説明

半透過・半反射膜形成用塗料と半透過・半反射膜およびそれを備えた物品

【課題】 大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜を得ることができ、しかも、材料の使用効率を高めることができ、文字や、ロゴマーク等の各種半透過・半反射パターンを容易に表示することができる半透過・半反射膜形成用塗料と半透過・半反射膜およびそれを備えた物品を提供する。
【解決手段】 本発明の半透過・半反射膜形成用塗料は、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有し、この金属コロイド粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有し、この塗料中の金属の含有量は、この塗料の全体量の0.1重量%以上かつ5重量%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透過・半反射膜形成用塗料と半透過・半反射膜およびそれを備えた物品に関し、更に詳しくは、インクジェット法を用いて基材の表面に半透過・半反射膜を形成する際に好適に用いられ、しかも、大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜が得られ、さらには、材料の使用効率が高く、文字や、ロゴマーク等の各種パターンを容易に表示可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハーフミラー膜(半透過・半反射膜)は、液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の電極、偏光板等、もしくは、デジタルヴァーサタイルディスク(DVD)等の前面板の意匠用として幅広く使用されている。このようなハーフミラー膜を形成する方法としては、次のような方法がある。
(1)真空蒸着法またはスパッタリング法等の成膜技術を用い、アルミニウム、銀、金、クロム、錫等の金属もしくはそれらの合金を蒸着源あるいはターゲットとして、この金属や合金からなる膜を基材の表面に直接成膜する方法。
(2)表面に離型膜が形成された離型膜付きフィルムに、真空蒸着法、スパッタリング法等の成膜技術により膜厚を制御したハーフミラー転写箔を成膜し、このハーフミラー転写箔を基材上に転写させる方法。
(3)金属ナノ粒子を含む塗料を基材上に直接塗布し、その際の膜厚を制御する方法(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このハーフミラー膜を用いて各種成形品等の基材上に文字やロゴパターン等を形成する場合、次のような各種の方法がある。
(1)基材上のパターン部をマスキングし、次いで、乾式法または湿式法により該基材上にハーフミラー膜を形成し、その後マスクを外すことにより、部分的にハーフミラー膜を形成する方法。
(2)オフセット印刷もしくはスクリーン印刷を用いて基材上に金属微粒子を含む塗料を塗布し、その後乾燥等をさせることにより、金属薄膜を形成する方法。
(3)転写法を用いて基材上のパターン部のみにハーフミラー転写箔を転写する方法。
【特許文献1】特開2003−327870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のハーフミラー膜では、真空蒸着法、スパッタリング法等の成膜技術を用いて成膜するために、真空蒸着装置、スパッタリング装置等の大型の製造装置が必要となり、その結果、製造コストが高くなってしまうという問題点があった。また、これらの成膜装置では、蒸着源やターゲットを構成する金属のうちほんの一部の金属しか成膜に寄与しないために、材料使用効率が悪いという問題点があった。
また、ハーフミラー膜を用いて文字やロゴパターン等を形成する場合、例えば、マスキングによるハーフミラー膜のパターン形成については、真空蒸着装置、スパッタリング装置、真空装置等、大掛かりな装置が必要であること、部分的に成膜するため材料の使用効率が非常に悪いこと等の問題点があった。
材料の使用効率については、マスキングによる塗布や転写箔による成膜についても同様に非常に効率が悪い。
【0005】
一方、スクリーン印刷法等は簡便で文字パターンを描ける手法でもあり、例えば鱗片状のアルミニウム微粒子を含有させたミラーインキ等を用いることで可能であるが、このミラーインキの場合には、鱗片状のアルミニウム微粒子の粒子径が大きいために、膜厚を薄くした場合、粒子感が残る透過となってしまう虞があった。そこで、通常のミラー膜を作成した後、その一部をエッチングして透かしを得る等の複雑な工程が必要になるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜を得ることができ、しかも、材料の使用効率を高めることができ、文字や、ロゴマーク等の各種半透過・半反射パターンを容易に表示することができる半透過・半反射膜形成用塗料と半透過・半反射膜およびそれを備えた物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有した塗料をインクジェト法により塗布することにより、大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜が得られ、しかも、材料の使用効率が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
また、塗料をインクジェト法により塗布する際に、その膜厚を制御することにより、ハーフミラーパターン膜を形成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の半透過・半反射膜形成用塗料は、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有してなり、この金属コロイド粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする。
【0009】
前記塗料中の金属の含有量は、この塗料の全体量の0.1重量%以上かつ5重量%以下であることが好ましい。
前記塗料の粘度は1mPa・s以上かつ50mPa・s以下であり、かつその表面張力は15mN/m以上かつ50mN/m以下であることが好ましい。
【0010】
本発明の半透過・半反射膜は、本発明の半透過・半反射膜形成用塗料をインクジェット法を用いて基材の表面に塗布してなることを特徴とする。
【0011】
前記塗布により形成される塗膜の膜厚は0.01μm以上かつ0.5μm以下の範囲で制御され、半透過・半反射膜とされていることが好ましい。
【0012】
本発明の物品は、本発明の半透過・半反射膜を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半透過・半反射膜形成用塗料によれば、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有し、この金属コロイド粒子が金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有したので、大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜を得ることができ、しかも、材料の使用効率を高めることができる。
また、この塗膜の膜厚を制御することにより、文字や、ロゴマーク等の各種半透過・半反射パターンを容易に表示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の半透過・半反射膜形成用塗料と半透過・半反射膜およびそれを備えた物品を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
「ハーフミラー膜形成用塗料」
本発明のハーフミラー膜(半透過・半反射膜)形成用塗料は、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有してなり、この金属コロイド粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有してなる塗料である。
【0016】
金属コロイド粒子の一次粒子径は、1nm以上かつ50nm以下である必要がある。その理由は、一次粒子径が1nm未満であると、金属コロイド粒子の分散性を保つのが困難であるからであり、一方、一次粒子径が50nmを越えると、塗膜にした際の光透過性が低下し、所望の反射・透過率を有するハーフミラーを得ることが難しくなるからである。
【0017】
このハーフミラー膜形成用塗料中の金属の含有量は、この塗料の全体量の0.1重量%以上かつ5重量%以下であることが好ましい。
塗料中の金属の含有量を上記の範囲内の値に設定することにより、このハーフミラー形成用塗料を用いてインクジェット法により塗布して得られる塗膜の膜厚を、0.01μm以上かつ0.5μm以下の範囲内で任意に制御することが可能である。
【0018】
この塗膜の膜厚を0.01μm以上かつ0.5μm以下と限定した理由は、膜厚が0.01μmより薄くなると、膜厚が薄すぎるためハーフミラー感が損なわれるからであり、一方、0.5μmより厚くなると、透過率が低くなり過ぎてミラー膜となってしまうからである。
【0019】
この金属コロイド粒子は、水等の溶媒中に、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有する金属イオンと、分散剤としてポリビニルアルコール(PVA)等の高分子、カルボン酸、アミン類等を適宜添加し、この金属イオンを含む溶液中に還元剤を添加することにより、一次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を生成させることができる。この生成した金属コロイド粒子は、透析膜等を用いて十分に脱塩処理した後、濃縮することにより、金属コロイド分散液として得ることができる。
【0020】
カルボン酸としては、例えば、酢酸、シュウ酸、コハク酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸等、及びそれらの金属塩を用いることができる。
また、アミン類としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン等のアルカノールアミン等を用いることができる。
【0021】
塗料に用いられる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールのモノエーテル類(セロソルブ類)、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、ホルムアミド、N,N,−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等のアミン類が好適に用いられる。
【0022】
このハーフミラー膜形成用塗料をインクジェット法に用いる場合の塗料物性としては、塗料の粘度を1mPa・s以上かつ50mPa・s以下、表面張力を15mN/m以上かつ50mN/m以下に保つことが好ましい。
その理由は、粘度が1mPa・s未満であると、ノズルからの液滴飛翔特性が一定しなかったり、基材の表面への塗布時に滲みが生じ易くなってしまうからであり、一方、粘度が50mPa・sを超えると、ノズルから塗料が塗出しずらくなるからである。
また、表面張力が15mN/m未満の場合には、インクジェット塗出時の液滴生成時における安定性が低下するからであり、50mN/mを超えると、基材の表面に塗布した際にハジキ易くなってしまうからである。
【0023】
このハーフミラー膜形成用塗料においても、通常の染料や顔料を用いたインクジェット用インクと同様、水を主体とした溶媒を用いて塗料を作製することができる。この場合、必要に応じてpH調整剤、防腐剤、粘度調整剤、防かび剤等を適宜使用することができる。
また、ノズル詰まりを解消する目的として、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、N−メチル−2−ピロリドン、グリセリン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の蒸発速度の遅い水溶性溶媒もしくは高分子を添加しておくことが望ましい。
【0024】
このハーフミラー膜形成用塗料は、必ずしもバインダー成分を必要するものではないが、基材上への密着性を確保するために、輝度感を損なわない程度に適宜バインダー成分を添加してもよい。
バインダー成分としては、塗料中で金属コロイド粒子の分散を阻害するものでなければよく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチラール樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、アクリル−スチレンエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂、ポリシロキサン、シリカゾル、チタニアゾル等の無機材料を単独もしくは併用して用いることができる。
【0025】
「ハーフミラー膜」
上記のハーフミラー膜形成用塗料を、ピエゾ方式あるいはサーマルジェット方式などのインクジェット法を用いて基材の表面に塗布し、その後、例えば、ドライヤーやエアブローによる乾燥、室温(25℃)放置等、基材に影響を与えない温度である80℃以下にて乾燥することにより、本実施形態のハーフミラー膜を得ることができる。
基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA:アクリル)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の透明なフィルムが好適に用いられる。ここで、平板に塗布可能なインクジェット塗布装置を用いれば、ガラス板、PMMA板、スチレンアクリル(MS)板、PC板等も用いることができる。
【0026】
このハーフミラー膜を保護する目的で、このハーフミラー膜の上にオーバーコート膜を適宜施すことも可能である。オーバーコート膜の材料としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチラール樹脂、アルキッド樹脂、塩ビ樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン、アクリル-スチレンエマルジョン、ポリオレフィンエマルジョン等の熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線(EB)硬化性樹脂、ポリシロキサン、シリカゾル、チタニアゾル等の無機材料を単独もしくは併用して用いることができる。
塗布方法も、通常の塗布方法で特に差し支えは無い。
【0027】
さらに、このハーフミラー膜の意匠性を高めるために、このハーフミラー膜に適宜模様を施すこともできる。模様を施す方法としては、スクリーン印刷法による絵柄模様の形成や転写箔による形成等、通常の方法で差し支えない。
また、インクジェット法により塗出する際に、塗布パターンを描き、かつその膜厚を制御することにより、文字・数字情報、または図柄・画像情報、あるいはこれら文字・数字情報および図柄・画像情報を表示することができる。
【0028】
このハーフミラー膜の輝度感は、下地である基材表面の処理状態によって違ってくる。即ち、基材の表面が粗面、すなわちざらついているものであれば、この粗面に応じてハーフミラー膜が形成されることとなり、アンチグレア感のある膜が形成される。このような表面が粗面の基材上にクリアーなハーフミラー膜を形成するためには、この表面にアンダーコート膜等を形成してもよい。
このハーフミラー膜では、インクジェット法による塗膜の溶剤によるにじみを低減するために、基材上に適宜インク受容層を設けてもかまわない。
【0029】
これらのハーフミラー膜は、例えば、情報機器のディスプレイのロゴや広告の文字、ショーケース用のディスプレイ、自動車の内装や計器類、家庭電化製品の外装や装飾等への適応が可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例1〜3及び比較例1、2により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0031】
「銀コロイド粒子分散液の調製」
30%クエン酸ナトリウム二水和物水溶液90gと、20%硫酸第一鉄七水和物水溶液128gと、純水(イオン交換水)625gを混合し、溶液とした。
この溶液を10℃に保持した状態で、10%硝酸銀水溶液157gを添加し、赤褐色のゾルを得た。このゾルを遠心分離にて水洗し、不純物を除去した後、イオン交換水を加え、20wt%の銀コロイド粒子分散液を得た。
【0032】
「金コロイド粒子分散液の調製」
塩化金酸水溶液(金を10重量%含有)300gを純水100kgに添加し、撹拌した後、0.1wt%の水素化ホウ素ナトリウム6kgを滴下し、金コロイド粒子分散液を合成した。
この金コロイド粒子分散液をイオン交換樹脂を用いて不純物を除去した後、エバポレータにて凝縮し、15wt%の金コロイド粒子分散液を得た。
【0033】
次いで、上記の銀コロイド粒子分散液または金コロイド粒子分散液を用いて、実施例1〜4及び比較例1、2のハーフミラー膜を作製した。
【0034】
「実施例1」
銀コロイド粒子分散液 2.5g
ジプロピレングリコール 20g
純水 77.5g
を混合し、インクジェット用塗料Aとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Aを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0035】
「実施例2」
銀コロイド粒子分散液 1.5g
ジプロピレングリコール 20g
純水 78.5g
を混合し、インクジェット用塗料Bとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Bを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0036】
「実施例3」
銀コロイド粒子分散液 10g
ジプロピレングリコール 20g
純水 70g
を混合し、インクジェット用塗料Cとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Cを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0037】
「実施例4」
金コロイド粒子分散液 13.3g
ジプロピレングリコール 20g
純水 66.7g
を混合し、インクジェット用塗料Dとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Dを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0038】
「比較例1」
銀コロイド粒子分散液 0.125g
ジプロピレングリコール 20g
純水 79.875g
を混合し、インクジェット用塗料Dとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Dを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0039】
「比較例2」
銀コロイド粒子分散液 37.5g
ジプロピレングリコール 20g
純水 42.5g
を混合し、インクジェット用塗料Eとした。
次いで、市販のインクジェットプリンタ(PX-V600 セイコーエプソン社製)のカートリッジに、このインクジェット用塗料Eを注入し、はがき大のPETフィルム上に文字パターンおよび評価用膜を塗布した。
【0040】
「評価」
以上により得られた実施例1〜4及び比較例1,2それぞれのハーフミラー膜のインクジェット適性、透過率、反射率、膜厚の各評価項目について、次の方法または装置を用いて評価した。
(1)インクジェット適性
連続して50枚塗布した後のインクジェットのノズル詰まり状態を目視にて確認した。ここでは、ノズル詰まりが生じない場合を「○」、ノズル詰まりが生じた場合を「×」とした。
【0041】
(2)透過率
日立製作所社製「分光光度計U−3400」を用いて、評価用膜の部分の380〜780nmの波長における透過率を測定し、平均値を算出した。
(3)反射率
日立製作所社製「分光光度計U−3400」を用いて、アルミニウム蒸着膜を対照として評価用膜の部分の380〜780nmの波長における反射率を測定し、平均値を算出した。
(4)膜厚
塗膜の膜厚を触針式の膜厚測定計(Tencor)にて測定した。
評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の半透過・半反射膜は、1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有した塗料をインクジェト法により塗布することにより、大型の製造装置を必要とせず、簡便かつ容易に塗膜が得られ、しかも、材料の使用効率が高いものであるから、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置に適用可能であることはもちろんのこと、自動車、建築物等の窓材等、ハーフミラー膜が適用される様々な工業分野においても、その効果は大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次粒子径が1nm以上かつ50nm以下の金属コロイド粒子を含有してなり、
この金属コロイド粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウムの群から選択された1種または2種以上を含有してなることを特徴とする半透過・半反射膜形成用塗料。
【請求項2】
前記塗料中の金属の含有量は、この塗料の全体量の0.1重量%以上かつ5重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の半透過・半反射膜形成用塗料。
【請求項3】
前記塗料の粘度は1mPa・s以上かつ50mPa・s以下であり、かつその表面張力は15mN/m以上かつ50mN/m以下であることを特徴とする請求項1または2記載の半透過・半反射膜形成用塗料。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の半透過・半反射膜形成用塗料をインクジェット法を用いて基材の表面に塗布してなることを特徴とする半透過・半反射膜。
【請求項5】
前記塗布により形成される塗膜の膜厚は0.01μm以上かつ0.5μm以下の範囲で制御され、半透過・半反射膜とされていることを特徴とする請求項4記載の半透過・半反射膜。
【請求項6】
請求項4または5記載の半透過・半反射膜を備えてなることを特徴とする物品。

【公開番号】特開2006−124582(P2006−124582A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317124(P2004−317124)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】