説明

半導体装置の製造方法

【課題】研磨テープを用い、しかも堆積膜及び該堆積膜の下のシリコンにそれぞれに適した研磨条件でシリコン基板の外周部を効率的に研磨できるようにする。
【解決手段】シリコンの表面に堆積膜を堆積させたデバイス基板14を第1回転速度で回転させながら、該デバイス基板14の外周部に第1研磨テープ34を押圧してデバイス基板14の外周部に位置する堆積膜12を除去し、デバイス基板14を第2回転速度で回転させながら、堆積膜12を除去することで露出したデバイス基板14外周部のシリコン10に第2研磨テープ52を押圧して該シリコン10を所定の深さまで研削する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に、2枚のシリコン基板(半導体素子が形成された基板(デバイス基板)と支持基板)を熱処理等で貼合せる、いわゆる貼合せ法を用いて、SOI(Silicon On Insulator)基板を製造するのに使用される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SOI基板の製造方法として、2枚のシリコン基板(デバイス基板と支持基板)を熱処理等で貼合せる、いわゆる貼合せ法が知られている。この貼合せ法を用いてSOI基板を製造する場合、SOI基板外周部における2枚のシリコン基板の未結合部分を除去する必要がある。
【0003】
このため、表面に半導体層(SIO層)を有し表面外周部を予め研磨除去した第1シリコン基板(デバイス基板)と第2シリコン基板(支持基板)とを互いに表面を対向させ絶縁膜を介して貼合せた後、前記半導体層を残して前記第1シリコン基板(デバイス基板)の裏面を研磨またはエッチングして削り取るようにしたものが知られている(特許文献1参照)。半導体層(SIO層)を有するシリコン基板の表面外周部は、例えば砥石によって研磨される(特許文献2参照)。
【0004】
また、表面に半導体層(SIO層)を有する第1シリコン基板(デバイス基板)と第2シリコン基板とを互いに表面を対向させ酸化膜を介して貼合せ、前記半導体層(SIO層)を残して前記第1シリコン基板を所定厚さまで減厚した後、第1シリコン基板(デバイス基板)の前記半導体層(SIO層)の外周部の面取りを行うようにしたものが知られている(特許文献3参照)。この半導体層の外周部の面取りは、例えばテープ研磨または軟研磨加工によって行われる。
【0005】
シリコン基板の外周部の研磨に際し、例えばセリア砥粒を固着した研磨テープでシリコンの一部が露出するまで絶縁膜を研磨し、しかる後、セリア砥粒よりもシリコン基板に対する研磨能力の高いダイヤモンド砥粒を固着した研磨テープで更に研磨することが提案されている(特許文献4参照)。
また、出願人は、基板の平坦部を含む外周部を、その元の角度を維持しながら、研磨テープを使用して研磨できるようにした研磨装置を提案している(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−85827号公報
【特許文献2】特開平4−263425号公報
【特許文献3】特開2001−345435号公報
【特許文献4】特開2008−263027号公報
【特許文献5】特開2009−208214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン基板外周部の堆積膜(絶縁膜)除去及びシリコン研削は、一般にダイヤモンドディスクを用いて行われている。しかし、ダイヤモンドディスクを用いてシリコン基板外周部の堆積膜除去及びシリコン研削を行うと、研磨機自体の位置を正確に制御する必要があって、この研磨機自体の位置制御がかなり面倒で、しかもシリコン基板の、例えばデバイス配線を覆っている堆積膜表面が汚れ易くなる。更に、適度な研磨速度を確保するため、ダイヤモンドディスクのシリコン基板に対する接触圧力(押圧力)を大きくすると、シリコン基板に大きなダメージを与えてシリコン基板に欠け等が発生してしまうことがあり、これを防止するため、ダイヤモンドディスクのシリコン基板に対する接触圧力(押圧力)を小さくすると、堆積膜及びシリコンの除去スピードがかなり遅くなる。
【0008】
また、砥石によってシリコン基板外周部の堆積膜(絶縁膜)及びシリコンを研磨除去するようにした場合にあっては、例えば支持基板と接触しないように微細な距離を隔てて砥石を配置する必要があって、砥石の高い位置決め精度が要求され、そのための特別な構造が必要となり、装置自体がかなり複雑化してしまう。
【0009】
一方、1つの研磨テープを用いてシリコン基板外周部の堆積膜除去及びシリコン研削を連続して行うと、推積膜の除去状況により下地のシリコンの掘れ方が異なって、被研磨面に凹凸段差が残ってしまうことがある。つまり、配線が作られたシリコン基板にあっては、外周部の堆積膜を研磨除去したい領域が不安定であり、同じシリコン基板でも円周方向に沿った場所により堆積膜の厚みに差があることがよくある。このように、場所により堆積膜の厚みに差があると、堆積膜が薄いところは早く堆積膜が除去できるが、堆積膜が厚いところは堆積膜の研磨がなかなか進まない状況になる。その際、堆積膜の研磨レートに比べてシリコンの研磨レートが大きいと早く堆積膜が除去できた部分だけがシリコンを大きく研磨してしまい、シリコン基板内で場所により研磨量が変ってしまう現象が起こりやすい。
【0010】
また、被研磨面の表面粗さを制御したり、被研磨面に残ったダメージ層や破砕層を除去したりすることが困難で、被研磨面の表面粗さを制御したり、被研磨面に残ったダメージ層や破砕層を除去したりしようとすると、長時間に亘る研磨が必要となる。そして、被研磨面の形状や表面粗さの制御が難しくなると、次工程の成膜等の処理が困難になる。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、研磨テープを用い、しかも堆積膜及び該堆積膜の下のシリコンにそれぞれに適した研磨条件でシリコン基板の外周部を効率的に研磨できるようにした半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、シリコンの表面に堆積膜を堆積させたデバイス基板を第1回転速度で回転させながら、該デバイス基板の外周部に第1研磨テープを押圧してデバイス基板の外周部に位置する堆積膜を除去し、デバイス基板を第2回転速度で回転させながら、前記堆積膜を除去することで露出したデバイス基板外周部のシリコンに第2研磨テープを押圧して該シリコンを所定の深さまで研削することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0013】
このように、研磨テープを使用してシリコン基板の外周部研磨(堆積膜除去及びシリコン研削)を行うことで、ダイヤモンドディスクを用いて研磨する場合に比較して、シリコン基板に研磨テープをソフトに接触させ、しかも研磨テープのシリコン基板に対する押圧力を容易に制御することができる。更に、ウェットの環境で研磨することが可能となり、例えばデバイス配線を覆っている堆積膜表面を水でカバーしながら研磨を行うことで、堆積膜表面に汚れが付着することを防止することができる。また、異なる研磨条件で堆積膜除去とシリコン研削を行い、推積膜の除去に適した研磨条件で堆積膜を完全に除去することで、その後のシリコン研削によってシリコンの掘れ量にバラツキが生じることを抑制し、しかも、研磨レートを向上させつつ、研磨量を容易に制御することができる。更に、シリコン研削によって、被研磨面のダメージ層や破砕層を除去したり、被研磨面の表面粗さを制御したりすることが可能になる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記第1回転速度は100〜400rpmで、前記第2回転速度は500rpm以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法である。
【0015】
このように、シリコン基板を100〜400rpmの回転速度で回転させながら堆積膜を除去することで、選択性(シリコンと堆積膜の研磨レート差)を大きくして、シリコン基板内に堆積膜のバラツキあっても、堆積膜のみを重点的に研磨してシリコンをあまり研磨しないようにすることができる。そして、堆積膜を完全除去した後、シリコン基板を500rpm以上の回転速度で回転させながらシリコンを研磨することで、シリコンの研磨速度を速めることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記第1研磨テープは、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープまたはセリア粒子テープで、前記第2研磨テープは、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープであることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法である。
【0017】
このように、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープまたはセリア粒子テープを用いて堆積膜を除去することで、選択性(シリコンと堆積膜の研磨レート差)を大きくして、シリコン基板内に堆積膜のバラツキあっても、堆積膜のみを重点的に研磨してシリコンをあまり研磨しないようにすることができる。そして、堆積膜を完全除去した後、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープを用いてシリコンを研磨することで、シリコンの研磨速度を速め、しかも被研磨面の表面粗さを適度に調整したり、被研磨面に残ったダメージ層や破砕層を除去したりすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、前記シリコンを所定の深さまで研削したデバイス基板の表面に支持基板を貼合せ、前記デバイス基板が所定の厚さになるまで該デバイス基板の裏面シリコンを削り取った後、前記貼合せた基板を第3回転速度で回転させながら、前記支持基板の外周部に第3研磨テープを押圧して前記支持基板の外周部に位置するシリコンを所定の深さまで研削して面取り部を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法である。
このように、支持基板の外周部に面取り部を形成することにより、デバイス基板が支持基板から剥がれてデバイス基板が割れてしまうことを防止することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、前記支持基板の外周部に面取り部を形成した後、前記貼合せた基板を第4回転速度で回転させながら、前記面取り部に第4研磨テープを押圧して該面取り部の仕上げ研磨を行うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法である。
このように面取り部の仕上げ研磨を行うことで、例えば面取り部にレジストが残って後工程に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、シリコンの表面に堆積膜を形成したデバイス基板の該表面に支持基板を貼合せ、前記デバイス基板が所定の厚さになるまで該デバイス基板の裏面シリコンを削り取り、前記貼合せた基板を第1回転速度で回転させながら、前記デバイス基板の外周部に第1研磨テープを押圧してデバイス基板の外周部に位置する堆積膜を除去し、前記貼合せた基板を第2回転速度で回転させながら、前記支持基板の外周部に第2研磨テープを押圧し支持基板の外周部に位置するシリコンを所定の深さまで研削して面取り部を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法である。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記第1回転速度は100〜400rpmで、前記第2回転速度は500rpm以上であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法である。
請求項8に記載の発明は、前記第1研磨テープは、#2000以下のダイヤモンド砥粒テープまたはセリア粒子テープで、前記第2研磨テープは、#4000〜#20000のダイヤモンド砥粒テープであることを特徴とする請求項6または7記載の半導体装置の製造方法である。
【0022】
請求項9に記載の発明は、前記支持基板の外周部に面取り部を形成した後、前記貼合せた基板を第3回転速度で回転させながら、前記面取り部に第3研磨テープを押圧して該面取り部の仕上げ研磨を行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、研磨テープを用いてデバイス基板外周部の堆積物除去及びシリコン研削を行うことで、例えばダイヤモンドディスクを使用して研磨する時に比べて、被研磨部が研磨テープにソフトに当たるようにして、デバイス基板に欠けや欠陥等が生じることを防止することができる。しかも、ウェット環境での研磨処理を可能となし、これによって、デバイス配線を覆う堆積膜表面を水でカバーして研磨を行うことで、堆積膜表面に汚れが付着することを防止することができる。更に、ダイヤモンドディスクを使用した研磨では同じディスクを長時間使用するため、ダイヤモンド粒子が脱落したり目潰れしたりするが、研磨テープを使用した研磨は、研磨中も研磨テープを徐々に送っているため研磨速度は一定であり、ダイヤモンド粒子の脱落や目潰れ等は考慮してなくて良くなる。
【0024】
また、異なる研磨条件で堆積膜除去とシリコン研削を行い、推積膜の除去に適した研磨条件で堆積膜を完全に除去することで、その後のシリコン研削によってシリコンの掘れ量にバラツキが生じることを抑制し、しかも、研磨レートを向上させつつ、研磨量を容易に制御することができる。更に、シリコン研削によって、被研磨面のダメージ層や破砕層を除去したり、被研磨面の表面粗さを制御したりすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態のデバイス基板のシリコンを削除するまで工程順に示す図である。
【図2】本発明の実施形態のデバイス基板の堆積膜を除去(研磨)する時の状態を示す概要図である。
【図3】研磨テープとして砥粒#2000のダイヤモンド粒子テープを使用し、基板保持部で保持して回転させる回転速度をパラメータにして、ベアシリコンとSiN膜を研磨した時の研磨レートの比率(選択比)を調査した結果を示すグラフである。
【図4】(a)は、デバイス基板を700rpmで回転させながらデバイス基板の外周部を研磨した時における各位置の研磨量を示すグラフで、(b)は、デバイス基板を100rpmで回転させながらデバイス基板の外周部を研磨した時における各位置の研磨量を示すグラフである。
【図5】図4に示す研磨量を計測する各位置を示す図である。
【図6】基板保持部の回転速度を100rpmに設定し、研磨テープをパラメータにして、ベアシリコンとSiN膜の研磨レートの比率(選択比)を調査した結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態のデバイス基板のシリコンを研削(研磨)する時の状態を示す概要図である。
【図8】本発明の実施形態のデバイス基板のシリコンを削除した後を工程順に示す図である。
【図9】本発明の他の実施形態を工程順に示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態のバンド基板のナイフエッジを除去する時の状態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
先ず、図1(a)に示すように、シリコン(ベアシリコン)10の表面に、例えば配線膜等の堆積膜12を堆積させたデバイス基板(シリコン基板)14を用意する。この例では、堆積膜(配線膜)12は、シリコン層16と、該シリコン層16の表面に形成したデバイス配線18を覆う酸化膜20と、シリコン層16と酸化膜20の間に形成したチッ化膜(SiN膜)19を有している。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、デバイス基板14の外周部に位置する堆積膜12を幅Lに亘って除去して、デバイス基板14の外周部のシリコン10を露出させる。この幅Lは、例えば、0.3〜80mmである。この堆積膜12の除去を、例えば図2に示す研磨装置30を用いて行う。この研磨装置30は、表面(デバイス形成面)を上向きにデバイス基板14を保持して回転させる基板保持部(図示せず)と、この基板保持部の上方に配置される研磨ヘッド32とを有しており、この研磨ヘッド32には、研磨テープ34を一方向に走行させる一対のロール36と、このロール36の間を走行する研磨テープ34の背面側に位置して、研磨テープ34をデバイス基板14に向けて押圧する押圧パッド38が備えられている。この押圧パッド38は、押圧シリンダ40のピストンロッド42の下端に連結されている。
【0028】
この研磨装置30を用いて、デバイス基板14の外周部に位置する堆積膜12を除去する時には、表面(デバイス形成面)を上向きにしてデバイス基板14を基板保持部で保持して回転させながら、研磨を開始したい位置に研磨ヘッド32を移動させる。そして、研磨テープ34を一定の速度で走行させながら、押圧パッド38を下降させ、設定した一定圧力で押圧パッド38を介して研磨テープ34をデバイス基板14に押圧し、研磨ヘッド32をデバイス基板14の端部まで移動させる。これにより、研磨距離を任意に変更することができる。そして、デバイス基板14の外周部に位置する堆積膜12を完全に除去した時、この研磨作業を終了する。この研磨時に、純水等でデバイス基板14をウェットな環境にすることで、デバイス基板14の表面(デバイス形成面)をゴミから保護することができる。
【0029】
この研磨終了の判断を、研磨装置30に搭載した、例えば、光学計測(CCDによる色判別、レーザー光、白色光)、マイクロ波、超音波、交番磁界信号等による計測を行う計測機、またはデバイス基板14を保持して回転させる基板保持部の回転トルクを検知するトルク検知器を有するエンドポイント検知システムで行うことができる。
【0030】
光学計測によってエンドポイントを検知する場合、研磨ヘッド32のデバイス基板14の研磨後の状態が観察できる部分に計測機を取付け、研磨が終了したか否かをエンドポイント検知システムで自動判断させ、次の工程に進む指示を自動的に出させるようにする。また、基板保持部の回転トルクを検知するトルク検知器を有するエンドポイント検知システムでは、研磨中、常に基板保持部を回転させる回転トルク値をエンドポイント検知システムで検知し、研磨対象が変ることでの回転トルクに差が出ることを識別して、加工終了を自動的に認識する。
【0031】
エンドポイントを観察する計測機は、デバイス基板14の研磨後の状況をすぐ観察することができるように、研磨ヘッド32の横に取付けたり、また研磨ヘッド32の研磨テープ34の裏側からデバイス基板14を観察できる位置に取付けたりすることもできる。
【0032】
例えば、計測機とデバイス基板14との間は、流体(水等)で満たされた状況であったり、クリーンエアーで満たされている状況であったり、また透明な固形物で満たされている状況であったりする場合もあるが、エンドポイントで観察する計測機は、デバイス基板14と計測機との間が気泡等で邪魔されないようにすることが好ましい。
【0033】
この研磨時における研磨テープ34の走行速度は、例えば1〜50mm/minで、デバイス基板14に対する研磨テープ34の押圧荷重は、例えば5〜20Nである。また、デバイス基板14の回転速度は、100〜400rpmで、研磨テープ34として、砥粒#2000以下(粒子径:9μm以上)のダイヤモンド粒子を固着したダイヤモンド粒子テープ(砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープ)44が使用される。
【0034】
このように、デバイス基板14の回転速度を100〜400rpmに設定し、研磨テープ34として、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープ44を使用するのは、以下の理由による。
【0035】
すなわち、図3は、図2に示す研磨装置30において、研磨テープ34として砥粒#2000のダイヤモンド粒子テープを使用し、基板保持部で保持して回転させる回転速度をパラメータにして、ベアシリコンとSiN膜を研磨した時の研磨レートの比率(選択比)を調査した結果を示す。この図3より、回転速度を上げることによって、選択性(ベアシリの研磨レートとSiN膜の研磨レートの差)は大きくなり、回転速度を400rpm以下とすることで、ベアシリコンとSiN膜の選択比を約8以下に抑えられ、これによって、デバイス基板14を100〜400rpmの回転速度で回転させながら、デバイス基板14の外周部の堆積膜12を研磨除去することで、デバイス基板14内に堆積層12のバラツキあっても、シリコン(ベアシリコン)10をあまり研磨することなく、堆積層12を完全に除去できることが判る。
【0036】
また、図4(a)は、デバイス基板14を700rpmで回転させながら、デバイス基板14の外周部(約4mm)を研磨した時における、図5に示す、ノッチ部、ノッチ部から反時計方向に90°,180°及び270°回転した位置における研磨量を示す。図4(b)は、デバイス基板14を100rpmで回転させながら、デバイス基板14の外周部(約4mm)を研磨した時における、図5に示す、ノッチ部、ノッチ部から反時計方向に90°,180°及び270°回転した位置における研磨量を示す。この図4から、デバイス基板14を700rpmで回転させながらデバイス基板14の外周部の堆積膜を研磨すると、デバイス基板14の円周方向における堆積膜の膜厚のバラツキにより研磨量にバラツキが出やすいが、デバイス基板14を100rpmで回転させながらデバイス基板14の外周部の堆積膜を研磨することで、研磨量にバラツキが生じることが抑えられることが判る。
なお、前述の図3及び図4の結果から得られる最適な研磨プロセスは、この実施形態における配線18、シリコン層16、チッ化膜(SiN膜)19及び酸化層20の各層からなる堆積膜12においても、それらの硬度(特に酸化膜20)がチッ化膜(SiN膜)19に近いので適用できる。
【0037】
図6は、図2に示す研磨装置30において、基板保持部の回転速度を100rpmに設定し、研磨テープ34をパラメータにして、ベアシリコンとSiN膜の研磨レートの比率(選択比)を調査した結果を示す。図6から、研磨テープ34として砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープを使用することで、ベアシリとSiN膜の選択比を約9以下に抑えられ、堆積膜12を除去した時にシリコン10を深く研磨しなくて済むが、砥粒#4000(粒子径:3μm)のダイヤモンド粒子テープを使用すると、シリコンとSiN膜の選択性が強く出てしまい、堆積膜を全て除去した時に、同一のデバイス基板の円周方向に沿った場所により、シリコンが大きく研磨されてしまうことがあり、このため、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープが堆積膜除去に最適であることが判る。
【0038】
次に、図1(c)に示すように、デバイス基板14の外周部に位置する堆積膜12を除去することで露出したデバイス基板14の外周部のシリコン30を所定の堀込み深さD、例えば30μm(D≒30μm)程度堀込む。この堀込み深さDは、例えば例えば10〜300μmである、このシリコン30の研削(研磨)を、例えば図7に示す研磨装置50を用いて行う。この研磨装置50の図2に示す研磨装置30と異なる点は、研磨テープ34として、砥粒#4000〜#20000(粒子径:3〜0.2μm)のダイヤモンド粒子を固着したダイヤモンド粒子テープ(砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ)52を使用している点である。なお、図7に示す研磨装置50において、図2に示す研磨装置30と同一または相当する部材には同一符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
この研磨装置50を用いて、デバイス基板14の外周部の堆積膜12を除去することによって露出したシリコン10を研削(研磨)する時には、表面(デバイス形成面)を上向きにしてデバイス基板14を基板保持部で保持して回転させながら、研磨を開始したい位置に研磨ヘッド32を移動させる。そして、研磨テープ34(砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52)を一定の速度で走行させながら、押圧パッド38を下降させ、設定した一定圧力で押圧パッド38を介して研磨テープ34をデバイス基板14に押圧し、研磨ヘッド32をデバイス基板14の端部まで移動させる。これにより、研磨距離を任意に変更することができる。そして、デバイス基板14の外周部に位置するシリコン50を所定の堀込み深さD、例えば30μm(D≒30μm)程度掘込んだ時に、この研磨作業を終了する。この研磨時に、純水等でデバイス基板14をウェットな環境にすることで、デバイス基板14の表面(デバイス形成面)をゴミから保護することができる。
【0040】
この研磨時における研磨テープ34の走行速度は、例えば1〜50mm/minで、デバイス基板14に対する研磨テープ34の押圧荷重は、例えば5〜20Nである。また、デバイス基板14の回転速度は、500rpm以上である。
【0041】
なお、研磨初めの段階で、研磨ヘッド32を移動させることなく、停止している状況にすることで、研磨開始部における研磨形状をコントロールすることができる。更に、研磨しながら研磨ヘッド32をデバイス基板14の端部側に移動させることで、広範囲に研磨できるが、デバイス基板14の周縁部の一部を多く研磨したい時は、研磨ヘッド32の移動を停止させてもよく、また、あまり研磨しなくても良い場合は、研磨ヘッド32の移動速度を途中で変えるようにしてもよい。
【0042】
前述のように、デバイス基板14の回転速度を100〜400rpmに設定し、研磨テープ34として、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープ44を使用して堆積膜12の除去(研磨)を行うが、デバイス基板14の回転速度を400rpm以上に設定し、研磨テープ34として、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52を使用してシリコン10の研削(研磨)を行うのは以下の理由による。
【0043】
すなわち、前述のように、デバイス基板14の回転速度を500rpm以上、例えば700rpmに設定して研磨を行うと、選択性(ベアシリの研磨レートとSiN膜の研磨レートの差)は大きくなり、ベアシリコンとSiN膜の選択比は、例えば約30となる(図3参照)が、堆積膜12がない状態では、この選択比が高くても問題はなく、このように、デバイス基板14の回転速度を500rpm以上とすることで、シリコン10をより高速で研削(研磨)することができる。
【0044】
同様に、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52、例えば砥粒#4000(粒子径0.2μm)のダイヤモンド粒子テープを使用して研磨を行うと、ベアシリコンとSiN膜の選択比は、例えば約35となる(図6参照)が、堆積膜12がない状態では、この選択比が高くても問題はなく、このように、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52を使用することで、シリコン10をより高速で研削(研磨)することができる。しかも、シリコン研削によって、被研磨面のダメージ層や破砕層を除去したり、被研磨面の表面粗さを制御したりすることが可能になる。
【0045】
なお、堆積膜12の最表面が酸化膜である場合、ダイヤモンド粒子テープの代わりに、酸化膜に対する選択性が高く、酸化膜のみを研磨可能なセリア粒子テープを使用して研磨を行い、推積膜を全て除去した後に、ダイヤモンド粒子テープを用いてシリコンを一定量掘り込むようにしてもよい。この場合、ダイヤモンド粒子を使用しないようにして、コストが安くし、しかも最初のセリア粒子テープで酸化膜のみを研磨するようにして、研磨量をより正確に制御することができる。
【0046】
次に、図8(a)に示すように、デバイス基板(シリコン基板)14の表面に支持基板(シリコン基板)60を、例えば熱処理によって貼合せる。そして、図8(b)に示すように、デバイス基板14が、前述の堀込み深さDより小さい所定の厚さT(T<D)となるまで、デバイス基板14の裏面側のシリコン10を削り取る(バックグラインディング)。
【0047】
次に、図8(c)に示すように、デバイス基板14が支持基板60から剥がれて割れてしまうことを防止するため、デバイス基板14の外周端面の一部を研磨しながら、支持基板60の外周部に面取り部62を形成する。この面取り部62の形成を、例えば研磨テープ34として、砥粒#4000〜#20000(粒子径:3〜0.2μm)のダイヤモンド粒子テープ52を使用した、前述の図6の示す研磨装置50を使用し、2枚のシリコン基板14,60を貼合せた基板を、例えば500rpm以上の回転速度の回転させながら行う。この場合、前述のように、シリコンとSiN等との選択比が問題となることはないため、支持基板60のシリコンをより高速で研削(研磨)し、しかも、シリコン研削によって、被研磨面(面取り部)のダメージ層や破砕層を除去したり、被研磨面の表面粗さを制御したりすることが可能になる。
【0048】
このように支持基板60の外周部に面取り部62を形成した後、必要に応じて、研磨テープ34として、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52の代わりに、例えばセリア粒子テープを使用した、図7に示す研磨装置50を使用して、面取り部62の仕上げ研磨を行い、これによって、被研磨面の粗さを研磨痕が極力ないミラー状況にする。このように、仕上げ研磨を行うことで、例えばレジストが残って後工程に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0049】
上記実施形態にあっては、2枚のシリコン基板を張合せる前に、下記のナイフエッジになる部分を予め除去し(先トリミング)、しかる後、支持基板の外周部に面取り部を形成する(後トリミング)ようにした例を示しているが、2枚のシリコン基板を張合せた後、ナイフエッジになった状況で、該ナイフエッジを研磨除去し、しかる後、支持基板の外周部に面取り部を形成する(後トリミング)ようにしても良い。以下、この後トリミングのみを行うようにした例について説明する。
【0050】
先ず、図9(a)に示すように、シリコン10の表面に堆積層12を形成したデバイス基板(シリコン基板)14の表面に支持基板(シリコン基板)60を貼合せる。次に、図9(b)に示すように、デバイス基板14が所定の厚さとなるまで、デバイス基板14の裏面側のシリコン10を削り取る(バックグラインディング)。このように、デバイス基板14が所定の厚さとなるまでデバイス基板14の裏面側のシリコン10を削り取ると、デバイス基板14の外周部には、支持基板60と接合されることなく、外方にナイフ状に突出するナイフエッジ14aが形成される。
【0051】
次に、図9(c)に示すように、デバイス基板14の外周部に形成されたナイフエッジ14aを除去する。このナイフエッジ14aの除去を、前述の図2に示す研磨装置30を使用し、前述のシリコン基板14の外周部に位置する堆積膜12を除去する時とほぼ同様な方法に行う。つまり、図10に示すように、デバイス基板14を上向きにして、貼合せ基板を基板保持部で保持して回転させながら、研磨を開始したい位置に研磨ヘッド32を移動させる。そして、研磨テープ34を一定の速度で走行させながら、押圧パッド38を下降させ、設定した一定圧力で押圧パッド38を介して研磨テープ34をデバイス基板14に押圧し、研磨ヘッド32をデバイス基板14の端部まで移動させる。
【0052】
この研磨終了の判断は、前述とほぼ同様に、研磨装置30に搭載した、例えば、光学計測(CCDによる色判別、レーザー光、白色光)、マイクロ波、超音波、交番磁界信号等による計測を行う計測機、またはデバイス基板14を保持して回転させる基板保持部の回転トルクを検知するトルク検知器を有するエンドポイント検知システムで行うことができる。
【0053】
この研磨時における研磨テープ34の走行速度は、例えば1〜50mm/minで、デバイス基板14に対する研磨テープ34の押圧荷重は、例えば5〜20Nである。また、デバイス基板14の回転速度は、100〜400rpmで、研磨テープ34として、砥粒#2000以下(粒子径:9μm以上)のダイヤモンド粒子を固着したダイヤモンド粒子テープ(砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープ)44が使用される。
【0054】
次に、前述の図8(c)に示すように、デバイス基板14が支持基板60から剥がれて割れてしまうことを防止するため、前述と同様に、デバイス基板14の外周端面の一部を研磨しながら、支持基板60の外周部に面取り部62を形成する。この面取り部62の形成を、例えば研磨テープ26として、砥粒#4000〜#20000(粒子径:3〜0.2μm)のダイヤモンド粒子テープ52を使用した、前述の図7の示す研磨装置50を使用し、2枚のシリコン基板14,60を貼合せた基板を、例えば500rpm以上の回転速度で回転させながら行う。
【0055】
このように支持基板60の外周部に面取り部62を形成した後、必要に応じて、研磨テープ26として、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ52の代わりに、例えばセリア粒子テープを使用した、図7に示す研磨装置50を使用して、面取り部62の仕上げ研磨を行い、これによって、被研磨面の粗さを研磨痕が極力ないミラー状況にする。
【0056】
なお、貼合せを行う前のデバイスが形成されているデバイス基板の外周部を研磨する際、粗い研磨テープで研磨を行うがパターン及び酸化膜等配線層の研磨終了を判断する手法として、光学計測(CCDによる色判別、レーザー光、白色光)、マイクロ波、超音波、交番磁界信号等による計測、ウェーハ回転トルクを観察して差を判断する手法等でエンドポイントシステムを搭載させることも可能である。
【0057】
これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0058】
10 シリコン(ベアシリコン)
12 堆積膜
14 シリコン基板(デバイス基板)
14a ナイフエッジ
18 デバイス配線
19 チッ化膜(SiN膜)
20 酸化膜
30 研磨装置
32 研磨ヘッド
34 研磨テープ
38 押圧パッド
44 砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープ
50 研磨装置
52 砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープ
60 シリコン基板(支持基板)
62 仕上げ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンの表面に堆積膜を堆積させたデバイス基板を第1回転速度で回転させながら、該デバイス基板の外周部に第1研磨テープを押圧してデバイス基板の外周部に位置する堆積膜を除去し、
デバイス基板を第2回転速度で回転させながら、前記堆積膜を除去することで露出したデバイス基板外周部のシリコンに第2研磨テープを押圧して該シリコンを所定の深さまで研削することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1回転速度は100〜400rpmで、前記第2回転速度は500rpm以上であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1研磨テープは、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープまたはセリア粒子テープで、前記第2研磨テープは、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープであることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シリコンを所定の深さまで研削したデバイス基板の表面に支持基板を貼合せ、
前記デバイス基板が所定の厚さになるまで該デバイス基板の裏面シリコンを削り取った後、
前記貼合せた基板を第3回転速度で回転させながら、前記支持基板の外周部に第3研磨テープを押圧して前記支持基板の外周部に位置するシリコンを所定の深さまで研削して面取り部を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記支持基板の外周部に面取り部を形成した後、前記貼合せた基板を第4回転速度で回転させながら、前記面取り部に第4研磨テープを押圧して該面取り部の仕上げ研磨を行うことを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
シリコンの表面に堆積膜を形成したデバイス基板の該表面に支持基板を貼合せ、
前記デバイス基板が所定の厚さになるまで該デバイス基板の裏面シリコンを削り取り、
前記貼合せた基板を第1回転速度で回転させながら、前記デバイス基板の外周部に第1研磨テープを押圧してデバイス基板の外周部に位置する堆積膜を除去し、
前記貼合せた基板を第2回転速度で回転させながら、前記支持基板の外周部に第2研磨テープを押圧し支持基板の外周部に位置するシリコンを所定の深さまで研削して面取り部を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1回転速度は100〜400rpmで、前記第2回転速度は500rpm以上であることを特徴とする請求項6記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1研磨テープは、砥粒#2000以下のダイヤモンド粒子テープまたはセリア粒子テープで、前記第2研磨テープは、砥粒#4000〜#20000のダイヤモンド粒子テープであることを特徴とする請求項6または7記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記支持基板の外周部に面取り部を形成した後、前記貼合せた基板を第3回転速度で回転させながら、前記面取り部に第3研磨テープを押圧して該面取り部の仕上げ研磨を行うことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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