説明

半導体装置

【課題】ICカードは磁気カードと比較してコストが高く、電子タグもバーコードの代替品としてはコスト高である。そこでは、シリコンウェハのチップと異なり、低コストで大量生産でき、さらに非常に薄い集積回路を備えた半導体装置を提供する。
【解決手段】薄膜集積回路と、第1のアンテナと、第2のアンテナとを有し、薄膜集積回路は第1のアンテナ及び第2のアンテナと電気的に接続され、薄膜集積回路は、第1のアンテナと、第2のアンテナとの間に配置された半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリなどを有し、紙のように薄い薄膜集積回路を搭載したチップ、該チップ
を利用したラベルが付された製品又は商品、及びそれらの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一人当たりが携帯するカード数が増加してきている。カードにはあらゆる情報が記
録され、必要に応じて書き換えられるため、情報量は増加の一途をたどっている。
【0003】
このような情報量の増加は、多岐の分野にわたって必要不可欠なこととなっている。例え
ば食品業界や製造業界に対して、商品の安全性や管理体制の強化を求める声が高まってお
り、それに伴って商品情報は増加してしまう。しかし現状の商品情報は、主にバーコード
の十数桁の数字により提供されるにとどまり、製造国、メーカー、商品番号等の程度の情
報が一般的である。またバーコードを利用した場合、一つ一つの読み取りを手作業で行う
ため、時間を要してしまった。
【0004】
そこでネットワークを利用した商品管理方法であって、ネットワークに接続された各販売
店の端末から、返却された商品の識別子が入力され、サーバを経由して、商品に関する情
報を販売店に通知する方法がある(特許文献1参照)。特許文献1によると、商品の識別
子は2次元バーコードや文字列などからなり、販売店の端末への入力を介してサーバに送
られる。また商品は、商品に関連するプログラムやデータ、あるいは個人情報を格納する
着脱可能な記憶媒体を有し、該記憶媒体はICカード、スマートカード、コンパクトフラ
ッシュ(登録商標)カード等のカードなどを含んでいることが開示されている。
【0005】
また、有価な証券類に微細なICチップを搭載し、不正利用を防ぐとともに、正規な管理
元に取り戻せた場合には再利用が可能となる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−230141号公報
【特許文献2】特開2001−260580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
情報量の増加に伴い、バーコードによる情報管理では、提供可能な情報量に限界が生じて
いた。またさらにバーコードによる情報管理では、手作業での読み取り時間を費やすため
、効率が悪かった。そしてバーコードの読み取り作業は人手を介するため、読み取りミス
などを避けることはできなかった。
【0008】
また、ICカードは磁気カードと比較してコストが高く、電子タグもバーコードの代替品
としてはコスト高である。その結果、付加価値が重要となる用途に限られ、普及を妨げる
要因となっている。
【0009】
上記特許文献1に関してみると、消費者がインターネットにアクセスするには手間がかか
り、パーソナルコンピュータ等を所有する必要があった。更に、上記特許文献1及び2で
は、使用されるシリコンウェハからなる集積回路は厚いため製品や商品、特に紙幣等の紙
、又は製品や商品に付すラベル自体に搭載する場合、表面に凹凸が生じてしまう。その結
果、製品や商品のデザイン性が低下してしまった。
【0010】
そこで本発明は、従来のシリコンウェハと異なり、低コストで大量生産でき、さらに非常
に薄い集積回路及びその形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を鑑み本発明は、ガラス基板、石英基板、ステンレス基板、アクリル等の可撓性
を有する合成樹脂からなる基板等のバルク基板以外に、選択的にパターンを形成可能な方
法により、非常に薄い集積回路(以下、薄膜集積回路と表記する)を形成することを特徴
とする。そして、本発明の薄膜集積回路及びアンテナを実装したチップ(以下、IDチッ
プ又は半導体装置と表記する)を形成することを特徴とする。
【0012】
選択的にパターンを形成可能な方法としては、導電膜や絶縁膜などの材料が混入された組
成物の液滴(ドットとも表記する)を選択的に吐出(噴出)する液滴吐出法を用いること
ができる。液滴吐出法は、その方式によっては、インクジェット法とも呼ばれる。また選
択的にパターンを形成可能な方法として、印刷法がある。
【0013】
このような選択的に形成するパターンとしては、ゲート電極、ソース電極、及びドレイン
電極、画素電極等の電極、ソース配線、ドレイン配線等の配線、半導体膜、半導体膜等を
パターニングするためのマスク等、が挙げられる。
【0014】
具体的な本発明のIDチップは、液滴吐出法又は印刷法を用いて形成されたパターンを有
する薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタを有する薄膜集積回路と、アンテナと、を有
し、薄膜集積回路は、アンテナと電気的に接続するように基板へ実装されていることを特
徴とする。
【0015】
また本発明のIDチップは、液滴吐出法又は印刷法を用いて形成されたパターンを有する
薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタを有する薄膜集積回路と、アンテナと、を有し、
薄膜集積回路は、アンテナと電気的に接続するように基板へ実装され、アンテナは薄膜集
積回路を介して対称に設けられていることを特徴とする。
【0016】
また本発明のIDチップは、液滴吐出法又は印刷法を用いて形成されたパターンを有する
薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタを有する薄膜集積回路と、アンテナと、を有し、
アンテナは可撓性を有する基板上に設けられ、薄膜集積回路は、アンテナと電気的に接続
するように基板へ実装され、基板は薄膜集積回路を間に挟むように折り畳まれていること
を特徴とする。
【0017】
なお本発明の薄膜集積回路の作製工程において、全てのパターンを、選択的にパターンを
形成可能な方法により形成しなくともよい。本発明は薄膜集積回路の一工程において選択
的にパターンを形成可能な方法な方法を用いれば、その効果を奏することができるからで
ある。もちろん、薄膜集積回路の作製工程に、複数の工程のパターンを、選択的にパター
ンを形成可能な方法により形成しても構わない。
【0018】
具体的な本発明のIDチップの作製方法は、少なくとも一工程に液滴吐出法又は印刷法を
用いて、第1の基板上に薄膜集積回路を形成し、第2の基板上に、アンテナを形成し、薄
膜集積回路がアンテナに電気的に接続されるように、第1の基板と第2の基板とを張り合
わせることを特徴とする。
【0019】
また本発明のIDチップの作製方法は、少なくとも一工程に液滴吐出法又は印刷法を用い
て、第1の基板上に薄膜集積回路を形成し、可撓性を有する第2の基板上に、アンテナを
形成し、薄膜集積回路がアンテナに電気的に接続されるように、第2の基板は薄膜集積回
路を間に挟むように折り畳むことを特徴とする。
【0020】
また本発明のIDチップの作製方法は、少なくとも一工程に液滴吐出法又は印刷法を用い
て、第1の基板上に薄膜集積回路を形成し、第2の基板上に、アンテナを形成し、薄膜集
積回路がアンテナに電気的に接続されるように、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせ
た後、第1の基板を薄膜集積回路から剥離することを特徴とする。
【0021】
また本発明のIDチップの作製方法は、少なくとも一工程に液滴吐出法又は印刷法を用い
て、第1の基板上に薄膜集積回路を形成し、薄膜集積回路上に第2の基板を接着し、第1
基板を薄膜集積回路から剥離し、第3の基板上に、アンテナを形成し、薄膜集積回路がア
ンテナに電気的に接続されるように、第2の基板と第3の基板とを張り合わせることを特
徴とする。
【0022】
また本発明のIDチップの作製方法は、少なくとも一工程に液滴吐出法又は印刷法を用い
て、第1の基板上に薄膜集積回路を形成し、薄膜集積回路上にアンテナを形成し、薄膜集
積回路がアンテナに電気的に接続されるように、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせ
た後、第1の基板を薄膜集積回路から剥離することを特徴とする。
【0023】
本発明において、アンテナは、スパッタリング法、液滴吐出法、印刷法、メッキ法、フォ
トリソグラフィー法及びメタルマスクを用いた蒸着法から選ばれたいずれかにより形成す
ることができる。またアンテナ形成後、加圧によりプレスし、平坦性を高めることができ
る。
【発明の効果】
【0024】
本発明の薄膜集積回路は、バーコード等の情報提供手段と比較し、情報取引又は情報管理
を簡便、短時間に行うことができ、多種多様な情報を提供することができる。さらに本発
明の薄膜集積回路は、従来のシリコンウェハと異なり非常に薄い集積回路であるため、商
品等に付す場合であってもデザイン性を損なうことがない。
【0025】
またガラス基板等に形成するため、従来のシリコンウェハからなるチップと比較してチッ
プ、つまりIDチップのコストを削減することができる。またシリコンウェハで作製され
たチップは、円形のシリコンウェハからチップを取り出すため、母体基板形状に制約があ
るが、一方本発明のIDチップは、母体基板がガラス等の絶縁基板であり、形状に制約が
ない。そのため、生産性を高めることができ、大量生産することができる。その結果さら
なるコストの削減が期待できる。チップのように単価が非常に低い集積回路は、単価コス
トの削減により非常に大きな利益を生むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】薄膜集積回路の作製工程を示した断面図である。
【図2】薄膜集積回路の作製工程を示した断面図である。
【図3】薄膜集積回路の作製工程を示した断面図である。
【図4】薄膜集積回路の作製工程を示した断面図である。
【図5】薄膜集積回路の作製工程を示した断面図及び斜視図である。
【図6】アンテナを示した上面図である。
【図7】アンテナの作製工程を示した断面図である。
【図8】アンテナの作製工程を示した断面図である。
【図9】薄膜集積回路の実装形態を示した図である。
【図10】薄膜集積回路の実装形態を示した図である。
【図11】薄膜集積回路を搭載したカードを示した図である。
【図12】商品に付された薄膜集積回路を示した図である。
【図13】薄膜集積回路を付した商品管理を示した図である。
【図14】薄膜集積回路の作製工程を示した図である。
【図15】IDチップの機能的な構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は多くの異なる態
様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形
態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施
の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するため
の全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り
返しの説明は省略する。
【0028】
(実施の形態1)
本実施の形態では、IDチップに実装される薄膜集積回路の作製方法の一例について説明
する。
【0029】
まず図1(A)に示すように、絶縁表面を有する基板100を用意する。基板100には
、例えばバリウムホウケイ酸ガラスや、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石
英基板、ステンレス基板等を用いることができる。また、ポリエチレン-テレフタレート
(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)
に代表されるプラスチックや、アクリル等の可撓性を有する合成樹脂からなる基板は、一
般的に他の基板と比較して耐熱温度が低い傾向にあるが、作製工程における処理温度に耐
え得るのであれば用いることが可能である。
【0030】
また基板の平坦性を高めるため、化学的又は機械的ポリッシング法、いわゆるCMP法(
Chemical−Mechanical Polishing)により、表面研磨して
から用いると好ましい。CMPの研磨剤(スラリー)には、例えば、塩化シリコンガスを
熱分解して得られるフュームドシリカ粒子をKOH添加水溶液に分散したものを用いるこ
とができる。
【0031】
基板100上に、下地膜101を形成する。下地膜は、基板中に含まれるNaなどのアル
カリ金属やアルカリ土類金属が、半導体膜中に拡散し、半導体素子の特性に悪影響を及ぼ
すのを防ぐために設ける。そのため、アルカリ金属やアルカリ土類金属の半導体膜への拡
散を抑えることができる酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化チタン、窒化チタンな
どの絶縁膜を用いて下地膜を形成することができる。
【0032】
下地膜101は積層構造を有してもよく、例えば第1の下地膜として、窒化酸化珪素膜を
10〜200nm(好ましくは50〜100nm)、第2の下地膜として、酸化窒化珪素
膜を50〜200nm(好ましくは100〜150nm)の順に積層して形成してもよい
。なお窒化酸化珪素膜は、プラズマCVD法を用い、原料ガスにSiH4、N2O、NH3
、H2、圧力が0.3Torr(39.9Pa)、RFパワーが50W、RF周波数が6
0MHz、基板温度が400℃として形成することができる。また酸化珪素膜は、プラズ
マCVD法を用い、原料ガスにSiH4、N2O、圧力が0.3Torr(39.9Pa)
、RFパワーが150W、RF周波数が60MHz、基板温度が400℃として形成する
ことができる。
【0033】
また下地膜は、不純物が半導体膜へ拡散することが防止できれば、必ずしも設ける必要は
ない。そのため、石英基板など不純物の拡散がさして問題とならない場合は、必ずしも下
地膜を設ける必要はない。一方、ガラス基板、ステンレス基板又はプラスチック基板のよ
うに、アルカリ金属やアルカリ土類金属が多少なりとも含まれている基板を用いる場合、
不純物の拡散を防ぐという観点から下地膜を設けることは有効である。
【0034】
下地膜101上に非晶質半導体膜102を形成する。非晶質半導体膜の膜厚は25〜10
0nm(好ましくは30〜60nm)とする。また非晶質半導体は珪素だけではなくシリ
コンゲルマニウムも用いることができ、シリコンゲルマニウムを用いる場合、ゲルマニウ
ムの濃度は0.01〜4.5atomic%程度であることが好ましい。本実施の形態で
は、珪素を主成分とする半導体膜を用いて非晶質半導体膜(非晶質珪素膜、アモルファス
シリコンとも表記する)を形成する。
【0035】
次に、非晶質半導体膜を結晶化するため加熱処理を行う。加熱処理とは、加熱炉、レーザ
ー照射、若しくはレーザー光の代わりにランプから発する光の照射(以下、ランプアニー
ルと表記する)、又はそれら組み合わせて用いることができる。
【0036】
加熱炉を用いる場合、非晶質半導体膜102を500〜550℃で2〜20時間かけて加
熱する。このとき、徐々に高温となるように温度を500〜550℃の範囲で多段階に設
定するとよい。最初の低温加熱工程により、非晶質半導体膜の水素等が出てくるため、結
晶化の際の膜荒れを低減する、いわゆる水素だしを行うことができる。さらに、結晶化を
促進させる金属元素、例えばNiを非晶質半導体膜上に形成すると、加熱温度を低減する
ことができ好ましい。
【0037】
但し、金属元素を形成する場合、半導体素子の電気特性に悪影響を及ぼすことが懸念され
るので、該金属元素を低減又は除去するためのゲッタリング工程を施す必要が生じる。例
えば、非晶質半導体膜をゲッタリングシンクとして金属元素を捕獲するよう工程を行えば
よい。
【0038】
またレーザー照射を用いる場合、連続発振型のレーザー(CWレーザー)やパルス発振型
のレーザー(パルスレーザー)を用いることができる。レーザーとしては、Arレーザー
、Krレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー、Y2O3レーザー、YVO4レーザー、YLFレー
ザー、YAlO3レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライドレー
ザー、Ti:サファイヤレーザー、銅蒸気レーザーまたは金蒸気レーザーのうち一種または
複数種を用いることができる。またレーザーのビーム形状は、線状とすると好ましく、長
軸の長さは200〜350μmとすればよい。またさらにレーザーは、半導体膜に対して
入射角θ(0°<θ<90°)を持たせてもよい。
【0039】
なおレーザー照射を用いる場合、連続発振の基本波のレーザー光と連続発振の高調波のレ
ーザー光とを照射するようにしてもよいし、連続発振の基本波のレーザー光とパルス発振
の高調波のレーザー光とを照射するようにしてもよい。
【0040】
なお、希ガスや窒素などの不活性ガス雰囲気中でレーザー光を照射するようにしてもよい
。これにより、レーザー光照射による半導体表面の荒れを抑えることができ、界面準位密
度のばらつきによって生じる閾値のばらつきを抑えることができる。
【0041】
また直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成してもよい。この場合、GeF4、又はF2
のフッ素系ガスと、SiH4、又はSi26等のシラン系ガスとを用い、熱又はプラズマ
を利用して直接被形成面に、結晶性半導体膜を形成することができる。
【0042】
このように形成された結晶性半導体膜を、所定の形状にパターニングし、島状の半導体膜
103を得る。パターニングに際し、フォトリソグラフィー法又は液滴吐出法により所定
のマスクを形成する。なお、材料の利用効率が向上し、コストの削減、廃液処理量の削減
が可能となるため液滴吐出法を用いてマスクを形成すると好ましい。さらに液滴吐出法に
よりマスクを形成すると、フォトリソグラフィー工程の簡略化を行うことができる。すな
わち、フォトマスク形成、露光等が不要となり、設備投資コストの削減を達成でき、製造
時間を短縮することができる。
【0043】
液滴吐出法を用いるとき、組成物はドット状に吐出したり、ドットが連なった柱状に吐出
することがある。また組成物は、ドット状又は柱状に吐出される。すなわち、複数のドッ
トが連続して吐出されるため、ドットとして認識されず柱状に吐出されることもある。こ
のような組成物がドット状又は柱状に吐出されることを滴下若しくは噴出と表記する。
【0044】
マスク材料として、無機材料(酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素など)、感光性又は非
感光性の有機材料(ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、ポリビニル
アルコール、レジスト又はベンゾシクロブテン)を用いることができる。例えばポリイミ
ドを用いて液滴吐出法によりマスクを形成する場合、所望箇所に液滴吐出法によりポリイ
ミドを吐出した後、焼成するため150〜300℃で加熱処理を行うとよい。
【0045】
マスクを用いて、ドライエッチング法又はウェットエッチング法により結晶性半導体膜を
パターニングする。パターニング後、マスクを除去するため、プラズマ処理を行う。なお
、マスクは除去せずに絶縁膜として機能させることもできる。
【0046】
その後、島状の半導体を覆うように絶縁膜、いわゆるゲート絶縁膜105を形成する。ゲ
ート絶縁膜はプラズマCVD法、減圧CVD法、またはスパッタ法を用い、厚さを10〜
150nm、好ましくは20〜40nmとして珪素を含む絶縁膜で形成する。勿論、ゲー
ト絶縁膜は酸化窒化珪素膜に限定されるものでなく、他の珪素を含む絶縁膜を単層または
積層構造として用いてもよい。
【0047】
その後、結晶性半導体膜上にゲート絶縁膜を介して導電膜、いわゆるゲート電極106を
形成する。ゲート電極は、液滴吐出法、CVD法又はスパッタリング法により形成するこ
とができる。ゲート電極は、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cuから選ばれた元素、また
は前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料で形成すればよい。勿論ゲート電
極は、単層であっても積層であってもよい。例えば、第1の導電膜108aとして膜厚1
0〜50nmの窒化タンタル膜を形成し、第2の導電膜108bとして膜厚200〜40
0nmのタングステン膜を順次積層したゲート電極を形成することができる。
【0048】
また液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、溶媒に混在される導電体として、金(
Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(
W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)、インジウ
ム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、若しくはアルミニウム(Al
)が挙げられ、これら導電体が複数混在した材料を用いることができる。また、上記導電
体からなる合金、これらの分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒子を用いることがで
きる。
【0049】
例えば、ゲート電極のパターンを形成するために、金属微粒子を有機溶媒中に分散させた
組成物を用いる場合、金属微粒子は平均粒径が1〜50nm、好ましくは3〜7nmのも
のを用いるとよい。このような組成物は、電解法、アトマイズ法又は湿式還元法等の公知
の方法を用いて形成することができる。また、ガス中蒸発法で形成すると、分散剤で保護
された微粒子は約7nmと微細なものとなる。またこの微粒子は、被覆剤を用いて各粒子
の表面を覆うと、溶剤中に凝集がなく、室温で安定に分散し、液体とほぼ同じ挙動を示す
ため、好ましい。
【0050】
導電体等の材料が効率よく分散するため、微粒子となる導電体の表面を有機物、又は導電
物によりコーティングするとよい。また表面を覆う物質は、積層構造を有してもよい。表
面を覆う物質は導電性を有すると好ましいが、絶縁性を有しても加熱処理等により除去す
ればよい。特に銅を用いる場合、半導体膜中等に銅が拡散することを防止するため、銅微
粒子の表面をニッケル(Ni)又はニッケルボロン(NiB)等の材料で覆うとよい。ま
たその表面にアミン、アルコール、チオールなどの分散剤を被覆してもよい。有機溶媒は
フェノール樹脂やエポキシ系樹脂などであり、熱硬化性又は光硬化性のものを適用してい
る。
【0051】
これら組成物の粘度調整は、チキソ剤若又は希釈溶剤を添加すればよい。
【0052】
本実施の形態では、液滴吐出法を用いて、液滴吐出ヘッドによって、Agの導電体を被形
成面に適量吐出し、ゲート電極を形成する。
【0053】
その後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理
を施す。または光照射処理により溶媒を硬化させてもよい。具体的には、所定の温度、例
えば200℃〜300℃で加熱すればよく、好ましくは酸素を有する雰囲気で加熱処理を
行う。このときゲート電極表面に凹凸が生じないように加熱温度を設定する。特に本実施
の形態のようにAgを用いる場合、酸素及び窒素を有する雰囲気で加熱処理を行うとよい
。例えば、酸素の組成比は、10〜25%となるように設定する。すると、液滴の溶媒中
に含まれる接着剤等の熱硬化性樹脂などの有機物が分解されるため、有機物を含まない銀
(Ag)を得ることができる。その結果、ゲート電極表面の平坦性を高め、比抵抗値を低
くすることができる。さらに有機溶媒の硬化に伴う体積収縮で金属微粒子間は接触し、融
合及び、融着若しくは凝集が促進される。すなわち、平均粒径が1〜50nm、好ましく
は3〜7nmの金属微粒子が融合若しくは、融着若しくは凝集したゲート電極が形成され
る。なおこのとき同時にゲート配線も形成される。このように、融合若しくは、融着若し
くは凝集により金属微粒子同士が面接触する状態を形成することにより、配線の低抵抗化
を実現することができる。
【0054】
本発明は、このような組成物を用いて配線パターンを形成することで、線幅が1〜10μ
m程度のゲート電極、又はゲート配線パターンの形成も容易になる。また、これら電極や
配線と接続するためのコンタクトホールの直径が1〜10μm程度であっても、組成物を
その中に充填することができる。
【0055】
なお、金属微粒子の換わりに、絶縁物質の微粒子を用いれば、同様に絶縁性のパターンを
形成することができる。
【0056】
このように液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、ゲート絶縁膜の材料は、ゲート
電極材料と密着性の高いものを選択するとよい。例えば、ゲート電極にAgを用いる場合
、酸化チタン(TiOx)からなるゲート絶縁膜を形成すると好ましい。すなわち酸化チ
タン(TiOx)は、ゲート絶縁膜としての機能と、密着性向上機能とを併せ持っている

【0057】
次いで、nチャネル型TFTとなる領域に、ゲート電極106をマスクとして自己整合的
に不純物元素であるリン(P)を添加し、不純物領域108を形成する。不純物添加時の
ゲート電極106下方への不純物元素の回り込みにより、ゲート電極と重なるように不純
物領域が形成されることもある。またゲート電極の側面をテーパ形状とし、ゲート電極と
重なる不純物領域を形成することもできる。
【0058】
その後、nチャネル型TFTとなる領域をレジストマスクで覆った状態で、pチャネル型
TFTとなる領域にゲート電極106をマスクとして、自己整合的に不純物元素であるボ
ロン(B)を添加し、不純物領域109を形成する。
【0059】
このように形成される薄膜トランジスタは、半導体膜より上方にゲート電極が設けられた
、所謂トップゲート型の薄膜トランジスタである。このような薄膜トランジスタが複数設
けられた基板をTFT基板と表記することができる。
【0060】
図1(B)に示すように、絶縁膜110、及び各不純物領域に接続された配線112を形
成する。絶縁膜は、有機材料や無機材料を用いることができる。有機材料としては、ポリ
イミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、
シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。シロキサンとは、珪素(Si)と酸素
(O)との結合で骨格構造が構造され、置換基に少なくとも水素を含む、又は置換基にフ
ッ素、アルキル基、又は芳香族炭化水素のうち少なくとも1種を有するポリマー材料、を
出発原料として形成される。またポリシラザンとは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を
有するポリマー材料を含む液体材料を出発原料として形成される。無機材料としては、酸
化珪素、又は窒化珪素を用いることができる。絶縁膜は、プラズマCVD法、減圧CVD
法、液滴吐出法、スピンコーティング法又はディップ法を用いて形成することができる。
粘性の高い原料を用いて形成する場合、液滴吐出法、スピンコーティング法、又はディッ
プ法を用いると好ましい。
【0061】
配線は、スパッタリング法、CVD法、又は液滴吐出により形成することができる。配線
材料としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングス
テン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜
を用いればよい。また液滴吐出法により配線を形成する場合、溶媒に混在される導電体と
して、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タン
グステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、ビスマス(Bi)、鉛(Pb)
、インジウム(In)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、若しくはアルミニ
ウム(Al)、これらからなる合金、これらの分散性ナノ粒子、又はハロゲン化銀の微粒
子を用いることができる。
【0062】
本実施の形態では、液滴吐出法により層間絶縁膜及び配線を形成する。このとき、層間絶
縁膜材料を有する溶媒と、導電膜材料を有する溶媒とを同時に吐出したり、層間絶縁膜材
料を有する溶媒を吐出後、導電膜材料を有する溶媒を吐出してもよい。
【0063】
図1(B)では、配線層は一層であるが、多層としてもよい。多層配線層とすることによ
り、薄膜集積回路の小型化を達成することができる。
【0064】
その後、配線112を接続するための導電膜115を形成する。導電膜115の作製方法
や材料は、配線112を参照することができる。
【0065】
図1(C)に示すように、導電膜115を覆うように保護膜として機能する絶縁膜116
を形成する。絶縁膜116の作製方法や材料は、層間絶縁膜110を参照することができ
る。
【0066】
絶縁膜116には、導電膜115とアンテナ等の端子と接続するためのコンタクトホール
を形成し、コンタクトホールには、導電膜117を形成し、接続端子部118を形成する

【0067】
また図2に示すように、アンテナ121を一体形成してもよい。この場合、接続端子部を
形成後、アンテナ121を形成する。アンテナの一部は、接続端子部と接続するように形
成する。その後、保護膜として機能する絶縁膜122を形成する。絶縁膜122の作製方
法や材料は、層間絶縁膜110を参照することができる。
【0068】
このようにアンテナを一体形成すると、アンテナが実装されたIDチップの作製コストを
削減することができる。IDチップのように単価が非常に低い集積回路は、単価コストの
削減により非常に大きな利益を生むことができる。
【0069】
また図2では、薄膜集積回路上にアンテナを形成しているが、薄膜集積回路の周囲にアン
テナを一体形成しても構わない。この場合、絶縁膜122を形成する工程を省き、絶縁膜
の厚みをなくすことができる。
【0070】
またさらに、アンテナは、ゲート電極、配線112、又は導電膜115と同一導電膜から
形成することができる。この場合、作製工程を削除することができ、好ましい。特にアン
テナを液滴吐出法や印刷法により形成する場合、同一レイヤーに形成するゲート電極、配
線112、又は導電膜115も液滴吐出法や印刷法により形成すると好ましい。
【0071】
図1(D)には、このように作製された薄膜集積回路の全体図を示す。薄膜集積回路は、
基板100上に設けられた薄膜集積回路120は、該集積回路の所定の領域には接続端子
部118が設けられている。
【0072】
このように非常に薄い薄膜集積回路を実装するIDチップにより、多種多様な情報を提供
することができる。またIDチップにより、情報取引又は情報管理を簡便、短時間に行う
ことができる。また更に商品容器にラベルと共にIDチップを付する場合であっても、非
常に薄いためデザイン性を損ねることがない。
【0073】
また本発明の薄膜集積回路は、シリコンウェハで作製された集積回路のように、クラック
や研磨痕の原因となるバックグラインド処理を行う必要がない。またさらに本発明の薄膜
集積回路は、厚さのバラツキも、半導体膜等の成膜時におけるばらつきに依存することに
なるので、大きくても数百nm程度であり、バックグラインド処理による数〜数十μmの
ばらつきと比べて格段に小さく抑えることができる。
【0074】
また本発明のIDチップは、シリコンウェハで作製されたチップと比較して、低コストで
形成することができる。ガラス基板等の低価格な母体基板に形成するためである。またシ
リコンウェハで作製されたチップは、円形のシリコンウェハからチップを取り出すため、
母体基板形状に制約があるが、一方本発明のIDチップは、母体基板がガラス等の絶縁基
板であり、形状に制約がない。そのため、生産性を高めることができ、さらにIDチップ
の形状寸法は自由に設定することができる。
【0075】
またIDチップを形成する材料の面からみても、シリコンウェハから形成されるチップと
比較して低コスト、且つ安全な材料を使用している。そのため使用済みのIDチップを回
収する必要性が低く、環境に優しい。またIDチップを破棄する際、ある程度の面積を有
するため、ハサミ等で切断することができ、不正使用を防止することができる。
【0076】
またシリコンウェハで作製されたICチップは、シリコンウェハによる電波吸収が懸念さ
れ、信号の感度が問題となる場合がある。特に、よく用いられる電波13.56MHz、
又は2.45GHzに関して電波吸収が懸念される。一方、本発明のIDチップは、ガラ
ス等の絶縁基板であるため電波吸収は生じないため好ましい。その結果、高感度なIDチ
ップを形成することができる。そのため、本発明のIDチップが有するアンテナの面積を
小さくすることができ、IDチップの小型化が期待できる。
【0077】
またシリコンウェハ上に形成するチップは、シリコンウェハが半導体性を有するため、交
流の電波に対し、接合が順バイアスになりやすく、ラッチアップ対策の必要がある。一方
、本発明のIDチップは、絶縁性を有する基板上へ薄膜集積回路を形成するため、このよ
うな心配がない。
【0078】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なり、非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジ
スタを具備する薄膜集積回路の作製方法について説明する。
【0079】
上記実施の形態と同様に、図3(A)に示すように、絶縁表面を有する基板100を用意
する。絶縁表面を有する基板の材料は、上記実施の形態を参照することができる。本実施
の形態では、非結晶性の半導体膜を有するため、半導体膜を結晶化するための加熱工程を
要しない。その結果、可撓性を有する合成樹脂からなる基板を用いやすい。
【0080】
また上記実施の形態と同様に、平坦性を高めるため、絶縁表面を有する基板に表面研磨を
施してもよい。
【0081】
その後、下地膜101を形成する。下地膜の材料や作製手段は、上記実施の形態を参照す
ればよい。また下地膜の材料として、チタン等の導電膜を用いることもできる。この場合
、導電膜は、作製工程における加熱処理等により、少なくとも表面酸化される。その他の
下地膜の材料は、3d遷移元素(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu
,Zn)、及びそれらの酸化物、窒化物、酸窒化物を用いることができる。
【0082】
また下地膜は、不純物が半導体膜へ拡散することが防止できれば、必ずしも設ける必要は
ないことは、上記実施の形態で述べたとおりである。
【0083】
次いで、下地膜上にゲート電極106を形成する。ゲート電極の材料又は作製手段は、上
記実施の形態を参照することができる。本実施の形態では、液滴吐出法を用いて、Agの
導電体を用いてゲート電極を形成する。
【0084】
その後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加熱処理
を施す。加熱条件は上記実施の形態を参照することができる。
【0085】
このように液滴吐出法によりゲート電極を形成する場合、下地膜の材料は、ゲート電極材
料と密着性の高いものを選択するとよい。例えば、ゲート電極にAgを用いる場合、酸化
チタン(TiOx)からなる下地膜を形成すると好ましい。すなわち酸化チタン(TiO
x)は、下地膜としての機能と、密着性向上機能とを併せ持っている。
【0086】
その後、ゲート電極上に保護膜として機能する絶縁膜を設けてもよい。特に、Agを用い
て液滴吐出法により形成されたゲート電極上には窒化珪素を有する絶縁膜を形成するとよ
い。その結果、ゲート電極の酸化を防止したり、表面の平坦化を向上することができる。
一方、酸素を有する絶縁膜を用いると、Agと反応し、酸化銀が形成され、ゲート電極表
面が荒れる恐れがあるため好ましくない。
【0087】
その後ゲート電極を覆うようにゲート絶縁膜105を形成する。ゲート絶縁膜の材料や作
製手段は上記実施の形態を参照すればよい。また上記実施の形態以外に加えて、ゲート絶
縁膜の材料は、ポリシラザン、ポリビニルアルコール等の有機材料からなる絶縁体を用い
ることができる。またゲート絶縁膜の作製手段は、液滴吐出法、スピンコーティング法又
はディップ法を用いて形成することができる。粘性の高い原料を用いて形成する場合、液
滴吐出法、スピンコーティング法、又はディップ法を用いると好ましい。
【0088】
次いで、ゲート絶縁膜上に半導体膜を形成する。半導体膜は、プラズマCVD法、スパッ
タリング法、液滴吐出法等により形成することができる。本実施の形態において半導体膜
は、非晶質半導体、非晶質状態と結晶状態とが混在したセミアモルファス半導体(SAS
とも表記する)、非晶質半導体中に0.5nm〜20nmの結晶粒を観察することができ
る微結晶半導体、及び結晶性半導体から選ばれたいずれの非結晶性状態を有してもよい。
特に、0.5nm〜20nmの結晶を粒観察することができる微結晶状態はいわゆるマイ
クロクリスタル(μc)と呼ばれている。
【0089】
SASは、非晶質構造と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)との中間的な構造を有し、自
由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体である。また短距離秩序を持ち格子歪
みを有する結晶質な領域を含んでいる。そして少なくとも膜中の一部の領域には、0.5
〜20nmの結晶領域を観測することができ、珪素を主成分とする場合にはラマンスペク
トルが520cm-1よりも低波数側にシフトしている。X線回折では珪素結晶格子に由来
するとされる(111)、(220)の回折ピークが観測される。また未結合手(ダング
リングボンド)を終端させるための中和剤として、SASは水素或いはハロゲンを1原子
%、又はそれ以上含んでいる。
【0090】
SASは、珪化物気体をグロー放電分解することにより得ることができる。代表的な珪化
物気体としては、SiH4であり、その他にもSi26、SiH2Cl2、SiHCl3、S
iCl4、SiF4などを用いることができる。珪化物気体を水素、水素とヘリウム、アル
ゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種又は複数種の希ガス元素で希釈して用いるこ
とによりSASの形成を容易なものとすることができる。このとき希釈率が10倍〜10
00倍の範囲となるように、珪化物気体を希釈すると好ましい。またSi26及びGeF
4を用い、ヘリウムガスで希釈する方法を用いてSASを形成することができる。グロー
放電分解による被膜の反応生成は減圧下で行うと好ましく、圧力は概略0.1Pa〜13
3Paの範囲で行えばよい。グロー放電を形成するための電力は1MHz〜120MHz
、好ましくは13MHz〜60MHzの高周波電力を供給すればよい。基板加熱温度は3
00度以下が好ましく、100〜250度の基板加熱温度が推奨される。
【0091】
本実施の形態では、半導体膜として、プラズマCVD法を用いて、珪素を主成分とするS
ASを形成する。SASを用いて薄膜トランジスタを形成すると、移動度は1〜10cm2/
Vsecとなる。
【0092】
次いで、一導電型を有する半導体膜を形成する。なお一導電型を有する半導体膜を形成す
ると、半導体膜と電極とのコンタクト抵抗が低くなり好ましいが、必要に応じて設ければ
よい。一導電型を有する半導体膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法、液滴吐出法
等を用いて形成することができる。
【0093】
プラズマCVD法により形成する場合、半導体膜と、N型を有する半導体膜、さらにゲー
ト絶縁膜を連続形成することができる。具体的には、プラズマCVD装置の処理室内への
原料ガスの供給を変化させることにより大気開放することなく、連続形成することができ
る。その結果、半導体膜と、N型を有する半導体膜、さらにゲート絶縁膜の各々の界面へ
の不純物付着を防止することができる。
【0094】
その後、半導体膜、及びN型を有する半導体膜を所望の形状にパターニングし、島状の半
導体膜103、島状のN型を有する半導体膜104を得る。パターニングに際し、上記実
施の形態を参照することができる。
【0095】
半導体膜、及びN型を有する半導体膜を同時にパターニングするため、島状の半導体膜1
03、及び島状のN型を有する半導体膜104の端部が一致する構造となる。すなわち、
島状の半導体膜103、及び島状のN型を有する半導体膜104のそれぞれの端部は、互
いの端部を越えないように設けられている。
【0096】
図3(A)に示すように、ソース電極及びドレイン電極111として機能する導電膜を形
成する。導電膜は、単層構造及び積層構造のいずれを有してもよい。また導電膜の材料や
作製手段は、上記実施の形態を参照することができる。上記実施の形態と同様に、導電膜
はスパッタリング法、プラズマCVD法により形成することができ、リン等の不純物元素
をドーピングした多結晶珪素膜に代表される半導体膜や、AgPdCu合金を用いること
ができる。
【0097】
さらに液滴吐出法を用いる場合、ソース電極及びドレイン電極の被形成面上の撥液性を高
めるため、撥液処理を行ってもよい。撥液処理としては、フッ素系のシランカップリング
剤等を塗布する方法がある。別の撥液処理として、CHF3、O2混合ガス等を用いたプラ
ズマ処理を行ってもよい。その後、液滴の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、
乾燥させるため加熱処理を施す。
【0098】
その後、ソース電極及びドレイン電極111をマスクとして、N型を有する半導体膜10
4をエッチングする。N型を有する半導体膜が、ソース電極及びドレイン電極を短絡する
ことを防止するためである。このとき、半導体膜103が多少エッチングされることがあ
る。
【0099】
その後、ソース電極及びドレイン電極上に保護膜として機能する絶縁膜を設けてもよい。
特に、Agを用いて液滴吐出法により形成されたソース電極及びドレイン電極上には窒化
珪素を有する絶縁膜を形成するとよい。その結果、ソース電極及びドレイン電極の酸化を
防止したり、表面の平坦化を向上することができる。一方、酸素を有する絶縁膜を用いる
と、Agと反応し、酸化銀が形成され、ソース電極及びドレイン電極表面が荒れる恐れが
あるため好ましくない。
【0100】
以上のように、ソース電極及びドレイン電極まで設けられた薄膜トランジスタが完成する
。本実施の形態の薄膜トランジスタは、半導体膜より下方にゲート電極が設けられた、所
謂ボトムゲート型の薄膜トランジスタである。より詳細には、半導体膜が多少エッチング
されている、所謂チャネルエッチ型である。このような薄膜トランジスタが複数設けられ
た基板をTFT基板と表記する。
【0101】
図3(B)に示すように、絶縁膜110、及び配線112を形成する。絶縁膜及び配線の
材料、及び作製手段は上記実施の形態を参照することができる。詳しくは、絶縁膜材料を
有する液滴、及び導電膜材料を有する液滴を、同時にノズルから吐出することができる。
このとき例えば二つのヘッドを設置したノズルを用いる場合、各ヘッドが有するノズルを
、絶縁膜材料を有するノズル専用、導電膜材料を有するノズル専用とすることもできる。
また、絶縁膜及び導電膜を同時ではなく別に形成してもよい。この場合、絶縁膜及び導電
膜のいずれを先に形成してもよいが、好ましくは絶縁膜を先に形成すると、微細な導電膜
を先に形成する場合と比較し、導電膜パターンのくずれを防止することが期待できる。
【0102】
図2(C)に示すように、導電膜115を覆うように保護膜として機能する絶縁膜116
を形成する。絶縁膜116の作製方法や材料は、上記実施の形態を参照することができる

【0103】
また本実施の形態においても、図2に示すように、アンテナ121を一体形成してもよい

【0104】
以上、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタを用いて形成される薄膜集積回路について説
明したが、図4に示すように、チャネルエッチ型の薄膜トランジスタに代えて、半導体膜
上に保護膜130が設けられている、所謂チャネル保護型の薄膜トランジスタを用いて薄
膜集積回路を形成してもよい。
【0105】
図3(D)には、このように作製された薄膜集積回路の全体図を示す。IDチップは、基
板100上に設けられた薄膜集積回路120を有し、該集積回路の所定の領域には接続端
子部118が設けられている。
【0106】
このような非結晶性半導体膜を用いた薄膜集積回路では、13.56MHzのように低い
周波数を有する電波により通信を行うことが望ましい。また通信距離が10cm未満であ
る近接型、又は数cm程度である密着型に適している。
【0107】
本実施の形態では、ボトムゲート型の薄膜トランジスタを形成するため、薄膜集積回路を
非常に薄くすることができる。そのため、デザイン性を損ねることがなく、IDチップと
して紙幣等の紙へ搭載すると好ましい。
【0108】
また非結晶性の半導体膜を用いるため、結晶性の薄膜集積回路と比較すると、半導体膜の
面積が大きくなることが懸念される。しかし、IDチップを破棄する際、ある程度の面積
を有するため、ハサミ等で容易に切断することができ、不正使用を防止することができる
というメリットがある。
【0109】
また従来のシリコンウェハで作製されたチップは、応力に弱い。特に非結晶性の半導体膜
を用いる薄膜集積回路は面積が大きくなることがあり、応力破壊が懸念される。しかし、
IDチップはシリコンウェハチップと比較して、ある程度の面積を有するため、更にはフ
レキシブル性の高い基板を用いることにより、応力破壊、つまり曲げ応力に対して強い。
【0110】
また本実施の形態で示した薄膜トランジスタは、少なくとも液滴吐出法により導電膜やマ
スク等を形成することを特徴とする。そのため、材料の利用効率が向上し、コストの削減
、廃液処理量の削減が可能となる。特に液滴吐出法によりマスクを形成すると、フォトリ
ソグラフィー工程と比較して工程の簡略化を行うことができる。その結果、設備投資コス
トの削減、IDチップのコスト削減、製造時間を短縮することができる。
【0111】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態と異なる方法により作製する薄膜集積回路について説
明する。本実施の形態では上記実施の形態1に示す薄膜トランジスタで説明するが、上記
実施の形態2に示す薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0112】
図5(A)に示すように基板100上に、金属膜140を形成する。金属膜としては、W
、Ti、Ta、Mo、Nd、Ni、Co、Zr、Zn、Ru、Rh、Pd、Os、Irか
ら選ばれた元素または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料からなる単層
、或いはこれらの積層を用いることができる。金属膜の作製方法として例えば、金属のタ
ーゲットを用いるスパッタリング法により形成すればよい。なお金属膜の膜厚は、10n
m〜200nm、好ましくは50nm〜75nmとなるように形成すればよい。
【0113】
金属膜の代わりに、上記金属が窒化された(例えば、窒化タングステンや窒化モリブデン
)膜を用いても構わない。また金属膜の代わりに上記金属の合金(例えば、WとMoとの
合金:WxMo1-X)膜を用いてもよい。この場合、成膜室内に第1の金属(W)及び第2
の金属(Mo)といった複数のターゲットを用いたり、第1の金属(W)と第2の金属(
Mo)との合金のターゲットを用いたスパッタリング法により形成すればよい。また更に
、金属膜に窒素や酸素を添加してもよい。添加する方法として例えば、金属膜に窒素や酸
素をイオン注入したり、成膜室を窒素や酸素雰囲気としてスパッタリング法により形成す
ればよく、このときターゲットとして窒化された金属を用いてもよい。
【0114】
このような金属膜の形成方法により、剥離工程を制御することができる。すなわち、金属
の合金を用いた場合、合金の各金属の組成比を制御することにより、剥離工程を制御でき
る。具体的には、剥離するための加熱温度の制御や、加熱処理の要否までも制御すること
ができる。その結果、プロセスマージンを広げることができる。
【0115】
その後、金属膜140上に被剥離層141を形成する。この被剥離層は珪素を有する酸化
膜を有し、酸化膜は下地膜としての機能も有する。またさらに金属膜や基板からの不純物
やゴミの侵入を防ぐため、半導体膜より下面に窒化珪素(SiN)膜、窒化酸化珪素(S
iONやSiNO)膜等の窒素を有する絶縁膜を設けてもよい。このような金属膜上に形
成される絶縁膜を被剥離層と表記する。
【0116】
珪素を有する酸化膜は、スパッタリング法やCVD法により酸化珪素、酸化窒化珪素等を
形成すればよい。珪素を有する酸化膜の膜厚は、金属膜の約2倍以上であることが望まし
い。本実施の形態では、シリコンターゲットを用いたスパッタリング法により、酸化珪素
膜を150nm〜200nmの膜厚として形成する。
【0117】
この珪素を有する酸化膜を形成するときに、金属膜140の表面に当該金属を有する酸化
物(以下、金属酸化物と表記し、図示しない)が形成される。金属酸化物の膜厚は、0.
1nm〜1μm、好ましくは0.1nm〜100nm、更に好ましくは0.1nm〜5n
mとなるように形成すればよい。また金属酸化物は、硫酸、塩酸或いは硝酸を有する水溶
液、硫酸、塩酸或いは硝酸と過酸化水素水とを混同させた水溶液又はオゾン水で処理する
ことにより金属膜表面に形成される薄い金属酸化物を用いることもできる。更に他の方法
としては、酸素雰囲気中でのプラズマ処理や、酸素含有雰囲気中で紫外線照射することに
よりオゾンを発生させて酸化処理を行ってもよく、クリーンオーブンを用い200〜35
0℃程度に加熱して金属酸化物を形成してもよい。
【0118】
次いで、被剥離層141に半導体膜103等を形成し、薄膜トランジスタを完成させる。
その後、絶縁膜110、及び各不純物領域に接続された配線112、導電膜115、絶縁
膜116、導電膜117が形成された接続端子部118を形成する。薄膜トランジスタの
作製方法等は、上記実施の形態を参照することができる。
【0119】
このように、金属膜140と、金属酸化物と、被剥離層141と、半導体膜とが積層され
た状態、つまり被剥離層の一方の面に半導体膜が設けられ、他方の面に金属酸化物及び金
属膜が設けられる構造となる。
【0120】
以上のように薄膜トランジスタを形成後、少なくとも金属酸化物形成後に加熱処理を行い
、金属酸化物を加熱する。その結果、金属酸化膜は結晶状態となる。例えば、金属膜にW
(タングステン)を用いる場合、400℃以上で加熱処理を行うと、WO2又はWO3の金
属酸化物が結晶状態となる。加熱処理は、選択される金属膜により温度や要否を決定すれ
ばよい。その結果、必要に応じて金属酸化物を結晶化することができ、剥離を容易に行う
ことができる。
【0121】
なお上述の加熱処理は、半導体素子の作製中の加熱処理と兼用させることができる。例え
ば半導体膜を形成後に加熱を行うことにより、半導体膜の水素を出す、所謂水素出し工程
の加熱処理と兼用することができる。また結晶性半導体膜を形成する場合、加熱炉やレー
ザー照射を用いて加熱処理を行うことができる。その結果、作製工程を低減することがで
きる。
【0122】
次いで、図5(B)に示すように基板上に形成された薄膜集積回路120を商品表面へ接
着する。なお、商品は瓶の側面のように曲面であってもよい。本実施の形態では、アンテ
ナ121及び接続端子部144が設けられた基板142へ接着する。このとき、集積回路
の接続端子部118と、基板上の接続端子部143とが接続するように接着剤により接着
する。接着剤としては、紫外線硬化樹脂、具体的にはエポキシ樹脂系接着剤或いは樹脂添
加剤等の接着剤又は両面テープ等を用いることができる。
【0123】
そして図5(C)に示すように、基板100を、物理的手段により剥離する。このとき、
結晶化された金属酸化物の層内、又は金属酸化物の両面の境界(界面)、すなわち金属酸
化物と金属膜との界面或いは金属酸化物と被剥離層との界面で剥がれる。
【0124】
このとき剥離を容易に行うため、基板の一部を切断し、切断面における剥離界面、すなわ
ち金属膜と金属酸化物との界面付近にカッター等で傷を付けるとよい。または、半導体素
子が設けられていない領域の被剥離層に傷を付けてもよい。
【0125】
基板100を剥離後、金属酸化物は、薄膜集積回路側において全て除去されている場合、
又は一部或いは大部分が薄膜集積回路側に点在(残留)している場合がある。金属酸化物
が残留している場合は、エッチング等により除去してもよい。このとき、更に珪素を有す
る酸化膜を除去しても構わない。
【0126】
以上のように薄膜集積回路が搭載された商品を形成することができる。
【0127】
本実施の形態では、接続端子部の導電膜が下方を向いている所謂フェイスダウン状態で薄
膜集積回路を実装する場合について説明したが、接続端子部の導電膜が上方を向いている
所謂フェイスアップ状態で薄膜集積回路を実装してもよい。この場合、集積回路の接続端
子部の導電膜と、アンテナ等のコンタクトには、ワイヤボンディングを用いるとよい。
【0128】
以上、基板100上に薄膜トランジスタを形成後、転写し、基板100を剥離する形態を
説明したが、被転写物、又は剥離するタイミング若しくは回数は上記形態に限定されない
。例えば、被転写物として可撓性を有する合成樹脂基板を用い、金属酸化物形成後に該合
成樹脂基板へ半導体膜の転写を行い、その後薄膜トランジスタを完成させてもよい。特に
、上記実施の形態2にように非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジスタを形成する場
合、合成樹脂基板へ転写を行った後であっても、薄膜トランジスタを完成することが可能
となる。非結晶性の半導体膜を有する薄膜トランジスタは、加熱温度を低く、又は加熱処
理を行わずに形成することができるからである。その後更に、薄膜集積回路をプリント基
板等へ転写してもよい。このような転写及び剥離により形成される薄膜集積回路は、フェ
イスアップ状態又はフェイスダウン状態で商品へ搭載することができる。
【0129】
また剥離を行う場合、剥離する必要がある基板の接着には、接着剤としては剥離可能な接
着剤、例えば紫外線により剥離する紫外線剥離型、熱による剥離する熱剥離型或いは水に
より剥離する水溶性の接着剤、又は両面テープ等を使用するとよい。そして接着剤を除去
するために、接着剤を剥がすために紫外線照射を照射したり、加熱したり、水洗すればよ
い。
【0130】
本実施の形態では、金属膜等を用いた剥離法を説明したが、その他の剥離法により基板1
00を剥離してもよい。例えば、剥離層へレーザーを照射して、基板100を剥離したり
、基板100をエッチング除去することにより基板100を剥離したりすることができる
。また、剥離層へ切り込みを入れ、フッ素系、又は塩素系、例えばClF3等のエッチャ
ントにより剥離することもできる。
【0131】
(実施の形態4)
本実施の形態では、IDチップのアンテナの作製方法について説明する。
【0132】
非接触型IDチップとして機能するためには、上述のように薄膜集積回路及びアンテナが
必要となる。アンテナは、多様な配置をとることができ、少なくともアンテナの先端には
、薄膜集積回路と接続するための接続端子が設けられている。
【0133】
例えば図6(A)に示すように、基板142上に設けられたアンテナは、矩形上に蛇行す
るように設けられ、先端にはそれぞれ接続端子143が設けられている。図6(A)では
、各接続端子が近接して設けられているが、これに限定されるものではない。薄膜集積回
路の接続端子に合わせて、各接続端子の配置を決定することができる。
【0134】
アンテナは、図6(B)に示すような巻くように設けてもよい。そしてアンテナの先端に
は、接続端子143が設けられている。図6(B)では、各接続端子は離れるように設け
られているが、図6(A)のように近接して設けてもよい。
【0135】
またアンテナは、矩形状に配置せずとも、円状に配置してもよい。
【0136】
次いで、アンテナの作製方法について説明する。
【0137】
図7(A)に示すように、基板142上に所定な配置となるようにアンテナを形成する。
アンテナ材料には、Ag(銀)、Al(アルミニウム)、Au(金)、Cu(銅)、Pt
(白金)等の導電材料を用いることができる。比較的抵抗の高いAlやAuを用いる場合
、配線抵抗が懸念される。しかし、アンテナを厚くしたり、アンテナ形成面積が広い場合
には、アンテナの幅を広くすることで配線抵抗を低減することができる。Cuのように拡
散が懸念される導電材料は、アンテナの被形成面、又はCuの周囲を覆うように保護膜と
して機能する絶縁膜を形成するとよい。またアンテナは、スパッタリング法、液滴吐出法
、印刷法、メッキ法、フォトリソグラフィー法及びメタルマスクを用いた蒸着法のいずれ
かにより形成することができる。特に、液滴吐出法、印刷法、又はメッキ法によりアンテ
ナを形成する場合、導電膜をパターニングする必要がないため、作製工程数を低減するこ
とができる。本実施の形態では、ノズル151からAgを有する液滴を吐出する液滴吐出
法によりアンテナを形成する。このとき、Agの密着性を高めるため、TiOx等を有す
る下地膜を形成してもよい。
【0138】
液滴を吐出後、液滴中の溶媒を除去する必要があるとき、焼成したり、乾燥させるため加
熱処理を施す。加熱処理は、上記実施の形態におけるゲート電極の作製方法を参照するこ
とができる。
【0139】
更に好ましくは、図7(B)に示すように、加圧するとよい。その結果、アンテナを薄膜
化することができ、加えてアンテナ表面の平坦性を高めることができる。加圧手段152
に加えて、加熱手段を有してもよく、上記加熱処理を同時に行うことができる。
【0140】
図7(C)に示すように、アンテナが形成された基板(以下、アンテナ基板と表記する)
を完成することができる。また、アンテナを覆って保護膜として機能する絶縁膜を形成し
てもよい。
【0141】
また図8(A)に示すように基板142に開口部154を形成し、開口部にアンテナを形
成してもよい。図7(A)と同様に、ノズル151からAgを有する液滴を吐出する液滴
吐出法によりアンテナを形成する。その他のアンテナ材料や作製手段は図7(A)の記載
を参照することができる。
【0142】
図8(B)に示すように、図7(B)と同様に、加圧手段152によりアンテナをプレス
すると好ましい。加圧手段152に加えて、加熱手段を有してもよく、上記加熱処理を同
時に行うことができる。
【0143】
図8(C)に示すように、アンテナ基板を完成することができる。また、アンテナを覆っ
て保護膜として機能する絶縁膜を形成してもよい。
【0144】
図8において、開口部内にアンテナを形成することができるため、アンテナ基板の薄膜化
を達成することができる。
【0145】
(実施の形態5)
本実施の形態では、アンテナ基板に薄膜集積回路を実装する具体的な方法について説明す
る。
【0146】
上記実施の形態に基づいて形成されたアンテナ基板上に、上記実施の形態に基づき形成さ
れた薄膜集積回路を実装する。図9に示すように、アンテナ121が形成された一組のア
ンテナ基板150を用意する。アンテナ基板間に、薄膜集積回路120を配置し、つまり
、アンテナ基板は前記薄膜集積回路を介して対称に配置する。その後、それぞれの接続端
子部118及び143が接続するように固定する。接続する手段にワイヤボンディング法
を用いてもよい。そしてIDチップが完成する。
【0147】
次に図9に記載の実装方法により、大型基板からIDチップを複数個作製する、いわゆる多
面取りにについて説明する。
【0148】
図14(A)に示すように、大型基板100に複数(例えば25個)の薄膜集積回路12
0を形成する。アンテナ基板150間に、大型基板100を配置し、各薄膜集積回路の接
続端子部118と、各アンテナの接続端子部143とが接続するように固定する。
【0149】
その後図14(B)に示すように、大型基板に複数のIDチップを形成し、スクライビイ
グまたはダイシング等で切り離し一つのIDチップ157が完成する。なおIDチップの
切り離しには、レーザーを用いてもよい。特にIDチップを切断する場合、シリコンウェ
ハ上に形成されたチップと比較し、切断時のダメージを受けにくいと思われる。そのため
、IDチップの切断領域は、シリコンウェハ上に形成されたチップの切断領域より小さく
することが可能である。そのため、アンテナ形成領域を大きくすることができる。その後
さらに、IDチップを封止膜として機能する絶縁膜で封止してもよい。
【0150】
このように、大型基板から複数のIDチップを得ることで、IDチップのコストを削減す
ることができる。チップのように単価が非常に低い集積回路は、コストの削減により非常
に大きな利益を生むことができる。
【0151】
図9と異なる方法により薄膜集積回路を実装する方法を図10に示す。
【0152】
図10(A)に示すように、一組のアンテナが形成されたアンテナ基板150を用意する
。アンテナ基板は、中心部から折り畳むことができる可撓性を有する基板、例えばポリエ
チレンテレフタレート(PET)、塩化ビニリデン、塩化ビニル樹脂、等の可撓性を有す
る基板を使用する。
【0153】
その後図10(B)に示すように、薄膜集積回路120を間に挟むように、アンテナ基板
を折り畳む。折り畳み安いように、アンテナ基板の折り目に切り込みや凹部を形成すると
よい。その後、それぞれの接続端子部118及び143が接続するように固定する。接続
する手段にワイヤボンディング法を用いてもよい。そしてIDチップが完成する。
【0154】
一組のアンテナを設けることにより、一方のアンテナは電源発生回路用に使用し、他方の
アンテナは変調回路用に使用することができる。その結果、各回路に対してアンテナを設
定することができ、通信距離や感度を高めることができる。また一組のアンテナへ薄膜集
積回路を接続するため、薄膜集積回路の両面(上面及び下面)にそれぞれ接続端子部11
8を形成する必要がある。
【0155】
但し、各アンテナがショートしないように保護膜として機能する絶縁膜を設ける必要があ
る。また接続端子部間には導電性の樹脂を塗布し、それ以外の領域には絶縁性の樹脂を塗
布してもよい。
【0156】
または、アンテナ基板にコンタクトを開口し、アンテナの接続端子部をアンテナ基板の裏
面(アンテナが設けられていない面)に形成することにより、各アンテナがショートしな
い構成とすることができる。
【0157】
本実施の形態では、一組のアンテナ基板間に薄膜集積回路を実装する場合を説明したが、
一つのアンテナ基板上に薄膜集積回路を実装してもよい。また薄膜集積回路上にアンテナ
を配置しない形態で説明したが、絶縁膜を介して薄膜回路上にアンテナを配置しても構わ
ない。
【0158】
図10に示す実装形態においても、大型基板から複数の薄膜集積回路を形成し、大型基板
から複数のアンテナ基板を形成することにより、IDチップのコストを削減することがで
きる。
【0159】
次に図15を用いて、IDチップの、機能的な構成の一形態について説明する。
【0160】
400はアンテナ、401は薄膜集積回路に相当する。アンテナ400は、アンテナコイ
ル402と、アンテナコイル402内で形成される容量素子403とを有する。また薄膜
集積回路401は、復調回路409、変調回路404、整流回路405、マイクロプロセ
ッサ406、メモリ407、負荷をアンテナ400に与えるためのスイッチ408とを有
している。なおメモリ407は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0161】
リーダライタから電波として送られてきた信号は、アンテナコイル402において電磁誘
導により交流の電気信号に変換される。復調回路409では該交流の電気信号を復調し、
後段のマイクロプロセッサ406に送信する。また整流回路405では、交流の電気信号
を用いて電源電圧を生成し、後段のマイクロプロセッサ406に供給する。
【0162】
マイクロプロセッサ406では、入力された信号に従って各種演算処理を行う。メモリ4
07にはマイクロプロセッサ406において用いられるプログラム、データなどが記憶さ
れている他、演算処理時の作業エリアとしても用いることができる。そしてマイクロプロ
セッサ406から変調回路404に送られた信号は、交流の電気信号に変調される。スイ
ッチ408は、変調回路404からの交流の電気信号に従って、アンテナコイル402に
負荷を加えることができる。リーダライタは、アンテナコイル402に加えられた負荷を
電波で受け取ることで、結果的にマイクロプロセッサ406からの信号を読み取ることが
できる。
【0163】
なお、図15に示すIDチップは、本発明の一形態を示したのに過ぎず、本発明は上記構
成に限定されない。信号の伝送方式は、図15に示したような電磁誘導方式に限定されず
、電磁誘導方式、マイクロ波方式やその他の伝送方式を用いていてもよい。また例えばG
PSなどの機能を有していてもよい。
【0164】
(実施の形態6)
本実施の形態では、IDチップを搭載した商品について説明する。
【0165】
アンテナ基板が、カード用のプリント基板である場合、IDチップが搭載されたカード(
以下、IDカードと表記する)として使用することができる。図11(A)には、IDチ
ップを搭載したIDカードの上面図を示す。IDカードには、カード周辺に設けられたア
ンテナ121と、アンテナに接続される薄膜集積回路120とが実装されている。
【0166】
図11(B)には、図11(A)のA−A’における断面図を示す。薄膜集積回路と、ア
ンテナとを同一層に設けてもよいが、本実施の形態では、アンテナ上に保護膜として絶縁
膜160を形成し、絶縁膜上に薄膜集積回路を実装する。そのため、カード周辺に設けら
れたアンテナを薄膜集積回路に接続する場合、その他のアンテナとショートしないように
、絶縁膜上にアンテナ(リード線と表記する)を形成し、リード線と薄膜集積回路とを接
続することができる。そして、薄膜集積回路120と、アンテナ121とは、接続端子部
を介して接続される。本実施の形態では、フェイスダウン状態で設けられた薄膜集積回路
と、アンテナとを接続している。そのため、それぞれの各接続端子部は、接続用配線16
2を介して接続されている。または、各接続端子部間を導電性の樹脂を用いて接続しても
よい。
【0167】
その後、封止を行うためラミネート法又は印刷法により保護膜として機能するフィルム1
61を形成する。フィルムには、IDカードの図柄を印刷してもよい。
【0168】
また図11(C)には、図11(B)と異なる方法によりアンテナと薄膜集積回路を接続
する形態を示す。図11(C)に示す薄膜集積回路はフェイスアップ状態で設けられてい
るため、ワイヤボンディング法によりワイヤ163を用いて接続する構成が特徴である。
その他の構成は図11(B)と同様であるため、説明を省略する。
【0169】
なお薄膜集積回路と、アンテナとは、上記実施の形態のように接続してもよい。
【0170】
以上のようにして、IDカードを完成することができる。
【0171】
またIDチップは、商品又は製品の管理手段として利用するタグ(以下、IDタグと表記
する)として使用することができる。例えば、図12(A)に示すように、商品170に
IDチップが搭載されたバーコード171を付し、IDタグとして使用する。
【0172】
図12(B)には、図12(A)のB−B’における断面図を示す。商品170に、薄膜
集積回路120を有するIDチップが、バーコード171と共に接着されている。
【0173】
次いで、商品の瓶へラベルと共にIDチップを付する場合を示す。
【0174】
図13(A)には、大型基板100から複数の薄膜集積回路120を形成する。その後、
図13(B)に示すように、一つの薄膜集積回路120を切り離し、アンテナ121が形
成されたラベル181へ実装する。このとき、薄膜集積回路の接続端子部と、アンテナの
接続端子部143とが接続するように固定する。なお、ラベル上へアンテナを形成する方
法は、上記実施の形態3に示したような剥離技術を用いればよい。具体的には、ガラス基
板上に、被剥離層、及びアンテナを形成し、ラベルに転写した後にガラス基板を剥離する
。本発明の剥離技術を用いると、ラベルのように耐熱性のない絶縁表面上へアンテナを転
写することができる。また上記実施の形態3に基づき、アンテナが一体形成されたIDチ
ップをラベルへ転写してもよい。なおアンテナの作製方法は、上記実施の形態4を参照す
ればよい。
【0175】
図13(C)に示すように、曲面を有する瓶180の表面に、ラベル181と共に薄膜集
積回路及びアンテナ、つまりIDチップが付されている。
【0176】
このような商品は、ベルトコンベア183等に配置され、リーダ装置182の近傍を通過
することで、情報を読み出すことができる。またリーダ装置に加えて、ライター装置を設
けることにより、IDタグへ情報を入力したり、既存の情報を書き換えることができる。
【0177】
さらにIDチップは、非接触で情報管理を行うことができるため、段ボール等に商品が梱
包された状態で、リーダ装置、又はライター装置により情報管理することができる。この
ような非接触で通信を行うIDチップを無線チップと表記する。
【0178】
このようにIDチップを搭載した商品の流通を自動化することにより、物流時の人件費を
大幅に削減することができる。また人為的なミスを削減することもできる。
【0179】
商品としては、飲食品、衣料品、書籍等がある。またレンタル商品にIDタグを付して、
商品管理を簡便にすることができる。
【0180】
また本発明のIDチップは、非常に薄いため、紙幣等の有価証券に搭載し、不正使用等を
防止したり、管理を簡便にすることができる。有価証券にIDチップを搭載する場合、有
価証券の内部に搭載し、改ざん等ができないようにするとよい。
【0181】
以上のように商品に搭載又は付されたIDチップの情報は、生産又は製造に関する場所、
者、日付等の基本事項から、アレルギー情報、主成分、宣伝等、多岐にわたる。また図1
2に示すように、バーコードと併用する場合、バーコードには書き換え不要な情報、例え
ば上記基本情報を入力し、IDチップには書き換え可能な情報を入力するとよい。
【0182】
このような情報を読むためのリーダは、専用のリーダ装置以外に、携帯電子機器、例えば
携帯電話機にリーダ機能を搭載すればよい。携帯電話機の場合、音声や画面への表示によ
り、IDチップの情報を提供することができる。
【0183】
その他のIDチップを搭載した商品としては、携帯電話機、時計、自転車等がある。例え
ば、携帯電話機のような携帯型電子機器にIDチップを搭載することにより、クレジットカ
ードのような決算機能を有することができる。また時計のように消費者の年齢層が広く、
容易に身につける商品では、迷子時等に位置を把握することができる。また、子供がIDチ
ップ搭載の商品を携帯することにより、両親は子供の現在地を把握することができる。同
様にペットの首輪等にIDチップを搭載することにより、ペットの現在地を把握することが
できる。また自転車のように、盗難が多い商品では、商品の現在地を把握することができ
、盗難防止の効果を奏する。またこのようなIDチップ搭載の商品を紛失した場合、商品の
現在地を把握することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜集積回路と、
第1のアンテナと、
第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは液滴吐出法又は印刷法を用いて形成され、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナと電気的に接続され、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナと、前記第2のアンテナとの間に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
薄膜集積回路と、
第1のアンテナと、
第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは液滴吐出法又は印刷法を用いて形成され、
前記第1のアンテナは第1の接続端子部を有し、
前記第2のアンテナは第2の接続端子部を有し、
前記薄膜集積回路は、前記第1の接続端子部を介して、前記第1のアンテナと電気的に接続され、
前記薄膜集積回路は、前記第2の接続端子部を介して、前記第2のアンテナと電気的に接続され、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナと、前記第2のアンテナとの間に配置され、
前記第1の接続端子部と、前記第2の接続端子部とは、前記薄膜集積回路を介して重ならないように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
薄膜集積回路と、
第1のアンテナと、
第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナはアンテナ用基板上に形成され、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは液滴吐出法又は印刷法を用いて形成され、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナと電気的に接続され、
前記アンテナ用基板は、前記薄膜集積回路を挟むように折りたたまれ、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナと、前記第2のアンテナとの間に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
薄膜集積回路と、
第1のアンテナと、
第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナはアンテナ用基板上に形成され、
前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは液滴吐出法又は印刷法を用いて形成され、
前記第1のアンテナは第1の接続端子部を有し、
前記第2のアンテナは第2の接続端子部を有し、
前記薄膜集積回路は、前記第1の接続端子部を介して、前記第1のアンテナと電気的に接続され、
前記薄膜集積回路は、前記第2の接続端子部を介して、前記第2のアンテナと電気的に接続され、
前記アンテナ用基板は、前記薄膜集積回路を挟むように折りたたまれ、
前記薄膜集積回路は、前記第1のアンテナと、前記第2のアンテナとの間に配置され、
前記第1の接続端子部と、前記第2の接続端子部とは、前記薄膜集積回路を介して重なるように配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4において、
折りたたまれた前記アンテナ用基板の折り目には、切り込み又は凹部が設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナの一方は電源発生回路用であって、前記第1のアンテナ又は前記第2のアンテナの他方は変調回路用であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の半導体装置を搭載したカード。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の半導体装置を搭載したタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−60320(P2011−60320A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263413(P2010−263413)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2004−365771(P2004−365771)の分割
【原出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】