説明

単一のインダクタを用いたスイッチモード酸素濃度計LED駆動

複数の発光体(50)を駆動するために単一のインダクタ(L6)を使用する、酸素濃度計のための発光体駆動回路。インダクタは、スイッチング回路(40)を介して、コンデンサのような複数のエネルギーストレージ回路に接続される。これらは、同等のインダクタを使用して、交互に充電される。次に、コンデンサは、同等のインダクタを介してそれらの対応する発光体に対して、交互に放電される。更に、LED駆動回路の磁化率は、インダクタにおける磁束キャンセリングを使用することによって、減少される。一実施形態においては、環状インダクタは、幾何的対称性およびその磁束を用いて使用される。他の実施形態においては、デュアルコアクローズドボビンシールドインダクタが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃度計に関し、より詳細にはパルス酸素濃度計におけるLED駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス酸素濃度計は典型的には、動脈血におけるヘモグロビンの血中酸素飽和度、組織に供給する個々の脈拍の血液量、および、患者の個々の心拍に対応する脈拍の速度を含む(それらに限定されるわけではない)血液の様々な化学的特性を計測するために使用される。これらの特性の計測は、非侵襲センサの使用によって達成される。その非侵襲センサは、血液が組織を灌流する患者の組織の一部に光を散乱し、そのような組織における光の吸収を光電測光にて感知する。様々な波長において吸収される光の量は、計測される血液成分の量を計算するために使用される。
【0003】
組織に散乱された光は、血液中に存在する血液成分の量を示す量において、血液によって吸収された一つ以上の波長として選択される。組織に散乱された、透過光線の量は、組織および関連する光の吸収における血液成分の変化する量に従って変化する。血中酸素レベルを計測するために、そのようなセンサは、典型的には、血中酸素飽和度を計測するための周知の技術に従い、少なくとも二つの異なる波長の光を生成するように適合される光源、および、それらの波長の両方に感度の高い光検出器を提供される。
【0004】
周知の非侵襲センサは、指、耳、または頭皮などの体の一部に固定される装置を含む。動物や人間においては、これらの体の部分の組織は血液によって灌流され、その組織の表面はセンサに対して、容易にアクセス可能である。
【0005】
光源、典型的に発光ダイオード(LED)は、それらを活性化させるために電流を用いて駆動される必要がある。要求される電流がかなりの量のため、酸素濃度計によって消費される電力の減少を妨げ得る。一解決法は、特許文献1に示される。そこにおいては、インダクタ・コンデンサ回路は、最初に第1のスイッチ位置において充電を格納し、次いで第2のスイッチ位置において、その格納された充電をLEDに運ぶために使用される。2つの異なるインダクタ・コンデンサ回路が使用され、各LEDに対して1つ使用される。この特許の回路において要求される構成要素の数を減少することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第6,226,539号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の発光体を駆動するために単一のインダクタを使用する、酸素濃度計のための発光体駆動回路を提供する。インダクタは、スイッチング回路を介して、コンデンサのような複数のエネルギーストレージ回路に接続される。これらは、同等のインダクタを使用して、交互に充電される。次に、コンデンサは、同等のインダクタを介してそれらの対応する発光体を活性化させるために、交互に放電される。
【0007】
本発明の他の局面においては、LED駆動回路の磁化率は、インダクタにおける磁束キャンセリングを使用することによって、減少される。一実施形態においては、環状インダクタは、その磁束における幾何的対称性を用いて使用される。他の実施形態においては、デュアルコアクローズドボビンシールドインダクタ(dual core closed bobbin shielded inductor)が使用される。この実施形態は、外部の磁界の効果をキャンセルするために使用される、直列の両コアの巻線を有する。
【0008】
本発明の本質および利点の更なる理解のために、添付の図面に関連する以下の説明を参照されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(酸素濃度計システム)
図1は、本発明を具体化する酸素測定システムの実施形態を示す。センサ10は、赤および赤外線LED、ならびに光検出器を含む。これらは、ケーブル12によって、基板14へ接続される。LED駆動電流は、LED駆動インターフェース16によって提供される。センサからの、受信された光電流は、I−Vインターフェース18に提供される。IRおよび赤電圧は、次いで、本発明を具体化する、シグマ−デルタインターフェース20に提供される。シグマ−デルタインターフェース20の出力は、マイクロコントローラ22に提供される。マイクロコントローラ22は、プログラムのためのフラッシュメモリ、および、データのためのSRAMメモリを含む。プロセッサはまた、フラッシュメモリ26に接続されるマイクロプロセッサチップ24を含む。最後に、クロック28が使用され、センサ10におけるデジタル較正へのインターフェース30が提供される。別個のホスト32は、処理された情報を受信し、および、アナログ表示を提供するためのライン34上にて、アナログ信号を受信する。
【0010】
(LED駆動回路)
図2は、図1のLED駆動インターフェース16の一部を形成する、本発明の実施形態に従った、LED駆動回路の回路図である。電圧調節器36は、全体の酸素濃度計回路網のための電圧供給とは別の電圧を提供する。出力は、抵抗R89およびR90のフィードバック抵抗ディバイダによってレベルが設定されて、ライン38上に4.5ボルト信号として提供される。ライン38上の電圧は、FETトランジスタQ11に提供され、次いでインダクタL6に提供される。インダクタL6に流れる電流は、それぞれが赤およびIR LEDのための充電を格納する、コンデンサC65およびC66の1つにスイッチ40によって提供される。ライン42上の赤/IR制御信号は、酸素濃度計プロセッサの管理下においてスイッチ位置を選択する。ライン44上の制御信号LED PWMゲートは、トランジスタスイッチQ11のスイッチングを制御する。
【0011】
コンデンサが一度充電されると、ライン44上の制御信号はスイッチQ11をターンオフし、電流は、コンデンサC65またはC66のどちらかからそれぞれ、スイッチ40およびインダクタL6を介して、トランジスタQ5およびQ6を介して、赤アノードライン46またはIRアノードライン48のどちからに提供される。信号「赤ゲート」がトランジスタQ5をターンオンする一方、その反転の「/赤ゲート」はトランジスタQ7をターンオフする。これは、電流がIRアノードを介してトランジスタQ8におよび抵抗R10を介して接地に戻って、赤アノードライン46を介して背中合わせ(back to back)のLED50に電流を提供する。トランジスタQ8が信号「/IRゲート」によってターンオンされる一方、この信号の反転である「IRゲート」はトランジスタQ6をターンオフする。IRアノードが駆動される場合、信号はリバースされ、「IRゲート」および「赤ゲート」信号ならびにそれらの逆は状態を変化させる。それによって電流は、トランジスタQ6を介してIRアノード48に提供され、赤アノード46およびトランジスタQ7を介して、レジスタR10および接地に戻る。「LED電流感知」信号は、本発明に関連性のない較正目的のために読み取られる。
【0012】
コンデンサC65またはC66からの電流が、インダクタL6を介してLEDに提供され、電流が所望の時間においてスイッチオフされた場合、遷移の間の残りの電流がコンデンサC64に落とされ得るように、トランジスタQ11はターンオンされる。これにより、FETトランジスタスイッチングが瞬間的でない事実の解決に取り組む。次に、C64は、コンデンサが再充電されている場合、Q11およびインダクタL6を介して、その電流をコンデンサに落とす。
【0013】
抵抗R38およびコンデンサC67は、信号スパイクを防ぎ、滑らかな遷移を提供するために、インダクタL6と並列に接続される。L6に接続されるのは、信号をサンプリングし、それらを増幅器56を介して、プロセッサによって読み取られるライン58上の「LED電流」信号に提供するためのライン54上のLEDサンプルホールド信号によって制御されるスイッチ52を有するサンプリング回路である。演算増幅器56は、4.5ボルトと接地との間において動作する。従って、接地よりわずか上の0.2ボルトである電圧レファレンスは、ピン3における電圧レファレンスとして提供される。積分コンデンサC68は、増幅器56と並列に提供される。スイッチ60は、コンデンサをサンプル間においてショートするようにスイッチを動作するために、「クリアLEDサンプル」信号に応答する。
【0014】
サンプルアンドホールド回路は、電流を決定するためにコンデンサC69とインダクタL6との間に、ノードT18において電圧を計測する。コンデンサC69は、コンデンサC65およびC66の値の1/1000である。従って、ライン58上の増幅器56の出力において計測され得る電圧を提供するために、スイッチ52を介して積分コンデンサC68に送られ得る比例電流は、C69を介して提供される。コンデンサ65および66に送られる電力の量を選択的に変化させるために、プロセッサがトランジスタQ11に送られるパルスの幅を変化させて、ライン58上のプロセッサによって計測される電圧は、フィードバックとして使用され、やがてLED50に放電される。プロセッサの中のPI(比例積分)ループは、Q11においてPWM信号を制御する。これは、LED強度の正確な制御を可能にし、望まれた場合、所望の制限を超えずに強度を最大化することも可能にする(患者の火傷を回避するために等)。
【0015】
図の左下は、所定の場合において電圧調節器36をターンオフするためにマイクロプロセッサによって使用される、「4.5vLEDディスエーブル」信号を示す。例えば、プラグインされている新しいセンサにおけるショートを捜している診断器は、LEDラインに問題がある場合、電圧調節器をターンオフする。
【0016】
図3は、図1のLED駆動インターフェース16にある、プログラムされたロジック62に接続される、図1からのプロセッサ22を示す。プログラムされたロジック62は、クロックのプロセッサ、同調パルス、およびパルス幅信号からの基本タイミング信号に応答して、図2の回路によって使用される異なる制御信号を提供する。
【0017】
従って、本発明は、2つのインダクタの必要性を消去するために、インダクタとコンデンサとの間のスイッチ位置を移動させることによって、米国特許第6,226,539号に示される回路の改良を提供する。これは、2つの代わりに1つのインダクタのみを要求して、部品数を減少させるだけではなく、赤およびIR駆動電流が同等のインダクタを使用するため、赤とIR駆動電流との間により良いマッチングをも提供する。
【0018】
本発明の他の局面において、LED駆動回路の磁気干渉に対する磁化率が減少される。この磁気干渉は、検出されたプレス(pleth)波形を変形させ得る。これは、インダクタにおいてキャンセリングしている磁束を使用することによって最小化される。一実施形態において、これは図4に示される環状インダクタである。環状インダクタは、その磁束において幾何的対称性を有する。図5および図6に示されるように、他の実施形態は、デュアルコアクローズドボビンシールドインダクタを使用する。直列の両コアの巻線は、外部の磁界の効果をキャンセルするために使用される。これらの磁束キャンセリングインダクタは、図2の回路または従来技術のデュアルインダクタ実施形態のどちらにおいても使用され得る。図5は、円柱72におけるボビン70を有するデュアルコアインダクタを示す。ワイヤは、図6に示されるように、ギャップ76を介して巻かれる。第1の巻線78が時計回りである一方、第2の巻線80は反時計回りである。平面図82も示される。理想的には、一実施形態における合成インダクタンスは680μHである。
【0019】
図2の実施形態において示されるように、本発明は、Hブリッジトポロジを介して、背中合わせのLEDへの電流の多重化を可能にする。代替的に、異なる数の負荷が提供され得る。本発明はN個の負荷に対してスケーラブルである。本発明は、支持構成要素の減少、構成要素の選択、ならびに「無損失」コンデンサおよびインダクタストレージ装置の性質を通じて、かなりの効率を提供する。図2の回路は、LEDに渡る順電圧ドロップの範囲を操作し得る。提供される電圧は、LED電圧ドロップに従って自動的に変化し、必要以上に電力を送出しない。
【0020】
電流フィードバックが、絶縁を提供する、各ストレージコンデンサ(C65およびC66)からの容量性電流ディバイダによって提供され、回路はプロセッサにおけるPIループを介してダイナミックに制御される。フィードバックは、従来のインライン感知抵抗R10で較正され得る。更に、この技術は、サンプリング期間の間の最適な信号−ノイズに対するピーク電流の調整を可能にする。
【0021】
アップストリーム線形調節器36の追加が、電力供給排除能力を強化する一方、PIループは追加の電力供給不感を提供する(ドリフト、P−P、サージ等するために)。
【0022】
当業者によって理解されるように、本発明は、その本質的特性から逸脱することなく、他の特定の形式において具体化され得る。例えば、2つの駆動ラインの代わりに、FETトランジスタスイッチがインダクタに接続される他のレグを追加することによって、3つの駆動ラインが提供され得る。更に、これは、並列に接続される4つ以上のレグに対してスケーラブルであり得、Q6、Q8のレグおよびQ5、Q7のレグも同様である。従って、前述の記載は、例示することを意図されており、請求の範囲において説明される本発明の範囲を制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化する酸素濃度計のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に従った、LED駆動回路の回路図である。
【図3】図2の回路に対するタイミングおよび制御信号を生成するためのロジックの一実施形態のブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態において使用される環状インダクタの図である。
【図5】本発明の一実施形態に従った、デュアルコアインダクタの図である。
【図6】本発明の一実施形態に従った、デュアルコアインダクタの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃度計のための発光体駆動回路であって、該回路は、
電圧生成回路と、
該電圧生成回路に結合されるインダクタと、
該インダクタの第1のノードに結合される第1のスイッチング回路と、
該インダクタからの電流が、該第1のスイッチング回路によって第1および第2のエネルギーストレージ回路のうちの1つに導かれ得るように、該第1のスイッチング回路に接続される第1および第2のエネルギーストレージ回路と、
該インダクタの第2のノードに結合される第2のスイッチング回路と、
該第1および第2のエネルギーストレージ回路からのエネルギーが、第1および第2の発光体駆動ラインに交互に結合され得るように、該第2のスイッチング回路に接続される第1および第2の発光体駆動ラインと
を備える、回路。
【請求項2】
前記第1および第2のエネルギーストレージ回路が、第1および第2のコンデンサを含む、請求項1に記載の回路。
【請求項3】
前記駆動ラインが、背中合わせである発光体を駆動するように構成される、請求項1に記載の回路。
【請求項4】
前記第2のスイッチング回路が、4つのトランジスタを含むHブリッジ駆動回路である、請求項3に記載の回路。
【請求項5】
前記電圧生成回路が、前記酸素濃度計の残りのための供給電圧とは別の電圧調節器である、請求項1に記載の回路。
【請求項6】
前記インダクタと並列の抵抗およびコンデンサをさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項7】
前記インダクタが、磁束キャンセリングインダクタである、請求項1に記載の回路。
【請求項8】
前記インダクタが環状インダクタである、請求項7に記載の回路。
【請求項9】
前記インダクタが、デュアルコアクローズドボビンシールドインダクタである、請求項7に記載の回路。
【請求項10】
前記インダクタの前記第2のノードに接続されるサンプルアンドホールド回路をさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項11】
少なくとも第3のエネルギーストレージ回路をさらに備える、請求項1に記載の回路。
【請求項12】
酸素濃度計のためのLED回路であって、該回路は、
電圧生成回路と、
該電圧生成回路に結合されるインダクタと、
該インダクタの第1のノードに結合される第1のスイッチング回路と、
該インダクタからの電流が、該第1のスイッチング回路によって第1および第2のコンデンサのうちの1つに導かれ得るように、該第1のスイッチング回路に接続される第1および第2のコンデンサと、
該インダクタの第2のノードに結合される4つのトランジスタを含むHブリッジ駆動スイッチング回路と、
該第1および第2のコンデンサからのエネルギーが、第1および第2の発光体駆動ラインに交互に結合され得るように、該Hブリッジの真ん中において、背中合わせの構成におけるLEDのための第1および第2の発光体駆動ラインと
を備える、回路。
【請求項13】
酸素濃度計のための発光体駆動回路であって、該回路は、
電圧生成回路と、
第1および第2のエネルギーストレージ回路と、
該電圧生成回路および該エネルギーストレージ回路の少なくとも1つに結合される磁束キャンセリングインダクタと、
発光体のためのラインを駆動するために、最初に電流を該エネルギーストレージ回路に導き、次いで該第1および第2のエネルギーストレージ回路からエネルギーを提供するように構成される、スイッチング回路網と
を備える、回路。
【請求項14】
前記インダクタが環状インダクタである、請求項12に記載の回路。
【請求項15】
前記インダクタが、デュアルコアクローズドボビンシールドインダクタである、請求項12に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−525292(P2007−525292A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501031(P2007−501031)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/006207
【国際公開番号】WO2005/082239
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(304036651)ネルコアー ピューリタン ベネット インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】