説明

半導体集積回路およびインクジェット装置

【課題】駆動制御回路として用いられる半導体集積回路において、待機モード時の消費電力を削減できると同時に、待機モードからの復帰時における初期化が不要であり、かつ、回路の誤動作も防止し得る半導体集積回を提供する。
【解決手段】アナログ回路ブロック部10とロジック回路ブロック部20とを有する半導体集積回路において、テストモード回路23,24は、待機モード時には、アナログ回路ブロック部10への供給電源をOFFとし、ロジック回路ブロック部20のみを動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット装置の駆動制御回路等に使用される半導体集積回路、および、複数のノズルからインクを吐出するインクジェットヘッド部と、上記インクジェットヘッド部へ駆動信号を送る駆動回路部とを備えたインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の半導体集積回路では、集積度の向上、チップサイズの縮小に伴って、より高度化された機能が達成できるようになっている。しかしながら、高度化された半導体集積回路では、内部回路を機能させるために、ロジック内部駆動用電源、ロジックバッファ用電源、レファレンス用電源、及びアナログ回路駆動用電源など複数の電源を必要とする。このため、所定の動作を行っていない待機状態でも通常動作時に匹敵する電力が消費される。
【0003】
そのため、多くの電力を消費する駆動回路(例えば、インクジェットヘッド駆動用ドライバICやLED駆動用ドライバIC)においては、放熱対策がないままに使い続けると、半導体チップ内温度が上昇して動作保証温度範囲を越えてしまい、機能動作が保障できなくなる懸念があった。したがって、高い駆動電圧、および高スルーレート出力波形を可能とする制御回路に用いられる半導体集積回路では、チップ温度の上昇を抑えることが必要不可欠であり、放熱板を設置するなどの放熱対策が待機状態においても常時必要であった。近年、半導体集積回路の搭載装置は大規模化の一途であり、チップ消費電力も増加の一途である。このため、所定の動作を行っていない待機状態においては、極力電力を抑えることが望まれる。
【0004】
特許文献1には、半導体集積回路が搭載される装置において、低消費電力モードを設置し、センスアンプ部やラッチ回路などすべての内部回路を停止させることで低消費電力化を図る技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、スタンバイモードへの移行時に、システムクロック周波数を高い周波数から低い周波数に切り替えることで、低消費電力化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3922023号公報(2001年4月12日国際公開)
【特許文献2】特開2002−204321号公報(2002年7月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の構成では、低消費電力モードにおいて内部回路をすべて停止させるため、復帰時には内部回路の初期化が必要不可欠となり、そのための初期化制御端子が設けられる。この時、初期化の為の制御端子が新たに必要となるため、チップセレクト端子と共用化することで、チップサイズの増加の対策を行っている。
【0008】
しかしながら、特許文献1のように、低消費電力化を実現する一方で、そのための制御端子の追加、初期化動作の追加が必要となる構成では、取り扱いが複雑になる懸念があった。
【0009】
一方、特許文献2の構成では、スタンバイモードに移行しても、制御回路やNCU(網制御装置)などに給電を行っているため、十分消費電力を低減することができないといった問題がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、待機モード時の消費電力を削減できると同時に、待機モードからの復帰時における初期化が不要であり、かつ、回路の誤動作も防止し得る制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の半導体集積回路は、アナログ出力回路部とロジック制御回路部とを有する半導体集積回路において、上記アナログ出力回路部の動作用供給電源と、上記ロジック制御回路部の動作用供給電源とが分離されていると共に、上記アナログ出力回路部の動作用供給電源のみをOFFとする待機モード設定部を備えており、待機モード時には、上記待機モード設定部によってアナログ出力回路部への供給電源をOFFとし、ロジック制御回路のみを動作させることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、待機モード時にアナログ出力回路部の動作用供給電源のみをOFFとし、消費電力の大きいアナログ出力回路部を停止させることで消費電力削減効果が得られるので放熱対策の負荷を低減できる。一方で、ロジック制御回路は動作させるため、待機モードからの復帰時における初期化が不要であり、初期化処理等の複雑な処理を省略できる。さらに、待機モード時において、アナログ出力回路部が停止されるため、アナログ出力回路部からのノイズも発生せず、ロジック制御回路の誤動作も防止できる。
【0013】
また、上記の課題を解決するために、本発明の駆動制御回路の制御方法は、アナログ出力回路部とロジック制御回路部とを有する半導体集積回路によって構成される駆動制御回路の制御方法において、上記ロジック制御回路部を常時動作させる共に、上記アナログ出力回路部の出力/非出力を上記アナログ出力回路部への動作用供給電源のオン/オフの切替えによって制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体集積回路は、待機モード時にアナログ出力回路部の動作用供給電源のみをOFFとし、消費電力の大きいアナログ出力回路部を停止させることで消費電力削減効果が得られる一方で、ロジック制御回路は動作させるため、待機モードからの復帰時における初期化が不要であり、初期化処理等の複雑な処理を省略できるという効果を奏する。さらに、待機モード時において、アナログ出力回路部が停止されるため、アナログ出力回路部からのノイズも発生せず、ロジック制御回路の誤動作も防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本半導体集積回路の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本半導体集積回路を含む装置システム構成の一例を示すブロック図である。
【図3】電源制御回路の構成を示すブロック図である。
【図4】テストモード回路の配置構成の一例を示すブロック図である。
【図5】テストモード回路内部構成の一例を示す回路図である。
【図6】通常モードで駆動したときの出力信号の一例を示すグラフである。
【図7】スタンバイモードで駆動したときの出力信号の一例を示すグラフである。
【図8】通常モードで駆動したときの出力信号の一例を示すグラフである。
【図9】カスケード接続した駆動回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。まず、図1に本実施の形態に係る半導体集積回路(以下、本半導体集積回路と称する)の回路構成ブロック図を示す。尚、以下の説明では、本半導体集積回路は、インクジェット装置のインクヘッド駆動制御回路を構成するものとして例示される。
【0017】
本半導体集積回路は、大別してアナログ回路ブロック部10とロジック回路ブロック部20とで構成される。また、本半導体集積回路は、図1に示されてない外部回路と接続されており、その外部回路からは、本半導体集積回路の動作に必要な電源、制御信号、およびデータが供給される。ここでは、電源としてVCC_2.5V,VCC_5.0V,VCC_DAC、及びVH電源が供給され、制御信号としてSignal−1〜5が供給され、データとしてVch設定用シリアルデータが供給されている。本半導体集積回路は、外部回路より供給される制御信号およびデータに基づいて、出力チャンネル毎に駆動電圧と共通電圧とを外部駆動素子(例えばインクヘッド)へ出力する。
【0018】
ロジック回路ブロック部20は、VchData設定回路21、タイミング制御ロジック回路22、テストモード回路23,24、及びレベルシフタ回路により構成されている。
【0019】
本実施の形態におけるテストモード回路は、スタンバイモード以外に複数の機能を備えており、それらの機能のために2箇所に備えられている。テストモード回路23は、主にD/A変換回路12へ送られるデータに関するテストモード回路であり、VchData設定回路21にて生成されたデータに基づいて動作する。一方、テストモード回路24は、主に出力端子選択回路13へ送られるデータに関するテストモード回路であり、タイミングロジック回路22にて生成されたデータに基づいて動作する。このように扱うデータが各々違うため、二つ分けて備えられてる。尚、スタンバイモードのためのテスト制御端子(図示しない4つの信号線)は、上記2つの回路に対してそれぞれ配置されている。
【0020】
レベルシフト回路は一般的に外部から入力される違う電圧値を持った入力信号とのインターフェイスのために装備される。具体的には、本半導体集積回路の内部電源は2.5V系で構成されており(これは使用プロセスに依存する)、一方、外部から入力される信号は、5V系の電圧信号であるため、レベルシフト回路なしに、5V系信号を内部に取り込んだ場合、最悪プロセスの破壊にて機能しなくなる。このインターフェイス整合を図るために、レベルシフト回路が必要となる。
【0021】
VchData設定回路21およびタイミング制御ロジック回路22には、外部よりVCC_2.5VとVCC_5.0Vとの2種類の電源電圧が供給される。ここで、VCC_2.5Vは、ロジック回路ブロック部20の内部コア回路駆動用電源電圧である。また、VCC_5.0Vは、ロジック回路ブロック部20に供給される入力信号用バッファ用電源電圧である。これらは、外部回路から入力される5V系の入力信号と、2.5V系の本半導体集積回路の内部コア駆動用電源とのインターフェイスに必要な電源である。
【0022】
タイミング制御ロジック回路22には、本半導体集積回路を制御するための制御信号Signal−1〜3が外部回路より入力される。タイミング制御ロジック回路22では、これらの制御信号Signal−1〜3より、所定の論理に基づいて制御信号が生成される。タイミング制御ロジック回路22で生成された制御信号は、アナログ回路ブロック部10の出力端子選択回路13における出力駆動信号の選択ロジックに利用される。
【0023】
アナログ回路ブロック部10は、増幅回路11、デジタル/アナログ変換回路12、および出力端子選択回路13で構成されている。
【0024】
増幅回路11には外部よりVH電源(34V)が供給される。またデジタル/アナログ変換回路12にはデジタル・アナログ変換回路部の基準電位が必要であり、外部よりVCC_DAC電源(5V)が供給される。
【0025】
デジタル/アナログ変換回路12は、ロジック回路ブロック部20のVchData設定回路21において外部より入力されたVch設定用シリアルデータ信号から、選択された最終出力駆動電圧に応じたアナログ信号を生成する。
【0026】
生成されたアナログ信号は、次段の増幅回路11で必要な電位に増幅される。本半導体集積回路では、約6倍にその電位を増幅する回路構成を取っている。このアナログ信号によって、次段の選択回路13において、出力チャンネル毎に生成される駆動電圧と外部回路より入力される共通電圧との一方が選択される。選択された電圧は、最終出力端子より出力される。
【0027】
図2に、本制御回路34を用いた装置のシステム構成の一例を示す。
【0028】
本システムは、システム電源31、入力信号生成回路32、電源回路生成部33、外部駆動素子35、およびインクジェット駆動制御回路34で構成される。
【0029】
システム電源31は、本装置全体のすべての電源の元になるもので、基本的に各回路に必要な各種の電位電源はシステム電源31を元に入力信号生成回路32で生成される。インクジェット駆動制御回路34は、図1にて説明した本半導体集積回路を含む制御回路であり、外部駆動素子35との接続用コネクタ、データインタフェイスの為のLVDS(Low Voltage Differential Signaling)回路などを含む。尚、入力信号生成回路32とインクジェット駆動制御回路34とのケーブル長が長い場合、ケーブル損失によって所定の電位が出ない可能性がある。その対策として、特に電圧精度を要求される電圧、VCC_DAC(5V)については、電源回路生成部33にて、VH電源を元に生成する回路を搭載している。すなわち、本半導体集積回路に必要な電源等は、システム電源31を基にした電源回路生成部33にて生成し、ここからインクジェット駆動制御回路34の各部に供給される。このような構成とすることで、インクジェット駆動制御回路34が必要とする各種電源に対して個別に電源ユニットを設けて装置構成する場合に比べ、全体の装置構成が簡単になり、メンテナンスを容易に行うことができるようになっている。
【0030】
図3に、電源回路生成部33の詳細な回路構成を示す。電源回路生成部33は、システム電源31における電源電圧VH(=34V)を元に、本半導体集積回路のロジック回路ブロック部20に必要なVCC_2.5V電源電圧およびVCC_5.0V電源電圧を供給する。このため、電源回路生成部33は、VCC_2.5V電源回路41、VCC_5.0V電源回路42を備えている。さらに、電源回路生成部33には、本半導体集積回路のアナログ回路ブロック部10に必要なVCC_DAC電源回路43、及びVH電源を安定して供給するための回路も含まれる。すなわち、外部からはシステム電源31による電源電圧VHの供給のみで、半導体集積回路の動作に必要な複数の電源電位の生成および供給が可能となる。
【0031】
また、半導体集積回路のプロセス及び回路構成上、供給電源であるVCC_DAC電源、VCC_2.5V電源、VCC_5.0V電源が所定の電位に十分立ち上がったあとに、VH電源の電位を立ち上げる必要がある。この為、VH電位はスイッチ回路44を介して、半導体集積回路に入力される。この時、VCC_2.5V電源、VCC_5.0V電源、VCC_DAC電源より早くVH電位を立ち上げた場合は、半導体集積回路内部において、回路構成上貫通電流が流れることで、ラッチアップが発生し、最悪、半導体集積回路を破壊してしまう可能性がある。よって通常はこのように各電源の投入シーケンスの制御を行うことが必要である。
【0032】
このように電源回路生成部33は、電源回路の簡略化と投入シーケンス制御が容易に実現可能なように構成されている。
【0033】
ここで、本半導体集積回路の動作において、消費電流が大きくなる理由について説明する。本半導体集積回路で適用される駆動回路としては、圧電素子を使ったインクジェットヘッド駆動回路がある。その時に必要とされる駆動条件としては、高い駆動電圧、高いスルーレートの駆動波形性能が必要不可欠であり、駆動電圧としては最大25V以上、スルーレート100V/μs以上の駆動波形が必要である。これらを実現するためには、増幅回路11において高い増幅率が必要であり、かつ、出力端子選択回路13において高出力駆動のトランジスタ性能が必要とされる。これらの条件を達成するためには、増幅回路11への供給電源を高くすることが必要となってくる。そのため、本半導体集積回路においては機能仕様を満足するために、例えば、VH電源を34Vと設定して供給している。
【0034】
しかしながら、高い電圧による駆動でかつ、高いスルーレート駆動能力を要し、多チャンネル化を実現するためには、当然ながら、1出力端子当りに駆動する出力段トランジスタに大きな電流を流す必要がある。かつ、搭載トランジスタ数が増加することから、どうしても消費電流が大きくならざるをえなかった。そのために、半導体集積回路のパッケージについても放熱性の高い銅などの素材を使用し、特殊な構造をもったパッケージで作成する必要があった。
【0035】
一方、本発明を適用可能であるインクジェット装置は、プリンタに用いられる以外に、液晶のカラーフィルタ、配線パターン描画等のために生産装置に用いられる場合を想定した場合、必ずしも半導体集積回路のすべての回路を常時通電しておく必要はない。特に最終出力信号を生成するアナログ回路ブロック部10においては、最終駆動波形出力時に機能していれば十分であり、制御信号設定などロジック動作時や待機状態には、必ずしも通電しておく必要はない。
【0036】
また、図9は複数個の半導体集積回路をカスケード接続し、多チャンネル出力駆動を実現した駆動制御回路を示したものである。ここでは、64ch仕様の半導体集積回路のデータラインを複数個カスケード接続し、多チャンネル出力仕様の駆動回路を実現している。カスケード数をnとすると、最終段の半導体集積回路の出力端子チャンネルは64×(n−1)+1〜64×nであらわされ、n=2の場合、65ch〜128chのチャンネル数が実現できる。
【0037】
VchDATA設定電位(DAC電位)データについては、カスケード接続にて各半導体集積回路に順次データが設定される構成を考える。
【0038】
1個目の半導体集積回路91のDIN入力端子からは、設定しようとするシリアルデータ(すなわちVch設定用シリアルデータ)が入力される。このデータは、SCLK端子から入力されるクロック波形の立上りに同期して各チャンネルにデータを順次設定していく。65発目のデータは半導体集積回路91のDOUT端子より出力される。このDOUT端子は、次段の半導体集積回路92のDIN端子へ接続され、65発目から128発目のデータは次段の半導体集積回路92のチャンネルに設定される。以下、同様にカスケード接続された順序で、各半導体集積回路の各チャンネルにデータ設定される。
【0039】
この場合、転送用クロック周波数によっては、すべてのチャンネルにおけるデータ設定が完了するまでに多大な時間を要してしまう。
【0040】
この設定動作は、駆動出力に対してリアルタイムに機能する必要はなく、出力駆動波形が出力される前に設定が完了していれば、本半導体集積回路の仕様から十分である。しかしながら、従来では、この設定期間にもアナログ回路が機能しており、消費電流が大きくなっているため、このDACデータ設定期間においても、チップ温度の上昇を伴い、放熱対策が欠かせなかった。尚、転送時間の短縮を図るために、転送クロックを早くした場合には、アナログ回路動作におけるノイズの影響で動作が不安定になる懸念がある。
【0041】
ここで単純に、待機時においてVH電源の供給を切断すれば、消費電流削減効果は期待できる。しかしながらこの場合には、図2に示すように半導体集積回路において必要な各電源(VH電源を含む)はシステム電源31を元に生成しているため、システム電源31を落とす必要が生じる。システム電源31を落とした場合、システム電源31を復帰させる時に、装置システム全体の初期化、半導体集積回路の初期化等、複雑な設定を再度行う必要があり、効率が悪くなる。
【0042】
本発明では、半導体集積回路のアナログ出力回路の供給電源のみをOFFすることで回路消費電流を低減し、ロジック回路は動作可能とする制御モードを配置し、待機時の消費電流を減らすスタンバイモードを設置している。
【0043】
図1に示すテストモード回路23,24は、通常動作モードから、スタンバイモードに移行するための制御回路を含み、外部より入力されるテストモード端子の条件設定により、簡単にアナログ供給電源を遮断することができる。
【0044】
図4に、半導体集積回路におけるテストモード回路51、ロジック回路部52、アナログ回路部53と各々に必要な電源端子、テストモード端子TSIの配置構成を示す。尚、テストモード回路51は図1におけるテストモード回路23,24をまとめて記載したものに相当し、ロジック回路部52は図1におけるロジック回路ブロック部20に相当し、アナログ回路部53は図1におけるアナログ回路ブロック部10に相当する。
【0045】
尚、図1におけるテストモード回路23,24では、VchData設定回路21から入力が行われ、デジタル/アナログ変換回路12への出力がおこなわれている。これは、TSI信号がすべて“L”レベルの時は、通常動作をおこなうように設計されているためである。したがって、すべてのブロック構成図としては、図1に示すとおりとなるが、図5の構成はテストモードの機能に限定したものであり、テストモードはTSI信号により制御されるため、図5のテストモード回路51へは電源VHとTSI信号との入力のみを図示している。
【0046】
また、図5にはテストモード回路51の内部における半導体集積回路のVH電源バイアス供給回路の一部を記す。
【0047】
テストモード回路51は、外部より入力されるテストモード端子TSIをLOWレベルまたはHIGHレベルに制御することにより、図5に示すVHバイアス回路におけるPchトランジスタおよびNchトランジスタの一方がOFFし、出力STB0,STB1の組み合わせで駆動モードが選択される。例えば、STB0=Highレベル(PchトランジスタがON)、STB1=Highレベルの時に、スタンバイモードとなるように設計されている。この時、供給電源が停止し、半導体集積回路のアナログ回路部53に供給されるVH電源が遮断され、スタンバイモードに移行ができることとした。この時、ロジック回路部52は、その影響を受けることなしに、通常動作が可能な状態とした。尚、STBO,STB1は、ここでは図示しない内部バイアス回路のコントロール信号となり、本端子の組み合わせにより接続先のバイアス回路が停止するように構成されている。
【0048】
図6および図8に通常動作時における本半導体集積回路を駆動させた時の出力信号駆動波形Voutとロジック制御入力信号の一部を示す。通常動作時は、VH電源が駆動しており、高い出力電圧で高いスルーレートをもった出力波形の影響で、出力信号の変化時に、ロジック制御信号にかなり大きいノイズ信号が入っていることが分かる。
【0049】
つまり、図6におけるVout出力信号がHighレベルからLowレベルへ変化するタイミングにおいて、入力信号1〜3の信号波形に大きなノイズが見られる。
【0050】
図8においても同様で、Vout1〜3の出力波形がHighレベルからLowレベルへ変化するタイミング、または、LowレベルからHighレベルから変化するタイミングや、または、各々のタイミングでVout1〜3出力変化が重なるタイミングにおいて、入力信号波形に大きなノイズが入っていることがわかる。
【0051】
このノイズ信号は急峻で高い電位がかかっているため、状況によっては、内部回路の誤動作、またはノイズ電位が半導体集積回路の絶対最大定格電圧を越えるような高い電位がかかった場合は、半導体集積回路を破壊させてしまう恐れが生じてしまう。特に高周波での駆動を行う場合においては、その影響を受けやすい。
【0052】
このように、テストモードを有効にしない状態では、ノイズは回避できないが、本テストモードでは、アナログ動作を必要としない動作、たとえばDAC回路へのデータ設定動作などロジック動作に限って言えば、テストモードが有効であっても、通常動作と同じ動作が可能であり、ノイズの影響の軽減を期待できる。
【0053】
一方、図7は、本発明のスタンバイモード動作時の出力信号駆動波形Voutとロジック制御入力信号の一部を示す。スタンバイモードにより、出力信号駆動波形Voutが出力していない状態である為、ロジック制御入力信号におけるノイズは、発生していないことが分かる。
【0054】
このときの各電源電流の測定値を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
通常動作モードにおいては、アナログ回路部のVH電源電流が109mA,ロジック回路部のVCC_2.5V電源電流が1.3mA,同じくロジック回路部のVCC_5.0V電源電流が14.2mAとなり、総電源電流は124.5mAにも達する。一方、本発明におけるスタンバイモード時にはアナログ回路部のVH電源電流がほぼゼロとなるため、総電源電流は、15.5mAと約1/8となることが分かる。このことにより大幅な消費電力の低減を実現することが可能なことが分かる。このことにより放熱対策に対する負荷を軽減することが可能となり、装置全体のコストダウンを図ることが可能となる。
【0057】
また、スタンバイモード時には、外部の駆動素子への出力波形が出力されない状態である為、接続されている駆動素子の交換作業を同時に行うことが可能である。つまり半導体集積回路の初期化作業、ひいてはシステム全体の初期化作業を行うことなしに、動作の継続が可能となり、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
多くの電力を消費する駆動回路等に用いられる半導体集積回路において、待機モード時の消費電力を削減できると同時に、待機モードからの復帰時における初期化が不要であり、かつ、回路の誤動作も防止し得る。このため、本発明は、プリンタや、液晶のカラーフィルタ、配線パターン描画等のために生産装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 アナログ回路ブロック部(アナログ出力回路部)
11 増幅回路
12 デジタル・アナログ変換回路(ロジック制御回路部)
13 出力端子選択回路
20 ロジック回路ブロック部
21 VchData設定回路
22 タイミング制御ロジック回路
23,24 テストモード回路(待機モード設定部)
31 システム電源
32 入力信号生成回路
33 電源回路生成部
34 インクジェット駆動制御回路
35 外部駆動素子
41 2.5V電源回路(ロジック制御回路部の動作用供給電源)
42 5.0V電源回路(ロジック制御回路部の動作用供給電源
43 VCC_DAC電源回路(アナログ出力回路部の動作用供給電源)
44 スイッチ回路
51 テストモード回路(待機モード設定部)
52 ロジック回路部
53 アナログ回路部
91,92 半導体集積回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ出力回路部とロジック制御回路部とを有する半導体集積回路において、
上記アナログ出力回路部の動作用供給電源と、上記ロジック制御回路部の動作用供給電源とが分離されていると共に、
上記アナログ出力回路部の動作用供給電源のみをOFFとする待機モード設定部を備えており、
待機モード時には、上記待機モード設定部によってアナログ出力回路部への供給電源をOFFとし、ロジック制御回路のみを動作させることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の上記半導体集積回路を、インクジェットヘッドの駆動制御回路として備えていることを特徴とするインクジェット装置。
【請求項3】
アナログ出力回路部とロジック制御回路部とを有する半導体集積回路によって構成される駆動制御回路の制御方法において、
上記ロジック制御回路部を常時動作させる共に、上記アナログ出力回路部の出力/非出力を上記アナログ出力回路部への動作用供給電源のオン/オフの切替えによって制御することを特徴とする駆動制御回路の制御方法。
【請求項4】
上記駆動制御回路は、インクジェット装置のインクジェットヘッドの駆動制御回路であり、
上記アナログ出力回路部は、インクジェットヘッドへの駆動信号を出力するものであることを特徴とする請求項3に記載の駆動制御回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−37122(P2011−37122A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186316(P2009−186316)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】