説明

半透明食品

【課題】小顆粒状デンプンを基にした半透明食品を提供する。
【解決手段】特定の小さい粒度を有するデンプンを用いて乾燥状態および調理した状態で十分な透明性および半透明性を有する半透明食品を調製する。用いる顆粒状デンプンは、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、カンナ(kanna)デンプン、インゲン豆デンプン、小豆デンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、または小麦デンプンであり、35μm未満の重量平均粒度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半透明食品および該製品の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半透明食品は、東洋の名物食品である。周知の例には、ガラスヌードル(glass noodle)および「冷たいゲル」または「冷たいカード(curd)」または「冷たい線維」を意味するリャンフェンが含まれる。半透明食品は一般的に、半透明性、弾力性、および滑らかさにおいて良い結果を得るために、豆類デンプン、とりわけ緑豆デンプンから調製しなければならない。
【0003】
ガラスヌードルは、調理前後の両方において半透明で、調理後には弾力があり、優しい味を有する。緑豆デンプンは、この適用において無類の特徴を提供し、製麺において理想的な素材である。サツマイモデンプンは、この適用のための別の周知のデンプンであるが、サツマイモデンプンを基にした麺の質は、一般的に緑豆デンプンを基にした麺より劣る。しかし、緑豆デンプンは高価である。そのため、他のデンプンで置換する試みがなされてきた。豆科のデンプンを用いる提案が公表されているが、この種のデンプンは多くの場合さらに入手しにくい。頻繁に記載される別の可能性としては、緑豆またはサツマイモデンプンを、化学的に改変したデンプン、または遺伝子組換えデンプン、とりわけタピオカおよびジャガイモ由来のデンプンで部分的もしくは完全に置換することが挙げられる。
【0004】
例えば、WO-00/55605 (Aventis Cropscience GmbH)(特許文献1)は、緑豆デンプンの一部を、アミロース含量の増加した遺伝子組換えジャガイモデンプンで置換することを記載している。しかし、遺伝子組み換え食品成分はあまり受け入れられていない。
【0005】
米国特許第4,871,572号 (National Starch & Chemical Co.)(特許文献2)は、ガラスヌードルにおける架橋ジャガイモデンプンの適用について記載している。これらのデンプンを用いることで、調理法は安価になる傾向があるが、依然として値段は高めである。大衆の受け入れに不利な別の要素は、食料品のパッケージ上の「食品用加工デンプン」という表示である。遺伝子組み換えまたは化学的に改変したデンプンが適用される理由は、Chen et al., J. Food Sci, 2002, 67: 3342-3347(非特許文献1)、またはChen et al., J. Food Sci, 2002, 68: 431-437(非特許文献2)に開示されているように、この種の適用のためには、デンプンが「C」型の糊化カーブにしたがって糊化される必要があるということが一般的に認められているからである。
【0006】
すでに述べたとおり、リャンフェンは人気のある、伝統的なアジアのデンプンゲル食品である。通常、小片に切るか、麺の線維にスライスして、特に夏場に、ソースと共に消費される。理想的なリャンフェンは弾力性があり、滑らかで、かつ柔らかである。一般的に、緑豆デンプンおよび他の豆類デンプンが、高品質のリャンフェンを作るための最適な材料であると考えられている。その他のデンプン、例えば通常のジャガイモ、穀類、またはサツマイモデンプンは、構造が弱すぎ、かつ舌触りがあまりに粘つく製品を生じる点で、適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO-00/55605
【特許文献2】米国特許第4,871,572号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Chen et al., J. Food Sci, 2002, 67: 3342-3347
【非特許文献2】Chen et al., J. Food Sci, 2002, 68: 431-437
【発明の概要】
【0009】
驚くべきことに、選択された小顆粒状デンプンは半透明食品の調製に非常に適していることが発見された。例えば、小顆粒状ジャガイモデンプンを用いると、「C」型糊化を有さないにもかかわらず、非改変ジャガイモデンプンを用いては不可能であることが以前に明らかにされていた、乾燥した状態で十分な透明性(clarity)および半透明性(translucency)を有するガラスヌードルが調製できることが発見された。したがって本発明は、重量平均粒度が35μm未満、好ましくは顆粒の90%が20μmより小さい、顆粒状デンプンから調製された半透明食品に関する。
【0010】
添付の実施例に例示されるように、小顆粒状デンプンは、半透明食品に、優秀な生地の流体力学的特性、透明性、および弾力性を与える。本発明の小顆粒状デンプンを基にした半透明食品はさらに、優れた感覚刺激特性を有する。加えて、小顆粒状デンプンの使用は、半透明食品の調製中の調理損失(cooking loss)の低下につながる。
【0011】
通常のジャガイモデンプンは5〜100μmの範囲の重量平均粒度を有する顆粒からなる。本発明において重量平均粒度とは、Coulter Counter Multisizingで計測し、重量に基づき平均した粒度と定義付けられる。Coulter Counter Multisizingを用いると、通常のジャガイモデンプンの重量平均粒度は約43μmであり、数平均は約23μmである。
【0012】
小顆粒状デンプンは、液体サイクロンによる分離、乾式または湿式ふるい、空気分級などの様々な方法で通常のデンプンから製造することができる。ジャガイモデンプンに関しては、ジャガイモを普通よりも早く収穫することで、早期(すなわち収穫期の初め)に収穫されたジャガイモから単離されたデンプンがより小さな粒度を有することを達成できる。さらに、植物、例えばジャガイモ植物を遺伝子組み換えすることによって、より小さな粒度のデンプンを製造することができる。ガラスヌードルを製造するために本発明にしたがって用いられる顆粒の、Coulter Counter Multisizingによって計測される重量平均粒度は、35μmより小さく、好ましくは25μmより小さく、さらに好ましくは20μmより小さい。本発明にしたがって用いられる小顆粒状ジャガイモデンプンの重量平均粒度の下限値は特に重要ではないが、典型的には約10μmまたは15μmである。本発明にしたがって用いられる顆粒の90%の粒度は20μmより小さい。好ましくは顆粒の95%、さらに好ましくは99%が20μmより小さい。
【0013】
ジャガイモデンプンの他にも、その他のデンプン、例えばジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、カンナ(kanna)デンプン、インゲン豆デンプン、小豆デンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンおよび様々な豆デンプンを用いることができる。優先的にはジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、カンナデンプン、インゲン豆デンプン、または小豆デンプンが用いられる。さらに、重量平均およびサイズに関する基準を満たすよう処理されている限り、様々なアミロース含量 (0〜90%)のデンプンを用いることができる。 本発明は、 例えばジャガイモデンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプンなどの遺伝子組み換え作物から得られるデンプンの使用も企図する。
【0014】
本発明は、改変した小顆粒状デンプンの使用も含むことが理解される。そのような改変は、任意の公知の化学的、物理的、もしくは酵素的方法、またはそれら方法の組み合わせによって達成することができる。
【0015】
本発明の好ましい態様において、半透明食品はガラスヌードルである。原則として、二つの一般的なガラスヌードルの製造方法があり、どちらも押し出し成形を伴う。第一の方法(方法1)は、押し出し成形の力として重力を使用し、第二の方法(方法2)は、単軸押出機または2軸押出機を使用する。
【0016】
方法1では、デンプンの一部、約5%を、まず過剰量の熱湯において糊化し、粘稠性のペーストを得る。このペーストに、残りのデンプンを約50℃で混合すると、一部が糊化したデンプンの微細繊維へと重力を用いて押し出し成形することができる生地が得られる。この目的のために、微細繊維を熱湯で約10秒間調理し、続いて氷冷水にくぐらせる。次に、微細繊維を切断し、得られた麺の糸を竿につるし、液を滴らせて水きりする。麺を冬の野外で、または特別な冷凍室のいずれかにおいて凍らせ、乾燥キャビネットまたは野外で解凍および乾燥させる(例外的に、豆類デンプンから作られた麺は冷凍工程を経ずに乾燥させることができる)。春の雨の麺を意味するガラスヌードルの日本語名、ハルサメは、最後の種類の乾燥方法に由来する。
【0017】
方法2では、デンプンをまず水と混ぜ合わせ、単軸押出機または2軸押出機において一部を糊化する。一部が糊化したデンプンを、第二の工程において直接押し出し成形する。得られた麺の糸を切断するか成形し、竿につるし、空中で乾燥させるかオーブンで乾燥させる。
【0018】
別の好ましい態様において、半透明食品はリャンフェンである。小さいサイズの顆粒状デンプン、特にジャガイモデンプンは、リャンフェンの作製に非常に適していることが発見された。小さいサイズの顆粒状デンプンから本発明にしたがって作製されたリャンフェンの舌触りは、望ましい弾力性および滑らかさの特性を有する。本発明のリャンフェンは、従来用いられてきた豆類デンプンを、小さいサイズの顆粒状デンプンで置換することで、任意の従来の方法によって調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をさらに、以下の非限定的な実施例によって例示する。
【実施例】
【0020】
I: ジャガイモデンプン顆粒の分別
ジャガイモデンプンを水道水でふるい(モデルAS200 digit; F. Kurt Retsch GmbH & Co. Germany)にかけて分別し、40℃で風乾した。ジャガイモデンプンを4つの画分に分けた:53μmより大きい、36〜53μm、20〜36μm、および20μmより小さい。
【0021】
II: 粒度の決定
粒度分布を、等張水を電解液として用いたCoulter Multisizer(Coulter Multisizer II)によって計測した。試料を純水(demi water)に分散させ、次に等張水で希釈し、超音波槽においた(最大2分)。結果は2回の計測の平均である。
【0022】
III: デンプン麺(starch noodle)の調製
デンプンの一部(5%)を蒸留水中でアルファ化し(1:9 w/v)、次に残りの95%のデンプンと混合した。混合物を、二重鍋中40℃において、生地の固さまで水で練り合わせた。水分含量約55%の均一な生地を、円筒形の押出機から押し出し成形した。 生地をステンレススチール製円筒の穴(直径約1.5cm)から直接熱湯(95〜98℃)に、重力または圧迫によって押し出し成形し、冷水に移す前に50〜70秒間この温度において熱した(水面に麺が浮いてきたところで、それらを冷水に移した)。冷水中ですすいだ後、麺を4℃で6時間予冷し、続いて-5〜-2℃で6〜8時間冷凍し、次いで風乾した。乾燥させた麺を室温で4時間平衡させ、ポリエチレンの袋に梱包し、分析の前に室温で保存した。乾燥状態および調理した状態の麺の透明性を目視で評価した。
【0023】
IV: 調理損失および膨潤指数
調理損失および膨潤指数を、以下の軽微な改変の後、Mesteres et al., J. Food Sci 53: 1809-1812, 1998にしたがって測定した。切断した麺(長さ5cm)の約5g(W1)を30℃の蒸留水150mlに15分間浸し、次に10分間調理した。次に、麺を蒸留水50mlで洗浄した。調理用の水と合わせた洗浄水を、130℃のオーブン内で一定の重量まで乾燥させた(W2)。蒸留水(200ml)を同じ条件下で、一定の重量まで乾燥させた(W3; ブランク)。調理後、3分間麺の水気をきり、素早く計量した(W4)。調理損失および膨潤指数を次の式を用いて計算した(Mは最初の麺の水分を意味する):
調理損失(%)=(W2*W3)×100 / W1×(1-M)
膨潤指数(%)=(W4-W1×(1-M))×100 / W1×(1-M)
【0024】
V: 結果
粒度計測の結果、目視検査、ならびに膨潤および調理損失評価を、以下の表1にまとめる。符号は、全ての望ましい特徴を有する標準とされる緑豆デンプン麺と比較した結果を示す。++は緑豆デンプンに劣らないことを意味する。
【0025】
(表1)評価


【特許請求の範囲】
【請求項1】
35μm未満の重量平均粒度を有する、顆粒状デンプンから調製される半透明食品。
【請求項2】
デンプンの重量平均粒度が25μm未満、好ましくは20μm未満である、請求項1記載の半透明食品。
【請求項3】
顆粒の90%、好ましくは95%が20μm未満である、請求項1または2記載の半透明食品。
【請求項4】
顆粒状デンプンが、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、バナナデンプン、カンナ(kanna)デンプン、インゲン豆デンプン、小豆デンプン、タピオカデンプン、トウモロコシデンプン、または小麦デンプンである、請求項1から3のいずれか一項記載の半透明食品。
【請求項5】
デンプンがジャガイモデンプンである、請求項4記載の半透明食品。
【請求項6】
顆粒状デンプンが、液体サイクロンによる分離、乾式ふるいもしくは湿式ふるい、空気分級で得られるか、または早期収穫によって得られるジャガイモ由来、または遺伝子組み換えジャガイモ植物由来である、請求項5記載の半透明食品。
【請求項7】
ガラスヌードル(glass noodle)またはリャンフェンである、請求項1から6のいずれか一項記載の半透明食品。
【請求項8】
半透明食品の調製のための、35μm未満の重量平均粒度を有する顆粒状デンプンの使用。
【請求項9】
デンプンの重量平均粒度が25μm未満、好ましくは20μm未満である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
顆粒の90%、好ましくは 95%が20μm未満である、請求項8または9記載の使用。
【請求項11】
顆粒状デンプンがジャガイモデンプンである、請求項8〜10のいずれか一項記載の使用。
【請求項12】
ジャガイモデンプンが、液体サイクロンによる分離、乾式ふるいもしくは湿式ふるい、空気分級で得られるか、または早期収穫によって得られるジャガイモ由来、または遺伝子組み換えジャガイモ植物由来である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
半透明食品の豆類デンプンを置換するための、35μm未満の重量平均粒度の顆粒状デンプンの使用。
【請求項14】
豆類デンプンが緑豆デンプンである、請求項13記載の使用。
【請求項15】
顆粒の90%、好ましくは95%が20μmより小さい、請求項13または14記載の使用。
【請求項16】
半透明食品が、ガラスヌードルまたはリャンフェンである、請求項8〜12のいずれか一項記載の使用。

【公開番号】特開2011−67217(P2011−67217A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269888(P2010−269888)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【分割の表示】特願2006−507877(P2006−507877)の分割
【原出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【出願人】(306007152)
【Fターム(参考)】