけるバラツキを考慮に入れて決定することになる。
【0032】
両者の装置内部の温度分布に前記閾値よりも小さい差異しかなかった場合は(ステップS45の「閾値より小さい」場合)、不正なアクセス状態がない正常状態であるものと判定し(ステップS46)、携帯通信端末100としての動作を継続する。
【0033】
一方、両者の装置内部の温度分布に前記閾値以上に大きい差異があった場合は(ステップS45の「閾値以上に大きい」場合)、異常状態(不正取得状態)であるものと判定し(ステップS47)、内部情報の不正取得状態を回避するために、システムブロック1は、ICカードコネクタ3を介したICカード2との通信を停止し、かつ、携帯通信端末100の動作を停止する(ステップS48)。而して、ハードウェア的な不正操作による内部情報の流出を未然に防止することができる。
【0034】
(実施形態の効果の説明)
以上に詳細に説明したように、本実施形態においては、次のような効果が得られる。
【0035】
携帯通信端末やICカードリーダ/ライタ等の半導体装置の装置内部の温度分布情報を正常状態時における装置内部の温度分布情報と比較することによって、半導体装置の内部情報の不正取得状態を検出する仕組みとしているので、ハードウェア的およびソフトウェア的に小さな負荷で、内部情報の不正取得を防止することができることにある。
【0036】
ここで、不正取得状態そのものを検出する方法として、例えば、半導体装置の内部信号を観測するために不正に接続されたプローブ等の負荷により発生した信号波形の波形解析を行って、その変化を正常状態時と比較することも可能であるが、かかる方法は、ハードウェア的およびソフトウェア的に負荷の大きい処理であり、かつ、正常状態時との波形の差が小さく、実用的な閾値を設けることが困難である。
【0037】
本実施形態においては、半導体装置内部の信号波形の観測状態そのものを検出するのではなく、半導体装置の分解等によって内部信号の信号波形を観測している環境状態(つまりハードウェア的な内部情報の不正取得時の状態)を、装置内部の温度分布が正常動作時の温度分布とは異なることを利用して検出するものであり、内部情報の不正取得状態の検出をより簡単にかつより確実に行うことができる。つまり、正常状態においては、半導体装置は装置外壁(筐体)によって密閉されており、装置内部に実装されている基板上の温度検出器周辺の空気状態が、半導体装置の分解時とは、異なることを利用したものである。
【0038】
また、本発明の半導体装置の一例である携帯通信端末の多くは、従来より、機能動作上の温度補正を行うために温度検出器を既に備えており、本実施形態は、かかる温度検出器を複数個追加して配置するものであるので、比較的安価に実現することができる。
【0039】
(他の実施形態)
前述した図1に示す実施形態においては、半導体装置の一例である携帯通信端末100内の基板上に実装した温度検出器が、システムブロック1の周辺を囲むように配置した4個の温度検出器4〜7とシステムブロック1内のCPUの近傍に配置した1個の温度検出器8と、ICカード2およびICカードコネクタ3を囲むように配置した3個の温度検出器9〜11の合計8個の温度検出器によって構成されている場合について説明したが、本発明は、かかる場合に限るものではない。
【0040】
例えば、図5に示すように、システムブロック1内のCPUの近傍に1個の温度検出器4を配置する他には、システムブロック1の周辺に2個の温度検出器5,6のみを配置し、また、ICカード2およびICカードコネクタ3の近傍には、ICカードコネクタ3の近傍のみに1個の温度検出器7を配置し、合計4個の温度検出器によって構成するようにしても良い。
【0041】
図5は、本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の図1とは異なる配置例を説明するための配置図である。図5のような温度検出器の配置を行う場合、前述した図1の場合よりも内部温度の測定点が減少するため、装置内部の温度分布情報の精度が低下し、正常状態と不正取得状態(異常状態)とを識別する閾値の設定が困難になるが、温度検出器の個数が少ないことから、部品コストおよび実装面積において、図1の場合よりも有利になるという利点を有している。
【0042】
あるいは、逆に、図6に示すように、システムブロック1の周辺には、4個の温度検出器4,5,7,9を配置する一方、システムブロック1内には、発熱量が大きいCPUの近傍に1個の温度検出器8を配置するとともに、さらに、不正にアクセスしていることに伴う温度変化が大きくなると予想される他の位置にも2個の温度検出器10,11を配置し、また、ICカード2およびICカードコネクタ3を囲むように、3個の温度検出器13,14,16を配置するだけでなく、ICカードコネクタ3の周辺に、さらに2個の温度検出器15,17を追加して配置し、合計12個の温度検出器によって構成するようにしても良い。
【0043】
図6は、本発明による半導体装置の一例である携帯通信端末の部品配置状況の図1とはさらに異なる配置例を説明するための配置図である。図6のような温度検出器の配置を行う場合、前述した図1の場合よりも内部温度の測定点が増加するため、装置内部の温度分布情報の精度を向上させることができるという利点を有している。
【0044】
さらには、前述の実施形態においては、温度の測定点として各位置に配置した各温度検出器にて測定された各測定点における装置内部の温度情報そのものを用いて内部情報の不正取得状態を判定する場合について説明したが、本発明は、かかる場合に限るものではない。
【0045】
例えば、各測定点に配置した各温度検出器にて測定された各測定点における装置内部の温度情報そのものを用いるのみでなく、各測定点における装置内部の温度情報に基づいて、装置内部全体の温度状態をシミュレーションすることによって、装置内部全体の温度分布情報を温度分布シミュレーションパターンとして生成し、シミュレーションにより生成した該温度分布シミュレーションパターンを用いて、内部情報の不正取得状態の有無を判定するようにしても良い。以下に、装置内部の温度分布状態のシミュレーションを行う場合の動作例について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
図7は、本発明による情報不正取得防止方法の図4とは異なる例を説明するためのフローチャートであり、図1の携帯通信端末100の実動作時における装置内部の温度分布のシミュレーション結果に基づいて、不正アクセスの有無を判定し、内部情報の流出を防止する例を示している。つまり、図7のフローチャートは、前述の実施形態の図4に示したフローチャートの場合の、正常状態時における経過時間付き正常時温度分布情報をあらかじめデータベースとして保持する処理と、ステップS44において実動作時において取得した装置内部の温度分布情報を経過時間付き正常時温度分布情報と比較する処理とが異なるが、その他の処理は、図4の場合と同様である。
【0047】
つまり、図7のフローチャートを開始する前に、あらかじめ、図1の携帯通信端末100の不正アクセスがない正常な各動作時において、各動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定の時間経過毎に、温度検出器4〜11の各測定点における装置内部の温度分布情報を、温度検出器4〜11を用いて測定し、さらに、携帯通信端末100の筐体外側に備えた温度検出器12によって測定した周囲温度情報により温度検出器4〜11の温度分布情報を正規化し、しかる後、正規化した温度分布情報に基づいて、装置内部全体の温度分布をシミュレーションした結果を、経過時間付き正常時温度分布シミュレーションパターンとして、システムブロック1に、データベースとしてあらかじめ保持する。経過時間付き正常時温度分布シミュレーションパターンとしては、例えば、図8(A)のような3段階(温度領域A、温度領域B、温度領域C)の温度分布パターンを得るようにする。
【0048】
しかる後、図7のフローチャートにおいて、本発明の半導体装置の一例である図1に示す携帯通信端末100は、図4の場合と同様、実運用時において、通信等の各動作開始後、温度検出器4〜11を用いて、装置内部の温度分布情報を測定する(ステップS71)。さらに、ステップS71で測定した装置内部の温度分布情報を正規化するために、携帯通信端末100の周囲温度情報を、温度検出器12を用いて測定する(ステップS72)。次いで、携帯通信端末100の周囲温度情報の変化に基づいて、図4の場合と同様、ステップS71で測定した装置内部の温度分布情報を正規化する(ステップS73)。
【0049】
次に、図4の場合とは異なり、ステップS73において正規化された装置内部の温度分布情報つまり実動作時検出温度分布情報を用いて、装置内部全体の温度分布をシミュレーションする。そのシミュレーション結果として、例えば、図8のような温度分布のシミュレーションパターンつまり実動作時検出温度分布シミュレーションパターンが生成される(ステップS74)。
【0050】
ここで、図8は、図1に示す携帯通信端末100の装置内部の温度分布のシミュレーション結果の一例を示す模式図であり、図8(A)は、ある動作時のある時間経過時点の正常状態における装置内部の温度分布のシミュレーション結果の一例を示し、図8(B)は、ある動作時のある時間経過時点の異常状態(不正取得状態)における装置内部の温度分布のシミュレーション結果の一例を示している。つまり、図8の例においては、携帯通信端末100の装置内部の温度分布として、温度領域A、温度領域B、温度領域Cの3段階に分類した温度分布パターンをシミュレーション結果として生成している。
【0051】
次いで、温度の測定時における携帯通信端末100の動作状態および当該動作開始から温度の測定までの経過時間を用いて、ステップS74にて生成された実動作時検出温度分布シミュレーションパターンと、システムブロック1にデータベースとして登録されている各正常動作時の装置内部の温度分布情報に関するシミュレーションパターンつまり経過時間付き正常時温度分布シミュレーションパターンとのパターンマッチングによる比較を行う(ステップS75)。
【0052】
実動作時検出温度分布シミュレーションパターンと経過時間付き正常時温度分布シミュレーションパターンとのパターンマッチングの結果、両者の装置内部の温度分布のシミュレーションパターンにあらかじめ定めた一定の閾値以上の差があるか否かにより、正常状態にあるかあるいは内部情報の不正取得状態(異常状態)にあるかを判定する(ステップS76)。
【0053】
両者の装置内部の温度分布シミュレーションパターンに前記閾値よりも小さい差異しかなかった場合は(ステップS76の「閾値より小さい」場合)、不正なアクセス状態がない正常状態であるものと判定し(ステップS77)、携帯通信端末100としての動作を継続する。
【0054】
一方、両者の装置内部の温度分布シミュレーションパターンに前記閾値以上に大きい差異があった場合は(ステップS76の「閾値以上に大きい」場合)、異常状態(不正取得状態)であるものと判定し(ステップS78)、内部情報の不正取得状態を回避するために、システムブロック1は、ICカードコネクタ3を介したICカード2との通信を停止し、かつ、携帯通信端末100の動作を停止する(ステップS79)。而して、ハードウェア的な不正操作による内部情報の流出を未然に防止することができる。
【0055】
図8のような装置内部全体の温度分布シミュレーションパターンを用いる場合、図8(A)や図8(B)に例示するように、温度の測定点以外の箇所における温度情報も含めて取得することができるため、装置内部の温度分布に関する精度をさらに向上させることができる。
【0056】
以上、本発明の好適実施例の構成を説明した。しかし、斯かる実施例は、本発明の単なる例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではないことに留意されたい。本発明の要旨を逸脱することなく、特定用途に応じて種々の変形変更が可能であることが、当業者には容易に理解できよう。例えば、本発明の実施態様は、課題を解決するための手段における構成(1)に加えて、次のような構成として表現できる。
(2)前記正常時内部温度分布情報として、各動作時において、動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定時間経過毎に測定した温度分布情報を前記データベースに記憶し、ある動作時における前記実動作時内部温度分布情報と比較する際に、当該動作時において動作開始からの経過時間に応じた前記正常時内部温度分布情報と比較する上記(1)の半導体装置。
(3)当該半導体装置の周囲温度を測定する温度検出器を当該半導体装置の筐体外側に備え、前記データベースに記憶する前記正常時内部温度分布情報および実動作時における前記実動作時内部温度分布情報を、それぞれの測定時における前記周囲温度の変化に基づいて正規化し、正規化した前記正常時内部温度分布情報と正規化した前記実動作時内部温度分布情報とを比較する上記(1)または(2)の半導体装置。
(4)前記温度検出器が位置するそれぞれの測定点における内部温度の測定結果に基づいてシミュレーションを行い、該シミュレーション結果として生成される装置内部全体の温度分布シミュレーションパターンを、前記正常時内部温度分布情報および前記実動作時内部温度分布情報として用い、両者の温度分布シミュレーションパターンのパターンマッチング結果として、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、装置動作を停止する上記(1)ないし(3)のいずれかの半導体装置。
(5)当該半導体装置が、ICカードに記録した前記内部情報により動作する携帯通信端末、または、前記内部情報を格納したICカードの読み書きを行うICカードリーダ/ライタである上記(1)ないし(4)のいずれかの半導体装置。
(6)半導体装置内に格納している内部情報を不正に取得されることを防止する情報不正取得防止方法であって、各動作時における正常状態において前記半導体装置内部の温度分布を測定した結果を正常時内部温度分布情報としてあらかじめ記憶し、実動作時において実動作時内部温度分布情報として測定された内部の温度分布情報と、当該実動作時と同一の動作時としてあらかじめ記憶された前記正常時内部温度分布情報とを比較した結果、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、前記半導体装置の動作を停止する情報不正取得防止方法。
(7)前記正常時内部温度分布情報として、各動作時において、動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定時間経過毎に測定した温度分布情報をあらかじめ記憶し、ある動作時における前記実動作時内部温度分布情報と比較する際に、当該動作時において動作開始からの経過時間に応じた前記正常時内部温度分布情報と比較する上記(6)の情報不正取得防止方法。
(8)あらかじめ記憶する前記正常時内部温度分布情報および実動作時における前記実動作時内部温度分布情報を、それぞれの測定時における前記半導体装置の周囲温度の変化に基づいて正規化し、正規化した前記正常時内部温度分布情報と正規化した前記実動作時内部温度分布情報とを比較する上記(6)または(7)の情報不正取得防止方法。
(9)前記半導体装置の内部温度の測定結果に基づいてシミュレーションを行い、該シミュレーション結果として生成される装置内部全体の温度分布シミュレーションパターンを、前記正常時内部温度分布情報および前記実動作時内部温度分布情報として用い、両者の温度分布シミュレーションパターンのパターンマッチング結果として、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、前記半導体装置の動作を停止する上記(6)ないし(8)のいずれかの情報不正取得防止方法。
(10)上記(6)ないし(9)のいずれかの情報不正取得防止方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施している情報不正取得防止プログラム。
(11)上記(10)の情報不正取得防止プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録しているプログラム記録媒体。
【符号の説明】
【0057】
1 システムブロック
2 ICカード
3 ICカードコネクタ
4〜17 温度検出器
100 携帯通信端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に格納している内部情報により動作を行う半導体装置において、装置内部に実装される基板上の温度分布を検出する1ないし複数の温度検出器と、各動作時における正常状態において前記温度検出器により測定された装置内部の温度分布情報を正常時内部温度分布情報としてあらかじめ記憶するデータベースとを備え、実動作時において前記温度検出器により実動作時内部温度分布情報として測定された内部の温度分布情報と、前記データベースに当該実動作時と同一の動作時としてあらかじめ記憶された前記正常時内部温度分布情報とを比較した結果、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、装置動作を停止することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記正常時内部温度分布情報として、各動作時において、動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定時間経過毎に測定した温度分布情報を前記データベースに記憶し、ある動作時における前記実動作時内部温度分布情報と比較する際に、当該動作時において動作開始からの経過時間に応じた前記正常時内部温度分布情報と比較することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
当該半導体装置の周囲温度を測定する温度検出器を当該半導体装置の筐体外側に備え、前記データベースに記憶する前記正常時内部温度分布情報および実動作時における前記実動作時内部温度分布情報を、それぞれの測定時における前記周囲温度の変化に基づいて正規化し、正規化した前記正常時内部温度分布情報と正規化した前記実動作時内部温度分布情報とを比較することを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記温度検出器が位置するそれぞれの測定点における内部温度の測定結果に基づいてシミュレーションを行い、該シミュレーション結果として生成される装置内部全体の温度分布シミュレーションパターンを、前記正常時内部温度分布情報および前記実動作時内部温度分布情報として用い、両者の温度分布シミュレーションパターンのパターンマッチング結果として、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、装置動作を停止することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
当該半導体装置が、ICカードに記録した前記内部情報により動作する携帯通信端末、または、前記内部情報を格納したICカードの読み書きを行うICカードリーダ/ライタであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
半導体装置内に格納している内部情報を不正に取得されることを防止する情報不正取得防止方法であって、各動作時における正常状態において前記半導体装置内部の温度分布を測定した結果を正常時内部温度分布情報としてあらかじめ記憶し、実動作時において実動作時内部温度分布情報として測定された内部の温度分布情報と、当該実動作時と同一の動作時としてあらかじめ記憶された前記正常時内部温度分布情報とを比較した結果、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、前記半導体装置の動作を停止することを特徴とする情報不正取得防止方法。
【請求項7】
前記正常時内部温度分布情報として、各動作時において、動作開始から装置内部の温度が飽和するまで、あらかじめ定めた一定時間経過毎に測定した温度分布情報をあらかじめ記憶し、ある動作時における前記実動作時内部温度分布情報と比較する際に、当該動作時において動作開始からの経過時間に応じた前記正常時内部温度分布情報と比較することを特徴とする請求項6に記載の情報不正取得防止方法。
【請求項8】
あらかじめ記憶する前記正常時内部温度分布情報および実動作時における前記実動作時内部温度分布情報を、それぞれの測定時における前記半導体装置の周囲温度の変化に基づいて正規化し、正規化した前記正常時内部温度分布情報と正規化した前記実動作時内部温度分布情報とを比較することを特徴とする請求項6または7に記載の情報不正取得防止方法。
【請求項9】
前記半導体装置の内部温度の測定結果に基づいてシミュレーションを行い、該シミュレーション結果として生成される装置内部全体の温度分布シミュレーションパターンを、前記正常時内部温度分布情報および前記実動作時内部温度分布情報として用い、両者の温度分布シミュレーションパターンのパターンマッチング結果として、両者の差があらかじめ定めた閾値以上に大きい場合、前記内部情報を不正に取得する不正取得状態が発生しているものと判定して、前記半導体装置の動作を停止することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の情報不正取得防止方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれかに記載の情報不正取得防止方法を、コンピュータによって実行可能なプログラムとして実施していることを特徴とする情報不正取得防止プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の情報不正取得防止プログラムを、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録していることを特徴とするプログラム記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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