説明

単一特異性ポリペプチド試薬

本発明は、抗体の少なくとも3つの機能的な個々のドメインモジュールを含む新規な抗原結合タンパク質構築体、すなわち「モジュボディ」に関する。このモジュボディは、抗体の可変重鎖領域のドメイン(VH)、抗体の可変軽鎖領域のドメイン(VL)を含み、抗原に単一特異的に結合する。このモジュボディは、抗体の定常領域のドメインをさらに含む。このモジュボディは、診断または治療用に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体の少なくとも3つの機能性単一ドメインモジュールを含有する新規な抗原結合タンパク質構築体、すなわち「モジュボディ(modubody)」に関する。このモジュボディは、抗体の重鎖可変領域のドメイン(VH)、抗体の軽鎖可変領域のドメイン(VL)を含有し、抗原に単一特異的に結合する。このモジュボディは、抗体の定常領域のドメインをさらに含有する。このモジュボディは、診断または治療用に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
抗体の構造
抗体は、血漿糖タンパク質であり、これは、ジスルフィド架橋によって接続した複数のポリペプチド鎖からなる。標準的な抗体は、2本の同一免疫グロブリン(Ig)重鎖および2本の同一軽鎖からなる。両方の抗体鎖は、約110個のアミノ酸残基の長さを有する異なるタンパク質ドメインからなり、このドメインは、特徴的な免疫グロブリンフォールドの形態のβシートからなる。重鎖は、1つの可変(VH)ドメインと、3つまたは4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CH4)とからなる。軽鎖は、1つの可変(VL)ドメインと、1つの定常(CL)ドメインとからなる。上記重鎖および軽鎖の可変部分、特に、超可変相補性決定領域(CDR)は、抗原特異性に寄与する。免疫系により、非常に異なる抗原に対する抗体の高度な多様性が実現する。抗体は、異なるクラス、例えば、IgM、IgA、IgG、IgE、IgDに属し得る。
【0003】
抗体フラグメントおよび部分構造
抗体フラグメントは、酵素的切断または組換えプロセスによって得ることができる。抗原認識機能を備えたFabフラグメントは、ジスルフィド架橋を介して共に接続した、上記重鎖のVH-CH1ドメインと、上記軽鎖のVL-CLドメインとを含有するが、Fvフラグメントは、重鎖および軽鎖可変領域のみを含む。しかし、複数のタンパク質サブユニットからなるこれらのフラグメントは、複雑なプロセスによってしか、許容可能な収率で生理活性な形態に調製することができない(Readら(2007)、Appl. Environ. Microbiol. 73: 5088〜5096)。
【0004】
単鎖Fvフラグメント(scFv)は、ペプチドリンカーを介した、VHドメインとVLドメインとが共有結合した形態の、小さな、約28kDaの重鎖抗原結合部分構造である(Huら(1996)、Cancer Res 56: 3055〜3061)。しかし、これらの構造のフォールディング効率、不十分なことのある安定性および毒性は、頻繁に、細菌発現系における生理活性なscFvの調製の収率を制限する(Niebaら(1997)、Protein Eng 10: 435〜444)。
【0005】
ミニボディ(ミニ抗体)という用語は、CH3ドメインの補助によりアセンブリして、ヒンジ領域のジスルフィド架橋を介して共有結合した2価分子を形成する、CH3ドメインと融合した重鎖のヒンジ領域とscFvとの約75kDaの重鎖キメラ分子を表す(Wu、EP0627932B1)。CH3ドメインは、ホモ二量体(Dubelら、Biol. Unserer Zeit、第34巻、第6号、372〜379頁、2004参照)生成用の二量体化ドメインとして働く。しかし、大腸菌(E. coli)中での発現時、これらの分子は、ヒンジ領域において、低い発現率およびタンパク質分解を示す(Huら(1996)、Cancer Research 56: 3055〜3061)。
【0006】
ミニボディと同様に、ダイアボディは、2つの抗原結合部位を有する。ダイアボディ中では、VLおよびVHドメインは、単一ポリペプチド鎖の形態で接続して、二価の二重特異性分子を生じさせる(Hollingerら(1993)、PNAS 90: 6444〜6448)。
【0007】
モノボディは、キメラ抗原結合ポリペプチドであり、これは、フィブロネクチンIII型スキャフォールド内で超可変CDRループを示す(Koide、EP0985039B1)。これらの分子は、有益なクラスの新規な親和性試薬を提供する。しかし、CDRループが、異種フィブロネクチンスキャフォールド中に移植された場合、ネイティブな抗体のエフェクターおよび検出機能は失われる。
【0008】
ナノボディは、単鎖抗原結合VHHドメイン(重鎖抗体の可変ドメイン)からなり、重鎖のみからなる天然の機能性抗体が、ラクダおよびラマ中に見出されるという観察に基づく(CasermanおよびHarmers、EP 19930919098)。しかし、ヒトVHドメイン(重鎖可変ドメイン)の溶解度は、疎水性領域が原因で頻繁に制限され、これはインタクトな抗体中でその軽鎖領域と相互作用する(Barthelemyら(2007) J. Biol. Chem. 283: 3639〜3654)。
【0009】
免疫診断における抗体
例えば病原体、自己抗原またはアレルゲンに対する特異的抗体の、生体試料中での存在または濃度を決定するための、多数のイムノアッセイの形式が存在する。一般に、このようなアッセイは、特定の抗体クラス、または、特定の抗体クラスの組合せの検出を対象としており、特定の内部対照またはキャリブレータを使用する。例えば、ヒト自己抗体の決定に適したイムノアッセイは、一般に、較正曲線の作成のために、陽性対照、陰性対照および指標キャリブレータ、または、段階的な様々なキャリブレータ濃度(標準系列)を含み、これにより、試料中の抗体濃度を内挿できる。このような対照および較正試薬は、従来、適切な希釈媒体中に、血清陽性の血漿または血清を希釈することによって調製される。
【0010】
例えば、β2糖タンパク質自己抗体のアイソタイプ特異的決定用のキャリブレータおよび対照は、ヒトドナーの血清から調製され、該血清は、クラスIgG、IgMおよび/またはIgAの高濃度のこれらの自己抗体を含有する。しかし、対照およびキャリブレータ調製のための、ヒト血清陽性の血清または血漿の使用には、例えば、大量のおよび適切な品質のこのような試薬の入手が困難であること、異なるバッチ間の結合特性の相違、不均一なポリクローナル特異性、不均一なアイソタイプ組成物、病原体の存在、費用など、多数の欠点が伴う。
【0011】
抗体は、高い特異性および親和性により抗原に結合するので、これらは、免疫診断では最も重要なものである。天然抗体分子のサイズ、および、ジスルフィド架橋を介した多数のドメイン間およびドメイン内の相互接続を有する複数のポリペプチド鎖のそれらの複雑な構造、ならびにグリコシル化位置は、特異的抗体の構築および組換え発現において大きな障害となる。
【0012】
Hackettら(EP1018019 B1)は、キャリブレータおよび対照として使用するための試薬の調製方法を開示しており、該試薬は、キメラモノクローナル抗体であり、該抗体は、決定すべき抗体の定常領域に対応する、第2の宿主種の重鎖および軽鎖定常領域に融合した、第1の宿主種の重鎖および軽鎖可変領域を含む。しかし、これらの種キメラモノクローナル抗体の調製は、モノクローナル抗体の生成では一般的なように、高い技術的出費を必要とする。Hackettは、所与のリガンドに特異的に結合して所望の宿主種の抗体領域に融合するポリペプチドもまた合成キャリブレータとして使用するという理論上の可能性にも言及しているが、Hackettは、単鎖合成ポリペプチドキャリブレータを合成可能な方法を提供してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】EP0627932B1
【特許文献2】EP0985039B1
【特許文献3】EP19930919098
【特許文献4】EP1018019 B1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Readら(2007)、Appl. Environ. Microbiol. 73: 5088〜5096
【非特許文献2】Huら(1996)、Cancer Res 56: 3055〜3061
【非特許文献3】Niebaら(1997)、Protein Eng 10: 435〜444
【非特許文献4】Dubelら、Biol. Unserer Zeit、第34巻、第6号、372〜379頁、2004
【非特許文献5】Hollingerら(1993)、PNAS 90: 6444〜6448
【非特許文献6】Barthelemyら(2007) J. Biol. Chem. 283: 3639〜3654
【非特許文献7】Crick, F.H.C. (1952)、Nature、170: 882〜883
【非特許文献8】Ridgway J.B.B.ら(1996)、Protein Engineering、9: 617〜621
【非特許文献9】Kabatら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest 第5版、NIH Publication 91〜3242
【非特許文献10】Ichikawaら(1999)、Arthritis and Rheumatism 42:2461
【非特許文献11】Bermanら(2003)、Nature Structural Biology 10: 980
【非特許文献12】Boehmら(1999) J. Mol. Biol. 286: 1421〜1447
【非特許文献13】Perkinsら(1991) J. Mal. Biol. 221:1345〜1366
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、特異的に抗原を認識し、天然免疫グロブリンに対する抗体と錯体を形成し、細菌発現系中で大量かつ容易に調製できる抗体様小分子が、継続して必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
(i)抗体の重鎖可変領域を含む第1のドメイン(VH)または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画、
(ii)抗体の軽鎖可変領域を含む第2のドメイン(VL)または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画、および
(iii)抗体の重鎖定常領域の区画を含む第3のドメイン(CHX)
を含み、
ドメイン(i)、(ii)および(iii)が、ペプチドリンカー(L)を介して共に連結している、
1価の融合ポリペプチドを提供する。
【0017】
本発明は、上述の1価の融合ポリペプチドをコードする核酸をさらに提供する。
【0018】
本発明はまた、本発明による核酸を含有する宿主細胞をさらに提供する。
【0019】
本発明はまた、本発明による宿主細胞を培養するステップ、および、該細胞または培養上清から融合ポリペプチドを得るステップによる、1価の融合ポリペプチドの調製方法をさらに提供する。
【0020】
本発明のよりさらなる態様は、診断試験または生化学的試験における試薬としての、1価の融合ポリペプチドの使用に関し、融合ポリペプチド、核酸および宿主細胞の医療用途にも関する。
【0021】
本発明による1価の融合ポリペプチドは、「モジュボディ」とも呼ばれる。
【0022】
モジュボディは、抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)のドメインと、抗体の重鎖定常領域の1つまたは複数のドメイン(CH1、CH2、CH3、CH4)からなる構築体であり、抗体のこれらのドメインは、適切なリンカー配列を介して、独立した構造を有する機能モジュールの直線配列の形態で共に結合している。個々のドメインは、例えば、80から130個までのアミノ酸の長さを有する。モジュボディは、単一ポリペプチド鎖からなり、単一抗原結合部位を有し、該部位は、ドメインVHおよびVLから形成されている。モジュボディは、好ましくは、分子間ジスルフィド架橋を形成できず、この結果、これらはモノマーの形態で存在する。モジュボディは、抗体のヒンジ領域を含まない。したがって、これらは、1価の抗体の縮小版であり、これらは、適切な発現系、例えば細菌発現系中で、簡便かつ大量に、単一タンパク質鎖の形態で調製できる。その単鎖構造、その小さなサイズ、モノクローナル組成物、これらが容易に調製できること、およびこれらの安定性のため、モジュボディは、生化学研究用の、診断検査における使用のための、および治療剤としての、理想的な試薬である。
【0023】
したがって、モジュボディは、図1におけるような典型的構造を有するキメラ分子であり、この構造は抗体の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)のドメインと、抗体の重鎖定常領域の1つまたは複数のドメイン(CHX、例えば、CH1、CH2、CH3またはCH4)とに由来する別個の機能モジュールからなる。個々の独立した構造を有する機能モジュールは、適切なリンカー配列(L)を介して、直線配列で共に結合している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による融合ポリペプチド(モジュボディ)の一実施形態の概略構造を示す図であり、ここで、VLは、可変軽鎖のドメインを意味し、VHは、可変重鎖のドメインを意味し、CHXは、抗体の重鎖定常領域のドメイン(CH1、CH2、CH3またはCH4)を意味する。これらの個々のドメインは、異種の、好ましくは、フレキシブルペプチドリンカーLにより、直線配列で共に結合している。
【図2】標的β2糖タンパク質へのscFV-CAD反応モジュールの結合反応の特性決定を示す図である。scFv-CAD反応モジュールの特異的β2糖タンパク質結合活性のELISA検出のために、提示濃度におけるscFv-CAD連続希釈物を、β2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートと、対照とするためのウシ血清アルブミン(BSA)で被覆したマイクロタイタープレートとに適用した。結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体(Qiagen, Hilden)と、O.D. 450の計測によるテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応とを使用して決定した。
【図3A】scFV-CAD反応モジュールの温度ストレスに対する安定性の特性決定を示す図である。CAD-scFvのβ2糖タンパク質結合活性に対する、50℃の温度ストレスの影響を調査するために、濃度5μg/mlの精製タンパク質モジュールを0〜180分間、50℃の温度にさらした。β2糖タンパク質へのscFv-CADの結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応とを使用してELISAにおいて決定した。
【図3B】scFV-CAD反応モジュールの温度ストレスに対する安定性の特性決定を示す図である。scFv-CADの失活温度を決定するために、キャリブレータ希釈媒体中で濃度5μg/mlの精製タンパク質モジュールを10分間、20℃から90℃までの一連の温度にさらした。β2糖タンパク質へのscFv-CADの結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応とを使用してELISAにおいて決定した。
【図4】標的β糖タンパク質への結合と、抗ヒトIgGペルオキシダーゼ二次抗体による検出とによる、CAD-IgG-CH3モジュボディのキャリブレータ機能の特性決定を示す図である。CAD-IgG-CH3を、提示濃度において、β2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用し、結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図5】CAD-IgG-CH3モジュボディの温度ストレスに対する安定性の特性決定を示す図である。熱ストレスに対する安定性を、以下の通り調査した。提示濃度におけるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、50℃において、60分間および90分間インキュベートし、室温で貯蔵した希釈系列と比較して、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH3モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図6】CAD-IgG-CH3モジュボディの36℃における貯蔵に対する安定性の特性決定を示す図である。高い貯蔵温度に対する安定性を、以下の通り調査した。提示濃度におけるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、36℃において、1、2、4、7、10日間インキュベートし、4℃で貯蔵した希釈系列と比較して、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH3モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図7】CAD-IgG-CH3モジュボディの乾燥に対する安定性の特性決定を示す図である。乾燥に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、Speedvak装置中で、真空下、22℃において乾燥し、その後、提示濃度まで再可溶化した。次に、β2糖タンパク質への、再可溶化したCAD-IgG-CH3モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応を使用して決定した。
【図8】CAD-IgG-CH3モジュボディの凍結融解サイクルの反復に対する安定性の特性決定を示す図である。凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、凍結融解サイクルの5回反復において、-70℃で凍結させ、37℃で再び融解し、その後、提示濃度において、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH3モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450の計測によるTMB呈色反応を使用して決定した。
【図9】標的β2糖タンパク質への結合と、抗ヒトIgGペルオキシダーゼ二次抗体による検出とによる、CAD-IgG-CH2モジュボディのキャリブレータ機能の特性決定を示す図である。CAD-IgG-CH2を、提示濃度において、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用し、結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図10】CAD-IgG-CH2モジュボディの乾燥に対する安定性の特性決定を示す図である。乾燥に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgG-CH2モジュボディの希釈物を、Speedvak装置中で、真空下、22℃において乾燥し、その後、提示濃度まで再可溶化した。次に、β2糖タンパク質への、可溶化したCAD-IgG-CH2モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応を使用して決定した。
【図11】CAD-IgG-CH2モジュボディの凍結融解サイクルの反復に対する安定性の特性決定を示す図である。凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgG-CH2モジュボディの希釈物を、凍結融解サイクルの5回反復中に、-70℃で凍結させ、37℃再び融解し、その後、提示濃度において、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレート上で調査した。β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH2モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体と、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図12】標的β2糖タンパク質への結合と、アイソタイプ特異的抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgGペルオキシダーゼ二次抗体を用いた別個の検出とによる、多機能性CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディのキャリブレータ機能の特性決定を示す図である。CAD-IgM-IgA-IgGを、提示濃度において、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用し、結合を、別個の決定において、アイソタイプ特異的ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgG抗体と(Jackson Immunoresearch)、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図13】CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの乾燥に対する安定性の特性決定を示す図である。乾燥に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの希釈物を、Speedvak装置中で、真空下、22℃において乾燥し、その後、提示濃度まで再可溶化した。次に、β2糖タンパク質への、再可溶化したCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの結合を、別個の決定において、アイソタイプ特異的ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応とを使用して決定した。
【図14】CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの凍結融解サイクルの反復に対する安定性の特性決定を示す図である。凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通り調査した。CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの希釈物を、-70℃で凍結させ、37℃において、凍結融解サイクルの5回の反復を5回反復して再び融解し、その後、提示濃度において、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレート上で調査した。次に、β2糖タンパク質へのCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの結合を、別個の決定において、アイソタイプ特異的ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgG抗体(Jackson Immunoresearch)と、O.D. 450nmの計測によるTMB呈色反応とを使用して、決定した。
【図15】標的β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの結合反応の特性決定を示す図である。CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの特異的β2糖タンパク質結合活性のELISA検出のために、提示濃度におけるCAD-IgG-CH3-Knob02の連続希釈物を、β2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートと、対照とするためのウシ血清アルブミン(BSA)で被覆したマイクロタイタープレートとに適用した。結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体(Qiagen、Hilden)と、O.D. 450nmの計測によるテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応とを使用して決定した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
抗体、抗体フラグメントおよび抗体様小分子の調製のためのこれまでに知られた方法は、これらを生理活性な形態で安価に調製する可能性に関して、多数の制限を有する。
【0026】
診断検査用のキャリブレータおよび標準物質の生成のためのこれまでに知られた方法は、入手の容易さ、均一な結合および安定性の特性、病原体の確実な不在、ならびに生成費用に関して、多数の欠点を有する。これらの制限および欠点は、本発明によって除かれる。さらに、抗原を特異的に認識し、天然免疫グロブリンに対する抗体と錯体を形成する抗体様小分子が、継続して必要とされている。
【0027】
本発明により、生化学研究用、診断検査における使用のための、または、治療剤の成分としての、単一特異性ポリペプチド試薬(「モジュボディ」)の調製が可能になる。
【0028】
モジュボディは、キメラ単鎖融合ポリペプチドであり、これは、少なくとも3つのドメイン、すなわち、抗体の重鎖可変領域の第1のドメイン(VH)、抗体の軽鎖可変領域の第2のドメイン(VL)、および、抗体の重鎖定常領域の部分区画を含む第3のドメイン(CHX)からなる。これらの個々のドメインは、適切なペプチドリンカーを介して共に連結している。該モジュボディは、1価であり、すなわち、単一抗原結合部位を有する。
【0029】
例えば、本発明によるモジュボディは、以下の構造(N末端において開始)
VH-L-VL-L-CHX、または
VL-L-VH-L-CHX
を有し、
式中、VHは、抗体の重鎖可変領域または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画を意味し、VLは、抗体の軽鎖可変領域または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画を意味し、Lは、ペプチドリンカーを意味し、CHXは、抗体の重鎖定常領域の部分区画を含むドメインを意味する。CHXは、例えば、抗体の、好ましくは、クラスIgG、IgM、IgEおよびIgAの抗体の、特に好ましくは、クラスIgG、IgM、IgEおよびIgAのヒト抗体の重鎖定常領域の区画CH1、CH2、CH3およびCH4から選定できる。ドメインCHXの好例は、IgG-CH1、IgG-CH2、IgG-CH3、IgA-CH2、IgA-CH3、IgM-CH2、IgM-CH3およびIgM-CH4またはこれらの組合せであり、特に、各々のヒト抗体のものである。
【0030】
第1のドメイン(VH)および第2のドメイン(VL)は一緒に、抗原結合部位(結合モジュール)を形成する。これらは、好ましくは、これらの両方が、単一オリジナル抗体に由来するように選定する。このオリジナル抗体は、任意の所望のモノクローナル抗体、例えば、非ヒト哺乳類種(例えばラット、マウスまたはウサギ)、ヒト抗体またはヒト化抗体からのモノクローナル抗体である。
【0031】
モジュボディは、任意の所望の抗原、例えば、診断または治療に関係する抗原に対するものであり得る。特異的抗原の好例は、β2糖タンパク質、ホスファチジルセリン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、スムーズンドホモログ(SMO)、タンパク質パッチト相同体(PTC1)、Bリンパ球抗原(CD20)、細胞障害性Tリンパ球タンパク質4(CTLA4)、アミロイドβA4タンパク質(APP)、プレセニリン1(PS1)、CCケモカイン受容体(CCR-5)、テロメア反復結合因子1(TRF1)およびトール様受容体(TLR1-10)である。
【0032】
本発明によるポリペプチドの第1および第2のドメインは、抗体の完全な重鎖または軽鎖可変領域または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画を含有することができる。好ましくは、これらのドメインは、当該重鎖または軽鎖領域の少なくとも領域CDR1、CDR2およびCDR3の全体と、対応するフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4の少なくとも部分とを含有する。ドメインVHおよびVLの長さは、通常、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100個のアミノ酸残基、および、最大で110または最大で120個までのアミノ酸残基である。
【0033】
本発明による融合ポリペプチドは、抗体の重鎖定常領域の区画を含む少なくとも1つのドメイン(CHX)を含有する。好ましくは、1つまたは複数の第3のドメインは、VHおよびVLドメインのC末端に配置される。第3のドメインは、重鎖定常領域の完全な区画またはその部分区画を含有することができ、該区画は、融合ポリペプチドへ十分な構造安定性をもたらす。第3のドメインの長さは、通常、少なくとも80、少なくとも90または少なくとも100個のアミノ酸残基、および、最大で110、最大で120または最大で130個までのアミノ酸残基である。該融合ポリペプチドは、任意選択により、同一であるまたは異なることが可能な複数の第3のドメインを含有することができ、例えば、2、3または4つの第3のドメインを含有することができる。複数の第3のドメインが存在する場合、これらは、ペプチドリンカーを介して共に連結しており、好ましくは、融合ポリペプチドのC末端に配置されている。2つ(または3つ)の第3のドメインを有する本発明による融合ポリペプチドの構造構成の例は、以下の通り
VL-L-VL-L-CHX1-L-CHX2(-L-CHX3)、または
VL-L-VH-L-CHX1-L-CHX2(-L-CHX3)
であり、
式中、VH、LおよびVLは、上記のように定義され、CHX1、CHX2およびCHX3の各々は、上記のように定義された第3のドメインCHXを意味する。
【0034】
本発明による融合ポリペプチドは、ペプチドリンカー(L)を介して共に連結した第1、第2および第3のドメインを含有する。ペプチドリンカーは、第1、第2および第3のドメインのアミノ酸配列に非相同な配列、または天然免疫グロブリン中に存在しない配列からなる。個々のドメインを共に連結するペプチドリンカーは、いずれの場合でも、同一であるまたは異なることができる。通常、ペプチドリンカーは、それぞれ独立に、10から50個まで、好ましくは25から45個まで、特に好ましくは30から40個までのアミノ酸残基の長さを有する。ペプチドリンカーは、二次構造を有さないフレキシブルリンカーであるのがさらに好ましい。例えば、適切なペプチドリンカーは、少なくとも80%もしくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%または完全にグリシン残基および/もしくはセリン残基からなる。特に適するのは、複数の配列SGGGGを含有するペプチドリンカーである。ペプチドリンカーの特に好ましい例は、配列番号3中に示している。リンカー配列は、任意選択により、融合ポリペプチドのN末端および/またはC末端にも存在し得る。
【0035】
ドメイン(i)、(ii)および(iii)、ならびに、ドメイン間に配置されたペプチドリンカーに加えて、該融合ポリペプチドは、さらなる配列区画、例えば、N末端および/またはC末端に配置されており、該ポリペプチドの発現および/または分泌を容易にするシグナルペプチド区画を任意選択により含有することもできる。この融合ポリペプチドは、1つまたは複数の追加の非免疫グロブリンドメイン、例えば、検出または認識ドメイン、言い換えると、融合ポリペプチド(タグ)、例えば、FLAGエピトープまたはポリHis配列の検出または認識に適したペプチド配列をさらに含有することができる。さらに、この融合ポリペプチドは、1つまたは複数の非免疫グロブリンエフェクタードメインも任意選択により含有することができる。上記追加のドメイン(存在する場合)は、好ましくは、ペプチドリンカー、例えば、上記のように定義されたペプチドリンカーを介して、該融合ポリペプチドの残りに接続している。
【0036】
本発明による融合ポリペプチドの特に好ましい例は、上記のように定義した、1つまたは複数のドメインVH、VLおよび/またはCHXを含有し、該ドメインは、配列番号1(VL)、配列番号2(VH)、配列番号4(VH、VL)、配列番号8(IgG-CH1)、配列番号10(IgG-CH2)、配列番号12(IgG-CH3)、配列番号14(IgA-CH2)、配列番号16(IgA-CH3)、配列番号18(IgM-CH2)、配列番号20(IgM-CH3)または配列番号22(IgM-CH4)に従って対応するドメインとアミノ酸レベルで、少なくとも90%の同一性、好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。
【0037】
本発明による融合ポリペプチドは、その中に含有されているVH、VLおよびCHXドメインの天然配列に対する、1つまたは複数の修飾を任意選択により有し得る。例としては、例えばCHXドメイン中のグリコシル化位置における少なくとも1個のアスパラギン残基は、異なるアミノ酸残基、好ましくはセリン、アラニンまたはグリシンによって置換されていてもよい。さらに、例えばCHXドメイン中に存在する第2のシステイン残基とジスルフィド架橋を形成せず、したがって、分子間ジスルフィド架橋を潜在的に形成する当該ドメイン中の少なくとも1個のシステイン残基は、異なるアミノ酸残基、好ましくはセリン、アラニンまたはグリシンによって任意選択により置換されていてもよい。
【0038】
本発明によるモジュボディは、人工単一特異性抗体様分子であり、これは、単一タンパク質鎖の形態において、適切な発現系、例えば、細菌発現系中で、容易に大量に調製できる。生化学検査または診断検査用の試薬のように、モジュボディは、結合モジュール(VH+VL)を介して、抗原に特異的に結合でき、反応モジュール(CHX)を介して、種特異的およびアイソタイプ特異的二次抗体を用いて特異的に検出できる。複数の反応モジュール(例えば、CHX1およびCHX2またはCHXおよび非免疫グロブリン検出もしくは認識ドメイン)の配列により、異なる試薬、例えば、異なる種特異的またはアイソタイプ特異的二次抗体を用いた検出が可能になる。治療機能用の試薬のように、モジュボディは、結合モジュールを介して、標的構造上の抗原に特異的に結合し、反応モジュール(CHX)または一連の反応モジュール(例えば、CHX1およびCHX2またはCHXおよび非免疫グロブリンエフェクタードメイン)を介して、特異的エフェクター機能を発揮する。
【0039】
二量体を潜在的に形成できるCHXドメインは、好ましくは、二量体化を妨げることができ、該モジュボディが1価の形態で存在するように、修飾される。
【0040】
例えば、その側鎖が「ノブが穴に嵌る(knobs-into-holes)」配置の概念(Crick, F.H.C. (1952)、Nature、170: 882〜883)に従って相互作用を示すアミノ酸位置は、修飾できる。
【0041】
したがって、その側鎖がIgG1-CH3二量体の界面で接触を形成するアミノ酸位置(Ridgway J.B.B.ら(1996)、Protein Engineering、9: 617〜621)は、嵩高いアミノ酸側鎖が、IgG-CH3二量体中の反対側の接触部位に存在して、二量体化が、この「ノブ-ノブ」位置によって立体的に障害されるように修飾できる。2つのIgG1-CH3ドメインの接触しているアミノ酸側鎖間の相互作用は、例えば、アミノ酸位置トレオニン366、トレオニン394、フェニルアラニン405を、位置366、394および405のチロシンで置換することにより、ブロックできる(Kabat EU Index (Kabatら、(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest 第5版、NIH Publication 91〜3242)に従った番号付けスキーム)。
【0042】
本発明によるモジュボディは、さらに、驚異的な安定性、例えば、温度ストレスに対する安定性、または、乾燥/再構成もしくは凍結/融解サイクルに対する安定性によって区別される。例えば、未処理試料と比較すると、36℃での10日間のインキュベーション後、または、乾燥および再構成もしくは凍結/融解サイクルを5回反復した後の、該モジュボディの希釈液(5μg/ml)中でさえも、90%超の抗原結合活性が残る。
【0043】
モジュボディのde novo構築は、好ましくは、
a)配列および構造データバンク情報を考慮して、既知またはモデル化した空間構造の免疫グロブリンの空間的に区分されたドメインを選択するステップ、
b)選択したドメインのジスルフィド架橋を最適化するステップであって、インタクトな免疫グロブリンとの関連で、選定したドメインの外側にジスルフィド架橋を形成するシステイン位置が、構造的に中性のアミノ酸、好ましくはセリン、アラニンまたはグリシンに編集されるステップ、
c)任意選択により、アスパラギン結合グリコシル化位置を、好ましくは、セリン、アラニンまたはグリシンに編集するステップ、
d)ステップa)〜c)から得られた機能モジュールの選択箇所を、好ましくは、アミノ酸のグリシンおよび/またはセリンから主になり、特に好ましくは、リンカー配列(配列番号3)に対応するフレキシブルリンカー配列と連結するステップであって、該モジュボディ内の機能モジュールの位置と、クローニングストラテジーとに応じて、ステップa)〜c)から得られたモジュール配列を、フレキシブルリンカー配列と連結でき、該リンカー配列により、該機能モジュールのN末端またはC末端を形成でき、完全なモジュボディを形成する複数の機能モジュールまたはアミノ酸配列を含むアミノ酸配列を、任意選択により、生じさせることができるステップ、
e)好ましくは、所期の発現系に対して最適化したコドン頻度表を考慮して、ステップa)〜d)から得られたアミノ酸配列を、対応するDNA配列に翻訳するステップであって、得られたDNA配列に、任意選択により、望ましくない制限酵素切断部位を避けるために、フランキング制限酵素切断部位および保存的塩基置換を提供することができるステップ、
f)遺伝子合成、および個々の機能モジュール、または一連の複数の同一であるもしくは異なる機能モジュールをコードする遺伝子ユニットの適切なベクター中へのクローニング、所期の機能モジュール配列および番号における、個々の機能モジュールまたは一連の機能モジュールのアセンブリによる、完全なモジュボディのクローニングにより、ステップe)で定義した配列を合成DNAとして調製するステップであって、完全なモジュボディをコードする遺伝子ユニットは、任意選択により、直接クローニングもできるステップ
を含む。
【0044】
この構築方法、例えば、空間的に区分されたドメインの選択、二量体を安定化するジスルフィド架橋の回避、および、30〜40個のアミノ酸の好ましい長さを有するフレキシブルグリシン-セリンリンカーによる個々のモジュールの連結の目的は、個々のモジュールが、互いに独立に挙動できることである。
【0045】
本発明は、上記のように定義した融合ポリペプチドをコードする核酸、例えば、DNAまたはRNAにさらに関する。この核酸は、任意選択により、発現調節配列、例えば、プロモーターと作動可能に連結して存在し得る。したがって、本発明は、本発明による融合ポリペプチドをコードする核酸配列を含有し、かつ、宿主細胞中での該核酸の発現に適した発現ベクターにも関する。この宿主細胞は、大腸菌などのグラム陰性菌、もしくは、枯草菌(B. subtilis)などのグラム陽性菌などの原核宿主細胞、または、真核宿主細胞(例えば酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞または哺乳類細胞)であり得る。選定した宿主細胞中での該核酸の発現を改善するために、発現を、各々の宿主細胞中におけるコドン使用頻度に関して最適化することができる。対応するプロセスは、当業者には公知である。
【0046】
本発明は、本発明による核酸を含有する上記の宿主細胞をさらに提供する。この核酸は、公知技術、例えば、形質転換またはトランスフェクションにより、対応する宿主細胞中に導入できる。本発明による融合ポリペプチドの調製に関しては、該宿主細胞を培養することができ、融合ポリペプチドを原理的に公知の方法により、該細胞から、または、該培養上清から得ることができる。
【0047】
本発明による融合ポリペプチドは、例えば、診断試験または生化学的試験、特に、免疫学的方法に基づいた試験における試薬として、例えば、対照もしくはキャリブレータ試薬として、または、分析物を決定するための試験試薬として使用できる。本発明による融合ポリペプチドの検出はCHXドメインを介して、例えばアイソタイプ特異的または種特異的認識試薬、例えば二次抗体を使用して、および/または、非免疫グロブリン認識ドメインを介して、これらのドメインに対する特異的な結合パートナーを使用して実施できる。対応する試験形式は、当業者には公知である。
【0048】
さらに、本発明による融合ポリペプチド、核酸または宿主細胞は、医療目的、例えば、人間医学または獣医学においても使用できる。融合ポリペプチドは、例えば、非免疫グロブリンエフェクタードメイン、例えば放射性核種または毒素と任意選択により結合した免疫療法薬として使用できる。融合ポリペプチドをコードする核酸は、例えば、核酸ワクチンとして使用できる。
【0049】
したがって、本発明はまた、薬学的に適切な担体物質と共に、融合ポリペプチド、核酸または宿主細胞を含む医薬組成物をさらに提供する。この医薬組成物は、例えば、抗体を用いた治療法のために、または、DNAワクチン接種のために使用するような公知の方法によって、対象、例えば、対応する治療処置が必要なヒト患者に投与できる。
【0050】
本発明を下記の実施例によってさらに説明する。
【0051】
(実施例)
(実施例1)
β2糖タンパク質結合モジュール(scFv-CAD)の構築、クローニングおよび特性決定
1.1 scFv-CADの構築
下記の例では、合成構築体の形態でのβ2糖タンパク質特異的結合モジュール(scFv-CAD)の構築を説明する。
【0052】
抗リン脂質抗体症候群のマウスモデル(ニュージーランドホワイトX BXSBのF1マウス(Ichikawaら(1999)、Arthritis and Rheumatism 42:2461))に由来するモノクローナル抗体WBCAL-1の、軽鎖可変領域VL(配列番号1)の部分と、重鎖可変領域VH(配列番号2)の部分とを、β2糖タンパク質認識モジュール用の構造単位として選定し、フレキシブルリンカー(配列番号3)およびフランキング配列と接合して、人工タンパク質配列scFv-RP-CAD-P(配列番号4)を形成した。このタンパク質配列を、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に関して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列を提供し、遺伝子合成により、β2糖タンパク質認識モジュール(配列番号5)をコードする人工DNA配列scFv-RP-CAD-Nとして調製した。VLドメインは、配列番号4中のアミノ酸1〜118から延び、VHドメインは、配列番号4中のアミノ酸159〜272から延びる。
【0053】
1.2 scFv-CADのクローニング
上記構築のために、実施例1.1で説明した、β2糖タンパク質検出ドメインをコードする人工DNA配列scFv-RP-CAD-N(配列番号5)を、プライマーRP-CAD01(配列番号6)、RP-CAD02(配列番号7)を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。856塩基対(bp)の増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いて単離した。単離したフラグメントを、最初に、制限酵素HindIIIで消化し、その後、BgIIIによる部分消化を行った。制限フラグメントを、適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化したプラスミドpQE-80L(Qiagen、Hilden)とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換した。この形質転換バッチを、50μg/mlのカルベニシリンを追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩(o.n.)(16〜20h)、インキュベートした。得られた大腸菌株CAD-pQE80-NovaBlueの単一コロニーを、50μg/mlのカルベニシリン(LB-Carb)を追加したLB培地中で、180回転/分(rpm)の振とう器上で増殖した(36℃、o.n.)。凍結用の保存培養物を、単一クローン培養物から調製した。いずれの場合でも、1mlの単一クローン培養物を、プラスミド調製に使用した。単離したプラスミドを、EcoRI/HindIIIでの消化によって分析した。予想される901bpのフラグメントを有するクローンを、誘導分析によってさらに調査した。そのために、選定した単一クローンを、LB-Carb中で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、1培養体積のLB-Carb、1mMイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)の添加により、クローニングしたDNAフラグメントによってコードされるタンパク質の発現へ誘導し、36℃、180rpmで16時間(h)培養した。この誘導細胞を、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)含有緩衝液中に溶解し、タンパク質を、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離した。ウエスタンブロットにおいて、予想される30kDaのscFv-CADタンパク質の発現が、抗RGS-6xHisペルオキシダーゼ結合型抗体(Qiagen、Hilden)を用いた検出により検出された。正しくクローニングされていることを、シークエンシングによって確認した。
【0054】
1.3 scFv-CADの発現
発現構築体を有する、1.2で形質転換した大腸菌株CAD-pQE80-NovaBlueを、LB-Carb培地中において36℃で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、IPTGの添加により、scFv-CADの合成へ誘導した。誘導した培養物を、4時間から一晩までの間で、36℃で培養した。この誘導細胞を回収し、リゾチーム処理後に、8M尿素含有トリスHCl塩化ナトリウム緩衝液(TBS)中に溶解した。発現したscFv-CADを、アフィニティークロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーとの組合せにより、均一になるまで精製した。scFv-CADタンパク質は、クーマシーブルー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル中の30kDaバンドの形態において、視認可能である。β2糖タンパク質結合活性の向上は、30kDaバンドの精製に関連している。
【0055】
1.4 scFv-CADの特性決定
scFv-CADの結合特異性を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)において、β2糖タンパク質によってまたはウシ血清アルブミン(BSA)によって被覆したマイクロタイタープレートを使用して、試験した。scFv-CADの熱ストレスに対する安定性を、scFv-CADの適切な希釈物に対して調査した。
【0056】
1.4.1 scFv-CADの結合特異性
scFv-CADが、特異的β2糖タンパク質結合活性を有するかを決定するために、精製タンパク質モジュールを、イムノアッセイによって試験した。そのために、scFv-CADの連続希釈物を、β2糖タンパク質(ORG 521、ORGENTEC Diagnostika GmbH、Mainz)で被覆した抗β2糖タンパク質アッセイのマイクロタイタープレートと、結合特異性の対照とするためのBSA被覆プレートとに適用し、20〜25℃で30分間インキュベートした。マイクロタイタープレートを洗浄し、scFv-CADの結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体(Qiagen、Hilden)と、O.D. 450の計測によるテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応を使用して決定した。図2に示されているように、β2糖タンパク質への特異的結合は、わずか19ng/mlのscFv-CAD濃度で検出された。β2糖タンパク質被覆マイクロタイタープレートへの結合と、BSA被覆マイクロタイタープレートへの結合とにおけるscFv-CAD連続希釈物の反応レベルの比較により、非特異的結合が、濃度範囲0.019〜10μg/mlのscFv-CAD中では起きないことを示している。
【0057】
1.4.2 scFv-CADの温度安定性
scFv-CADの特異的β2糖タンパク質結合活性に対する温度ストレスの影響を調査するために、濃度5μg/mlの精製タンパク質モジュールを、0〜180分間にわたって、50℃の温度にさらした。β2糖タンパク質へのscFv-CADの結合を、1.4.1で説明したイムノアッセイにおいて決定した。図3Aに示しているように、キャリブレータ希釈媒体中に希釈したscFv-CADモジュールは、50℃の温度に3時間耐えることが見出された。
【0058】
scFv-CADの失活温度を決定するために、キャリブレータ希釈媒体中で濃度5μg/mlの精製タンパク質モジュールを10分間、20℃から90℃までの一連の温度にさらした。β2糖タンパク質への加熱処理済scFv-CAD希釈物の結合を、1.4.1で説明したイムノアッセイにおいて決定した。図3Bに示しているように、scFv-CADモジュールは、最大で50℃の温度までは安定であり、60℃以上の温度では、顕著な失活が起きることが見出された。
【0059】
(実施例2)
モジュボディ用の一連の反応モジュールの構築
下記の実施例では、ヒト抗体の重鎖定常領域のドメインに由来する一連の反応モジュールの構築を説明する。そのために、構造的または機能的に区切られたドメインは、公知の空間構造の、クラスIgG、IgA、IgMのヒト抗体の重鎖のタンパク質配列に由来した。選定したタンパク質配列を、潜在的なドメイン間ジスルフィド架橋について検査した。インタクトな免疫グロブリンの領域とのジスルフィド架橋を、選定したドメインの外部に形成するシステイン位置を、システインからセリンに編集した。同様に、個々のグリコシル化位置で、アスパラギンを同様に、セリンに編集した。選定した免疫グロブリンドメイン配列は、反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)およびフランキング配列と接合させて、人工タンパク質配列を形成した。コドン頻度表に基づいて、これらの反応モジュール配列を、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列を提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列として調製した。
【0060】
2.1 ヒトIgG-CH1反応モジュールの構築
Worldwide Protein Data Bank(pdb)から(Bermanら(2003)、Nature Structural Biology 10: 980)、配列位置125〜219を、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 3D69Hに基づいて、代表的なIgG-CH1ドメインとして、抗第Ix因子抗体10c12のFabフラグメントの結晶構造から選定した。選定したIgG-CH1免疫グロブリンドメイン配列は、IgG-CH1反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合させて、人工タンパク質配列Sc-RP-CH1-G-P(配列番号8)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI、HindIII)がさらに備えられ、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH1-G-N(配列番号9)として調製した。IgG-CH1ドメインは、配列番号8中のアミノ酸37〜131から延びる。
【0061】
2.2 ヒトIgG-CH2反応モジュールの構築
変異Adcc強化Fcフラグメントの結晶構造から、配列位置15〜116を、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 2QL1Aに基づいて、代表的なIgG-CH2ドメインとして選定した。選定したIgG-CH2免疫グロブリンドメイン配列は、IgG-CH2反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合させて、人工タンパク質配列Sc-RP-CH2-G-P(配列番号10)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)がさらに備えられ、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH2-G-N(配列番号11)として調製した。IgG-CH2ドメインは、配列番号10中のアミノ酸37〜138から延びる。
【0062】
2.3 ヒトIgG-CH3反応モジュールの構築
ヒンジが欠失したヒト免疫グロブリンの重鎖の結晶構造から、配列位置330〜428を、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 1MCO_H(GI: 494350)に基づいて、代表的なIgG-CH3ドメインとして選定した。選定したIgG-CH3免疫グロブリンドメイン配列を、IgG-CH3反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合して、人工タンパク質配列Sc-RP-CH3-G-P(配列番号12)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH3-G-N(配列番号13)として調製した。IgG-CH3ドメインは、配列番号12中のアミノ酸37〜135から延びる。
【0063】
2.4 ヒトIgA-CH2反応モジュールの構築
溶液中の中性子散乱および相同性モデリング(Boehmら(1999) J. Mol. Biol. 286: 1421〜1447)に基づいて得られたヒトIgAの構造モデルから、配列位置126〜222(UNIPROT P01876に対応する)を、ヒトIgA1の重鎖の空間構造に基づいて、代表的なIgA-CH2ドメインとして、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 1IGAから選定した。位置182、192では、システインをセリンに編集した。選定および編集したIgA-CH2免疫グロブリンドメイン配列は、IgA-CH2反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合させて、人工タンパク質配列Sc-RP-CH2-A-P(配列番号14)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH2-A-N(配列番号15)として調製した。IgA-CH2ドメインは、配列番号14中のアミノ酸37〜133から延びる。
【0064】
2.5 ヒトIgA-CH3反応モジュールの構築
タンパク質構造データバンクエントリーPDB 1IGAから、配列位置227〜331(UNIPROT P01876に対応する)を、ヒトIgA1の重鎖の空間構造に基づいて、代表的なIgA-CH3ドメインとして選定した。選定したIgA-CH3免疫グロブリンドメイン配列は、IgA-CH3反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合させて、人工タンパク質配列sc-RP-CH3-A-P(配列番号16)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列sc-RP-CH3-A-N(配列番号17)として調製した。IgA-CH3ドメインは、配列番号16中のアミノ酸37〜141から延びる。
【0065】
2.6 ヒトIgM-CH2反応モジュールの構築
溶液中のX線散乱およびモデリング(Perkinsら(1991) J. Mal. Biol. 221:1345〜1366)に基づいて得られたヒトIgMの構造モデルから、配列位置106〜217(UNIPROT P01871に対応する)を、ヒトIgMの重鎖の空間構造に基づいて、代表的なIgM-CH2ドメインとして、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 2rcjから選定し、編集した。位置214では、システインをセリンに編集し、位置109では、アスパラギンをセリンに編集する。選定および編集したIgM-CH2免疫グロブリンドメイン配列を、IgM-CH2反応モジュール用の構成単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)を接合して、人工タンパク質配列Sc-RP-CH2-M-P(配列番号18)を形成し、コドン頻度表を考慮した、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH2-M-N(配列番号19)として調製した。IgM-CH2ドメインは、配列番号18中のアミノ酸37〜148から延びる。
【0066】
2.7 ヒトIgM-CH3反応モジュールの構築
タンパク質構造データバンクエントリーpdb 2rcjから、配列位置218〜323(UNIPROT P01871に対応する)を、ヒトIgMの重鎖の空間構造に基づいて、代表的なIgM-CH3ドメインとして選定し、編集した。位置291では、システインをセリンに編集し、位置272および279では、アスパラギンをセリンに編集した。選定および編集したIgM-CH3免疫グロブリンドメイン配列を、IgM-CH3反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合して、人工タンパク質配列Sc-RP-CH3-M-P(配列番号20)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH3-M-N(配列番号21)として調製した。IgM-CH3ドメインは、配列番号20中のアミノ酸37〜142から延びる。
【0067】
2.8 ヒトIgM-CH4反応モジュールの構築
タンパク質構造データバンクエントリーpdb 2rcjから、配列位置324〜452(UNIPROT P01871に対応する)を、ヒトIgMの重鎖の空間構造に基づいて、代表的なIgM-CH3ドメインとして選定し、編集した。位置451では、システインをセリンに編集し、位置439では、アスパラギンをセリンに編集した。選定および編集したIgM-CH3免疫グロブリンドメイン配列を、IgM-CH3反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合して、人工タンパク質配列Sc-RP-CH4-M-P(配列番号22)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH4-M-N(配列番号23)として調製した。IgM-CH4ドメインは、配列番号22中のアミノ酸37〜165から延びる。
【0068】
2.9 1価のヒトIgG-CH3-Knob02反応モジュールの構築
ヒンジが欠失したヒト免疫グロブリンの重鎖の結晶構造から、配列位置330〜428を、タンパク質構造データバンクエントリーpdb 1MCO_H(GI:494350)に基づいて、代表的なIgG-CH3ドメインとして選定し、編集した。その側鎖がIgG1-CH3二量体の界面(Ridgway J.B.Bら(1996)、Protein Engineering、9: 617〜621)で接触を形成するアミノ酸残基の位置を、IgG-CH3ドメインの二量体化が起きないように修飾した。位置351および379では、トレオニンをチロシンに編集し、位置390では、フェニルアラニンをチロシンに編集した。選定および編集したIgG-CH3免疫グロブリンドメイン配列を、IgG-CH3-Knob02反応モジュール用の構造単位として、フレキシブルリンカー(配列番号3)と接合して、人工タンパク質配列Sc-RP-CH3-G-Knob02-P(配列番号32)を形成し、コドン頻度表を考慮して、大腸菌中での発現に対して最適化した核酸配列に翻訳し、フランキングクローニング配列(BamHI/HindIII)をさらに提供し、遺伝子合成により、人工DNA配列Sc-RP-CH3-G-Knob02-N(配列番号33)として調製した。IgG-CH3-Knob02ドメインは、配列番号32中のアミノ酸37〜135から延びる。
【0069】
(実施例3)
単鎖CAD-IgG-CH3モジュボディ
3.1 単鎖CAD-IgG-CH3モジュボディの構築およびクローニング
下記の実施例では、ヒトIgG-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH3の構築およびクローニングについて説明する。
【0070】
CAD-IgG-CH3モジュボディの構築のために、モジュールscFv-CAD(実施例1)およびIgG-CH3(実施例2.3)を、ドメイン配列VL-リンカー-VH-リンカー-IgG-CH3における制限消化およびライゲーションによりアセンブリして、CAD-IgG-CH3コード配列(配列番号26)を形成した。そのために、実施例2.3で説明した、配列番号13に対応する合成IgG-CH3反応モジュールSc-RP-CH3-G-Nを、プライマーCH05(配列番号24)およびCH04(配列番号25)を用いてPCRによって増幅した。443bpの増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いて単離した。単離したフラグメントを、最初に、制限酵素BcllおよびHindIIIで消化した。制限フラグメントを、適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化した実施例1に記載のCAD-scFv-pQE80ベクター構築体とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換した。形質転換バッチを、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃でo.n.でインキュベートした。得られた大腸菌株CAD-IgG-CH3-pQE80-NovaBlueの単一コロニーを、LB-Carb培地中で増殖した(36℃、o.n.、180rpm)。凍結用の保存培養物を、単一クローン培養物から調製し、いずれの場合でも、1mlの単一クローン培養物を、プラスミド調製のために使用した。単離したプラスミドを、EcoRI/HindIII消化によって分析した。予想される1312bpのフラグメントを有するクローン、誘導分析によってさらに調査した。そのために、選定した単一クローンを、LB-Carb中で成長させ、0.5から1.0までのO.D. 500において、1mM IPTGを追加したLB-Carbの一培養体積の添加により、組換えタンパク質の発現へ誘導し、36℃、180rpmで16時間培養した。この誘導細胞を、SDS試料緩衝液中に溶解し、タンパク質を、SDS-PAGEによって分離した。ウエスタンブロットにおいて、予想される44kDaのCAD-IgG-CH3モジュボディの発現を、抗RGS-6xHisペルオキシダーゼ結合型抗体(Qiagen、Hilden)を用いた検出によって検出した。正しくクローニングされていることを、シークエンシングによって確認した。
【0071】
3.2 単鎖CAD-IgG-CH3モジュボディ発現および精製
下記の実施例では、ヒトIgG-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH3の発現および精製について説明する。
【0072】
発現構築体を有する、3.1で形質転換した大腸菌株CAD-IgG-CH3-pQE80-NovaBlueをLB-Carb培地中において36℃で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、IPTGの添加により、CAD-IgG-CH3モジュボディの合成へ誘導した。誘導した培養物を、4時間から一晩までの間で、36℃で培養した。この誘導細胞を回収し、リゾチーム処理後に、8M尿素含有TBS緩衝液中に溶解した。発現したCAD-IgG-CH3モジュボディを、アフィニティークロマトグラフィーとイオン交換クロマトグラフィーとの組合せにより、均一になるまで精製した。44kDaバンドは、クーマシーブルー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル中で視認可能である。β2糖タンパク質結合活性、およびペルオキシダーゼ結合型抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch)との反応性の向上は、44kDaバンドの精製に関連している。
【0073】
3.3 単鎖CAD-IgG-CH3モジュボディの特性
下記の実施例では、特異的抗原認識に関連するヒトIgG-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH3の特性決定と、抗ヒトIgG二次抗体を介した特異的検出性と、高温、乾燥および凍結融解サイクルに対する安定性とを説明する。
【0074】
3.3.1 CAD-IgG-CH3モジュボディのキャリブレータ機能
CAD-IgG-CH3モジュボディが、scFv-CADのβ2糖タンパク質結合活性を保持していて、抗原への結合が、抗ヒトIgG二次抗体を介して、特異的に検出できるかを決定するために、精製CAD-IgG-CH3調製物を、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにより調査した。精製CAD-IgG-CH3モジュボディを、キャリブレータ希釈媒体中での濃度が0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlである連続希釈で、β2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗β2糖タンパク質アッセイ(ORG 521、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して決定した。図4は、濃度に応じた、選定した反応条件下で決定したOD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、CAD-IgG-CH3モジュボディは、5μg/mlの濃度で2.2のO.D. 450において検出された。
【0075】
3.3.2 CAD-IgG-CH3モジュボディの安定性
CAD-IgG-CH3モジュボディの頑健性を特性決定するために、キャリブレータ希釈媒体中の希釈物を、50℃の熱ストレス、36℃での高い貯蔵温度、乾燥および凍結融解サイクルの反復といったストレス因子にさらした。β2糖タンパク質結合活性と、抗hu IgGペルオキシダーゼ標識二次抗体(Jackson Immunoresearch)を用いた検出性とを、未処理試料と比較して決定した。
【0076】
3.3.2.1 CAD-IgG-CH3モジュボディの熱ストレスに対する安定性
熱ストレスに対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体中での濃度が0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlであるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、50℃で60分間および90分間インキュベートし、室温で貯蔵した希釈系列と比較して、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質結合活性を、抗β2糖タンパク質アッセイ(ORG 521、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して決定した。図5は、室温で貯蔵した希釈系列と比較して、50℃で60分間および90分間インキュベートした希釈系列について選定した反応条件下で決定した、OD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、0.31μg/mlから20μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgG-CH3モジュボディの機能は、60分間または90分間での50℃の温度ストレスによって損なわれなかった。
【0077】
3.3.2.2 CAD-IgG-CH3モジュボディの36℃における貯蔵に対する安定性
高い貯蔵温度に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体中での濃度が0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlであるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、36℃で1、2、4、7、10日間インキュベートし、4℃で貯蔵した希釈系列と比較して、抗β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質結合活性を、抗β2糖タンパク質アッセイ(ORG 521、ORGENTEC GmbH、Mainz)ために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して決定した。図6は、4℃で貯蔵した希釈系列と比較して、36℃で1、2、4、7、10日間貯蔵した希釈系列について選定した反応条件下で決定した、OD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、0.31μg/mlから20μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgG-CH3モジュボディの機能は、10日間にわたる36℃での貯蔵によっては損なわれなかった。
【0078】
3.3.2.3 CAD-IgG-CH3モジュボディの乾燥に対する安定性
乾燥に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、Speedvak中で、真空下、22℃で乾燥した。乾燥試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体と、50μlの水とで再可溶化して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理の希釈系列と比較して、抗β2糖タンパク質-カルジオリピンイムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質結合活性を、抗カルジオリピン-β2糖タンパク質アッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して決定した。図7は、未処理の希釈系列と比較して、乾燥試料について選定した反応条件下で決定した、OD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgG-CH3モジュボディの機能は、乾燥によっては損なわれなかった。
【0079】
3.3.2.4 CAD-IgG-CH3モジュボディの凍結融解サイクルに対する安定性
凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgG-CH3モジュボディの希釈物を、凍結融解サイクルの5回の反復中に、-70℃で凍結させ、37℃で再び融解した。次に、これらの試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体によって希釈して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理のCAD-IgG-CH3希釈系列と比較して、抗β2カルジオリピン-糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。β2糖タンパク質結合活性を、抗カルジオリピン-β2糖タンパク質アッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して決定した。図8は、未処理の希釈系列と比較して、凍結および融解を反復した試料について選定した反応条件下で決定した、OD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲のCAD-IgG-CH3モジュボディの機能は、凍結融解サイクルの反復によっては損なわれなかった。
【0080】
(実施例4)
単鎖CAD-IgG-CH2モジュボディ
4.1 単鎖CAD-IgG-CH2モジュボディの構築およびクローニング
下記の実施例では、モノマー型ヒトIgG-CH2検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH2の構築およびクローニングについて説明する。
【0081】
CAD-IgG-CH2モジュボディの構築のために、モジュールscFv-CAD(実施例1)およびIgG-CH2(実施例2.2)を、ドメイン配列VL-リンカー-VH-リンカー-IgG-CH2における制限消化およびライゲーションとによってアセンブリして、CAD-IgG-CH2コード配列(配列番号27)を形成した。そのために、配列番号11に対応する、実施例2.2で説明した合成IgG-CH2反応モジュールSc-RP-CH2-G-Nを、プライマーCH03(配列番号28)およびCH04(配列番号25)を用いてPCRによって増幅した。443bpの増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いてゲル単離した。ゲル単離したフラグメントを、最初に、制限酵素BcllおよびHindIIIで消化した。この制限フラグメントを、適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化した実施例1に記載のscFv-CAD-pQE80ベクター構築体とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換した。形質転換バッチを、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩、インキュベートした。得られた大腸菌株CAD-IgG-CH2-pQE80-NovaBlueの単一コロニーを、カルベニシリン(50μg/ml)(LB-Carb.)を追加したLB培地中で増殖した(36℃、一晩、180rpm)。凍結用の保存培養物を、単一クローン培養物から調製し、いずれの場合でも、1mlの単一クローン培養物を、プラスミド調製のために使用した。単離したプラスミドを、EcoRI/HindIIIでの消化によって分析した。予想される1321bpのフラグメントを有するクローンを、誘導分析によってさらに調査した。そのために、選定した単一クローンを、LB-Carb.中で成長させ、0.5から1.0までのO.D. 500において、1mM IPTGを追加した一培養体積のLB-Carb.の添加により、組換えタンパク質の発現へ誘導し、36℃、180rpmで16時間培養した。この誘導細胞を、SDS試料緩衝液中に溶解し、タンパク質を、SDS-PAGEによって分離した。ウエスタンブロットにおいて、予想される44kDaのCADIgG-CH2モジュボディの発現を、抗RGS-6xHisペルオキシダーゼ結合型抗体(Qiagen、Hilden)を用いた検出によって検出した。正しくクローニングされていることを、シークエンシングによって確認した。
【0082】
4.2 単鎖CAD-IgG-CH2モジュボディの発現および精製
下記の実施例では、モノマー型ヒトIgG-CH2検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH2の発現および精製について説明する。
【0083】
発現構築体を有する、4.1で形質転換した大腸菌株CAD-IgG-CH2-pQE80-NovaBlueを、LB-Carb.培地中において36℃で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、IPTGの添加により、CAD-IgG-CH2モジュボディの合成へ誘導した。誘導した培養物を、4時間から一晩までの間で、36℃で培養した。この誘導細胞を回収し、リゾチーム処理後に、8M尿素含有TBS緩衝液中に溶解した。発現したCADIgG-CH2モジュボディを、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。44kDaのバンドは、クーマシーブルー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル中で視認可能である。β2糖タンパク質結合活性、およびペルオキシダーゼ結合型抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch)との反応性の向上は、44kDaバンドの精製に関連している。
【0084】
4.3 単鎖CAD-IgG-CH2モジュボディの特性
下記の実施例では、特異的抗原認識に関連するモノマー型ヒトIgG-CH2検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH2の特性決定と、抗ヒトIgG二次抗体を介した特異的検出性と、高温、乾燥および凍結融解サイクルに対する安定性とについて説明する。
【0085】
4.3.1 CAD-IgG-CH2モジュボディのキャリブレータ機能
CAD-IgG-CH2モジュボディが、scFv-CADのβ2糖タンパク質結合活性を保持していて、抗原への結合が、抗ヒトIgG二次抗体を介して、特異的に検出できるかを決定するために、精製CAD-IgG-CH2調製物を、抗カルジオリピン/β2糖タンパク質イムノアッセイにおいて調査した。精製CAD-IgG-CH2モジュボディを、キャリブレータ希釈媒体中での濃度が0μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/ml、40μg/mlである希釈系列中で、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)ために用意したインキュベーション条件下で、濃度200ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識した二次抗体(Jackson Immunoresearch)を使用して決定した。図9は、濃度に応じた、選定した反応条件下で決定したOD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、CAD-IgG-CH2モジュボディは、20μg/mlの濃度で1.7のO.D. 450nmにおいて検出された。
【0086】
4.3.2 CAD-IgG-CH2モジュボディの乾燥に対する安定性
乾燥に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgG-CH2モジュボディの希釈物を、Speedvak装置中で、真空下、22℃において乾燥した。この乾燥試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体と、50μlの水とで再可溶化して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理の希釈系列と比較して、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)ために用意したインキュベーション条件下で、濃度200ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体(Jackson Immunoresearch)を使用して決定した。図10は、未処理の希釈系列と比較して、乾燥試料について選定した反応条件下で決定したOD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgG-CH2モジュボディの機能は、乾燥によっては損なわれていなかった。
【0087】
4.3.3 CAD-IgG-CH2モジュボディの凍結融解サイクルに対する安定性
凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgG-CH2モジュボディの希釈物を、凍結融解サイクルの5回の反復中に、-70℃で凍結させ、37℃で再び融解した。次に、この試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体で希釈して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理のCAD-IgG-CH2希釈系列と比較して、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)ために用意したインキュベーション条件下で、濃度200ng/mlの抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体(Jackson Immunoresearch)を使用して決定した。図11は、未処理の希釈系列と比較して、凍結および融解の反復をした試料について選定した反応条件下で決定したOD 450nmの変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲のCAD-IgG-CH2モジュボディの機能は、凍結融解サイクルの反復によっては損なわれなかった。
【0088】
(実施例5)
単鎖多機能性CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディ
単鎖多機能性モジュボディCAD-IgM-IgA-IgGは、直線配列中に、4つの機能モジュールを含有する。β2糖タンパク質認識ドメインと、ヒト免疫グロブリンIgM、IgAおよびIgGの重鎖のCH3ドメインに由来する複数の反応モジュールとは、ペプチドリンカーを介して連結している。したがって、CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの検出は、異なるアイソタイプ特異的二次抗体を介して実施できる。
【0089】
5.1 単鎖CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの構築およびクローニング
下記の実施例では、ヒトIgM-、IgG-およびIgA-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgM-IgA-IgGの構築およびクローニングを説明する。
【0090】
CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの構築のために、モジュールscFv-CAD(実施例1)、IgM-CH3(実施例2.7)、IgA-CH3(実施例2.5)およびIgG-CH3(実施例2.3)を、ドメイン配列VL-リンカー-VH-リンカー-IgM-CH3-リンカー-IgA-CH3-リンカー-IgG-CH3における制限消化およびライゲーションによってアセンブリして、CAD-IgM-IgA-IgGコード配列(配列番号29)を形成した。そのために、反応モジュールIgM-CH3、IgA-CH3およびIgG-CH3を、ベクター構築体およびインサートライゲーションの制限を含む反復プロセス中に、実施例1で説明したCAD-scFv-pQE80ベクター構築体中にインサートした。第1の構築ステップ中では、配列番号21に対応する、実施例2.7で説明した合成IgM-CH3反応モジュールSc-RP-CH3-M-Nを、プライマーCH09(配列番号30)およびCH04(配列番号25)を用いてPCRによって増幅した。455bpの増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いてゲル単離した。ゲル単離したフラグメントを、制限酵素BcIIおよびHindIIIで消化した。この制限フラグメントを、適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化した実施例1に記載のscFv-CAD-pQE80ベクター構築体とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換し、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩、インキュベートした。プラスミドDNAを、正しいインサートライゲーションを有する単一クローンから単離した。第2の構築ステップ中では、配列番号17に対応する、実施例2.5で説明した合成IgA-CH3反応モジュールSc-RP-CH3-A-Nを、プライマーCH07(配列番号31)およびCH04(配列番号25)を用いてPCRによって増幅した。452bpの増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いてゲル単離した。ゲル単離したフラグメントを、制限酵素BcllおよびHindIIIで消化した。この制限フラグメントを、第1の構築ステップで単離し適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化したベクター構築体とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換し、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩、インキュベートした。プラスミドDNAを、正しいインサートライゲーションを有する単一クローンから単離した。第3の構築ステップ中では、配列番号13に対応する、実施例2.3で説明した合成IgG-CH3反応モジュールSc-RP-CH3-G-Nを、プライマーCH05(配列番号24)およびCH04(配列番号25)を用いてPCRによって増幅した。434bpの増幅物を、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いてゲル単離した。ゲル単離したフラグメントを、制限酵素BcllおよびHindIIIで消化した。この制限フラグメントを、第2の構築ステップで単離し適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化したベクター構築体とライゲーションし、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換した。形質転換バッチを、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩、インキュベートした。得られた大腸菌株CAD-IgM-IgA-IgG-pQE80-NovaBlueの単一コロニーを、カルベニシリン(50μg/ml)(LB-Carb.)を追加したLB培地中で増殖した(36℃、一晩、180rpm)。凍結用の保存培養物を、単一クローン培養物から調製し、いずれの場合でも、1mlの単一クローン培養物を、プラスミド調製のために使用した。単離したプラスミドを、EcoRI/HindIIIでの消化によって分析した。予想される2173bpのフラグメントを有するクローンを、誘導分析によってさらに調査した。そのために、選定した単一クローンを、LB-Carb.中で成長させ、0.5から1.0までのO.D. 500において、1mM IPTGを追加した一培養体積のLB-Carb.の添加により、クローニングしたDNA構築体によってコードされるタンパク質の発現へ誘導し、36℃、180rpmで16時間培養した。この誘導細胞を、SDS試料緩衝液中に溶解し、タンパク質を、SDS-PAGEによって分離した。ウエスタンブロットにおいて、予想される72kDaのCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの発現を、抗RGS-6xHisペルオキシダーゼ結合型抗体(Qiagen、Hilden)を用いた検出によって検出した。正しくクローニングされていることを、シークエンシングによって確認した。
【0091】
5.2 単鎖CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの発現および精製
下記の実施例では、ヒトIgM-CH3、IgA-CH3およびIgG-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgM-IgA-IgGの発現および精製について説明する。
【0092】
発現構築体を有する、5.1で形質転換した大腸菌株CAD-IgM-IgA-IgG-pQE80-NovaBlueを、LB-Carb培地中において36℃で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、IPTGの添加により、CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの合成へ誘導した。誘導した培養物を、4時間から一晩までの間、36℃で培養した。この誘導細胞を回収し、リゾチーム処理後に、8M尿素含有TBS緩衝液中に溶解した。発現したCADIgM-IgA-IgGモジュボディを、アフィニティークロマトグラフィーによって精製した。72kDaバンドは、クーマシーブルー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル中で視認可能である。β2糖タンパク質結合活性、ならびにペルオキシダーゼ結合型抗ヒトIgM、IgAおよびIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch)との反応性の向上は、72kDaバンドの精製に関連している。
【0093】
5.3 単鎖CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの特性
下記の実施例では、特異的抗原認識に関連するヒトIgM-CH3、IgA-CH3およびIgG-CH3検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgM-IgA-IgGの特性決定と、抗ヒトIgM、IgAおよびIgG二次抗体を介した特異的検出性と、乾燥および凍結融解サイクルに対する安定性とについて説明する。
【0094】
5.3.1 CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディのキャリブレータ機能
CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディが、scFv-CADのβ2糖タンパク質結合活性を保持していて、抗原への結合が、異なるアイソタイプ特異的抗ヒト二次抗体を介して検出できるかを決定するために、精製CAD-IgM-IgA-IgG調製物を、抗β2糖タンパク質/カルジオリピンイムノアッセイによって調査した。精製CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディを、キャリブレータ希釈媒体中での濃度が0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlである希釈系列中で、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体を使用して別個の決定において決定した。図12は、CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの濃度に応じた、選定した検出抗体によるOD 450nm決定の変動を示している。選定した反応条件下では、CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディは、O.D. 450nm値が2.8、1.8および2.7である抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgG二次抗体による決定時に、濃度5μg/mlにおいて検出された。
【0095】
5.3.2 CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの乾燥に対する安定性
乾燥に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの希釈物を、Speedvak装置中で、真空下、22℃において乾燥した。この乾燥試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体および50μlの水で再可溶化して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理の希釈系列と比較して、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体(Jackson Immunoresearch)を使用して別個の決定において決定した。図13は、乾燥試料の希釈ステップと比較して、未処理試料の希釈ステップでの選定した検出抗体によるOD 450nm決定の変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの機能は、乾燥によっては損なわれなかった。
【0096】
5.3.2.3 CAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの凍結融解サイクルに対する安定性
凍結融解サイクルの反復に対する安定性を、以下の通りに調査した。キャリブレータ希釈媒体50μlずつ中での濃度が0μg/ml、3.1μg/ml、6.21μg/ml、12.5μg/ml、25μg/ml、50μg/ml、100μg/ml、200μg/mlであるCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの希釈物を、凍結融解サイクルの5回の反復中に、-70℃で凍結させ、37℃で再び融解した。次に、これらの試料を、450μlのキャリブレータ希釈媒体で希釈して、濃度0μg/ml、0.31μg/ml、0.62μg/ml、1.25μg/ml、2.5μg/ml、5μg/ml、10μg/ml、20μg/mlの希釈系列を生じさせ、未処理のCAD-IgM-IgA-IgG希釈系列と比較して、カルジオリピンと複合したβ2糖タンパク質で被覆したマイクロタイタープレートに適用した。抗原結合活性を、抗カルジオリピンアッセイ(ORG 515、ORGENTEC GmbH、Mainz)のために用意したインキュベーション条件下で、濃度80ng/mlの抗ヒトIgM、抗ヒトIgAおよび抗ヒトIgGペルオキシダーゼ標識二次抗体(Jackson Immunoresearch)を使用して別個の決定において決定した。図14は、凍結および融解の反復をした試料と比較して、未処理試料の希釈ステップの場合での選定した検出抗体による、OD 450nm決定の変動を示している。選定した反応条件下では、3.1μg/mlから200μg/mlまでの濃度範囲の希釈物中のCAD-IgM-IgA-IgGモジュボディの機能は、凍結融解サイクルの反復によっては損なわれなかった。
【0097】
(実施例6)
単鎖CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディ
6.1 単鎖CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの構築およびクローニング
下記の実施例では、モノマー型修飾ヒトIgG-CH3-Knob02検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH3-Knob02の構築およびクローニングについて説明する。
【0098】
CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの構築のために、モジュールscFv-CAD(実施例1)およびIgG-CH3-Knob02(実施例2.9)を、ドメイン配列VL-リンカー-VH-リンカー-IgG-CH3-Knob02における制限消化およびライゲーションによってアセンブリして、CAD-IgG-CH3-Knob02コード配列(配列番号34)を形成した。そのために、配列番号33に対応する、実施例2.9で説明した合成IgG-CH3-Knob02反応モジュールSc-RP-CH3-Knob02-G-Nを、制限酵素BamHIおよびHindIIを用いた消化により、ベクター構築体IgG-CH3-Knob02-pMAから取り除いた。
【0099】
417bpの制限フラグメントを、アガロースゲル電気泳動後に、QiaExIIキット(Qiagen、Hilden)を用いてゲル単離し、適合性の酵素BamHIおよびHindIIIで消化した実施例1に記載のCAD-scFv-pQE80ベクター構築体とライゲーションした。このライゲーション生成物を、大腸菌株NovaBlue(Merck、Nottingham)に形質転換した。この形質転換バッチを、カルベニシリン(50μg/ml)を追加したLB寒天プレート上に蒔き、36℃で一晩、インキュベートした。得られた大腸菌株CAD-IgG-CH3-Knob02-pQE80-NovaBlueの単一コロニーを、カルベニシリン(50μg/ml)(LB-Carb.)を追加したLB培地中で増殖した(36℃、一晩、180rpm)。凍結用の保存培養物を、単一クローン培養物から調製し、いずれの場合でも、1mlの単一クローン培養物を、プラスミド調製のために使用した。単離したプラスミドを、EcoRI/HindIIIでの消化によって分析した。予想される1308bpのフラグメントを有するクローンを、誘導分析によってさらに調査した。そのために、選定した単一クローンを、LB-Carb.中で成長させ、0.5から1.0までのO.D. 500において、1mM IPTGを追加した一培養体積のLB-Carb.の添加により、クローニングしたDNAフラグメントによってコードされるタンパク質の発現へ誘導し、36℃、180rpmで16時間培養した。この誘導細胞を、SDS試料緩衝液中に溶解し、タンパク質を、SDS-PAGEによって分離した。ウエスタンブロットにおいて、予想される44kDaのCAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの発現を、抗RGS-6xHisペルオキシダーゼ結合型抗体(Qiagen、Hilden)を用いた検出によって検出した。正しくクローニングされていることを、シークエンシングによって確認した。
【0100】
6.2 単鎖CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの発現および精製
下記の実施例では、修飾ヒトIgG-CH3-Knob02検出ドメインを備えたβ2糖タンパク質特異的モジュボディCAD-IgG-CH3-Knob02の発現および精製について説明する。
【0101】
発現構築体を有する、6.1で形質転換した大腸菌株CAD-IgG-CH3-Knob02-pQE80-NovaBlueを、LB-Carb.培地中において36℃で、0.5から1.0までのO.D. 500になるまで成長させ、IPTGの添加により、CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの合成へ誘導した。誘導した培養物を、4時間から一晩までの間、36℃で培養した。この誘導細胞を回収し、リゾチーム処理後に、8M尿素含有TBS緩衝液中に溶解した。発現したCAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディを、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。44kDaバンドは、クーマシーブルー染色SDS-ポリアクリルアミドゲル中で視認可能である。β2糖タンパク質結合活性、およびペルオキシダーゼ結合型抗ヒトIgG二次抗体(Jackson Immunoresearch)との反応性の向上は、44kDaバンドの精製に関連している。
【0102】
6.3 β2糖タンパク質へのCAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの結合
CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディが、scFv-CADのβ2糖タンパク質結合活性を保持しているかを決定するために、精製CAD-IgG-CH3-Knob02調製物を、イムノアッセイによって試験した。そのために、CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの希釈系列を、β2糖タンパク質(ORG 521、ORGENTEC Diagnostika GmbH、Mainz)で被覆した抗β2糖タンパク質アッセイのマイクロタイタープレートと、結合特異性の対照とするためのBSA被覆プレートとに適用し、20〜25℃で30分間インキュベートした。これらのマイクロタイタープレートを洗浄し、CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの結合を、ペルオキシダーゼ標識RGS-6X-His抗体(Qiagen、Hilden)と、O.D. 450nmの計測によるテトラメチルベンジジン(TMB)呈色反応とを使用して決定した。図15は、濃度に応じた、選定した反応条件下で決定したOD 450nmの変動を示している。β2糖タンパク質への特異的結合は、CAD-IgG-CH3-Knob02モジュボディの濃度が19ng/mlでも、検出された。β2糖タンパク質またはBSA被覆のマイクロタイタープレートへの結合の場合での、CAD-IgG-CH3-Knob32希釈ステップの反応レベルの比較は、非特異的結合が、0.019〜10μg/mlのCAD-IgG-CH3-Knob02の濃度範囲では起きないことを示している。
[配列表]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)抗体の重鎖可変領域を含む第1のドメイン(VH)または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画、
(ii)抗体の軽鎖可変領域を含む第2のドメイン(VL)または抗原結合を仲介する少なくとも1つのその区画、および
(iii)抗体の重鎖定常領域の区画を含む第3のドメイン(CHX)
を含み、
ドメイン(i)、(ii)および(iii)が、ペプチドリンカー(L)を介して共に連結している、
1価の融合ポリペプチド。
【請求項2】
構造
VH-L-VL-L-CHX、または
VL-L-VH-L-CHX
を含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
ドメイン(i)、(ii)および(iii)がそれぞれ、80から130個までのアミノ酸残基の長さを有する、請求項1または請求項2のいずれかに記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
ドメイン(iii)が、抗体の、好ましくは、クラスIgG、IgM、IgEおよびIgAのヒト抗体の区画CH1、CH2、CH3およびCH4、またはこれらの区画の組合せから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドリンカーがそれぞれ独立に、10から50個まで、好ましくは、25から45個まで、特に好ましくは、30から40個までのアミノ酸残基の長さを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドリンカーが、少なくとも90%のグリシンおよび/またはセリン残基からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
少なくとも1つのさらなるドメイン、例えば、シグナルペプチドおよび/またはペプチドタグを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
配列番号1(VL)、配列番号2(VH)、配列番号4(VH、VL)、配列番号8(IgG-CH1)、配列番号10(IgG-CH2)、配列番号12(IgG-CH3)、配列番号14(IgA-CH2)、配列番号16(IgA-CH3)、配列番号18(IgM-CH2)、配列番号20(IgM-CH3)または配列番号22(IgM-CH4)に記載の対応するドメインとアミノ酸レベルで、少なくとも90%の同一性、好ましくは、少なくとも95%の同一性を有する1つまたは複数のドメインVH、VLおよび/またはCHXを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
グリコシル化位置の少なくとも1個のアスパラギン残基が、異なるアミノ酸残基、好ましくは、セリン、アラニンまたはグリシンによって置換されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
少なくとも1個のシステイン残基が、異なるアミノ酸残基、好ましくは、セリン、アラニンまたはグリシンによって置換されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
任意選択により、発現調節配列と作動可能に連結している、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドをコードする核酸。
【請求項12】
選定された宿主細胞、例えば、大腸菌などの細菌中での発現に関してコドン最適化された、請求項11に記載の核酸。
【請求項13】
請求項11または請求項12のいずれかに記載の核酸を含有する、宿主細胞。
【請求項14】
請求項13に記載の宿主細胞を培養するステップ、および、前記細胞または培養上清から融合ポリペプチドを得るステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの調製方法。
【請求項15】
診断試験または生化学的試験における試薬としての、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドの使用。
【請求項16】
(i)対照もしくはキャリブレータ試薬としての、または
(ii)分析物を決定するための試験試薬としての
請求項15に記載の使用。
【請求項17】
医学において、例えば、人間医学または獣医学において使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、請求項11もしくは12に記載の核酸、または請求項13に記載の宿主細胞。
【請求項18】
薬学的に適切な担体物質と共に、請求項1から10のいずれか一項に記載の融合ポリペプチド、請求項11もしくは12に記載の核酸、または請求項13に記載の宿主細胞を含む、医薬組成物。

【図1】
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【図3B】
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【図4】
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【図2】
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【図3A】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−511966(P2013−511966A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540419(P2012−540419)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068134
【国際公開番号】WO2011/064257
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507153173)オルゲンテック・ディアグノスティカ・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】