説明

卓上式電子計算機

【課題】卓上式電子計算機の表示部を、所望の場合には、その操作者以外の者が視認できないようにする機能を、選択的に、かつ、卓上式電子計算機の使い勝手や意匠性を損なうことなく、卓上式電子計算機に備えさせる。
【解決手段】略長方形の板状をなすと共に、その長さ方向に亘る一辺部4fを回動中心として、卓上式電子計算機の前面部1に対し、この卓上式電子計算機の表示部2を覆う第一位置とこの表示部2の側方に位置される第二位置との間に亘る回動可能に組み合わされて、前記第一位置においてこの卓上式電子計算機の操作者以外の者の前記表示部2の視認を阻止するように機能する偏向カバー体4を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、卓上式電子計算機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
卓上式電子計算機は、その前面部に、複数のキーからなる入力部と、入力した計算式やその計算結果などを表示する表示部とを備えている。一般に液晶ディスプレイなどにより構成される表示部は、入力部の操作者のみならず卓上式電子計算機の周囲にいるそれ以外の者も視認可能である。しかるに、この表示部への表示内容が、このような操作者以外の者に視認されることが、好ましくない場合も少なからずある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、卓上式電子計算機の表示部を、所望の場合には、その操作者以外の者が視認できないようにする機能を、選択的に、かつ、卓上式電子計算機の使い勝手や意匠性を損なうことなく、卓上式電子計算機に備えさせる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、卓上式電子計算機を、略長方形の板状をなすと共に、その長さ方向に亘る一辺部を回動中心として、卓上式電子計算機の前面部に対し、この卓上式電子計算機の表示部を覆う第一位置とこの表示部の側方に位置される第二位置との間に亘る回動可能に組み合わされて、前記第一位置においてこの卓上式電子計算機の操作者以外の者の前記表示部の視認を阻止するように機能する偏向カバー体を備えてなるものとした。
【0005】
かかる構成によれば、偏向カバー体を第一位置に位置づけさせることにより、入力した計算式やその計算結果などを表示する表示部を、卓上式電子計算機の操作者以外の者が視認できないようにすることができると共に、第一位置にある偏向カバー体を回動操作して第二位置に位置づけることにより、このような視認の阻止が必要とされない場合にはかかる表示部をどの向きからも見やすい状態に置くことができる。
【0006】
前記卓上式電子計算機の前面部に、偏向カバー体の長さと略等しい長さを持つと共に、偏向カバー体の幅の約二倍の幅を備えた偏向カバー体の収容凹所を形成させておき、この収容凹所の幅方向略中程の位置において偏向カバー体を回動可能に組み合わせるようにすると共に、この収容凹所の幅方向略中程の位置を挟んだ一方側に表示部を備えさせるようにしておくこともある。このようにした場合、前記第一位置及び第二位置において、偏向カバー体が前記前面部から突き出さないようにすることができる。
【0007】
前記偏向カバー体の長さ方向に亘る他辺部に、この他辺部から突き出す摘み部を形成させておくと共に、卓上式電子計算機の前面部に、収容凹所に連通して偏向カバー体の第一位置において前記摘み部を余裕を持って納める大きさの第一の窪みと、収容凹所に連通して偏向カバー体の第二位置において前記摘み部を余裕を持って納める大きさの第二の窪みとを備えさせておくこともある。このようにしておけば、偏向カバー体が前記第一位置にある状態において第一の窪み内にある摘み部を摘んでこの偏向カバー体を第二位置に向けて回動操作し易く、また、偏向カバー体が前記第二位置にある状態において第二の窪み内にある摘み部を摘んでこの偏向カバー体を第一位置に向けて回動操作し易くすることができる。
【0008】
また、前記第一位置において、偏向カバー体に形成させた被係合部に対し係脱可能に係合し合う係合部を収容凹所に形成させておくこともある。このようにした場合、偏向カバー体が第一位置にある状態を解除可能に安定的に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、卓上式電子計算機の前面部に回動可能に組み合わされた偏向カバー体によって、卓上式電子計算機の表示部を、所望の場合に、その操作者以外の者が視認できないようにする機能を、卓上式電子計算機の使い勝手や意匠性を損なうことなく、卓上式電子計算機に備えさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は卓上式電子計算機の要部の分離斜視図である。
【図2】図2は卓上式電子計算機の要部正面図であり、偏向カバー体は第一位置にある。
【図3】図3は図2におけるA−A線断面図である。
【図4】図4は図2におけるB−B線断面図である。
【図5】図5は卓上式電子計算機の要部正面図であり、偏向カバー体は第二位置にある。
【図6】図6は図5におけるC−C線断面図である。
【図7】図7は図5におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図7に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる卓上式電子計算機は、入力した計算式やその計算結果などを表示する表示部2を、卓上式電子計算機の操作者以外の者が視認できないようにする機能(以下、この機能が発揮されている状態をセキュリティ状態と称する。)を備えると共に、この視認の阻止が必要とされない場合にはかかる表示部2をどの向きからも見やすい状態に置くことができるものであり、(以下、この状態を通常状態と称する。)このセキュリティ状態と通常状態を卓上式電子計算機の使い勝手や意匠性を損なうことなく、容易に切り替え可能としたものである。
【0012】
かかるセキュリティ状態においては、典型的には、表示部2に直角に交わる仮想の線分からこの表示部2に45度の角度を作る仮想の線分までの範囲においてこの表示部2を上方から見た場合にはこの表示部2に表示された計算結果などが視認でき、この範囲外ではこれらを視認できないようにする。
【0013】
図示の例では、卓上式電子計算機は、略長方形の板状を呈している。その前面部1には、図中符号3aで示す複数のキーからなる入力部3と、前記表示部2とが形成されている。入力部3は、前記前面部1の下端から略3分の2の範囲に形成されており、かかる前面部1の上側の残りの範囲に前記表示部2が設けられている。
【0014】
かかる卓上式電子計算機は、略長方形の板状をなす偏向カバー体4を備えている。図示の例では、かかる偏向カバー体4は、透明の合成樹脂から構成される略長方形の板状主体4aの表面4bに、偏向フィルム4eを貼ってこの表面4bの縁部以外の大部分を偏向フィルム4eで覆うことで構成されている。図示の例では、板状主体4aの表面4bには、偏向フィルム4eの外郭形状に倣うと共に、その厚さ寸法分の深さを備えた凹み4cが形成されており、この凹み4c内において板状主体4aに偏向フィルム4eを貼って偏向カバー体4を構成させている。
【0015】
かかる偏向カバー体4は、その長さ方向に亘る一辺部4fを回動中心として、卓上式電子計算機の前面部1に対し、この卓上式電子計算機の表示部2を覆う第一位置とこの表示部2の側方に位置される第二位置との間に亘る回動可能に組み合わされている。そして、かかる偏向カバー体4は、前記第一位置においてこの卓上式電子計算機の操作者以外の者の前記表示部2の視認を阻止するように機能するものとなっている。
【0016】
これによりこの実施の形態にあっては、偏向カバー体4を第一位置に位置づけさせることにより前記セキュリティ状態を作り出すことができると共に、第一位置にある偏向カバー体4を回動操作して第二位置に位置づけることにより前記通常状態に容易に移行させることができる。
【0017】
この実施の形態にあっては、卓上式電子計算機の前面部1に、偏向カバー体4の長さと略等しい長さを持つと共に、偏向カバー体4の幅の約二倍の幅を備えた偏向カバーの収容凹所5が形成されている。収容凹所5の長さ方向は前記前面部1の幅方向に沿うようになっている。そして、この収容凹所5の幅方向略中程の位置5aにおいて偏向カバー体4が回動可能に組み合わされている。また、この収容凹所5の前記幅方向略中程の位置5aの一方、図示の例では、この幅方向略中程の位置5aを挟んだ前記入力部3側に卓上式電子計算機の幅方向に長さ側を沿わせるようにした長方形状の外郭形状を備えた表示部2が備えられている。これにより、この実施の形態にあっては、前記第一位置及び第二位置において、偏向カバー体4が前記前面部1から突き出さないようにすることができる。
【0018】
偏向カバー体4の前記一辺部4fには、前記板状主体4aの裏面4dから突き出すリブ状部4gが形成されていると共に、このリブ状部4gにおける偏向カバー体4の幅側に位置される端部にはそれぞれ、軸突起4hが形成されている。前記収容凹所5における前記幅方向略中程の位置5aにはその内壁5bにかかる軸突起4hに対する軸孔5cが形成されている。図示の例では、偏向カバー体4の前記軸突起4hを収容凹所5側の対応する軸孔5cに納めさせて、卓上式電子計算機の前面部1に偏向カバー体4をこの卓上式電子計算機の幅方向に回動中心軸を沿わせるようにして回動可能に組み合わせている。偏向カバー体4は、その板状主体4aの裏面4dを表示部2に向き合わせる第一位置(図2の位置)と、この板状主体4aの表面4bを収容凹所5における表示部2の形成されていない箇所の底面5dに向き合わせた第二位置(図5の位置)との間に亘る、約180度の範囲での回動可能に前記前面部1に組み合わされている。
【0019】
図示の例では、収容凹所5における表示部2の形成側の底面5dは、これが形成されていない底面5dよりも上方に位置されており、両者の間には段差5eが形成されると共に、収容凹所5のこの表示部2の形成側は偏向カバー体4の板状主体4aの厚さ相当分の深さを持つようになっている。収容凹所5における表示部2の形成されていない箇所の深さは偏向カバー体4の板状主体4aの厚さに前記リブ状部4gの突きだし寸法を加えた寸法相当分の深さを持つようになっている。前記軸突起4h及び軸孔5cからなる偏向カバー体4の回動組み合わせ位置は、前記段差5eよりも表示部2の形成されていない側に位置されており、第一位置においては、収納凹所5の底面5dに偏向カバー体4の板状主体4aの裏面4dが密着するようになっている。偏向カバー体4の板状主体4aに貼られた偏向フィルム4eは、この第一位置において、表示部2の全体を上方から覆う大きさを持つように構成されている。
【0020】
また、この実施の形態にあっては、かかる偏向カバー体4の長さ方向に亘る他辺部4iに、この他辺部4iから突き出す摘み部4jが形成されている。図示の例では、かかる他辺部4iの長さ方向略中程の位置に側方に突き出す突起状をなす摘み部4jが形成されている。それと共に、卓上式電子計算機の前面部1に、収容凹所5に連通して偏向カバー体4の第一位置において前記摘み部4jを余裕を持って納める大きさの第一の窪み6と、収容凹所5に連通して偏向カバー体4の第二位置において前記摘み部4jを余裕を持って納める大きさの第二の窪み7とが備えられている。図示の例では、かかる第一の窪み6及び第二の窪み7はいずれも、仮想の円をこれに対する仮想の接線に平行な仮想の線分をもって切断してなるこの円の一部に倣った入り口縁形状を備えており、かかる切断側において収容凹所5に連通している。かかる第一の窪み6及び第二の窪み7はいずれも、収容凹所5との連通側から離れるに連れて浅くなるように形成されている。これにより、この実施の形態にあっては、偏向カバー体4が前記第一位置にある状態において第一の窪み6内にある摘み部4jを摘んでこの偏向カバー体4を第二位置に向けて回動操作し易く、また、偏向カバー体4が前記第二位置にある状態において第二の窪み7内にある摘み部4jを摘んでこの偏向カバー体4を第一位置に向けて回動操作し易くなっている。
【0021】
また、この実施の形態にあっては、前記第一位置において、偏向カバー体4に形成させた被係合部4kに対し係脱可能に係合し合う係合部5fが収容凹所5に形成されている。これにより、この実施の形態にあっては、偏向カバー体4が第一位置にある状態を解除可能に安定的に維持できるようになっている。
【0022】
図示の例では、収容凹所5の左右の内壁5bにおける収容凹所5の下側の内壁5bとの隅部に近接した箇所にそれぞれ収容凹所5の入り口縁との間にわずかな間隔を開けて小孔5gが形成されている一方で、偏向カバー体4の板状主体4aの左右の辺部における前記他辺部4iとの隅部に近接した箇所にそれぞれ前記小孔5gに入り込み可能な大きさの突起4mが形成されている。かかる左右の突起4m、4m間の距離は収容凹所5の左右の内壁5b間の距離よりもやや大きくなるようにしてある。そして、第二位置にある偏向カバー体4を第一位置に向けて回動させる過程で、主として収容凹所5の入り口縁と小孔5gとの間に位置される箇所の弾性変形によりこの小孔5gに前記突起4mが入り込む位置までの偏向カバー体4の回動が許容され、この位置つまり第一位置まで偏向カバー体4が回動されると前記箇所の弾性復帰により小孔5gに突起4mが入り込み係合されるようになっている。一方、第一位置にある偏向カバー体4に対し前記摘み部4jを利用して第二位置に向けて回動させる操作力を作用させると、前記箇所が再び弾性変形されて前記小孔5gから突起4mが抜け出して前記係合が解かれるようになっている。すなわち、この実施の形態にあっては、かかる小孔5gが前記係合部5fとして機能し、かかる突起4mが前記被係合部4kとして機能するようになっている。
【0023】
また、この実施の形態にあっては、収容凹所5の左右の内壁5bにおける収容凹所5の上側の内壁5bとの隅部に近接した箇所にそれぞれ収容凹所5の入り口縁において外方に開放されて底面5d側に続く溝5hが形成されている。左右のこの溝5hの溝底間の距離は偏向カバー体4の左右の突起4m、4m間の距離と略等しくなっていると共に、前記第二位置において偏向カバー体4の左右の突起4m、4mがそれぞれ対応する溝5hに入り込むようになっている。これにより、この実施の形態にあっては、かかる溝5hの溝底と突起4mとの接触によって、偏向カバー体4が第二位置にある状態も維持できるようになっている。
【符号の説明】
【0024】
1 前面部
2 表示部
4 偏向カバー体
4f 一辺部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略長方形の板状をなすと共に、その長さ方向に亘る一辺部を回動中心として、卓上式電子計算機の前面部に対し、この卓上式電子計算機の表示部を覆う第一位置とこの表示部の側方に位置される第二位置との間に亘る回動可能に組み合わされて、前記第一位置においてこの卓上式電子計算機の操作者以外の者の前記表示部の視認を阻止するように機能する偏向カバー体を備えてなることを特徴とする卓上式電子計算機。
【請求項2】
卓上式電子計算機の前面部に、偏向カバー体の長さと略等しい長さを持つと共に、偏向カバー体の幅の約二倍の幅を備えた偏向カバー体の収容凹所が形成されており、
この収容凹所の幅方向略中程の位置において偏向カバー体が回動可能に組み合わされ、
この収容凹所の幅方向略中程の位置を挟んだ一方側に表示部が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の卓上式電子計算機。
【請求項3】
偏向カバー体の長さ方向に亘る他辺部に、この他辺部から突き出す摘み部が形成されていると共に、
卓上式電子計算機の前面部に、収容凹所に連通して偏向カバー体の第一位置において前記摘み部を余裕を持って納める大きさの第一の窪みと、収容凹所に連通して偏向カバー体の第二位置において前記摘み部を余裕を持って納める大きさの第二の窪みとが備えられていることを特徴とする請求項2に記載の卓上式電子計算機。
【請求項4】
第一位置において、偏向カバー体に形成させた被係合部に対し係脱可能に係合し合う係合部が収容凹所に形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の卓上式電子計算機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53827(P2012−53827A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197703(P2010−197703)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(599041411)株式会社アスカ (8)
【Fターム(参考)】