説明

半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置

【課題】半導体ウェハの一面に接着剤を介して被覆材を貼り付けた後、接着剤に気泡が混入している場合に、半導体ウェハを破壊することなく、気泡を除去できる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供する。
【解決手段】半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を介してフィルム2を貼り付けた後、接着剤3中に気泡4が混入している場合に、接着剤3を伸縮させること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えること等の接着剤3にエネルギーを加えることにより、気泡4を被覆材2側に移動させる気泡移動工程を行った後、フィルム2を剥がすことにより、もしくは、フィルム2に開口部2aを形成することにより、接着剤3中の気泡4を大気に触れさせて除去する脱泡工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法およびそれに用いられる半導体装置の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、写真感光材料等の塗布液を支持体に塗布した後、この塗布液中に含まれる気泡を脱泡除去する超音波脱泡方法が開示されている。この超音波脱泡方法は、支持体に塗布された塗布液を加熱して塗布液の粘度を低下させ、かつ、塗布液に超音波を照射して塗布液中の気泡を気液界面に浮上させて排出する方法である。
【0003】
また、特許文献2には、2枚のガラス基板を接着剤で貼り合わせた後、貼り合わせたガラス基板を上下一対のロール間に通すことで、ガラス基板間の気泡を外側へ排出しながら2枚のガラス基板を接着する接着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−179234号公報
【特許文献2】特開2007−84740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体装置を製造する際では、半導体ウェハの一面を覆う被覆材を半導体ウェハの一面に貼り付ける工程が行われる。この被覆材は、一時的に半導体ウェハに貼り付けられるものであり、目的達成後に半導体ウェハから剥離される。この工程としては、例えば、半導体ウェハ表面にめっき処理をするときの半導体ウェハ裏面の保護を目的として、半導体ウェハの裏面に保護材を貼り付ける工程や、半導体ウェハのバックグラインディング処理を行うために、半導体ウェハの表面に支持体を貼り付ける工程等が挙げられる。
【0006】
半導体ウェハの一面に被覆材を貼り付ける工程では、例えば、半導体ウェハの一面に接着剤を塗布した後、半導体ウェハの一面に接着剤を介して被覆材を貼り付け、その後、接着剤を硬化させることを行うが、半導体ウェハの一面に接着剤を介して被覆材を貼り付けるときに、半導体ウェハと被覆材との間の接着剤に気泡が混入しやすいという問題がある。
【0007】
半導体ウェハと被覆材との間の接着剤に気泡が混入すると、未接着部分が生じたり、被覆材を半導体ウェハから剥離する際に、気泡を基点として接着剤が残るため、被覆材の剥離後に接着剤の除去作業を要したりするという問題が生じる。さらに、残った接着剤の除去作業時に半導体ウェハが割れてしまったり、残った接着剤を完全に除去することが困難であるため、半導体ウェハが汚れてしまったりという問題が生じる。
【0008】
このため、半導体ウェハの一面に被覆材を貼り付ける工程を行う際では、接着剤を硬化させる前に、接着剤中の気泡を除去(脱泡)することが必要である。
【0009】
そこで、半導体ウェハの一面に接着剤を介して被覆材を貼り付ける工程を有する半導体装置の製造方法において、被覆材を貼り付けたときに混入した気泡を除去する方法として、次の2つの方法が考えられる。
【0010】
すなわち、第1の方法として、半導体ウェハの一面に接着剤を塗布した後、特許文献1に記載の超音波脱泡方法を利用して、接着剤中の気泡を気液界面に浮上させて除去した後に、半導体ウェハの一面に被覆材を貼り付けることが考えられる。
【0011】
しかし、接着剤中の気泡を除去しても、その後に半導体ウェハの一面に被覆材を貼り付けるので、被覆材を貼り付ける際に気泡が接着剤に混入してしまう。このため、第1の方法は好ましくない。
【0012】
また、第2の方法として、半導体ウェハの一面に接着剤を介して接着剤を貼り付けた後、特許文献2に記載の接着装置を利用して、接着剤中の気泡を除去することが考えられる。
【0013】
しかし、半導体ウェハは脆く、かつ、半導体ウェハには反りが生じているため、上下一対のロールの間に半導体ウェハを通すと、反った半導体ウェハを平たく伸ばすような応力が半導体ウェハにかかり、半導体ウェハが破壊する恐れがある。このため、第2の方法は好ましくない。
【0014】
本発明は上記点に鑑みて、半導体ウェハの一面に接着剤を介して被覆材を貼り付けた後、接着剤に気泡が混入している場合に、半導体ウェハを破壊することなく、気泡を除去できる半導体装置の製造方法および半導体装置の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を塗布した後、半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付ける工程を有する半導体装置の製造方法において、
半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後、接着剤(3)中に気泡(4)が混入している場合に、接着剤(3)にエネルギーを加えて、気泡(4)を被覆材(2)側に移動させる気泡移動工程と、
気泡移動工程の後、被覆材(2)を剥がすことにより、もしくは、被覆材(2)に開口部(2a)を形成することにより、接着剤(3)中の気泡(4)を大気に触れさせて除去する脱泡工程とを有することを特徴とする。
【0016】
この方法によれば、半導体ウェハの一面に被覆材を貼り付けた後に、上記した気泡移動工程と脱泡工程とを行うので、被覆材を貼り付ける際に生じた接着剤中の気泡を除去することができる。
【0017】
また、この方法によれば、気泡移動工程で、気泡を移動させるためのエネルギーを加え、脱泡工程では、被覆材を剥がすか、被覆材に開口部を形成することから、反った半導体ウェハを平たく伸ばすような応力が半導体ウェハにかかるのを極力抑えられ、半導体ウェハを破壊することなく、接着剤中の気泡を除去することができる。
【0018】
請求項1に記載の発明においては、例えば、請求項2に記載の発明のように、脱泡工程で、被覆材(2)に開口部(2a)を形成した後、開口部(2a)から気泡(4)を吸引することが好ましい。
【0019】
請求項1に記載の発明における気泡移動工程で接着剤(3)にエネルギーを加えることとしては、請求項3に記載のように、被覆材(2)を剥がしたり元の位置に戻したりして接着剤(3)を伸縮させること、接着剤(3)に振動を与えること、接着剤(3)に熱を加えること、半導体ウェハ(1)の被覆材(2)側を中心に向けて半導体ウェハ(1)を公転させて接着剤(3)に遠心力を与えることから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0020】
請求項1に記載の発明においては、請求項4に記載の発明のように、脱泡工程の前に、半導体ウェハ(1)の一面(1a)の中心部を中心として半導体ウェハ(1)を自転させて、接着剤(3)に遠心力を与えることにより、接着剤(3)中の複数の気泡(4)を中心部に集めることが好ましい。なお、脱泡工程の前には、気泡移動工程の前後や気泡移動工程時が含まれる。
【0021】
これによれば、気泡を半導体ウェハの中心部に集めるので、常に、気泡の除去位置を半導体ウェハの中心部に固定できる。このため、脱泡工程を行う際に、気泡の位置検出および気泡の除去位置の移動が不要となるので、脱泡工程の自動化が容易となる。
【0022】
また、請求項5に記載のように、SiCからなる半導体ウェハは脆いことから、特に、SiCからなる半導体ウェハを用いた半導体装置の製造方法に、請求項1に記載の発明を適用することが好ましい。
【0023】
請求項6に記載の発明は、半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後に、接着剤(3)中の気泡(4)を除去するための半導体装置の製造装置であって、
接着剤(3)中の気泡(4)を被覆材(2)側に移動させるために、接着剤(3)にエネルギーを加えるエネルギー付加機構(12、13、14)と、
被覆材(2)側に移動させた気泡(4)を大気に触れさせて除去するために、被覆材(2)を剥がす機構(14)とを備えることを特徴としている。
【0024】
また、請求項7に記載の発明は、半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後に、接着剤(3)中の気泡(4)を除去するための半導体装置の製造装置であって、
接着剤(3)中の気泡(4)を被覆材(2)側に移動させるために、接着剤(3)にエネルギーを加えるエネルギー付加機構(12、13、14)と、
被覆材(2)側に移動させた接着剤(3)中の気泡(4)を大気に触れさせて除去するために、被覆材(2)に開口部(2a)を形成する機構(20)とを備えることを特徴としている。
【0025】
請求項6、7に記載の装置は、請求項1に記載の方法を実施する際に用いられるものであるため、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏する。
【0026】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の装置において、被覆材(2)に開口部(2a)を形成する機構(20)は、さらに、開口部(2a)から気泡(4)を吸引する機能を有することを特徴としている。この装置を用いることで、請求項2に記載の方法を実施することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8に記載の装置において、エネルギー付加機構は、被覆材(2)を剥がしたり元の位置に戻したりして接着剤(3)を伸縮させる機構(14)、接着剤(3)に振動を与える機構(12)、接着剤(3)に熱を加える機構(13)、半導体ウェハ(1)の被覆材(2)側を中心に向けて半導体ウェハ(1)を公転させて接着剤(3)に遠心力を与える機構から選ばれる少なくとも1つであることを特徴としている。この装置を用いることで、請求項3に記載の方法を実施することができる。
【0028】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9に記載の装置において、接着剤(3)中の複数の気泡(4)を半導体ウェハ(1)の一面(1a)の中心部に集めるために、中心部を中心として半導体ウェハ(1)を自転させて、接着剤(3)に遠心力を与える機構を備えることを特徴としている。この装置を用いることで、請求項4に記載の方法を実施することができる。
【0029】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1実施形態における半導体装置の製造装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1実施形態における気泡移動工程を示す半導体ウェハの断面図である。
【図3】第1実施形態における脱泡工程を示す半導体ウェハの断面図である。
【図4】第2実施形態における半導体装置の製造装置の概略構成を示す図である。
【図5】第2実施形態における脱泡工程を示す半導体ウェハの断面図である。
【図6】第3実施形態における気泡移動工程を示す半導体ウェハの上面図である。
【図7】第3実施形態における脱泡工程を示す半導体ウェハの断面図である。
【図8】第4実施形態における半導体装置の製造装置の概略構成を示す図である。
【図9】第4実施形態における気泡移動工程を示す半導体ウェハの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0032】
(第1実施形態)
図1に、本実施形態における脱泡装置10の概略構成図を示す。この脱泡装置10が本発明の半導体装置の製造装置に相当する。
【0033】
図1に示すように、脱泡装置10は、ステージ11と、ステージ11に取り付けられた振動発生器12および加熱器13とを備えている。
【0034】
ステージ11の表面上に、有機樹脂製のフィルム2が貼り付けられた半導体ウェハ1が搭載される。フィルム2は、半導体ウェハ1の一面1aを覆う被覆材であり、半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を介して貼り付けられている。半導体ウェハ1は、一面1aを上とし、その反対側の他面1bを下にして、ステージ11の表面上に固定される。
【0035】
振動発生器12は、ステージ11上の半導体ウェハ1に塗布された接着剤3に振動を与える機構である。振動発生器12としては、例えば、超音波発生器を採用でき、この場合、 超音波発生器で発生させた超音波を接着剤3に照射することで、接着剤3に振動を与える。
【0036】
加熱器13は、ステージ11上の半導体ウェハ1に塗布された接着剤3に熱を加える機構である。
【0037】
さらに、脱泡装置10は、フィルム移動用アーム14と、フィルム押さえ用アーム15と、光源16と、カメラ17と、画像処理部18と、制御部19とを備えている。
【0038】
フィルム移動用アーム14は、フィルム2の端部を保持しながら移動することで、フィルム2を半導体ウェハ1から剥がしたり元の位置に戻したりする機構である。図1中のフィルム移動用アーム14は、その先端部でフィルム2を掴んで保持するものであるが、その先端部でフィルム2を吸引して保持するものとしても良い。フィルム移動用アーム14の移動方向は、図1中の矢印方向、すなわち、半導体ウェハ1の一面1aの垂直方向に対して所定角度傾斜した方向である。
【0039】
なお、振動発生器12、加熱器13およびフィルム移動用アーム14が、接着剤3中の気泡4を被覆材2側に移動させるために、接着剤3にエネルギーを加えるエネルギー付加機構に相当する。
【0040】
フィルム押さえ用アーム15は、半導体ウェハ1の一面1aに貼り付けたフィルム2がずれないように、フィルム2を押さえて固定するものである。
【0041】
光源16は、接着剤3中の気泡を見つけるために、ステージ11上のフィルム2が貼り付けられた半導体ウェハ1に対して光を照射する。
【0042】
カメラ17は、接着剤3中の気泡の数および位置を検出する検出手段である。カメラ17でフィルム2越しに接着剤3の画像を取得し、取得した画像を取得した画像を画像処理部18で処理することで、気泡の数および位置を特定する。なお、カメラ17の代わりに人間の目で気泡の数および位置を特定しても良い。画像処理部18によって特定された気泡の数および位置の情報は、制御部19に入力される。
【0043】
制御部19は、振動発生器12、加熱器13、フィルム移動用アーム14およびフィルム押さえ用アーム15を制御するものである。制御部19は、接着剤3中の気泡をフィルム2側に移動させるために、振動発生器12、加熱器13を作動させるとともに、画像処理部18から入力された気泡の数および位置の情報に基づいて、移動した気泡が大気に触れて除去されるように、フィルム移動用アーム14を作動させる。
【0044】
次に、半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を介してフィルム2を貼り付ける工程を有する半導体装置の製造方法において、フィルム2を貼り付けたときに混入した接着剤3中の気泡を除去する方法について説明する。この気泡の除去は、上述した脱泡装置10を用いて大気中で行うものである。
【0045】
まず、脱泡装置10のステージ11上に半導体ウェハ1を搭載し、半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を塗布した後、半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を介してフィルム2を貼り付ける。半導体ウェハ1としては、例えば、SiCからなるものが用いられ、接着剤3としては、例えば、紫外線硬化性樹脂が用いられる。なお、フィルム2の貼り付けを脱泡装置10以外の場所で行っても良く、この場合、フィルム2を貼り付けた後の半導体ウェハ1を脱泡装置10のステージ11上に搭載する。
【0046】
そして、半導体ウェハ1の一面1aに接着剤3を介してフィルム2を貼り付けた後、接着剤3中に気泡が混入している場合に、接着剤3に人工的にエネルギーを加えて、気泡をフィルム2側に移動させる気泡移動工程を行う。図2(a)〜(c)に気泡移動工程の模式図を示す。本実施形態では、図2(a)〜(c)の3つを全て行う。
【0047】
具体的には、図2(a)に示すように、フィルム移動用アーム14を用いて、フィルム2を半導体ウェハ1から剥がしたり元の位置に戻したりする。フィルム2を剥がす際、接着剤3がフィルム2に張り付いた状態で引っ張られ、フィルム2が接着剤3から剥がれると接着剤3が縮む。このように、接着剤3を伸縮させることで、接着剤3中の気泡4をフィルム2側に浮上させる。
【0048】
さらに、図2(b)に示すように、振動発生器12から接着剤3に振動5を与えることで、気泡4をフィルム2側に浮上させる。
【0049】
さらに、図2(c)に示すように、加熱器13から接着剤3に熱6を加えることで、接着剤3の粘度を下げ、気泡4をフィルム2側に浮上させる。
【0050】
続いて、気泡移動工程の後、接着剤3中のフィルム2側に位置する気泡を大気に触れさせて除去する脱泡工程を行う。図3(a)、(b)に脱泡工程の模式図を示す。
【0051】
具体的には、図3(a)に示すように、フィルム移動用アーム14を用いて、フィルム2を接着剤3から剥がすことにより、気泡4を大気へ開放して除去する。このとき、カメラ17および画像処理部18によって取得した気泡4の数および位置情報に基づいて、フィルム移動用アーム14が制御部19に制御され、フィルム2のうち気泡4に対向する部分を半導体ウェハ1(接着剤3)から剥がす。
【0052】
続いて、図3(b)に示すように、フィルム移動用アーム14を用いて、フィルム2を曲げながら戻して半導体ウェハ1に貼り付ける。このとき、図3(b)中の矢印のように、接着剤3とフィルム2との間にダウンフローを与えることで、接着剤3中への気泡の再混入を防止する。
【0053】
その後、図示しないが、接着剤3に紫外線を照射することで、接着剤3を硬化させる。そして、半導体ウェハ1に対して、めっき処理、バックグラインディング処理等が実施される。
【0054】
以上の説明の通り、本実施形態の気泡除去方法によれば、半導体ウェハ1の一面1aにフィルム2を貼り付けた後に、上記した気泡移動工程と脱泡工程とを行うので、フィルム2を貼り付ける際に生じた接着剤3中の気泡4を確実に除去することができる。
【0055】
また、本実施形態の気泡除去方法によれば、気泡移動工程で、フィルム2を剥がしたり、接着剤3に振動や熱を与える程度であり、脱泡工程で、フィルム2を剥がす程度であることから、反った半導体ウェハを平たく伸ばすような応力が半導体ウェハ1にかかるのを極力抑えられ、半導体ウェハ1を破壊することなく、接着剤3中の気泡4を除去できる。
【0056】
また、半導体ウェハ1の一面1aにフィルム2を貼り付けた後に、単に放置することで、気泡を浮上させることも考えられるが、本実施形態によれば、接着剤3に対して人工的にエネルギーを加えて気泡の浮上を促進させるので、単に放置する場合よりも生産性を向上できる。
【0057】
なお、本実施形態では、気泡移動工程において、接着剤3を伸縮させること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの3つを実施したが、これら3つを全て実施しなくても、これら3つのうち少なくとも1つ以上を実施すれば良い。
【0058】
ところで、気泡移動工程の接着剤3を伸縮させる場合と脱泡工程では、フィルム2を接着剤3から剥がすことにより、接着剤3の乾燥、埃の混入が生じ、接着剤3の接着力が低下するおそれがあるが、気泡移動工程において、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの少なくとも2つを実施すれば、接着剤の乾燥、埃の混入を最小限に抑えられる。
【0059】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して脱泡工程の具体的内容を変更したものであり、以下では、第1実施形態に対する変更点を主に説明する。
【0060】
図4に、本実施形態における脱泡装置10の概略構成図を示す。本実施形態の脱泡装置10は、第1実施形態で説明した図1の脱泡装置10に対して、吸引ノズル20、真空ポンプ21を追加したものである。
【0061】
吸引ノズル20は、一端側をフィルム2に突き刺して開口部を形成し、開口部に突き刺した状態で一端側から接着剤中の気泡を吸引するものであり、吸引ノズル20の他端側に真空ポンプ21が接続されている。このように、本実施形態では吸引ノズル20がフィルム2に開口部2aを形成する機構に相当し、当該機構は開口部2aから気泡を吸引する機能を有している。また、吸引ノズル20は、移動可能であり、制御部19によって吸引ノズル20の移動および真空ポンプの作動・停止が制御される。
【0062】
次に、本実施形態の気泡除去方法について説明する。
【0063】
本実施形態では、気泡移動工程で、第1実施形態で説明した接着剤3を伸縮させること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの3つのうち少なくとも1つ以上を実施し、以下の脱泡工程を行う。図5(a)、(b)に、本実施形態における脱泡工程の模式図を示す。
【0064】
本実施形態では、図5(a)に示すように、制御部19が、カメラ17および画像処理部18によって取得した気泡4の数および位置情報に基づいて、吸引ノズル20を気泡4が吸引できる位置へ移動させる。そして、吸引ノズル20をフィルム2に突き刺すことにより、フィルム2に開口部2aを形成した後、真空ポンプ21を作動させ、吸引ノズル20の一端側から気泡4を吸引することにより、気泡4を除去する。
【0065】
この場合では、図5(b)に示すように、結果的に、フィルム2の開口部2aは、接着剤3自体によって塞がれる。
【0066】
なお、本実施形態では、開口部2aを形成した後に、気泡4を吸引したが、開口部2aを形成すれば、気泡4が大気に触れることで、気泡4を除去できるので、吸引せずに、単に、開口部2aを形成しても良い。この場合、開口部2aの周辺部を外側から押さえることが好ましい。
【0067】
ただし、本実施形態のように、気泡4を吸引すれば、脱泡工程にかかる時間を短縮でき、生産性を向上できる。
【0068】
また、本実施形態では、脱泡工程において、フィルム2に対して部分的に開口部2aを形成するだけなので、第1実施形態のようにフィルム2を接着剤3から剥がす場合と比較して、脱泡工程での接着剤3の乾燥、埃の混入を低減できる。
【0069】
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態の気泡除去方法に対して、さらに、複数の気泡を集めることを追加したものであり、以下では、第2実施形態に対する変更点を説明する。
【0070】
本実施形態で用いる脱泡装置10は、第2実施形態で説明した図4の脱泡装置10において、ステージ11を回転式のステージに変更したものであり、その他の構成は図4の脱泡装置10と同じである。回転式のステージ11は、半導体ウェハ1の一面1aの中心部を中心として半導体ウェハ1を自転させて、接着剤3に遠心力を与える機構である。
【0071】
図6(a)、(b)に、本実施形態の気泡移動工程における半導体ウェハ1の上面図を示す。本実施形態では、気泡移動工程において、図6(a)に示すように、回転式ステージ11を回転させながら、振動発生器12から接着剤3に振動を与えるとともに、加熱器13から接着剤3に熱を与える。
【0072】
このとき、回転式ステージ11を回転させることで、半導体ウェハ1の一面1aの中心部を中心として半導体ウェハ1を自転させる。これにより、図6(b)に示すように、接着剤3に遠心力を与えて、接着剤3よりも軽い気泡4を中心部に集めることができる。
【0073】
その後、第2実施形態と同様に、吸引ノズル20を用いた脱泡工程を行う。図7に、本実施形態の脱泡工程における半導体ウェハ1の断面図を示す。本実施形態の脱泡工程では、気泡4が半導体ウェハ1の中心部に集まっているので、フィルム2のうち半導体ウェハ1の中心部に対向する部位に、吸引ノズル20を突き刺させば良い。
【0074】
このように、本実施形態によれば、気泡4を半導体ウェハ1の中心部に集めるので、常に、気泡4の除去位置を半導体ウェハ1の中心部に固定できる。このため、脱泡工程を行うための気泡の位置検出およびその検出結果に基づく気泡の除去位置の変更が不要となるので、脱泡工程の自動化が容易となる。
【0075】
なお、本実施形態では、半導体ウェハ1を自転させて気泡4を中心部に集めることを、気泡移動工程時に実施したが、脱泡工程の前であればいつ実施しても良く、気泡移動工程の前後に実施しても良い。例えば、第1実施形態のように、接着剤3を伸縮させること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの3つを全て同時に実施した後、半導体ウェハ1を自転させて気泡4を中心部に集めるようにしても良い。
【0076】
(第4実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に対して気泡移動工程の具体的内容を変更したものであり、以下では、第1実施形態に対する変更点を主に説明する。
【0077】
図8に本実施形態における脱泡装置10の概略構成図を示す。本実施形態で用いる脱泡装置10は、図1の脱泡装置10と同様に、ステージ11、振動発生器12、加熱器13を備え、さらに、ステージ11は、ステージ11から離れた位置にある回転軸30とつながっており、回転軸30を中心として、ステージ11が回転(公転)する機構を備えている。ステージ11が公転することで、半導体ウェハ1のフィルム2側を中心に向けた状態で、半導体ウェハ1が公転し、接着剤3に遠心力を与えることができる。
【0078】
なお、本実施形態の脱泡装置10では、回転軸30を中心としてステージ11が回転(公転)する機構が、接着剤3中の気泡4を被覆材2側に移動させるために、接着剤3にエネルギーを加えるエネルギー付加機構に相当する。
【0079】
また、本実施形態で用いる脱泡装置10は、図示しないが、図1もしくは図4の脱泡装置10と同様に、フィルム移動用アーム14もしくは吸引ノズル20を備えている。
【0080】
そして、本実施形態では、気泡移動工程において、図8に示すように、ステージ11を公転させながら、振動発生器12から接着剤3に振動を与えるとともに、加熱器13から接着剤3に熱を与える。
【0081】
ここで、図9に、ステージ11を公転させているときの半導体ウェハ1の断面図を示す。図9に示すように、ステージ11を公転させて、接着剤3に遠心力を与えることで、接着剤3よりも軽い気泡4をフィルム2側に移動させることができる。
【0082】
このように、半導体ウェハ1のフィルム2側を中心に向けて半導体ウェハ1を公転させて接着剤3に遠心力を与えること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの3つにより、気泡4をフィルム2側に移動させる。
【0083】
このとき、第3実施形態のように、回転式のステージ11によって、半導体ウェハ1を自転させて気泡4を中心部に集めるようにしても良い。
【0084】
その後、脱泡工程を、第1実施形態もしくは第2実施形態と同様に実施する。例えば、気泡移動工程後に、半導体ウェハ1を搭載したステージ11を移動させ、フィルム移動用アーム14もしくは吸引ノズル20を用いて、気泡4を除去する。
【0085】
なお、本実施形態では、気泡移動工程において、接着剤3に遠心力を与えること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの3つを実施したが、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えることの一方もしくは両方を省略しても良い。
【0086】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、気泡移動工程の例として、接着剤3を伸縮させること、接着剤3に振動を与えること、接着剤3に熱を与えること、接着剤3に遠心力を与えることを説明したが、これら4つを1つずつもしくは複数ずつ順に実施しても良い。要するに、気泡移動工程では、これら4つを実施することが可能であり、これら4つから選ばれる少なくとも1つを実施すれば良い。
【0087】
(2)上述の各実施形態では、気泡移動工程で、接着剤3に振動や熱を与えた後、脱泡工程を行ったが、脱泡工程において、接着剤3に振動や熱を与え続けても良い。
【0088】
(3)上述の各実施形態では、被覆材として、有機樹脂製のフィルム2を用いたが、ガラス板等を用いても良い。ガラス板のように曲がらない板状の被覆材を用いた場合でも、被覆材を剥がしたり、被覆材に開口部を形成したりすることは可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 半導体ウェハ
1a 半導体ウェハの一面
2 フィルム(被覆材)
3 接着剤
10 脱泡装置(半導体装置の製造装置)
11 ステージ、回転式ステージ
12 振動発生器(エネルギー付加機構)
13 加熱器(エネルギー付加機構)
14 フィルム移動用アーム(エネルギー付加機構)
20 吸引ノズル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を塗布した後、前記半導体ウェハ(1)の一面(1a)に前記接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付ける工程を有する半導体装置の製造方法において、
前記半導体ウェハ(1)の一面(1a)に前記接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後、前記接着剤(3)中に気泡(4)が混入している場合に、前記接着剤(3)にエネルギーを加えて、前記気泡(4)を前記被覆材(2)側に移動させる気泡移動工程と、
前記気泡移動工程の後、前記被覆材(2)を剥がすことにより、もしくは、前記被覆材(2)に開口部(2a)を形成することにより、前記接着剤(3)中の前記気泡(4)を大気に触れさせて除去する脱泡工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記脱泡工程では、前記被覆材(2)に前記開口部(2a)を形成した後、前記開口部(2a)から前記気泡(4)を吸引することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記気泡移動工程における前記接着剤(3)にエネルギーを加えることは、前記被覆材(2)を剥がしたり元の位置に戻したりして前記接着剤(3)を伸縮させること、前記接着剤(3)に振動を与えること、前記接着剤(3)に熱を加えること、前記半導体ウェハ(1)の前記被覆材(2)側を中心に向けて前記半導体ウェハ(1)を公転させて前記接着剤(3)に遠心力を与えることから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記脱泡工程の前に、前記半導体ウェハ(1)の前記一面(1a)の中心部を中心として前記半導体ウェハ(1)を自転させて、前記接着剤(3)に遠心力を与えることにより、前記接着剤(3)中の複数の前記気泡(4)を前記中心部に集めることを行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体ウェハ(1)はSiCからなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後に、前記接着剤(3)中の気泡(4)を除去するための半導体装置の製造装置であって、
前記接着剤(3)中の前記気泡(4)を前記被覆材(2)側に移動させるために、前記接着剤(3)にエネルギーを加えるエネルギー付加機構(12、13、14)と、
前記被覆材(2)側に移動させた前記気泡(4)を大気に触れさせて除去するために、前記被覆材(2)を剥がす機構(14)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項7】
半導体ウェハ(1)の一面(1a)に接着剤(3)を介して被覆材(2)を貼り付けた後に、前記接着剤(3)中の気泡(4)を除去するための半導体装置の製造装置であって、
前記接着剤(3)中の前記気泡(4)を前記被覆材(2)側に移動させるために、前記接着剤(3)にエネルギーを加えるエネルギー付加機構(12、13、14)と、
前記被覆材(2)側に移動させた前記接着剤(3)中の前記気泡(4)を大気に触れさせて除去するために、前記被覆材(2)に開口部(2a)を形成する機構(20)とを備えることを特徴とする半導体装置の製造装置。
【請求項8】
前記被覆材(2)に開口部(2a)を形成する機構(20)は、さらに、前記開口部(2a)から前記気泡(4)を吸引する機能を有することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造装置。
【請求項9】
前記エネルギー付加機構は、前記被覆材(2)を剥がしたり元の位置に戻したりして前記接着剤(3)を伸縮させる機構(14)、前記接着剤(3)に振動を与える機構(12)、前記接着剤(3)に熱を加える機構(13)、前記半導体ウェハ(1)の前記被覆材(2)側を中心に向けて前記半導体ウェハ(1)を公転させて前記接着剤(3)に遠心力を与える機構から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置。
【請求項10】
前記接着剤(3)中の複数の気泡(4)を前記半導体ウェハ(1)の前記一面(1a)の中心部に集めるために、前記中心部を中心として前記半導体ウェハ(1)を自転させて、前記接着剤(3)に遠心力を与える機構を備えることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の半導体装置の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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