説明

半導体装置

【課題】半導体チップを分けることによって性能を引き出すことが可能なスタック形MCPの半導体装置を提供する。
【解決手段】接続パッド32を有する実装基板31、上面に論理回路が形成され、下面を実装基板31上に固定された半導体チップ11、下面に、受動素子を有するPLL20が形成され、下面を、半田バンプ35を介して半導体チップ11の上面に電気的に接続且つ固定された半導体チップ15、及び、半導体チップ11と実装基板31の接続パッド32とを電気的に接続する金属細線37とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタック型MCPの半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルネットワーク情報社会の急速な進展に対応し、携帯電話に代表されるモバイル情報端末等の高性能化、高(多)機能化、及び小型化等が求められている。そして、これらを支えるLSI等の半導体装置は、例えば、1チップの中に全ての回路を詰め込む構成のSoC(System on a Chip)の開発が行われている。しかしながら、小型化、特に実装面積の低減を達成する観点、特性を維持する観点等からは、全てを1チップ化することが必ずしも最適であるわけではない。
【0003】
半導体チップを三次元に積層するCoC(Chip on Chip)、または、スタック型MCP(St-MCP:Stacked Multi Chip Package)等と称される半導体装置の開発・製品化が進められている。例えば、ダイパッドまたはフィルム状基板に固定されたメモリ用の第1の半導体チップの上に、平面視において第1の半導体チップより小さい制御用の第2の半導体チップが、互いに対向配置した状態で電気的に接続され、第1の半導体チップの側方位置に外部と接続する端子部が形成された構造のスタック型MCPの半導体装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この、開示されたスタック型MCPの半導体装置は、より大きな第1の半導体チップをダイパッド等に固定しているので、外部端子へのワイヤボンディングが容易にでき、組み立て易い構造を有し、1枚の半導体チップ上に形成する場合と比較すると、半導体チップを2つに分けて積層している分、ダイパッド等を小さくすることが可能である。デジタル回路が主要な回路である場合は、メモリ用の第1の半導体チップと制御用の第2の半導体チップに分けることは可能である。
【0005】
しかしながら、アナログ信号を処理する回路が主回路の1つである場合は、2つの半導体チップに分けたからといって、このアナログ回路が有する特性を引き出すことにはならないという問題を有している。つまり、集積されることによって特性の低下を受け易い回路ブロック等への配慮を欠いて、2つの半導体チップに分けても、回路ブロックが持っていた特性が必ずしも発揮し切れないという問題は残されたままである。
【特許文献1】特開2000−22074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、半導体チップを分けることによって性能を引き出すことが可能なスタック形MCPの半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の半導体装置は、接続パッドを有する実装基板と、上面に論理回路が形成され、下面を前記実装基板側に固定された第1の半導体チップと、下面に、抵抗、またはキャパシタ、またはインダクタの内の少なくとも1つの受動素子を有するアナログ電気信号を扱うアナログ回路が形成され、下面を第1の導電材を介して前記第1の半導体チップの上面に電気的に接続且つ固定された第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップと前記実装基板の接続パッドとを電気的に接続する第2の導電材とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体チップを分けることによって性能を引き出すことが可能なスタック形MCPの半導体装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。各図では、同一の構成要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0010】
本発明の実施例1に係る半導体装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は半導体装置の構成を模式的に示す図で、図1(a)は半導体装置の半導体チップを平面的に示す図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿った全体の断面図である。図2は半導体装置の上側の半導体チップに形成される回路の構成を模式的に示すブロック図で、図2(a)は位相同期回路(PLL)を示す図、図2(b)は図2(a)の一部の構成を示す図である。なお、半導体装置の実装基板に対して、半導体チップが積層されている側を上、対向するバンプ電極の側を下という。
【0011】
図1に示すように、半導体装置1は、上面に接続パッド32を有する実装基板31と、上面に論理回路が形成され、下面を実装基板31側にして実装基板31上に固定された第1の半導体チップである半導体チップ11と、下面に、抵抗及びキャパシタ等の受動素子を有するアナログ電気信号を扱うアナログ回路であるPLLアナログ部28が形成され、下面を第1の導電材である半田バンプ35を介して半導体チップ11の上面に電気的に接続且つ固定された第2の半導体チップである半導体チップ15と、半導体チップ11と実装基板31の接続パッド32とを電気的に接続する第2の導電材である金属細線37とを備えている。
【0012】
更に、半導体装置1は、外部の回路と接続するための半田バンプ36をインターポーザである実装基板31の下面に有している。図示を省略するが、実装基板31は、下面に、接続パッド32と接続された配線の一部をなすランドを設けて、ランドに半田バンプ36が接続され、半田バンプ36との接続部を除いたランド及び下面がソルダレジストで被われている。実装基板31の上面は、周辺部に配設された接続パッド32を除いて、ソルダレジストで被われている。実装基板31の上面の中央部に接着材33を介して、半導体チップ11の下面が接着、固定されている。半導体チップ11の周辺部に配設された接続パッド12aと、実装基板31の接続パッド32とが、互いに、金属細線37により接続されている。
【0013】
半田バンプ35は、接続方向に垂直な断面の径が30〜40μm、接続距離が20〜30μm程度である。金属細線37は、例えば、20〜25μm径のAuまたはAl等を主成分とするワイヤであり、半導体チップ11の接続パッド12aから上方に引き出してループを形成して、実装基板31の接続パッド32と接続されている。
【0014】
また、半導体装置1は、実装基板31の上面、半導体チップ11、15、金属細線37、半田バンプ35を被って封止樹脂39が形成されている。
【0015】
半導体チップ11の上面には、接続パッド12aが配設された周辺部のパッド領域13より中央部寄りに、図示を省略するが、デジタル信号処理を扱う論理回路を有するロジックLSIが形成されている。つまり、半導体チップ11は、論理回路として、後述のPLL(Phase Locked Loop、位相同期回路)20の論理回路ブロックの分周器25の他、MCU(Micro Controller Unit)部、フラッシュROM(Read Only Memory)部、SRAM(Static Random Access Memory)部、DRAM(Dynamic RAM)部、入出力制御部等の内の幾つかを有しており、更に、電源回路、コンパレータ、A−D(Analog to Digital)及びD−A(Digital to Analog)コンバータ(変換回路)等のアナログ部の幾つかを有して構成されている。
【0016】
半導体チップ11の上面の最も外側は、周知のように、層間絶縁膜の中に配線層が形成され、周辺部に、接続パッド12aが層間絶縁膜及び表面保護膜から露出し、中央部に、半導体チップ15と接続するための接続パッド12bが露出している。半導体チップ15は、半導体チップ11のパッド領域13の内側、すなわち半導体チップ11の中央部に収められる大きさである。
【0017】
半導体チップ11は、メモリセル及びロジック回路のトランジスタ及び配線等が、最先端の世代の製造プロセスを使用して、最小線幅を有する最小寸法となるように形成される。面積効率及び動作速度の向上、消費電力の低減等を達成するためである。
【0018】
図2に示すように、半導体チップ15の下面には、PLL20の内のPLLアナログ部28が形成されている。PLL20は、例えば、PFD(Phase/Frequency Detector、位相周波数比較器)21、CHP(Charge Pump、チャージポンプ)22、LPF(Low Pass Filter、ローパスフィルタ)23、VCO(Voltage Controlled Oscillator、電圧制御発振器)24、分周器25等で構成され、PLLアナログ部28は、その内の分周器25を除いた部分である。
【0019】
分周器25は0レベルと1レベルの2値のレベルによって表現されるデジタル信号を扱う論理回路ブロックである。例えば、分周器25は、CMOS回路(インバータ、NANDゲート、NORゲート等)で構成される周知の回路である。
【0020】
一方、PFD21、CHP22、LPF23、及びVCO24からなるPLLアナログ部28は、アナログ信号を扱うアナログ回路ブロックである。図2(b)に示すように、VCO24は、例えば、CMOS回路(Complementary Metal Oxide Semiconductor、図示略)を用いた3段のインバータ41、43、45を有し、リングオシレータを構成している。それぞれのインバータ41、43、45に流れる電流量を可変とするMOSFETを挿入し、そのゲート電圧Vcontを制御することにより出力Voutの発振周波数を制御することができる。ゲート電圧Vcontは、LPF23の出力である。所望の周波数を発振させる場合、遅延素子が必要となるが、この例では充放電用のキャパシタ42、44、46を、それぞれのインバータ41、43、45の出力側に接続している。なお、CMOS回路を用いたVCO24は、例えば、発振周波数が1.5GHz程度までの周波数で使用されることが多い。
【0021】
次に、機能及び動作等を説明する。PLL20は、入力信号VinがPFD21に入力され、PFD21の出力がCHP22に入力され、CHP22の出力がLPF23に入力され、LPF23の出力がVCO24に入力され、VCO24の出力が出力信号Voutとして出力される。また、VCO24の出力は分周器25に入力され、分周器25の出力がPFD21に入力される。PLL20は、入力信号Vinと周波数/位相が同期した信号を生成し、出力信号Voutとして出力する。基準クロックに同期したLSIの内部クロック生成に使用される。
【0022】
入力信号Vinは、通常、ジッタのほとんど無い水晶発振器(図示略)からの信号である。PFD21は、入力信号と分周器25からのフィードバック信号の位相/周波数の差を捕らえ、フィードバック信号の方が遅れている場合、進める指示(UP)を出力し、フィードバック信号の方が進んでいる場合、遅らせる指示(DN)を出力する。
【0023】
CHP22は、進める指示の期間は充電し、遅らせる指示の期間は放電する。充放電電流は一定値をなすように設定されている。
【0024】
LPF23は、CHP22の出力の低域だけを通過させて雑音を除去する。LPF23は、抵抗値と容量値をパラメータとして設定され、例えば、容量値100pF〜300pFの大きなキャパシタを使用する。従って、LPF23は、PLL20の面積の半分以上を占めることが多い。
【0025】
VCO24は、入力される電圧に応じて発振周波数を変化させる発振器である。発振周波数は、設定された一定の係数(感度、ゲイン)を有して、入力される電圧に対して比例関係にある。
【0026】
分周器25は、設定された分周比Nに応じて、周波数の分周を行う。例えば、入力の基準クロックが25MHzであって、内部で、高速の100MHz、200MHz、500MHz動作のクロックが必要な場合、N=4(4逓倍)、N=8(8逓倍)、N=20(20逓倍)に設定したそれぞれのPLL20を搭載する(例えば、図1(a)の3つのPLLアナログ部28参照)。
【0027】
PLL20は、スタック型MCP等の半導体装置では、少なくとも1個搭載され、動作が高速化している。PLL20の高速化は、分周器25の高速化でもあり、PLL20の高速性能を決める上で重要である。つまり、分周器25は、最先端の世代にある微細化された製造プロセスで、半導体チップ11の上面に形成される。
【0028】
一方、PFD21、CHP22、LPF23、及びVCO24からなるPLLアナログ部28は、半導体チップ15の下面に、最先端の技術世代から1〜2世代古い製造プロセスを使用して形成される。PLLアナログ部28は、アナログ特性が求められるので、必ずしもメモリセル及びロジック回路ほどに微細化を追求する必要はないためである。VCO24の出力信号Voutは、半田バンプ35を介して半導体チップ15から半導体チップ11へ伝えられる。分周器25の出力信号は、別の半田バンプ35を介して半導体チップ11から半導体チップ15へ伝えられる。なお、半導体チップ15は、最先端の世代にある製造プロセスで形成可能なことはいうまでもない。
【0029】
上述したように、半導体装置1は、接続パッド32を有する実装基板31、上面に論理回路が形成され、下面を実装基板31上に固定された半導体チップ11、下面に、受動素子を有するPLLアナログ部28が形成され、下面を、半田バンプ35を介して半導体チップ11の上面に電気的に接続且つ固定された半導体チップ15、及び、半導体チップ11と実装基板31の接続パッド32とを電気的に接続する金属細線37とを備えている。
【0030】
その結果、半導体装置1は、PLLアナログ部28を有する半導体チップ15が、半田バンプ35を間に置いて、半導体チップ11と接続されている。電気的な接続は、半田バンプ35を介して行われる。半導体チップ15は、半導体チップ11の論理回路で発生する電源変動及び電源ノイズ、接近した配線間の相互作用等の影響を低減することが可能となる。つまり、PLLアナログ部28は、デジタルノイズの影響を抑制できるので、PLL20が有する本来の電気的特性により近い特性を発揮することが可能となる。逆に、半導体チップ15が、半導体チップ11へ及ぼす影響も低減可能である。
【0031】
また、半導体チップ15のPLLアナログ部28は、半導体チップ11上にないので、論理回路等で発生する熱による温度上昇を抑制することが可能である。PLLアナログ部28は、熱に敏感な抵抗値の変動、キャパシタの容量変動等が抑制され、電気的特性を安定させることが可能である。
【0032】
また、半導体チップ11の分周器25は、最小線幅の製造プロセスで形成されているので、半導体装置1に要求される高速化に対応したPLL20を構成可能である。つまり、分周器25は、PLL20の出力信号Voutをフィードバックさせ、逓倍数に応じて分周した分周器25の出力信号と入力信号VinとをPFD21にて比較するときに、分周器25内で信号の遅延や波形のなまりが抑制される。PLL20は、半導体チップ11の分周器25と半導体チップ15のPLLアナログ部28との間で、半田バンプを介して信号のやり取りを行うことにより、十分に高速な動作が可能である。
【0033】
また、半導体チップ15と半導体チップ11とは、半田バンプ35で接続されているので、金属細線で接続する場合に比較して、太さが同程度乃至より太く、長さがより短い接続となる。その結果、金属細線と比較して、抵抗が低く、インダクタンスが低く接続でき、高周波の信号をより容易に通すことが可能である。また、半田バンプ35は、チップ内の配線層に比較してずっと太い。
【0034】
また、PLLアナログ部28を半導体チップ15として半導体チップ11の外に出したので、半導体チップ11の論理回路の設計の自由度は高くなり、同様に半導体チップ15のPLLアナログ部28の設計の自由度は高くなり、レイアウト設計等は容易に、つまり、より短時間で行うことが可能である。設計の自由度が上げられるために、半田バンプ35を介して接続される接続パッド12bと接続パッド16とは、論理回路とPLLアナログ部28にとって、より適する位置に配置することが可能となる。
【0035】
また、PLL20を論理回路等と全て同一の半導体チップとして形成する場合、または、同一の実装基板上に並列に配置する場合に比較して、半導体チップ11のチップ面積は小さくなり、半導体チップ11のチップ面積に支配される実装基板31が小さくなり、半導体装置1が小型化される。半導体装置1の高さは、半導体チップ11の上に、半導体チップ15を固定するものの、半導体チップ11の上面から上方に引き出してループを形成する金属細線37の高さと、ほぼ同じ程度となるので、高さ方向の増加は小さい。
【0036】
また、半導体チップ11と半導体チップ15とは、異なる世代の製造プロセスで製造が可能であるので、古い製造プロセスの有効活用が可能であり、新旧2つの製造プロセスを並行に稼働させることにより、半導体装置1の製造時間の短縮が可能となる。
【0037】
次に、上記実施例1の変形例1について説明する。上記実施例1では、半導体チップ15にPFD21、CHP22、LPF23、及びVCO24からなるPLLアナログ部28を形成したが、上側の半導体チップにCHP22、LPF23、及びVCO24からなるPLLアナログ部を形成し、下側の半導体チップにPFD21及び分周器25を形成することは可能である。デジタルノイズを受け易い最小限のPLLアナログ部を上側の半導体チップに形成する選択である。この変形例1の半導体装置は、例えば、PLLの動作周波数が比較的低く、また下側の半導体チップから発生するデジタルノイズが比較的小さい場合に有効である。この変形例1の半導体装置は、上記実施例1の半導体装置1が有する効果とほとんど同様な効果を有している。
【0038】
次に、上記実施例1の変形例2について説明する。上記変形例1とは逆に、上側の半導体チップにPFD21、CHP22、LPF23、VCO24、及び分周器25からなるPLL20を形成することは可能である。PLL20を可能な限り高速化しようとすると、半導体チップ15を最先端の世代にある製造プロセスで形成することは必要である。この変形例2の半導体装置は、PLL全体が上側の半導体チップに一体化されているため、下側のチップ上にPLLの回路ブロックの一部を配置せずに済み、下側の半導体チップのレイアウト設計がより楽になる。また、PLLとしての良否判定は、上側の半導体チップをテストすることによって、比較的簡単に行うことが可能である。この変形例2の半導体装置は、上記実施例1の半導体装置1が有する効果とほとんど同様な効果を有している。
【0039】
次に、上記実施例1の変形例3について、図3を参照しながら説明する。図3は半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図である。実施例1の半導体装置とは、上側の半導体チップに形成される回路の範囲が異なる。なお、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0040】
図3に示すように、半導体装置2は、実施例1の半導体装置1と同様な回路を有しており、PLLアナログ部28に加えて、実施例1の半導体装置1では下側の半導体チップ11の上面に配設されていたADC/DAC(A−Dコンバータ/D−Aコンバータ)50が、上側の半導体チップ55に形成されている。半導体チップ55は、実施例1の半導体チップ15に比較して大きくなり、下側の半導体チップ51は、実施例1の半導体チップ11に比較して小さい。
【0041】
ADC/DAC50は、例えば、抵抗及びコンパレータ等で構成されている。PLLアナログ部28とADC/DAC50とは、隣接する領域にそれぞれ配設されている。PLLアナログ部28とADC/DAC50の接続は、一部を半導体チップ55上で行っているが、半田バンプ35を介して半導体チップ51に落として、半導体チップ51上で行うことは可能である。
【0042】
半導体装置2は、PLLアナログ部28とADC/DAC50を、別の半導体チップ55として形成して、下側の半導体チップ51の上に配置している。その結果、半導体装置2は、実施例1のPLLアナログ部28のみを別の半導体チップ15として形成する場合に比較して、より多くの実装面積の低減が可能である。例えば、モバイル情報端末用の1チップ形SoCの半導体装置に比較して、PLLアナログ部28及びADC/DAC50を別の半導体チップ15として、スタック型MCPの半導体装置2を構成すると、上下のシリコン基板の合計の使用面積はわずかに増加するものの、実装面積を約17%低減することが可能となった。
【0043】
また、半導体装置2は、ADC/DAC50が、下側の半導体チップ51で発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となる。ADC/DAC50は、熱に敏感な抵抗の抵抗値変動等が抑制され、電気的特性を安定させることが可能である。その他、半導体装置2は、実施例1の半導体装置1が有する効果を、同様に有している。
【実施例2】
【0044】
本発明の実施例2に係る半導体装置について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4は半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図である。図5は半導体装置の半導体チップに形成される回路を模式的に示す図である。実施例1の半導体装置とは、回路形式が異なり、上側の半導体チップに形成される回路の範囲が異なる。なお、実施例1と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0045】
図4及び図5に示すように、半導体装置3は、LC発振回路構成のVCO78を有し、VCO78のインダクタ73a、73bが上側の半導体チップ71に形成されている。実施例1のCMOSFETを有するリングオシレータ構成のVCO24を、VCO78で置き換えた構成である。VCO78は、VCO24より高い発振周波数、例えば、発振周波数が1〜数GHzより高いPLLに用いることが可能である。
【0046】
図4に示すように、インダクタ73a、73bは、半導体チップ71の下面の、層間絶縁膜の中の配線層を利用して、矩形の枠に近い形状を連続した螺旋形に形成されている。インダクタ73a、73bは、半導体チップ71の下面に、鏡面対称となるように配置されている。インダクタ73a、73bの中心部の一端が互いに接続されて、接続パッド(図示略)に接続され、インダクタ73a、73bの外周部の他端が、それぞれ、別の接続パッド(図示略)に接続されている。
【0047】
図5に示すように、VCO78は、差動型のLC型発振器をなし、負側の出力信号Vout−が、ダイオード構成のバラクタ65aのカソード、MOSFET67aのドレイン、インダクタ73aの一端、MOSFET67bのゲートに接続され、正側の出力信号Vout+が、ダイオード構成のバラクタ65bのカソード、MOSFET67bのドレイン、インダクタ73bの一端、MOSFET67aのゲートに接続され、入力信号Vcontがバラクタ65a、65bのアノードに接続され、電源Vccがインダクタ73a、73bの他端に接続され、MOSFET67a、67bのソースが接地されている。
【0048】
上側の半導体チップ71は、図5に1点鎖線で囲まれたインダクタ73a、73bが配設され、VCO78の他の回路要素は、下側の半導体チップ61に配設され、両者の電気的な接続は、接続パッド及び半田バンプ(図示略)を介して行われる。半導体チップ61は、インダクタ73a、73bを除くVCO78が配設され、その他、実施例1の半導体チップ11が有する論理回路及びアナログ部が配設され、更に、図2に示すVCO24以外のPLLが配設されている。
【0049】
VCO78は、LCの定数に応じて発振周波数が決まる。バラクタ65a、65bは、pn接合の容量が、印加電圧により変化することを利用して、すなわち、入力信号Vcontの電圧に応じて容量が変化する可変容量素子として使用されている。インダクタ73a、73bのインダクタンスは一定である。その結果、VCO78は、出力の発振周波数が可変となる。なお、差動型にすることにより、位相が180度ずれた出力信号Vout−及び出力信号Vout+が、発振信号となる。
【0050】
半導体装置3は、VCO78の中のインダクタ73a、73bのみを、別の半導体チップ71として形成して、下側の半導体チップ61の上に配置されている。その結果、インダクタ73a、73bを含むPLLを論理回路等と全て同一の半導体チップとして形成する場合、または、同一の実装基板上に並列に配置する場合に比較して、実装面積の低減が可能である。他の素子に比較して、インダクタ73a、73bは、大きな占有面積となることが多く、面積低減の効果は大きい。
【0051】
また、インダクタ73a、73bは、別の半導体チップ71として形成されることにより、導電性のシリコン基板からの距離が近いことによる寄生容量の低減、配線層の厚膜化等による低抵抗化等を独自に図ることができ、また、半導体チップ61で発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となり、VCO78の最大動作周波数の増大、チューニングレンジの拡大等が可能となる。また、レイアウト設計の自由度が増し、例えば、インダクタ73a、73bを対称的な形状とすることが容易にでき、両者の特性を揃えることがより簡単にできるようになる。
【0052】
また、半導体チップ61と半導体チップ71とは、異なる世代の製造プロセスで製造が可能であるので、古い製造プロセスの有効活用が可能であり、新旧2つの製造プロセスを並行に稼働させることにより、半導体装置3の製造時間の短縮が可能となる。
【0053】
次に、上記実施例2の変形例について、図6を参照しながら説明する。図6は半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図である。実施例2の半導体装置とは、上側の半導体チップに形成される回路の範囲が異なる。なお、実施例1及び実施例2と同一構成部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0054】
図6に示すように、半導体装置4は、実施例2のVCO78を有しており、VCO78のインダクタ73a、73bに加えて、バラクタ65a、65bが上側の半導体チップ85に形成されている。半導体チップ85は、実施例2の半導体チップ71に比較して、大きくなり、下側の半導体チップ81は、実施例2の半導体チップ61に比較して小さい。
【0055】
インダクタ73a、73bは、実施例2のインダクタ73a、73bと同様なレイアウトで配設され、インダクタ73a、73bに接近して、対応するバラクタ65a、65b配設されている。バラクタ65a、65bは、インダクタ73a、73bと半導体チップ85上で接続されているが、半導体チップ81上で接続されても差し支えない。
【0056】
半導体装置4は、VCO78の中のインダクタ73a、73b及びバラクタ65a、65bを、別の半導体チップ81として形成して、下側の半導体チップ81の上に配置している。その結果、半導体装置4は、実施例2のインダクタ73a、73bのみを別の半導体チップ71として形成する場合に比較して、より多くの実装面積の低減が可能である。他の素子に比較して、バラクタ65a、65bは、比較的大きな占有面積となることが多く、面積低減の効果は大きい。
【0057】
また、半導体装置4は、バラクタ65a、65bが、下側の半導体チップ81で発生した熱による温度上昇を抑制することが可能となる。その他、半導体装置4は、実施例2の半導体装置3が有する効果を、同様に有している。
【0058】
なお、上側の半導体チップに、上述の受動素子の他に、MOSFET67a、67bを加えた構成とすることは差し支えない。
【0059】
更に、実施例2及びその変形例では、可変容量素子として、バラクタ65a、65bを使用する例を示したが、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical System)可変容量素子等を使用することが可能である。また、容量を可変とすることなく、バラクタ65a、65bを固定容量のキャパシタと置き換えることにより、差動型のLC発振器として使用することが可能である。
【0060】
本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々、変形して実施することができる。
【0061】
例えば、実施例では、論理回路を有する第1の半導体チップとアナログ回路を有する第2の半導体チップとから構成される半導体装置の例を示したが、アナログ回路を有する第3の半導体チップを形成し、第3の半導体チップが、第1の半導体チップの上に、第2の半導体チップに並列に、第2の半導体チップと同様に半田バンプを介して接続されてもよい。
【0062】
また、第2の半導体チップは、アナログ回路に隣接して、例えば、ゲートアレイが配設された構成とすることが可能である。また、ゲートアレイが配設された第3の半導体チップを形成し、第3の半導体チップが、第1の半導体チップの上に、第2の半導体チップに並列に、第2の半導体チップと同様に半田バンプを介して接続されてもよい。また、ゲートアレイを置き換えて、または、ゲートアレイに並列して、例えば、IP(Intellectual Property)等の回路ブロックが配設された構成とすることが可能である。なお、第2または第3の半導体チップに配設されたゲートアレイ及び回路ブロック等が、全て第1の半導体チップと接続されている必要はない。
【0063】
また、実施例では、半導体チップを上下に2枚積層する例を示したが、半導体チップを3枚積層することは可能である。3枚積層する場合、論理回路を有する第1の半導体チップと実装基板との間に、例えば、上面にメモリセル回路を有するメモリ半導体チップを固定し、メモリ半導体チップと実装基板とを金属細線で接続する。また、第1の半導体チップとメモリ半導体チップとを金属細線で接続することは可能である。
【0064】
また、実施例では、第2の半導体チップに配設されるアナログ回路として、PLLの一部またはPLL、ADC/DAC、インダクタ、バラクタの例を示したが、その他に、電源回路、電源制御回路、増幅回路、演算回路、変調回路、インピーダンス整合回路、高周波信号処理回路等の内の少なくとも一つを選択して配置する構成とすることは可能である。
【0065】
また、アナログIPでは、内部にアナログ回路ブロックと制御論理回路ブロックを組み合わせた、いわゆるアナログ・デジタル混載(ミックスト・シグナル、Mixed Signal)回路が増えている。それらのアナログIPにおいて、上記実施例のPLLで示したように、アナログ回路ブロックは第2の半導体チップに、論理回路ブロックは第1の半導体チップに作り別けし、その間の信号のやり取りは半田バンプを介して行うことで、高速動作性能に優れたアナログ・デジタル混載回路を実現させることは可能である。
【0066】
その他、以下の付記に記載されるような構成が考えられる。
(付記1) 接続パッドを有する実装基板と、上面に論理回路が形成され、下面を前記実装基板側に固定された第1の半導体チップと、下面に、抵抗、またはキャパシタ、またはインダクタの内の少なくとも1つの受動素子を有するアナログ電気信号を扱うアナログ回路が形成され、下面を第1の導電材を介して前記第1の半導体チップの上面に電気的に接続且つ固定された第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップと前記実装基板の接続パッドとを電気的に接続する第2の導電材とを備えている半導体装置。
【0067】
(付記2) 前記第2の半導体チップは、抵抗、またはキャパシタ、またはインダクタの内の同一種類の受動素子のみで構成されるアナログ回路である付記1に記載の半導体装置。
【0068】
(付記3) 前記第2の半導体チップは、抵抗、またはキャパシタ、またはインダクタの内の少なくとも2種類の受動素子で構成されるアナログ回路である付記1に記載の半導体装置。
【0069】
(付記4) 前記第2の半導体チップは、アナログ・デジタル混載回路の内のアナログ回路ブロックである付記1に記載の半導体装置。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例1に係る半導体装置の構成を模式的に示す図で、図1(a)は半導体装置の半導体チップを平面的に示す図、図1(b)は図1(a)のA−A線に沿った全体の断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る半導体装置の上側の半導体チップに形成される回路の構成を模式的に示すブロック図で、図2(a)は位相同期回路(PLL)を示す図、図2(b)は図2(a)の一部の構成を示す図。
【図3】本発明の実施例1の変形例に係る半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図。
【図4】本発明の実施例2に係る半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図。
【図5】本発明の実施例2に係る半導体装置の半導体チップに形成される回路を模式的に示す図。
【図6】本発明の実施例2の変形例に係る半導体装置を構成する半導体チップを模式的に示す平面的な図。
【符号の説明】
【0071】
1、2、3、4 半導体装置
11、15、51、55、61、71、81、85 半導体チップ
12a、12b、16、32、53、63 接続パッド
13、53、83 パッド領域
20 PLL
21 PFD
22 CHP
23 LPF
24、78 VCO
25 分周器
28 PLLアナログ部
31 実装基板
33 接着材
35、36 半田バンプ
37 金属細線
39 封止樹脂
41、43、45 インバータ
42、44、46 キャパシタ
50 ADC/DAC
65a、65b バラクタ
67a、67b MOSFET
73a、73b インダクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続パッドを有する実装基板と、
上面に論理回路が形成され、下面を前記実装基板側に固定された第1の半導体チップと、
下面に、抵抗、またはキャパシタ、またはインダクタの内の少なくとも1つの受動素子を有するアナログ電気信号を扱うアナログ回路が形成され、下面を第1の導電材を介して前記第1の半導体チップの上面に電気的に接続且つ固定された第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップと前記実装基板の接続パッドとを電気的に接続する第2の導電材と、
を備えていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記第1の半導体チップは、下面を前記実装基板上に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の半導体チップは、第1の最小線幅で形成される回路を有し、前記第2の半導体チップは、前記第1の最小線幅より大きな第2の最小線幅で形成される回路からなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の導電材は、半田バンプであり、前記第2の導電材は、金属細線であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記アナログ回路は、位相同期回路、もしくはA−D変換回路、もしくはD−A変換回路、もしくはLC発振回路の内の少なくとも1つ、または、その一部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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