説明

半導電性シームレスベルト

【課題】中間転写ベルト、転写定着ベルト及び転写搬送ベルト等の画像形成装置の機能性ベルトとして使用した場合に、転写ムラ、画像乱れ及び分離不良等がなく、鮮明な画像が得られる半導電性シームレスベルトを提供する。
【解決手段】いずれもポリイミド系樹脂を主体とする外層及び内層からなる半導電性シームレスベルトにおいて、前記ベルトが導電性物質を含有し、前記外層の体積抵抗率が、前記内層の体積抵抗率より大きく、前記ベルト全体の体積抵抗率が、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmであることを特徴とする半導電性シームレスベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真画像形成装置において中間転写ベルト、転写定着ベルト、転写搬送ベルト等として使用可能な半導電性シームレスベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子写真方式で像を形成記録する電子写真記録装置としては、複写機やレーザービームプリンタ、ファクシミリやこれらの複合機が知られている。この種の装置では装置寿命の向上や多様な被記録材への適用可能化等を目的として、感光ドラム等の像担持体上の像を中間転写ベルトに一旦転写し、これを被記録材上に一括転写する中間転写方式が一部採用されており、上記転写時に同時に定着動作を行う転写定着方式も検討されている。また、カラー画像のドキュメント作成の高速化等を目的として、転写搬送ベルトで被記録材を搬送しながら転写を行う方式も採用されている。
【0003】
このような中間転写ベルト、転写定着ベルトや転写搬送ベルト等に用いうる半導電性ベルトとして、機械特性や耐熱性に優れたポリイミド樹脂にカーボンブラックのような導電性物質を分散してなる半導電性ベルトが公知である(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかし、これら公報に開示の半導電性ベルトは、転写ムラや分離不良、及び画像乱れ等が発生してしまい、実用上満足の行くものではなかった。
【0005】
また、ポリイミド系樹脂と例えばシリコーン系やフッ素系のゴム等の他種素材とから構成される積層状シームレスベルトも知られている(特許文献3等)。
【0006】
しかし、このような複層ベルトは層間の接着力が不十分なため層間剥離を生じ、耐久性に欠けるものであった。またシリコーン系ゴムやフッ素ゴムヘの導電性物質の均一分散は充分ではなく、電気抵抗値もバラツキが大きいため、実用上満足の行くものではなかった。
【0007】
このような中、ポリイミド系樹脂を主体とした表面抵抗率の異なる複数層からなる半導電性ベルトが提案されている(特許文献4)。
【0008】
しかし、特許文献4の場合、表面抵抗率のバラツキは幾らか改善されているものの、画像形成性という点において、十分満足の行くものではなかった。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−311263号公報
【特許文献2】特開平5−77252号公報
【特許文献3】特開昭59−77467号公報
【特許文献4】特開平7−156287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、中間転写ベルト、転写定着ベルト及び転写搬送ベルト等の画像形成装置の機能性ベルトとして使用した場合に、転写ムラ、画像乱れ等がなく、鮮明な画像が得られる半導電性シームレスベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の半導電性シームレスベルトは、いずれもポリイミド系樹脂を主体とする外層及び内層からなる半導電性シームレスベルトにおいて、前記ベルトが導電性物質を含有し、前記外層の体積抵抗率が、前記内層の体積抵抗率より大きく、前記ベルト全体の体積抵抗率が、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmであることを特徴とする。
【0012】
前記外層の体積抵抗率を内層の体積抵抗率より高く調整し、ベルト全体の体積抵抗率を前記範囲内に調整することにより、トナー画像を良好に転写でき、トナーの飛び散りなどを防止し、画像形成性に優れた機能性ベルトを得ることができる。また、ポリイミド系樹脂を使用しているため、電気特性、機械特性及び耐熱性に優れた機能性ベルトを得ることができ、有効である。
【0013】
本発明の半導電性シームレスベルトは、前記外層の厚みに対する前記内層の厚みの比(内層/外層)が、0.5〜1.5であることが好ましい。前記範囲に調整することにより、画像形成性に優れた半導電性シームレスベルトを得ることができ、有効である。
【0014】
本発明の半導電性シームレスベルトは、前記導電性物質が、少なくともカーボンブラックを含有していることが好ましい。導電性物質としてカーボンブラックを使用することにより、体積抵抗率の制御が容易となり、有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法としては、まず、導電性物質を分散させた外層用及び内層用の分散液を調製する。次いで、調製したそれぞれの分散液に、テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体(テトラカルボン酸成分)とジアミン成分を溶解、重合させて導電性物質分散ポリアミド酸溶液を調製することが必要である。更に、前記ポリアミド酸溶液を用いて、イミド転化反応を行い、本発明の半導電性シームレスベルトの外層及び内層を調製する。
【0016】
ここで、半導電性シームレスベルトの外層及び内層を調製する方法として、例えば、(i)外層用ポリアミド酸溶液にて、外層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成し、イミド転化反応を行った後、外層フィルム上に内層用ポリアミド酸溶液を塗布し、内層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成し、イミド転化反応を行う方法や、(ii)外層用ポリアミド酸溶液にて外層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成し、イミド転化反応が完結する前に反応を一旦止め、更に内層用ポリアミド酸溶液にて、内層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成した後、両層についてイミド転化反応を行う方法が挙げられる。なお、後者の方が層間剥離のないベルトが形成されやすく、好ましい。
【0017】
以下に、本発明の半導電性シームレスベルトの調製方法を、具体的に説明する。
【0018】
<導電性物質分散液の調製>
本発明の半導電性シームレスベルトを調製する場合、まず、導電性物質を分散させた導電性物質分散液を調製する。具体的な導電性物質としては、カーボンブラック、アルミニウム、ニッケル、酸化錫、チタン酸カリウム等の無機化合物やポリアニリンやポリピロールなどに代表される導電性高分子を用いることができる。特に、抵抗制御や抵抗低下の観点から、カーボンブラックを用いることが好ましい。
【0019】
前記カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用して使用することができる。これらのカーボンブラックの種類は、目的とする導電性により適宜選択することができ、その用途によって、酸化処理、グラフト処理等の酸化劣化を防止したものや、溶剤への分散性を向上させたものを用いることが好ましく、特に、酸化処理されたカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0020】
前記酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面に酸素含有官能基(例えば、カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)を付与して得ることができるものである。
【0021】
前記酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触・反応させる空気酸化法、常温で窒素酸化物やオゾン等と反応させる方法、及び高温での空気酸化後、低温でオゾン酸化する方法等により行うことができる。上記方法により得られる酸化処理カーボンブラックは、一部に過剰な電流が流れ、繰り返しの電圧印加による酸化の影響を受けにくい。また、その表面に付着する酸素含有官能基の効果で、ポリイミド中への分散性が高く、抵抗のバラツキを小さくすることができ、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中が起き難くなる。その結果、転写電圧による電気抵抗の低下を防止し、電気抵抗の均一性を改善し、電界依存性や環境による抵抗の変化が少なく、用紙走行部が白く抜ける等の画質欠陥の発生を抑制することができるため、高画質を得ることができる。
【0022】
カ−ボンブラックは、偏在による電気特性のバラツキを制御する観点より、一次粒子に基づく平均粒径が1μm以下、特に0.001〜0.5μmの平均粒径をもつものの使用が好ましい。
【0023】
カーボンブラックの含有量については、本発明の半導電性シームレスベルトにおける外層の体積抵抗率が、内層の体積抵抗率より大きく、前記ベルト全体の体積抵抗率が、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmになるように、添加するカーボンブラックの種類により適宜決定される。例えば、外層についてはポリイミド樹脂固形分100重量部に対して、20〜21重量部に調製し、内層についてはポリイミド樹脂固形分100重量部に対して、22〜23重量部に調製することにより、外層の体積抵抗率を、内層の体積抵抗率より、実質的に高く調製することができる。
【0024】
カーボンブラックの添加・分散させる方法としては、例えば、予め本発明に用いることができる有機極性溶媒中にカーボンブラックを添加し、分散させた分散液を調製することが好ましい態様である。
【0025】
カーボンブラックの分散方法には、公知の分散方法を適用することができる。例えば、溶媒中にカーボンブラックを添加した後、ナノマイザー、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、ホモジナイザー、超音波などの方法を適宜選択して分散作業を行うことができる。その中でも、特にナノマイザー、ビーズミル、超音波が好ましい。上記分散方法を用いることにより、カーボンブラックの粒度分布が狭く、バラツキの小さい分散液が得られる。その上、ポリアミド酸溶液のカーボン表面への浸透性、吸着性も良好である。
【0026】
なお、カーボンブラックなどの導電性物質と溶媒との親和性を高めるため、分散剤をさらに添加することができる。
【0027】
分散剤としては、本発明の目的にかなうものであれば特に限定されないが、例えば高分子分散剤が挙げられる。高分子分散剤としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の高分子分散剤を添加することができる。
【0028】
分散剤の添加量は、カーボンブラックを均一に分散させるため、カーボンブラックに対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。分散剤の添加量が0.01重量%未満の場合も10重量%を超える場合も分散に対する効果が得られない。
【0029】
<ポリアミド酸溶液の調製>
ポリイミド系樹脂の原料液としては、テトラカルボン酸二無水物やその誘導体(テトラカルボン酸成分)とジアミン成分とを、溶媒中で重合反応させて、ポリアミド酸溶液を調整することにより得られる。前記ポリアミド酸はテトラカルボン酸成分とジアミン成分との略等モルを有機溶媒中で反応させることにより得られるもので、通常溶液状で用いられる。
【0030】
前記テトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが、特に好ましくは、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。これらは単独で又は2種以上を併用することができる。
【0031】
前記ジアミン成分としては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5 −ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17 −ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用することができる。
【0032】
なお、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の反応温度は80℃以下が好ましく、特に好ましくは5〜50℃である。ポリアミド酸溶液のポリマー成分は、本発明の目的を達成できるものであれば、上記テトラカルボン酸成分およびジアミン成分を共重合したもの、ブレンドしたもの、またはこれらを混合したものでも構わない。
【0033】
上記の反応により得られたポリアミド酸溶液の粘度は上昇するが、そのまま加熱を行うと、ポリアミド酸溶液の粘度が低下する。この現象を利用して、前記ポリアミド酸溶液を所定の粘度に調整することができる。このときの加熱温度は50〜90℃が好ましい。
【0034】
また、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の反応に寄与する触媒としては、例えばイミダゾール類、第2級アミン、第3級アミン等を用いることができる。例えば、2−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、イミダゾール、イソキノリン等が挙げられる。これらのうちでも2−フェニルイミダゾールが機械強度を向上させる点で好ましい。触媒の添加量としては、ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸1モル当量に対して0.1〜2モル当量添加することが好ましく、より好ましくは0.2〜1モル当量である。
【0035】
また、この他に本発明の目的の範囲内で、界面活性剤や分散安定化剤等を用いることもできる。
【0036】
<半導電性シームレスベルトの製造方法>
上記のように得られたポリアミド酸溶液を用いて、本発明の半導電性シームレスベルトの製造方法を以下に示す。なお、ここで説明する製造方法としては、上述した外層用ポリアミド酸溶液にて外層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成し、イミド転化反応が完結する前に反応を一旦止め、更に内層用ポリアミド酸溶液にて内層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成した後、両層について、イミド転化反応を行う方法に関するものである。
【0037】
まず、円筒金型内に外層用ポリアミド酸溶液を供給し、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により均一に展開する。このとき前記溶液の粘度は、B型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)が好ましい。これ以外の場合は、遠心成形の際、均一に展開することが困難であり、ポリイミドベルトの厚みバラツキの原因となる。
【0038】
遠心成形後、加熱を行い溶媒の蒸発により、塗膜がベルト形状を保持できるまで、硬化させる(外層用ポリイミド前駆体のベルト状物)。この際の加熱温度は、50〜250℃が好ましい。加熱直後は、ポリアミド酸の流動性が高くなるため、金型を回転させ、塗膜厚みのバラツキを抑えるようにして行う。また、均等に加熱する方法としては、金型を回転させながら加熱する熱風の循環を改善した方法や、ターンテーブル上で金型を回転させながら、昇温速度を下げる方法、乾燥温度より低温で投入し、乾燥温度までの昇温速度を下げる等の方法が挙げられる。
【0039】
続いて、上記外層用ポリイミド前駆体のベルト状物の内面に、内層用ポリアミド酸溶液を塗布し、外層用ポリイミド前駆体のベルト状物の製造方法と同様の方法で、内層用ポリイミド前駆体のベルト状物を調製する。
【0040】
次いで、上記外層及び内層からなるポリイミド前駆体のベルト状物を、加熱してイミド転化反応を行う。イミド転化反応を促進させるため、250〜450℃の高温で加熱する。この際の加熱も、上述した均等に加熱する方法を用いる。ついで、更に乾燥温度よりも低温中に投入して、乾燥温度までの昇温速度を下げるなどの方法を用いることができる。上記工程により、半導電性シームレスベルトを得ることができる。
【0041】
上述した方法により得られる半導電性シームレスベルトは、導電性物質を適宜選択して適当な配合量の組み合わせにより、外層の体積抵抗率を、内層の体積抵抗率より大きく調整することができる。外層の体積抵抗率を、内層の体積抵抗率より大きくするとは、例えば、外層及び内層ともに同一のポリイミド系樹脂を使用する場合には、外層よりも内層に導電性物質を多く添加することにより調製することができる。なお、外層の体積抵抗率を内層より大きくすることにより、外層中に含まれる導電性物質の添加量を少なくでき、これにより外層の摩擦を抑制し、半導電性シームレスベルト形成後に、剥離する際の作業性に優れ、更には、画像形成性に優れた半導電性シームレスベルトを得ることができる。
【0042】
また、本発明では、ベルト全体の体積抵抗率が、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmであり、5.0×1010〜5.0×1011Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率が1.0×1010Ω・cm未満であると、転写されるトナー量が少なくなり、低い濃度の記録しかえられない。一方、体積抵抗率が1.0×1012Ω・cmを超えるとトナー像の転写時に中間転写ベルト等が帯電して像担持体と離れる際に、剥離放電が起こりやすく、転写されたトナー像が飛散して、不鮮明な画像となり易い。また、ベルト自体が帯電してしまうため、除電機構が必要となる場合がある。
【0043】
本発明の半導電性シームレスベルトにおける外層と内層の厚さは、本発明の目的を達することができれば特に限定されるものではないが、ベルト全体の体積抵抗率を制御するために、外層の厚みに対する前記内層の厚みの比(内層/外層)が、0.5〜1.5であることが好ましく、より好ましくは、0.7〜1.3である。前記比が0.5未満であると、トナー像の転写時に中間転写ベルト等が帯電して像担持体と離れる際に、剥離放電が起こりやすく、転写されたトナー像が飛散して、不鮮明な画像となり易い。また、前記比が1.5を超えると、内層の通電が起き易くなり、体積抵抗率が低下しやすくなり、転写されるトナー量が少なくなり、低い濃度の記録しかえられない。
【0044】
また、本発明の半導電性シームレスベルトを中間転写ベルト等の機能性ベルトとして用いる場合には、その表面抵抗率が1.0×1011〜1.0×1013Ω/□であることが好ましく、5.0×1011〜5.0×1012Ω/□であることがより好ましい。表面抵抗率が1.0×1011Ω/□未満では、中間転写ベルト等と像担持体との間に過大な電流が流れることから、ベルトに転写されたトナー像が像担持体に戻ってしまい、転写不良や不鮮明な画像となりやすい。一方、表面抵抗率が1.0×1013Ω/□を超えると、トナー像の転写時に中間転写ベルト等が帯電して像担持体と離れる際、剥離放電が起こりやすくなり、転写されたトナー像が飛散して、不鮮明な画像となりやすい。
【0045】
本発明の半導電性シームレスベルトは、ポリイミド系樹脂を使用しているため、電気特性、機械特性及び耐熱性に優れた電子写真記録装置の中間転写ベルト、転写定着ベルト又は転写搬送ベルトに使用されるものである。
【実施例】
【0046】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例及び評価方法について説明する。
【0047】
[評価試験]
(1)体積抵抗率の測定
ハイレスタUP MCP−プローブ(三菱化学製、URSプローブ)にて印加電圧100V、1分値の測定条件による25℃、60%RHにおける表面抵抗率を測定した。測定は、上述のように1本のベルトにつき、10箇所行い、平均値を求めた。
【0048】
(2)表面抵抗率の測定
ハイレスタUP MCP−プローブ(三菱化学製、URSプローブ)にて印加電圧500V、1分値の測定条件による25℃、60%RHにおける表面抵抗率を測定した。測定は、上述のように1本のベルトにつき、10箇所行い、平均値を求めた。
【0049】
(3)画像評価
得られた半導電性シームレスベルトをタンデム式中間転写ベルトとして、実際の複写機に組み込み、画像形成テストを行った。画像及びベルトの駆動性が良好なものを○、画像欠損が目視で認識できるものを×と評価した。
【0050】
(実施例1)
761gのN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に乾燥したカーボンブラック(デグサ社製、スペシャルブラック4)30.4g(ポリイミド系樹脂の固形分に対して19重量%相当量)をボールミルにて、6時間室温で混合した。このカーボンブラック分散NMP液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物129gと、p−フェニレンジアミン47.2gを溶解し、窒素雰囲気中において、室温で4時間撹拌しながら反応させて、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(a液)を得た。
【0051】
同様にして800gのNMP中に乾燥したカーボンブラック(デグサ社製、スペシャルブラック4)40.0g(ポリイミド系樹脂の固形分に対して25重量%相当量)をボールミルにて、6時間室温で混合した。このカーボンブラック分散NMP液に3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物128.6gと、p−フェニレンジアミン47.2gを溶解し、窒素雰囲気中において、室温で4時間撹拌しながら反応させて、カーボンブラック分散ポリアミド酸溶液(b液)を得た。
【0052】
内径300mm、長さ500mmの金型の内面に上記a液をディスペンサーで厚さ200μmに塗布後、1500rpmで10分間回転させ、外層となる均一な塗布層を得た。金型を250rpmで回転させながら、金型の外側より60℃の熱風を30分間当てた後、180℃で60分間加熱し、次いで常温まで冷却した。
【0053】
次に、この状態で得られた外層用ポリイミド前駆体のベルト状物の内面に、上記b液を同様に厚さ200μmに塗布し、乾燥して外層内面に、内層用ポリイミド前駆体のベルト状物を形成した。その後、350℃まで2℃/分の昇温速度で昇温し、更に350℃で30分間加熱して溶媒の除去、脱水閉環水の除去、及びイミド転化の完結反応を行った。その後、室温に戻し、金型から剥離して目的とする半導電性シームレスベルトを得た。このベルトは、総厚さが83μmであり、外層の厚さが43μm、内層が40μmであった。
【0054】
得られたベルトについて、体積低抗率(log(Ω・cm))及び表面抵抗率(log(Ω/□))を10箇所測定し、これらの平均値を求めた。このベルトを実際に複写機に中間転写ベルトとして装着し、画像形成を行ったところ、良好な画像を得ることができた。
【0055】
(比較例1)
上記a液を使用し、上記金型内面にディスペンサーにて、厚さ300μmに塗布後、上記b液を厚さ100μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様の方法により半導電性シームレスベルトを得た。このベルトは、総厚さが82μmであり、外層の厚さが62μm、内層が20μmであった。
【0056】
得られたベルトについて、実際に複写機に中間転写ベルトとして装着し、画像形成を行ったところ、評価開始直後から得られる画像に欠陥が認められた。
【0057】
(比較例2)
上記a液を使用し、上記金型内面にディスペンサーにて、厚さ100μmに塗布後、上記b液を厚さ300μmになるように塗布した以外は、実施例1と同様の方法により半導電性シームレスベルトを得た。このベルトは、総厚さが82μmであり、外層の厚さが21μm、内層が61μmであった。
【0058】
得られたベルトについて、実際に複写機に中間転写ベルトとして装着し、画像形成を行ったところ、評価開始直後から得られる画像に欠陥が認められた。
【0059】
【表1】

【0060】
上記評価結果より、実施例においては所定の体積抵抗率を有する半導電性シームレスベルトは、画像形成性に優れることが確認できた。一方、所定の体積抵抗率を外れる比較例では、画像形成性に劣ることが確認された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれもポリイミド系樹脂を主体とする外層及び内層からなる半導電性シームレスベルトにおいて、
前記ベルトが、導電性物質を含有し、
前記外層の体積抵抗率が、前記内層の体積抵抗率より大きく、
前記ベルト全体の体積抵抗率が、1.0×1010〜1.0×1012Ω・cmであることを特徴とする半導電性シームレスベルト。
【請求項2】
前記外層の厚みに対する前記内層の厚みの比(内層/外層)が、0.5〜1.5であることを特徴とする請求項1記載の半導電性シームレスベルト。
【請求項3】
前記導電性物質が、少なくともカーボンブラックを含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の半導電性シームレスベルト。

【公開番号】特開2009−115965(P2009−115965A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287477(P2007−287477)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】