説明

単一発光素子内においてエリア定義形の多色発光を行うOLED

【課題】従来技術の欠点を解消した、白色光を発光する有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供する。
【解決手段】ここに開示されているのは、a)基板と、b)この基板に配置された第1電極と、c)この第1電極に配置され、2つ以上の発光材料を含む複合発光層と、d)この複合発光層に配置された第2電極とを含む有機エレクトロルミネセンスデバイスであり、上記の電極により、共通にまた個別に複合発光層がアドレッシングされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には薄膜デバイスの処理及び製造の技術分野に関する。より具体的にいうと、本発明は有機発光ダイオードデバイス及びディスプレイの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光ダイオード(OLED)を用いた白色発光パネルは、将来の低電力消費形の照明解決手段として研究が行われている。構成波長から白色光を形成して可視スペクトルをカバーするため、これらのパネルにおいてふつう複数の発光体が使用される。1つの方法に含まれるのは、個々の発光体から発光をベースにして、個々のピクセルによるOLEDパネルのピクシレーション(pixilation)を使用することである。これにより、このパネルから得られる全体的な発光は、種々異なる波長からの発光から構成されて、白らしく見えるのである。このような方法には、有機層に対しても、個々のOLEDピクセルをアドレッシングするために使用される電極に対しても共に、コストのかかるパターニング法が必要である。
【0003】
有機エレクトロルミネセンスデバイスから白色光の形成を可能にする1アプローチが開示されている。このアプローチでは、種々異なる波長で発光する発光体によって、OLEDの単一の複合有機発光層の表面パターニングを行う必要がある。種々異なる色を発光する上記の複合発光層からこのようにして得られて合成された発光により、可視スペクトルがカバーされて所望の色の光が形成される。さらに、上記の複合層内の発光材料では共通のカソード及びアノードが使用されており、これによってコストのかかる電極パターニング法を回避している。このタイプのエレクトロルミネセンスは、コストを低減するための1つの手法であり、この手法によってこのデバイスの実質的な効率を維持する一方で、構成発光色から得られる白色光を発光する表面が得られるのである。
【0004】
さらに上記の複合発光層内に、異なる波長の光を発光する異なる発光体材料を、異なるパターンでデポジットすることができ、これによってこのエレクトロルミネセンスデバイスにおいて静的で多色のアイコンが形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術の欠点を解消した、白色光を発光する有機エレクトロルミネセンスデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、本発明の請求項1により、有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて、このデバイスには、基板と、この基板に配置された第1電極と、この第1電極に配置された複合発光層と、この複合発光層に配置された第2電極とが含まれており、上記の複合層には第1発光材料が含まれており、この第1発光材料は、少なくとも1つの付加的な発光材料によってパターニングされ、この付加的な発光材料により、上記の第1発光材料とは異なるスペクトルが発させられ、さらに上記の第2電極および第1電極は、複合発光層全体に共通であり、かつ該複合発光全体をアドレッシングすることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンスデバイスを提供することによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の1つ又はそれ以上の実施形態において開示されるのは、第1発光材料と、第1発光材料の表面上/表面内にパターニングされる少なくとも1つの付加的な発光材料とを有する複合発光層を含む新規のエレクトロルミネセンス(EL)デバイスである。上記の複合発光層のすべての色発光領域は、このELデバイスの2つの電極によって個別にアドレッシング可能である。いくつかの実施形態では少なくとも1つの付加的な発光材料が、第1発光層内の副層に埋め込まれるか、又は副層が形成されて1つ以上の色発光領域が得られる。いくつかの実施形態では上記の領域により、繰り返しのパターンが形成される。いくつかの実施形態において上記のELデバイスは、白又はモノクロームのカラー方式を使用した面照明(area lighting)の場合と同様に均一な発光を供給するように設計された発光素子である。別の実施形態において上記のELデバイスは、静的で多色のアイコンを供給するように設計される。
【0008】
いくつかの実施形態によれば、上記の複合発光層は、均一な薄膜又は層としてデポジットされた第1青色発光材料と、この薄膜又は層にパターンでデポジットされる第2緑色発光材料と、これらの第1及び第2の発光材料にさらに別のパターンでデポジットされる第3赤色発光材料とから構成される。デポジットされる赤色及び/又は緑色材料はさらに、下に設けられている青色発光層に「入り込む」ことが可能である。上記の複合発光層は、電極の対によって個別にアドレッシング及びアクティブ状態にされる。ここでこれらの電極は、添付の図面に示すようにスタック状に配置することができる。上記のELデバイスはまた、必要に応じて1つの層内に電荷注入、電荷輸送、電荷阻止及び封入層又はこれらの組み合わせを含むことができ、また有利には共通の基板に構成される。例えば、正孔輸送及び電子阻止層の組み合わせは、PANI(ポリアニリン),PEDOT(ポリ(3,4)−エチレン−ジオキシチオフェン))及びPSS(ポリスチレンスルホネート)などの材料を含むことが可能である。
【0009】
さらに、上記のELデバイスは、正孔注入及びこのデバイスの平坦化を向上させるアノードバッファ層を含むことができる。
【0010】
本発明の少なくとも1つの実施形態にしたがってELデバイスを作製する1つの方法は、最初に、例えば、青色を発光する発光薄膜又は層を作製することである。この薄膜は、単一の大きな電極、例えば、透明ITOアノードにスピンコート又は蒸着することができる。つぎにこの青色発光薄膜又は層をパターニングして、緑色及び赤色発光材料をデポジットすることの可能な領域を得ることができる。これに続いて単一の大きなカソードがデポジットされる。形成される光の色は、個々の色発光領域の効率及び各領域からなる相対的な面積によって決定される。これによってピクシレーションされる電極の、コストのかかるパターニングが回避される。択一的には最初に非発光性のマトリクス薄膜又は層をスピンコートすることができる。つぎにさまざまなスペクトルを得るために必要な発光体及び成分(moiety)が上記のマトリクスにパターニングされる。この場合に例えば、赤、緑及び青又はシアン及びオレンジを組み合わせる。
【0011】
使用するパターニング法は、別の方法でもよく、また例えばPDMSスタンプ、発光体分子を含む溶媒のスピニング、パターンのインジェットによる形成、蒸着又は別の任意の印刷方式を含むことができる。さらに、パターンの局所的な領域に必要な別の成分、例えば電荷輸送分子を拡散させて、印刷又はデポジット法によって変更された領域におけるデバイス性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の1実施形態では、上記の第1発光材料は、黄色、青色、緑色、赤色、シアンおよびオレンジのうちの少なくとも1色に発光する。
【0013】
本発明の1実施形態では、上記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、黄色、青色、緑色、赤色、シアンおよびオレンジのうちの少なくとも1色に発光する。
【実施例】
【0014】
図1には本発明の少なくとも1つの実施形態によるエレクトロルミネセンス(EL)デバイス205の1実施形態の断面図が示されている。OLEDデバイス205には基板208及びこの基板208上の第1電極211が含まれている。OLEDデバイス205にはまた第1電極211上の半導体スタック214も含まれている。半導体スタック214には少なくとも、(1)アノードバッファ層(ABL)215及び(2)複合発光層(CEML composite light emissive layer)層216が含まれている。
【0015】
図1に示したようにOLEDデバイス205は下面発光型デバイスである。下面発光型デバイスとして、第1電極211はアノードとして動作し、またABL215は第1電極211上に配置される。CEML216はABL215上に作製され、続いて第2電極217(カソード)が半導体スタック214上に作製される。図1に示した層とは別の層、例えば絶縁層、バリア層、電子/正孔注入層及び阻止層、ゲッタ層なども付加することもできる。これらの層のうちのいくつかの実施例を以下、さらに詳しく説明する。
【0016】
基板208:
基板208は、上記の付加的な層及び電極を支持することができかつOLEDデバイス205によって放射される光の波長に対して透明又は半透明である任意の材料とすることが可能である。有利な基板材料には、ガラス、石英、シリコン及びプラスチック、有利には薄いフレキシブルガラスが含まれる。基板208の有利な厚さは、使用する材料及びデバイスの用途に依存する。基板208はシート又は連続したフィルムの形態とすることが可能である。この連続フィルムは、例えば、ロールツーロール製造法に使用され、これは殊にプラスチック、金属及び金属化されたプラスチックシートに適している。
【0017】
第1電極211:
下面発光型の構成では、第1電極211はアノードとして動作する(このアノードは正孔注入層として使用される導電層である)。典型的なアノード材料には、金属(例えば白金、金、パラジウム、インジウム等);金属酸化物(例えば酸化鉛、酸化スズ、酸化インジウムスズ等);黒鉛、ドープされた無機半導体(例えばシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム等);ドープされた導電性ポリマー(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン等)が含まれる。第1電極211は、有利には酸化インジウムスズ(ITO)からなる。
【0018】
第1電極211は有利には、OLEDデバイス205によって形成される光の波長に対して透明又は半透明である。第1電極211の厚さは有利には、約10ナノメートル(nm)〜約1000nmであり、さらに有利には50nm〜約200nmであり、最も有利には約100nm〜150nmである。
【0019】
一般に第1電極層211は、当該技術分野において公知である、薄膜をデポジットするための任意の技術を使用して作製することができ、これには例えば、純金属又は合金又は他の薄膜状の前駆体を使用した、例えば真空蒸着、スパッタリング、電子ビームデポジション又は化学気相成長が含まれる。
【0020】
ABL215:
ABL215は、良好な正孔伝導特性を有し、第1電極211からEML216に正孔を有効に注入するために使用される。ABL215は、ポリマー又は小分子材料又は他の有機材料又は部分的に有機な材料からなる。例えば、ABL215は、共に小分子の形又はポリマーの形である第3アミン又はカルバゾール誘導体、導電性ポリアニリン(PANI)、又はPEDOT:PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸(PSS)の溶液)(HC Starck社からBaytron Pとして入手可能)から作製することができる。ABL215は、約5nm〜約1000nmの厚さを有することができ、また通常では約50〜約250nmが使用される。
【0021】
ABL215の他の例には、任意の小分子材料及びこれに類似するものが含まれ、有利には0.3〜3nmの厚さを有するプラズマ重合されたフルオロカーボンフィルム(CFx)、有利には10〜50nmの厚さを有する銅フタロシアニン(CuPc)フィルムなどが含まれる。
【0022】
ABL215は、選択的デポジション技術又は非選択的デポジション技術により形成させることができる。選択的デポジション技術の例には、例えばインクジェットプリント、フレックスプリント及びスクリーン印刷が含まれる。非選択的デポジション技術の例には、例えばスピンコーティング、浸漬コーティング、ウェブコーティング及びスプレーコーティングが含まれる。正孔輸送及び/又はバッファ材料は、第1電極211にデポジットされ、つぎに乾燥して薄膜にすることができる。乾燥した薄膜は、ABL215である。ABL215に対する他のデポジション法には、(CFx層用の)プラズマ重合、真空蒸着、又は(例えばCuPcの被膜用の)気相蒸着が含まれる。
【0023】
CEML216:
複合発光層(CEML)216は、複数のエレクトロルミネセンス材料から構成されており、これらの材料は、第1電極211と第2電極217とにわたって電位を加えることによって、又は別の励起によって光を発する。このCEMLは、モノマー、オリゴマー、小分子及びポリマーのような性質の有機又は有機金属の材料から作製することができる。ここで使用した有機という語には有機金属材料も含まれる。これらの材料における発光は、蛍光又は燐光の結果として形成することができる。異なる色スペクトルを発光する複数の発光材料は、スタンプ、印刷、蒸着、別のデポジション処理又はこれらの技法の任意の組み合わせによって合成されてCEML216が形成される。例えば、青色発光ポリマー材料に赤色及び緑色を発光する染料をスタンプすることによって、CEML216から白っぽい発光を得ることができる。CEML216に使用可能な発光材料の例に含まれるのは、以下である。
【0024】
(i)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン残基を様々な位置で置換したその誘導体;
(ii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びビニレン残基を様々な位置で置換したその誘導体;
(iii)ポリ(p−フェニレンビニレン)及びフェニレン残基を様々な位置で置換しかつビニレン残基を様々な位置で置換したその誘導体;
(iv)ポリ(アリーレンビニレン)、ここでアリーレンは、ナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール及びその類似体のような残基とすることが可能である;
(v)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体、ここでアリーレンは上記の(iv)と同様とすることができ、さらにアリーレンの様々な位置に置換基を有することができる;
(vi)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体、ここでアリーレンは上記の(iv)と同様とすることができ、さらにビニレンの様々な位置に置換基を有することができる;
(vii)ポリ(アリーレンビニレン)の誘導体、ここでアリーレンは上記の(iv)と同様とすることができ、さらにアリーレンの様々な位置に置換基及びビニレンの様々な位置に置換基を有することができる;
(viii)アリーレンビニレンオリゴマー、例えば(iv)、(v)、(vi)及び(vii)におけるアリーレンビニレンオリゴマーと、非共役オリゴマーとのコポリマー;及び
(ix)ポリ(p−フェニレン)及びフェニレン残基を様々な位置で置換したその誘導体、これにはラダーポリマー誘導体、例えばポリ(9,9−ジアルキルフルオレン)及びその類似体が含まれる;
(x)ポリ(アリーレン)、ここでこのアリーレンはナフタレン、アントラセン、フリレン、チエニレン、オキサジアゾール、及びその類似体のような残基:及びアリーレン残基を様々な位置で置換したその誘導体とすることができる;
(xi)オリゴアリーレン、例えば(x)で示したオリゴアリーレンと、非共役オリゴマーとのコポリマー
(xii)ポリキノリン及びその誘導体;
(xiii)ポリキノリンと、例えば溶解性を提供するためのアルキル基又はアルコキシ基でフェニレンを置換したp−フェニレンとのコポリマー;
(xiv)硬質のロッドポリマー(rigid rod polymer)、例えばポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスチアゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾイミダゾール)、及びその誘導体、及び
(xv)ポリビニルカルバゾール又は別の非共役ポリマー
が含まれる。
【0025】
ポリフルオレンを使用する別の有機発光材料に含まれるのは、緑色、赤色、青色又は白色の光を発光するもの、又はその類縁体、コポリマー、誘導体又はこれらの混合物である。他のポリマーには、ポリスピロフルオレン系のポリマー、その類縁体、コポリマー及び誘導体が含まれる。択一的にポリマーでもなく、又はポリマーとの組み合わせでもない、蛍光又はりん光によって発光する有機小分子を有機エレクトロルミネセンス層として使用するか、又は複合発光層の一部とすることが可能である。有機小分子材料の例に含まれるのは、
(i)トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3);
(ii)1,3−ビス(N,N−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4−オキシジアゾール(OXD−8);
(iii)−オキソービス(2−メチル−8−キノリナト)アルミニウム;
(iv)ビス(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム;
(v)ビス(ヒドロキシベンゾキノリナト)ベリリウム(BeQ.sub.2);
(vi)ビス(ジフェニルビニル)ビフェニレン(DPVBI);及び
(vii)アリールアミン置換したジスチリルアリーレン(DSAアミン)である。
【0026】
このEML216は任意の所望の色で発光することができ、かつ所望のようにポリマー、コポリマー、染料、ナノ粒子、小分子、ドーパント、クエンチャー、及び正孔輸送材料又はこれらの任意の組み合わせを含むことができる。付加的にEML216は、複合発光層における種々異なる発光材料のパターンの密度に依存して種々と異なる色の光を発することができる。
【0027】
さらに発光材料は、有機又は無機のりん光又は蛍光染料を含むことができる。例えば、使用する発光材料は、例えば、有機発光染料(例えばペリレン及びクマリン)のような染料を含むことができる。発光材料として、又は発光材料に付加的に使用可能なスペクトルコンバージョン材料の別の例に含まれるのは、例えば、セリウムをドーピングしたガーネット、窒化りん光体、イオン化したりん光体、例えばSrGa24:Eu2+又はSrS:Eu2+、又は量子点である。
【0028】
CEML216の厚さは、約5nm〜約500nmであり、有利には約20nm〜約100nm、さらに有利には約75nmとすることが可能である。さまざま発光材料をパターニングするために使用する方法は、別の方法でもよく、例えばPDMSスタンプ、発光体分子を含む溶媒のスピニング、パターンのインクジェット又は別の任意の印刷法及び蒸着を含むことができる。さらに、パターンの局所的な領域に必要な別の成分、例えば電荷輸送分子を拡散させて、印刷法によって変更された領域におけるデバイス性能を向上させることも可能である。
【0029】
このように発光材料に加えて、CEML216は、電荷輸送機能のある材料も含有することができる。電荷輸送材料には電荷担体を輸送することができるポリマー又は小分子が含まれる。例えば、ポリチオフェン、誘導体化されたポリチオフェン、オリゴマー型のポリチオフェン、誘導体化されたオリゴマー型のポリチオフェン、ペンタセン、トリフェニルアミン及びトリフェニルジアミンなどのような有機材料が含まれる。EML216は、半導体、例えばシリコン、ヒ化ガリウム、セレン化カドミウム又は硫化カドミウムも含むことができる。
【0030】
本発明の択一的な実施形態では、最初に非発光性の(例えば、ポリメチルメタクリレート又はポリカーボネート又はポリビニルカルバゾールの)マトリクス層をデポジットし、引き続き、パターン化を行って又はこれを行わずにマトリクス内にさまざまな発光材料を埋め込むことによってCEML216を作製することができる。このようにして各発光エリアは輸送材料を有し、また別の構成体は、固有の発光体に最適化される。各発光体の輸送材料は異なっていてもよい。
【0031】
第2電極217:
下面発光型の構成では、第2電極層217は、カソードとして機能する(カソードは、電子注入層として使用されかつ低い仕事関数を有する材料を含有する導電層である)。この第2電極は多数の異なる材料を含有することができるが、有利な材料に含まれるのは、アルミニウム、銀、金、マグネシウム、カルシウム、セシウム、バリウム、又はこれらの組み合わせである。さらに有利には、このカソードはアルミニウム、アルミニウム合金又はマグネシウムと銀の組み合わせを包む。付加的なカソード材料は、LiF等のようなフッ化物を含有していても良い。第2電極217は、ここでは単層として示されているが、上記の1つ又は複数の材料の任意の有利な組み合わせからなる複数の副層から構成することもできる。
【0032】
第2電極層217の厚さは、約10nm〜約1000nmであり、有利には約50nm〜約500nmであり、さらに有利には約100nm〜約300nmである。第2電極217をデポジットすることの可能な多数の方法が当業者には公知であるが、真空蒸着法及びスパッタリング法が有利である。
【0033】
本発明を実現するデバイスは次のように作製した。ITOコートされた(アノード)ガラス基板上に定められる大きなエリアピクセルを使用した。60nmのPEDOT層(アノードバッファ層)をその上にスピンコートした。これに続くのが青色発光ポリマー(LEP)薄膜である。つぎに緑色の染色によってプレコートしたスタンプを使用した。このスタンプは、青色LEPの最上部に配置され、緑色染色が、青色LEPの特定の領域に押し込まれた。これに続いて行われたのが赤色染料によるスタンプである。このようにして赤色及び緑色の領域のパターンを有する青色LEPの複合層が得られた。これに続いて行われるのが、単一の大きなカソードの蒸着である。このデバイスから得られる光は、上記の発光色の組み合わせである。したがってコスト的に有利な「白色」光源が得られるのである。
【0034】
図2には本発明の少なくとも1つの実施形態によるエレクトロルミネッセンス(EL)デバイス305の1実施態様の断面図が示されている。デバイス305は、次のものを除いてデバイス205とすべての点で類似又は同じであり、類似の参照番号が付された構成要素は同じ又は同様に説明される。すなわち、半導体積層314には少なくとも3層、EML216、正孔輸送(HT)中間層318及びアノードバッファ層(ABL)215が含まれるのである。
【0035】
HT中間層318:
HT層318の機能はつぎに挙げるもののうちのいくつかである。すなわち、EML216への正孔注入をアシストする機能、励起子の消光を低減する機能、電子輸送よりも良好な正孔輸送を提供する機能、及び電子がABL215へ侵入してこれを減損することを阻止する機能のうちのいくつかである。いくつかの材料は、上で列挙した所望の特性の1つ又は2つを有することができるが、この材料の中間層としての有効性は、これらが提示する特性の数によって改善されると考えられる。HT中間層318は、少なくとも部分的に次の1つ以上の化合物、その誘導体又はその残基などから構成されるか、又はそれらから誘導することができる。すなわち、ポリフルオレン誘導体、ポリ(2,7−(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン)−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン)及び架橋可能な形を含む誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)の発光しない形、架橋可能な小分子又はポリマーマトリックスと混合されたトリアリールアミン系材料(例えばトリフェニルジアミン(TPD)、α−ナフチルフェニル−ビフェニル(NPB))、チオフェン、オキセタン官能化ポリマー及び小分子等である。HT中間層318中で使用される正孔輸送材料は、有利にはポリマーの正孔輸送材料であるが、ポリマー結合剤を有する小分子の正孔輸送材料とすることも可能である。例えば、主鎖又は側鎖中に芳香族アミン基を含有するポリマーは、正孔輸送材料として広く使用される。HT中間層318の厚さは有利には10〜150nmである。HT中間層318の厚さは、更に有利には20〜60nmである。本発明のいくつかの実施形態では、HT中間層318は、架橋可能な正孔輸送ポリマーを用いて作製される。
【0036】
本発明の少なくとも1つの実施形態によれば、HT中間層318は1つ以上の有機及び/又は無機の導電性ドーパントも有することができる。1つ以上の実施形態において、無機の導電性ドーパントには、例えば次のもののうちの少なくとも1つが含まれている。すなわち、塩化鉄(FeCl3)、臭化鉄(FeBr3)、五塩化アンチモン(SbCl5)、五塩化ヒ素(AsCl5)、三フッ化ホウ素(BF3)などが含まれている。1つ以上の実施形態において、有機の導電性ドーパントには、例えば次のもののうちの少なくとも1つが含まれている。すなわち、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、ジシアノジクロロキノン、及びトリニトロフルオレノン等が含まれている。
【0037】
このHT中間層318は、後続の隣接層、例えばEML216の作製時に使用される溶剤にさらされる場合、有利には架橋されるか又は他に物理的に又は化学的に不溶性にされて、このHT中間層318の劣化が抑制される。架橋は、HT中間層318のデポジットした溶液又は薄膜を光、紫外線、熱にさらすか、又は化学的プロセスによって達成することができる。これに含まれ得るのは、紫外線硬化性インキ、架橋性側鎖、架橋性鎖末端基、架橋してポリマーにすることの可能なモノマー、架橋剤、開始剤、ポリマーブレンド、ポリマーマトリックス等を使用することである。有機材料を架橋させる一般的方法は周知であり、ここでは更に説明しない。架橋とは択一的に可能なものとして、HT中間層318は、EML216の作製時に使用する溶剤(例えばトルエン、キシレン等)の極性にしたがって、その極性を調節することによって不溶性にすることができる。HT中間層318は、インクジェット印刷、スピンコーティング又は他の適当なデポジット技術によって架橋プロセスの前に又は架橋プロセスと一緒に作製することができる。
【0038】
図3には本発明の少なくとも1つの実施形態による、光素子に使用される複合発光層の平面図が示されている。ここには青色発光薄膜が示されている。この青色発光薄膜の上に緑色染料がスタンプされて正方形の緑色発光領域が形成されている。この緑色発光領域は、下にある青色発光薄膜の上に設けるか、この薄膜に埋め込むことができる。付加的な発光材料を同様にスタンプまたは印刷することができる。
【0039】
上記のOLEDディスプレイ/デバイスは、例えば、コンピュータディスプレイ、車両のインフォメーションディスプレイ、テレビジョンモニタ、電話、プリンタ、及び照明付きの標識などの用途においてディスプレイ内で使用することができ、また白色及び有色光の照明、住居及び一般的な面照明に対する照明用途およびバックライト用途および工業的照明に使用することができる。照明において期待されているのは、ここに記載したデバイスの「飽和していない」色に起因して、(大きな演色評価数に必要な)プランク曲線に沿った色調整が、種々異なる飽和していない色を発光するOLEDの組み合わせを使用することによって簡単に達成できることである。またこのようなデバイスにおいて、発光は色の組み合わせから構成されているのにもかかわらず、このデバイス内のパターンニングされた領域は局所的にはなお単一の色を発光している。従来、OLEDの分野では1デバイス内の単一発光部分からの発光により、最善のデバイス効率が可能になるのであり、この発光は、組み合わせ形の発光体の発光を上回ることが多い。本発明によって回避されるのは、色範囲を得るために個々に飽和したピクセルが要求されることである。同時に局所的に見れば、上記の発光は実際に単色から得られるのであり、効率はまったく損なわれていないのである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の少なくとも1つの実施形態によるエレクトロルミネ(EL)デバイス205の1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の少なくとも1つの実施形態によるELデバイスの実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の少なくとも1つの実施形態による、光素子に利用される複合発光層の平面図である。
【符号の説明】
【0041】
205 ELデバイス、 208 基板、 211 第1電極、 214 半導体スタック、 215 アノードバッファ層、 216 複合発光層、 217 第2電極、 318 正孔輸送中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて、
該デバイスには、
基板と、
該基板に配置された第1電極と、
該第1電極に配置された複合発光層と、
該複合発光層に配置された第2電極とが含まれており、
前記複合層には第1発光材料が含まれており、
該第1発光材料は、少なくとも1つの付加的な発光材料によってパターニングされ、
当該の付加的な発光材料により、前記の第1発光材料とは異なるスペクトルが発させられ、
さらに前記の第2電極および第1電極は、複合発光層全体に共通であり、かつ該複合発光全体をアドレッシングすることを特徴とする
有機エレクトロルミネッセンスデバイス。
【請求項2】
さらに前記の第1電極と複合発光層との間に、コーティングされたアノードバッファ層が含まれている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1電極には正孔注入電極が含まれている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2電極には電子注入電極が含まれている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
更に、前記のアノードバッファ層と複合発光層との間に配置された正孔輸送中間層が含まれている、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記の複合発光層は更に電荷輸送材料を含んでいる、
請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記の第1発光材料は、薄膜または層として作製される、
請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、第1発光材料の薄膜または層にスタンプまたは配置される、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は染料である、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記の第1発光材料は、ポリマーである、
請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記の第1発光材料は、小分子である、
請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
前記の第1発光材料は、黄色、青色、緑色、赤色、シアンおよびオレンジのうちの少なくとも1色に発光する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、黄色、青色、緑色、赤色、シアンおよびオレンジのうちの少なくとも1色に発光する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、第1発光材料の薄膜または層に印刷または配置される、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項15】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、蒸着によって第1発光材料の層に配置される、
請求項7に記載のデバイス。
【請求項16】
前記の第1発光材料は、青色に発光する、
請求項1記載のデバイス。
【請求項17】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、緑色に発光する発光材料と、赤色に発光する別の発光材料を含んでいる、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項18】
前記の複合発光層は、非発光性のマトリクスを含んでおり、
前記の第1発光材料および少なくもと1つの付加的な発光材料は、当該マトリクス内または該マトリクス上にデポジットされる、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
前記の有機エレクトロルミネセンスデバイスは、照明素子である、
請求項1記載のデバイス。
【請求項20】
前記の複合発光層は、非発光性のマトリクスを含んでおり、
前記の第1発光材料および対応する電荷輸送材料は当該マトリクス内または該マトリクスにデポジットされ、
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料および対応する輸送材料は、当該マトリクス内または該マトリクスにデポジットされる、
請求項6に記載のデバイス。
【請求項21】
前記の第1発光材料は、少なくとも1つの付加的な発光材料とは異なるパターンで前記マトリクス上にデポジットされる、
請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記の少なくとも1つの発光材料および少なくとも1つの電荷輸送材料は、前記マトリクス内または該マトリクスにデポジットされる、
請求項6に記載のデバイス。
【請求項23】
前記の少なくとも1つの付加的な発光材料は、前記のマトリクス内または該マトリクスにデポジットされる、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記の非発光性のマトリクスは、非共役ポリマーを含む、
請求項14に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−208267(P2007−208267A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−23445(P2007−23445)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(599133716)オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (586)
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
【住所又は居所原語表記】Wernerwerkstrasse 2, D−93049 Regensburg, Germany
【Fターム(参考)】