説明

単動エアシリンダおよび自動ワインダ

【課題】 テンション装置等の各種の糸処理装置を介して糸を巻き取る際に、糸処理装置が備えるシリンダ内部に風綿の侵入や堆積を防止する単動エアシリンダを提供し、該単動エアシリンダを備え、風綿の影響を受けることなく巻取操作可能な自動ワインダを提供することである。
【解決手段】 所定間隔離間したエア通孔を有するエアバイパス路5を設けたので、ピストン3が摺動する際の所定のタイミングで、エア注気口とピストンヘッド間に区画形成される圧力室8Aと、ピストンヘッドと出口部間に区画形成される排気室8Bとを連通して空気が排出され、ピストン3が摺動する度にピストンロッド出入り口部を清掃する構成の単動エアシリンダ1とした。また、前記単動エアシリンダを駆動源とする糸処理装置を備える自動ワインダとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風綿等の異物が内部に進入して堆積することを防止可能な単動エアシリンダに関し、さらに、この単動エアシリンダが好適に適用される自動ワインダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の給糸ボビンを大径の巻取パッケージに巻き取る巻取ユニットU(図4参照)を並列してなる自動ワインダにあっては、一般に、綿等の短繊維からなる紡績糸である糸Yを給糸ボビンBから解舒し、テンション装置10により所定糸張力を付与すると共にトラバースしながら巻取ボビンBf上に巻き付けて、大径の所定形状の巻取パッケージPを巻成している。
【0003】
それぞれの巻取ユニットUは、それぞれサイドフレーム18を備えており、巻取ボビンBfを保持するクレードル17および綾振りドラム16や後述する上糸捕捉案内手段15や中継ぎパイプ12等の装置がこのサイドフレーム18に装着されている。また、該サイドフレーム18には、前記綾振りドラム16の駆動モータや上糸捕捉案内手段15等の駆動手段が配設されていると共に、巻取運転の制御を行うための電装部19が備えられている。
【0004】
それぞれの巻取ユニット本体の下部側に配置される給糸ボビンBから解舒される糸Yを、上部側に配置する綾振りドラム16により接触回転駆動される巻取パッケージPに巻き取るまでの糸走行経路中には、給糸側から巻取側へ向かって、解舒補助装置11、テンション装置10、ヤーンクランプ12Aとサクションパイプ12Bを備える中継ぎパイプ12、糸継ぎ装置13、クリアラー(糸太さ検出器)14等の各種の糸処理装置が配設されている。
【0005】
解舒補助装置11は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸Yの解舒を補助するものである。糸継ぎ装置13は、糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は解舒中の糸切れ時に、給糸ボビンB側の下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎするものである。クリアラー14は、Yの太さ欠陥を検出するためのものである。さらに、このクリアラー14には、糸欠陥を検出した時の糸切断用のカッター14aが付設されている。
【0006】
また、巻取部WAは、巻取ボビンBfを把持するクレードル17と糸Yをトラバースさせる綾振りドラム(巻取ドラム)16とを備えている。クレードル17は、綾振りドラム16に向けて揺動自在であり、それによって巻取ボビンBfに巻き形成された巻取パッケージPが綾振りドラム16に対して接触又は離反される。また、クレードル17には、糸切れ時にクレードル17を上げて、巻取パッケージPを綾振りドラム16から離反させるリフトアップ機構17aと、クレードル17を上げると同時に、クレードル17に把持された巻取パッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構17bが取り付けられている。
【0007】
糸継ぎ装置13の上下には、給糸ボビンB側の下糸を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段である中継ぎパイプ12と、巻取パッケージP側の上糸を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段15が設けられている。
【0008】
中継ぎパイプ12はサクションパイプ12Bと該サクションパイプ12Bの先端に装着
されるヤーンクランプ12Aとを備えている。糸切断時又は糸切れ時には、中継ぎパイプ12のヤーンクランプ12Aが図示の位置で、クリアラーのカッター14aと給糸ボビンBに連なる下糸を捕捉し下から上へと旋回して、糸継ぎ装置13に下糸を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段15のサクションマウス15aが図示の位置から軸15bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられる巻取パッケージPから上糸を捕捉し、更に軸15bを中心にして上から下へと旋回し、糸継ぎ装置13に上糸を案内する。糸継ぎ装置13は、例えば旋回空気流を用いて糸継ぎするエアースプライサーであって、前記糸継ぎ装置13により、引き揃えられた下糸と上糸とが糸継ぎされる。
【0009】
上記のようにして、給糸ボビンBから解舒される下糸と、巻取パッケージP側の上糸とを糸継ぎしながら巻上げていって、所定長で所定形状の巻取パッケージPを巻成するものである。
【0010】
ところが、前記従来の自動ワインダによる巻取工程中においては、綿等の短繊維からなる紡績糸が高速走行しながら巻き取られていくので、走行路の周囲に風綿と称する細かい繊維屑を撒き散らすことになる。そのために、各糸処理装置、特に、糸に所定の糸張力を付与するために、例えば糸Yを挟持する2枚のディスクを有するテンション装置や糸Yをジグザグに走行させてテンションを付与するゲートテンサーを有するテンション装置付近には、大量の風綿が発生して堆積する虞が生ずる。
【0011】
また、風綿が発生してテンション装置付近、例えば前記2枚のディスク間に詰まると、糸Yに付与するテンションが変動することになり、糸のテンションが不安定となって、巻取異常の原因となり巻取パッケージPの形が崩れたり、巻径異常が生じたりする問題が発生する。
【0012】
そのために、ゲートテンサー方式のテンション装置を備える自動ワインダにおいて、ゲートテンサーに直接清掃用空気を吹き付けて風綿を除去するとした糸巻取装置のテンション装置が既に本出願人から出願されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−278542号公報(第1−5頁、第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
巻取工程中に発生する風綿は、前述したように非常に細かい繊維屑であるので、ゲートテンサーやディスク部だけでなく、軸部やネジ部などの装置のあらゆる部分に侵入し堆積する問題を生じる。
【0014】
また、装置本体から突出する軸部から装置内部に侵入する虞もあり、特に回転軸が装置内部から突出した構成では、軸と装置本体壁面との僅かな隙間に風綿が侵入することになる。隙間に風綿が堆積すると、軸の回転に悪影響を及ぼすことになり、装置に障害が発生し、問題となる。
【0015】
そのために、モータやソレノイドやシリンダなどの駆動源を内蔵するテンション装置の場合では、ケーシングの外部に設けるテンサー部材のみを清掃するだけでは不十分であり、装置内部の風綿の侵入し易い部分や堆積し易い部分の全てを清掃するか、もしくは、風綿等の侵入を阻止して堆積するのを防止する必要がある。
【0016】
本発明の目的は、上記問題を解決するために、テンション装置等の各種の糸処理装置を介して糸を巻き取る際に、糸処理装置が備えるシリンダ内部に風綿の侵入や堆積を防止する単動エアシリンダを提供し、該単動エアシリンダを備え、風綿の影響を受けることなく
巻取操作可能な自動ワインダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために請求項1に係る発明は、ピストンとシリンダとを備え、シリンダの一方側にエア注気口を、シリンダの他方側に、シリンダ内を摺動するピストンの後端が突出する開口部を有する単動エアシリンダであって、前記ピストンが、前記シリンダ内を摺動すると共にシール部材をその周上に備えるピストンヘッドと、該ヘッドに連なり前記開口部から突出するピストンロッドとを有しており、前記シリンダ内の前記エア注気口に近い位置と前記開口部に近い位置とに所定間隔離間したエア通孔とこれらを連結する流通溝を有するエアバイパス路を設け、前記ピストンが摺動する際の所定のタイミングで、前記エア注気口と前記ピストンヘッド間に区画形成される圧力室と、前記ピストンヘッドと前記開口部間に区画形成される排気室とを連通する構成としたことを特徴としている。
【0018】
上記の構成を有する請求項1に係る発明によれば、シリンダ内を摺動するピストンの所定のタイミングで、エアバイパス路を介して、圧縮空気が圧力室から排気室に方へ流れるので、排気室への風綿や塵埃等の侵入を防止することができる。また、一旦侵入した風綿等であっても、空気を噴出す毎に排出されるので、ピストンロッドの出入り口部に、風綿等が付着したり、堆積したりしない。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記開口部が前記シリンダの内径部から縮径する段部を有し、前記ピストンロッドと前記段部との間隙を小さくしていると共に、前記段部が前記ピストンヘッドのストッパとなることを特徴としている。
【0020】
上記の構成を有する請求項2に係る発明によれば、摺動するピストンロッドとシリンダとの間隙が小さく風綿等が侵入し難い。また、エアバイパス路を介して所定のタイミングで圧縮空気を噴射するので、一旦侵入した風綿や塵埃等をただちに外部に排出することができる。
【0021】
請求項3に係る発明は、前記開口部が前記シリンダの内径部からそのまま段部を設けることなく開放されていることを特徴としている。
【0022】
上記の構成を有する請求項3に係る発明によれば、ピストンロッドが出入りする開口部が大きく開放されているので、風綿等が挟み込まれることがない。さらに、エアバイパス路を介して噴射されるエアにより、ピストンロッドが摺動する度に風綿等を吹き飛ばすことができるので、風綿等が堆積することもない。
【0023】
請求項4に係る発明は、糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置を有し、複数の小径の給糸ボビンの糸を糸継ぎしながら一個の大径の巻取パッケージに巻き取る自動ワインダであって、前記糸処理装置が請求項1から3のいずれかに記載の単動エアシリンダを備えていることを特徴としている。
【0024】
上記の構成を有する請求項4に係る発明によれば、糸を巻き取る際に風綿を大量に発生する自動ワインダに装着される糸処理装置であっても、その駆動源部分に、風綿を除去可能な単動エアシリンダを用いているので、風綿の影響を抑制可能な自動ワインダとすることができる。
【0025】
請求項5に係る発明は、前記糸処理装置が、糸に所定の張力を付与するテンション装置であって、糸継ぎ動作の度に糸の有無に応じて前記単動エアシリンダが短時間に駆動されることを特徴としている。
【0026】
上記の構成を有する請求項5に係る発明によれば、糸の巻取工程中の糸切れ発生の度にまた糸継ぎ動作の度に短時間開閉操作される単動シリンダを備えるテンション装置となるので、その度に風綿を除去することになり、風綿を大量に発生する自動ワインダのテンション装置であっても、風綿の影響を抑制可能とすることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シリンダ内のエア注気口に近い位置とピストンロッド出入り口部に近い位置とに所定間隔離間したエア通孔を有するエアバイパス路を設けたので、ピストンが摺動する際の所定のタイミングで、前記エア注気口とピストンヘッド間に区画形成される圧力室と、前記ピストンヘッドと前記出入り口部間に区画形成される排気室とを連通して空気が排出され、ピストンが摺動する度にピストンロッド出入り口部を清掃する構成の単動エアシリンダとすることができる。また、前記単動エアシリンダを駆動源とする糸処理装置を備える自動ワインダであれば、風綿を大量に発生する自動ワインダであっても、風綿の影響を抑制可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る単動エアシリンダおよび自動ワインダの実施の形態について、図1から図4に基づいて説明する。
【0029】
図1は本発明に係る単動エアシリンダの第一の実施例を示しており、(a)はピストンを引き込んだ状態の断面図であり、(b)はピストンが押し出され始めてエアバイパス路に空気が流れ始める状態の断面図であり、(c)はピストンがさらに押し出されてエアバイパス路への空気流入が停止する状態の断面図であり、(d)はピストンが最後まで押し込まれた状態を示す断面図である。図2はエアバイパス路の拡大断面図である。図3には本発明に係る別実施例の単動エアシリンダを示しており、(a)はピストンロッド出入り口部となる開口部が開放された第二実施例の側面図であり、(b)は開放された開口部に段差を設けた第三実施例の断面図である。図4は、自動ワインダの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【0030】
図4に示すように、本発明に係る自動ワインダは、それぞれの巻取ユニットU本体の下部側に給糸ボビンBが配置され、該給糸ボビンBから解舒した糸Yを、テンション装置10を介して所定のテンションを付与しながら、上部側の巻取部WAに配設される綾振りドラム16により接触回転駆動される大径の巻取パッケージPに巻き取っている。
【0031】
そのために、多数の小径の給糸ボビンBから引き出した糸Yを、糸道に沿って、走行する糸Yに適宜処理を付与する糸処理装置を介して、大径の一個の巻取パッケージPに巻き取る構成である。また、小径の前記給糸ボビンBを順次交換するので、そのたび毎に糸処理装置の一つである糸継ぎ装置13が糸継ぎして、連続した一本の糸Yとして巻き取る構成としている。
【0032】
また前述した通り、糸Yの不良部分をクリアラー14が検知するたびに、糸Yを切断し、再度糸継ぎして巻取するので、糸継ぎ回数はさらに増加することになる。
【0033】
そのために、糸Yの巻取工程中には、糸Yの走行が頻繁に停止され、停止、糸継ぎ、走行再開、高速走行、停止を繰り返していくことになって、糸Yの走行する範囲に風綿を撒き散らしている。そのために、糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置の周辺には大量の風綿が存在することになる。
【0034】
大量の風綿が発生すると、各糸処理装置の駆動源部にも風綿が侵入して堆積することに
なり、特に摺動するピストンロッドの出入り口部に風綿が堆積すると、その動きが阻害されたり、摺動ストロークが変位する場合があり、正常な動作が行えない不具合が生じる虞がある。
【0035】
そのために、本発明においては、各糸処理装置の駆動源部に使用される単動エアシリンダを、風綿等が侵入し難い構成、もしくは、侵入した風綿や堆積した風綿等を排出し易い構成とした。例えば、図示するように、テンション装置10の糸Yを挟持するディスクの開閉を行う駆動源部に本発明に係る単動エアシリンダ1を用いる構成としている。
【0036】
次に図1および図2より、風綿等が侵入し難い構成とした本発明に係る単動エアシリンダの第一の実施例について詳細に説明する。
【0037】
図1(a)にはピストン3が引き込まれている状態の単動エアシリンダ1Aを示す。単動エアシリンダ1Aは、シリンダ2とピストン3を備えている。シリンダ2は、その内径部をピストン3が摺動する筒状本体2Aを備えており、該筒状本体2Aの一方側には、エア注気口6Aを、また他方側にはシリンダ内を摺動するピストン3のピストンロッド3Aが突出する開口部が形成されている。
【0038】
単動エアシリンダ1Aは、前記エア注気口6Aが設けられた底部材6を介して取付部剤7に固着されており、前記取付部剤7に装着される配管部材9を介して圧縮空気が供給される構成とされている。
【0039】
ピストン3は、シリンダの筒状本体2A内を摺動すると共にゴムシール等のシール部材4をその周上に備えるピストンヘッド3Bと、該ヘッドに連なり前記開口部から突出するピストンロッド3Aとを有している。また、前記開口部にはピストンロッド3Aの外周面まで近接するように段部2Bが延設されており、ピストンロッド3Aとの間に隙間Eが形成されている。
【0040】
シリンダ2の筒状本体2Aには、前記エア注気口6Aに近い位置と前記開口部に近い位置とに所定間隔離間したエア通孔5B、5Cを有し、それらを連通する流通溝5Aを備えるエアバイパス路5を設けている。そのために、前記ピストン3が摺動する際の所定のタイミングで、前記エア注気口と前記ピストンヘッド間に区画形成される圧力室8Aと、前記ピストンヘッド3Bと前記開口部間に区画形成される排気室8Bとが連通して、圧力室8Aに供給される圧縮空気が排気室8Bに流れ込む構成とされている。
【0041】
エア通孔5B、5Cと、これらを連結する流通溝5Aを備えるエアバイパス路5を形成する方法としては、例えばシリンダ2の筒状本体2Aを、内筒と外筒との組み合わせ構成として、エア通孔5B、5Cが形成された内筒の外周面もしくは外筒の内周面に前記流通溝5Aを設けることで実現可能である。
【0042】
また、エア通孔5B、5Cの位置とその間の距離Lは、後述するように、前記排気室8Bに圧縮空気を送り込む所定のタイミングを規定する位置と長さとなる。
【0043】
配管部材9およびエア注気口6Aを介して圧縮空気が供給されると、ピストンヘッド3Bがシリンダ2の筒状本体2A内を摺動し、図1(b)に示す矢印D1方向に押し出される。
【0044】
そして、ピストンヘッド3Bに装着されるシール部材4がエア通孔5Bを通過すると、圧力室8Aに供給される圧縮空気がエア通孔5Bから流通溝5Aを介して排気室8B側に位置するエア通孔5Cに流れ込む。
【0045】
流れ込む圧縮空気は、排気室8B内を昇圧すると共に、開口部の段部2Bとピストンロッド3Aの外周部との隙間Eから噴出する。
【0046】
さらに、新たな圧縮空気が供給されると、ピストン3がさらに矢印D1方向に移動し、図1(c)に示すように、シール部材4がエア通孔5Cを通過する。
【0047】
シール部材4がエア通孔5Cを通過すると、エアバイパス路5が全て圧力室8Aに含まれることになり、エアバイパス路5を経由する圧縮空気は排気室8Bには流れず、排気室8Aの昇圧は停止される。つまり、隙間Eからの噴出が停止する。
【0048】
さらに、圧縮空気が供給されると、ピストン3がさらに矢印D1方向に移動し、図1(d)に示すように、ピストンヘッド3Bが段部2Bに当接してストロークエンドとなる。つまり、前記段部2Bはピストンヘッド3Bの移動を停止するストッパとなる。
【0049】
このように、ピストン3は、その初期移動開始時と、最後の移動終端(ストロークエンド)時に、供給される圧縮空気が全て矢印D1方向の押圧力として作用し、中間移動時の所定の時間のみ、一部の圧縮空気を、排気室8Bに送り込んでいる。そのために、ピストン3の移動が阻害されることはなく、滑らかなストロークが可能な構成とされている。
【0050】
ピストン3がストロークエンドまで移動した後は、圧縮空気の給排を制御するバルブを排気側とすると共に、開口部から突出したピストンロッド3Aを、シリンダ内に押し込む方向に押圧する外力を作用させることで、図1(a)に示す待機位置に戻すことができる。
【0051】
上記したように、配管部材9を介して供給される圧縮空気は、その大部分がピストン3を移動させる駆動力として作用し、一部の空気がエアバイパス路5を経由して排気室8Bを昇圧する作用を発揮する。つまり、前記エアバイパス路5を流れる空気量は、ピストン3の摺動移動を阻害しない程度とされている。
【0052】
図2にエアバイパス路5の拡大断面図を示すが、ピストンヘッド3Bに装着したシール部材4が通過した後で、エア通孔5Bに圧縮空気が流れ出すところを示している。前記エア通孔5Bは、例えば、円周上に設ける複数(2〜4個)の0.5mm程度の小孔であって、配管部材9を介して供給される圧縮空気の一部が分岐するようにしている。また、前記エア通孔5Bの配設位置を、シリンダ2内の所定の位置とすることで、ピストン3の移動の途中から、一部の圧縮空気をエア通孔5Bに分岐する構成とすることができる。そのために、既に移動中のピストン3はその摺動抵抗は静止摩擦ではなく動摩擦状態であり小さくなっており、一部の圧縮空気により、排気室8Bが昇圧しても、摺動移動が停止する程の抵抗とはならない。
【0053】
エア通孔5Bに分岐した圧縮空気は、流通溝5Aを介して排気室8B側に位置するエア通孔5Cに流れ込んで、前記隙間Eから排気流Fとして噴出する。この噴出により、前記排気室8B内に侵入した風綿や、前記隙間Eに堆積した風綿等が排出除去される。
【0054】
ピストン3が移動して、前記シール部材4がエア通孔5Cを通過すると、圧縮空気の排気室8Bへの流入が停止する。その後は、ピストン3の移動に連れて排気室8B内の空気が排出される。突出したピストンロッド3Aは、シリンダ内に押し込む方向に外力を作用させることで、前述した待機位置に戻すことができる。この移動の際には、前記隙間Eから外気が侵入するので、この外気と共に風綿等の異物が侵入する。しかし、再度、ピストン3が駆動されると、前述した風綿除去作用が作用し、排気室8Bに侵入した異物を排出
し、隙間Eに堆積した異物を除去することができる。
【0055】
図3には侵入した風綿や堆積した風綿等を排出し易い構成とした別実施例の単動エアシリンダを示している。この例は、排気室を区画せずに開放型とした例である。
【0056】
図3(a)は、開放型の排気室8BAを有する第二実施例の単動エアシリンダ1Bを示している。図3(b)には、開放型ではあるが、小さな段部2Cを有する第三実施例の単動エアシリンダ1Cを示している。
【0057】
排気室を開放型とし、前述したエアバイパス路5を設ける構成とすれば、ピストンを駆動する度に、圧縮空気を分岐して風綿等の異物を除去するエア吹き付けを行うことができる。つまり、排気室を常に清掃する構成となる。
【0058】
この際に、図3(a)のように、完全開放型の単動エアシリンダ1Bであれば、ピストンロッド3Aの先端に当接する相手部材(付図示)がストッパとなる。また、ピストンロッド3Aの外周部に複数のリブ3Cを設けて、該リブをガイドすることでピストンストローク時のピストンの平行度を保持することができる。
【0059】
また、図3(b)のように、シリンダの開口部に設ける段部2Cを用いて、ピストンヘッド3Bのストッパとし、ピストンロッドのストロークを制御する構成とすることができる。この構成であれば、相手部材の位置に拘らずにピストンのストロークエンドを規定することができるが、段部2C部に風綿等の異物が堆積する虞が生じる。しかし、ピストンの駆動の度に生じるエア吹き付けのために、一旦堆積した風綿等の異物であっても、除去することが可能である。
【0060】
上記したように、本発明に係る第一〜第三実施例の単動エアシリンダは、ピストン3のストローク中のある時間の所定のタイミングで、加圧室から排気室に向けてエア漏れを発生するエアバイパス路をシリンダ本体に設けた構成としている。
【0061】
そのために、ピストンロッド3Aのストローク中の所定のタイミングで、ピストンロッド3Aが出入りする開口部から圧縮空気が漏れ出して、風綿等の異物を排出することができる。また、この漏れ出しはピストン3のストローク中のある瞬間に生じる現象であり、さらに、ピストンが動き出した後の所定タイミングで漏れ出す構成としているので、小さな動摩擦抵抗で慣性を有しながら移動しているピストン3の動きを阻害する大きさの抵抗とはならない。
【0062】
また、前述した通り、糸を巻き取る繊維機械である自動ワインダは、糸に所定の張力を付与するテンション装置や、糸にワックスを含有させるワキシング装置や、糸継ぎ装置などの、糸を巻き取る際に、走行する糸に接する部材を備える各種の糸処理装置を備えている。そのために、本発明に係る単動エアシリンダ1をその駆動源としている糸処理装置を備える自動ワインダであれば、糸を巻き取る際に風綿を大量に発生する自動ワインダに装着される糸処理装置であっても、その駆動源部分に、風綿を除去可能な単動エアシリンダを用いているので、風綿の影響を抑制可能な自動ワインダとすることができる。
【0063】
また、自動ワインダにおける巻取工程中では、糸Yの糸継ぎが頻繁に繰り返されるので、この糸継ぎが行われる毎に、前記糸処理装置を駆動し、圧縮空気を瞬間的にもしくは短時間供給する構成とすることが容易に可能となる。
【0064】
そのために、糸に所定の張力を付与するテンション装置の駆動源部に本発明に係る単動エアシリンダを用いる構成とすれば、糸の巻取工程中の糸切れ発生の度にまた糸継ぎ動作
の度に短時間開閉操作される単動シリンダを備えるテンション装置となるので、その度に風綿を除去することになり、風綿を大量に発生する自動ワインダのテンション装置であっても、風綿の影響を抑制可能となる。
【0065】
また、糸継ぎ装置が圧縮空気を噴射してスプライスを行うスプライサーであれば、糸継ぎ動作のタイミングに同期して前記風綿対策装置に圧縮空気を供給する構成とすることができる。
【0066】
上記の構成であれば、既に自動ワインダに標準装備されているエア配管部に、前記エア配管部材9に至る配管経路を設けるだけでよく、噴射タイミングを制御するバルブ制御も、糸継ぎ用バルブの制御タイミングを利用して行うことができ容易となる。
【0067】
実際には、風綿吹き飛ばしのための圧縮空気噴射時間は1秒以下でよく、また、頻繁に糸継ぎを行う自動ワインダの巻取ユニットにおいては、その噴射時間はさらに短くてもよい。
【0068】
上記の構成であれば、糸継ぎする毎に短時間圧縮空気吹き付けを行うことになるので、糸巻取工程中には圧縮空気を噴射せず、風綿を撒き散らすこともないので、巻成される巻取パッケージPへの風綿の混入を抑制することができ好適である。
【0069】
上記したように、各糸処理装置を備え綿等の短繊維からなる紡績糸を巻き取る繊維機械であっても、各糸処理装置の駆動を本発明に係る単動エアシリンダを用いて行うことで、駆動源部分への風綿の侵入や堆積を防止することが可能となる。そのために、本発明に係る単動エアシリンダを備える自動ワインダであれば、風綿を発生し易い糸の巻取工程中であっても、風綿の影響を抑制しながら巻取可能となる。
【0070】
上記したように本発明によれば、シリンダ内のエア注気口に近い位置とピストンロッド出入り口部に近い位置とに所定間隔離間したエア通孔を有するエアバイパス路を設けたので、ピストンが摺動する際の所定のタイミングで、前記エア注気口とピストンヘッド間に区画形成される圧力室と、前記ピストンヘッドと前記出入り口部間に区画形成される排気室とを連通して空気が排出され、ピストンが摺動する度にピストンロッド出入り口部を清掃する構成の単動エアシリンダとすることができる。また、前記単動エアシリンダを駆動源とする糸処理装置を備える自動ワインダであれば、風綿を大量に発生する自動ワインダであっても、風綿の影響を抑制可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る単動エアシリンダの第一の実施例を示しており、(a)はピストンを引き込んだ状態の断面図であり、(b)はピストンが押し出され始めてエアバイパス路に空気が流れ始める状態の断面図であり、(c)はピストンがさらに押し出されてエアバイパス路への空気流入が停止する状態の断面図であり、(d)はピストンが最後まで押し込まれた状態を示す断面図である。
【図2】エアバイパス路の拡大断面図である。
【図3】本発明に係る別実施例の単動エアシリンダを示しており、(a)はピストンロッド出入り口部となる開口部が開放された第二の実施例の側面図であり、(b)は開放された開口部に段差を設けた第三の実施例の断面図である。
【図4】自動ワインダの巻取ユニットの一例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0072】
1 単動エアシリンダ
2 シリンダ
3 ピストン
3A ピストンロッド
3B ピストンヘッド
4 シール部材
5 エアバイパス路
5A 流通溝
5B エア通孔
5C エア通孔
E 隙間
U 巻取ユニット
Y 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンとシリンダとを備え、シリンダの一方側にエア注気口を、シリンダの他方側に、シリンダ内を摺動するピストンのピストンロッドが突出する開口部を有する単動エアシリンダであって、
前記ピストンが、前記シリンダ内を摺動すると共にシール部材をその周上に備えるピストンヘッドと、該ヘッドに連なる前記ピストンロッドとを有しており、
前記シリンダ内の前記エア注気口に近い位置と前記開口部に近い位置とに所定間隔離間したエア通孔とこれらを連結する流通溝を有するエアバイパス路を設け、前記ピストンが摺動する際の所定のタイミングで、前記エア注気口と前記ピストンヘッド間に区画形成される圧力室と、前記ピストンヘッドと前記開口部間に区画形成される排気室とを連通する構成としたことを特徴とする単動エアシリンダ。
【請求項2】
前記開口部が前記シリンダの内径部から縮径する段部を有し、前記ピストンロッドと前記段部との間隙を小さくしていると共に、前記段部が前記ピストンヘッドのストッパとなることを特徴とする請求項1に記載の単動エアシリンダ。
【請求項3】
前記開口部が前記シリンダの内径部からそのまま段部を設けることなく開放されていることを特徴とする請求項1に記載の単動エアシリンダ。
【請求項4】
糸道に沿って、走行する糸に適宜処理を付与する糸処理装置を有し、複数の小径の給糸ボビンの糸を糸継ぎしながら一個の大径の巻取パッケージに巻き取る自動ワインダであって、前記糸処理装置が請求項1から3のいずれかに記載の単動エアシリンダを備えていることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項5】
前記糸処理装置が、糸に所定の張力を付与するテンション装置であって、糸継ぎ動作の度に糸の有無に応じて前記単動エアシリンダが短時間に駆動されることを特徴とする請求項4に記載の自動ワインダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284827(P2007−284827A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114199(P2006−114199)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】