説明

単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法

【課題】接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で流体の処理を行う装置を用いて、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法の提供を図る。
【解決手段】接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部10,20における処理用面1,2の間で流体の処理を行う装置を用いて、微粒子原料を溶媒に混合した微粒子原料液を含む流体と、微粒子析出用液を含む流体との少なくとも2種類の流体を混合して酸化物微粒子又は水酸化物微粒子を析出させる。その直後に、析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整する微粒子処理用物質を含む微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する事により、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物や、水酸化物、または水酸化酸化物などの酸化物は、広い分野において使用され、特にそれらの微粒子は、研磨剤、触媒、化粧品、電子機器、磁性物質、顔料・被覆剤、半導体など広範囲に用いられている材料である。
【0003】
酸化物、水酸化物、水酸化酸化物などは微粒子とする事によって特性を向上する事ができ、製造方法としては特許文献1のようなゾル‐ゲル反応、またはゾル‐ゲル反応後に焼成処理する方法や、特許文献2や特許文献3のように水熱反応を用いる方法が一般的である。
【0004】
しかし、上記一般的な製造方法を用いた場合には、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性が十分でない場合が多く、特に焼成処理によって作製された酸化物は一次粒子間の凝集が強く、場合によっては融着している場合があった。そのため作製された酸化物や水酸化物を各種溶媒や樹脂などに分散する場合には、ボールミルやビーズミルのような装置を用いた機械的摩砕または機械的解砕処理により分散処理される場合が多く、このような方法で作製された酸化物粒子分散液中の酸化物粒子または水酸化物粒子分散液中の水酸化物粒子は、粒子(結晶)に強い力が作用するために、半導体特性や透明性、分光特性、耐久性など、期待された特性が発現しないという問題があった。
【0005】
また、本願出願人によって特許文献4のような、対向して配位された処理用面間に流れる薄膜流体中において微粒子を析出させることによる、酸化物微粒子の製造方法が提供されたが、分散性を向上された酸化物微粒子を製造する方法について具体的には開示されていなかった。そのため、分散性を向上された酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法が懇願されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−105892号公報
【特許文献2】特表平10−510238号公報
【特許文献3】特開平5−147943号公報
【特許文献4】国際公開WO2009/008392号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、その目的は、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する少なくとも2つの処理用面間において、微粒子原料を溶媒に混合した微粒子原料液を含む流体と微粒子析出用液を含む流体とを混合して酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させ、析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液を、微粒子処理用物質を溶媒に混合した微粒子処理用物質含有液を含む流体と混合する事によって、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法であり、(I)少なくとも1種の微粒子原料を溶媒に混合した微粒子原料液と、(II)微粒子析出用液と、(III)少なくとも1種の微粒子処理用物質を溶媒に混合した微粒子処理用物質含有液とをそれぞれ調製し、(IV)被処理流動体として、少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については上記微粒子原料液を含む流体であり、上記微粒子原料液以外の流体のうち、少なくとも1種類の流体については上記微粒子析出用液を含む流体であり、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する少なくとも2つの処理用面間において形成された薄膜流体中において、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、(V)上記(IV)の工程によって析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程とを含み、上記微粒子処理用物質が、上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整する物質である事を特徴とする、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本願の請求項2に係る発明は、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とのうちいずれか一方が上記薄膜流体を形成しながら上記両処理用面間を通過し、上記いずれか一方の流体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れかが、上記の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とのうちいずれか他方を、上記開口部から上記処理用面の間に導入し、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とが、上記薄膜流体中で混合されることを特徴とする請求項1に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0011】
本願の請求項3に係る発明は、上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する少なくとも2つの処理用面間において形成された薄膜流体中において、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、上記工程によって析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程とを、連続的に行う事を特徴とする、請求項1または2に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0012】
本願の請求項4に係る発明は、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体を上記処理用面の間に導入する開口部を、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に設け、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを上記薄膜流体中で混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させたあとに、上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に上記微粒子処理用物質を上記薄膜流体中で接触・作用させることを特徴とする請求項3に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0013】
本願の請求項5に係る発明は、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体を供給する開口部を、上記少なくとも2つの処理用面間の吐出部を臨む位置に設け、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを上記薄膜流体中で混合させて、上記酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させて、この酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体を上記吐出部より吐出させた直後に、上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に上記微粒子処理用物質を接触・作用させることを特徴とする請求項3に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0014】
本願の請求項6に係る発明は、上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程を、上記酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程の後、1秒間以内に行う事を特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0015】
本願の請求項7に係る発明は、上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に接触・作用させる上記微粒子処理用物質含有液中の上記微粒子処理用物質の濃度を調整することによって、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整した事を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【0016】
本願の請求項8に係る発明は、上記微粒子処理用物質が、酸性物質または過酸化水素である事を特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造をこれまで以上に簡単かつ低エネルギー、低コストで行う事ができるため、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を安価且つ安定的に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る流体処理装置の略断面図である。
【図2】(A)は図1に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。
【図3】(A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。
【図4】図1に示す流体処理装置に備えられ、同装置の処理用面間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを接触・作用させるための装置の一例を示すもので、(A)は微粒子処理用物質含有液を含む流体の供給装置を備えた同装置、(B)は析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液が収束されて流れる流路と微粒子処理用物質含有液を含む流体の投入孔とを備えた同装置、(C)は微粒子処理用物質含有液を含む流体を同装置に導入するための第3導入部を備えた同装置の略断面図である。
【図5】本発明の実施例1において作製された(A)熱処理前のイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子のTEM写真、(B)熱処理後のイットリア安定化ジルコニア微粒子のTEM写真である。
【図6】本発明の実施例2において作製された(A)熱処理前のイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子のTEM写真、(B)熱処理後のイットリア安定化ジルコニア微粒子のTEM写真である。
【図7】本発明の比較例1において作製された(A)熱処理前のイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子のTEM写真、(B)熱処理後のイットリア安定化ジルコニア微粒子のTEM写真である。
【図8】本発明の実施例3において作製された熱処理後の酸化マグネシウム微粒子のTEM写真である。
【図9】本発明の比較例2において作製された熱処理後の酸化マグネシウム微粒子のTEM写真である。
【図10】本発明の実施例6において作製された二酸化チタン微粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細を説明する。しかし、本発明の技術的範囲は、下記実施形態及び実施例によって限定されるものではない。
【0020】
本発明における酸化物または水酸化物は、特に限定されないが、一例を挙げると、式Mの金属酸化物または非金属酸化物、M(OH)の金属水酸化物または非金属水酸化物、式M(OH)stの金属水酸化酸化物または非金属水酸化酸化物、またはこれら種々の溶媒和形態、およびこれらが主成分である組成物(式中x、y、p、q、r、s、tはそれぞれ任意の数である)などが挙げられる。上記酸化物、水酸化物または水酸化酸化物には過酸化物または超酸化物なども含まれる。
【0021】
上記酸化物または水酸化物を構成する金属または非金属としては特に限定されないが、化学周期表上の全ての元素を挙げることができる。一例を挙げると金属元素としては、Ti、Fe、W、Pt,Au、Cu、Ag、Pd、Ni、Mn、Co、Ru、V、Zn、Zrなどであり、非金属元素としてはB、Si、Ge、N、C等が挙げられる。これらの元素はそれぞれ単独で酸化物、水酸化物、または水酸化酸化物を形成しても良く、複数の元素によって形成しても良い(複合酸化物、複合水酸化物、複合水酸化酸化物)。
【0022】
本発明における、前記式Mの金属酸化物または非金属酸化物は、特に限定されないが、一例を挙げるとTiO、SnO、SnO、Al、SiO、ZnO、CoO、Co、CuO、CuO、Ni、NiO、MgO、Y、VO、VO、V、V、MnO、MnO、CdO、ZrO、PdO、PdO、MoO、MoO、Cr、CrO、In、RuOなどが挙げられる。
【0023】
本発明における、前記式M(OH)の金属水酸化物または非金属水酸化物は特に限定されないが、一例を挙げるとSn(OH)、Sn(OH)、Al(OH)、Si(OH)、Zn(OH)、Co(OH)、Co(OH)、CuOH、Cu(OH)、Ni(OH)、Ni(OH)、Mg(OH)、Y(OH)、V(OH)、V(OH)、V(OH)、Mn(OH)、Mn(OH)、Cd(OH)、Zr(OH)、Pd(OH)、Pd(OH)、Mo(OH)、Cr(OH)、Ru(OH)などが挙げられる。前記式M(OH)stの金属水酸化酸化物または非金属水酸化酸化物は、特に限定されないが、FeOOH、MnOOH、NiOOH、AlOOHなどが挙げられる。
【0024】
本発明における、単離可能とは、凝集状態の粒子を分散する事が可能であるという意味合いであり、または焼成処理後の融着を抑制できると言う意味合いである。そのため、作製された酸化物微粒子または水酸化物微粒子の溶媒や樹脂中への分散性が向上されているという意味合いである。
【0025】
本発明における微粒子原料液は、少なくとも1種類の微粒子原料が溶媒に混合された液であれば特に限定されない。本発明における微粒子原料としては、金属、非金属、またはこれらの化合物を挙げることができる。金属または非金属としては特に限定されないが、化学周期表上の全ての元素の単体または合金を挙げることができる。本発明における化合物としては、特に限定されないが、一例を挙げると、上記金属または非金属の塩、酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物などが挙げられる。
【0026】
金属塩または非金属塩としては、特に限定されないが、金属または非金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩などが挙げられる。本発明における、金属窒化物は、特に限定されないが、一例を挙げると、窒化ホウ素(BN)、窒化炭素(C)、窒化ケイ素(Si)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化クロム(Cr2N)、窒化銅(Cu3N)、窒化鉄(Fe4N)、窒化鉄(Fe3N)、窒化ランタン(LaN)、窒化リチウム(Li3N)、窒化マグネシウム(Mg32)、窒化モリブデン(Mo2N)、窒化ニオブ(NbN)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(W2N)、窒化タングステン(WN2)、窒化イットリウム(YN)、窒化ジルコニウム(ZrN)などが挙げられる。本発明における、金属炭化物は、特に限定されないが、一例を挙げると、炭化カルシウム(CaC)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(BC)、炭化タングステン(WC)、炭化タングステン(WC)、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化バナジウム(VC)などが挙げられる。
【0027】
上記の微粒子原料を溶媒に混合、好ましくは溶解または分子分散して本発明を実施する事が可能である。また、上記微粒子原料は、目的によって単数、または複数を選択して実施できる。
【0028】
上記微粒子原料を混合、溶解または分子分散させるための溶媒としては、例えば水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。前記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数以上を混合して使用しても良い。
【0029】
その他、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の析出に悪影響を及ぼさない範囲において、上記溶媒に塩基性物質または酸性物質を混合または溶解しても実施できる。塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、さらにトリエチルアミンやジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸などの有機酸が挙げられる。これらの塩基性物質または酸性物質は、上記の通りあらかじめ各種溶媒と混合しても実施できるし、これらの塩基性物質または酸性物質と上記溶媒とをそれぞれ後述するような別途の独立した流路を用いて酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる処理直前に両者を混合して使用してもよい。
【0030】
上記の溶媒についてさらに詳しく説明すると、アルコール化合物溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの直鎖アルコール、イソプロパノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の分枝状アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。ケトン化合物溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。エーテル化合物溶媒としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。芳香族化合物溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。脂肪族化合物溶媒としては、例えば、ヘキサンなどが挙げられる。ニトリル化合物溶媒としては、例えば、アセトニトリルなどが挙げられる。スルホキシド化合物溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキド、ヘキサメチレンスルホキシド、スルホランなどが挙げられる。ハロゲン化合物溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、ヨードホルムなどが挙げられる。エステル化合物溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、2−(1−メトキシ)プロピルアセテートなどが挙げられる。イオン性液体としては、例えば、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムとPF6−(ヘキサフルオロリン酸イオン)との塩などが挙げられる。アミド化合物溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどが挙げられる。カルボン酸化合物としては、例えば、2,2−ジクロロプロピオン酸、スクアリン酸などが挙げられる。スルホン酸化合物としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、クロロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが挙げられる。
【0031】
上記微粒子原料液と混合して酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させるための微粒子析出用液としては、上記溶媒と同様のものが使用できる。目的とする酸化物、水酸化物または水酸化酸化物によって混合、好ましくは溶解または分子分散させるための溶媒と析出させるための溶媒を選択して実施できる。また、本発明における微粒子析出用液には、上記溶媒を単独で使用しても良いし、複数を混合しても良いし、上記溶媒に上記酸性物質または塩基性物質を含んでも良い。
【0032】
本発明においては、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体との混合を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する方法を用いて行うことが好ましい。そのような装置としては、例えば本願出願人による、特許文献4に記載されたものと同原理である装置を使用できる。このような原理の装置を用いる事によって、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を作製する事が可能である。
【0033】
以下、図面を用いて上記装置の実施の形態について説明する。
【0034】
図1〜図3に示す流体処理装置は、特許文献4に記載の装置と同様であり、接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用部における処理用面の間で被処理物を処理するものであって、被処理流動体のうちの第1の被処理流動体である第1流体を処理用面間に導入し、前記第1流体を導入した流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部を備えた別の流路から被処理流動体のうちの第2の被処理流動体である第2流体を処理用面間に導入して処理用面間で上記第1流体と第2流体を混合・攪拌して処理を行う装置である。なお、図1においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図2(A)、図3(B)においてRは回転方向を示している。図3(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
【0035】
この装置は、被処理流動体として少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については被処理物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面を備え、これらの処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の被処理物を処理する装置である。この装置は、上述のとおり、複数の被処理流動体を処理することができるが、単一の被処理流動体を処理することもできる。
【0036】
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
【0037】
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1,2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1,2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1,2によって強制された強制薄膜流体となる。
【0038】
この装置を用いて、複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両被処理流動体を混合し、反応させるなどの流体の処理を行なう。なお、ここで「処理」とは、被処理物が反応する形態に限らず、反応を伴わずに混合・分散のみがなされる形態も含む。
【0039】
具体的に説明すると、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
【0040】
図2(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属、カーボンの他、セラミックや焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10,20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2の少なくとも一部が鏡面研磨されている。
この鏡面研磨の面粗度は、特に限定されないが、好ましくはRa0.01〜1.0μm、より好ましくはRa0.03〜0.3μmとする。
【0041】
少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1の50は、回転駆動機構の回転軸を示しており、この例では、この回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。また、この例では、第1、第2ホルダ11、21を固定しておき、この第1、第2ホルダ11、21に対して第1、第2処理用部10、20が回転するようにしてもよい。
【0042】
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
【0043】
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
【0044】
この収容部41は、第2処理用部20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。この収容部41は、第2処理用部20を回転させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。
このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
【0045】
上記の被処理流動体は、各種のポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、流体が流れる流路となる第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体と反応させる第2の被処理流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口する。流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10,20の外側に通り抜けようとする。これらの処理用面1,2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、混合、攪拌、乳化、分散、反応、晶出、晶析、析出などの種々の流体処理がなされ、両処理用面1,2から、両処理用部10,20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10,20の外側の環境を負圧にすることもできる。
【0046】
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
【0047】
前記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが、接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生するための機構である。この接面圧力と、流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
【0048】
図1に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。具体的には、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢するスプリング43と、空気や油などの付勢用流体を導入する付勢用流体導入部44とにて構成され、スプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とによって、上記の接面圧力を付与する。このスプリング43と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。この接面圧付与機構の付勢に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面1,2間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力のバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2とは、μm単位の精度で設定され、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。上記離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性と、処理用部の回転による遠心力と、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合のバネの力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
【0049】
上記の離反力について、具体的に説明すると、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側(即ち、第1処理用面1と第2処理用面2との間への被処理流動体の進入口側)に位置して当該第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。この例では、離反用調整面23は、傾斜面として実施されているが、水平面であってもよい。被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。従って、離反力を発生させるための受圧面は、第2処理用面2と離反用調整面23とになる。
【0050】
さらに、この図1の例では、第2処理用部20に近接用調整面24が形成されている。この近接用調整面24は、離反用調整面23と軸方向において反対側の面(図1において上方の面)であり、被処理流動体の圧力が作用して、第2処理用部20を第1処理用部10に接近させる方向への力を発生させる。
【0051】
なお、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する被処理流動体の圧力、即ち流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。処理用面1,2の接近・離反の方向、即ち第2処理用部20の出没方向(図1においては軸方向)と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面上に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記オープニングフォースの調整に重要である。このオープニングフォースについては、バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
【0052】
摺動面の実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
【0053】
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
【0054】
このバランスラインの調整により摺動面の実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量とし、被処理流動体による流動体膜を形成させ、生成物などの処理された被処理物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
【0055】
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1,2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1,2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
【0056】
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1,2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
【0057】
第1、第2処理用部10、20は、その少なくともいずれか一方を、冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよく、図1では、第1、第2処理用部10、20に温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた例を図示している。また、導入される被処理流動体を冷却或いは加熱して、その温度を調整するようにしてもよい。これらの温度は、処理された被処理物の析出のために用いることもでき、また、第1、第2処理用面1,2間における被処理流動体にベナール対流若しくはマランゴニ対流を発生させるために設定してもよい。
【0058】
図2に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図2(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1,2間に吸引することができる効果がある。
【0059】
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用面1の外周方向(下流方向)に向けて伸びるもので、その深さ(横断面積)は、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
【0060】
前述の第2導入部d2の開口部d20を第2処理用面2に設ける場合は、対向する上記第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
【0061】
この開口部d20は、第1処理用面1の凹部13からよりも下流側(この例では外側)に設けることが望ましい。特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。具体的には、図2(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の最も外側の位置から、径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。特に、流体中から微粒子を析出させる場合には、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出が行なわれることが望ましい。開口部d20の形状は、図2(B)や図3(B)に示すように円形状であってもよく、図示しないが、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。また、開口部を円環形状とした場合、その円環形状の開口部は連続していてもよいし、不連続であってもよい。
【0062】
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図3(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
【0063】
また、図3(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
【0064】
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
【0065】
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図1の例では、2つとしたが、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。図1の例では、第2導入部d2から処理用面1,2間に第2流体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部10,20に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面1,2間の直前或いはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
【0066】
上記装置においては、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間に形成される薄膜流体中で、少なくとも1種類の微粒子原料を混合している微粒子原料液を含む流体と、微粒子析出用液を含む流体とを混合させ、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる。
【0067】
上記酸化物微粒子または上記水酸化微粒子の析出反応は、図1に示す装置の、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間で強制的に均一混合しながら起こる。
【0068】
まず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として微粒子析出用液を含む流体を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体膜(薄膜流体)を作る。
【0069】
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として上記微粒子原料液を含む流体を、上記処理用面1,2間に作られた第1流体膜(薄膜流体)中に直接導入する。
【0070】
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を含む溶液を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
【0071】
上記のように、被処理流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが混合され、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる事が出来、処理用面1,2間よりその酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体として酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液を吐出させることができる。
【0072】
本発明においては、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質と接触・作用させる事によって、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を作製することが可能である。また、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを接触・作用させることによって、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整することが可能である。さらに、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質と接触・作用させる事によって作製された単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子は、微粒子処理用物質と接触・作用させずに作製された酸化物微粒子または水酸化物微粒子と比較して、その粒子径が小さくなる傾向がある。
【0073】
上記微粒子処理用物質としては、特に限定されないが、酸性物質または過酸化水素が挙げられる。酸性物質としては特に限定されないが、一例としては王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸、フッ化水素酸、過塩素酸、ヘキサフルオロ珪酸などの無機酸またはそれらの塩、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸などの有機酸またはそれらの塩が挙げられる。これらの物質は単独で使用しても良いし、複数を使用しても良い。
【0074】
上記微粒子処理用物質は、溶媒に混合して使用する事が好ましく、より好ましくは溶媒に溶解または分子分散させた微粒子処理用物質含有液として使用する事が好ましい。
上記微粒子処理用物質を混合、溶解または分子分散させるための溶媒としては、上記微粒子原料を混合、溶解または分子分散させるための溶媒と同様のものが使用できる。
【0075】
本発明における実施の形態の一例としては、上記接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間において、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させた後、処理用面間より酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液として吐出させる前に、第3の流体として上記微粒子処理用物質含有液を含む流体を処理用面1,2間に導入することで、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液と微粒子処理用物質含有液を含む流体とを処理用面1,2間において混合し、酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを処理用面1,2間において接触・作用させることが可能である。
本発明における他の実施の形態としては、上記に説明した装置の処理用面1,2の間に形成される薄膜流体中で、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させ、処理用面1,2間より酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液として吐出された直後、言い換えると処理用部10,20における流体の吐出部51b付近に微粒子処理用物質含有液を含む流体の供給装置51を設け、この供給装置51から微粒子処理用物質含有液を含む流体を噴霧または滴下して、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液と微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合するような方法が挙げられる(図4(A)参照)。より具体的に説明すると、上記供給装置51は、微粒子処理用物質含有液を含む流体の供給源にポンプPを介して接続された環状の流路を備える。この環状の流路は、上記処理用面1,2の吐出部51bを臨む位置(この例では上方)に配位され、環状の流路の下部には開口部51aが形成されている。この開口部51aは、多数の細穴であったり、連続したスリット状の開口であったり、上記吐出部51bから吐出する上記分散液に対して、満遍なく微粒子処理用物質含有液を含む流体を供給・混合するものとして実施することが望ましい。なお、上記吐出部51bは、上記処理用面1,2により強制された流路の最下流(この例では上記処理用面1,2の最外周端)であり、この吐出部51bから上記薄膜流体は処理用面1,2による強制から開放され、より広い流路空間へと吐出するものであり、広がりながら吐出する分散液に対して、微粒子処理用物質含有液を含む流体を供給することにより、上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に上記微粒子処理用物質を有効に接触・作用させることができる。
または、図4(B)に示すように、吐出された酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液が収束されて流される流路52に、微粒子処理用物質含有液を含む流体の投入孔53を配位し、この投入孔53から微粒子処理用物質含有液を含む流体を投入するような方法でも良い。上記のような方法においては、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程とを連続的に行う事ができる利点がある。
【0076】
さらに、前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもでき、この場合にあっては、例えば各導入部から、第1流体として微粒子析出用液を含む流体、第2流体として微粒子原料液を含む流体、第3流体として微粒子処理用物質含有液を含む流体をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。この場合、微粒子処理用物質含有液を導入する第3導入部d3は、第1導入部d1及び第2導入部d2の下流側に設け、より詳しくは、第3導入部d3の開口部d30を第2導入部の開口部d20の下流側に設けることによって、析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に、微粒子処理用物質を効果的に接触・作用させることができる(図4(C)参照)。
そうすると、各流体の濃度や圧力を個々に管理することができ、析出反応及び単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造をより精密に制御することができる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
【0077】
さらに他の実施の形態においては、微粒子処理用物質含有液をビーカーやタンクのような容器に投入しておき、処理用面1,2より吐出された酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液を上記微粒子処理用物質含有液が投入された容器で回収する方法や、処理用面1,2より吐出された酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液を空の容器で回収し、その酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液を回収した容器に上記微粒子処理用物質含有液を投入する方法などが挙げられる。上記、容器内において酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散液と微粒子処理用物質含有液とを混合する場合の攪拌装置並びに攪拌方法については特に限定されない。
【0078】
本発明においては、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化微粒子に均一且つ均質に微粒子処理用物質を接触・作用させることが好ましいため、上記処理用面1,2間において酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程とを3秒間以内に行うことが好ましく、1秒間以内に行う事がより好ましい。より詳しくは、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として微粒子原料液を含む流体と微粒子析出用液を含む流体のうちいずれか一方を上記処理用面1,2の間に導入して形成された薄膜流体中に、別流路である第2導入部d2より第2流体として微粒子原料液を含む流体と微粒子析出用液を含む流体のうち何れか他方を導入してから、上記処理用面1,2の間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合するまでの時間を3秒間以内とすることが好ましく、1秒間以内とする事がより好ましい。
また、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の析出に悪影響を及ぼさない範囲においては、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる前の微粒子原料液を含む流体及び/又は微粒子析出用液を含む流体に微粒子処理用物質を含む流体を混合することによって、上記処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを接触・作用させてもよい。例えば、前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設け、各導入部から、第1流体として微粒子原料液を含む流体と微粒子析出用液を含む流体とのうちいずれか一方の流体、第2流体として微粒子原料液を含む流体と微粒子析出用液を含む流体のうち何れか他方の流体、第3流体として微粒子処理用物質含有液を含む流体をそれぞれ別々に処理装置に導入して、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる前の微粒子原料液を含む流体及び/又は微粒子析出用液を含む流体に微粒子処理用物質含有液を含む流体を混合してもよく、この場合、微粒子処理用物質含有液を導入する第3導入部d3の開口部d30の位置は問わないものとする。
また、上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを接触・作用させることによって、得られる物質の状態については特に限定されない。例えば水酸化物微粒子に微粒子処理用物質を接触・作用させることによって単離可能な酸化物微粒子を得ることもできるし、単離可能な水酸化酸化物微粒子を得る事も可能である。
【0079】
また、第1、第2流体等の被処理流動体の温度を制御したり、第1流体と第2流体等との温度差(即ち、供給する各被処理流動体の温度差)を制御することもできる。供給する各被処理流動体の温度や温度差を制御するために、各被処理流動体の温度(処理装置、より詳しくは、処理用面1,2間に導入される直前の温度)を測定し、処理用面1,2間に導入される各被処理流動体の加熱又は冷却を行う機構を付加して実施することも可能である。
【実施例】
【0080】
以下本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0081】
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、前述した、図1に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、上述した、図1に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
【0082】
実施例として、図1に示すように、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の間にできる薄膜流体中で、均一に拡散・攪拌・混合する反応装置を用いて、微粒子原料液(第2流体)と微粒子析出用液(第1流体)とを混合し、薄膜流体中で析出反応を行う。その後、微粒子処理用物質含有液(第3流体)と混合することによって単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を作製する。
【0083】
(実施例1〜2、比較例1)
中央から第1流体の微粒子析出用液として、1質量%のアンモニア水溶液を、供給圧力/背圧力=0.50MPa/0.04MPa、液温80℃、回転数1700rpmで送液し、第2流体として、12.0質量%のオキシ硝酸ジルコニウム2水和物と1.29質量%の硝酸イットリウム9水和物を水に溶解した微粒子原料液を5mL/min、液温25℃で処理用面1,2間に導入した。第1流体と第2流体は薄膜流体中で混合され、イットリア安定化ジルコニア水和物微粒子を処理用面1,2間において析出させ、イットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液として処理用面1,2より吐出させ、吐出させたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液と第3流体とを混合した。微粒子処理用物質含有液としての第3流体には、1質量%硝酸水溶液、または、1質量%過酸化水素溶液を用いた。吐出させたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液と第3流体との混合方法は、処理用面1,2外側、吐出部51b付近に第3流体を50mL/min、液温80℃で滴下し、吐出部51b付近及び吐出液が収束する流路52において混合した。処理用面1,2よりイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液を吐出させてから第3流体と混合するまでの時間は、0.5秒程度であった。第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2よりイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の微粒子については0.3秒程度であるので、第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より吐出させたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液と第3流体とを混合するまでの時間は1秒以内であった。また、第1流体〜第3流体における液温は、それぞれの流体が処理装置に導入される直前の温度である。
吐出されたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液と第3流体との混合液より不純物を除去するために、イットリア安定化ジルコニア水和物微粒子を緩く凝集させ、遠心分離機(×8000G)にてイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後、純水を加えてイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子を再分散し、再度遠心分離機を用いて沈降させた。上記洗浄操作を3回行った後、最終的に得られたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子のペーストを60℃、−0.1MPaGにて真空乾燥し、イットリア安定化ジルコニア水和物微粒子乾燥粉体を得た。さらに、得られたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子乾燥粉体について、400℃で4時間の熱処理を実施した。第3流体を変更して、実験を行った結果を表1に示す。実施例1〜2の比較のために、実施例1〜2と同様の方法で処理用面1,2より吐出させたイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子分散液に第3流体を混合せずに作製したイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子及びイットリア安定化ジルコニア微粒子を比較例1とした。また、実施例1〜2及び比較例1において作製された熱処理前のイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子および熱処理後のイットリア安定化ジルコニア微粒子のTEM写真を図5〜図7に示す。表1における分散性は、TEM写真においてイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子またはイットリア安定化ジルコニア微粒子の凝集がほぐれ、分散した状態を観察できた場合には「良好」とし、そうでない場合には「不十分」として評価した。また、表1における分散粒子径は、TEM観察により確認した。図5〜図7のTEM写真より、第3流体を用いなかった比較例1に対して、第3流体に硝酸水溶液または過酸化水素溶液を用いた実施例1または実施例2は一次粒子まで分散している様子が確認できた。表1及び図5〜7により第3流体に過酸化水素溶液または酸性物質としての硝酸水溶液を用いる事によって、熱処理前のイットリア安定化ジルコニア水和物微粒子及び熱処理後に得られたイットリア安定化ジルコニア微粒子の分散性が向上していることがわかった。
【0084】
【表1】

【0085】
(実施例3〜4、比較例2)
中央から第1流体の微粒子析出用液として、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を250ml/min.、供給圧力/背圧力=0.50MPa/0.04MPa、液温80℃、回転数500rpmで送液し、第2流体の微粒子原料液として、塩化マグネシウム6水和物を水に溶解した10.0質量%塩化マグネシウム水溶液を10mL/min.、液温25℃で処理用面1,2間に導入した。第1流体と第2流体は薄膜流体中で混合され、水酸化マグネシウム微粒子を処理用面1,2間において析出させ、水酸化マグネシウム微粒子分散液として処理用面1,2より吐出させた。吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液と第3流体とを混合し、その後、65℃で2時間攪拌処理を行った。撹拌処理にはクレアミックス2.2S(エム・テクニック社製)を用い、回転数20000rpmにて撹拌処理を行った。微粒子処理用物質含有液としての第3流体には、0.5〜1.0質量%の過酸化水素水溶液を用いた。吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液と第3流体との混合方法は、処理用面1,2外側、吐出部51b付近に第3流体を50mL/min、液温80℃で滴下し、吐出部51b付近及び吐出液が収束する流路52において混合した。処理用面1,2より水酸化マグネシウム微粒子分散液を吐出させてから第3流体と混合するまでの時間は、0.5秒程度であった。第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より水酸化マグネシウム微粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の微粒子については0.3秒程度であるので、第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液と第3流体とを混合するまでの時間は1秒以内であった。また、第1流体〜第3流体における液温は、それぞれの流体が処理装置に導入される直前の温度である。
撹拌処理後の水酸化マグネシウム微粒子分散液と第3流体との混合液中より不純物を除去するために、水酸化マグネシウム微粒子を緩く凝集させ、洗浄操作として遠心分離機(×8000G)にて水酸化マグネシウム微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後、純水を加えて水酸化マグネシウム微粒子を再分散し、再度遠心分離機を用いて沈降させた。上記洗浄操作を3回行ったあと、最終的に得られた水酸化マグネシウム微粒子のペーストを60℃、−0.1MPaGにて真空乾燥し、水酸化マグネシウム微粒子乾燥粉体を得た。さらに、得られた水酸化マグネシウム微粒子乾燥粉体について、500℃で4時間熱処理を実施した。熱処理前と熱処理後の微粒子乾燥粉体について行ったX線回折(XRD)測定の結果、水酸化マグネシウム微粒子が熱処理後に酸化マグネシウムに変化していることを確認した。
第3流体中の過酸化水素濃度を変更して、実験を行った結果(実施例3〜4)を表2に示す。また、実施例3〜4の比較のために、実施例3〜4と同様の方法で処理用面1,2より吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液に第3流体を混合せずに作製した水酸化マグネシウム微粒子及び酸化マグネシウム微粒子を比較例2とした。実施例3及び比較例2において得られた熱処理後の酸化マグネシウム微粒子のTEM写真を図8〜図9に示す。表2における分散性は、TEM写真において水酸化マグネシウム微粒子または酸化マグネシウム微粒子の凝集がほぐれ、分散した状態を観察できた場合には「良好」とし、そうでない場合には「不十分」として評価した。表2及び図8〜図9より、第3流体に過酸化水素溶液を用いる事によって、熱処理前の水酸化マグネシウム微粒子及び熱処理後の酸化マグネシウム微粒子の分散性が向上していることがわかった。また、吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液と第3流体である過酸化水素溶液とを混合し、水酸化マグネシウム微粒子と過酸化水素とを接触・作用させることによって、熱処理前の水酸化マグネシウム微粒子及び熱処理後の酸化マグネシウム微粒子の分散性を調整することができた。過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度については、比較的希薄な過酸化水素水溶液を吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液との混合に用いた場合においても、熱処理前の水酸化マグネシウム微粒子及び熱処理後の酸化マグネシウム微粒子の分散性を調整することができた。以上の結果より、処理用面1,2より吐出させた水酸化マグネシウム微粒子分散液と、過酸化水素水溶液とを混合し、水酸化マグネシウム微粒子と過酸化水素とを接触・作用させることによって、単離可能な水酸化マグネシウム微粒子及び酸化マグネシウムを作製できることが分かった。
【0086】
【表2】

【0087】
(実施例5〜6、比較例3〜5)
中央から第1流体の微粒子析出用液として、1質量%のアンモニア水溶液、イソプロピルアルコール(IPA)またはアセトンを、供給圧力/背圧力=0.50MPa/0.04MPa、回転数1700rpmで送液し、第2流体の微粒子原料液として、10質量%の硫酸チタニル水溶液もしくは10質量%の四塩化チタン水溶液を5mL/min、液温25℃で処理用面1,2間に導入した。第1流体と第2流体は薄膜流体中で混合され、二酸化チタン微粒子を処理用面1,2間において析出させ、二酸化チタン微粒子分散液として処理用面1,2より吐出させた。吐出させた二酸化チタン微粒子分散液と第3流体とを混合し、その後65〜80℃で4時間の静置または攪拌処理を行った。撹拌処理は、ウォーターバス中においてマグネティックスターラーを用いて回転数600rpmにて行った。微粒子処理用物質含有液としての第3流体には、1質量%の硝酸水溶液を用いた。吐出させた二酸化チタン微粒子分散液と第3流体との混合方法は、実施例5においては、処理用面1,2外側、吐出部51b付近に第3流体を50mL/min、液温80℃で滴下し、吐出部51b付近及び吐出液が収束する流路52において混合し、実施例6においては、予めポリ容器に準備した第3流体に処理用面1,2より吐出させた二酸化チタン微粒子分散液を、吐出後0.6秒で連続的に混合させた。処理用面1,2より二酸化チタン微粒子分散液を吐出させてから第3流体と混合するまでの時間は、0.6秒程度であった。第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より二酸化チタン微粒子分散液を吐出させるまでの時間は大半の微粒子については0.3秒程度であるので、第2流体を処理用面1,2間に導入してから処理用面1,2より吐出させた二酸化チタン微粒子分散液と第3流体とを混合するまでの時間は1秒以内であった。また、第1流体〜第3流体における液温は、それぞれの流体が処理装置に導入される直前の温度であり、第1流体の液温は表3に示した。
処理後の二酸化チタン微粒子分散液と第3流体との混合液中より不純物を除去するために、二酸化チタン微粒子を緩く凝集させ、洗浄操作として遠心分離機(×8000G)にて二酸化チタン微粒子を沈降させ、上澄み液を除去した後、純水を加えて二酸化チタン微粒子を再分散し、再度遠心分離機を用いて沈降させた。上記洗浄操作を3回行ったあと、最終的に得られた二酸化チタン微粒子のペーストを60℃、−0.1MPaGにて真空乾燥した。
条件を変更して実験を行った結果を表3に示す。また、実施例5〜6の比較のために、実施例5〜6と同様の方法で処理用面1,2より吐出させた二酸化チタン微粒子分散液に第3流体を混合せずに作製した二酸化チタン微粒子を比較例3〜5とした。表3における分散性は、TEM写真において二酸化チタン微粒子の凝集がほぐれ、分散した状態を観察できた場合には「良好」とし、そうでない場合には「不十分」として評価した。また、表3における一次粒子径の項にはTEM観察より確認された一次粒子径を記載した。図10に実施例6で得られた二酸化チタン微粒子のTEM写真を示す。表3及び図10より、第3流体に酸性物質としての硝酸水溶液を用いる事によって、二酸化チタン微粒子の分散性が向上していることがわかった。また、第1流体及び第2流体の種類を問わず、第3流体に酸性物質としての硝酸水溶液を用いる事によって、二酸化チタン微粒子の分散性が向上していることがわかった。さらに、吐出させた二酸化チタン微粒子分散液と第3流体との混合液に対して行われた静置または攪拌処理の処理方法を問わず、第3流体に酸性物質としての硝酸水溶液を用いる事によって、二酸化チタン微粒子の分散性が向上していることがわかった。実施例及び比較例全ての結果を通して、処理用面1,2間において析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を処理用面1,2より酸化物微粒子分散液または水酸化物微粒子分散液として吐出させた直後に、酸化物微粒子分散液または水酸化物微粒子分散液と微粒子処理用物質含有液とを混合し、酸化物微粒子または水酸化物微粒子と微粒子処理用物質とを接触・作用させることによって、熱処理前後の酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整することができ、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子を作製できることが分かった。
【0088】
【表3】

【符号の説明】
【0089】
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
51a 開口部
51b 吐出部
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
d30 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法であり、
(I)少なくとも1種の微粒子原料を溶媒に混合した微粒子原料液と、
(II)微粒子析出用液と、
(III)少なくとも1種の微粒子処理用物質を溶媒に混合した微粒子処理用物質含有液と
をそれぞれ調製し、
(IV)被処理流動体として、少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については上記微粒子原料液を含む流体であり、
上記微粒子原料液以外の流体のうち、少なくとも1種類の流体については上記微粒子析出用液を含む流体であり、
対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する少なくとも2つの処理用面間において形成された薄膜流体中において、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、
(V)上記(IV)の工程によって析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程と
を含み、
上記微粒子処理用物質が、上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整する物質である事を特徴とする、単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項2】
上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とのうちいずれか一方が上記薄膜流体を形成しながら上記両処理用面間を通過し、
上記いずれか一方の流体が流される流路とは独立した別途の導入路を備えており、
上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れかが、上記の導入路に通じる開口部を少なくとも一つ備え、
上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とのうちいずれか他方を、上記開口部から上記処理用面の間に導入し、
上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とが、上記薄膜流体中で混合されることを特徴とする請求項1に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項3】
上記の、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する少なくとも2つの処理用面間において形成された薄膜流体中において、上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程と、
上記工程によって析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程とを、
連続的に行う事を特徴とする、請求項1または2に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項4】
上記微粒子処理用物質含有液を含む流体を上記処理用面の間に導入する開口部を、上記少なくとも2つの処理用面の少なくとも何れか一方に設け、
上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを上記薄膜流体中で混合させて、酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させたあとに、上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に上記微粒子処理用物質を上記薄膜流体中で接触・作用させることを特徴とする請求項3に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項5】
上記微粒子処理用物質含有液を含む流体を供給する開口部を、上記少なくとも2つの処理用面間の吐出部を臨む位置に設け、
上記微粒子原料液を含む流体と上記微粒子析出用液を含む流体とを上記薄膜流体中で混合させて、上記酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させて、この酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体を上記吐出部より吐出させた直後に、上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に上記微粒子処理用物質を接触・作用させることを特徴とする請求項3に記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項6】
上記析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子を含む流体と、上記微粒子処理用物質含有液を含む流体とを混合する工程を、
上記酸化物微粒子または水酸化物微粒子を析出させる工程の後、
1秒間以内に行う事を特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項7】
上記の析出させた酸化物微粒子または水酸化物微粒子に接触・作用させる上記微粒子処理用物質含有液中の上記微粒子処理用物質の濃度を調整することによって、酸化物微粒子または水酸化物微粒子の分散性を調整した事を特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。
【請求項8】
上記微粒子処理用物質が、酸性物質または過酸化水素である事を特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の単離可能な酸化物微粒子または水酸化物微粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−82621(P2013−82621A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−2517(P2013−2517)
【出願日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【分割の表示】特願2012−511088(P2012−511088)の分割
【原出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(595111804)エム・テクニック株式会社 (38)
【Fターム(参考)】