説明

半導体装置の製造方法

【課題】不純物が注入される基板の表面の荒れを抑制させる。
【解決手段】処理室内に基板を搬入して処理室内に設けられた基板載置部上に基板を載置する基板搬入工程と、ボロン含有ガス及び水素含有ガスをガス供給部により処理室内に供給し、処理室内の雰囲気を前記ボロン含有ガス及び水素含有ガスの混合雰囲気とするガス供給工程と、処理室内に供給されたボロン含有ガス及び水素含有ガスをプラズマ生成部によりプラズマ状態とし、プラズマ状態となったボロン含有ガス及び水素含有ガスを基板表面に供給して基板中にボロンを注入するプラズマドーピング工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いて基板を処理する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
DRAMやIC等の半導体装置の製造工程の一工程として、シリコン(Si)からなる基板の表面近傍に、プラズマを用いて不純物としてのボロン(B)を注入(ドーピング)する基板処理工程が実施されてきた。係る基板処理工程では、例えば、シリコン(Si)からなる基板が搬入された処理室内に、不純物としてのボロン(B)を含有するボロン含有ガスを供給する工程と、処理室内に供給されたボロン含有ガスをプラズマ状態とし、プラズマ状態となったボロン含有ガスを基板表面に供給して基板中にボロンを注入する工程と、を順次実施していた。なお、処理室内に供給するボロン含有ガスには、ヘリウム(He)ガスを更に混合(添加)させる場合があった。ヘリウムガスを混合させることで、ボロンの注入予定領域である基板の表面近傍をアモルファス化することができ、ボロンの注入深さ分布を浅く制御することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の方法によっては、ボロンが注入される基板の表面が荒れてしまう場合があった。特に、ボロン含有ガスにヘリウムガスを混合させると、基板の表面の荒れが増大してしまう場合があった。
【0004】
本発明は、不純物が注入される基板の表面の荒れを抑制させることが可能な半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、処理室内に基板を搬入して前記処理室内に設けられた基板載置部上に前記基板を載置する基板搬入工程と、ボロン含有ガス及び水素含有ガスをガス供給部により前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気を前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスの混合雰囲気とするガス供給工程と、前記処理室内に供給された前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスをプラズマ生成部によりプラズマ状態とし、プラズマ状態となった前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスを前記基板表面に供給して前記基板中にボロンを注入するプラズマドーピング工程と、を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明にかかる半導体装置の製造方法によれば、不純物が注入される基板の表面の荒れを抑制させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態にかかる半導体装置の製造方法の一工程を実施する基板処理装置の断面構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る半導体製造装置としてのICP方式プラズマ処理装置の断面構成図である。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る半導体製造装置としてのECR方式プラズマ処理装置の断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0009】
(1)半導体製造装置の構成
まず、本実施形態にかかる半導体装置の製造工程の一工程を実施する基板処理装置の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、MMT装置として構成された基板処理装置の断面構成図である。MMT装置とは、電界と磁界とにより高密度プラズマを発生できる変形マグネトロン型プラズマ源(Modified Magnetron Typed
Plasma Source)を用い、例えば基板としてのシリコンからなるウエハ100をプラズマ処理する装置である。
【0010】
基板処理装置は、ウエハ100をプラズマ処理する処理炉202を備えている。そして、処理炉202は、処理室201を構成する処理容器203、ガス供給部、排気部、プラズマ生成部、及びコントローラ121と、を備えている。
【0011】
図4に示すとおり、処理室201が備える処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。そして、上側容器210が下側容器211の上に被せられることにより、処理室201が形成される。なお、上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al)又は石英(SiO)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0012】
処理室201の底側中央には、ウエハ100を保持する基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は、ウエハ100上に形成する膜の金属汚染を低減することが出来るように、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料で形成されている。
【0013】
サセプタ217の内部には、加熱手段としてのヒータ(図示せず)が一体的に埋め込まれている。サセプタ217内に設けられたヒータに電力が供給されると、ウエハ100の表面が例えば室温〜650℃程度にまで加熱されるように構成されている。
【0014】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217の内部には、インピーダンスを変化させる電極としての第2の電極217bが装備されている。この第2の電極217bは、インピーダンス可変手段274を介して接地されている。インピーダンス可変手段274は、コイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのパターン数や可変コンデンサの容量値を制御することにより、第2の電極217b及びサセプタ217を介してウエハ100の電位を制御できるようになっている。
【0015】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降手段268が設けられている。サセプタ217には、貫通孔217aが設けられている。前述の下側容器211底面には、ウエハ100を突上げるウエハ突上げピン266が、少なくとも3箇所設けられている。そして、貫通孔217a及びウエハ突上げピン266は、サセプタ昇降手段268によりサセプタ217が下降させられた時に、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で貫通孔217aを突き抜けるように互いに構成されている。
【0016】
下側容器211の側壁には、仕切弁となるゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244が開いている時には、搬送手段(図中省略)を用いて処理室201内へウエハ100を搬入し、または処理室201外へとウエハ100を搬出することができるようになっている。ゲートバルブ244を閉めることにより、処理室201内を気密に閉塞することができるようになっている。
【0017】
処理室201の上部には、処理室201内へガスを供給するシャワーヘッド236が設けられている。シャワーヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239と、を備えている。
【0018】
ガス導入口234には、バッファ室237内へガスを供給するガス供給管232が接続されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入されるガスを分散する分散空間として機能する。
【0019】
ガス供給管232の上流側には、ボロン含有ガスとしてのジボラン(B)ガスを供給するボロン含有ガス供給管301の下流端、水素含有ガスとしての水素(H)ガスを供給する水素含有ガス供給管302の下流端、ヘリウム含有ガスとしてのHeガスを供給するヘリウム含有ガス供給管303の下流端が、互いに合流するように一本化して接続されている。ボロン含有ガス供給管301には、上流側から順に、Bガス供給源301c、流量制御器であるマスフローコントローラ301b、バルブ301aが設けられている。水素含有ガス供給管302には、上流側から順に、Hガス供給源302c、流量制御器であるマスフローコントローラ302b、バルブ302aが設けられている。ヘリウム含有ガス供給管303には、上流側から順に、Heガス供給源303c、流量制御器であるマスフローコントローラ303b、バルブ303aが設けられている。マスフローコントローラ301b,302b,303bにより流量調整しつつ、バルブ301a,302a,303aを開閉させることにより、ガス供給管232を介して処理室201内へ所定の流量のBガス、Hガス、Heガスをそれぞれ供給自在に構成されている。
【0020】
主に、シャワーヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、ガス供給管232、ボロン含有ガス供給管301、Bガス供給源301c、マスフローコントローラ301b、バルブ301a、水素含有ガス供給管302、Hガス供給源302c、マスフローコントローラ302b、バルブ302a、ヘリウム含有ガス供給管303、Heガス供給源303c、マスフローコントローラ303b、バルブ303aにより、本実施形態に係るガス供給部が構成されている。
【0021】
下側容器211の側壁には、処理室201内からガスを排気するガス排気口235が設けられている。ガス排気口235には、ガスを排気するガス排気管231の上流端が接続されている。ガス排気管231には、上流側から順に、圧力調整器であるAPC242、開閉弁であるバルブ243b、排気装置である真空ポンプ246が設けられている。主に、ガス排気口235、ガス排気管231、APC242、バルブ243b、真空ポンプ246により、本実施形態に係る排気部が構成されている。
【0022】
処理容器203(上側容器210)の外周には、処理室201内のプラズマ生成領域224を囲うように、第1の電極としての筒状電極215が設けられている。筒状電極215は、筒状、例えば円筒状に形成されている。筒状電極215は、インピーダンスの整合を行うための整合器272を介して、高周波電力を印加するための高周波電源273に接続されている。筒状電極215は、処理室201に供給されるOガス及びNガスをプラズマ励起させる放電手段として機能する。
【0023】
筒状電極215の外側表面の上下端部には、上部磁石216a及び下部磁石216bがそれぞれ取り付けられている。上部磁石216a及び下部磁石2は、それぞれ筒状、例えばリング状に形成された永久磁石として構成されている。
【0024】
上部磁石216a及び下部磁石2は、処理室201の半径方向に沿った両端(すなわち内周端と外周端)に磁極を有している。上部磁石216a及び下部磁石216bの磁極の向きは、逆向きになるよう配置されている。すなわち、上部磁石216a及び下部磁石216bの内周部の磁極同士は異極となっている。これにより、筒状電極215の内側表面に沿って、円筒軸方向の磁力線が形成されている。
【0025】
処理室201内にBガス、Hガス、Heガスを導入した後、筒状電極215に高周波電力を供給して電界を形成するとともに、上部磁石216a、及び下部磁石216bを用いて磁界を形成することにより、処理室201内にマグネトロン放電プラズマが生成される。この際、放出された電子を上述の電磁界が周回運動させることにより、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命かつ高密度のプラズマを生成させることができる。
【0026】
主に、筒状電極215、整合器272、高周波電源273、上部磁石216a、及び下部磁石216bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。なお、筒状電極215、上部磁石216a、及び下部磁石216bの周囲には、これらが形成する電磁界が外部環境や他処理炉等の装置に悪影響を及ぼさないように、電磁界を有効に遮蔽する金属製の遮蔽板223が設けられている。
【0027】
制御部としてのコントローラ121は、信号線Aを通じてAPC242、バルブ243b、及び真空ポンプ246を、信号線Bを通じてサセプタ昇降手段268を、信号線Cを通じてゲートバルブ244を、信号線Dを通じて整合器272、及び高周波電源273を、信号線Eを通じてマスフローコントローラ301b,302b,303b、及びバルブ301a,302a,303aを、さらに図示しない信号線を通じてサセプタに埋め込まれたヒータ、インピーダンス可変手段274を、それぞれ制御するように構成されている。
【0028】
(2)基板処理工程
続いて、本実施形態にかかる基板処理工程について説明する。本実施形態に係る基板処理工程は、上述の基板処理装置により、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0029】
(基板搬入工程)
まず、ウエハ100の搬送位置までサセプタ217を下降させ、貫通孔217aを貫通した突き上げピン266の上端を、サセプタ217表面から所定の高さ分だけ突出させる。次に、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送手段を用いて、サセプタ217の表面から突出させたウエハ突上げピン266上に、ウエハ100を支持させる。続いて、搬送手段を処理室201の外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201を密閉する。続いて、サセプタ昇降手段268を用いてサセプタ217を上昇させ、サセプタ217の上面にウエハ100を配置させる。その後、ウエハ100を所定の処理位置まで上昇させる。
【0030】
(温度及び圧力調整工程)
続いて、サセプタの内部に埋め込まれたヒータ(図示せず)に電力を供給し、ウエハ100の表面を加熱する。ウエハ100の表面温度は、例えば室温〜650℃の範囲とする。なお、ウエハ100の表面を、上述の温度を超えた温度であって例えば900℃程度にまで加熱すると、ウエハ100の表面に形成されたソース領域やドレイン領域等に拡散が生じ、回路特性が劣化し、半導体装置の性能が低下してしまう場合がある。ウエハ100の温度を上述のように制限することにより、このような事態を回避できる。
【0031】
また、真空ポンプ246による排気を実施しつつ、バルブ243bを開くと共に、APC242の開度を調整することにより、処理室201内の圧力が例えば1Pa〜130Paの範囲内になるようにする。
【0032】
(ガス供給工程)
続いて、Bガス及びHガスを処理室201内に供給し、処理室201内の雰囲気をBガス及びHガスの混合雰囲気とする。
【0033】
具体的には、バルブ303aを閉めたまま、マスフローコントローラ301b,302bにより流量調整しつつ、バルブ301a,302aを開くことにより、ガス供給管232を介して処理室201内へ所定の流量のBガス、Hガスを供給する。具体的には、Bガス単独の流量を30sccm〜200sccmとし、Hガスで希釈したBガスの総流量を100sccm〜300sccmとする。そして、Bガス、Hガスの混合ガス中におけるBガスの濃度を例えば0.3〜5%の範囲内とする。
【0034】
ガス供給管232を介して処理室201内に供給されたBガスとHガスとの混合ガスは、シャワーヘッド236を介してウエハ100表面(処理面)にシャワー状に供給され、ガス排気口235を介してガス排気管231から排気される。なお、処理室201内にBガス及びHガスを供給する間、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力が例えば1Pa〜130Paの範囲内になるように維持する。
【0035】
(プラズマドーピング工程)
続いて、処理室201内に供給されたBガス及びHガスをプラズマ状態とし、プラズマ状態となったBガス及びHガスをウエハ200表面(処理面)に供給してウエハ200中にボロンを注入する。
【0036】
具体的には、高周波電源273から筒状電極215に例えば300W〜2000Wの高周波電力を供給して電界を形成するとともに、上部磁石216a及び下部磁石216bを用いて磁界を形成することにより、処理室201内にマグネトロン放電プラズマを生成する。この際、上述の電磁界が放出された電子を周回運動させ、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命かつ高密度のプラズマが生成される。プラズマの生成と併せてインピーダンス可変手段274を制御してウエハ100の電位を制御し、プラズマ状態となったBガス及びHガスをウエハ200表面(処理面)に供給する。その結果、ウエハ200中に不純物としてのボロンが注入されると共にウエハ200表面にアモルファス層が形成される。
【0037】
本実施形態では、Bガスを処理室201内に単独で供給するのではなく、BガスにHガスを混合させて処理室201内に供給していることから、ウエハ200表面が荒れてしまうことを抑制できる。すなわち、Hガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200表面が荒れてしまうことを抑制できる。
【0038】
所定時間が経過し、ウエハ200中への所定量のボロンの注入が完了したら、高周波電源273による電力供給を停止すると共に、バルブ301a,302aを閉めて処理室201内へのBガス及びHガスの供給を停止する。
【0039】
(アニール工程)
続いて、ボロン注入後のウエハ200を加熱し、ウエハ200中に注入されたボロンを電気的に活性化させると共に、ウエハ200表面に形成されたアモルファス層を再び結晶
化させる。
【0040】
具体的には、処理室201内へのBガス及びHガスの供給を停止した後、APC242の開度を調整して処理室201内の圧力を高真空まで減圧する。その後、バルブ301a,302aを閉めたまま、マスフローコントローラ303bにより流量調整しつつ、バルブ303aを開くことにより、不活性ガスとしてのHeガスを処理室201内に供給して、処理室201内が例えば1〜500Paになるように調整する。また、サセプタの内部に埋め込まれたヒータ(図示せず)に電力を供給し、ウエハ100の表面を例えば室温〜650℃の範囲に加熱する。これにより、ウエハ200中に注入されたボロンが電気的に活性化されると共に、ウエハ200表面に形成されたアモルファス層が再び結晶化する。
【0041】
(基板搬出工程)
所定時間が経過したら、APC242の開度を調整して処理室201内の圧力を大気圧に復帰させる。そして、基板搬入工程と逆の手順により、処理済みのウエハ200を処理室201内から搬出して、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0042】
(3)本実施形態にかかる効果
本実施形態によれば以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0043】
本実施形態では、Bガスを処理室201内に単独で供給するのではなく、BガスにHガスを混合させて処理室201内に供給していることから、ウエハ200表面が荒れてしまうことを抑制できる。すなわち、Hガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200表面が荒れてしまうことを抑制できる。
【0044】
また、本実施形態では、Bガスの濃度範囲を上述のように構成することで、ウエハ200表面へのボロンの堆積を抑制しつつ、ウエハ200内部へのボロンのドーピングを促進させ、注入ドーズ量を高めることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、ウエハ200を上述の温度範囲に加熱するアニール処理を施すことにより、ウエハ200内に注入されたボロンの電気的な活性化を促進させ、例えばドーピング箇所(as−doped)における接合層のシート抵抗を低減させることができる。特に、ウエハ200を例えば500〜650℃に加熱してアニール処理を行うことにより、アモルファス化したウエハ200表面を固相エピタキシャル成長させて再結晶化させることも可能である。なお、係る場合のアニール時間は例えば1分〜60分程度が好ましい。
【0046】
<本発明の第2の実施形態>
以下に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0047】
本実施形態では、上述のガス供給工程において、Bガス、Hガス、及びHeガスを処理室201内に供給し、処理室201内の雰囲気をBガス、Hガス、及びHeガスの混合雰囲気とする点が、上述の実施形態と異なる。
【0048】
具体的には、本実施形態に係るガス供給工程において、マスフローコントローラ301b,302b,303bにより流量調整しつつ、バルブ301a,302a,303aを開くことにより、ガス供給管232を介して処理室201内へ所定の流量のBガス、Hガス、及びHeガスを供給する。具体的には、Bガス単独の流量を30〜200sccm、Heガス単独の流量を0sccm〜200sccmとし、Hガスで希釈したBガスとHeガスとの混合ガスの総流量を100sccm〜300sccmと
する。そして、Bガス、Hガス、及びHeガスの混合ガス中におけるBガスの濃度を例えば0.3〜5%の範囲内とし、また該混合ガス中におけるHeガスの濃度を例えば0〜70%の範囲内とする。
【0049】
ガス供給管232を介して処理室201内に供給されたBガス、Hガス、及びHeガスの混合ガスは、シャワーヘッド236を介してウエハ100表面(処理面)にシャワー状に供給され、ガス排気口235を介してガス排気管231から排気される。本実施形態においても、処理室201内にBガス、Hガス、及びHeガスを供給する間、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力が例えば1Pa〜130Paの範囲内になるように維持する。
【0050】
そして、本実施形態に係るプラズマドーピング工程においても、上述の実施形態と同様に、高周波電源273から筒状電極215に例えば300W〜2000Wの高周波電力を供給し、処理室201内にマグネトロン放電プラズマを生成する。そして、インピーダンス可変手段274を制御してウエハ100の電位を制御し、プラズマ状態となったBガス、Hガス、及びHeガスをウエハ200表面(処理面)に供給する。その結果、ウエハ200中に不純物としてのボロンが注入されると共にウエハ200表面にアモルファス層が形成される。
【0051】
本実施形態では、プラズマ状態とされたHeガスがウエハ200表面に供給されることから、ウエハ200表面におけるアモルファス層の形成が促進される。ここで、本実施形態においても、BガスとHeガスとの混合を処理室201内に単独で供給するのではなく、BガスとHeガスとの混合にHガスを更に混合させて(添加させて)処理室201内に供給していることから、ウエハ200表面が荒れてしまうことを効果的に抑制できる。すなわち、Hガスを処理室201内に供給することで、ウエハ200表面が荒れてしまうことを抑制できる。
【0052】
また、本実施形態では、添加物としてHeガスを用いることでペニング効果を生じさせ、混合ガス中のBイオンの生成を促進させ、基板へのボロンの注入ドーズ量を高めることが可能となる。
【0053】
また、本実施形態では、混合ガス中におけるHeガスの濃度を変化させることで、ボロン注入と同時にウエハ200表面に形成されるアモルファス層の厚みを制御することができる。Hガスで希釈されたBガスのみによるプラズマでは、ウエハ200表面に形成されるアモルファス層の厚さは極めて薄くなるが、混合ガス中にHeガスを混合させることで、ウエハ200表面に形成されるアモルファス層を厚くさせることができる。そして、混合ガス中におけるHeガスの濃度を変化させることで、ウエハ200表面の近傍におけるボロンの深さ分布の制御が可能となる。
【0054】
<本発明の他の実施形態>
上述した実施の形態では、MMT装置を用いて実施する場合を説明したが、本発明は、それに限らずその他の装置、例えばICP(Inductively Coupled Plasma)、ECR(Electron Cyclotron Resonance)装置を用いても実施可能である。
【0055】
図2は、本発明の他の実施形態に係る基板処理装置であるICP方式プラズマ処理装置を示している。本実施の形態にかかる構成の詳細な説明は、前記実施形態と同様の機能を有する構成要件に同一の符号を付して省略する。また、ガス供給部についても図示を省略している。本実施形態に係るICP方式プラズマ処理装置10Aは、電力を供給してプラズマを生成するプラズマ生成部としての誘導コイル15Aを備えており、誘導コイル15
Aは処理容器203の天井壁の外側に敷設されている。本実施形態においても、Bガス、Hガス、及びHeガスの混合ガスをガス供給管232から、ガス導入口234を経由して処理容器203へ供給する。また、ガス供給と前後して、プラズマ生成部である誘導コイル15Aへ高周波電力を流すと、電磁誘導により電界が生じる。この電界をエネルギーとして、供給されたガスはプラズマ化され、これによりドーピングが行われる。
【0056】
図3は、本発明の更に他の実施形態に係る基板処理装置であるECR方式プラズマ処理装置を示している。本実施形態にかかる構成の詳細な説明は、前記実施形態と同様の機能を有する構成要件に同一符号を付して省略する。また、ガス供給部についても図示を省略している。本実施形態に係るECR方式プラズマ処理装置10Bは、マイクロ波を供給してプラズマを生成するプラズマ生成部としてのマイクロ波導入管l7Bを備えている。本実施形態においても、Bガス、Hガス、及びHeガスの混合ガスをガス供給管232から、ガス導入口234を経由して処理容器203へ供給する。また、ガス供給と前後して、プラズマ生成部であるマイクロ波導入管17Bへマイクロ波18Bを導入し、その後、マイクロ波18Bを処理室201へ放射させる。供給されたガスは、このマイクロ波18Bによりプラズマ化され、これによりドーピングが行われる。
【0057】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することが可能である。例えば、基板へのボロンのプラズマドーピング及び基板表面へのアモルファス層の形成を室温にて行い、その後、別工程にてアニール処理を行う場合であっても、本発明は好適に適用可能である。
【0058】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0059】
本発明の一態様は、処理室内に基板を搬入して前記処理室内に設けられた基板載置部上に前記基板を載置する基板搬入工程と、ボロン含有ガス及び水素含有ガスをガス供給部により前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気を前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスの混合雰囲気とするガス供給工程と、前記処理室内に供給された前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスをプラズマ生成部によりプラズマ状態とし、プラズマ状態となった前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスを前記基板表面に供給して前記基板中にボロンを注入するプラズマドーピング工程と、を有する半導体装置の製造方法である。
【0060】
好ましくは、前記ガス供給工程では、ボロン含有ガス、水素含有ガス、及びヘリウム含有ガスを前記ガス供給部により前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気をボロン含有ガス、水素含有ガス、及びヘリウム含有ガスの混合雰囲気とする。
【0061】
また好ましくは、ボロン含有ガスはBガス、水素含有ガスはHガス、ヘリウム含有ガスはHeガスであり、Bガス、Hガス、及びHeガスの混合ガス中におけるBガスの濃度を例えば0.3〜5%の範囲内とし、該混合ガス中におけるHeガスの濃度を例えば0〜70%の範囲内とする。
【0062】
また好ましくは、前記ガス供給工程及び前記プラズマドーピング工程における前記処理室内の圧力を1Pa〜130Paの範囲内とする。
【0063】
また好ましくは、前記プラズマドーピング工程における前記プラズマ生成部が供給する電力を300W〜2000Wの範囲内とする。
【0064】
また好ましくは、ボロン注入後の前記基板を加熱し、前記基板中に注入されたボロンを電気的に活性化させると共に、前記基板表面に形成されたアモルファス層を再び結晶化さ
せるアニール工程を有する。
【0065】
また、本発明の他の態様は、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内で前記基板を支持する基板載置部と、
ボロン含有ガス、水素含有ガス、及びヘリウム含有ガスを前記処理室内に供給するガス供給部と、
前記処理室内に収容された前記基板を加熱する加熱手段と、
前記処理室内を排気する排気部と、
前記処理室内に供給された前記ボロン含有ガス、前記水素含有ガス、及び前記ヘリウム含有ガスをプラズマ化するプラズマ生成部と、
少なくとも前記ガス供給部、前記加熱手段、前記排気部、前記プラズマ生成部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記ガス供給部により、前記ボロン含有ガス、前記水素含有ガス、及び前記ヘリウム含有ガスを前記基板が収容された前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気を前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスの混合雰囲気とし、
前記プラズマ生成部により、前記処理室内に供給された前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスをププラズマ状態とし、プラズマ状態となった前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスを前記基板表面に供給して前記基板中にボロンを注入する
半導体装置の製造装置が提供される。
【符号の説明】
【0066】
100 ウエハ(基板)
201 処理室
217 サセプタ(基板載置部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に基板を搬入して前記処理室内に設けられた基板載置部上に前記基板を載置する基板搬入工程と、
ボロン含有ガス及び水素含有ガスをガス供給部により前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気を前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスの混合雰囲気とするガス供給工程と、
前記処理室内に供給された前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスをプラズマ生成部によりプラズマ状態とし、プラズマ状態となった前記ボロン含有ガス及び前記水素含有ガスを前記基板表面に供給して前記基板中にボロンを注入するプラズマドーピング工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ガス供給工程では、ボロン含有ガス、水素含有ガス、及びヘリウム含有ガスを前記ガス供給部により前記処理室内に供給し、前記処理室内の雰囲気をボロン含有ガス、水素含有ガス、及びヘリウム含有ガスの混合雰囲気とする
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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