説明

半導体記憶装置

【課題】メモリセルの集積度が高く製造コストが低い1回書込型の半導体記憶装置を提供する。
【解決手段】1回書込型の半導体記憶装置において、シリコン基板上に積層体が設けられている。この積層体においては、それぞれ複数の層間絶縁膜及び電極膜WLが交互に積層され、積層方向に延びる貫通ホール17が形成されている。貫通ホール17の内面上には、膜厚が4nm以上である電極側絶縁膜25と、電荷蓄積膜26と、膜厚が4nm以上である半導体側絶縁膜27とがこの順に積層されており、貫通ホール17の内部にはシリコンピラーSPが埋設されている。電極側絶縁膜25及び半導体側絶縁膜27は共にシリコン酸化物からなり、電極側絶縁膜25の膜厚は半導体側絶縁膜27の膜厚よりも薄い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1回書込型の半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、低コストで大容量のOTP(One Time Programmable:1回書込)型記憶装置が実用化されている。一般に、OTP型記憶装置のメモリセルには、「0」又は「1」の二値データを半永久的に記憶するヒューズ素子が用いられている。ヒューズ素子としては、例えば、初期状態は絶縁性であり、書込電圧を印加することにより破壊されて導通性となるアンチヒューズがある。
【0003】
また、近年、メモリセルの集積度を向上させて1ビット当たりのコストを低減するために、メモリセルを3次元的に配列する技術が提案されている。例えば、非特許文献1には、ビット線とワード線を交互に積層し、ビット線とワード線との間に、ヒューズ素子及びダイオードからなるメモリプラグを接続する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、非特許文献1に記載の3次元積層型のOTP型記憶装置を製造するためには、ビット線、メモリプラグ及びワード線のパターン加工を単純に繰り返す必要がある。このため、積層数を増加させると、それに応じてリソグラフィの工程数も増加してしまい、製造コストが増加する。また、これらのパターン加工はいずれもクリティカルディメンジョンの加工であるため、プロセス上の負荷が大きい。従って、積層数を増加させても、1ビット当たりのチップ面積を低減することによる材料コストの削減を、製造コストの増加が相殺してしまい、結果として1ビット当たりのコストを低減することは困難である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Evaluation of SiO2 Antifuse in a 3D-OTP Memory" Feng Li, et. al., IEEE TRANSACTIONS ON DEVICE AND MATERIALS RELIABILITY, VOL. 4, NO. 3, SEPTEMBER 2004, p.416-421
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−306182号公報(段落0037)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、メモリセルの集積度が高く製造コストが低い1回書込型の半導体記憶装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、それぞれ複数の層間絶縁膜及び電極膜が交互に積層され、積層方向に延びる貫通ホールが形成された積層体と、前記貫通ホールの内面上に設けられ膜厚が4nm以上である電極側絶縁膜と、前記電極側絶縁膜上に設けられた電荷蓄積膜と、前記電荷蓄積膜上に設けられ膜厚が4nm以上である半導体側絶縁膜と、前記貫通ホールの内部に埋設された半導体ピラーと、を備えたことを特徴とする半導体記憶装置が提供される。
【0009】
本発明の他の一態様によれば、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ膜厚が4nm以上である半導体側絶縁膜と、前記半導体側絶縁膜上に設けられた電荷蓄積膜と、前記電荷蓄積膜上に設けられ膜厚が4nm以上である電極側絶縁膜と、前記電極側絶縁膜上に設けられた電極と、を備え、前記半導体側絶縁膜と前記電極側絶縁膜とは、同じ材料によって形成されていることを特徴とする半導体記憶装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メモリセルの集積度が高く製造コストが低い1回書込型の半導体記憶装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図である。
【図3】第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図6】第1の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
【図7】第1の実施形態の第1の変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
【図8】第1の実施形態の第2の変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する斜視図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する平面図である。
【図11】図10に示すA−A’線による断面図である。
【図12】第3の実施形態の第1の変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図である。
【図13】第3の実施形態の第2の変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
先ず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図であり、
図3は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
なお、図1においては、図を見易くするために、導電部分のみを示し、絶縁部分は図示を省略している。
【0013】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置1(以下、単に「装置1」ともいう)は、3次元積層型の記憶装置である。後述するように、装置1においては、セルトランジスタが3次元マトリクス状に配列されている。また、各セルトランジスタには電荷蓄積膜26が設けられており、この電荷蓄積膜26に電荷を蓄積させることによってデータを記憶する。これにより、各セルトランジスタがメモリセルとして機能する。
【0014】
本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置1においては、例えば単結晶シリコンからなるシリコン基板11が設けられている。シリコン基板11においては、メモリセルが形成されるメモリアレイ領域と、メモリセルを駆動する周辺回路が形成される回路領域とが設定されている。
【0015】
先ず、メモリアレイ領域の構成について説明する。
メモリアレイ領域においては、シリコン基板11の上層部分に不純物が導入されて、矩形のセルソースCSとなっている。シリコン基板11上におけるセルソースCSの直上域には、例えばシリコン酸化物(SiO)からなる絶縁膜12が設けられており、その上には、例えば非晶質シリコンからなる下部選択ゲートLSGが設けられており、その上には、例えばシリコン酸化物からなる絶縁膜13が設けられている。絶縁膜12、下部選択ゲートLSG及び絶縁膜13により、積層体ML1が構成されている。
【0016】
積層体ML1の上方には、例えばシリコン酸化物からなる複数の層間絶縁膜14と例えば非晶質シリコンからなる複数の電極膜WLとが交互に積層された積層体ML2が形成されている。電極膜WLはワード線として機能する。また、層間絶縁膜14は電極膜WLの上下及び相互間に設けられており、電極膜WL同士を絶縁する。
【0017】
そして、積層体ML2上には、例えばシリコン酸化物からなる絶縁膜15が設けられており、その上には、上部選択ゲートUSGが設けられており、その上には、例えばシリコン酸化物からなる絶縁膜16が設けられている。絶縁膜15、上部選択ゲートUSG及び絶縁膜16により、積層体ML3が構成されている。このように、シリコン基板11上には、積層体ML1、積層体ML2、積層体ML3がこの順に積層されている。積層体ML1、積層体ML2及び積層体ML3(以下、総称して「積層体ML」ともいう)は、Y方向に沿って複数組設けられている。
【0018】
以下、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、シリコン基板11の上面に平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、X方向及びY方向の双方に対して直交する方向、すなわち、層間絶縁膜14及び電極膜WLの積層方向をZ方向とする。
【0019】
電極膜WLは、上層に配置された電極膜WLほどX方向及びY方向における長さが短くなっており、上方(+Z方向)から見て、各電極膜WLは、それより下方に配置された電極膜WL、下部選択ゲートLSG及びセルソースCSの内側に配置されている。また、上部選択ゲートUSGは最上層の電極膜WLの内側に配置されている。これにより、積層体MLの端部は階段状となっている。積層体MLから見て±X方向及び±Y方向の領域には、層間絶縁膜(図示せず)が設けられている。
【0020】
上部選択ゲートUSGは、例えば非晶質シリコンからなる1枚の導電膜がY方向に沿って分断されて形成されたものであり、X方向に延びる複数本の配線状の導電部材となっている。これに対して、電極膜WL及び下部選択ゲートLSGは、各積層体ML内では分断されておらず、それぞれがXY平面に平行な1枚の導電膜となっている。また、セルソースCSも分断されておらず、複数の積層体MLの直下域をつなぐように、XY平面に平行な1枚の層状の導電領域となっている。
【0021】
そして、積層体MLには、積層方向(Z方向)に延びる複数本の貫通ホール17が形成されている。各貫通ホール17は積層体ML全体を貫いている。すなわち、貫通ホール17は、積層体ML1を構成する絶縁膜12、下部選択ゲートLSG及び絶縁膜13、積層体ML2を構成する層間絶縁膜14及び電極膜WL、並びに、積層体ML3を構成する絶縁膜15、上部選択ゲートUSG及び絶縁膜16を、Z方向から見て同じ位置において、それぞれ貫いている。また、貫通ホール17は、例えばX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に配列されており、その配列周期は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて一定である。
【0022】
各貫通ホール17の内部には、シリコンピラーSPが埋設されている。シリコンピラーSPは、不純物がドープされた半導体、例えば、多結晶シリコン又は非晶質シリコンによって形成されている。シリコンピラーSPの形状は、Z方向に延びる円柱形である。また、シリコンピラーSPは積層体MLの積層方向全長にわたって設けられており、その下端部はセルソースCSに接続されている。
【0023】
また、積層体ML3上には絶縁膜18が設けられており、絶縁膜18上にはY方向に延びる複数本のビット配線BLが設けられている。ビット配線BLは、金属、例えば、タングステン(W)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)によって形成されている。各ビット配線BLは、Y方向に沿って配列された各列のシリコンピラーSPの直上域を通過するように配設されており、絶縁膜18に形成されたビアホール18aを介して、シリコンピラーSPの上端部に接続されている。これにより、シリコンピラーSPは、Y方向に配列された列ごとに、異なるビット配線BLに接続されている。すなわち、各シリコンピラーSPは、ビット配線BLとセルソースCSとの間に接続されている。
【0024】
更に、ビット配線BLが配置されている領域の−X方向側には、X方向に延びる複数本の上部選択ゲート配線USLが設けられている。上部選択ゲート配線USLは、金属、例えば、タングステン、アルミニウム又は銅によって形成されている。上部選択ゲート配線USLの本数は、上部選択ゲートUSGの本数と同じであり、各上部選択ゲート配線USLが各ビア20を介して各上部選択ゲートUSGに接続されている。
【0025】
更にまた、ビット配線BLが配置されている領域の+X方向側には、積層体MLごとに、X方向に延びる複数本のワード配線WLL、X方向に延びる1本の下部選択ゲート配線LSL、及びX方向に延びる1本のセルソース配線CSLが設けられている。ワード配線WLL、下部選択ゲート配線LSL、及びセルソース配線CSLは、金属、例えば、タングステン、アルミニウム又は銅によって形成されている。1つの積層体MLに対応するワード配線WLLの本数は、ワード線である電極膜WLの数と同じであり、各ワード配線WLLはビア21を介して各電極膜WLに接続されている。また、下部選択ゲート配線LSLはビア22を介して下部選択ゲートLSGに接続されており、セルソース配線CSLはコンタクト23を介してセルソースCSに接続されている。ビア21、22及びコンタクト23は、それらが接続される電極膜WLの直上域であって、それより上層の電極膜WLから見て+X方向側に外れた領域に形成されている。
【0026】
ビット配線BL、上部選択ゲート配線USL、ワード配線WLL、下部選択ゲート配線LSL及びセルソース配線CSLは、Z方向における位置、厚さ、材料が同一であり、例えば、1枚の金属膜がパターニングされて形成されたものである。各配線間は、層間絶縁膜(図示せず)によって絶縁されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、シリコンピラーSPにおける積層体ML2内に位置する部分(以下、「シリコンピラーの中央部」ともいう)と貫通ホール17の側面との間の円筒状の空間には、ONO膜(Oxide Nitride Oxide film:酸化物−窒化物−酸化物膜)24が設けられている。ONO膜24においては、外側、すなわち、電極膜WL側から順に、電極側絶縁膜25、電荷蓄積膜26、半導体側絶縁膜27がこの順に積層されている。電極側絶縁膜25は層間絶縁膜14及び電極膜WLに接しており、半導体側絶縁膜27はシリコンピラーSPに接している。
【0028】
そして、本実施形態においては、電極側絶縁膜25と半導体側絶縁膜27とは同じ材料により形成されており、例えば、シリコン酸化物(SiO)により形成されている。一方、電荷蓄積膜26は、電荷を保持する能力がある材料により形成されており、例えば、電子のトラップサイトを含む材料によって形成されており、例えばシリコン窒化物(SiN)により形成されている。また、電極側絶縁膜25の膜厚及び半導体側絶縁膜27の膜厚は、ダイレクトトンネリングが生じないような膜厚であり、具体的にはそれぞれ4nm(ナノメートル)以上である。更に、半導体側絶縁膜27の膜厚は、装置1の駆動電圧の範囲内にある所定の電圧が印加されたときにFNトンネリングが生じるような膜厚である。更にまた、本実施形態においては、電極側絶縁膜25の膜厚は半導体側絶縁膜27の膜厚よりも薄い。
【0029】
これにより、シリコンピラーSPの中央部がチャネルとして機能し、電極膜WLがコントロールゲートとして機能することにより、シリコンピラーSPと電極膜WLとの交差部分に、MONOS型のセルトランジスタが形成される。そして、電荷蓄積層26に電荷が蓄積されているか否かを情報とすることにより、このセルトランジスタがメモリセルとして機能する。
【0030】
この結果、1本のシリコンピラーSP及びその周囲には、電極膜WLと同数のメモリセルがZ方向に一列に配列され、1本のメモリストリングが構成される。また、装置1においては、複数本のシリコンピラーSPがX方向及びY方向に沿ってマトリクス状に配列されていることにより、複数のメモリセルが、X方向、Y方向、Z方向に沿って、3次元的に配列される。
【0031】
一方、シリコンピラーSPにおける積層体ML1内に位置する部分(以下、シリコンピラーの下部」ともいう)と貫通ホール17の側面との間の円筒状の空間には、ゲート絶縁膜GDが設けられている。これにより、積層体ML1内には、シリコンピラーSPの下部をチャネルとし、下部選択ゲートLSGをゲートとした下部選択トランジスタLSTが構成される。
【0032】
更に、シリコンピラーSPにおける積層体ML3内に位置する部分(以下、「シリコンピラーの上部」ともいう)と貫通ホール17の側面との間の円筒状の空間にも、ゲート絶縁膜GDが設けられている。これにより、積層体ML3内には、シリコンピラーSPの上部をチャネルとし、上部選択ゲートUSGをゲートとした上部選択トランジスタUSTが構成される。なお、下部選択トランジスタLST及び上部選択トランジスタUSTは、メモリセルとしては機能せず、シリコンピラーSPを選択する役割を果たす。
【0033】
次に、回路領域の構成について説明する。
装置1の回路領域(図示せず)においては、ビット配線BLを介してシリコンピラーSPの上端部に電位を印加するビット線ドライバ回路、セルソース配線CSL、コンタクト23及びセルソースCSを介してシリコンピラーSPの下端部に電位を印加するセルソースドライバ回路、上部選択ゲート配線USL及びビア20を介して上部選択ゲートUSGに電位を印加する上部選択ゲートドライバ回路、下部選択ゲート配線LSL及びビア22を介して下部選択ゲートLSGに電位を印加する下部選択ゲートドライバ回路、ワード配線WLL及びビア21を介して各ワード線WLに電位を印加するワード線ドライバ回路が設けられている。
【0034】
また、回路領域においては、これらのドライバ回路を駆動して任意のメモリセルにデータを書き込む書込回路と、これらのドライバ回路を駆動して任意のメモリセルに書き込まれているデータを読み出す読出回路が設けられている。これらの回路が設けられている回路領域には、素子分離膜並びにPウエル及びNウエル(図示せず)が形成されており、これらのウエル内にはトランジスタ等の素子が形成されている。なお、装置1には、メモリセルに書き込まれたデータを消去する消去回路は設けられていない。
【0035】
本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置1においては、ビット線BLを選択することにより、メモリセルのX座標を選択し、上部選択ゲートUSGを選択して上部選択トランジスタUSTを導通状態又は非導通状態とすることにより、メモリセルのY座標を選択し、電極膜WLを選択することにより、メモリセルのZ座標を選択する。そして、選択されたシリコンピラーSPの電位を選択された電極膜WLの電位よりも低くして、選択されたメモリセルの電荷蓄積膜26に対して、シリコンピラーSPからFNトンネリングによって電子を注入することにより、情報を記憶する。本実施形態に係る装置1は1回書込型の記憶装置であるため、メモリセルに対するデータの書き込みは1回のみ行われる。そして、各メモリセルに一旦書き込まれたデータは消去されることなく、半永久的に保持される。また、電荷蓄積膜26に電子が蓄積されるとセルトランジスタの閾値が変化するため、このメモリセルを通過するシリコンピラーSPにセンス電流を流すことにより、このメモリセルに記憶された情報を読み出すことができる。データの読出回数に制限はなく、同じデータを複数回読み出すことが可能である。
【0036】
次に、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の製造方法について説明する。
図4、図5、図6は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置の製造方法を例示する工程断面図である。
先ず、図4に示すように、シリコン基板11の上層部分における所望の位置に素子分離膜(図示せず)を形成する。そして、メモリアレイ領域に不純物を導入し、シリコン基板11の上層部分にセルソースCSを形成する。一方、回路領域(図示せず)にはPウエル及びNウエル等を形成し、各ドライバ回路を構成するトランジスタのソース・ドレインを形成する。次に、これらのトランジスタのゲートを形成する。
【0037】
次に、シリコン基板11上に絶縁膜12を堆積させ、平坦化する。その後、非晶質シリコンを堆積させて導電膜からなる下部選択ゲートLSGを形成し、その上に層間膜となる絶縁膜13を形成する。これにより、シリコン基板11上に、絶縁膜12、下部選択ゲートLSG及び絶縁膜13からなる積層体ML1が形成される。
【0038】
次に、リソグラフィ及びエッチングを行うことにより、積層体ML1に、Z方向(積層方向)に延びシリコン基板11のセルソースCSまで到達する貫通ホール17aを形成する。このとき、複数個の貫通ホール17aを、Z方向から見てマトリクス状に配列されるように、同時に形成する。この貫通ホール17aは、後の工程で下部選択トランジスタLSTを形成するためのホールである。なお、このとき、貫通ホール17aの底面上には、シリコン基板11のセルソースCSが一旦露出するが、この露出面上には自然酸化膜等のシリコン酸化物(図示せず)が不可避的に生成される。
【0039】
次に、積層体ML1上の全面に、シリコン窒化膜を成膜する。このシリコン窒化膜は、積層体ML1の上面上の他に、貫通ホール17aの底面上及び側面上にも成膜される。次に、例えばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)を行って、積層体ML1の上面上及び貫通ホール17aの底面上に形成されたシリコン窒化膜を除去する。このとき、貫通ホール17aの側面上にはシリコン窒化膜が残留し、ゲート絶縁膜GDとなる。
【0040】
次に、貫通ホール17aの底面に対して、例えば、希フッ酸によるウェットエッチングを行う。これにより、貫通ホール17aの底面上から自然酸化膜等のシリコン酸化物(図示せず)が除去され、貫通ホール17aの底面にシリコン基板11のセルソースCSが露出する。次に、貫通ホール17aの内部に非晶質シリコンを埋め込む。これにより、貫通ホール17a内にシリコンピラーSPの下部が形成される。この結果、下部選択トランジスタLSTが形成される。
【0041】
次に、図5に示すように、積層体ML1上に層間絶縁膜14及び電極膜WLを交互に積層させて、積層体ML2を形成する。次に、積層体ML2上にフォトレジスト膜(図示せず)を形成して矩形状にパターニングする。そして、このフォトレジスト膜をマスクとしてRIEを行い、各1層の層間絶縁膜14及び電極膜WLをパターニングする工程と、このフォトレジスト膜をアッシングしてその外形を一回り小さくする(スリミングする)工程と、を交互に繰り返して、積層体ML2の端部を階段状に加工する。
【0042】
次に、リソグラフィ及びエッチングを行うことにより、積層体ML2における貫通ホール17aの直上域に、Z方向に延び積層体ML1まで到達する貫通ホール17bを形成する。このとき、貫通ホール17bは貫通ホール17aに連通される。その後、全面に、シリコン酸化物からなる電極側絶縁膜25、シリコン窒化物からなる電荷蓄積膜26、及びシリコン酸化物からなる半導体側絶縁膜27をこの順に成膜し、ONO膜24を形成する。電極側絶縁膜25の膜厚及び半導体側絶縁膜27の膜厚はそれぞれ4nm以上とし、半導体側絶縁膜27を電極側絶縁膜25よりも厚く形成する。ONO膜24は、積層体ML2の上面上の他に、貫通ホール17bの底面上及び側面上にも形成される。
【0043】
次に、図6に示すように、積層体ML2の上面上及び貫通ホール17bの底面上からONO膜24を除去する。これにより、貫通ホール17bの側面上のみに、ONO膜24が残留する。そして、貫通ホール17bの内部に非晶質シリコンを埋め込むことにより、シリコンピラーSPの中央部を形成する。これにより、シリコンピラーSPと電極膜WLとの交差部分にトランジスタが形成され、これがメモリセルとなる。なお、このとき、シリコンピラーSPの中央部は、シリコンピラーSPの下部と接触する。
【0044】
次に、図1及び図2に示すように、積層体ML1の形成工程と同様な工程により、積層体ML2上に積層体ML3を形成する。積層体ML3には上部選択トランジスタUSTが形成される。次に、積層体ML3上に絶縁膜18を形成し、絶縁膜18内にビアホール18aを形成すると共に、ビア20、21、22及びコンタクト23を埋設する。次に、全面に金属膜を形成し、パターニングすることにより、ビット配線BL、上部選択ゲート配線USL、ワード配線WLL、下部選択ゲート配線LSL及びセルソース配線CSLを形成する。これにより、1回書込型の半導体記憶装置1が製造される。
【0045】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、積層体ML2においてメモリセルを3次元的に配列させることができるため、メモリセルの集積度を向上させることができる。また、本実施形態によれば、電極膜WLの積層数に拘わらず、貫通ホール17bを1回のみ形成することにより、メモリセルが3次元的に配列された積層体ML2を形成することができる。この結果、積層数が増加してもリソグラフィの回数は増加せず、全体の製造コストを抑えることができ、従って、1ビット当たりのコストを低減することができる。これにより、メモリセルの集積度が高く製造コストが低い1回書込型の半導体記憶装置を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、電荷蓄積膜26を挟む電極側絶縁膜25及び半導体側絶縁膜27の膜厚をそれぞれ4nm以上としている。一般に、絶縁膜の膜厚を4nm以上とすれば、ダイレクトトンネリングは発生しなくなり、一定以上の電界を印加したときにFNトンネリングのみが発生する(例えば、特許文献1参照)。このため、電荷蓄積膜26に注入された電子が、自己電界に起因するダイレクトトンネリングによって電極側絶縁膜25を通過して電極膜WLに漏洩したり、半導体側絶縁膜27を通過してシリコンピラーSPに漏洩したりすることがない。この結果、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置1はリテンション特性が良好であり、一旦書き込んだデータを長期間安定して保持することができる。
【0047】
更に、本実施形態においては、電極側絶縁膜25と半導体側絶縁膜27とを同じ材料により形成しているため、製造工程を簡略化できる。更にまた、電極側絶縁膜25及び半導体側絶縁膜27を低電界リークが少ないシリコン酸化膜によって形成しているため、電荷保持特性が良好であり、リテンション特性をより一層向上させることができる。
【0048】
更にまた、本実施形態においては、電極側絶縁膜25を半導体側絶縁膜27よりも薄く形成しているため、貫通ホール17の直径を小さくすることができる。これにより、装置1の平面構造を微細化し、メモリセルの集積度をより一層向上させることができる。なお、電極側絶縁膜25の膜厚及び半導体側絶縁膜27の膜厚は、例えば、装置1を切断して電極側絶縁膜25及び半導体側絶縁膜27の断面を露出させ、この断面をTEM(transmission electron microscopy:透過型電子顕微鏡)で観察することにより、測定することができる。この場合、各膜の膜厚をそれぞれ複数の部分で測定し、その測定値の平均値を採用してもよい。後述の第2の実施形態についても、同様である。
【0049】
なお、装置1と同様な構成の装置を、繰り返し書込・消去が可能な記憶装置として使用しようとすると、回路領域に消去回路を設けることが必要になる。これにより、装置の回路領域が大型化する。また、この場合、メモリセルに書き込まれたデータを消去する動作は、シリコンピラーSPの電位を電極膜WLの電位よりも高くして、シリコンピラーSPから電荷蓄積膜26に対して正孔を注入し、電荷蓄積膜26に蓄積されている電子を対消滅させる動作となる。このとき、シリコンピラーSPからは電荷蓄積膜26に対して正孔を注入させつつ、電極膜WLからは電荷蓄積膜26に対して電子が逆注入されないように、電極側絶縁膜25を半導体側絶縁膜27よりも十分に厚くする必要がある。逆に言えば、電極側絶縁膜25が半導体側絶縁膜27よりも薄い本実施形態に係る装置1においては、このような消去動作は不可能である。しかしながら、本実施形態に係る装置1は1回書込型の記憶装置であり、消去動作は不要であるため、問題は生じない。
【0050】
また、一般に、電極側絶縁膜25が薄いと、データの書込動作にも支障が出ることが考えられる。すなわち、シリコンピラーSPから電荷蓄積膜26に対して電子を注入する際に、電極膜WLから電荷蓄積膜26に対して正孔が逆注入されてしまう可能性がある。しかし、本実施形態においては、シリコンピラーSPの形状を円柱形としているため、外側に配置された電極側絶縁膜25の曲率半径は内側に配置された半導体側絶縁膜27の曲率半径よりも大きく、カーブが緩い。このため、電極側絶縁膜25に印加される電界は半導体側絶縁膜27に印加される電界よりも緩和され、書込動作に支障は生じない。
【0051】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
先ず、本実施形態の第1の変形例について説明する。
図7は、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
図7に示すように、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置においては、電極側絶縁膜25の膜厚と半導体側絶縁膜27の膜厚とが等しい。これにより、前述の第1の実施形態と比較して、貫通ホール17の直径はやや大きくなるものの、書込動作をより安定させることができる。本変形例における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0052】
次に、本実施形態の第2の変形例について説明する。
図8は、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置の貫通ホール内を例示する部分断面図である。
図8に示すように、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置においては、電極側絶縁膜25の膜厚が半導体側絶縁膜27の膜厚よりも厚い。これにより、前述の第1の変形例と比較して、貫通ホール17の直径は更に大きくなるものの、書込動作をより一層安定させることができる。また、シリコンピラーSPの形状は円柱形に限定されなくなり、設計の自由度が増加する。本変形例における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図9は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する斜視図である。
前述の第1の実施形態及びその変形例においては、シリコンピラーSPの上方にビット線BLが設けられ、シリコンピラーSPの下方にセルソースCSが設けられ、シリコンピラーSPの形状がI字形である例を示した。これに対して、本実施形態においては、U字形のピラーが設けられている例を示す。
【0054】
図9に示すように、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置2(以下、「装置2」ともいう)においては、Y方向において隣り合う1対のシリコンピラーSPの下端同士が接続部材28を介して結合されて、1本のU字形のU字ピラー29が形成されている。接続部材28は、シリコンピラーSPと同じ半導体材料によって一体的に形成されている。また、接続部材28は、絶縁膜12上に設けられたバックゲート電極膜19内に埋め込まれている。更に、接続部材28とバックゲート電極19との間には、バックゲート電極19側から順に、電極側絶縁膜25、電荷蓄積膜26、半導体側絶縁膜27が設けられている。また、X方向に延びるソース線SLが、シリコンピラーSPの上方、例えば、上部選択ゲートUSGとビット線BLとの間に設けられている。そして、U字形のシリコン部材29の一端がソース線SLに接続され、他端がビット線BLに接続されている。更に、電極膜WLはX方向に配列されたシリコンピラーSPの列毎に分断されている。
【0055】
装置2は、積層体MLにU字形の貫通ホールを形成し、この貫通ホールの内面上にONO膜24を形成した後、貫通ホール内にシリコンを埋め込むことにより、作製することができる。この方法によれば、前述の第1の実施形態と比較して、貫通ホールの底面からONO膜24を除去する必要がないため、プロセスの難易度を下げることができる。本実施形態における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第1の実施形態と同様である。すなわち、装置2においても、電極側絶縁膜25及び半導体側絶縁膜27はシリコン酸化物により形成されており、膜厚はそれぞれ4nm以上である。
【0056】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する平面図であり、
図11は、図10に示すA−A’線による断面図である。
図10及び図11に示すように、本実施形態に係る1回書込型の半導体記憶装置3(以下、単に「装置3」ともいう)は、平面型の記憶装置である。装置3においては、シリコン基板31が設けられている。
【0057】
装置3においては、複数のメモリセルが設けられたメモリアレイ領域と、メモリアレイ領域を駆動する周辺回路が設けられた回路領域とが設けられている。回路領域には、メモリアレイ領域の各配線に電位を供給する各ドライバ回路と、これらのドライバ回路を駆動して任意のメモリセルにデータを書き込む書込回路と、任意のメモリセルからデータを読み出す読出回路とが設けられている。なお、装置3は1回書込型の記憶装置であるため、メモリセルに書き込まれたデータを消去する消去回路は設けられていない。
【0058】
メモリアレイ領域においては、メモリセル領域Rmcが設定されており、メモリセル領域Rmcを挟む領域には、一対の選択トランジスタ領域Rstが設定されている。以下、説明の便宜上、シリコン基板31の上面に平行な方向のうち、選択トランジスタ領域Rst、メモリセル領域Rmc及び選択トランジスタ領域Rstの配列方向を「Y方向」とし、Y方向に対して直交する方向を「X方向」とする。また、シリコン基板31の上面に対して垂直な方向を「Z方向」とする。
【0059】
シリコン基板31の上層部分には、素子分離絶縁体として、複数本のSTI(shallow trench isolation)32が形成されている。STI32はトレンチ内にシリコン酸化物(SiO)が埋め込まれることにより形成されており、その形状はY方向に延びるストライプ状であり、シリコン基板31の上層部分を複数本の半導体部分33に区画している。半導体部分33は、後述するメモリストリングのアクティブエリア(AA)として機能する。各STI32及び半導体部分33は、一方の選択トランジスタ領域Rstからメモリセル領域Rmcを通過して他方の選択トランジスタ領域Rstに達するように形成されている。すなわち、STI32及び半導体部分33のY方向における両端部は選択トランジスタ領域Rstに配置されており、中央部はメモリセル領域Rmcに配置されている。
【0060】
メモリセル領域Rmcにおいては、半導体部分33の直上域に半導体側絶縁膜37が設けられている。半導体側絶縁膜37は、ダイレクトトンネリングが発生せず、通常は絶縁性であるが、装置3の駆動電圧の範囲内にある所定の電圧が印加されるとFNトンネリングが発生し、トンネル電流を流す膜である。半導体側絶縁膜37の膜厚は、ダイレクトトンネリングが発生しないような膜厚、すなわち、4nm以上であり、所定の電圧が印加されるとFNトンネリングが発生するような膜厚である。
【0061】
また、半導体側絶縁膜37上には電荷蓄積膜36が設けられている。電荷蓄積膜36は電荷を保持する能力がある膜であり、例えば、電子のトラップサイトを含む膜であり、例えばシリコン窒化物(SiN)により形成されている。更に、電荷蓄積膜36上には電極側絶縁膜35が設けられている。電極側絶縁膜35の膜厚もダイレクトトンネリングが発生しないような膜厚であり、具体的には4nm以上の膜厚である。半導体側絶縁膜37及び電極側絶縁膜35は同じ材料により形成されており、例えば、シリコン酸化物(SiO)により形成されている。
【0062】
そして、電極側絶縁膜35上には、X方向に延びるライン状の制御ゲート電極CGが複数本設けられている。制御ゲート電極CGは例えば金属により形成されている。一方、選択トランジスタ領域Rstにおいては、半導体部分33の直上域に例えばシリコン酸化物からなるゲート絶縁膜(図示せず)が設けられている。また、ゲート絶縁膜上には、X方向に延びるライン状の選択ゲート電極SGが設けられている。選択ゲート電極SGは例えば金属により形成されている。
【0063】
また、装置3においては、半導体側絶縁膜37、電荷蓄積膜36、電極側絶縁膜35、制御ゲート電極CG、ゲート絶縁膜(図示せず)及び選択ゲート電極SGを埋め込むように、層間絶縁膜(図示せず)が設けられている。層間絶縁膜上には、半導体部分33毎に、Y方向に延びるビット線(図示せず)が設けられている。そして、各ビット線は、層間絶縁膜中に形成されたコンタクト(図示せず)を介して各半導体部分33に接続されている。
【0064】
本実施形態に係る装置3においては、アクティブエリア(AA)として機能する半導体部分33と、ワード線として機能する制御ゲート電極CGとの最近接点毎に、MONOS型のトランジスタからなるメモリセルが形成される。そして、Y方向に沿って配列され、半導体部分33を共有する複数のメモリセルによってメモリストリングが構成されている。一方、選択ゲート電極SGと半導体部分33との最近接点毎に、選択トランジスタが形成される。これにより、メモリストリングの両端部に選択トランジスタが接続される。そして、Y方向に延びる半導体部分33が複数本形成されており、X方向に延びる制御ゲート電極CGがこれら複数本の半導体部分33を跨ぐように複数本配設されていることにより、メモリアレイ領域には複数個のメモリセルがマトリクス状に配列されている。各メモリセルに対するデータの書込方法及び読出方法は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0065】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、構成が簡略なMONOS型トランジスタによってメモリセルを構成し、これを2次元的に配列させているため、製造コストを抑えつつ、メモリセルの集積度を向上させることができる。これにより、メモリセルの集積度が高く製造コストが低い1回書込型の半導体記憶装置を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態においては、電荷蓄積膜36を挟む電極側絶縁膜35及び半導体側絶縁膜37の膜厚をそれぞれ4nm以上としている。これにより、電荷蓄積膜36に注入された電子が、自己電界に起因するダイレクトトンネリングによって電極側絶縁膜35を通過して制御ゲート電極CGに漏洩したり、半導体側絶縁膜37を通過して半導体部分33に漏洩したりすることがない。この結果、一旦書き込んだデータを長期間安定して保持することができる。更に、本実施形態においては、電極側絶縁膜35を半導体側絶縁膜37よりも薄く形成しているため、製造コストをより一層低減することができる。
【0067】
更にまた、本実施形態においては、電極側絶縁膜35と半導体側絶縁膜37とを同じ材料により形成しているため、製造工程を簡略化できる。更にまた、電極側絶縁膜35及び半導体側絶縁膜37を低電界リークが少ないシリコン酸化膜によって形成しているため、電荷保持特性が良好であり、リテンション特性をより一層向上させることができる。
【0068】
なお、装置3と同様な構成の装置を、繰り返し書込・消去が可能な記憶装置として使用しようとすると、回路領域に消去回路を設けることが必要になる。これにより、装置の回路領域が大型化する。また、この場合、メモリセルに書き込まれたデータの消去は、半導体部分33の電位を制御ゲート電極CGの電位よりも高くして、半導体部分33から電荷蓄積膜36に対して正孔を注入し、電荷蓄積膜36に蓄積されている電子を対消滅させることにより行うことになる。このとき、平面型の装置3においては、前述の第1の実施形態に係る装置1とは異なり、曲率半径の違いによる電界緩和効果は得られないため、電極側絶縁膜35及び半導体側絶縁膜37の誘電率が同じであれば、電極側絶縁膜35に印加される電界の強度と半導体側絶縁膜37に印加される電界の強度とは等しくなる。このため、半導体部分33から電荷蓄積膜36に対して正孔を注入しようとすると、制御ゲート電極CGから電荷蓄積膜36に対して電子が逆注入されてしまい、消去動作の実行は不可能である。
【0069】
このような装置において、消去動作を行うためには、半導体部分33からは電荷蓄積膜36に対して正孔を注入させつつ、制御ゲート電極CGからは電荷蓄積膜36に対して電子が逆注入されないようにする必要がある。そのためには、以下の方法が考えられる。
【0070】
第1の方法として、印加される電界が同じでも半導体側絶縁膜のみに電流を流すために、半導体側絶縁膜をダイレクトトンネリングが発生する程度まで薄くすることが考えられる。すなわち、半導体側絶縁膜の膜厚を4nm未満とする。しかしながら、この場合は、電荷蓄積膜に注入された電子が、半導体側絶縁膜を介して漏洩しやすくなり、リテンション特性が低下する。このため、データを長期間安定して保持することが困難になる。
【0071】
第2の方法として、電極側絶縁膜に印加される電界を緩和するために、電極側絶縁膜を半導体側絶縁膜よりも誘電率が高い材料によって形成することが考えられる。例えば、半導体側絶縁膜をシリコン酸化物(SiO)により形成する場合は、電極側絶縁膜をアルミナ(Al)により形成する。しかしながら、この場合は、電極側絶縁膜の低電界リーク電流が大きくなり、やはりリテンション特性が低下する。
【0072】
このように、本実施形態に係る装置3と同様な構成の装置を、繰り返し書込・消去が可能な記憶装置として使用することは困難である。しかしながら、本実施形態に係る装置3は1回書込型(OTP型)の記憶装置であり、消去動作は不要であるため、問題は生じない。
【0073】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
先ず、本実施形態の第1の変形例について説明する。
図12は、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図である。
図12に示すように、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置においては、電極側絶縁膜35の膜厚と半導体側絶縁膜37の膜厚とが等しい。これにより、前述の第3の実施形態と比較して、電極側絶縁膜35の成膜時間は長くなるものの、書込動作をより安定させることができる。本変形例における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第3の実施形態と同様である。
【0074】
次に、本実施形態の第2の変形例について説明する。
図13は、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置を例示する断面図である。
図13に示すように、本変形例に係る1回書込型の半導体記憶装置においては、電極側絶縁膜35が半導体側絶縁膜37よりも厚い。これにより、前述の第3の実施形態の第1の変形例と比較して、電極側絶縁膜35の成膜時間は更に長くなるものの、書込動作をより一層安定させることができる。本変形例における上記以外の構成、製造方法及び作用効果は、前述の第3の実施形態と同様である。
【0075】
以上、実施形態及びその変形例を参照して本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態及び変形例に限定されるものではない。前述の各実施形態又は変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【符号の説明】
【0076】
1、2、3 半導体記憶装置、11 シリコン基板、12、13 絶縁膜、14 層間絶縁膜、15、16 絶縁膜、17、17a、17b、17c 貫通ホール、18 絶縁膜、18a ビアホール、19 バックゲート電極膜、20、21、22 ビア、23 コンタクト、24 ONO膜、25 電極側絶縁膜、26 電荷蓄積膜、27 半導体側絶縁膜、28 接続部材、29 U字ピラー、31 シリコン基板、32 STI、33 半導体部分、35 電極側絶縁膜、36 電荷蓄積膜、37 半導体側絶縁膜、BL ビット配線、CG 制御ゲート電極、CS セルソース、CSL セルソース配線、GD ゲート絶縁膜、LSG 下部選択ゲート、LSL 下部選択ゲート配線、LST 下部選択トランジスタ、ML、ML1、ML2、ML3 積層体、Rmc メモリセル領域、Rst 選択トランジスタ領域、SG 選択ゲート電極、SL ソース線、SP シリコンピラー、USG 上部選択ゲート、USL 上部選択ゲート配線、UST 上部選択トランジスタ、WL 電極膜、WLL ワード配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ複数の層間絶縁膜及び電極膜が交互に積層され、積層方向に延びる貫通ホールが形成された積層体と、
前記貫通ホールの内面上に設けられ膜厚が4nm以上である電極側絶縁膜と、
前記電極側絶縁膜上に設けられた電荷蓄積膜と、
前記電荷蓄積膜上に設けられ膜厚が4nm以上である半導体側絶縁膜と、
前記貫通ホールの内部に埋設された半導体ピラーと、
を備えたことを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項2】
前記電極側絶縁膜と前記半導体側絶縁膜とは、同じ材料によって形成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ膜厚が4nm以上である半導体側絶縁膜と、
前記半導体側絶縁膜上に設けられた電荷蓄積膜と、
前記電荷蓄積膜上に設けられ膜厚が4nm以上である電極側絶縁膜と、
前記電極側絶縁膜上に設けられた電極と、
を備え、
前記半導体側絶縁膜と前記電極側絶縁膜とは、同じ材料によって形成されていることを特徴とする半導体記憶装置。
【請求項4】
前記電極側絶縁膜及び前記半導体側絶縁膜は、シリコン酸化物により形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記電極側絶縁膜の膜厚は、前記半導体側絶縁膜の膜厚以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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