説明

単結晶半導体ウェーハの製造方法

【課題】更に小型化する際に問題を生じない半導体ウェーハを提供する。
【解決手段】欠陥が減少した領域を有する単結晶半導体ウェーハであり、この欠陥が減少した領域は0/cm〜0.1/cmの範囲のGOI関係欠陥の密度を有し、全体として半導体ウェーハの平坦な平面の10〜100%の単位面積割合を占めており、その際半導体ウェーハの残りの領域は欠陥が減少した領域より明らかに高い欠陥密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はGOI(gate oxide integrity)関係欠陥のきわめて低いおよび均一な密度を有する領域を有する単結晶半導体ウェーハに関する。本発明は更に半導体ウェーハの少なくとも一方の面をレーザーで照射することによる単結晶半導体ウェーハ中のGOI関係欠陥を治す方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ、特にシリコンウェーハは一般にマイクロエレクトロニクス部品の製造に使用される。半導体工業および特に技術的と同様に科学的にきわめて進歩したシリコン技術において、マイクロエレクトロニクス部品のますます減少するきわめて小さい構造体の大きさにより、半導体ウェーハの品質に対する要求がますます増加する。
【0003】
これらの要求を満たすために、多くの種類のきわめて欠陥の少ない半導体ウェーハが開発された。きわめて欠陥の少ない単結晶から製造された、研磨された半導体ウェーハ(例えば特許文献1)、熱処理された半導体ウェーハ(例えば特許文献2)またはエピタキシャル堆積したシリコン層を有する半導体ウェーハである。
【0004】
しかし現在知られた最もよい半導体ウェーハが特定の使用の場合に、例えばSOI(シリコン・オン・インシュレーター(Insulator))、ストレインド(strained)・シリコンまたはsSOI(ストレインド・シリコン・オン・インシュレーター)が100nm未満のライン幅(デザインルール)と結合して製造中にまたは部品の運転の際に問題を生じることが判明した。従って漏れ電流、短絡、逸脱したダイオード特性線、ホットスポット、ゲート酸化物の故障または部品の劣る信頼性が損害を生じることがある。これは文献に広い範囲で詳しく例えば以下のように記載されている。内部に成長した空孔の凝集物がゲート酸化物の信頼性に問題を生じ[非特許文献1]、部品の絶縁欠陥の信頼性に問題を生じ[非特許文献2]および記憶装置の溝の欠陥の信頼性に問題を生じる[非特許文献3]。これらの問題は、構造体の高まる縮小化と共に、特に空孔の凝集物が典型的な部品の大きさ、例えばゲートの長さに達する場合に激しくなる。空孔の凝集物はSOI構造体中に小さい窪みを生じ、きわめて薄いシリコンフィルムの場合に孔、キラー欠陥を生じる[非特許文献4]。
【0005】
前記半導体ウェーハは将来の部品の製造に課せられる要求、特に欠陥の均一性の平面的および位置的特性に関する要求を十分に満たさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許(EP−B1)第0972094号
【特許文献2】欧州特許(EP−B1)第0829559号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】K.ヤマベ、K.タニグチ、Y.マツシタ、Proc. of the Internat. Reliability Phys. Symp. IEEE、NJ、184(1983)
【非特許文献2】M.ムラナカ、K.マカベ、M.ミウラ、H.カトウ、S.イデ、H.イワイ、M.カワムラ、Y.タダキ、M.イシハラ、T.カエリヤマ、Jpn. J.Appl. Phys.37、1240(1998)
【非特許文献3】E.Dornberger、D.Temmler、W.v.Ammon、J. Electrochemical Society 149、G226−G231(2002)
【非特許文献4】G.K.Keller、S.Cristoloveanu、J.Appl. Phys.93、4955(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って部品を更に小型化する場合に前記の問題を生じない半導体ウェーハを提供する課題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、欠陥が減少した領域を有する単結晶半導体ウェーハにより解決され、その際この欠陥が減少した領域が0/cm〜0.1/cmの範囲のGOI関係欠陥の密度を有し、全体として半導体ウェーハの平坦な平面の10〜100%の単位面積割合を占めており、その際半導体ウェーハの残りの領域は欠陥が減少した領域より明らかに高い欠陥密度を有する。
【0010】
GOI関係(relevante)欠陥は、相当する位置で製造されるゲート酸化物の品質に不利に作用するすべての欠陥を意味する。GOI関係欠陥の密度は有利にドイツ特許(DE−A1)第9835616号に開示されたIR−ロック−イン−サーモグラフィー(IR−Lock−In−Thermographie)法を使用して測定するが、それはこの方法がGOI欠陥を生じるそれぞれの欠陥の大きな面積の検出を可能にするからである。これにより、公知のGOI試験と異なり、例えば0.1/cmのきわめて小さい欠陥密度が定量的に測定できる。
【0011】
これに対して、他の検出方法、例えば欠陥上の全部のウェーハ表面を検査するレーザー走査法は明らかに適していないが、それはこれらの方法で検出される欠陥が部品の損傷を生じることがあるが、必ずしも生じるわけでないからである。GOI品質に影響しない欠陥、例えば表面に付着した粒子も検出する。他方でマイクロメカニック部品の製造の際に半導体ウェーハの表面だけでなく、表面の下の特定の層も利用する。これは、ウェーハ表面もしくは表面に対して垂直な後の部品に不十分な深さを検査する検出法が基本的にすべてのGOI関係欠陥を発見できないことを意味する。
【0012】
GOI関係欠陥は例えば空孔の凝集物(結晶配向粒子、COPsまたはボイド)または酸素析出物(バルクミクロ欠陥、BMDsとも呼ばれる)である。
【0013】
本発明により、半導体ウェーハの欠陥が減少した領域は半導体ウェーハの平坦な平面の10〜100%の割合を占める。平坦な平面は半導体ウェーハの実質的に平行な平面の全部の領域である。この領域はマイクロエレクトロニクス部品の製造に最大で利用される。これに対して一般に存在する縁部、すなわち半導体ウェーハの周辺領域の面取りまたは円形仕上げは平坦な平面に属さない。
【0014】
欠陥が減少した領域はGOI関係欠陥のきわめて小さい、有利にきわめて均一な密度を有する。有利に欠陥が減少した領域内部の任意の位置のGOI関係欠陥の密度は欠陥が減少した領域で測定されたGOI関係欠陥の密度の平均値の最大10%相違する。半導体ウェーハの残りの領域は欠陥が減少した領域より明らかに高い欠陥密度を有する。有利に残りの領域のGOI関係欠陥の密度は欠陥が減少した領域の少なくとも二倍の大きさである。
【0015】
本発明による欠陥が減少した領域は有利に決められた横方向の伸び、すなわち半導体ウェーハの表面に平行な決められた伸びを有する。これは欠陥が減少した領域と半導体ウェーハの残りの領域の間の境界でGOI関係欠陥の密度が飛躍的に変動することにより表される。有利にGOI関係欠陥の密度は欠陥が減少した領域と残りの領域の間の境界で、半導体ウェーハの平坦な平面に平行にかつ欠陥が減少した領域と欠陥が減少しない領域の間のそれぞれの境界に垂直に延びる長さ0.5mmの区間に沿って少なくとも二倍変動する。同様に比較的低いGOI関係欠陥の密度を有する領域と、比較的高いGOI関係欠陥の密度を有する他の領域を有する技術水準による半導体ウェーハと異なり、本発明による半導体ウェーハの場合にこれらの異なる領域は互いに合流して移行せず、互いにはっきりと分けられる。
【0016】
技術水準による欠陥最適化シリコンは直径30nm未満を有するきわめて小さい欠陥の高い密度を有する。これに対して本発明の半導体ウェーハはこの小さい欠陥のきわめて低い密度を有する。技術水準と異なり、本発明の半導体ウェーハは0/cmまでのGOI関係欠陥の密度を有する。
【0017】
有利に欠陥が減少した領域は半導体ウェーハの全部の厚さにわたり延びている。これによりこの特徴において、例えば適当な熱的方法またはエピタキシャル法により製造される半導体ウェーハの表面上の従来の欠陥の少ない層と明らかに異なる。この公知の欠陥が少ない層の深さは一般に数μmである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】DE19835616A1に開示された方法を使用して測定した、本発明のシリコンウェーハの四分円の縁部領域のGOI関係欠陥を示す図である。
【図2】図1と同様に本発明によらないシリコンウェーハの四分円上のGOI関係欠陥を示す図である。
【図3】半導体ウェーハをレーザー光線で走査する本発明の方法の実施態様の図である。
【図4】レーザーで照射する前のシリコンウェーハの破断縁部の後方の欠陥を示す図である。
【図5】レーザーで短時間照射した後の図4と同様の破断縁部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を図面により詳細に説明する。
図1は、DE19835616A1に開示された方法を使用して測定した、本発明のシリコンウェーハの四分円の縁部領域のGOI関係欠陥を示す。前記欠陥は白い点として示される。
【0020】
図2は図1と同様に本発明によらないシリコンウェーハの四分円上のGOI関係欠陥を示す。
【0021】
図3は、半導体ウェーハをレーザー光線で走査する本発明の方法の実施態様の図である。
【0022】
図4はレーザーで照射する前のシリコンウェーハの破断縁部の後方の欠陥を示す。
図5はレーザーで短時間照射した後の図4と同様の破断縁部を示す。
【0023】
本発明の有利な実施態様により、欠陥が減少した領域は実質的に半導体ウェーハの全部の平坦な平面を占める。これは有利に半導体ウェーハの平坦な平面の95%から100%未満までまたは更に100%までの単位面積割合であると理解される。この実施態様の利点は達成できる均一性、チップ製造の際の高い収率、最大の平面利用、および簡単な製造および処理の経過である。この実施態様の例は図1に示される。GOI関係欠陥はDE19835616A1に開示された方法を使用して測定した。本発明のシリコンウェーハ3の図示された四分円の全部の平坦な平面は黒であり、すなわちほとんど欠陥がない。わずかに傾斜した縁部領域6で、すなわち平坦な平面の外部で、多くの白い位置でかなり高い欠陥密度が認識できる。これと異なり、図2は技術水準による同じ方法で測定したシリコンウェーハを示す。このウェーハにおいて全部の平坦な平面上にGOI関係欠陥のかなり高い密度が認識できる。
【0024】
本発明の他の有利な実施態様により、欠陥が減少した領域は半導体ウェーハの平坦な平面の一部のみを占め、有利に平坦な平面の10〜95%の単位面積割合を占める。
【0025】
有利に欠陥が減少した領域は高いGOI特性に関係する半導体ウェーハ上の領域と重なる。これは例えばトランジスターおよびメモリー部品のような部品が製造される領域である。
【0026】
残りの欠陥が減少しない領域はこの実施態様により、高いGOI特性に関係しない位置に存在し、それというのもこの領域でゲート酸化物が製造されないからである。これは例えば、個々のマイクロチップを互いに分離するために、部品の製造および場合により裏面切除(例えば裏面研削)の後に半導体ウェーハを切り離す(ダイシング)場合である。半導体ウェーハ上に導体路を設ける位置でGOI関係欠陥は重要でない。
【0027】
GOI特性が問題でない他の領域は、例えば試験領域(GOI試験のほかの)、接触領域またはウェーハ標識を有するかまたは進行するチップ番号または調節標識を取り付けるために用意される領域である。
【0028】
これは、欠陥が減少した領域の位置を、後で半導体ウェーハ上に製造されるマイクロエレクトロニクス部品の配置により固定することを意味する。本発明のこの実施態様において、関係する部品の意図される後の配置は本発明の半導体ウェーハを製造する時点ですでに知られていなければならない。
【0029】
本発明のこの実施態様は2つの重要な利点を有する。第1に半導体ウェーハの平面の一部でGOI関係欠陥の密度が減少し、これが製造の経済性を高める。第2にGOI関係欠陥、特にBMDs(バルクミクロ欠陥)がゲッター中心として、すなわち金属不純物を結合し、これにより半導体ウェーハが部品の製造中に必然的に汚染され、半導体材料の導電特性が制御されない、好ましくない方法で変動する。従って高いGOI特性が必要でない領域のBMDsの存在が望ましい。従ってこの実施態様において、臨界的領域でのGOI関係欠陥のきわめて少ない、均一な密度および良好なゲッター能力が保証される。
【0030】
半導体ウェーハは任意の半導体材料からなっていてよいが、実質的に、すなわち少なくとも80%がシリコンからなる。半導体ウェーハは実質的に純粋なシリコンからなっていてよく、前記シリコンに通常のドーピング物質のみが添加されている。
【0031】
本発明による半導体ウェーハは、半導体ウェーハをレーザーで適当に照射することにより製造できる。
【0032】
従って本発明は、半導体ウェーハの少なくとも一方の面の決められた領域をレーザーで照射することにより単結晶半導体ウェーハ中のGOI関係欠陥を治す方法に関し、決められた領域の内部のそれぞれの位置を少なくとも25msの時間にわたり出力密度1GW/m〜10GW/mで照射し、その際半導体ウェーハを形成する半導体材料の吸収帯域より上にある波長のレーザー光線を発射し、レーザーで照射することにより半導体ウェーハの温度を、20Kより少なく上昇することを特徴とする。
【0033】
レーザー光線を使用して半導体材料を処理する方法は技術水準で知られている。例えば旧東ドイツ特許(DDA1)第249998号は光源、例えばレーザーを使用するシリコンウェーハの照射を開示し、その際光源がシリコンの吸収帯域より低い高い割合の波長を放射し、これによりシリコンウェーハの放射線を吸収し、これによりウェーハが加熱し、ゲッター能力の欠陥が製造される。欧州特許(EP−A2)第68094号は部品製造の枠内ですでに構造化されたウェーハを局所的にレーザーで照射し、多結晶シリコン領域の局所的溶融によりこの領域を再結晶する方法を開示する。この目的のために、シリコンがレーザー光線を吸収する、すなわちシリコンの吸収帯域より低い波長を有する光を放射するレーザーを使用しなければならない。例えば532nmの波長を有する周波数倍増Nd:YAGレーザーを使用する。米国特許第6743689号は、すでに構造化された半導体ウェーハを部品製造の経過中に局所的にレーザーで照射し、温度を1200〜1300度に高めることにより非晶質領域を結晶化する類似する方法を開示する。
【0034】
これらのすべての公知方法は、所定の効果を達成するために、レーザー光線の吸収により半導体ウェーハの温度を局所的に激しく高める目的を追求する。
【0035】
これに対して本発明の方法は半導体材料の吸収帯域より高い波長で運転する。例えばシリコンの吸収帯域は1.1eVであり、これは約1050nmの波長に相当する。従って半導体材料がこの光線を実質的に透過する場合は、光線は半導体材料の少ない範囲で吸収される。この理由からレーザーで照射することにより半導体ウェーハの温度が20K未満、有利に6K未満だけ上昇する。半導体ウェーハの温度は半導体ウェーハの平均的、すなわち全体的温度を意味する。半導体ウェーハの温度はレーザーで照射する間に有利に20〜50℃の範囲に維持される。半導体ウェーハの直に照射された位置でのみ局所的温度が明らかに高い値に達することができるが、有利に800℃より高く上昇しない。
【0036】
それにもかかわらず、意想外にも半導体ウェーハの温度を顕著な程度に高めることなく、半導体ウェーハ中に存在する欠陥を本発明による照射により治すことができる。例えば多くの結晶引き上げ法の場合に避けられない単結晶シリコンウェーハ中のCOP欠陥およびBMD欠陥を本発明による照射により分解することができる。
【0037】
本発明の方法の作用形式は以下のように説明できる。半導体材料自体がわずかな光線を吸収するにもかかわらず、半導体ウェーハの直に照射された体積の温度は800℃より高く上昇せず(これは欠陥の治療に十分でない)、ウェーハの全体的温度はほとんど変動せずに維持され、欠陥と光線の相互作用が行われる。計算により、欠陥が包囲するシリコンと異なる光学的特性を有する限りで、数万Kの局所的に欠陥に限定される温度の上昇が可能であることが示される。この種の特性は他の光の屈折を有する領域および半導体材料中の空隙の表面にもとづく。例えばCOPsの場合に、COPから結晶格子への空孔の拡散によりまたはBMDsの場合にBMDから結晶格子への酸素の拡散により(その際酸素は介在する酸素として存在する)欠陥が分解するとすぐに、欠陥はもはや散乱しない。放射エネルギーの更なる吸収が行われず、局所的に強く加熱された位置がすぐに熱エネルギーを冷たい周囲の半導体材料に向かって放出する。即座に行われる温度の補償によりかつての欠陥の領域で温度が出発温度に急速に低下し、空孔から新しいCOPを生じるまたは酸素から新しいBMDを生じる再凝集を行うことができない。
【0038】
本発明の方法を使用してGOI関係欠陥のきわめて低い、均一な密度を有する本発明の半導体ウェーハを製造できるが、これは所望の欠陥が減少した領域の1つにある半導体ウェーハのそれぞれの位置が完全に同じ条件下で処理できるからである。
【0039】
これは技術水準の方法では不可能である。この方法は、欠陥の形成をできるだけ広い範囲で抑制するために、例えば単結晶を製造する(例えばチョクラルスキーによる結晶引き上げによる)際の特別な条件を考慮する。CZ法では常に放射状に対称的な特性分布を生じるので、局所的な影響を行うことができない。技術水準による他の可能性は、少なくとも表面に近い層の欠陥を治すために、所定の大きさ分布および密度のGOI関係欠陥を有する単結晶半導体ウェーハを熱処理することにある。原料の不均一性は均一な熱処理により完全に相殺できない。更に公知方法では半導体ウェーハの特性を局所的に影響させることが不可能であり、それはこの方法を発展する際に常に全部の半導体ウェーハをできるだけ短い時間で処理することに注目するからである。
【0040】
半導体ウェーハの熱処理の際に、表面上にきわめて欠陥の少ない層(いわゆる裸出帯域)が形成されるが、半導体ウェーハの深部で更に欠陥が検出される。これに対して本発明の方法を使用することにより、半導体ウェーハの全部の厚さにわたり欠陥の減少が達成される。
【0041】
本発明の方法において半導体ウェーハを全体的に加熱しないので、技術水準の方法に比べて更なる利点が得られる。
【0042】
半導体ウェーハの熱経費が本発明の処理により高くならない。これは固体中で核形成および拡散が行われず、他の欠陥種類が生じないかまたは成長できないことを意味する。表面上で汚染が行われないので、電荷担体の寿命がほとんど変化せずに維持される。
【0043】
全体的に冷たい半導体ウェーハ中で拡散工程がほとんど行われない。従って単結晶の製造の際に調節されるドーピング物質濃度が変化せずに維持される。
【0044】
半導体ウェーハの機械的特性は本発明の処理により一時的にまたは持続的に変化しない。例えば200mm以上の成長するウェーハ直径(例えば300mmおよび450mmのウェーハ直径)に関して熱処理の課題に成長する点負荷が生じる。これに対して本発明の方法において、結晶格子の損傷、特に滑り(スリップ)を生じる半導体ウェーハの可塑的変形の不安が存在しない。一般に冷たい半導体材料において滑りは拡大しない。温度勾配は局所的にレーザー光線の領域におよび欠陥の周囲に限定される。従って半導体ウェーハ中で全体的な熱応力が生じない。これにより処理中および処理後の半導体ウェーハの破断の不安が明らかに減少する。
【0045】
本発明の方法は一般に実質的に円形の構造化されない半導体ウェーハに使用される。有利に出発物質として、平均して70nm未満の直径を有する欠陥を有する半導体ウェーハを選択するが、これは小さい欠陥が急速に分解し、これにより方法の時間の消費が減少するからである。70nmより大きい平均欠陥直径を有する半導体ウェーハは本発明の方法により同様にGOI関係欠陥を除去することができるが、長い照射時間を選択しなければならない。
【0046】
レーザー光線の具体的なパラメーターは半導体材料の特性に依存する。シリコンが現在最も重要な半導体材料であるので、シリコンに関する具体的なパラメーターを記載するが、本発明の方法の使用はシリコンに限定されない。
【0047】
シリコンの場合に、1μm〜7μm、例えば
1.060μm(InGaAsPダイオードレーザー)、
1.064μm(Nd:YAGレーザー)、
2.127μm(Ho:YAGレーザー)
2.940μm(Er:YAGレーザー)
の波長を有する光を放射するレーザーが適している。1.064μmおよび4.25μmの波長が特に有利であり、ここでシリコン中の特に低い吸収が存在するからである。
【0048】
レーザー光線の出力密度はシリコンの場合に1GW/m〜10GW/mの範囲である。レーザー光線は有利に直径3μm〜10μmの非分散光線に調節される。
【0049】
エネルギーの吸収(W)は欠陥の横断面、すなわち半径の2乗に比例するが、欠陥の体積は欠陥半径の3乗に比例する。欠陥を溶融物で満たすために、体積に依存するエネルギーが必要である。横断面は光線を捕獲する大きさである。
【0050】
エネルギー密度は治すことができる欠陥の大きさを限定する。任意の高いエネルギー密度の調節は不可能であり、それは半導体ウェーハが溶融し、表面の品質が破壊されるからである。更に高いエネルギー密度を使用する場合は、半導体ウェーハがレーザー光線で切断され、これは好ましくない。
【0051】
図4は、測定装置、バルクミクロ欠陥分析装置MO−441(ミツイ鉱山、日本)を使用して欠陥を検査した、従来の欠陥が減少したシリコンウェーハの破断縁部の正面を示す。試料を製造するために、シリコンウェーハを結晶格子の優先方向に沿ってその平坦な平面に垂直に破断した。測定の際に破断縁部の後方の20〜30μmの範囲にある個々の欠陥を検査し、その位置を明らかにする。全部で26個の欠陥を黒い点として認識できる。引き続きシリコンウェーハの破断縁部に隣接する領域をレーザーできわめて短い時間照射した。図5はこの処理後の同じシリコンウェーハを示す。26個の本来存在する欠陥のうち4個の小さい欠陥がもはや検出できない。これは図4および図5に矢印で示される。大きな欠陥を含めてすべての欠陥を分解するために、長い照射時間が必要である。
【0052】
本発明により製造される半導体ウェーハはもちろん凝結しない点欠陥の高い密度を有する(特に空孔および介在する酸素)。点欠陥は、半導体ウェーハの決められた使用に必要であるかまたは有利である場合は、引き続く熱処理により半導体ウェーハから拡散除去される(酸素の場合)か、もしくは介在するシリコンと再結合する(空孔の場合)ことができる。COPsの分解により形成される自由な空孔を除去する場合は、シリコンウェーハを本発明の方法を使用した後に、空孔と再結合することができる介在する珪素原子を注入するために適当である熱処理を行う。
【0053】
図3に示される本発明の方法の有利な構成において半導体ウェーハ3の全表面をレーザー光線1で走査する。複数のレーザーを同時に使用することも可能である。半導体ウェーハの材料はレーザー光線2を広い範囲で透過する。レーザー光線2は決められた横断面を有する。半導体ウェーハ3の全部の表面を処理するために、半導体ウェーハをその軸の周りに回転させることができる(4)。同時にレーザー1および半導体ウェーハ3の相対的位置が徐々に半径方向に移動する(5)。これは有利に、レーザー光線2が半導体ウェーハ3に当たる領域を回転後に光線の直径以下に半径方向に移動するように行う。同様の形式および方法で、半導体ウェーハを一行ずつ走査することにより全面処理を達成できる。この場合に半導体ウェーハ3の回転4は有利に移動5に対して垂直な、第2の直線的移動に交代できる。
【0054】
走査の際に半導体ウェーハの縁部領域を照射から排除することができる。同様に欠陥が減少した領域に変換できない領域を排除することができる。照射は局所的に行われるので、欠陥分布の均一なおよび意図的に不均一な特性を生じることができる。それぞれの場合に欠陥が減少した領域に変換される領域の内部のそれぞれの位置が少なくとも25ms照射されるように、レーザーおよび半導体ウェーハの相対的移動を調節する。
【0055】
他の構成において、レーザー照射の前に半導体ウェーハの欠陥分布を測定し、レーザー処理のパラメーターを局所的欠陥の大きさ等に適合する。これにより供給量および方法の経済性が改良される。
【0056】
本発明の方法の他の有利な構成は、本発明の処理の前に半導体ウェーハの特性に適合することによりおよびこの処理後に所望の特性に適合することにより生じる。分解する欠陥の種類および大きさにより特にレーザー光線の出力密度および必要な照射時間を決定する。
【0057】
例えばシリコンウェーハ中の90nm未満の直径を有するCOPsを分解するために、25msより多くの照射時間および5〜10GW/mのレーザー光線の出力密度を利用する。
【0058】
1250nm未満の直径を有するCOPsの内壁上の酸化物層を破壊するために、25msより多くの照射時間および7.5〜10GW/mのレーザー光線の出力密度を使用する。酸化物層および90nm未満の直径を有するCOPsはこれらの条件下で完全に分解できる。
【0059】
BMDsを分解するために、1GW/mより大きい出力密度および25msより多くの露光時間を使用できる。
【0060】
本発明の方法は請求項1から9までのいずれか1項記載の本発明によるすべての半導体ウェーハを製造できるが、これに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
欠陥が減少した領域を有する単結晶半導体ウェーハであり、その際この欠陥が減少した領域が0/cm〜0.1/cmの範囲のGOI関係欠陥の密度を有し、全体として半導体ウェーハの平坦な平面の10〜100%の単位面積割合を占めており、その際半導体ウェーハの残りの領域は欠陥が減少した領域より明らかに高い欠陥密度を有する欠陥が減少した領域を有する単結晶半導体ウェーハ。
【請求項2】
残りの領域中のGOI関係欠陥の密度が、欠陥が減少した領域中のGOI関係欠陥の密度の少なくとも二倍大きい請求項1記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項3】
欠陥が減少した領域内部の任意の位置のGOI関係欠陥の密度が、欠陥が減少した領域で測定されたGOI関係欠陥の密度の平均値の最大10%だけ相違する請求項1または2記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項4】
欠陥が減少した領域がそれぞれ半導体ウェーハの全部の厚さにわたって延びている請求項1から3までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項5】
欠陥が減少した領域が半導体ウェーハの平坦な平面の95〜100%の単位面積割合を占めている請求項1から4までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項6】
欠陥が減少した領域が半導体ウェーハの平坦な平面の10〜95%の単位面積割合を占めている請求項1から4までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項7】
欠陥が減少した領域と半導体ウェーハの残りの領域の間の境界でGOI関係欠陥の密度が飛躍的に変動する請求項1から6までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項8】
GOI関係欠陥の密度が、欠陥が減少した領域と残りの領域の境界で、半導体ウェーハの平坦な平面に対して平行に、かつそれぞれの境界に対して垂直に延びる長さ0.5mmを有する区間に沿って少なくとも二倍変動する請求項7記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項9】
少なくとも80%がシリコンからなる請求項1から8までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハ。
【請求項10】
単結晶半導体ウェーハの少なくとも一方の面の決められた領域にレーザーを照射することにより単結晶半導体ウェーハ中のGOI関係欠陥を治す方法において、決められた領域の内部のそれぞれの位置を少なくとも25msの時間にわたり出力密度1GW/m〜10GW/mで照射し、その際半導体ウェーハを形成する半導体材料の吸収帯域より上にある波長のレーザー光線を発射し、レーザーで照射することにより半導体ウェーハの温度を、20Kより少なく上昇することを特徴とする単結晶半導体ウェーハ中のGOI関係欠陥を治す方法。
【請求項11】
レーザーで照射する間に半導体ウェーハを20〜50℃の範囲の温度に保持する請求項10記載の方法。
【請求項12】
半導体ウェーハが実質的に円形の構造化されていないウェーハである請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
半導体材料が少なくとも80%シリコンからなり、1μm〜7μmの波長を有するレーザー光線を発射する請求項10から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
半導体ウェーハの温度が直に放射された位置で最高800℃である請求項13記載の方法。
【請求項15】
半導体ウェーハの少なくとも一方の面の決められた領域の照射をレーザー光線を使用する決められた領域の走査により行い、これにより決められた領域が、0/cm〜0.1/cmの範囲のGOI関係欠陥の密度を有し、全体として半導体ウェーハの平坦な平面の10〜100%の単位面積割合を占める、欠陥が減少した領域に変換し、その際半導体ウェーハの残りの領域が欠陥が減少した領域より明らかに高い欠陥密度を有する請求項10から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
請求項2から9までのいずれか1項記載の単結晶半導体ウェーハを製造する請求項10から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
欠陥が減少した領域が半導体ウェーハの平坦な平面の95%から100%未満までの単位面積割合を占める請求項5記載の単結晶半導体ウェーハ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134516(P2012−134516A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23770(P2012−23770)
【出願日】平成24年2月7日(2012.2.7)
【分割の表示】特願2007−195429(P2007−195429)の分割
【原出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany