説明

半導体装置の製造方法

【課題】特性の優れた半導体装置を提供する。
【解決手段】第1導電型または第1導電型とは異なる導電型である第2導電型のドーパントを含有するドーピング剤を半導体基板10に塗布する工程と、塗布されたドーピング剤から半導体基板にドーパントを拡散させることによって拡散層12,13を形成する工程と備え、ドーピング剤の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板を加熱する工程、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を加熱する工程、および、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を光照射する工程、の少なくともいずれか1つの工程を含む、半導体装置の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギ資源の枯渇の問題や大気中のCO2の増加のような地球環境問題などからクリーンなエネルギの開発が望まれており、半導体装置の中でも特に太陽電池を用いた太陽光発電が新しいエネルギ源として開発、実用化され、発展の道を歩んでいる。
【0003】
太陽電池は、従来から、たとえば単結晶または多結晶のシリコン基板の受光面にシリコン基板の導電型と反対の導電型となる不純物を拡散することによってpn接合を形成し、シリコン基板の受光面と受光面の反対側の裏面にそれぞれ電極を形成して製造された両面電極型太陽電池が主流となっている。また、両面電極型太陽電池においては、シリコン基板の裏面にシリコン基板と同じ導電型の不純物を高濃度で拡散することによって、裏面電界効果による高出力化を図ることも一般的となっている。
【0004】
また、シリコン基板の受光面に電極を形成せず、裏面のみに電極を形成した裏面電極型太陽電池についても研究開発が進められている。たとえば、特許文献1には、シリコン基板の裏面にp型ドーパント拡散層およびn型ドーパント拡散層を形成した裏面電極型太陽電池が開示されている。また、特許文献2には、インクジェット法によりドーパントを含有するドーピング剤をシリコン基板に塗布、拡散することにより拡散層を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−532311号公報
【特許文献2】特開2004−221149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような裏面電極型太陽電池の特性を向上させるためには、基板の裏面に形成されるそれぞれの拡散層を微細な線幅で形成することが好ましい。このような微細な細線を達成するためには、たとえば、拡散層を形成するためのドーピング剤を所望のドーパント拡散領域に精度良く形成する必要がある。
【0007】
しかしながら、基板に塗布可能なドーピング剤には、溶剤が含まれていることが一般的であり、この場合、シリコン基板の表面においてドーピング剤の滲みが発生することがある。このため、シリコン基板の表面において、所望の細線よりも線幅が広く、また、所望の厚さより薄く、ドーピング剤が塗布される場合があった。
【0008】
これについて、図13を用いて具体的に説明すると、ドーピング剤をインクジェット方式により塗布する場合には、半導体基板22上において、インクジェットヘッド53をたとえば図13中の矢印Aの方向に移動させながら、ドーピング剤54を半導体基板52上に塗布して細線55を形成する。
【0009】
しかしながら、半導体基板52の表面は疎水性であり、ドーピング剤54との馴染み性により細線55に滲みが発生する場合があった。また、インクジェットヘッド53から吐出する機構によりドーピング剤54の粘度が制限されるため、厚膜となるようにドーピング剤を塗布することが難しく、結果的に、所望の拡散濃度に達しない場合があった。
【0010】
このように基板上に塗布されたドーピング剤の線が滲むことにより、p型ドーパント拡散層およびn型ドーパント拡散層の線幅が広く形成されたり、塗布されるドーピング剤の厚膜化が図れないことにより、所望のドーパント拡散層が得られず、裏面電極型太陽電池の特性が大きく低下した規格外品となってしまうという問題があった。
【0011】
この問題は、裏面電極型太陽電池に限られた問題ではなく、細線のドーパント拡散層部分を設ける必要がある他の半導体装置においても共通する問題である。
【0012】
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、半導体装置の特性の低下を安定して抑制することができる半導体装置の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、第1導電型または前記第1導電型とは異なる導電型である第2導電型のドーパントを含有するドーピング剤を半導体基板に塗布する工程と、塗布されたドーピング剤から半導体基板にドーパントを拡散させることによって拡散層を形成する工程と備え、ドーピング剤の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板を加熱する工程、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を加熱する工程、および、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を光照射する工程、の少なくともいずれか1つの工程を含む、半導体装置の製造方法である。
【0014】
上記半導体装置の製造方法において、半導体基板を加熱する工程は、半導体基板のドーピング剤を塗布する塗布面の反対面側から加熱する、または、塗布面側から加熱することが好ましい。
【0015】
上記半導体装置の製造方法において、ドーピング剤を加熱する工程は、半導体基板におけるドーピング剤を塗布する塗布面側から加熱することが好ましい。
【0016】
上記半導体装置の製造方法において、ドーピング剤を光照射する工程は、半導体基板におけるドーピング剤に紫外線を照射することが好ましい。
【0017】
上記半導体装置の製造方法において、ドーピング剤は、光硬化性樹脂を含むことが好ましい。
【0018】
上記半導体装置の製造方法において、半導体基板は、シリコン基板であることが好ましい。
【0019】
上記半導体装置の製造方法において、ドーピング剤は、SiO2前駆体を含むことが好ましい。
【0020】
上記半導体装置の製造方法において、半導体基板を加熱する工程後、ドーピング剤を加熱する工程後、またはドーピング剤を光照射する工程後に、ドーピング剤を焼成する工程を含むことが好ましい。
【0021】
上記半導体装置の製造方法において、拡散層を形成する工程は、第1導電型の拡散層、および第2導電型の拡散層の少なくとも一方の導電型の拡散層を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、半導体基板上でのドーピング剤の滲みを抑制することができるため、半導体基板に微細な拡散層を高い精度で設けることができる。その結果、該半導体基板を含む半導体装置の特性低下を安定して抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の裏面電極型太陽電池の一例の概略断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(h)は、図1の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を図解する模式的な断面図である。
【図3】実施形態1における半導体基板の加熱方法の一例を図解する模式図である。
【図4】実施形態1における半導体基板の加熱方法の他の一例を図解する模式図である。
【図5】本発明の製造方法の一例によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面の一例の模式的な平面図である。
【図6】本発明の製造方法の一例によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面の他の一例の模式的な平面図である。
【図7】本発明の製造方法の一例によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面のさらに他の一例の模式的な平面図である。
【図8】実施形態2における半導体基板の加熱方法の一例を図解する模式的な断面図である。
【図9】図9(a)は参考例1において半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜の高さおよび幅の実測値を示す図であり、図9(b)は参考例2において半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜の高さおよび幅の実測値を示す図である。
【図10】参考例3において半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜の高さおよび幅の実測値を示す図である。
【図11】参考例4において半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜の高さおよび幅の実測値を示す図である。
【図12】参考例5において半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜の高さおよび幅の実測値を示す図である。
【図13】従来のインクジェット方式によるドーピング剤の塗布方法を図解する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
【0025】
<実施形態1:半導体基板の加熱>
図1に、本発明の半導体装置の一例である裏面電極型太陽電池の一例の模式的な断面図を示す。図1に示す裏面電極型太陽電池は、半導体基板10と、半導体基板10の一方の表面に隣接するように設けられた第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13とを備える。裏面電極型太陽電池は、さらに、半導体基板10の当該表面上および他方の表面であるテクスチャ構造18上にそれぞれ形成されたパッシベーション膜11と、第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13にそれぞれ電気的に接続する第1導電型用電極14および第2導電型用電極15とを備えている。
【0026】
以下に、図2(a)〜図2(h)に示す、図1の裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を図解する模式的な断面図を参照して、裏面電極型太陽電池の製造方法の一例について説明する。
【0027】
まず、図2(a)に示すように、半導体基板10を準備し、その受光面となる側の面(以下において、単に「受光面」いうことがある。)の全面にマスキング用インクを塗布してマスク30を形成する。
【0028】
上記半導体基板10としては、シリコン基板、炭化ケイ素、ヒ素ガリウム、窒化ガリウムなどの化合物半導体からなる基板などを例示することができる。半導体基板10としてシリコン基板を用いる場合には、たとえば、シリコンインゴットのスライスにより生じたスライスダメージを除去したシリコン基板を用いてもよい。また、受光面には、入射光の反射を抑制する観点から、たとえば、ピラミッド状の凹凸などからなるテクスチャ構造18を形成することが好ましい。
【0029】
スライスダメージの除去およびテクスチャ構造の形成は、たとえば、スライス後のシリコン基板の表面をフッ化水素水溶液と硝酸との混酸、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムなどのアルカリ溶液などでエッチングすることなどによって行なうことができる。
【0030】
また、半導体基板10の大きさおよび形状は特に限定されず、たとえば厚さを100μm以上300μm以下とし、1辺の長さを100mm以上200mm以下とした四角形状を有するものとすることができ、または、いわゆる電子デバイスに用いられる円形状を有するものとすることができる。
【0031】
上記マスク30を形成するためのマスキング用インクとしては、公知のマスクを形成する際に用いられるインクを用いることができる。また、受光面全面に塗布することから、塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷、スピンコートによる塗布、またはスプレーによる塗布などにより行なうことができる。また、受光面側に形成されるマスク30の厚みは、マスク機能を発揮する限り特に限定されず、たとえば200nm〜800nmとすることができる。
【0032】
マスキング用インクの種類にもよるが、上記マスク30はマスキング用インクを塗布した後に、半導体基板10全体を加熱して乾燥させた後に、マスキング用インクを焼成することで形成される。
【0033】
次に、半導体基板10のマスク30を形成した受光面側と反対の表面(以下において、単に「裏面」いうことがある。)の第1導電型ドーパント拡散層12(図2e参照。)を形成する部分に対応する部分に、半導体基板10の導電型と同じ導電型である第1導電型のドーパントを含有するドーピング剤を塗布して乾燥させる。これにより、図2(b)に示すように、第1導電型のドーパントを含有するドーピング剤皮膜19が半導体基板10の裏面上に形成される。
【0034】
ドーピング剤が塗布されることによってドーピング剤皮膜19が形成された半導体基板は、所定温度で加熱されることによって、ドーピング剤皮膜19が形成されていた部分にドーパントが拡散され、これにより、第1導電型ドーパント拡散層12(図2e参照。)が形成される(なお、この工程については後述する。)。このため、微細な第1導電型ドーパント拡散層12を形成するためには、ドーピング剤皮膜19を微細に形成する必要がある。
【0035】
これに対応し、本実施形態では、ドーピング剤の塗布前、塗布中、および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板10を加熱する。これにより、第1導電型のドーパントを含有する、微細なドーピング剤皮膜19を形成することができる。本工程について、図3を用いて、以下に説明する。
【0036】
図3は、実施形態1における半導体基板の加熱方法の一例を図解する模式図である。図3では、ドーピング剤22をインクジェット方式で半導体基板10に塗布する方法を例示しているが、スプレー塗布、ディスペンサ塗布などによって塗布しても良い。
【0037】
図3を参照し、半導体基板10は、裏面がインクジェットヘッド23と対向するようにステージ21上に載置されており、インクジェットヘッド23内にはドーピング剤22が保持されている。インクジェットヘッド23から所定の吐出圧で吐出されたドーピング剤22は、半導体基板10の裏面上に塗布される。このとき、たとえば、インクジェットヘッド23が図中の矢印A方向に移動することによって、図3に示すように、線状にドーピング剤22を塗布することができる。
【0038】
さらに、本工程では、ドーピング剤22を半導体基板10の裏面に塗布する前、塗布中および塗布した後の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、たとえば、加熱装置(不図示)によって半導体基板10を加熱する。上記いずれか1つのタイミングで半導体基板10が加熱されることにより、半導体基板10に塗布されたドーピング剤22が間接的に加熱され、これによって、ドーピング剤22に含有される溶剤が素早く低減または除去されるため、半導体基板10の表面上でドーピング剤22が滲むことを抑制することができる。
【0039】
吐出効率の点から、ドーピング剤の粘度は室温(25℃)において5mPa・s以上25mPa・s以下の範囲に調整することが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下とすることがより好ましい。また、半導体基板10の裏面(ドーピング剤22が塗布される面)の温度が40〜100℃の範囲となるように半導体基板10を加熱することが好ましい。40℃未満の場合には、ドーピング剤22の滲みの抑制が不十分な場合がある。なかでも、60〜80℃とすることがより好ましい。
【0040】
加熱装置としては、ヒータ、レーザ照射装置、ハロゲンランプ装置などを用いることができる。また、加熱装置は、たとえば、ステージ21に内包されている、あるいは、ステージ21の半導体基板10が載置される面の反対側の面に取り付けられていることが好ましい。この場合、半導体基板10におけるドーピング剤22を塗布する塗布面(裏面)の反対面(受光面)側から間接的にドーピング剤22を加熱することができる。このため、たとえば、インクジェットヘッド23側に加熱装置を取り付けた場合と比較して、インクジェットヘッド23内のドーピング剤22、すなわち、インクジェットヘッド23から吐出される前のドーピング剤22が、加熱装置からの伝導熱によって加熱されることを抑制することができる。したがって、加熱に伴うドーピング剤22の粘度の変化によって吐出特性が低下することを抑制することができる。
【0041】
なかでも、加熱装置は、半導体基板10の全面を加熱する構成ではなく、半導体基板10のうち、ドーピング剤22が塗布される直前の部分、または塗布された直後の部分を半導体基板10の塗布面の反対面側から加熱する構成であることが好ましい。この場合、特に、伝導熱の影響を抑制することができる。
【0042】
なお、塗布面の反対面側から半導体基板10を加熱する方法は、図3に示す方法に限られず、たとえば、ドーピング剤22が塗布される前、塗布中または塗布後の半導体基板10にはんだごてを当てて、半導体基板10を加熱してもよい。また、たとえば、ドーピング剤22が塗布される前、塗布中または塗布後の半導体基板10の雰囲気温度を、加熱したはんだごてなどで昇温させてもよい。
【0043】
図3では、半導体基板10におけるドーピング剤22を塗布する塗布面(裏面)の反対面(受光面)側から半導体基板10を加熱する方法について示したが、塗布面側から半導体基板10を加熱してもよい。この方法について、図4を用いて、詳細に説明する。
【0044】
図4は、実施形態1における半導体基板の加熱方法の他の一例を図解する模式図である。図4において、加熱装置24は、インクジェットヘッド23の移動に従動するように、インクジェットヘッド23の側面に設けられている。加熱装置24としては、レーザ照射装置、ハロゲンランプ装置など、半導体基板10の塗布面に熱線を照射する装置であることが好ましい。ここでは、加熱装置24がハロゲンランプ装置の場合について説明する。
【0045】
図4を参照し、インクジェットヘッド23に設けられた加熱装置24から、半導体基板10に向けてハロゲン照射を行なうことにより、半導体基板10の塗布面のハロゲン照射された部分を加熱することができる。図4において、加熱装置24は、インクジェットヘッド23の進行方向後方(従動側)に配置されているため、ドーピング剤22が塗布された直後の半導体基板10を加熱することができる。また、加熱装置24を、インクジェットヘッド23の進行方向前方(先導側)に配置した場合には、ドーピング剤22が塗布される部分を塗布直前に予め加熱することができる。
【0046】
このように、レーザ照射装置、ハロゲンランプ装置など、半導体基板10全体ではなく、その一部を加熱することができる加熱装置24を用いることにより、熱伝導による吐出前のドーピング剤22への影響を抑制しながら、ドーピング剤22の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板10を加熱することができる。したがって、ドーピング剤22の吐出特性の低下を抑制しながら、半導体基板10の表面上でドーピング剤22が滲むことを抑制することができる。
【0047】
なお、塗布面側から半導体基板10を加熱する方法は、図4に示す方法に限られず、たとえば、ドーピング剤22が塗布される前または塗布後の半導体基板10の表面にはんだごてを当てて、半導体基板10を加熱してもよい。また、たとえば、ドーピング剤22が塗布される前または塗布後の半導体基板10の雰囲気温度を、加熱したはんだごてなどで昇温させてもよい。
【0048】
以上、図3および図4を用いて、ドーピング剤22の塗布方法、および半導体基板10の加熱方法について説明した。塗布されたドーピング剤22は、乾燥され、これにより、ドーピング剤皮膜19が形成される。塗布されたドーピング剤22の乾燥は、たとえば、半導体基板10を100〜300℃で10分〜60分間加熱することによって行なうことができる。
【0049】
ドーピング剤皮膜19を形成するドーピング剤22には、上記のように、第1導電型のドーパントが含有されている。第1導電型がn型である場合には、第1導電型のドーパントとして、たとえば、リン酸塩、酸化リン、五酸化二リン、リン酸または有機リン化合物のようなリン原子を含む化合物を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。また、第1導電型がp型である場合には、第1導電型のドーパントとして、たとえば、酸化ホウ素、ホウ酸、有機ホウ素化合物、ホウ素−アルミニウム化合物、有機アルミニウム化合物またはアルミニウム塩のようなホウ素原子および/またはアルミニウム原子を含む化合物を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。ドーピング剤22におけるドーパントの濃度は所望するドーパント拡散濃度にもよるが、5質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
【0050】
また、上記ドーピング剤22は、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)、MTES(メチルトリエトキシシラン)などのSiO2前駆体を含むことが好ましい。ドーピング剤22にSiO2前駆体が含まれることによって、半導体基板10への安定したドーパントの供給を行なえるという効果が得られる。ドーピング剤22におけるSiO2前駆体の濃度は5質量%〜30質量%であることが好ましく、10質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0051】
さらに、上記ドーピング剤22には、溶剤が含まれる。溶剤としては、公知のアルコール、エーテル、親水性のエステルから上記吐出効率にあわせて用いればよい。具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、などのアルコール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ジエチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メトキシメトキシエタノール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールアセテート、トリエチルグリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、液体ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピルグリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジアール、1,5−ペンタンジアール、ヘキシレングリコール、グリセリン、グリセリルアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリルトリアセテート、トリメチロールプロピン、1,2,6−ヘキサントリオールまたはそれらの親水性誘導体、などの親水性多価アルコール、1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、オクタンジオール、などの脂肪族および芳香族多価アルコール、ならびにこれらの脂肪族および芳香族多価アルコールのエステルおよびエーテル、また、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、そしてジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの親水性エーテル、さらに、メチラール、ジエチルアセタール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、あるいはギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチルなどの親水性エステルなどが例示される。これらの溶剤は1種を用いてもよいし、複数の溶剤を混合して用いてもよい。これらのなかでも、溶剤として、ブチルセロソルブまたは、N−メチル−2−ピロリドンまたは双方の混合物を用いるのが望ましい。
【0052】
また、ドーピング剤22には、増粘剤などの公知の添加剤を含めることができる。増粘剤は粘度を調整するために用いるので、インクの組成によっては増粘剤を用いない態様でとしてもよい。増粘剤を用いる場合は、たとえば、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、種々の極性溶剤混合物用の一般に無機のレオロジー添加剤、ニトロセルロースおよびその他のセルロース化合物、デンプン、ゼラチン、アルギン酸、Aerosil(登録商標)などの高分散性非晶質ケイ酸、Mowital(登録商標)などのポリビニルブチラール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、Eurelon(登録商標)などの熱可塑性ポリアミド樹脂、Thixin R(登録商標)などの有機ヒマシ油誘導体、Thixatrol plus(登録商標)などのジアミド・ワックス、Rheolate(登録商標)などの膨潤ポリアクリル酸塩、ポリエーテル尿素−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリオールなどを使用することが可能であるが、エチルセルロースまたはポリビニルピロリドンまたはこれらの混合物を用いるのが望ましい。ドーピング剤22の粘度が小さすぎるとドーピング剤22がインクジェットヘッドから漏れ出す場合があり、一方、粘度が大きすぎるとドーピング剤22が半導体基板10に付着し難くなる。このため、ドーピング剤22における増粘剤の濃度を5質量%〜35質量%とすることが望ましく、10質量%〜20質量%として、インクが上記粘度となるように調整することがより望ましい。
【0053】
特に、増粘剤として、熱硬化性樹脂を用いた場合には、加熱によって熱硬化性樹脂が硬化するため、さらに、ドーピング剤22が半導体基板10上で滲むのを抑制することができる。熱硬化性樹脂は、粘度の観点から、たとえば粒径が1μm〜10μmの範囲にある微粒子を用いることが好ましい。
【0054】
図2に戻り、次に、図2(c)に示すように、上記ドーピング剤皮膜19が形成された半導体基板10の裏面に第2導電型のドーパントを含有するドーピング剤を塗布する。これにより、第2導電型のドーパントを含有するドーピング剤皮膜20が半導体基板10の裏面上に形成される。
【0055】
塗布されるドーピング剤はボロンなどのp型ドーパントやリンなどのn型ドーパントを含むものであり、たとえば、p型ドーパントを含むドーピング剤としてはメチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)とボロン化合物と水とを含むものが用いられる。なお、本実施形態において、ドーピング剤皮膜20はパターニングの必要がないため、その塗布手法は特に限定されず、たとえばスピンナーを用いたスピン塗布法が用いられる。
【0056】
次に、半導体基板上に形成されたドーピング剤皮膜19,20を固化するために、ドーピング剤皮膜19,20を焼成する工程を行うことが好ましい。本工程は、少なくとも、半導体基板10の塗布面が700℃以上900℃以下に加熱されることが好ましく、700℃以上800℃以下であることがより好ましく、750℃以上800℃以下であることがさらに好ましい。これらの温度範囲で焼成処理を行なった場合には、ドーピング剤皮膜19,20を十分に固化することができるとともに、ドーパントが半導体基板10中に拡散して、半導体基板10の表面に第1導電型ドーパント拡散層または第2導電型ドーパント拡散層が形成されるのを抑制することができる。
【0057】
次に、半導体基板10に塗布されたドーピング剤から、半導体基板10にドーパントを拡散させることによって、図2(d)に示すように、半導体基板10の裏面に、第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13を形成する。
【0058】
たとえば、内部が900℃よりも高く1000℃以下の温度に昇温された石英炉内に、ドーピング剤皮膜19,20が形成された半導体基板10を投入する。これにより、ドーピング剤皮膜19,20内のドーパントが半導体基板10内に拡散するため、結果的に、第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13が形成される。
【0059】
次に、図2(e)に示すように、半導体基板10の受光面に形成されるマスク30およびドーピング剤皮膜19,20の残渣を除去する。たとえば、濃度10%程度の弗化水素酸水溶液に、図2(d)に示す半導体基板10を1分間程度浸漬することで、マスク30およびドーピング剤皮膜19,20を除去することができる。
【0060】
次に、図2(f)に示すように、半導体基板10の第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13がそれぞれ露出している裏面上、および半導体基板10のテクスチャ構造18が形成されている受光面上にパッシベーション膜11を形成する。
【0061】
パッシベーション膜11としては、たとえば、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層体などを用いることができる。また、パッシベーション膜11は、たとえば、プラズマCVD法などにより形成することができる。なお、受光面上に形成されるパッシベーション膜11は、いわゆる反射防止膜として機能する膜である。
【0062】
次に、図2(g)に示すように、半導体基板10の裏面のパッシベーション膜11の一部を除去することによってコンタクトホール16およびコンタクトホール17を形成して、コンタクトホール16bから第1導電型ドーパント拡散層12の表面を露出させるとともに、コンタクトホール17bから第2導電型ドーパント拡散層13の表面を露出させる。
【0063】
コンタクトホール16およびコンタクトホール17の形成方法としては、たとえば、フォトリソグラフィ技術を用いてコンタクトホール16およびコンタクトホール17のそれぞれの形成箇所に対応する部分に開口を有するレジストパターンをパッシベーション膜11上に形成した後にレジストパターンの開口からパッシベーション膜11をエッチングなどにより除去する方法がある。また、他にも、コンタクトホール16およびコンタクトホール17のそれぞれの形成箇所に対応するパッシベーション膜11の部分にエッチングペーストを塗布した後に加熱することによってパッシベーション膜11をエッチングして除去する方法がある。
【0064】
なお、エッチングペーストとしては、たとえば、エッチング成分としてリン酸を含み、エッチング成分以外の成分として水、有機溶媒および増粘剤を含むものなどを用いることができる。有機溶媒としては、たとえば、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレンカーボネートまたはN−メチル−2−ピロリドンなどの少なくとも1種を用いることができる。また、増粘剤としては、たとえばセルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、ナイロン6、またはポリビニルピロリドンなどの少なくとも1種を用いることができる。
【0065】
次に、図2(h)に示すように、コンタクトホール16を通して第1導電型ドーパント拡散層12に電気的に接続される第1導電型用電極14を形成するとともに、コンタクトホール17を通して第2導電型ドーパント拡散層13に電気的に接続される第2導電型用電極15を形成する。第1導電型用電極14および第2導電型用電極15としては、たとえば、銀などの金属からなる電極を用いることができる。
【0066】
以上により、本実施の形態における太陽電池の製造方法によって、裏面電極型太陽電池を作製することができる。
【0067】
図5に、本発明の製造方法によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面の一例の模式的な平面図を示す。
【0068】
図5を参照し、裏面電極型太陽電池の裏面においては、複数の帯状の第1導電型用電極14と複数の帯状の第2導電型用電極15がそれぞれ1本ずつ交互に間隔をあけて配列されており、すべての第1導電型用電極14が1本の帯状の第1導電型用集電電極14aに電気的に接続されており、すべての第2導電型用電極15が1本の帯状の第2導電型用集電電極15aに電気的に接続されている。
【0069】
また、裏面電極型太陽電池の裏面において、複数の帯状の第1導電型用電極14のそれぞれの下方には高濃度第1導電型ドーパント拡散層12が配置され、複数の帯状の第2導電型用電極15のそれぞれの下方には第2導電型ドーパント拡散層13が配置されていることになるが、第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13の形状および大きさは特に限定されない。たとえば、第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13は、第1導電型用電極14および第2導電型用電極15のそれぞれに沿って帯状に形成されていてもよく、第1導電型用電極14および第2導電型用電極15のそれぞれの一部に接するドット状に形成されていてもよい。
【0070】
図6に、本発明の製造方法によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面の他の一例の模式的な平面図を示す。
【0071】
図6を参照し、第1導電型用電極14および第2導電型用電極15はそれぞれ同一方向に伸長(図6の上下方向に伸長)する帯状に形成されており、半導体基板10の裏面において上記の伸長方向と直交する方向にそれぞれ1本ずつ交互に配置されている。
【0072】
図7に、本発明の製造方法によって作製された裏面電極型太陽電池の裏面のさらに他の一例の模式的な平面図を示す。
【0073】
図7を参照し、第1導電型用電極14および第2導電型用電極15はそれぞれ点状に形成されており、点状の第1導電型用電極14の列(図7の上下方向または左右方向に伸長)および点状の第2導電型用電極15の列(図7の上下方向または左右方向に伸長)がそれぞれ半導体基板10の裏面において1列ずつ交互に配置されている。
【0074】
なお、図2(a)〜図2(h)においては、説明の便宜上、半導体基板10に1つの第1導電型ドーパント拡散層12と、1つの第2導電型ドーパント拡散層13のみが形成されるように示されているが、実際には、複数の第1導電型ドーパント拡散層12と、複数の第2導電型ドーパント拡散層13とが形成されてもよいことは言うまでもない。
【0075】
以上、実施形態1の製造方法について詳細に説明した。
上記において例示したように、本実施形態においては、ドーピング剤22の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板10を加熱する工程を含むので、加熱をせずにドーピング剤22を半導体基板10の裏面に塗布した場合に発生する半導体基板10の裏面におけるドーピング剤22の滲みを抑制することができる。
【0076】
したがって、本発明においては、半導体基板10において、微細なドーピング剤皮膜19,20を所望の位置に正確に形成することができるので、微細な第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13を所望の位置に正確に形成することができ、もって、簡易に第1導電型ドーピング領域および第2導電型ドーピング領域の微細なパターニングを高い精度で形成することができる。たとえば、実施形態1のようにドーピング剤皮膜19を形成した場合には、ドーピング剤皮膜19の線幅を100μm以下で形成することが可能である。これは、加熱を伴わない従来のドーピング剤の形成方法では困難な線幅である。したがって、本発明によれば、裏面接合型太陽電池などの半導体装置の特性の低下を抑制することができる。
【0077】
また、これまでの加熱を伴わないドーピング剤皮膜の形成方法においては、たとえば、1μmの厚みのドーピング剤皮膜を一度の塗布で形成することは困難であった。このため、1μm以上の厚みのドーピング剤皮膜を形成する場合には複数回の塗布工程が必要であったが、複数回の塗布位置を精密に一致させることが難しく、それ故、ドーピング剤皮膜の線幅を一定にすることができずに、結果的に、所望のドーピング剤皮膜が形成されない傾向にあった。
【0078】
これに対し、本実施形態の方法によれば、半導体基板10を加熱することによって、ドーピング剤22の半導体基板10上での滲みを抑制することができるため、一度の塗布工程でも、1μm以上の厚みのドーピング剤皮膜19を形成することができる。したがって、たとえば、第1導電型ドーパント拡散層12のドーパント濃度を高くしたい場合、一度の塗布工程であっても膜厚のドーピング剤皮膜19を形成することができるため、容易に、所望量のドーパントを含むドーピング剤皮膜19を形成することができ、もって、所望の第1導電型ドーパント拡散層12を容易に形成することができる。なお、隣接するドーピング剤皮膜19同士の間隔は50μm〜1500μmとすることができる。
【0079】
<実施形態2:ドーピング剤の加熱>
実施形態2においては、ドーピング剤の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板を加熱する工程の代わりに、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を加熱する工程を含む場合の半導体装置の製造方法について説明する。以下、図3を用いて、上記ドーピング剤を加熱する工程について説明する。なお、上記ドーピング剤を加熱する工程以外の裏面接合型太陽電池の製造方法の各工程は実施形態1と同様であるためその説明は省略する。
【0080】
図3を参照し、半導体基板10は、裏面がインクジェットヘッド23と対向するようにステージ21上に載置されており、インクジェットヘッド23内にはドーピング剤22が保持されている。インクジェットヘッド23から所定の吐出圧で吐出されたドーピング剤22は、半導体基板10の裏面上に塗布される。このとき、たとえば、インクジェットヘッド23が図中の矢印A方向に移動することによって、図3に示すように、線状にドーピング剤22を塗布することができる。
【0081】
さらに、本工程では、ドーピング剤22を半導体基板10の裏面に塗布中および塗布した後の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、たとえば、加熱装置(不図示)によって半導体基板10の塗布面側からドーピング剤22を加熱する。たとえば、ドーピング剤22がインクジェットヘッド23から吐出されて半導体基板10に付着するまでの間にドーピング剤22を加熱することによって、塗布中のドーピング剤22を加熱することができる。また、たとえば、インクジェットヘッド23から吐出されて半導体基板10に付着したドーピング剤22を加熱することによって、塗布後のドーピング剤22を加熱することができる。上記いずれか1つのタイミングでドーピング剤22が直接的に加熱されることにより、半導体基板10の表面上でドーピング剤22が滲むことを抑制することができる。
【0082】
なお、吐出時点までのドーピング剤22の粘度、すなわち、インクジェットヘッド23内に保持される塗布前のドーピング剤22の粘度は吐出圧により制約がかかっているので、すでに上記吐出に好適な粘度に調整された、塗布前のドーピング剤22を加熱することは有益ではない。
【0083】
吐出効率の点から、ドーピング剤の粘度は室温(25℃)において5mPa・s以上25mPa・s以下の範囲に調整することが好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下とすることがより好ましい。また、ドーピング剤22の温度が60〜80℃の範囲となるように半導体基板10を加熱することが好ましい。
【0084】
加熱装置としては、ヒータ、レーザ照射装置、ハロゲンランプ装置などを用いることができ、その配置位置は特に制限されず、塗布中または塗布前のドーピング剤22を加熱可能な位置であればよい。たとえば、図4に示すように、インクジェットヘッド23の進行方向後方の側面に配置することができる。また、たとえば、ドーピング剤22が塗布される前または塗布後の半導体基板10の雰囲気温度を、加熱したはんだごてなどで昇温させてもよい。
【0085】
以上、実施形態2の製造方法について詳細に説明した。
上記において例示したように、本実施形態においては、ドーピング剤22の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤22を加熱する工程を含むので、加熱をせずにドーピング剤22を半導体基板10の裏面に塗布した場合に発生する半導体基板10の裏面におけるドーピング剤22の滲みを抑制することができる。
【0086】
したがって、本発明においては、半導体基板10において、微細なドーピング剤皮膜19,20を所望の位置に正確に形成することができるので、微細な第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13を所望の位置に正確に形成することができ、もって、簡易に第1導電型ドーピング領域および第2導電型ドーピング領域の微細なパターニングを高い精度で形成することができる。たとえば、実施形態2のようにドーピング剤皮膜19を形成した場合には、ドーピング剤皮膜19の線幅を100μm以下で、また、膜厚1μm以上で形成することが可能である。これは、加熱を伴わない従来のドーピング剤の形成方法では困難な線幅および膜厚である。したがって、本発明によれば、裏面接合型太陽電池などの半導体装置の特性の低下を抑制することができる。
【0087】
<実施形態3:ドーピング剤の光照射>
実施形態3においては、ドーピング剤の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、半導体基板を加熱する工程の代わりに、ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、ドーピング剤を光照射する工程を含む場合の半導体装置の製造方法について説明する。また、本実施形態において、ドーピング剤は、光硬化性樹脂を含有することを特徴とする。以下、図8を用いて、上記ドーピング剤を加熱する工程について説明する。なお、上記ドーピング剤を加熱する工程以外の裏面接合型太陽電池の製造方法の各工程は実施形態1と同様であるためその説明は省略する。
【0088】
図8を参照し、半導体基板10は、裏面がインクジェットヘッド23と対向するようにステージ21上に載置されており、インクジェットヘッド23内にはドーピング剤25が保持されている。ドーピング剤25は、上記ドーピング剤22に、さらに、光硬化性樹脂を含有させたものである。インクジェットヘッド23から所定の吐出圧で吐出されたドーピング剤25は、半導体基板10の裏面上に塗布される。このとき、たとえば、インクジェットヘッド23が図中の矢印A方向に移動することによって、図8に示すように、線状にドーピング剤25を塗布することができる。
【0089】
さらに、本工程では、ドーピング剤25を半導体基板10の裏面に塗布中および塗布した後の少なくともいずれか1つのタイミングにおいて、光照射装置(不図示)によって半導体基板10の塗布面側からドーピング剤25を光照射する。たとえば、ドーピング剤25がインクジェットヘッド23から吐出されて半導体基板10に付着するまでの間に、ドーピング剤25を光照射することによって、塗布中のドーピング剤25を光照射することができる。また、たとえば、インクジェットヘッド23から吐出されて半導体基板10に付着したドーピング剤25を光照射することによって、塗布後のドーピング剤25を光照射することができる。上記いずれか1つのタイミングでドーピング剤25が光照射されることにより、ドーピング剤25中の光硬化性樹脂が硬化するため、吐出された後のドーピング剤25の粘度を吐出前よりも高めることができ、結果的に、半導体基板10の表面上でドーピング剤22が滲むことを抑制することができる。
【0090】
なお、吐出時点までのドーピング剤25の粘度、すなわち、インクジェットヘッド23内に保持される塗布前のドーピング剤25の粘度は吐出圧により制約がかかっているので、すでに上記吐出に好適な粘度に調整された、塗布前のドーピング剤25を光照射することは有益ではない。
【0091】
光照射装置としては、たとえば、紫外線を照射可能なUVランプ照射装置を用いることができる。光照射装置の配置位置は特に制限されず、塗布中または塗布前のドーピング剤25を光照射可能な位置であればよい。たとえば、インクジェットヘッド23に先導または従導するように配置してもよく、また、インクジェットヘッド23とは別個に、ドーピング剤25を光照射できる位置に配置してもよい。
【0092】
インクジェットヘッド23から吐出されたドーピング剤25が半導体基板10上に着弾した際の滲みを低減するためには、光硬化性樹脂にもよるが、たとえば、ドーピング剤25において光硬化性樹脂の濃度を1質量%〜20質量%、より好ましくは3質量%〜10質量%とすることが好ましい。また、滲みの無い塗布を行なうためには、ドーピング剤25に対して出力を1000W/cm2〜5000W/cm2としたUV照射装置を用いて、0.5秒以上5秒以下の時間、インクジェットヘッド23から吐出され半導体基板10に塗布される前のドーピング剤25、または半導体基板10に塗布された直後のドーピング剤25に照射することが好ましい(図8参照)。
【0093】
以上、実施形態3の製造方法について詳細に説明した。
上記において例示したように、本実施形態においては、ドーピング剤25の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、光硬化性樹脂を含有するドーピング剤25を光照射する工程を含むので、従来の方法において、ドーピング剤25を半導体基板10の裏面に塗布した場合に発生する半導体基板10の裏面におけるドーピング剤25の滲みを抑制することができる。
【0094】
したがって、本発明においては、半導体基板10において、微細なドーピング剤皮膜19,20を所望の位置に正確に形成することができるので、微細な第1導電型ドーパント拡散層12および第2導電型ドーパント拡散層13を所望の位置に正確に形成することができ、もって、簡易に第1導電型ドーピング領域および第2導電型ドーピング領域の微細なパターニングを高い精度で形成することができる。たとえば、実施形態3のようにドーピング剤皮膜19を形成した場合には、ドーピング剤皮膜19の線幅を100μm以下で形成することが可能である。これは、加熱を伴わない従来のドーピング剤の形成方法では困難な線幅である。したがって、本発明によれば、裏面接合型太陽電池などの半導体装置の特性の低下を抑制することができる。
【0095】
また、ドーピング剤皮膜19の厚みは細線の線幅が100μm以下であっても1度の塗布工程で350nm以上とすることができる。また、隣接するドーピング剤皮膜19同士の間隔は50μm〜1500μmとすることが好ましく、100μm以下とする場合は、本発明のドーピング剤皮膜の滲みの発生しない製造方法の効果が顕著である。
【0096】
なお、本発明における半導体装置として太陽電池が該当する場合、太陽電池の概念には、半導体基板の一方の表面(裏面)のみに第1導電型用電極および第2導電型用電極の双方が形成された構成の裏面電極型太陽電池だけでなく、MWT(Metal Wrap Through)セル(半導体基板に設けられた貫通孔に電極の一部を配置した構成の太陽電池)などのいわゆるバックコンタクト型太陽電池(太陽電池の受光面と反対側の裏面から電流を取り出す構造の太陽電池)および半導体基板の受光面と裏面にそれぞれ電極を形成して製造された両面電極型太陽電池などのあらゆる構成の太陽電池が含まれる。その他、本発明の半導体装置の製造方法は、精度のよい拡散制御用のマスクを形成することができるので、拡散を制御するマスクを形成する工程を含むあらゆる半導体装置の製造方法に有益である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
上記実施形態1に沿って、裏面電極型太陽電池を製造した。まず、1辺が100mmの正方形の表面を有し、厚さが200μm程度のn型シリコンウエハのスライスダメージ層を水酸化ナトリウム溶液で除去することによって疎水性のn型シリコン基板を用意した。
【0099】
次に、n型シリコン基板の一方の表面にマスクとして厚さ300nmの酸化膜をマスキング用インクを塗布後に焼成して形成した。
【0100】
次に、上記n型シリコン基板の他方の表面にドーピング剤皮膜を形成するために、インクジェット方式により、組成が、五酸化二リン10質量%、TEOS20質量%、水を含む溶剤が80質量%、粘度が25℃において15mPa・sのドーピング剤を塗布した。インクジェットからのドーピング剤の吐出条件としては、吐出周波数20kHz、インクジェットヘッドの移動速度を50mm/s、吐出電圧を24Vとした。n型シリコン基板はステージに載置させておき、このステージの裏面(n型シリコン基板が載置される面と反対側の面)に備えた加熱装置(ヒータ)により、ドーピング剤塗布直前に、インク塗布箇所のn型シリコン基板の表面を60℃にして、インクジェットヘッドから吐出されたドーピング剤が塗布されるように設定した。その後、200℃で10分間ドーピング剤を乾燥させた。
【0101】
その後、酸素と窒素の混合雰囲気下において600℃で30分間ドーピング剤を焼成し、ドーパントとしてリン(P)を含む線幅200μm、厚み1μm、間隔800μmのドーピング剤皮膜を形成した。
【0102】
次に、上記リンを含むドーピング剤皮膜を形成した面の全面にボロンを含むドーピング剤をスピン塗布し、これを、酸素と窒素の混合雰囲気下において500℃〜800℃で30分間を焼成し、ボロン(B)を含む厚み1μmのドーピング剤皮膜を形成した。このボロンを含むドーピング剤皮膜は、上記リンを含むドーピング剤皮膜が形成されていないスペース(800μmの間隔の領域)においては、直接シリコン基板表面に接して形成されている。
【0103】
次に、上記二種類のドーピング剤皮膜からn型ドーパント、p型ドーパントを拡散させるために、1000℃に昇温された窒素と酸素の混合雰囲気の石英炉内に、半導体基板を投入して熱処理を行った。その後、濃度10%の弗化水素酸水溶液に1分間浸漬し、テクスチャ面上に形成されたマスク、および他方の面上の二種類のドーピング剤皮膜の残渣を除去した。その後、パッシベーション膜をそれぞれの表面に形成した後、実施形態1に記載した工程により、裏面にp型ドーパント拡散層およびn型ドーパント拡散層の一部がそれぞれ露出するようにコンタクトホールを形成し、さらに、第1導電型用電極および第2導電型用電極を形成した。
【0104】
そして、作成された裏面電極型太陽電池の電気特性を評価したところ、優れた特性を示すことが確認された。
【0105】
(参考例1および2)
図9(a)に実施例1で用いたドーピング剤を用いて、実施例1と同様のn型シリコン基板上に上記実施例1の吐出条件および加熱条件でドーピング剤の塗布および加熱を行ない、その後実施例1と同様の条件でドーピング剤を焼成した際のドーピング剤皮膜の線幅および厚みの結果を示す(参考例1)。また、図9(b)に、上記条件において加熱を行なわなかった場合に形成されたマスクの線幅および厚みの結果を示す(参考例2)。これらの結果から、実施例1のように、n型シリコン基板の加熱を行なう場合ドーピング剤皮膜の線幅が細く、十分な厚みのあるドーピング剤皮膜が形成できることがわかった。
【0106】
(参考例3)
参考例1と吐出条件を変更したこと以外は、参考例1と同様の方法でドーピング剤皮膜を形成した。吐出条件は、吐出周波数50kHz、インクジェットヘッドの移動速度を50mm/s、吐出電圧を24Vとした。吐出周波数が上昇することは、移動速度が上昇したことと技術的に同義である。図10に、参考例3におけるドーピング剤皮膜の線幅および厚みの結果を示す。
【0107】
(参考例4)
ステージによる加熱の代わりに、インクジェットによりドーピング剤が塗布された直後に、塗布されたドーピング剤をn型シリコン基板の裏面から2mm離れた位置に200℃に加熱したはんだごてを3秒間配置して、間接的にドーピング剤を加熱したこと以外は、参考例3と同様の条件によりドーピング剤皮膜を形成した。図11にドーピング剤皮膜の線幅および厚みの結果を示す。
【0108】
(参考例5)
はんだごてによる加熱を行なわない以外は、参考例4と同様にしてドーピング剤皮膜を形成した。図12にドーピング剤皮膜の線幅および厚みの結果を示す。
【0109】
参考例3〜5の結果を比較することにより、加熱を行なうことでドーピング剤皮膜が細線化され膜厚も増加していることがわかった。
【0110】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0111】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、半導体装置の特性の低下を安定して抑制することができる半導体装置の製造方法を提供することができる。特に、本発明の半導体装置の製造方法は、太陽電池の製造方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0113】
10,50 半導体基板、11 パッシベーション膜、12 第1導電型ドーパント拡散層、13 第2導電型ドーパント拡散層、14 第1導電型用電極、14a 第1導電型用集電電極、15 第2導電型用電極、15a 第2導電型用集電電極、16,17 コンタクトホール、18 テクスチャ構造、19,20 ドーピング剤皮膜、21 ステージ、22,25,52 ドーピング剤、23,53 インクジェットヘッド、30 マスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型または前記第1導電型とは異なる導電型である第2導電型のドーパントを含有するドーピング剤を半導体基板に塗布する工程と、
塗布された前記ドーピング剤から前記半導体基板に前記ドーパントを拡散させることによって拡散層を形成する工程と備え、
前記ドーピング剤の塗布前、塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、前記半導体基板を加熱する工程、
前記ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、前記ドーピング剤を加熱する工程、および、
前記ドーピング剤の塗布中および塗布後の少なくともいずれか1つのタイミングで、前記ドーピング剤を光照射する工程、の少なくともいずれか1つの工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体基板を加熱する工程は、前記半導体基板の前記ドーピング剤を塗布する塗布面の反対面側から加熱する、または、前記塗布面側から加熱する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ドーピング剤を加熱する工程は、前記半導体基板における前記ドーピング剤を塗布する塗布面側から加熱する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記ドーピング剤を光照射する工程は、前記半導体基板における前記ドーピング剤に紫外線を照射する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記ドーピング剤は、光硬化性樹脂を含む、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板は、シリコン基板である請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記ドーピング剤は、SiO2前駆体を含む、請求項1から6のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板を加熱する工程後、前記ドーピング剤を加熱する工程後、または前記ドーピング剤を光照射する工程後に、前記ドーピング剤を焼成する工程を含む、請求項1から7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記拡散層を形成する工程は、第1導電型の拡散層、および第2導電型の拡散層の少なくとも一方の導電型の拡散層を形成する、請求項1から8のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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