説明

単離された多発性硬化症関連細胞傷害性因子、および当該細胞傷害性因子の検出方法

【課題】多発性硬化症関連細胞傷害性因子、及び、その検出方法を提供すること。
【解決手段】ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14又は変異GM2AP/GM2/MRP14である多発性硬化症関連細胞傷害性因子。ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14又は変異GM2AP/GM2/MRP14を、生物学的サンプルから単離することによる、多発性硬化症関連細胞傷害性因子の検出および/または定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単離された多発性硬化症関連細胞傷害性因子、および当該細胞傷害性因子の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性硬化症は、ヒトの中枢神経における慢性疾患であり、寛解段階および悪化段階の連続によって、または通常の進行に従って進行し、その解剖病理学的特徴は、脳および脊髄の白質の脱髄の明確に区切られた領域の形成からなる。
【0003】
解剖学的レベルでは、これらの領域は、損傷過程の初期段階において、この脱髄に関連するグリア細胞に対する損傷に関連する軸索周囲のミエリンの分解を示す。ミクログリア細胞(中枢神経系の常駐する組織マクロファージ)、そしておそらく浸潤した血液単球から生じたマクロファージを含む炎症性マクロファージ活性化は、この脱髄過程に関連し、かつミエリン化シートの破壊に関連する。グリア細胞の相対的な枯渇は、脱髄領域の中心部に見出されるが、一方、星状細胞の増殖は、周辺部で進展し、脱髄したプラークに侵入して繊維状またはグリア状のプラークを形成し得る。これらの硬化構造は、当該疾患に与えられた名称の理由である。
【0004】
これらのプラークの別の特徴は、それらがその周囲で進行する血管要素と、事実上全身的に関連することである。
【0005】
解剖学的レベルでは、毛細管内皮からなる血液脳関門(BBB)の頻繁な損傷が観察される。BBBの維持における決定因子は、星状細胞エンドフィートと呼ばれる星状細胞の細胞延長の潜在的な存在からなる。星状細胞エンドフィートは、おそらく、強固な結合構造の形成を誘発するかまたは維持を可能にし、これにより毛細管内皮関門の凝集がBBBに対して具体的な発現を与えることが確証される。
【0006】
さらに、MSの損傷過程では、BBBの損傷は、血流から生じるリンパ細胞の流入により、関連する炎症応答を増幅するのに寄与する。免疫細胞と関連する炎症の寄与は、MSにおいて重要であり、かつ、損傷過程に関与する。
【0007】
MSの病因学は、現在、論争の種である。なぜなら、当該疾患は、種々の原因を有する可能性があるからである。細菌および/またはウイルス起源に関する仮説が提示されてきた。さらに、特許文献1に記載されるように、H.Perronらは、病因学的過程の1つまたはそれ以上のエフェクター因子を調査することにより、脱髄プラークの代表的な形成および星状細胞グリオーシスを結論付けた。この研究の文脈では、彼らは、MS患者の脳脊髄液(CSF)および血清中において、ヒトまたは動物の星状細胞またはオリゴ樹状細胞に関して傷害活性を示す少なくとも1つの因子が存在することを示した。この傷害活性は、中間フィラメントのネットワークの細胞形態学的破壊および/または当該フィラメントのタンパク質の分解および/またはグリア細胞のアポトーシスによる細胞死により特徴付けられる。彼らは、特許文献1に記載される生存細胞のメチルテトラゾリウムブロミド(MTT)を用いた定量比色アッセイにより、MS患者からのCSFおよび血清サンプルにおけるこの傷害活性のインビトロでの検出と、多発性硬化症との間に、有意な相関があることを確立した。さらに、C.Malcus−Vocansonら(非特許文献1及び2)は、この傷害性因子の活性を検出するために尿が非常に好ましい生物学的流体であることを示し、アポトーシスによって死んだ付着性グリア細胞を検出および/または定量するためのフローサイトメトリーを用いる方法を開発した。この方法に関する全ての情報は、特許文献2に記載されている。
【0008】
この傷害性因子の同定を試みるため、MS患者由来のCSFおよび尿のタンパク質画分を用いてアッセイが行われた。各画分中のタンパク質成分を、SDS−PAGE 12%ゲル上で分離し、ゲル上で銀染色した後に観察した。観察したタンパク質のうち、見かけ上の分子量が約21kDに集中したタンパク質画分が、インビトロで検出された傷害活性に関連する少量の成分であること、および見かけ上の分子量が約17kDに集中したタンパク質画分は、この傷害活性に関連する主要な成分であることを見出した。
【0009】
MS患者のCSF由来の画分を、Lewisラットの脳に注入し、当該ラット由来の脳断片の死後解剖学的観察により、注入の3ヶ月後に、星状細胞集団のアポトーシスおよび脱髄プラークの形成を観察することが可能になった。全ての情報は、特許文献3に含まれる。これらの観察は、生検後に、MSに罹患している患者の脳区域でなされ得た観察と関連する(非特許文献3)。
【0010】
MS患者由来の生物学的サンプル中のグリア細胞に関するこの細胞傷害性と潜在的に関連するタンパク質が、特許文献4に記載されるように研究された。MSおよび非MS患者の尿中で、タンパク質GM2AP(GM2ガングリオシドアクチベータ前駆体)およびサポシンBをこのようにアッセイした。特許文献4に示される結果は、GM2APおよびサポシンBは、MS患者の尿中で、非MS個体で見出される濃度と比較して高濃度で存在したこと、およびMS患者の尿中で同時に検出されるこれらの2つのタンパク質が、病理学のマーカーを示し得たことを示した。この発明者らはまた、尿中のGM2APおよびサポシンBの検出と、MTTアッセイにより当該尿中で測定されたグリオ傷害性との間の相関性を確立し、これらの2つのタンパク質について、高い尿中濃度とグリオ傷害性との間に相関性が存在したことを示した。これらのことから、この発明者らは、GM2APおよび/またはサポシンBタンパク質は、グリオ傷害性のメカニズムに関与し、それらはおそらく一緒になって作用し、グリオ傷害性を誘発したのではないかと結論付けた。
【0011】
そこで、本発明者らは、MTTアッセイを用いる特許文献4で同定されるタンパク質の活性を決定すること、および多発性硬化症に罹患した患者の尿中で発見されたグリオ傷害性が、同定されたタンパク質に関連するのかどうか確認することを望んできた。
【特許文献1】特許出願WO95/21859号
【特許文献2】特許出願第WO98/11439号
【特許文献3】特許出願第WO97/33466号
【特許文献4】特許出願第WO01/05422号
【非特許文献1】Malcus−Vocanson,C.et al.(1998)A urinary marker for multiple sclerosis [letter].Lancet 351,1330.
【非特許文献2】Malcus−Vocanson,C.et al.(2001)Glial Toxicity in urine and Multiple Sclerosis.Multiple Sclerosis 7,383−388,
【非特許文献3】N.Benjelloun et al.Cell.Mol.Biol.,1998,44(4),579−583.
【発明の開示】
【0012】
本発明者らは、全ての予測に反して、グリオ傷害性に関与するのは、特許文献4で同定されるタンパク質単独でも、GM2AP/サポシンBタンパク質の組み合わせでもないこと、および、全く驚くべきことに、グリオ傷害活性に関与しかつ下記の実施例に記載するヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14(カルグラニュリンB)もしくは変異GM2AP/GM2/MRP14、GM2またはガングリオシドGM2に対応する細胞傷害性に関与する因子は、脳組織内に存在する複合体脂質であることを示した。
【0013】
従って、本発明の目的は、多発性硬化症に関連する、精製単離した細胞傷害性因子であり、当該細胞傷害性因子は、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14であり、変異GM2APは配列番号2に対応することが理解されている。これらの精製単離したヘテロ複合体は、MSの病理学のマーカーとして、より詳細には、当該疾患の形態、当該疾患の段階または当該疾患の活性の期間のマーカーとして有用であり、また、当該病理学の治療を受けた患者の追跡治療にも有用である。
【0014】
従って、本発明者らは、多発性硬化症に罹患しているかまたはこの病理学の臨床的兆候を示す可能性のある個体由来のサンプル中におけるヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14及び変異GM2AP/GM2/MRP14を検出および/または定量するための方法、組成物および反応混合物を開発した。
【0015】
当該方法は、生物学的サンプル中の多発性硬化症に関連する細胞傷害性因子を、当該生物学的サンプル中から、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14を単離することにより、検出および/または定量することを含む。表現「ヘテロ複合体を単離する」とは、ヘテロ複合体の特定の検出を可能にする全ての条件を意味する。当該ヘテロ複合体の単離は、任意の適切な方法で行うことができる。例えば、非変性電気泳動、カラムクロマトグラフィー、生物学的媒体中のヘテロ複合体以外の化合物を分解する方法(例、プロテイナーゼKでの処理)、および当該ヘテロ複合体の生理化学的特性を検出するための任意の他の方法(例、分子質量または等電点)、または任意の他の適切な手段が挙げられる。
【0016】
本発明の1つの実施態様では、ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも1つの抗体または少なくとも2つの抗体を用い、上記細胞傷害因子は、当該ヘテロ複合体と当該抗体からなる複合体の形成を示すことによりまたは当該ヘテロ複合体と当該2つの抗体からなる複合体の形成を示すことにより、検出および/または同定される。好ましくは、当該抗体の少なくとも1つは捕捉抗体であり、他の抗体の少なくとも1つは検出抗体である。
【0017】
捕捉抗体は、複合体GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体変異GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体MRP14/GM2に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/MRP14に特異的に結合する抗体および複合体GM2AP/MRP14に特異的に結合する抗体から選択され、検出抗体は、複合体GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体変異GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体MRP14/GM2に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/MRP14に特異的に結合する抗体および複合体変異GM2AP/MRP14に特異的に結合する抗体から選択される。
【0018】
別の実施態様では、ヘテロ複合体は、少なくとも2つの抗体により単離され、その少なくとも1つはヘテロ複合体のGM2APまたは変異GM2APに特異的に結合し、その少なくとも他のものはヘテロ複合体のMRP14に特異的に結合し、当該細胞傷害特性は、当該ヘテロ複合体と2つの抗体とからなる複合体の形成を示すことにより、検出および/または同定される。好ましくは、上記抗体の少なくとも1つは、捕捉抗体であり、上記抗体の少なくとも他方は、検出抗体である。
【0019】
上記実施態様では、ヘテロ複合体と少なくとも1つの抗体からなる複合体の形成、またはヘテロ複合体と少なくとも2つの抗体からなる複合体の形成は、任意の適切な手段、例えば、篩分け装置を用いてサイズの関数としてスクリーニングすることにより、分離カラムを用いて分子質量の関数としてスクリーニングすることにより、または少なくとも1つの抗体の直接的または間接的な標識により、あるいは任意の他の適切な手段により、示すことができる。
【0020】
1つの実施態様では、当該方法は、
(i)試験すべき生物学的サンプルを提供すること、
(ii)当該生物学的サンプルを、GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、変異GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、MRP14タンパク質に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体および複合体MRP14/GM2に特異的に結合する抗体から選ばれる少なくとも1つの捕捉抗体、ならびにGM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、変異GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、MRP14タンパク質に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体変異GM2AP/GM2および複合体MRP14/GM2に特異的に結合する抗体から選ばれる少なくとも1つの標識された検出抗体と接触させること、ならびに
(iii)当該標識された検出抗体を検出および/または定量することにより、細胞傷害性因子を検出および/または定量することを含み、ここで、変異GM2APは、配列番号2に対応することが理解される。
【0021】
好ましくは、細胞傷害性因子の検出および/または定量は、当業者に周知のELISA、ELFA等の種々の免疫アッセイ原理を用いて行われ、「サンドウィッチ」免疫アッセイを用いることが有利である。「サンドウィッチ」免疫アッセイは、1つまたはそれ以上の工程を用いて(すなわち、洗浄工程なしで、または1つまたはそれ以上の洗浄工程を用いて)行うことができる。
【0022】
検出抗体(単数または複数)は、任意の適切な標識で標識される。従って、標識化は、放射標識、酵素を用いる標識、蛍光分子を用いる標識、ビタミンを用いる標識または比色標識であり得る。本発明では、標識は、好ましくはビタミン、ビオチンであり、検出は、セイヨウワサビペルオキシダーゼに結合したストレプトアビジンの添加により行われ、可視化は、オルトフェニレンジアミン二塩酸塩の添加により行われる。
【0023】
捕捉抗体(単数または複数)は、固相上に直接的にまたは間接的に固定される。
【0024】
本発明で用いる用語「抗体」は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、そのフラグメントおよびその誘導体を包含する。用語「抗体フラグメント」は、天然抗体のF(ab)2、Fab、Fab’およびsFvフラグメントを意味することを意図し6,7、用語「誘導体」は、とりわけ、天然抗体のキメラ誘導体を意味することを意図する8,9。これらの抗体フラグメントおよび抗体誘導体は、標的抗原に選択的に結合する能力を保持する。ヒト化抗体を用いることが有利であり得る。非ヒト(例、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体は、大部分が、所望の特異性、親和性および能力を有する、レシピエントの超可変領域がマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長目のような非ヒトドナー種(ドナー抗体)の超可変領域の残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。特定の場合では、ヒト免疫グロブリンのFv領域の残基(FR)は、対応する非ヒト残基で置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにも見出せない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の有効性を改善するためになされる。一般に、ヒト化抗体は、全てまたは実質的に全ての超可変領域が非ヒト免疫グロブリンに対応し、かつ、全てまたは実質的に全てのFR領域がヒト免疫グロブリンのFR領域である可変ドメインを、少なくとも2つ、好ましくは2つ含むであろう。ヒト化抗体は、また、必要に応じて、ヒト免疫グロブリンなどの免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含み得る10,11,12。特に、出願第01/05422号に記載の抗GM2APおよび抗MRP14抗体を挙げることができる。
【0025】
しかしながら、驚くべきことに、グリオ傷害活性に関連しかつヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14に対応する因子によって、複合体GM2AP/GM2に、複合体変異GM2AP/GM2に、複合体MRP14/GM2に、複合体GM2AP/MRP14にまたは複合体変異GM2AP/MRP14に特異的に結合し得る抗ヘテロ複合体抗体の産生が可能になることを発見した。このような抗体の産生は当業者に周知である。ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14は、腹腔内注射によるBALB/cマウスの免疫化のための免疫原として用いられる。最初の注射は、完全Freundアジュバントを用いて行われる。その他の注射は、4〜8週間の間隔で、不完全Freundアジュバントを用いて行われる。最終追加抗原を、生理食塩水中での融合の2、3日前に与える。この抗原追加後、免疫化マウスの脾臓を取り出し、脾臓細胞を回収する。次いで、脾臓細胞と骨髄腫株との融合を行い、免疫化に用いられるヘテロ複合体をELISAにおいて認識する抗体を分泌する細胞を選択する。最後に、免疫ヘテロ複合体に特異的な抗体を産生する(すなわち、GM2AP、変異GM2APまたはMRP14をいずれも単独では認識しない)クローンを選択する。
【0026】
上述の抗体は、単独でまたは組み合わせて、細胞傷害性因子の検出および/または定量方法に用いることができる。
【0027】
本発明の方法の好ましい実施態様では、試験サンプルを、以下を含む前処理に供する:
サンプルのタンパク質を、プロテイナーゼKで消化することからなる工程;当該プロテイナーゼKを、例えば、トリクロロ酢酸で沈殿させて不活性化させることからなる工程;およびpHを、例えば、トリスマレイン酸緩衝液の添加により中和することからなる工程。
【0028】
生物学的サンプルは、血清、血漿、尿または脳脊髄液であり、好ましくは尿である。
【0029】
好ましくは、本発明の方法で用いられる抗体は、以下のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体である:10E11A11、13D1E5、13H9C9、19C11C10、2G12H5、79、2B9H2、4A7B10、5H7C10および196。しかしながら、GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、変異GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体、MRP14タンパク質に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/GM2に特異的に結合する抗体、複合体変異GM2AP/GM2、複合体MRP14/GM2に特異的に結合する抗体、複合体GM2AP/MRP14または複合体変異GM2AP/MRP14に特異的に結合する特性を示す任意の抗体が本発明の一部をなすことは極めて明らかであり、そのような抗体を得る方法は、上記のように当業者に周知である。
【0030】
好ましくは、本発明のサンドウィッチELISA検出法および/または定量アッセイに用いられる抗体は、以下のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体である:
−捕捉抗体10E11A11、13D1E5、2G12H5、4A7B10、5H7C10、2B9H2および79;
−検出抗体10E11A11、4A7B10、5H7C10、2B9H2、13H9C9、19C11C10、13D1E5および2G12H5。
【0031】
有利には、捕捉抗体および検出抗体は、以下の対から選択される:
−2B9H2/10E11A11、
−10El1A11/4A7B10+5H7C10、
13D1E5+2G12H5/4A7B10+5H7C10、
79/4A7B10+5H7C10、
−79/2B9H2、
−4A7B10+5H7C10/10E11A11、
4A7B10+5H7C10/13H9C9+19C11C10、
2B9H2/10E11A11、
−2B9H2/13H9C9+19C11C10、
13D1E5+2G12H5/4A7B10+5H7C10、
−79/2B9H2、
−4A7B10+5H7C10/10E11A11、
−4A7B10+5H7C10/13D1E5+22G12H5、
−2B9H2/13D1E5+22G12H5、
−2B9H2/13H9C9+19C11C10。
【0032】
上記モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体は新規であり、これらもまた本発明の主題の一部をなす。これらの産生方法は、実験の章でより詳細に説明する。選択された捕捉抗体および検出抗体の対もまた新規であり、これらもまた本発明の主題の一部をなす。
【0033】
本発明の主題はまた、生物学的試験サンプル中で上記細胞傷害性(グリオ傷害性)因子を検出および/または定量するための組成物であり、当該組成物は、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含む。好ましくは、当該組成物は、ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも2つの抗体を含む。
【0034】
本発明の主題はまた、生物学的試験サンプル中で上記細胞傷害性(グリオ傷害性)因子を検出および/または定量するための組成物であり、当該組成物は、反応混合物中に、同時に、少なくとも1つの捕捉抗体および少なくとも1つの標識された検出抗体を含み、当該抗体は、ヘテロ複合体の、GM2APタンパク質に、変異GM2APタンパク質に特異的に結合する抗体およびMRP14タンパク質に特異的に結合する抗体から選択される。
【0035】
好ましくは、捕捉抗体および検出抗体は、以下のモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体を含む:10E11A11、13D1E5、13H9C9、19C11C10、2G12H5、79、2B9H2、4A7B10、5H7C10および196。
【0036】
有利には、当該組成物は、抗体10E11A11、13D1E5、2G12H5、4A7B10、5H7C10、2B9H2および79から選択される少なくとも1つの捕捉抗体を含み;かつ検出抗体10E11A11、4A7B10、5H7C10、2B9H2、13H9C9、19C11C10、13D1E5および2G12H5から選択される少なくとも1つの検出抗体を含む。
【0037】
好ましい組成物は、以下の捕捉抗体および検出抗体の対を含む:
−2B9H2/10E11A11、
−10E11A11/4A7B10+5H7C10、
−13D1E5+2G12H5/4A7B10+5H7C10、
−79/4A7B10+5H7C10、
−79/2B9H2、
−4A7B10+5H7C10/10E11A1l、
−4A7B10+5H7C10/l3H9C9+19C11C10、
−2B9H2/10E11A11、
−2B9H2/13H9C9+19C11C10、
−13D1E5+2G12H5/4A7B10+5H7C10、
−79/2B9H2、
−4A7B10+5H7C10/lOE11A11、
−4A7B10+5H7C10/13D1E5+22G12H5、
−2B9H2/13D1E5+22G12H5、
−2B9H2/13H9C9+19C11C10。
【0038】
本発明の主題はまた、上記細胞傷害性(グリア傷害性)因子を検出および/または定量するための反応混合物であり、当該混合物は、少なくとも2つの抗体を含み、当該抗体の少なくとも1つはヘテロ複合体のGM2APタンパク質または変異GM2APタンパク質に特異的に結合し、当該抗体の他の少なくとも1つはヘテロ複合体のMRP14タンパク質に特異的に結合する。用語「反応混合物」は、少なくとも上記2つの抗体を同時に含む均一または不均一な媒体を意図することを意味する。好ましくは、当該抗体の少なくとも1つは捕捉抗体であり、他の抗体の少なくとも1つは検出抗体である。
【0039】
本発明の別の主題は、少なくとも2つの抗体に結合するヘテロ複合体を含む複合体であり、当該抗体の少なくとも1つはヘテロ複合体のGM2APタンパク質または変異GM2APタンパク質に特異的であり、他の少なくとも1つの抗体はヘテロ複合体のMRP14タンパク質に特異的である。
【0040】
配列番号1は、GM2APタンパク質の配列に対応する。
【0041】
配列番号2は、40位のエキソン2で変異した(アスパラギン酸がフェニルアラニンで置換された)GM2APタンパク質の配列に対応する。
【0042】
配列番号3は、エキソン1、エキソン2およびエキソン4の両方で変異を示す変異GM2APタンパク質の配列に対応する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下の詳細な説明では、GM2APタンパク質を参照する場合、考慮すべき配列は、配列番号1で同定される配列である。さらに、変異GM2APタンパク質を参照する場合、考慮すべき配列は、配列番号2で同定される配列である;実施例3の実験の章で説明するように、配列番号1および配列番号2において、バリンまたはアラニンは、153位での識別を行うことなく見出すことができる。しかしながら、配列番号3で同定されるように、エキソン1、エキソン2およびエキソン4の両方で変異を示す変異GM2APタンパク質を考慮に入れることにより同等の実験を行うことができる。
【0044】
図面
添付の図面は、三元複合体GM2AP+MRP14+GM2(GM2:最終濃度50μg/ml)の用量応答曲線を示す。MRP14の量はx軸(ng)に沿って表され、死んだ細胞に対応する細胞傷害百分率は、y軸に沿って表される。この図では、GM2APの量(ng)は、それぞれ、以下の記号で表される:
φ:5ng、π:10ng、Ψ:20ng、υ:50ngおよびχ:100ng。
【0045】
同様の実験は、GM2タンパク質の代わりに、変異GM2APタンパク質を用いて行われた。得られた結果は、添付の図面に記載のものと同等である。
【実施例】
【0046】
実施例1:MTTアッセイプロトコル
(i)ポリ−L−リジンを用いたプレートの「コーティング」
250μlの無菌ポリ−L−リジン溶液(12.5μg/ml)を、48ウェルプレート(Falcon 3078)の全てのウェルに入れる。37℃で2時間インキュベーションした後、溶液を吸引により除去し、250μlの無菌水で置換して、ウェルを洗浄する。ウェルを吸引により空にした後、それらを微生物学的に安全なステーションの気流下で乾燥する。
【0047】
(ii)用いた細胞
CLTT1−1細胞は、ポリオーマウイルスのラージT遺伝子を発現するトランスジェニックマウス由来の星状細胞である13。これらの細胞を、37℃、5%CO湿潤雰囲気下で、Dubelcco変性Eagle培地(DMEM)/Ham F12培地(50/50)、4.5g/lのD−グルコース(10%の非脱補体仔ウシ血清(FCS)、グルタマックス(580mg/l)、ペニシリン(500単位/l)およびストレプトマイシン(500μg/l)を補充)中で培養する。
【0048】
(iii)細胞傷害性アッセイ
試験サンプルを、傷害性アッセイのために、入れる24時間前に調製し、4℃でインキュベートした。
【0049】
ポリ−L−リジンで「コーティング」された48ウェルプレートに、CLTT 1−1細胞を、1ウェル当たり250μlの細胞懸濁液(6000細胞/ml)の速度(すなわち、1500細胞/ウェル)で播種した。
【0050】
5%CO湿潤雰囲気下、37℃での24時間のインキュベーション後、サンプルを細胞培地の表面に塗布する。各サンプルを3回塗布する。特定のウェルにより、細胞コントロール(C)(サンプルの沈殿なし)または「TUC」コントロール(TUC溶液を10μl塗布する)と評価することが可能である。TUC試薬(20mMのTris、250mMの尿素、1mMのCaCl)は、尿の化学組成を模倣する溶液である。
【0051】
沈殿をホモジナイズし、蒸発を避けるためにプレートの上部に保護フィルムを被せる。
【0052】
5%CO湿潤雰囲気下、37℃での72時間のインキュベーション後、MTTアッセイによる可視化を行う。ウェルの底から細胞を取り出さないように留意しながら、細胞上清を吸引により除去する。250μlのMTT溶液(培養培地中0.5mg/ml)を、細胞上に慎重に塗布する。37℃での3時間のインキュベーション後、溶液をを吸引により除去し、細胞中で生じたフォルマザン結晶をイソプロパノール、1N HCl(40μl/ml)で溶解する。
【0053】
光学濃度読み取りを行うため、48ウェルプレートの各ウェル中の70μ1の溶液が均一になるとすぐに96ウェルプレートのウェルに移す。
【0054】
吸光度を、570nm/650nmで読み取る。
【0055】
細胞傷害百分率を計算することができる:
MeanC=コントロールの吸光度の平均
σC=コントロールの吸光度の標準偏差
CO=カットオフ=平均C=2σC
OD=サンプルの平均吸光度
傷害%=(1−(OD/CO))×100
【0056】
有効であるためには、各サンプルの吸光度(3回)は、平均吸光度の10%よりも大きい標準偏差を有してはならない。
【0057】
実施例2:尿プールの調製
100リットルのMS尿(患者の最初の朝の排尿由来の0.2〜0.5リットル)を回収した。グリア傷害性バイオアッセイを阻害するおそれがある、細菌汚染された患者由来の尿または薬物治療を受けた患者由来の尿を除いた。個別のサンプルについてグリア傷害性を試験し、顕著なグリア傷害性を有する46リットルの尿の最終プールを、MTTアッセイのために選択した。平行して、グリア傷害性が陰性の正常なドナー由来の当量の尿を各サンプルについて得た。この材料の濃縮および精製、タンパク質分析ならびに同定ストラテジーからなる工程を以下に示す。
【0058】
・尿中タンパク質の精製
高濃度のタンパク質を得るため、MS陽性およびMS陰性の尿プールを精製した。
【0059】
−(i)沈殿:
−硫酸アンモニウム(Prolabo−ref.21 333 365)での沈殿を、MS陽性およびMS陰性の尿プールについて行った。40%の尿に対し60%の飽和硫酸アンモニウムの百分率(すなわち、尿1リットル当たり390gの硫酸アンモニウム)を用いた。沈殿を改良するため、各プールを1.8リットルの画分で、2リットルのビンに分配した。沈殿を2回×8時間、周囲温度で、穏やかに撹拌しながら行った。尿プールを3000rpmで10分間、10℃の温度で遠心分離した後、得られたペレットを、1mM CaClおよび0.25m尿を含む20mM Tris緩衝液に入れる。次いで、混合物を3000rpmで10分間遠心分離した。上清は濃縮されたタンパク質を含む。これを以下の工程に直ちに用いるか、または、以下の工程を連続的に行うことができない場合は、冷凍する。
【0060】
−(ii)イオン交換クロマトグラフィー:
−次いで、タンパク質を含む溶液を、DEAE Fast Flowゲル(商品名、Pharmaciaから販売)を通した。この工程は、ゲルを充填したPharmaciaカラム上で、低圧で行う。緩衝液を、均一な流速を可能にする蠕動ポンプによってカラム上に導入する。カラム平衡化緩衝液は、20mMのTris緩衝液(pH7)である。沈殿物上清に対応し、多すぎる量の塩を含む画分を、カラム上に装填する前に、この緩衝液に対して透析した。塩勾配溶離液により、タンパク質の回収が可能になる。溶出勾配は、カラム平衡化緩衝液中での100、200、300および500mM NaClの工程により得られる。溶出画分を、MTTアッセイにより試験する。陽性の画分、すなわち、200mM NaClで溶出された画分が、保持される。これらの画分を直ちに処理するか、または冷凍状態で保持する。
【0061】
−(iii)精製
−溶出させるタンパク質のサイズおよび形状の違いに基づく立体排除クロマトグラフィーを用いた。200mM NaCl溶出液に対応する画分を、カラム上に装填した。溶出の過程で、低分子量のタンパク質は残存し、次いで、より大きい分子よりも後に溶出する。精製は、TosoHaas TSK Prep G 3000 SWカラム(直径21.5mm、長さ300mm)を用いてHPLC上で行った。分子体積排除限界は、500000ダルトンである。用いる溶出緩衝液は、pH6.8で、100mMのリン酸、100mMの硫酸ナトリウムを含む。タンパク質の混合物の分離は、60分間で行った。15〜20,000ダルトンの質量に対応する画分のみを保持した。この画分を、20mMのTris緩衝液(0.2mM CaCl含有、pH7.2)で透析し、次いで冷凍した。
【0062】
各工程において、顕著な傷害活性を示す画分を、引き続く工程のために保持した。タンパク質の傷害活性のコントロールを、MTTアッセイを用いて、各工程において行った。顕著な傷害活性を示す画分のみを、さらなる精製工程のために保持した。
【0063】
−(iv)逆相クロマトグラフィーによる尿中タンパク質のさらなる精製
−精製後に得られた、MS患者由来の尿のプール(MS陽性プール)および非MS患者由来の尿のプール(MS陰性プール)を蒸留水中に入れ、次いで、0.2%TFA/10%のアセトニトリル溶液で希釈して、約130〜140μg/mlの最終濃度を得た。
【0064】
C8逆相HPLCによる分離を、Perkin Elmer社から販売されているBrownlee Aquaporeカラム(商品名)(カラム特性:300Å/7μm/(100×4.6)mm)上で行った。陽性プールおよび陰性プールについて、2つの異なるカラムをそれぞれ用いた。注入は、250μmの複数注入により行った。タンパク質を、5%〜15%の緩衝液Aの直線勾配で溶出し、次いで、15%〜100%の緩衝液Bの直線勾配で95分、0.5ml/分の流速で溶出した。用いた緩衝液AおよびBは、それぞれ、0.1%TFA(Pierce No.28904)/MilliQ水緩衝液および0.09%TFA/80%アセトニトリル(Baker)緩衝液である。検出は、UV吸光度を205nmおよび280nmで測定することにより行った。画分を、1.5mlおよび0.5−1mlの目的とする領域にある画分として回収した。回収後、画分を、ドライアイス中で冷凍した。
【0065】
次いで、回収した画分を、Speed Vac中で乾燥させ、100μmの0.1%TFA/30%アセトニトリル中に入れた。20μlの画分を500μlのエッペンドルフ管中に移し、100μlのMilliQ水で2回洗浄し、次いで再び乾燥させた。
【0066】
溶出後回収した各画分中に含まれるタンパク質の細胞傷害性を、MTTアッセイを用いて測定した。MS陽性プール中の画分X76/43のみが、インビトロで傷害活性を示す。この画分の数は、実施例で述べる溶出条件の関数としての溶出の順番に対応する。その細胞傷害性は、出願第WO98/11439号に記載されるように、マウス星状細胞のFACSによりインビトロで確認された。SDS−PAGEにおけるそのプロファイルは、55kDa、35kDa、20kDa、18kDa、14kDaおよび8kDaにおけるタンパク質のバンドを明らかにした。コントロール尿から得られたMS陰性プールの対応する画分X76/43は、MTTアッセイによっていかなる細胞傷害性も示さなかった。SDS−PAGEにおけるそのプロファイルは、55kDa、35kDaおよび20kDaにおけるバンドを示した。
【0067】
・SDS−TRICINEゲルにおけるHPLC上での分離により得られるタンパク質の分析
MS陰性プールの画分X76/43のタンパク質含有量およびMS陽性プールの画分X76/43のタンパク質含有量を、SDS−TRICINE 16%ゲル上での分離およびゲルの亜鉛/イミダゾール染色後に観察した。
【0068】
HPLCにより得られた画分X76/43回収プールを、予め注いだSDS−TRICINE 16%ゲル(10ウェル、厚み1mm)(Novex社より販売されている)上に充填した。これらのゲルの使用条件は、供給者の推奨する条件に対応する。サンプルを75μlの一回濃縮したサンプル緩衝液(SDS−TRICINE No.LC 1676、1mlを2回濃縮+水中で1/2に希釈した50μlのβ−メルカプトエタノール(Pierce))中に入れ、25μlのサンプルを、ゲル上に3回充填した。MS陰性プール由来の画分X76/43回収プールを、MS陽性プールについて説明したのと同じ条件下で、ゲル上に装填した。2つのゲル上での移動を、同一の移動タンク(XCELL II NOVEX(商品名))中で、125mVの一定電圧で2時間行った。タンクを、氷を含む容器中に置いた。移動の直後に、ゲルを、亜鉛/イミダゾール染色(Biorad社により販売される染色キット161−0440)により染色し、可逆的ネガティブ染色を得た。
【0069】
・ゲルバンドのトリプシン消化
画分X76/43の装填により可視化された全てのタンパク質バンドを切り出し、トリプシン溶液中で一晩タンパク質分解に供した。ゲルバンドを、メスを用いて1mmの切片に切り出し、エッペンドルフ管に移した。エッペンドルフ管を遠心分離スパイクにかけて、ゲル片を沈めさせ、遠心分離後、100μlの洗浄緩衝液(100mM NHCO/50%CHCN)をゲル片に加えた。周囲温度で30分撹拌した後、上清を20μl画分だけ除去し、洗浄工程を2回繰り返した。エッペンドルフ管を、5分間、スピードバク(speed vac)で乾燥させた。20μgのトリプシン(変性配列グレードPROMEGA V5111)(商品名)を200μlの消化緩衝液(5mMトリス、pH8)に入れ、間欠的に撹拌しながら周囲温度で30分撹拌し、20〜30μlの再懸濁したトリプシンを、ゲル片に添加した。エッペンドルフ管を遠心分離し、温室で28℃で一晩保存した。消化後、ゲルバンドは、すぐに質量測定または引き続く使用のための冷凍に用いることができる。より高い見かけ分子量のタンパク質は、2つの画分で観察された。一方、見かけ分子が8、14および18kDaのバンドは、MS陽性プールの画分X76/43中でのみ観察可能である。
【0070】
実施例3:タンパク質のマススペクトル分析および配列決定
・タンパク質分解フラグメントのMALDI−TOFマススペクトル分析による分析
30μlの抽出緩衝液(2%TFA/50%アセトニトリル)をサンプルに添加する。分析すべきエッペンドルフ管を5分間遠心分離に供し、次いで、5分間超音波処理に供し、最後に、1分間遠心分離に供する。
【0071】
0.5μlのマトリックス(アセトン中で飽和したα−シアノ−4−ヒドロキシトランス桂皮酸)の14個の堆積物を、ステンレス鋼ディスク上で作製する。薄い均一の微結晶層を得る。0.5μlの2%TFA/水の溶液を、この14個の堆積物上の下塗り層上に堆積し、次いで、分析すべきサンプルを0.5μl添加する。0.5μlのα−シアノ−4−ヒドロキシトランス桂皮酸の50%アセトニトリル/水中飽和溶液を、このように形成したこの液滴に添加する。周囲温度で30分乾燥した後、結晶堆積物を2μlの水で洗浄し、すぐに空気ブラストで除去する。全てのスペクトルは、リフレクトロンを備えたBRUKER BIFLEXマススペクトル分析器(商品名)で得る。マトリックスサンプルサンドウィッチ中に存在する全てのペプチドのうち最も代表的なマススペクトルを得るために、測定(全堆積物に対し、90〜120回のレーザー発射)を蓄積して、100ppm未満の測定精度を用いることを可能にするため、各堆積物について、トリプシン自動分解ペプチドを用いて校正を行った。
【0072】
マススペクトル分析の結果を、Protein Prospectorソフトウェア(http://prospector.ucsf.edu)のM5−FITアルゴリズムを用いるデータバンクによりサーチした。
【0073】
・消化ペプチドのN−末端配列決定
−(i)消化ペプチドのHPLCによる抽出および分離
トリプシンでの消化後に得られたペプチドを、超音波処理浴中で、0.1%TFA/60%アセトニトリルを用いて、3回、30分間抽出した。抽出溶液を合わせ、スピードバック中で乾燥させて20μlにした。80μ1の緩衝液A(0.1%TFA/水)中で希釈した後、トリプシンで消化したゲルバンドの抽出物を、C18/MZ−Vydac/(125×1.6)mm/5μmカラム(商品名)に注入した。ペプチドを、150μl/分の流速および5%の緩衝液B(0.09%TFA/80%アセトニトリル)〜40%の緩衝液Bの範囲内の勾配で40分間溶出し、次いで、40%の緩衝液B〜100%の緩衝液Bの勾配で10分間溶出した。205nmをUV吸光度で測定することにより、検出を行った。ピークを500μlのエッペンドルフ管中に集めた。次いで、集めた個々のペプチドのピークを、N−末端アミノ酸配列分析に供した。
【0074】
−(ii)N−末端配列決定:
単一のマスピークに対応する画分を、配列決定装置(Perkin Elmerモデル477A、Applied Biosystems)でのEdman分解により分析した。配列決定条件は、製造者により記載されたとおりであった。サンプルを装填するためにマイクロカートリッジを用い、PTH−アミノ酸を、オンラインHPLCシステム(Perkin Elmerモデル120A,Applied Biosystems)を用いて同定した。
【0075】
・結果
マススペクトル分析および配列決定による分析の結果を、下記の表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
MW:平均分子量
IMS:マススペクトル分析による同定
IS:配列決定による同定
NI:同定されない残りのピーク
ND:検出されず
*:尿中の完全な467kDaタンパク質の前タンパク質分解から、または精製工程の間におそらく得られるであろうパールカンの20kDa C−末端フラグメントと同一である。
【0078】
共に精製されたタンパク質の混合物もまた、最終MS精製画分中および対応するコントロール画分中の両方に存在した。これらの2つの画分にグリア傷害活性が存在しないことにより、これらの2つのサンプル中で同定されたタンパク質は無関係であると考えられた。
【0079】
結果として、GM2AP(18kDa)、MRP14またはカルグラニュリンB(14kDa)、およびサポシンB(10kDa)は、グリア傷害活性についての可能性のある候補と考えられた。
【0080】
さらに、MS画分中の18kDaバンドのトリプシン消化されたフラグメントのN−末端配列決定は、GM2APの種々の位置における多形の存在を示した;アラニンがトレオニンで置換されている、GM2APアミノ酸配列の19位におけるエキソン1での変異;アスパラギン酸がフェニルアラニンで置換されている、GM2APアミノ酸配列の40位におけるエキソン2での変異。この変異は、正常または罹患したドナーのゲノムDNAで観察されたことはなかった;GM2APアミノ酸配列のそれぞれ59位および69位におけるエキソン2での他の2つの変異は、イソロイシンのバリンでの置換およびメチオニンのバリンでの置換にそれぞれ対応する。正常個体(血液ドナー)および多発性硬化症に罹患した患者由来のリンパ球のゲノムDNAの種々のラウンドの配列決定の後、GM2APアミノ酸配列の153位でのバリンのアラニンでの置換からなるエキソン4での変異は、これまで記載されていない新規な多形であることが見出された。このエキソン4での変異は、試験した27名のMS患者のうち3名で見出され、27名のコントロール個体のうち8名でも見出されたが、正常多形を示唆する。他の変異は、リジンがグルタミンで置換されたGM2APアミノ酸配列の171位のエキソン4で見出された。
【0081】
GM2APおよび変異GM2APのアミノ酸配列は、それぞれ、配列同定装置により配列番号1および配列番号2で表され、これらの2つの配列番号1および配列番号2において、バリンまたはアラニンは、153位において識別することなく見出すことができることが理解される。なぜなら、この位置でのエキソン4の変異は、正常多形を示唆するからである。
【0082】
実施例4:組み換えタンパク質
組み換えタンパク質(購入するか、または形質転換で産生した)を用いて、候補タンパク質のグリア傷害性の可能性を評価した。
【0083】
以下の「非ヒト」タンパク質、すなわち、発現すべきインサートを含むプラスミドを用いた形質転換により、または発現すべきインサートと一体化した、バキュロウイルスに感染した酵母または昆虫細胞における真核生物発現系により、原核生物発現系(大腸菌)において産生した組み換えタンパク質:
【0084】
大腸菌中で産生した、N−末端位置でヒスチジン尾部と融合したMRP14タンパク質(またはカルグラニュリンBまたはS100A9);大腸菌中で産生した、MRP8タンパク質(またはカルグラニュリンAまたはS100A8);およびC.Kerkhoff博士(Munster大学、ドイツ)から購入した天然ヒトヘテロ複合体MRP14/MRP8(またはカルプロテクチン)。
【0085】
K Sandhoff教授(Kekule研究所、Bonn大学、ドイツ)から購入した、酵母中で産生した、N−末端位置でヒスチジン尾部と融合したGM2APタンパク質(ガングリオシドGM2−活性化前駆体)およびSapB(サポシンB)タンパク質。
【0086】
これらのタンパク質は、文献に記載の自らの生理学的活性を有する。
【0087】
「ヒト」タンパク質(すなわち、発現すべきインサートと一体化した、適切なプラスミドを用いて形質転換したヒト細胞の真核生物発現系により産生した組み換えタンパク質)は、下記のプロトコールに従って産生された。
【0088】
293T細胞(ラージT抗原を発現する、5型アデノウイルスを用いて形質転換した一次ヒト胚腎細胞)を、37℃、湿潤雰囲気下、5%COで、DMEM、4.5g/lのD−グルコース(10%の脱補体仔ウシ血清(FCS)、グルタマックス(580mg/l)、ペニシリン(500単位/l)およびストレプトマイシン(550μg/l)を補充)中で培養した。
【0089】
一時的な形質転換を行うため、目的のタンパク質のcDNAを含む適切なプラスミド、MRP14、GM2AP、およびN−末端位置の分泌ペプチド(IgK)から始まる変異GM2AP(アスパラギン酸/フェニルアラニン/40位)を用いた。
【0090】
293T細胞を、脂質から構成され、DNAを複合体化しかつ細胞内に輸送する「形質転換物」試薬を用いて形質転換した。293T細胞をトリプシン化し、75cmフラスコ1つ当たり200万個の細胞を播種し、37℃で、5%CO湿潤雰囲気で、10mlの培養培地(DMEM、4.5g/lのD−グルコース、10%の脱補体仔ウシ血清(FCS)、グルタマックス(580mg/1)、ペニシリン(100単位/ml)およびストレプトマイシン(100μg/ml)を補充)中で一晩インキュベートした。
【0091】
3/2[形質転換物の体積(μl)/プラスミドDNAの量(μg)]の比で、1mlのFCS非含有媒体を用いて、形質転換溶液をその場で調製する。
【0092】
周囲温度での接触の45分後、形質転換溶液を、非コンフルエントな細胞層に滴下する。
【0093】
5%CO湿潤雰囲気中での37℃での72時間のインキュベーション後、上清を回収し、10分間、2500rpmで遠心分離する。
【0094】
次いで、タンパク質の定量を、BMA Biomedicals AG,Augst(スイス)から販売されているMRF Enzyme免疫アッセイキット(商品名)を用いて、ヒト組み換えMRP14タンパク質に関するインフォメーションシートに従って行うか、または抗GM2APウサギポリクローナル抗体を用いる準定量的Westernブロッティング技術を用いて行った。これらの技術は、相対比較のための表示値を与える。
【0095】
この産生に由来する粗上清は、特に、傷害活性および検出アッセイに用いられる。
【0096】
実施例5:「非ヒト」タンパク質の傷害性
「非ヒト」組み換えタンパク質MRP14、MRP8、GM2APおよびSapBの傷害性を、MTTアッセイにより評価した。
【0097】
タンパク質を、種々の尿中の各タンパク質の濃度の評価から規定される範囲内で試験した。範囲は、種々の緩衝液中(TUC溶液中、または2つの型の尿(MTTアッセイで傷害性であった、多発性硬化症に罹患した患者由来の尿(MS尿)、およびMTTアッセイで傷害性ではなかった、非MSドナーの採用者由来の尿(正常尿))中のいずれか)で、作製した。尿は、予め56℃で30分間処理し、濾過した。
【0098】
結果は、それぞれ、TUC溶液中および正常尿中で試験したタンパク質が、MTTアッセイにより傷害性ではないことを示す。GM2AP、MRP14およびサポシンBタンパク質の顕著な効果は、MS尿中で、MTTアッセイによっては示されない。傷害性の阻害は、3ngまたはそれ以上のMRP8用量により記録される。
【0099】
これらの結果を、表2に示す。
表2A:TUC溶液の範囲
表2B:尿中の範囲
【0100】
【表2A】

【0101】
【表2B】

【0102】
MRP14およびMRP8については、細胞傷害百分率は、2回のアッセイの平均細胞傷害百分率である
ND:測定されず
他のMS尿については、同等の傷害性の阻害が観察される。
【0103】
次いで、GM2AP/MRP14、サポシンB/MRP14およびサポシンB/GM2AP/MRP14タンパク質の組み合わせは、TUC溶液中および上記の2つのタイプの尿中でで調製した。「コントロール」の組み合わせでは、種々のGM2AP/MRP14/8、サポシンB/GM2AP/MRP8の組み合わせ中のMRP14タンパク質を、ヘテロ複合体MRP14/8またはMRP8タンパク質で置き換えた。「コントロール」の組み合わせは、同様の様式で調製した。全ての組み合わせを、MTTアッセイを用いてそれらの傷害性を試験する前に、一晩、4℃でインキュベートした。
【0104】
結果を表3に示す。
表3A:TUC溶液の範囲
【0105】
【表3A】

【0106】
MRP14/8:ヒト天然へテロ複合体
Sap.B:サポシンB
2つのアッセイの平均
【0107】
表3Aに示す結果は、GM2AP/MRP14、GM2AP/MRP14/8、サポシンB/MRP14およびGM2AP/MRP14/サポシンBの組み合わせは、試験した量にかかわらず、TUC中で傷害性効果を有しないことを示す。GM2AP(10ng)/MRP14(0.5ng)の組み合わせのみが、傷害性を示すように思われるが、この傷害活性は、2回の追加の比較アッセイでは引き続いて見出されなかった。さらに、追加のアッセイを、種々の量のGM2APおよびMRP14を用いる組み合わせGM2AP/MRP14を用いて行われた。得られた結果は、組み合わせGM2AP/MRP14が、試験した量にかかわらず、TUC中で傷害性効果を有しないことを示す。
表3B:正常尿中での範囲
【0108】
【表3B】

【0109】
Sap.B:サポシンB
表3Bから明らかなように、組み合わせGM2AP/MRP14は、正常尿中で傷害性である。なぜなら、傷害性は、GM2APタンパク質の量の増加の関数として増加するからである。しかしながら、この傷害性は、比較的不安定でかつ比較的再現しにくいように思われ、また、尿サンプルに依存するように思われる(表3Bにおける正常尿1と正常尿2との間での細胞傷害百分率の比較を参照されたい)。
【0110】
組み合わせサポシンB/MRP14は、正常尿の有意性の限界にある。
【0111】
組み合わせGM2AP/MRP14/サポシンBを用いて得られた結果は、解釈するのが難しい。
【0112】
GM2AP/MRP14およびサポシン/MRP14タンパク質の組み合わせの傷害性もまた、正常尿および多発性硬化症に罹患した患者由来の傷害性尿(MS尿)に関して試験した。
【0113】
結果を表3Cに示す。
表3C:非MS尿およびMS尿中の範囲
【0114】
【表3C】

【0115】
Sap.B:サポシンB
組み合わせサポシンB/MRP14は、試験した量にかかわらず正常尿中およびMS尿中で傷害性効果を有しない。
【0116】
組み合わせGM2AP/MRP14は、正常尿1に関してはいかなる傷害性効果も示さないが、正常尿2に関して傷害性効果を示す(GM2APが増加すると、尿の傷害性が増加する)。さらに、MS尿については逆の効果がみられた。MRP14の量が増加すると、尿の傷害性は減少する。
【0117】
実施例6:「ヒト」タンパク質の傷害性
実施例3に記載のように産生したタンパク質GM2AP、エキソン2で変異したGM2APおよびMRP14を、それらを含む293T細胞由来の培養上清を用いて、MTTアッセイにより、それらの傷害性を試験した。
【0118】
293T細胞培養上清を用いて、以下の組み合わせもまた実施した:GM2AP/MRPl4、変異GM2AP/MRPl4、GM2AP/MRP14/MRP8。調製した組み合わせを、引き続いて4℃で一晩インキュベートし、次いで、それらの傷害性を、MTTアッセイにより試験した。
結果を表4に示す。
【0119】
【表4A】

【0120】
%C:細胞傷害百分率
ND:測定されず
上清中のタンパク質のおよその濃度:MRP14バッチ1および2:350ng/ml;GM2APバッチ1:300ng/ml、バッチ2:200ng/ml
【0121】
太字で示した特定の値については、いくつかのGM2AP/MRP14の組み合わせは、細胞傷害性が弱く(20〜30%の細胞傷害性)、組み合わせGM2AP(20ng)/MRP14(0.5ng)に最適である。
【0122】
MRP14は、単独では、細胞傷害性ではない。バッチ2で行われたアッセイ1および2では、非常に弱い傷害性が観察されるが、GM2AP単独では細胞傷害性であるとは考えられない。なぜなら、再現可能性が上清産生バッチに依存するので、完全ではあり得ないからである。
【0123】
【表4B】

【0124】
%C:細胞傷害百分率
ND:測定されず
GM2APおよびMRP14の上清中でのおよその濃度:2μg/m1
拒絶:サンプルのOD値の標準偏差が50より大きいために拒絶された、%細胞傷害百分率
*:サンプルのOD値の標準偏差が16と11との間にある
コメントなし:サンプルのOD値の標準偏差が10未満である
【0125】
結果は、タンパク質単独では、上清中で、非常に多い量(100ngのMRP14)での非特異的様式を除いては、傷害性ではないことを示す。組み合わせGM2AP(100ng)/MRP14(100ng)のみが、相対的な細胞傷害性を示すと考えることができる。
【0126】
GM2APタンパク質をこの組み合わせで変異GM2APタンパク質と置き換えた場合、下記に示すように、特定の混合物について同じタイプの傷害性が得られる。
【0127】
【表4C】

【0128】
%C:細胞傷害百分率
*:ODの標準偏差が14と11との間にある
コメントなし:サンプルのOD値の標準偏差が10未満である
上清中でのタンパク質のおよその濃度:変異GM2AP:200ng/ml;MRP14:350ng/ml
【0129】
太字で示した多くの値について、組み合わせ変異GM2AP/MRP14は傷害性である。変異GM2APタンパク質単独では、細胞傷害性効果を有しない。MRP14単独では、細胞傷害活性を示すとは考えられない。
【0130】
ヒト組み換えタンパク質、GM2AP/MRP14および変異GM2AP/MRP14を含む上清の組み合わせの細胞傷害性は、規模が同じであり、タンパク質産生バッチの関数として、非ヒト組み換えタンパク質よりも高い安定性を示すことが見出される。しかしながら、これは、MS患者の生物学的流体中で見出されるグリア傷害活性の安定性、再現可能性および強度に対応しない。
【0131】
【表4D】

【0132】
%C:細胞傷害百分率
上清中のタンパク質のおよその濃度:GM2AP(バッチ1):300ng/ml、GM2AP(バッチ2):200ng/ml。天然MRP14/8の濃度:1.3mg/ml。
【0133】
表4Dの結果から、GM2AP単独では細胞傷害活性を有しないこと、および太字で示した特定の値については、組み合わせGM2AP/MRP14/MRP8は細胞傷害性効果を有することがわかる。この細胞傷害性は、用いる上清バッチに依存する。
【0134】
【表4E】

%C:細胞傷害百分率
上清中のタンパク質のおよその濃度:変異GM2AP:200ng/ml。天然MRP14/8の濃度:1.3mg/ml。
【0135】
表4Eから、組み合わせ変異GM2AP/MRP14/MRP8は細胞傷害活性を全く示さないことが明らかである。
【0136】
これらの研究は、再生されたMS尿のみから精製されたグリア傷害性画分中では、所望のグリア傷害活性を有するタンパク質は単独で同定されず、また、目的とするグリア傷害活性および「非ヒト」または「ヒト」組み換えの形態で産生されるタンパク質の組み合わせは、弱くかつ比較的再現不可能な(たとえ、改善が「ヒト」組み合わせについて見出されても)グリア傷害活性しか示さないことを示す。得られた結果は、グリア傷害活性(高い活性、安定性、再現可能性、用量−応答効果)を特徴付ける全ての基準に適合していない。
【0137】
結果は、タンパク質分析で同定されなかった必須成分が欠けていることを示す。
【0138】
次いで、本発明者らは、驚くべきことに、特定の複合体脂質中の脂質は、本文脈で有利な候補であることを見出した。これを実証するため、ガングリオシドGM1、ガングリオシドGM2およびスルファチドを試験した。以下の実施例に示すように、これらの脂質のなかでも、ガングリオシドGM2は、唯一の証明力となるものであったことが判明した。
【0139】
実施例7:ガングリオシドGM2との組み合わせにおける「ヒト」組み換えタンパク質の傷害性
ガングリオシドGM2(J.Portoukalian教授(Lyon、フランス)により提供された)を、最終濃度50μg/mlで、既に調製したMRP14、GM2APおよび変異GM2APタンパク質を含む「ヒト」組み換えタンパク質の組み合わせに添加した。
【0140】
組み合わせGM2AP/MRP14および変異GM2AP/MRP14を、GM2APおよび変異GM2AP組み換えタンパク質についてタンパク質範囲:0、5、10、20、50、100ngで、およびMRP14タンパク質について200ngまでのタンパク質範囲で、試験した。これらの範囲は、ガングリオシドGM2との組み合わせで、または組み合わせにすることなく、調製した。
【0141】
混合した後、組み合わせを一晩4℃でインキュベートし、次いで、それらの傷害性をMTTアッセイを用いて評価した。
【0142】
得られた結果を、表5および添付の図面に記載する。
表5A:
ガングリオシドGM2と組み合わせられかつ関連する「ヒト」タンパク質のグリア傷害活性の測定(最終濃度50μg/ml)
【0143】
【表5A】

【0144】
%C:細胞傷害性百分率
gGM2:ガングリオシドGM2
:サンプルの標準偏差ODが13と11との間にある
コメントなし:サンプルの標準偏差ODが10未満
上清中のおよその濃度:GM2APおよびMRP14:2μg/m1
【0145】
一定濃度のガングリオシドと組み合わせた組み合わせGM2AP/MRP14は、MRP14タンパク質の量と平行して増加するグリア傷害性効果を示す。さらに、GM2APタンパク質の量(20および10ng)を増加させるため、段階的に増加する典型的な用量応答効果が得られる。しかしながら、終点では、十分なM2APタンパク質がない場合(5ng)、傷害性はみられない。逆に、GM2APタンパク質が多すぎる場合(50ngおよび100ng)、60%付近で水平状態にある傷害性の飽和がみられる。事実として、グリア傷害性因子に曝露する間の培養における増殖を受けるCLTT1−1細胞のみが感受性である。このことは、グリア傷害性の水平状態が100%に到達しない理由を説明する。
表5B:
ガングリオシドGM2と組み合わせたまたは組み合わせていない、組み合わせ「ヒト」タンパク質のグリア傷害活性の測定(最終濃度50μg/ml)
【0146】
【表5B】

【0147】
%C:細胞傷害百分率
gGM2:ガングリオシドGM2
*:サンプルの標準偏差ODが13と11との間にある
コメントなし:サンプルの標準偏差ODが10未満
【0148】
ガングリオシドGM2なしでは、組み合わせ変異GM2AP/MRP14はグリア傷害性ではない。ガングリオシドなしの組み合わせと比べて、ガングリオシドGM2を有する混合物の細胞傷害性には全体的な増加が観察される。測定の変動性は、変異GM2APタンパク質を用いたときのほうが明らかに大きい。全体的に、活性は顕著であり、2つの変数(変異GM2APおよびMRP14)を用いた用量効果に従って最大濃度の水平状態(例:上述した、アッセイの間の増殖を受けた細胞のプールで到達する最大値)に到達するように思われる。
【0149】
ガングリオシドGM2の作用が、ヒト組み換えタンパク質GM2AP/MRP14(5ngのMRP14および50ngまたは100ngのGM2AP)の組み合わせの傷害性に実際に特異的であるかどうかを決定するため、他の脂質:(ガングリオシドGM1およびスルファチド)を並行して試験した。用いた濃度範囲は、最終濃度が0、10、20、30および50μg/mlである。脂質を添加すると、組み合わせを4℃で一晩インキュベートし、次いで、それらの傷害性をMTTアッセイにおいて評価する。表5Cおよび5Dに示す結果は、用量が30μg/mlおよび50μg/mlの組み合わせGM2AP/MRP14については、ガングリオシドGM2との組み合わせのみが、グリア細胞に対する傷害性(それぞれ27%および30%)を示した。他の脂質は、タンパク質組み合わせを用いて傷害性を示さない。
表5C:組み合わせ「ヒト」組み換えタンパクGM2AP/MRP14のグリア傷害活性におけるガングリオシドGM2の影響
【0150】
【表5C】

【0151】
100ng GM2APについては、これは2回のアッセイの平均である。
gGM2:ガングリオシドGM2
【0152】
表5D:組み合わせ「ヒト」組み換えタンパク質のグリア傷害活性におけるガングリオシドGM2の影響
【0153】
【表5D】

【0154】
研究の結果は、
活性が、GM2APまたは変異GM2APおよびMRP14タンパク質を含むタンパク質ヘテロ複合体と関連すること;
ガングリオシドGM2のような脂質の添加が、目的とするグリア傷害活性の産生と適合した活性、再現可能性および用量応答効果のレベルを得ることを可能にすること;
GM2APタンパク質に見いだされる変異は、インビトロでのグリア傷害性の決定論に必須ではないことを示す。
【0155】
しかしながら、これは、インビボでは、GM2APタンパク質のバイオアベイラビリティーのプロセスに必要かどうかを決定するものとなり得る(例、中枢神経系の細胞外媒体)。
【0156】
従って、これらの因子は、ガングリオシドGM2と組み合わせたヘテロ複合体MRP14/GM2APまたはMRP14/変異GM2APは、主に、または単独であっても、グリア傷害活性のベクターであることを示す。
【0157】
実施例8:グリア傷害性複合体の免疫アッセイの開発−ELISAアッセイの前のサンプルの調製
(i)試験したサンプル
試験したサンプルは:
最初に、活性の組み換え複合体を検出するための、可能ならば正常尿中で希釈された、ガングリオシドGM2と組み合わせたまたは組み合わせていない、ヒト組み換えタンパク質(GM2AP+MRP14)であり、
次に、尿中での直接検出のための正常尿およびMS尿である。
【0158】
サンプルを調製するとすぐに、検出アッセイのために4℃で24時間インキュベートした。
【0159】
「ヒト」組み換えタンパク質を粗製上清の形態で用い、293T細胞を適切なネガティブコントロールを用いて平行に一時的に形質転換した後に回収する。MRP14およびGM2APタンパク質をアッセイするのに用いられるシステムは、準定量的であり、特定される量は指示的である。結果を以下の実施例に示す。
【0160】
(ii)サンプルの処理
以下の実施例に示すように、「サンドウィッチ」ELISA様式で抗MRP14および抗GM2AP抗体を用いる検出方法により、陽性の結果を得ることが可能になる。
【0161】
しかしながら、本発明者らは、タンパク質をプロテイナーゼKの存在下で消化することからなる工程、次いでトリクロロ酢酸を用いて沈殿させる元の方法により、このプロテイナーゼを不活性化することからなる工程、次いで、pHをトリス−マレイン酸緩衝液(引き続くサンドウィッチELISAアッセイとの適合性を有するために選択された)で中和することからなる工程を含むサンプルの前処理を行うことにより、この検出方法を最適化した。
【0162】
このサンプルの処理は、その種々の工程により独自のものであるが、引き続いて以下の実施例で示される分析に適用され、これを以下に詳細に説明する。
【0163】
複合体の検出の前に、以下のプロトコールに従い、サンプル(組み換えタンパク質または尿の混合物)をプロテイナーゼKで処理する:
【0164】
サンプル100μl当たり0.3mgのプロテイナーゼKを添加する。37℃で1時間の消化後、プロテイナーゼKの活性を阻害するため、トリクロロ酢酸を用いて沈殿を行う。90%トリクロロ酢酸(48mlの蒸留水当たり90gのトリクロロ酢酸)をサンプルに添加する(サンプルの初期体積の15%)。混合物を4℃で30分インキュベートした。
【0165】
13000rpmで30分間遠心分離した後、ペレットを、サンプルの初期体積と等しい体積で、0.2mトリスマレイン酸緩衝液(pH6.2)(濃度ファクターなしのアッセイの場合)と共に、または(体積の観点から、消化されていないタンパク質の濃縮を実施するための)任意の最小体積で取り出す。
【0166】
プロテイナーゼKで処理したサンプルをWesternブロッティング技術により確認した後、観察を行うことができ、処理はプロテイナーゼKの量およびその作用時間を増加させることにより最適化することができる。
【0167】
実施例9:サンドウィッチELISAアッセイにおいてヘテロ複合体を検出するためのプロトコール
(i)抗体の産生:下記のプロトコールに従い、以下の抗体を産生した:
−ポリクローナル抗体(BioMerieux):
−ウサギポリクローナル抗体196(抗MRP14ペプチド)
−ウサギポリクローナル抗体79(抗組み換えGM2APタンパク質)
−モノクローナル抗体(BioMerieux):
−4A7B10
−5H7C10
−2B9H2
−10E11A11
−13H9C9
−19C11C10
−13D1E5
−2G12H5。
【0168】
抗GM2APモノクローナル抗体:10E11A11、13D1E5、13H9C9、19C11C10および2G12H5。
マウスを、以下のプロトコールに従って免疫化した:第0日に、75μgの複合体GM2AP−MRP14を、完全Freundアジュバントの存在下で腹腔内注射した。第23日および第37日に、同量の複合体GM2AP−MRP14を、不完全Freundアジュバントの存在下でさらに腹腔内注射した。融合の4日前に、生理食塩水中で希釈した50μgのGM2AP抗原を静脈内注射した。
【0169】
1900の上清を、間接的ELISA技術によりスクリーニングした。プレートを、100μlの抗原(複合体GM2AP−MRP14)を用いて、1μg/mlで、0.05m重炭酸緩衝液(pH9.6)中で「コーティング」した。「コーティング」されたプレートを、18−22℃の温度で一晩インキュベートした。プレートを、200μ1のPBS−l%牛乳で飽和させ、37℃+/−2℃で1時間インキュベーションに供した。100μlの上清またはPBS緩衝液−0.05%ツイーン20中の腹水流体を添加し、プレートを37℃+/−2℃で1時間インキュベートした。PBS緩衝液−l%BSA中で1/2000に希釈したアルカリフォスファターゼ(Jackson Immunoresearch ref:115−055−062)に複合体化した100μlのヤギ抗マウスIg(H+L)ポリクローナル抗体を添加し、次いで、プレートを、37℃+/−2℃で1時間インキュベートした。DEA−HCl(Biomerieux ref 60002989)中で2mg/mlの濃度(pH=9.8)の100μlのPNPP(Biomerieux ref 60002990)を添加した。プレートを37℃+/−2℃で30分インキュベーションに供した。100μlの1N NaOHを添加することにより、反応をブロックした。各工程間で、300μlのPBS−0.05%ツイーン20を用いて、3回の洗浄を行った。PNPPを添加する前に。蒸留水中で追加の洗浄を行った。
【0170】
150個の上清は、間接的ELISAにより、OD>0.9の陽性であることが見出された。特異的アッセイ後、上記5つの抗体が産生される。
【0171】
抗MRP14モノクローナル抗体:2B9H2、4A7B10および5H7C10。
マウスを、以下のプロトコールに従って免疫化した:第0日に、75μgの複合体GM2AP−MRP14を、完全Freundアジュバントの存在下で腹腔内注射した。第23日および第37日に、同量の複合体を、不完全Freundアジュバントの存在下で腹腔内注射した。融合の4日前に、生理食塩水中で希釈した50μgのMRP14抗原を静脈内注射した。
【0172】
1100個の上清を、上述のように、間接的ELISA技術により試験およびスクリーニングした。300個の上清は、OD>1の陽性であることが見出された。特異的アッセイ後、上記3つの抗体が産生された。
【0173】
ウサギポリクローナル抗体79(抗組み換えGM2APタンパク質)。
ウサギを、以下のプロトコールに従って免疫化した:第0日に、10mlの第一の血液サンプルを取り、75μgのGM2APを、完全Freundアジュバント(CFA)(75μgの免疫原+qs 0.5mlの9°/00生理学的食塩水+0.5ml CFA)の存在下で腹腔内注射した。第28日および第56日に、同量の免疫原を、0.5mlの不完全Freundアジュバント(IFA)の存在下、同様の条件下で腹腔内注射した。第63日に、30mlの第二の血液サンプルを、抗凝固剤なしで耳から採取した。第70日に、第三の血液サンプルを、同様の条件下で採取した。
【0174】
ウサギポリクローナル抗体196(抗MRP14ペプチド)。
ウサギを、以下のプロトコールに従って免疫化した:
第0日に、10mlの第一の血液サンプルを取り、80μgの免疫原を、完全Freundアジュバント(CFA)(80μgの免疫原+qs 0.5mlの9°/00生理学的食塩水+0.5ml CFA)の存在下で腹腔内注射した。第28日および第56日に、同量の免疫原を、0.5mlの不完全Freundアジュバント(IFA)の存在下、同様の条件下で腹腔内注射した。第63日に、30mlの第二の血液サンプルを、抗凝固剤なしで耳から採取した。第70日に、第三の血液サンプルを、同様の条件下で採取した。
【0175】
これらの抗体を、捕捉または検出のために用いる。これらをサンドウィッチELISAアッセイにおける検出に用いる場合、抗体をビオチニル化する。
【0176】
(ii)サンドウィッチELISAアッセイ:
サンプル(プロテイナーゼKおよびTCA沈殿物)の処理を行う場合、4℃での一晩のインキュベーションの後でかつサンドウィッチELISA検出アッセイの前に行う。
【0177】
捕捉抗体を、炭酸−重炭酸緩衝液(50mM、pH9.5)中、1μgで「コーティング」する;100μlを、96−ウェルマイクロプレートのウェルに入れる。プレートを保護フィルムで覆い、周囲温度で一晩インキュベートする。PBS(リン酸緩衝化食塩水)−0.05%ツイーン中での3回の洗浄後、非特異的部位をPBS−0.05%ツイーン、モノクローナル抗体用のヤギ血清(1/10)またはポリクローナル抗体用の100μlのカゼイン加水分解物でブロックする。PBS−0.05%ツイーンでの3回の洗浄後、処理したまたは非処理のサンプルを、ウェル当たり100μlの割合で入れ、撹拌しながら37℃で1時間30分インキュベートした。
【0178】
PBS−0.05%ツイーンでの3回の洗浄後、100μlのビオチニル化検出抗体を、1μg/mlで各ウェルに入れ、37℃で1時間30分インキュベートする。
【0179】
PBS−0.05%ツイーンでの3回の洗浄後、シグナルを増幅するため、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)に結合した100μlのストレプトアビジンを0.2μg/mlで各ウェルに入れ、37℃で1時間30分インキュベートする。
【0180】
PBS−0.05%ツイーンでの3回の洗浄後、100μlのOPD(オルトフェニレンジアミン二塩酸)溶液を、2g/lで各ウェルに入れ、周囲温度で10分インキュベートする。反応を100μlの1N HSOで停止する。光学密度を492nmで読み取る。
【0181】
同様に、抗ヘテロ複合体抗体、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14または変異GM2AP/GM2/MRP14の産物を、BALE/cマウスを腹腔内注射により免疫化するための免疫原として用いる。第一の注射は、完全Freundアジュバントを用いて行う。他の注射は、4〜8週の間隔で、不完全Freundアジュバントを用いて行う。最終追加抗原を、生理食塩水中での融合の数日前に与える。この抗原追加後、免疫化マウスの脾臓を取り出し、脾臓細胞を回収する。次いで、脾臓細胞と骨髄腫株との融合を行い、免疫化に用いられるヘテロ複合体をELISAにより認識する抗体を分泌する細胞を選択する。最後に、免疫ヘテロ複合体に特異的な抗体を産生する、すなわち、GM2AP、変異GM2APまたはMRP14はいずれも単独では認識しない、クローンを選択する。
【0182】
実施例10:ヒト組み換えヘテロ複合体の検出
以前の実施例で分子的に特徴付けられたグリア傷害活性の酵素免疫アッセイは、関与するタンパク質(GM2AP、変異GM2APおよびMRP14タンパク質)のみを用いる抗原/抗体系、およびこの分子複合体を検出し得る(単独または組み合わせの)抗体を含む。
【0183】
組み換え複合体は、最終濃度50μg/mlのガングリオシドGM2と組み合わせた組み換えタンパク質GM2AP(1000ng)およびMRP14(50ng)の上清の組み合わせに対応する。
【0184】
(i)プロテイナーゼK処理を行わない、組み換えグリア傷害性ヘテロ複合体の検出
傷害性の組み合わせが直接検出可能であったかどうかを決定するため、「ヒト」組み換えタンパク質MRP14およびGM2APをガングリオシドGM2と組み合わせ、4℃で一晩インキュベートし、抗MRP14および抗GM2AP抗体を用いて、サンドウィッチELISAアッセイにより試験する。
【0185】
組み合わせ[MRP14、GM2APおよびガングリオシドGM2]を正常尿(MTT傷害性アッセイでグリア傷害性ではない)中で希釈する。結果を表6に示す。これらの結果は、抗GM2AP捕捉抗体/抗MRP14検出抗体対が、非常に再現可能な様式で組み換え複合体を認識することを示す。結果を表6に示す。
【0186】
【表6】

【0187】
陽性アッセイ:陽性アッセイの数
アッセイ合計:アッセイの総数
【0188】
(ii)プロテイナーゼK処理後の、組み換えグリア傷害性ヘテロ複合体の検出
上記のように、グリア傷害活性はプロテイナーゼKに耐える。従って、サンプル(組み合わせGM2AP+MRP14+GM2)をプロテイナーゼKで処理することにより、非複合体タンパク質は破壊され、バックグラウンドノイズが減少する。
【0189】
前述の章と同様に、組み合わせを4℃で一晩インキュベートする。しかしながら、それらを試験する前に、実施例8(ii)に記載のプロトコールに従い、サンプルをプロテイナーゼKで処理し、TCA(トリクロロ酢酸)で沈殿させる。
【0190】
結果を表7に示す。これらの結果は、特に、抗MRP14捕捉抗体/抗GN2AP検出抗体対[4A7B10+5H7ClO]/[13H9C9+19C1lClO]、[4A7B10+5H7C10]/10E11A11、2B9H2/10E11A11および2B9H2/[13H9C9+19C11C10]が、プロテイナーゼK処理後に、尿中で希釈された上清中の組み換え複合体を、非常に再現可能な様式で検出することを示す。バックグラウンドノイズは顕著に減少する。
【0191】
【表7】

【0192】
陽性アッセイ:陽性アッセイの数
アッセイ合計:アッセイの総数
【0193】
実施例11:患者の尿中のヘテロ複合体の検出
患者の尿中の複合体の直接的な検出を、2つの代表的な尿:MS尿および正常尿で試験した。
【0194】
結果を表8に記載する。これらの結果は、抗MRP14捕捉抗体/抗GM2AP検出抗体対[4A7B10+5H7C10]/[13D1E5+2G12H5]、[4A7B10+5H7G10]/10E11A11、2B9H2/[13D1E5+2G12H5]および2B9H2/[13H9G9+19C11C10]が複合体を検出することを示す。
【0195】
【表8】

【0196】
プロテイナーゼKで処理した尿については、TCAを用いた濃縮は行わない。
【0197】
グリア傷害活性と臨床的状況との間の相関は非常に良好であることが判明しているので1、3、4、実施例に記載の方法は、多発性硬化症の生物学的マーカーのアッセイ用の診断ツールとして有用である。
【0198】
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【図面の簡単な説明】
【0199】
【図1】三元複合体GM2AP+MRP14+GM2(GM2:最終濃度50μg/ml)の用量応答曲線を示す。MRP14の量はx軸(ng)に沿って表され、死んだ細胞に対応する細胞傷害百分率は、y軸に沿って表される。この図では、GM2APの量(ng)は、それぞれ、以下の記号で表される:φ:5ng、π:10ng、Ψ:20ng、υ:50ngおよびχ:100ng。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性硬化症に関連する、単離した細胞傷害性因子であって、
ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14及び変異GM2AP/GM2/MRP14から選択され、変異GM2APは配列番号2に対応するものであることを特徴とする細胞障害性因子。
【請求項2】
多発性硬化症に関連する細胞傷害性因子を、生物学的サンプル中において検出および/または定量する方法であって
ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14及び変異GM2AP/GM2/MRP14(変異GM2APは配列番号2に対応する)から選択されるヘテロ複合体を、前記生物学的サンプルから単離することを特徴とする方法。
【請求項3】
ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を用いてヘテロ複合体を単離し、
前記ヘテロ複合体と前記抗体とからなる複合体の形成を示すことにより、前記細胞障害性因子を検出および/または同定することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも2つの抗体を用いてヘテロ複合体を単離し、
前記ヘテロ複合体と前記2つの抗体とからなる複合体の形成を示すことにより、前記細胞障害性因子を検出および/または同定することを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの抗体は捕捉抗体であり、少なくとも他方の抗体は検出抗体であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの抗体を用いてヘテロ複合体を単離し、そのうち少なくとも1つはヘテロ複合体のGM2APまたは変異GM2APに特異的に結合し、少なくとも他方はヘテロ複合体のMRP14に特異的に結合し、前記ヘテロ複合体と前記2つの抗体とからなる複合体の形成を示すことにより、前記細胞障害性因子を検出および/または同定することを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの抗体は捕捉抗体であり、少なくとも他方の抗体は検出抗体であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
試験サンプルを、以下を含む前処理に供することを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の方法。
サンプルのタンパク質を、プロテイナーゼKで消化することからなる工程;
前記プロテイナーゼKを不活性化させることからなる工程;および
pHを中和することからなる工程。
【請求項9】
プロテイナーゼKを不活性化させることからなる工程は、トリクロロ酢酸を用いた沈殿により行われ、pHを中和することからなる工程は、トリスマレイン酸緩衝液の添加により行われる請求項8記載の方法。
【請求項10】
生物学的サンプルは、血清、血漿、尿及び脳脊髄液から選択される請求項2〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
発性硬化症に関連する細胞傷害性因子を検出および/または定量するための組成物であって、
前記細胞障害性因子は、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14及び変異GM2AP/GM2/MRP14(変異GM2APは配列番号2に対応する)から選択されるものであり、
ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも1つの抗体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項12】
ヘテロ複合体に特異的に結合する少なくとも2つの抗体を含むことを特徴とする請求項11記載の組成物。
【請求項13】
発性硬化症に関連する細胞傷害性因子を検出および/または定量するための反応混合物であって、
前記細胞障害性因子は、ヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14及び変異GM2AP/GM2/MRP14(変異GM2APは配列番号2に対応する)から選択されるものであり、
少なくとも2つの抗体(そのうち少なくとも1つの抗体はヘテロ複合体のGM2APまたは変異GM2APに特異的に結合し、少なくとも他方の抗体はヘテロ複合体のMRP14に特異的に結合する)を含むことを特徴とする反応混合物。
【請求項14】
少なくとも1つの抗体は捕捉抗体であり、少なくとも他方の抗体は検出抗体であることを特徴とする請求項13記載の反応混合物。
【請求項15】
少なくとも2つの抗体に結合しているヘテロ複合体GM2AP/GM2/MRP14又は変異GM2AP/GM2/MRP14を含む複合体であって、
そのうち少なくとも1つの抗体はGM2APまたは変異GM2APに特異的であり、少なくとも他方の抗体はMRP14に特異的であることを特徴とする複合体。

【図1】
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【公表番号】特表2008−505053(P2008−505053A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546286(P2006−546286)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050748
【国際公開番号】WO2005/063810
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(504238301)ビオメリュー (74)
【出願人】(502021556)アンスティテュート ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシェルシュ メディカル (アンセルム) (2)
【Fターム(参考)】