説明

単相/三相変換装置及び制御方法

【課題】単相/三相変換装置において、負荷電力によらずに、適正に脈動補償ができる出力範囲を広げること。
【解決手段】単相/三相変換装置1では、脈動補償用コンデンサCcと保護回路部30の保護用コンデンサCpとの間に並列接続回路部40が設けられている。並列接続回路部40は、「マトリックスコンバータ部10の出力がゼロ電圧のとき」、或いは、「脈動補償されていないとき」に、保護用コンデンサCpを脈動補償用コンデンサCcに並列接続させて、保護用コンデンサCpの蓄積電力で脈動補償用コンデンサCcを充電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相電力を三相電力に変換する単相/三相変換装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
交流から交流に直接電力を変換するコンバータとしてマトリックスコンバータが知られている。マトリックスコンバータは、交流を一旦直流に変換してから交流を作る従来の電力変換装置に比べて電力変換効率が高く、小型軽量化できる点で注目されており、現在開発・実用化の段階にある。
【0003】
ただし、マトリックスコンバータは一般的に多相交流から多相交流への電力変換を想定しているため、単相交流から多相交流への変換を行う場合には、変換された多相交流に、単相交流電源周波数に応じた周波数の電力脈動が生じ得る。例えば、入力側の力率を1に制御する、いわゆる力率1制御においては、入力側の電力脈動が単相交流の2倍の周波数となる。一般的に負荷側の電力は脈動成分が無いため、希望したとおりの負荷電力を供給するためには、この電力脈動成分を補償する手段が必要となる。このため、この脈動成分を吸収するエネルギー吸収要素となる回路をマトリックスコンバータの前段に設けて、マトリックスコンバータと組み合わせて使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−160257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
負荷側が電圧源として動作する場合には、特許文献1に開示されている構成のように、エネルギー吸収要素としてインダクタンスを用いる方法が好適である。しかし、例えば鉄道車両(電車)や産業機械等の駆動に用いる電動機は大きなインダクタンスを有する誘導性負荷であるため、負荷側は電流源となり、エネルギー吸収要素としてインダクタンスではなくコンデンサを用いる方法が好適である。図10に、この場合の回路構成の一例を示す。
【0006】
ところが、脈動補償に利用できるエネルギーは負荷電力に影響されるため、図11に示すように、適正に脈動補償される出力電圧の範囲に制限が出てしまうという問題がある。図11は、縦軸が負荷電力、横軸が出力電圧であり、図10の回路において脈動補償が適正に行われる出力領域を示す図である。図11から分かる通り、負荷電力が小さい場合に高電圧を出力しようとすると、適正脈動補償範囲から外れてしまう(領域X)。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、負荷電力によらずに、適正に脈動補償ができる出力範囲を広げることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
単相交流の電力脈動を補償する脈動補償用コンデンサ部(例えば、図1の脈動補償用コンデンサCc)と、
前記単相交流の2相及び前記脈動補償用コンデンサ部を介した1相の3相から対称三相交流を生成するマトリックスコンバータ部(例えば、図1のマトリックスコンバータ部10)と、
前記マトリックスコンバータ部による電力変換動作を制御する制御部(例えば、図1の制御部50)と、
前記マトリックスコンバータ部の入出力端間に、前記マトリックスコンバータ部の出力電圧の過渡的な変動を抑制するコンデンサ部(例えば、図1の保護用コンデンサCp)を並列に接続して有する保護回路部(例えば、図1の保護回路部30)と、
所与の接続指示信号に従って前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを並列に接続する並列接続回路部(例えば、図1の並列接続回路部40)と、
を備え、
前記制御部が、前記電力変換動作の制御中の所定の時期に前記接続指示信号を出力して、前記コンデンサ部の蓄電電力で前記脈動補償用コンデンサ部を充電する充電制御を行う、
単相/三相変換装置(例えば、図1の単相/三相変換装置1)である。
【0009】
また、他の発明として、
単相交流の電力脈動を補償する脈動補償用コンデンサ部と、
前記単相交流の2相及び前記脈動補償用コンデンサ部を介した1相の3相から対称三相交流を生成するマトリックスコンバータ部と、
前記マトリックスコンバータ部の入出力端間に、前記マトリックスコンバータ部の出力電圧の過渡的な変動を抑制するコンデンサ部を並列に接続して有する保護回路部と、
を備えた単相/三相変換装置の制御方法であって、
前記マトリックスコンバータ部による電力変換動作の制御中の所定の時期に、前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを並列に接続することで、前記コンデンサ部の蓄電電力で前記脈動補償用コンデンサ部を充電する充電制御を行う、
制御方法を構成することとしてもよい。
【0010】
この第1の発明等によれば、単相/三相変換装置は、入力側の脈動成分を補償するための脈動補償用コンデンサ部と、出力電圧の過渡的な変動を抑制するためのコンデンサ部を備えた保護回路部とを備えている。そして、所定の時期に、保護回路部のコンデンサ部と、脈動補償用コンデンサ部とが並列に接続されることで、コンデンサ部の蓄電電力で脈動補償用コンデンサ部が充電される。このため、脈動補償用コンデンサ部の蓄電電力の低下を補い、適正に脈動補償ができる出力範囲を広げることができるようになる。
【0011】
保護回路部のコンデンサ部と脈動補償用コンデンサ部とを並列接続する時期の制御としては、例えば、第2の発明として、前記制御部が、前記単相交流の前記2相分の電力を出力しない所定のスイッチング時期に前記接続指示信号を出力するようにしてもよいし(例えば、図5の充電期間Ta、図6の充電期間Tb)、また、第3の発明として、前記制御部が、前記脈動補償用コンデンサ部を介した前記1相分の電力を出力しない所定のスイッチング時期に前記接続指示信号を出力するようにしてもよい(例えば、図7の充電期間Tc)。
【0012】
この第2又は第3の発明によれば、脈動補償用コンデンサ部が機能していない(脈動補償していない)時期に保護回路部のコンデンサ部と接続されることとなるため、脈動補償動作への影響がない時期に脈動補償用コンデンサ部を充電できる。
【0013】
また、第4の発明として、第1〜第3の何れかの発明の単相/三相変換装置において、
前記並列接続回路部は、前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを第1の方向に並列接続する第1接続回路部(例えば、図1のスイッチSn1,Sp2)と、前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に並列接続する第2接続回路部(例えば、図1のスイッチSn2,Sp1)とを有し、
前記制御部は、前記脈動補償用コンデンサ部の両端電圧の極性に応じて、前記第1接続回路部及び前記第2接続回路部の何れかに並列接続させる接続指示信号を出力する、
単相/三相変換装置を構成することとしてもよい。
【0014】
この第4の発明によれば、脈動補償用コンデンサ部の両端電圧の極性に応じて、適切にコンデンサ部と接続することができる。
【0015】
また、第5の発明として、第1〜第4の何れかの発明の単相/三相変換装置において、
前記制御部が、前記接続指示信号を断続的に出力することで任意の電力を充電させる単相/三相変換装置を構成することとしてもよい。
【0016】
この第5の発明によれば、例えばチョッパ制御やPWM制御といった制御方法で脈動補償用コンデンサ部に充電する電力を制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】三相/単相変換装置の構成図。
【図2】制御部の機能構成図。
【図3】電力変換動作及び脈動補償動作を説明するタイムチャート。
【図4】充電制御部の動作説明図。
【図5】充電動作を説明するタイムチャート。
【図6】充電動作を説明するタイムチャート。
【図7】充電動作を説明するタイムチャート。
【図8】充電制御信号の生成の説明図。
【図9】充電動作を説明するタイムチャート。
【図10】脈動補償を行うマトリックスコンバータの回路構成図。
【図11】脈動補償の問題点の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0019】
[回路構成]
図1は、本実施形態における単相/三相変換装置1の主回路構成を示す図である。単相/三相変換装置1は、フィルタリアクトルLf及びフィルタコンデンサCfから成るLCフィルタを介して単相交流電源Vsから供給される単相交流を対称三相交流に変換して列車駆動用電動機の三相負荷3に供給する電力変換装置であり、マトリックスコンバータ部10と、脈動補償用コンデンサCcと、保護回路部30と、並列接続回路部40と、制御部50とを備えて構成される。
【0020】
マトリックスコンバータ部10は、入力端子R,S,Tと出力端子U,V,Wとの間それぞれに接続された9個の双方向スイッチであるスイッチSur,Svr,Swr、Sus,Svs,Sws,Sut,Svt,Swtを有する。これらのスイッチのうち、入力R,S相についてのスイッチSur,Svr,Swr、Sus,Svs,Swsが第1スイッチ群12を成し、入力T相についてのスイッチSut,Svt,Swtが第2スイッチ群14を成す。そして、これらのスイッチSur,Svr,Swr、Sus,Svs,Sws,Sut,Svt,Swtそれぞれのスイッチング動作(オン/オフ)が制御部50によって制御されることで、入力端に供給される単相電力(R,S相)と、脈動補償用コンデンサCcから供給される単相電力(S,T相)とが、位相が120度ずつずれた対称三相交流(U,V,W相)に変換されて出力される。
【0021】
脈動補償用コンデンサCcは、その一端が双方向スイッチであるスイッチSW1を介して単相交流電源Vsの接地側に接続され、他端がマトリックスコンバータ部10の入力端子Tに接続されている。この脈動補償用コンデンサCcは、電源電圧(単相交流電源Vsの供給電圧)に対して位相の異なる電源を成すとともに、単相交流電源Vsの電力脈動を吸収する脈動補償要素を成す。
【0022】
スイッチSW1は、制御部50によってそのスイッチング動作(オン/オフ)が制御される。具体的には、スイッチSW1は、通常はオンされているが、後述のように、保護用コンデンサCpの蓄電電圧による脈動補償用コンデンサCcの充電がなされるときにはオフされ、脈動補償用コンデンサCcが主回路から切り離される。
【0023】
保護回路部30は、入力電圧や出力電圧の過渡的な変動による双方向スイッチの破損を抑制するための回路であり、マトリックスコンバータ部10の入力端と出力端との間に接続されている。この保護回路部30は、例えば、マトリックスコンバータ部10の入出力電圧を全波整流するダイオードや、保護用コンデンサCp、保護用抵抗を有するクランプ回路であり、マトリックスコンバータ部10の各スイッチSの両端電圧が保護用コンデンサCpの電圧以下にクランプされることで、半導体素子である各スイッチSに生じるサージ電圧が抑制される。出力電圧の過渡的な変動としては、例えば、三相負荷3が誘導性負荷であることに起因して、マトリックスコンバータ部10のスイッチSの全てがオフになったときに生じる過電圧がある。また、この保護回路部30では、保護用コンデンサCpの電圧が高くなると、スイッチを短絡して保護用コンデンサCpの蓄電電力を保護用抵抗によって消費させることで、保護用コンデンサCpの電圧上昇が制限される。なお、この保護回路部30自体は、例えば、特開2006−325327号公報に開示されているような公知の回路であるため、より詳細な動作・構成の説明は省略する。
【0024】
並列接続回路部40は、保護回路部30の保護用コンデンサCpを脈動補償用コンデンサCcに並列接続させることで、保護用コンデンサCpの蓄電電圧によって脈動補償用コンデンサCcを充電するための回路である。この並列接続回路部40は、スイッチSn1,Sn2,Sp1,Sp2を有する。スイッチSn1は、脈動補償用コンデンサCcの一端と保護用コンデンサCpの他端(負)との間に接続され、スイッチSn2は、脈動補償用コンデンサCcの他端と保護用コンデンサCpの他端(負)との間に接続されている。また、スイッチSp1は、脈動補償用コンデンサCcの一端と保護用コンデンサCpの一端(正)との間に接続され、スイッチSp2は、脈動補償用コンデンサCcの他端と保護用コンデンサCpの他端(負)との間に接続されている。これらのスイッチSn1,Sn2,Sp1,Sp2それぞれのスイッチング動作(オン/オフ)は、制御部50によって制御される。
【0025】
制御部50は、単相/三相変換装置1における各種動作を制御する。図2は、制御部50の機能構成を示すブロック図である。図2によれば、制御部50は、機能部として、第1スイッチ群制御部51と、第2スイッチ群制御部52と、充電制御部53とを有する。
【0026】
第1スイッチ群制御部51は、マトリックスコンバータ部10の第1スイッチ群12を構成するスイッチSur,Svr,Swr,Sus,Svs,Swsそれぞれのスイッチング動作を指示する第1スイッチ群制御信号F1を出力し、マトリックスコンバータ部10における電力変換動作を制御する。
【0027】
第2スイッチ群制御部52は、マトリックスコンバータ部10の第2スイッチ群14のスイッチSut,Svt,Swtそれぞれのスイッチング動作を指示する電力変換制御信号F2を出力し、マトリックスコンバータ部10における電力変換動作及び脈動補償動作を制御する。
【0028】
図3は、マトリックスコンバータ部10による電力変換動作及び脈動補償動作の一例を示すタイムチャートである。図3では、横軸を時間として、上から順に、マトリックスコンバータ部10のスイッチSur,Svr,Swr,Sus,Svs,Sws,Sut,Svt,Swtそれぞれのオン/オフ、脈動補償用コンデンサ電圧Vccを示している。
【0029】
充電制御部53は、図4に示すように、第1スイッチ群制御部51及び第2スイッチ群制御部52によるマトリックスコンバータ部10の電力変換動作に応じて、脈動補償用コンデンサCcを充電させる充電制御を行う。具体的には、保護用コンデンサCpを脈動補償用コンデンサCcに並列接続させて、保護用コンデンサCpの蓄電電圧で脈動補償用コンデンサCcを充電するよう、並列接続回路部40のスイッチSn1,Sn2,Sp1,Sp2それぞれのスイッチング動作を指示する充電制御信号F3を出力する。詳細には、次の条件(充電条件)のうちの少なくとも1つを満たすときに、スイッチSW1をオフして脈動補償用コンデンサCcを主回路から切り離すとともに、保護用コンデンサCpを脈動補償用コンデンサCcに並列接続させるように、スイッチSn1,Sn2,Sp1,Sp2それぞれのスイッチング動作を制御する。
【0030】
1つ目の条件(充電条件1)は、「マトリックスコンバータ部10の出力がゼロ電圧のとき」である。ゼロ電圧出力となるのは、次の2つの場合がある。すなわち、「入力R相でゼロ電圧出力となるとき(充電条件1a)」、及び、「入力S相でゼロ電圧出力となるとき(充電条件1b)」である。つまり、「入力R相でゼロ電圧出力となるとき(充電条件1a)」は、R相についてのスイッチSur,Svr,Swrが全てオンのときであり、出力U,V,W相が同電位となっている。但し、電力変換制御によって、他方の入力S相についてのスイッチSus,Svs,Swsは全てオフに制御されている。また、「入力S相でゼロ電圧出力となるとき(充電条件1b)」は、S相についてのスイッチSus,Svs,Swsが全てオンのときであり、出力U,V,W相が同電位となっている。但し、電力変換制御によって、他方の入力R相についてのスイッチSur,Svr,Swrは、全てオフに制御されている。なお、ここで、「充電条件1」に「入力T相でゼロ電圧出力となるとき(充電条件1c)」を含めても良い。これは、T相についてのスイッチが全てオンのときであり、出力U,V,W相が同電位となっている。
【0031】
2つ目の条件(充電条件2)は、「脈動補償用コンデンサCcによる脈動補償が行われていないとき」である。つまり、第2スイッチ群14のスイッチSut,Svt,Swtが全てオフのときであり、脈動補償用コンデンサCcが三相負荷3から切り離されている。
【0032】
ところで、図3に示すように、脈動補償用コンデンサCcの極性は一定ではなく、時間経過とともに正負が変化する。このため、脈動補償用コンデンサCcの極性に応じて、脈動補償用コンデンサCcに対する保護用コンデンサCpの接続方向を切り替える。すなわち、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccの向きが、図1における矢印a(正)の場合には、スイッチSp1,Sn2をオンし、スイッチSp2,Sn1をオフする。また、電圧Vccの向きが矢印b(負)の場合には、スイッチSp2,Sn1をオンし、スイッチSp1,Sn2をオフする。
【0033】
図5〜図7は、充電制御部53による充電動作の一例を示すタイムチャートであり、充電条件それぞれを満たす場合を示している。
【0034】
図5は、充電条件1a「入力R相でゼロ電圧出力」を満たす場合の動作例を示すタイムチャートである。図5では、横方向を時刻として、上から順に、マトリックスコンバータ部10のスイッチSur,Svr,Swrそれぞれのオン/オフ、脈動補償用コンデンサ電圧Vcc、並列接続回路部40のスイッチSp1,Sp2,Sn1,Sn2それぞれのオン/オフを示している。図5に示すように、スイッチSur,Svr,Swrの全てがオンである期間Ta1,Ta2,Ta3が、脈動補償用コンデンサCcに保護用コンデンサCpが並列接続される充電期間となる。また、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccが負であるため、充電期間ではスイッチSp2,Sn1がオンとされる。
【0035】
図6は、充電条件1b「入力S相でゼロ電圧出力」を満たす場合の動作例を示すタイムチャートである。図6では、横方向を時刻として、上から順に、マトリックスコンバータ部10のスイッチSus,Svs,Swsそれぞれのオン/オフ、脈動補償用コンデンサ電圧Vcc、並列接続回路部40のスイッチSp1,Sp2,Sn1,Sn2それぞれのオン/オフを示している。図6に示すように、スイッチSus,Svs,Swsの全てがオンである期間Tb1,Tb2,・・・が充電期間となる。また、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccが負であるため、充電期間ではスイッチSp2,Sn1がオンとされる。
【0036】
図7は、充電条件2「脈動補償されていない」を満たす場合の動作例を示すタイムチャートである。図7では、横方向を時刻として、上から順に、マトリックスコンバータ部10のスイッチSut,Svt,Swtそれぞれのオン/オフ、脈動補償用コンデンサ電圧Vcc、並列接続回路部40のスイッチSp1,Sp2,Sn1,Sn2それぞれのオン/オフを示している。図7によれば、スイッチSut,Svt,Swtの全てがオフである期間Tc1,Tc2,・・・が充電期間となる。また、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccが正であるため、充電期間ではスイッチSp1,Sn2がオンとされる。
【0037】
また、充電制御部53は、充電期間tにおいては、接続させるスイッチSのオン/オフを断続的に切り替えてオン期間の長さ(パルス幅)を変化させることで脈動補償用コンデンサCcへの充電電圧を変化させる、いわゆるチョッパ制御を行う。
【0038】
図8は、充電制御信号F3の生成原理を説明する図である。図8では、上から順に、充電期間tの判定結果、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vcc、生成される充電制御信号F3を示している。なお、図8は、横方向の時間軸を拡大しており、説明を分かり易くするために、充電中であっても電圧Vccが一定であるとして図示している。図8に示すように、現在の脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccから、フル充電に必要な充電電圧Vchが算出される。次いで、算出された充電電圧Vchに応じて、充電期間tにおけるオン/オフを指示するスイッチング信号(パルス信号)が生成されて充電制御信号F3とされる。
【0039】
また、充電制御部53は、充電制御では、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccの極性の変化前後では、脈動補償用コンデンサCcの充電を行わない。図9は、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccが変化するときの一例を示すタイムチャートである。図9では、時刻tcにおいて、脈動補償用コンデンサCcの電圧Vccが負から正に変化している。この変化時刻tcを含む所定期間Δtでは、スイッチSut,Svt、Swtの全てがオフとなっている、すなわち充電条件2を満たしているが、全てのスイッチSp1,Sp2,Sn1,Sn2が必ずオフされる。
【0040】
[作用・効果]
このように、本実施形態の単相/三相変換装置1では、脈動補償用コンデンサCcと保護回路部30の保護用コンデンサCpとの間に、並列接続回路部40が設けられている。並列接続回路部40は、「マトリックスコンバータ部10の出力がゼロ電圧のとき」、或いは、「脈動補償されていないとき」に、保護用コンデンサCpを脈動補償用コンデンサCcに並列接続させて、保護用コンデンサCpの蓄積電力で脈動補償用コンデンサCcを充電させる。これにより、脈動補償用コンデンサCcの蓄電電力の低下を補い、適正に脈動補償ができる出力範囲を広げることができるようになる。
【符号の説明】
【0041】
1 単相/三相変換装置
10 マトリックスコンバータ部
12 第1スイッチ群
Sur,Svr,Swr,Sus,Svs,Sws スイッチ
14 第2スイッチ群
Sut,Svt,Swt スイッチ
Cc 脈動補償用コンデンサ
SW1 スイッチ
30 保護回路部
Cp 保護用コンデンサ
40 並列接続回路部
Sn1,Sn2,Sp1,Sp2 スイッチ
50 制御部
51 第1スイッチ群制御部、52 第2スイッチ群制御部、53 充電制御部
Vs 単相交流電源
3 三相負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相交流の電力脈動を補償する脈動補償用コンデンサ部と、
前記単相交流の2相及び前記脈動補償用コンデンサ部を介した1相の3相から対称三相交流を生成するマトリックスコンバータ部と、
前記マトリックスコンバータ部による電力変換動作を制御する制御部と、
前記マトリックスコンバータ部の入出力端間に、前記マトリックスコンバータ部の出力電圧の過渡的な変動を抑制するコンデンサ部を並列に接続して有する保護回路部と、
所与の接続指示信号に従って前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを並列に接続する並列接続回路部と、
を備え、
前記制御部が、前記電力変換動作の制御中の所定の時期に、前記接続指示信号を出力して、前記コンデンサ部の蓄電電力で前記脈動補償用コンデンサ部を充電する充電制御を行う、
単相/三相変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記単相交流の前記2相分の電力を出力しない所定のスイッチング時期に前記接続指示信号を出力する請求項1に記載の単相/三相変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記脈動補償用コンデンサ部を介した前記1相分の電力を出力しない所定のスイッチング時期に前記接続指示信号を出力する請求項1又は2に記載の単相/三相変換装置。
【請求項4】
前記並列接続回路部は、前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを第1の方向に並列接続する第1接続回路部と、前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に並列接続する第2接続回路部とを有し、
前記制御部は、前記脈動補償用コンデンサ部の両端電圧の極性に応じて、前記第1接続回路部及び前記第2接続回路部の何れかに並列接続させる接続指示信号を出力する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の単相/三相変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記接続指示信号を断続的に出力することで任意の電力を充電させる請求項1〜4の何れか一項に記載の単相/三相変換装置。
【請求項6】
単相交流の電力脈動を補償する脈動補償用コンデンサ部と、
前記単相交流の2相及び前記脈動補償用コンデンサ部を介した1相の3相から対称三相交流を生成するマトリックスコンバータ部と、
前記マトリックスコンバータ部による電力変換動作を制御する制御部と、
前記マトリックスコンバータ部の入出力端間に、前記マトリックスコンバータ部の出力電圧の過渡的な変動を抑制するコンデンサ部を並列に接続して有する保護回路部と、
を備えた単相/三相変換装置の制御方法であって、
前記マトリックスコンバータ部による電力変換動作の制御中の所定の時期に、前記コンデンサ部と前記脈動補償用コンデンサ部とを並列に接続することで、前記コンデンサ部の蓄電電力で前記脈動補償用コンデンサ部を充電する充電制御を行う、
制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−220333(P2010−220333A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62548(P2009−62548)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】