説明

印刷システム、およびプログラム

【課題】印刷装置のインクタンクに不適正なインクが補充されることを回避する。
【解決手段】インクタンクから噴射ヘッドに供給されたインク量が所定の限界値に達する
と、インクの噴射を禁止する。そして初期化データの入力を受付可能として、入力された
初期化データが適正であれば、インク量の計数値を初期化して、インクの噴射を再開する
。また、一度入力されて適正と判定した初期化データは、それ以降は不適正な初期化デー
タと判定する。こうすれば、不適正な性状のインクを補充しても適正な初期化データを入
力することができないので、不適正なインクが補充されることを回避することが可能とな
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射ヘッドからインクを噴射して画像を印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンターのように噴射ヘッドからインクを噴射することによって画像
を印刷する印刷装置は、広く使用されている。噴射されるインクはインクカートリッジと
呼ばれる専用容器に収容されており、インクの自重によって、あるいは送液ポンプによっ
て噴射ヘッドに供給されている。
【0003】
噴射ヘッドの内部は、インクを噴射するための微細な噴射ノズルや、噴射ノズルにイン
クを導くための細いインク通路が形成された複雑な構造となっている。このため、適正で
ない性状のインクが供給されると噴射ノズルやインク通路などを目詰まりさせ、最終的に
は噴射ヘッドを取り替えなければならない事態が起こり得る。そこで、適正でないインク
が供給されることを回避するために、インクカートリッジにICチップなどのメモリを埋
め込んで認証データを記憶しておくことが行われている。こうすれば、印刷装置にインク
カートリッジが装着されると、メモリに記憶された認証データを読み出すことによってそ
のインクカートリッジが純正品であるか否かを判断し、純正品であれば、内部のインクは
適正な性状のインクであると判断することができる(特許文献1)。
【0004】
また、インクカートリッジでは収容可能なインク量に限界があるので、大量に印刷する
場合には、何度も印刷を中断してインクカートリッジを交換しなければならなくなる。そ
こで、印刷装置に設けたインクタンクからインクを供給するようにしておき、印刷中にイ
ンクが少なくなったら、別途用意しておいたインクボトルからインクタンクにインクを補
充することで、連続して印刷可能にする技術も存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−074464号公報
【特許文献2】特開2000−211155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、インクボトルなどからインクを補充することによって連続印刷を可能とする技
術には、次のような問題が存在する。先ず、インクタンクに補充されたインクが適正な性
状のインクであるか否かを判断することができない。このため不適正なインクが供給され
て噴射ヘッドの内部で目詰まりが発生し、噴射ヘッドを交換しなければならなくなる虞が
ある。また、印刷装置メーカーが使用を推奨する適正なインク(推奨インク)であっても
、インクボトルを一旦開封すると、時間の経過とともにインクの性状が劣化する。従って
、開封後から長い時間が経過して劣化の進んだインクが補充されると、補充されたインク
が推奨インクであった場合にも、噴射ヘッドの内部を目詰まりさせてしまう虞がある。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、インクボトルなどからインクを補充することで連続印刷が可能でありな
がら、不適正なインクや劣化の進んだインクが補充されて噴射ヘッドの内部で目詰まりが
生じることを回避可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明のプログラムは次の構成を採
用した。すなわち、
外部からインクを補充可能なインクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを
噴射する噴射ヘッドとを備え、該インクタンクから該噴射ヘッドに供給されたインク量の
計数値が所定の限界値に達すると該噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を有す
る印刷装置の動作を、コンピューターを用いて制御するためのプログラムであって、
前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを少なくとも判別可能な情報を、前
記印刷装置から取得する第1の機能と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達した場合には、該インク量の計数値を初期化す
るためのデータである初期化データの入力を受け付ける第2の機能と、
前記入力された初期化データの適否を判定して、該初期化データが適正であると判定さ
れると、前記印刷装置内の前記インク量の計数値を初期化すると共に、適正と判定された
該初期化データを不適正な初期化データとして記憶する第3の機能と
を、コンピューターを用いて実現することを要旨とする。
【0009】
このような本発明のプログラムにおいては、インク量の計数値が所定の限界値に達する
とインクの噴射を停止する機能を有する印刷装置の動作を、次のようにして制御する機能
を有する。先ず、インク量の計数値が限界値に達したか否かを判別可能な情報を印刷装置
から取得する。ここで、印刷装置の内部でインク量を計数するに際しては、噴射ヘッドに
供給されるインクの流量を直接計測することによってインク量を計数してもよいが、噴射
ヘッドがインクを噴射する動作から、噴射ヘッドに供給されるインク量を間接的に計数し
ても良い。また、インク量を計数する態様は、噴射ヘッドにインクが供給されるにつれて
、計数値が増加する態様で計数しても良いし、逆に、計数値が減少する態様で計数しても
良い。また、本発明のプログラムは、印刷装置内でのインク量の計数値が所定の限界値に
達したか否かを判別可能な情報を取得できれば十分であり、従って、インク量の計数値を
取得してもよいし、あるいは、インク量の計数値と限界値の大小関係を示す情報や、イン
ク量の計数値が限界値に達したか否かのみを表す情報を取得してもよい。そして、インク
量の計数値が所定の限界値に達したと判定すると、初期化データを入力可能な状態とする
。ここで初期化データとは、印刷装置内のインク量の計数値を初期化するためのデータで
ある。更に、初期化データが入力されると、そのデータが適正か否かを判定して、適正で
あると判定した場合には、印刷装置内のインク量の計数値を初期化する。この結果、印刷
装置は、再びインクを噴射可能な状態となる。また、適正と判定された初期化データは、
それ以降は不適正な初期化データと判定するために記憶されるようになっている。
【0010】
こうすれば、インクタンク内のインクが減少してインクの噴射が停止した後は、たとえ
インクタンクにインクを補充しても、適正な初期化データを入力しない限り、印刷装置で
インクの噴射が再開されることはない。従って、たとえば、純正品のインクボトルにだけ
適正な初期化データが印刷されたラベルを貼付するなどのように、適正な性状のインクを
入手した場合にだけ適正な初期化データが分かるようにしておけば、不適正な性状のイン
クを補充してもインクの噴射を再開させることができない。このため、不適正な性状のイ
ンクによって噴射ヘッドの内部が目詰まりしてしまうことを回避することができる。また
、一度使用された初期化データは、不適正な初期化データとして記憶される結果、その初
期化データは使えなくなる。このため、インクタンク内のインクが減少して、再びインク
の噴射が停止した場合にも、適正な性状のインクを新たに入手することになる。その結果
、不適正な性状のインクによって噴射ヘッドの内部が目詰まりしてしまうことを回避する
ことが可能となる。加えて、初期化データは1度しか使用できないので、インクを補充す
る際にはできるだけインクを残さずに補充するようになる。このため、入手時には適正な
性状のインクであったにも拘わらず、開封後、補充されずに時間が経過したために劣化の
進んだインクが補充されて、噴射ヘッドが目詰まりしてしまうことも回避することが可能
となる。
【0011】
尚、インク量の計数値が所定値に達した場合にだけ、インクタンクにインクを補充でき
るようにしておけば、適正な性状のインクを入手したにも拘わらず、開封から時間が経過
したために劣化が進んだインクを補充したために、噴射ヘッドが目詰まりしてしまうこと
を確実に回避することが可能となる。すなわち、たとえば、適正なインクを入手して半分
だけインクタンクに補充し、残りの半分は補充せずに残しておいたとする。この場合、初
期化データが入力されたことによって初期化されたインク量の計数値が、所定の限界値に
達するまでは、補充せずに残しておいたインクを補充することができない。そして、イン
ク量の計数値が限界値に達した後は、残しておいたインクの初期化データは使用できなく
なっているので、新たに適正な性状のインクを入手することになり、結局、補充せずに残
したインクは使われなくなる。このため、インクタンクに補充されずに劣化が進んだイン
クによって、噴射ヘッドを目詰まりさせることを回避することができる。また、補充せず
に残したインクは使えなくなってしまうので、入手したインクを全て補充するようになる
。その結果、開封後、補充されずに劣化が進んだインクが生じること自体を、回避するこ
とが可能となる。
【0012】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、インク量の計数値が所定の限界値に達
すると、初期化データの入力を受け付け可能とする機能を、次のようにして実現するよう
にしても良い。先ず、インク量の計数値が限界値に達すると、所定の確認画像(インクタ
ンクへのインクの補充を行うか否かを印刷装置の操作者に確認するための画像)を表示す
る。その後、インクの補充を行う旨が印刷装置の操作者によって指定されたことを検出し
た場合には、操作者が初期化データを入力するための所定の入力画像を表示するようにし
てもよい。
【0013】
こうすれば、印刷装置の操作者がインクの補充を望まない場合には、初期化データを入
力するための入力画像が表示されない。このため、操作者が操作を誤る虞を抑制すること
が可能となる。
【0014】
また、上述した本発明のプログラムにおいては、次のようにしても良い。先ず、印刷装
置に、複数のインクタンクを搭載し、それぞれのインクタンクに対して噴射ヘッドを設け
ておく。そして、インク量を計数するに際しては、インクタンク毎にインク量を計数し、
何れかのインクタンクでインク量の計数値が限界値に達すると、そのインクタンクについ
ての確認画像(インクタンクへのインクの補充を行うか否かを印刷装置の操作者に確認す
るための画像)を表示する。その結果、印刷装置の操作者によって、インクの補充を行う
旨が指定されたインクタンクについて、初期化データを入力するための入力画像を表示す
るようにしてもよい。
【0015】
こうすれば、複数種類のインクを用いて画像を印刷する印刷装置であっても、操作者が
補充しようとするインクについてだけ、初期化データを入力するための入力画像が表示さ
れる。このため、複数種類のインクが搭載されている印刷装置であっても、操作者が操作
を誤る虞を抑制することが可能となる。
【0016】
また、上述したように、印刷装置に複数のインクタンクが搭載され、それぞれのインク
タンクに対して噴射ヘッドが設けられた本発明のプログラムにおいては、それら複数のイ
ンクタンクには各々異なる色のインクが収容され、そして、インクの色情報を含む初期化
データを入力するようにしても良い。
【0017】
こうすれば、インクタンクにインクを補充する際に、間違えた色のインクを補充した場
合には、初期化データが不適正と判定される。このため、間違えた色のインクを補充した
まま、印刷を開始してしまう事態を回避することが可能となる。
【0018】
また、上述した本発明は、上記のプログラムによって動作が制御される印刷装置や、該
プログラムが実行されるコンピューターなどによって構成される印刷システムとしての態
様で把握することも可能である。あるいは、上記のプログラムが印刷装置に組み込まれた
印刷システムとして把握することも可能である。このような態様で把握された本発明の印
刷システムは、
外部からインクタンクに補充されたインクを、噴射ヘッドを用いて噴射する印刷部と、
該印刷部の動作を制御する制御部とを備える印刷システムであって、
前記制御部は、
前記印刷部で前記インクタンクから前記噴射ヘッドに供給されたインク量を計数する
インク量計数手段と、
前記インク量計数手段によって計数された前記インクタンクの累積のインク残量もし
くはインク消費量をインク量の計数値として記憶する手段と、
前記インク量の計数値が所定の限界値に達すると、前記噴射ヘッドからのインクの噴
射を停止する噴射停止手段と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達すると、該インク量の計数値を初期化するた
めのデータである初期化データの入力を受け付ける初期化データ受付手段と、
前記入力された初期化データの適否を判定して、該初期化データが適正であると判定
されると、前記インク量の計数値を初期化すると共に、適正と判定された該初期化データ
を不適正な初期化データとして記憶する初期化データ判定手段と
を備えることを要旨とする。
【0019】
このような本発明の印刷システムにおいても、インクタンクから噴射ヘッドに供給され
たインク量を計数して、その計数値が所定の限界値に達すると、噴射ヘッドからのインク
の噴射が停止されて、初期化データが入力可能となる。そして、入力された初期化データ
が適正と判定されると、限界値に達していたインク量の計数値が初期化されるので、再び
噴射ヘッドからインクを噴射することが可能となる。また、適正と判定された初期化デー
タは、それ以降は不適正な初期化データと判定されるようになる。尚、印刷装置に、その
印刷装置を制御するためのコンピューターを接続して画像を印刷する場合には、印刷装置
に接続されたコンピューターと、印刷装置に搭載されている制御部の中でインク量を計数
して計数値が所定の限界値に達すると噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を司
る部分とが、本発明の制御部に対応し、印刷装置の中で本発明の制御部に対応しない部分
が、本発明の印刷部に対応する。また、印刷装置自身がコンピューターを搭載しており、
外部のコンピューターに接続することなく画像を印刷する場合には、印刷装置に搭載され
たコンピューターが本発明の制御部に対応し、それ以外の部分が本発明の印刷部に対応す
る。
【0020】
以上のような本発明の印刷システムにおいても、上述した本発明のプログラムと同様に
、不適正な性状のインクを補充してもインクの供給を再開させることができないので、不
適正な性状のインクによって噴射ヘッドの内部が目詰まりすることを回避することができ
る。また、一度使用された初期化データは使用できなくなるので、インクを補充する際に
は、毎回、適正な性状のインクを入手することになる。その結果、不適正な性状のインク
によって噴射ヘッドの内部が目詰まりすることを回避することができる。加えて、初期化
データは1度しか使用できないので、インクを補充する際にはできるだけインクを残さず
に補充するようになる。このため、入手時には適正な性状のインクであったにも拘わらず
、開封後、補充されずに時間が経過したために劣化の進んだインクが補充されて、噴射ヘ
ッドが目詰まりしてしまうことも回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施例の印刷装置としてのインクジェットプリンターを例示した説明図である。
【図2】本実施例の印刷システムの全体構成を示した説明図である。
【図3】本実施例のプリンタドライバーが実行するインク残量管理処理を示したフローチャートである。
【図4】モニター画面202に表示された補充インク選択画面を例示した説明図である。
【図5】モニター画面202に表示された補充インク選択画面の他の態様を例示した説明図である。
【図6】インク残量管理処理の中で実行されるインク残量修正処理を示したフローチャートである。
【図7】モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図である。
【図8】タンクケースの確認窓からインクタンク内のインク残量を確認する様子を示した説明図である。
【図9】インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面を例示した説明図である。
【図10】インク残量管理処理の中で実行されるインク補充処理のフローチャートである。
【図11】タンクケースをインクジェットプリンターから取り外した様子を示す説明図である。
【図12】モニター画面に表示されたインク補充画面を例示した説明図である。
【図13】補充インクが収容されたインクボトルを例示した説明図である。
【図14】モニター画面上でインクID番号を入力するために表示される入力画面を例示した説明図である。
【図15】モニター画面上でインクID番号の再入力を促すために表示される再入力画面を例示した説明図である。
【図16】モニター画面上に表示された補充完了画面を例示した説明図である。
【図17】第3変形例のインクボトルを例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造:
A−2.本実施例の印刷システムの構成:
B.インク残量管理処理:
B−1.インク残量修正処理:
B−2.インク補充処理:
C.変形例:
C−1.第1変形例:
C−2.第2変形例:
C−3.第3変形例:
C−4.第4変形例:
【0023】
A.装置構成 :
A−1.本実施例のインクジェットプリンターの構造 :
図1は、本実施例の印刷装置としてのインクジェットプリンター100を例示した説明
図である。図示したインクジェットプリンター100は、略箱形の外観形状をしており、
前面のほぼ中央には前面カバー103が設けられ、背面側には、印刷用紙1をセットする
給紙トレイ101が設けられている。また、インクジェットプリンター100の前面側で
、前面カバー103の隣に相当する位置には複数の操作ボタン105が設けられており、
更に、操作ボタン105が設けられた箇所の上面側には、タッチパネル式のモニター画面
104が設けられている。前面カバー103は下端側で軸支されており、上端側を手前に
倒すと、印刷用紙1が排出される細長い排紙口102が現れる。給紙トレイ101に印刷
用紙をセットして、モニター画面104あるいは操作ボタン105を操作すると、給紙ト
レイ101から印刷用紙1が吸い込まれる。そしてインクジェットプリンター100の内
部で、印刷用紙1の表面に画像が印刷された後、排紙口102から排出されるようになっ
ている。
【0024】
インクジェットプリンター100の側面には、箱形形状のタンクケース150が設けら
れている。詳細には後述するが、タンクケース150の内部には複数のインクタンクが設
けられており、インクジェットプリンター100が印刷に用いるインクは、このインクタ
ンクから供給されるようになっている。
【0025】
また、印刷する画像のデータ(画像データ)は、インクジェットプリンター100に接
続されたコンピューター200によって画像処理が施された後、インクジェットプリンタ
ー100に供給される。インクジェットプリンター100は、コンピューター200から
画像処理後の画像データを受け取ると、印刷用紙1上にインクによるドットを形成するか
否かを表したドットデータに変換して、得られたドットデータに従って印刷用紙1上にイ
ンクを噴射することによってドットを形成する。その結果、印刷用紙1上に画像が印刷さ
れる。すなわち、本実施例では、インクジェットプリンター100と、画像データに所定
の画像処理を施してインクジェットプリンター100に供給するコンピューター200と
によって印刷システム10が構成されていることになる。
【0026】
A−2.本実施例の印刷システムの構成 :
図2は、本実施例の印刷システム10の全体構成を示した説明図である。また、図中に
は、インクジェットプリンター100の大まかな内部構造も示されている。先ず初めに、
インクジェットプリンター100の内部構造について簡単に説明する。図2に示されるよ
うに、インクジェットプリンター100の内部には、印刷用紙1の上で往復動するキャリ
ッジ110が設けられており、キャリッジ110には、インクを噴射する噴射ヘッド11
2が設けられている。本実施例のインクジェットプリンター100では、シアン(以下C
)色、イエロー(以下Y)色、マゼンタ(以下M)色、黒(以下K)色の4色のインクを
用いて画像を印刷可能であり、このことに対応して、インクの色毎に噴射ヘッド112が
設けられている。
【0027】
キャリッジ110は、図示しない駆動機構に駆動されて、ガイドレール130によって
ガイドされながら印刷用紙1の上で往復動を繰り返す。また、インクジェットプリンター
100には図示しない紙送り機構も設けられており、キャリッジ110が往復動する動き
に合わせて印刷用紙1が少しずつ紙送りされていく。そして、キャリッジ110が往復動
する動きと、印刷用紙1が紙送りされる動きとに合わせて、噴射ヘッド112から、C色
のインク(以下、Cインク)、Y色のインク(以下、Yインク)、M色のインク(以下、
Mインク)、あるいはK色のインク(以下、Kインク)を噴射することによって、印刷用
紙1に画像が印刷される。
【0028】
噴射ヘッド112から噴射されるインクは、タンクケース150内に設けられたインク
タンク151に収容されている。本実施例のインクジェットプリンター100では、Cイ
ンク、Yインク、Mインク、Kインクの4種類のインクを使用することから、インクタン
ク151もインクの種類毎に、Cインク用のインクタンク151C、Yインク用のインク
タンク151Y、Mインク用のインクタンク151M、およびKインク用のインクタンク
151Kの4つのインクタンク151が設けられている。尚、本明細書中では、特にイン
クの種類を区別する必要がない場合には、インクの種類毎のインクタンク151C,15
1Y,151M,151Kをまとめて単にインクタンク151と称することがあるものと
する。これらインクタンク151内のインクは、インクの種類毎に設けられたインクチュ
ーブ117を介して、インクの種類毎の噴射ヘッド112に供給される。
【0029】
更に、キャリッジ110がガイドレール130に沿って印刷用紙1の外側まで移動した
位置には、ホームポジションと呼ばれる領域が設けられており、インクジェットプリンタ
ー100が画像を印刷していない間は、キャリッジ110はホームポジションに移動して
いる。ホームポジションには、キャップ122が設けられており、このキャップ122は
図示しない昇降機構によって上下方向に移動可能となっている。そして、キャリッジ11
0をホームポジションに移動した状態で、キャップ122をキャリッジ110の底面側に
押し当てると噴射ヘッド112を覆うように閉空間が形成され、噴射ヘッド112内のイ
ンクが乾燥することを防止可能となっている。また、キャップ122には、負圧チューブ
124を介して負圧ポンプ120が接続されており、キャリッジ110の底面側にキャッ
プ122を押し当てた状態で負圧ポンプ120を作動させることで、噴射ヘッド112内
のインクを吸い出すことも可能となっている。このため、噴射ヘッド112内で乾燥が進
んでインクの粘度が増加してしまった場合でも、そのようなインクを吸い出して、噴射ヘ
ッド112内のインクを適切な粘度に維持しておくことが可能である。
【0030】
また、インクジェットプリンター100には、論理演算や算術演算を行うCPUや、各
種のプログラムやデータを記憶しているROM、CPUが一時的にデータを記憶するRA
Mなどによって構成された制御部140が搭載されている。制御部140は、コンピュー
ター200から画像処理後の画像データを受け取ると、その画像データが表す画像を、イ
ンクのドットによって表現した画像データ(ドットデータ)に変換する。そして、ドット
データに従って、キャリッジ110が往復動する動作や、印刷用紙1を紙送りする動作、
噴射ヘッド112がインクを噴射してドットを形成する動作を制御する。また、インクの
ドットを形成すると、その分だけのインクが消費されて、インクタンク151内のインク
残量が減少していく。そこで本実施例の制御部140では、インクの種類毎のドットデー
タに基づいて、インクの種類毎にインクタンク151内のインク残量を計数しており、イ
ンク残量が所定の下限値(所定の限界値)に達すると(インクがなくなると)、噴射ヘッ
ド112からインクを噴射する動作を停止する。こうすることで、インクが供給されない
状態で噴射ヘッド112が駆動されたために、噴射ヘッド112が大きなダメージを受け
ることを回避することが可能となる。
【0031】
コンピューター200は、CPUや、ROM、RAMなどがバスによって相互にデータ
を通信可能に接続されて構成されており、ROMに記憶されている各種のプログラムを実
行する。また、コンピューター200には、モニター画面202も搭載されている。RO
Mに記憶された複数のプログラムの中には、プリンタドライバー204と呼ばれるプログ
ラムが記憶されており、CPUがプリンタドライバー204を実行すると、印刷しようと
する画像データに対して所定の画像処理が施されて、インクジェットプリンター100に
出力されるようになっている。
【0032】
また、本実施例のプリンタドライバー204の動作を、その機能に着目して分類すると
、画像データに対して画像処理を施す機能に関する部分(画像変換モジュール)や、イン
クジェットプリンター100と相互に通信する通勤機能部によってインクタンク151の
インク残量を管理する機能に関する部分(インク残量管理モジュール)や、インク残量管
理モジュールから起動されてインクタンク151にインクを補充するための機能に関する
部分(インク補充モジュール)などに分類することができる。尚、ここで言う「モジュー
ル」とは、プリンタドライバー204の動作を、機能に着目して大まかに分類した仮想的
な概念であり、実際には種々の形態で具現化することができる。たとえば、所望の機能が
実現されるように複数のコマンドを連ねたプログラムコード群として具現化することもで
きるし、あるいは、所望の機能をハードウェア的に実現するLSI群として具現化するこ
ともできる。
【0033】
上述したように画像変換モジュールでは、印刷しようとする画像の画像データに対して
所定の画像処理を施してインクジェットプリンター100に出力しているが、この処理自
体は、一般的なプリンタドライバーで行われている処理と同様であるため、ここでは説明
は省略する。また、本実施例のプリンタドライバー204では、インク残量管理モジュー
ル(あるいはインク補充モジュール)がインクジェットプリンター100とデータを通信
しながら、以下に説明するインク残量管理処理を実行することにより、インクジェットプ
リンター100でインク切れが発生して印刷できなくなる事態を回避している。更に、適
正でない性状のインクが補充されて噴射ヘッド112の内部で目詰まりが発生することも
回避している。以下では、こうした機能を実現するために、本実施例のプリンタドライバ
ー204の内部でインク残量管理モジュールが実行している処理について説明する。
【0034】
B.インク残量管理処理 :
図3は、本実施例のプリンタドライバー204の中で行われるインク残量管理処理を示
したフローチャートである。この処理は、プリンタドライバー204のインク残量管理モ
ジュールが、インクジェットプリンター100の制御部140と通信しながら実行する処
理である。
【0035】
図3に示されるようにインク残量管理処理では、先ず初めに、インクジェットプリンタ
ー100の制御部140から、インクタンク151内のインク残量をインクの種類毎に取
得する(ステップS100)。図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター
100の制御部140では、コンピューター200から受け取った画像データをドットデ
ータ(画像をインクドットによって表現した画像データ)に変換して噴射ヘッド112や
キャリッジ110の動作などを制御するとともに、ドットデータに基づいてインクタンク
151のインク残量をインクの種類ごとに計数している。計数されたインク残量は、イン
クジェットプリンター100内のRAMやROMに記憶されている。尚、以下の処理は、
すべて各色のインク毎に行われていることから、特にインクの種類を特定せずに行った説
明は、すべてのインクについて該当するものとする。
【0036】
インクジェットプリンター100の制御部140からインク残量を取得したら、取得し
たインク残量が、所定の下限値に達したか否かを判断する(ステップS102)。その結
果、何れかのインクタンク151のインク残量が所定の下限値まで減少していた場合は(
ステップS102:yes)、インク残量修正処理(ステップS200)を開始する。詳
細には後述するが、インク残量修正処理とは、インクジェットプリンター100の操作者
にインクタンク151のインク残量を確認させて、実際にはまだインクが残っていた場合
には、インクジェットプリンター100のインク残量を修正する処理である。
【0037】
一方、インクジェットプリンター100から取得したインク残量が未だ下限値に達して
いない場合は(ステップS102:no)、インク残量を確認するための所定の操作が、
インクジェットプリンター100の操作者によって行われたか否かを判断する(ステップ
S104)。インク残量を確認するための所定の操作とは、たとえば、操作者が、インク
ジェットプリンター100のアイコンをコンピューター200から選択し、そのプロパテ
ィを表示させる操作である。その結果、インク残量を確認するための操作が行われていな
い場合は(ステップS104:no)、処理の先頭に戻って、再びインクジェットプリン
ター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上述した一連の処理を繰
り返す。
【0038】
これに対して、インクジェットプリンター100の操作者がインク残量を確認するため
の所定の操作を行った場合は(ステップS104:yes)、インクを補充するインク(
補充インク)を選択するための画面を、コンピューター200のモニター画面202に表
示する(ステップS106)。
【0039】
図4は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面(インク残量確認画面を
含む)を例示した説明図である。図示されているように、補充インク選択画面には、Cイ
ンク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞれについて、大まかなインク残量を
示す画像が表示されている。このインク残量は、インクジェットプリンター100から取
得したインク残量に基づいて表示される。また、大まかなインク残量を示す画像の下側に
はチェックボックスが表示されており、インクジェットプリンター100の操作者がチェ
ックボックスにチェックを入れることによって、補充インクを選択することが可能となっ
ている。もっとも、インク残量が減っていないインクについてはインクを補充する必要は
ない。そこで、このようなインクについては、チェックボックスが選択できない態様で表
示されている。図4中で、C、Y、M、Kの各インクのチェックボックスが細い波線で表
示されているのは、これらのチェックボックスが選択できないことを表したものである。
【0040】
図5は、モニター画面202に表示された補充インク選択画面の他の態様を例示した説
明図である。図5に示した例では、YインクおよびMインクについてはインク残量が所定
値(たとえば3%以下)に減少しており、これらインクのチェックボックスが選択可能な
態様で表示されている。図中でチェックボックスが太い実線で表示されているのは、選択
可能な態様で表示されていることを表したものである。また、インク残量が所定値以下に
減少したインクについては、三角形の中に!印を組み合わせた図形が、大まかなインク残
量を示す画像の上に上書きされており、インク残量が減少していることが容易に認識でき
るようになっている。なお、図5では、YインクおよびMインクのインク残量が所定値以
下に減少していた場合を例示したが、他のインク(たとえばCインク)のインク残量が所
定値以下に減少していた場合には、そのインク(Cインク)についてのチェックボックス
が選択可能な態様で表示されるとともに、そのインク(Cインク)の大まかなインク残量
を表す画像の上に、三角形と!印とを組み合わせた図形が上書き表示される。
【0041】
以上に説明したように、図3に示したインク残量管理処理では、インクジェットプリン
ター100の操作者がインク残量を確認するための所定の操作を行うと(ステップS10
4:yes)、その時点でインク残量が所定値以下に減少しているインクがなければ、図
4に示した態様で補充インク選択画面が表示され、逆に、インク残量が所定値以下に減少
しているインクがあれば、図5に例示した補充インク選択画面が表示される(ステップS
106)。そして補充インク選択画面が、図4に示した態様で表示されていた場合は、何
れのインクのチェックボックスも選択可能な態様で表示されていないので、インクジェッ
トプリンター100の操作者は、画面の右下隅の「次へ」と表示されたボタン(以下、「
次へ」ボタン)を選択する。これに対して補充インク選択画面が、図5に例示した態様で
表示されていた場合は、インクジェットプリンター100の操作者が補充しようと思った
インクのチェックボックスにチェックが入れられた後、画面の右下隅の「次へ」ボタンが
選択される。もちろん、インクジェットプリンター100の操作者が何れのインクも補充
しようと思わなかった場合は、何れのインクのチェックボックスにもチェックが入れられ
ることなく、「次へ」ボタンが選択されることになる。
【0042】
図3のインク残量管理処理では、図4または図5に例示した補充インク選択画面をモニ
ター画面202に表示すると(ステップS106)、インクジェットプリンター100の
操作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS108では「n
o」と判断されて、待機状態となっている。そして、インクジェットプリンター100の
操作者によって「次へ」ボタンが押されると、プリンタドライバー204のインク残量管
理モジュールがこれを検出して(ステップS108:yes)、今度は、インクを補充す
るよう選択されたインク(補充インク選択画面のチェックボックスにチェックが入れられ
たインク)が存在するか否かを判断する(ステップS110)。その結果、補充すべきイ
ンクが存在している場合は(ステップS110:yes)、後述するインク補充処理を開
始する(ステップS300)。
【0043】
これに対して、補充インク選択画面が、図4に示したようにインクを選択できない態様
で表示された場合や、あるいは、図5に示したようにインクを選択可能な態様で表示され
たが、何れのインクも選択されなかった場合には、ステップS110では、補充すべきイ
ンクが存在していないと判断される(ステップS110:no)。そして、この場合は、
後述するインク補充処理は行うことなく、そのままインク残量管理処理の先頭に戻って、
インクジェットプリンター100からインク残量を取得した後(ステップS100)、上
述した一連の処理を繰り返す。
【0044】
以上では、インクジェットプリンター100の操作者がインク残量を確認するための所
定の操作を行った場合に(ステップS104:yes)、補充インク選択画面を表示する
処理について説明した。このように、インクジェットプリンター100の操作者が所定の
操作を行うことにより、インクジェットプリンター100から取得したインク残量の値に
かかわらず、コンピューター200のモニター画面202に補充インク選択画面を開いて
、何時でも大まかなインク残量を表示させることが可能である。これに対して、インクジ
ェットプリンター100から取得したインク残量が所定の下限値に達していると判断され
た場合は(ステップS102:yes)、以下に説明するインク残量修正処理が開始され
て(ステップS200)、大まかなインク残量を表示するための画面が自動的に表示され
る。以下では、このようなインク残量修正処理について説明する。
【0045】
B−1.インク残量修正処理 :
図6は、インク残量修正処理を示したフローチャートである。この処理は、上述したよ
うにインク残量管理処理の中で、何れかのインクのインク残量が所定の下限値に達したと
判断された場合(図3のステップS102:yes)に、プリンタドライバー204のイ
ンク残量管理モジュール(図2を参照のこと)によって実行される処理である。
【0046】
図6に示されるように、インク残量修正処理を開始すると、先ず初めに、コンピュータ
ー200のモニター画面202にインク残量確認画面を表示する(ステップS202)。
ここで、インク残量確認画面とは、インクジェットプリンター100の操作者に、インク
タンク151のインク液面の位置を目視して、実際に残っているインク残量を確認するよ
うに促す画面である。インク残量確認画面の詳細については後述する。
【0047】
また、インクジェットプリンター100の操作者に、目視によってインク残量を確認さ
せているのは次のような理由によるものである。まず、プリンタドライバー204がイン
クジェットプリンター100から取得したインク残量は、インクジェットプリンター10
0の制御部140がドットデータに基づいてインクの噴射量(インク噴射量)を算出し、
そのインク噴射量を累積することによって求めたインク残量である。しかし実際のインク
噴射量は、インクジェットプリンター100が使用される環境(たとえば周囲の温度など
)によって変動するので、計算上のインク噴射量には多少の誤差が含まれている。そして
、この誤差が集積することで、計算によって求めたインク残量が、実際のインク残量と一
致しないことも起こり得る。そこで、計算上のインク残量が下限値に達すると、実際にイ
ンクタンク151のインク液面が下限ラインまで下がっているか否かを目視によって確認
することにより、実際のインク残量が下限値に達しているか否かを確認するのである。
【0048】
図7は、モニター画面202に表示されたインク残量確認画面を例示した説明図である
。図示されているように、インク残量確認画面にも、図4あるいは図5を用いて前述した
補充インク選択画面と同様に、Cインク、Yインク、Mインク、およびKインクのそれぞ
れについて、大まかなインク残量を示す画像が表示されている。そして、それぞれのイン
ク残量を示す画像を確認することで、インク残量が下限値に達しているか否かを容易に知
ることができるようになっている。たとえば、図中に表示されたCインクのインク残量を
示す画像、およびYインクのインク残量を示す画像には、丸の中に×印を組み合わせた図
形が上書きされており、これらインクのインク残量が下限値まで減少している(インクタ
ンク151がほとんど空になっている)旨が示されている。また、Mインクのインク残量
を示す画像には、三角形の中に!印を組み合わせた図形が上書きされている。これは、図
5を用いて前述した補充インク選択画面と同様に、インクを補充可能なレベルまでインク
残量が減少している旨を示す表示である。更に、Kインクのインク残量を示す画像には、
何れの画像も上書きされておらず、このインクについては、インクを補充可能なレベルに
までインク残量が減少していない旨が示されている。
【0049】
また、これら各インクのインク残量を示す画像の下方には、四角いチェックボックスが
表示されている。更に、インク残量を示す画像の上方には、「インクタンク151内に残
っているインク量を確認して、まだ下限ラインまで減少していないインクがあれば、チェ
ックボックスにチェックを入れる」ように促す旨が表示されている。図1を用いて前述し
たように、インクタンク151はタンクケース150内に収容されているが、タンクケー
ス150には後述する確認窓が設けられている。このため、インクジェットプリンター1
00の操作者は、それぞれのインクタンク151内のインク残量を容易に確認することが
可能となっている。
【0050】
図8は、タンクケース150に設けられた確認窓152から、インクタンク151内の
インク残量を確認する様子を示した説明図である。図示されているように、タンクケース
150の側面には大きな確認窓152が形成されており、タンクケース150内に収容さ
れたCインクのインクタンク151C、Yインクのインクタンク151Y、Mインクのイ
ンクタンク151M、Kインクのインクタンク151Kをそれぞれ目視できるようになっ
ている。また、それぞれのインクタンク151C,151Y,151M,151Kは、透
明あるいは半透明な樹脂材料で形成されている。このため、それぞれのインクタンク15
1C,151Y,151M,151Kに残ったインクの液面の位置を目視によって確認す
ることが可能である。
【0051】
また、図8に示されているように、それぞれのインクタンク151C,151Y,15
1M,151Kには、下限ライン153が表示されている。この下限ライン153は、図
3に示したインク残量管理処理の中でインク残量について判断された「下限値」に対応し
ている。すなわち、下限ライン153は、インクタンク151が満タンの状態からドット
データに基づいてインク噴射量を減算して行き、インク残量が下限値まで減少したときに
、インクタンク151内のインクの液面がちょうど低下する位置に設定されている。
【0052】
従って、ドットデータに基づく計算上のインク残量が所定の下限値まで低下したと判断
されると、図7に例示するようなインク残量確認画面が表示され、そして、インクジェッ
トプリンター100の操作者は、確認窓152から各インクタンク151内のインク液面
の位置を確認することにより、実際のインク残量を確認することが可能である。その結果
、計算上はインク残量が下限値まで低下している(すなわち、インク液面が下限ライン1
53に達しているものと思われる)が、実際には、インク液面がまだ下限ライン153に
達していない場合には、図7の画面上で、対応するインクのチェックボックスにチェック
を入れるようになっている。
【0053】
図7に示した例では、計算上のインク残量が下限値を下回っているのが、Cインクと、
Yインクの2つのインクであり、これらインクについてのチェックボックスだけが、チェ
ックを入れて選択可能な態様で表示されている。これに対して計算上のインク残量が下限
値に達していないインク(MインクおよびKインク)については、チェックボックスが選
択できない態様で表示されている。また、CインクおよびYインクのうちのYインクにつ
いては、実際に確認したインク液面が下限ライン153に達していないとして、チェック
ボックスにチェックが入れられている。このようにしてインクジェットプリンター100
の操作者は、タンクケース150の確認窓152から各インクの液面の位置を目視によっ
て確認し、その結果に応じてチェックボックスにチェックを入れた後、画面の下方に「次
へ」と表示されたボタンをクリックする。
【0054】
すると、図6に示したインク残量修正処理では、「次へ」ボタンが押されたと判断する
(ステップS204:yes)。また、図7のインク残量確認画面をモニター画面202
に表示した後(ステップS202)、インクジェットプリンター100の操作者によって
「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS204では「no」と判断され
て、待機状態となっている。
【0055】
そして、「次へ」ボタンが押されたと判断すると(ステップS204:yes)、今度
は、計算上のインク残量の修正が必要なインク(すなわち、図7のインク残量確認画面上
でチェックボックスにチェックが入れられたインク)が存在するか否かを判断する(ステ
ップS206)。その結果、インク残量の修正が必要なインクが存在している場合は(ス
テップS206:yes)、インクジェットプリンター100の制御部140に向かって
コマンドを送信することにより、対応するインクのインク残量を所定量(たとえば満タン
状態の3%相当)だけ増加させる(ステップS208)。こうすれば、計算上のインク残
量と、インクタンク151に残っている実際のインク残量とにズレが生じた場合でも、計
算上のインク残量を実際のインク残量に近づけることが可能となる。インク残量の修正が
必要なインクが存在していない場合は(ステップS206:no)、インク残量を修正す
ることなく、直ちに図6のインク残量修正処理を終了して、図3のインク残量管理処理に
復帰する。
【0056】
尚、本実施例では、噴射ヘッド112のインク噴射量は実際よりも若干多めに見積もら
れており、従って、計算上のインク残量は、実際にインクタンク151内に残っているイ
ンクのインク残量よりも常に少なめとなるように設定されている。これは、まだインクが
残っている段階から早めに補充インクの用意を促すことで、インク切れによって印刷が続
行できない事態が発生することを確実に回避できるようにとの配慮に基づくものである。
このことに対応して、図3に示したインク残量管理処理では、計算上のインク残量が所定
の下限値に達した場合にだけ(図3のステップS102:yes)、インク残量修正処理
を開始して、インクジェットプリンター100の操作者に実際のインク液面を確認させる
こととしている。
【0057】
もっとも、計算上のインク残量が、実際にインクタンク151内に残ったインク量より
も多くなってしまう場合も起こり得る。そこで、実際にはインク液面が下限ライン153
まで低下しているにも拘わらず、図7のインク残量確認画面ではまだインク残量が下限値
に達していないことになっている場合には、インクジェットプリンター100の操作者が
、計算上のインク残量をモニター画面202上から減少させることによって、計算上のイ
ンク残量を実際のインク残量に合わせられるようにしても良い。
【0058】
以上のようにして、図7のインク残量修正処理でインク残量を修正した後(図7のステ
ップS208)、図3のインク残量管理処理に復帰すると、コンピューター200のモニ
ター画面202に補充インク選択画面が表示される(図3のステップS106)。すなわ
ち、インク残量が下限値に達すると、インクジェットプリンター100の操作者が操作す
ることなく、自動的に図7のインク残量確認画面が表示され、インクジェットプリンター
100の操作者が画面の右下隅の「次へ」ボタンを選択すると、今度は補充インク選択画
面が表示されることになる。
【0059】
図9は、インク残量確認画面の後に表示される補充インク選択画面を例示した説明図で
ある。図9に示した補充インク選択画面の基本的な構成は、図4あるいは図5を用いて前
述した補充インク選択画面の構成と同様である。但し、図4あるいは図5に示した補充イ
ンク選択画面は、インク残量が下限値に達する前に、インクジェットプリンター100の
操作者が所定の操作を行うことによって表示される画面であることから、何れのインクに
ついてもインク残量が下限値に達している旨の画像(丸の中に×印を組み合わせた図形の
画像)が表示されることはない。これに対して、インク残量確認画面の後に表示される補
充インク選択画面では、図9に例示したように、インク残量が下限値に達している旨の画
像が表示されることがある。これは、図7に例示したインク残量確認画面に従って、イン
クジェットプリンター100の操作者が目視によってインク残量を確認した結果、インク
液面が下限ライン153まで低下していたインクについては、インク残量を修正するチャ
ックボックスが選択されないのでインク残量が修正されることなく、補充インク選択画面
が表示されるためである。
【0060】
図9に示した例では、Cインクについては図7のインク残量確認画面でチェックボック
スにチェックが入れられなかった結果、図9の補充インク選択画面においてもインク残量
が下限値に達している旨を示す画像が表示されている。これに対してYインクについては
、図7のインク残量確認画面でチェックボックスにチェックが入れられた結果、図9の補
充インク選択画面ではインク残量が下限値に達していないが、インクを補充可能である旨
を示す画像(三角形に!印を組み合わせた図形の画像)に変更されている。
【0061】
そして、前述したようにインクジェットプリンター100の操作者が、図9の補充イン
ク選択画面でチェックボックスにチェックを入れて、インクを補充するインクを選択した
後、画面の右下隅に表示されている「次へ」ボタンを選択すると、インク残量管理モジュ
ールがインク補充モジュールを起動する結果、インクを補充するためのインク補充処理(
ステップS300)が開始されることになる。
【0062】
B−2.インク補充処理 :
図10は、インク補充処理のフローチャートである。この処理は、コンピューター20
0内にインストールされたインク残量管理モジュールおよびインク補充モジュールによっ
て、インク残量管理処理の中で実行される処理である。図示されるようにインク補充処理
(ステップS300)を開始すると、先ず初めに、タンクケース150のロックを解除す
るコマンド(ロック解除コマンド)をインクジェットプリンター100に向かって送信す
る(ステップS302)。これは、次のような理由によるものである。
【0063】
図1に示したように、タンクケース150は、インクジェットプリンター100とは別
体に構成されており、インクジェットプリンター100の側面に取り付けた状態で使用さ
れる。そして、通常時はインクジェットプリンター100から取り外せないようにロック
された状態となっている。しかし、タンクケース150がインクジェットプリンター10
0に取り付けられたままでは、タンクケース150内のインクタンク151にインクを補
充することができない。そこで、インクを補充するに際しては、タンクケース150を取
り外せるようにするために、コンピューター200からインクジェットプリンター100
に向かってロック解除コマンドを送信する。インクジェットプリンター100の制御部1
40はロック解除コマンドを受け取ると、インクジェットプリンター100に内蔵された
図示しないアクチュエータを動かすことによって、タンクケース150のロック状態を解
除する。その結果、インクジェットプリンター100の操作者がタンクケース150を取
り外せる状態となる。
【0064】
図11は、タンクケース150をインクジェットプリンター100から取り外した様子
を示す説明図である。図11には、タンクケース150を取り外した後、インクジェット
プリンター100に取り付けられていた側の面が上方を向くように、タンクケース150
を回転させた状態が示されている。図示されているように、タンクケース150がインク
ジェットプリンター100に取り付けられる面には、4箇所に小さな突起154が立設さ
れている。また、インクジェットプリンター100の面には、対応する位置に突起154
の挿入孔109が設けられている。
【0065】
タンクケース150をインクジェットプリンター100に取り付ける際には、突起15
4の位置と挿入孔109の位置とを合わせて、突起154を挿入孔109に押し込むよう
にする。すると、突起154の先端に設けられた小さな貫通穴の部分が、挿入孔109の
内部に設けられた図示しないロック機構に嵌合してロックされた状態となり、タンクケー
ス150が取り付けられた状態となる。また、タンクケース150を取り外した状態では
、タンクケース150の上面に設けられた上面カバー155を倒せるようになる。そして
、上面カバー155を倒すと、図11に示したようにインクタンク151が現れる。その
結果、それぞれのインクタンク151の側面に表示された上限ライン157を目視によっ
て確認することが可能になる。更に、図11に示すようにタンクケース150を回転させ
た状態で上面カバー155を倒すことによって、インクタンク151の上面側に設けられ
たキャップ156を容易に取り外すことが可能となる。
【0066】
コンピューター200のプリンタドライバー204は、こうしてインクジェットプリン
ター100にロック解除コマンドを送信することによってタンクケース150のロック状
態を解除したら(図10のステップS302)、今度は、コンピューター200のモニタ
ー画面202上にインク補充画面を表示する(ステップS304)。
【0067】
図12は、モニター画面202に表示されたインク補充画面を例示した説明図である。
図示されているように、インク補充画面には、タンクケース150を取り外して、インク
タンク151のキャップ156(図11参照)からインクを補充するように促す旨が表示
されている。また、表示の下方には、インクを補充する際の注意事項として、後述するイ
ンクボトル160のインクをすべて補充してインクボトル160内にインクが残らないよ
うに注意することや、インクタンク151に設けられた上限ライン157(図11参照)
をインク液面が超えないように注意するといった内容が表示されている。
【0068】
図13には、補充用のインクが収容されたインクボトル160が示されている。インク
ボトル160は、気密性や遮光性に優れた樹脂材料で形成された略円筒形状の容器であり
、容器の頂部にはキャップ162が設けられている。また、インクボトル160の側面に
は、紙製のラベル164が貼付されており、このラベル164の外側には、後述するイン
クID番号が印刷されている。
【0069】
本実施例のインクボトル160は、キャップ162がインクボトル160に固着した状
態で取り付けられており、この状態ではインクボトル160の内部が気密な状態に保たれ
ている。インクを補充する際には、キャップ162をねじ切るようにして取り外すと、中
から細長い注ぎ口が現れる。そこで、図11に示したようにタンクケース150を取り外
した後、インクタンク151毎に設けられたキャップ156を空けて、インクボトル16
0内のインクを注入する。
【0070】
ここで、インクボトル160内のインク量は、インクタンク151のインク液面が下限
ライン153まで低下した状態でインクボトル160内の全てのインクを注入すると、イ
ンクタンク151がほぼ満タンとなるようなインク量に設定されている。更に、インクボ
トル160のキャップ162はインクボトル160に固着されているだけなので、インク
ボトル160から一旦取り外してしまうと、再びキャップ162を取り付けることができ
ないようになっている。このため、図12に示したインク補充画面で、インクボトル16
0内の全てのインクを補充する旨の注意事項が表示されることと相俟って、インクジェッ
トプリンター100の操作者は自然と、インクボトル160内のインクを全てインクタン
ク151内に補充するようになる。
【0071】
このようにして、補充が必要な全てのインクを補充し終わったら、インクジェットプリ
ンター100の操作者は、図12のインク補充画面の右下隅に表示された「次へ」ボタン
を選択する。すると、図10のインク補充処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判
断して(ステップS306:yes)、補充したインクのインクID番号を入力するよう
促す画面を、モニター画面202上に表示する(ステップS308)。また、図12のイ
ンク補充画面を表示した後(ステップS302)、インクジェットプリンター100の操
作者によって「次へ」ボタンがクリックされるまでの間は、ステップS306では「no
」と判断されて、待機状態となっている。
【0072】
図14は、モニター画面202に表示されたインクID番号の入力画面を例示した説明
図である。図示されているように、インクID番号の入力画面には、前述した補充インク
選択処理で補充が必要と判断されたインクについて、インクID番号を入力可能な状態で
入力欄が表示されている。図14に示した例では、CインクおよびMインクの入力欄が、
インクID番号を入力可能な状態で表示されている。また、補充が不要と判断されたイン
ク(ここでは、YインクおよびKインク)については、インクID番号を入力できない状
態で入力欄が表示されている。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、イ
ンクボトル160のラベル164を確認して、ラベル164の外側に印刷されているイン
クID番号を入力した後、画面の右下隅に表示された「次へ」ボタンをクリックする。
【0073】
すると、図10に示したインク補充処理では、「次へ」ボタンが押されたものと判断し
て(ステップS310:yes)、入力されたインクID番号を読み取った後(ステップ
S312)、読み取ったインクID番号が適正であるか否かを判断する(ステップS31
4)。インクID番号は、複数の数字やアルファベットで構成された一見すると意味のな
いコードであるが、インクの種類(色)や、使用可能なインクジェットプリンター100
の機種などの情報が含まれた一種の符号データとなっている。インク補充モジュール内の
インクID番号復号部が、インクID番号を復号することにより、これらの情報を取得す
ることが可能となる。
【0074】
その結果、インク補充モジュールは、正常にインクID番号の復号を完了して、得られ
た各種の情報(たとえばインクの種類や、インクジェットプリンター100の機種など)
が正しければ、インクID番号が適正であると判断することができる。これに対して、イ
ンクID番号を復号できなかった場合や、一応復号はできたものの、たとえばインクの種
類やインクジェットプリンター100の機種が実際とは違っているなどのように、復号に
よって得られた各種の情報が矛盾している場合には、そのインクID番号は適正でないと
判断することができる。図10に示したインク補充処理のステップS314では、このよ
うにして、インクID番号が適正であるか否かを判断する。また、詳細には後述するが、
たとえ適正なインクID番号であっても、一度使用されたことのあるインクID番号が再
び入力された場合には、そのインクID番号は適正でないと判断される。
【0075】
その結果、入力されたインクID番号が適正ではないと判断した場合は(ステップS3
14:no)、インクID番号の再入力を促す画面を、モニター画面202上に表示した
後(ステップS316)、再び、「次へ」ボタンが押されたか否かを判断する処理(ステ
ップS310)を繰り返すことによって待機状態となる。
【0076】
図15は、モニター画面202上でインクID番号の再入力を促すために表示される画
面(再入力画面)を例示した説明図である。図示されているように再入力画面には、先に
入力されたインクID番号に加えて、そのインクID番号が適正であるか否かについての
判断結果が表示されている。たとえば、図15に示した例では、Cインクについて入力し
たインクID番号は適正と判断されているが、MインクについてのインクID番号は適正
でないと判断されている。そこで、インクジェットプリンター100の操作者は、適正で
ないと判断されたMインクのインクID番号を再度入力した後、再び「次へ」ボタンをク
リックする。すると、プリンタドライバー204は「次へ」ボタンが押されたと判断して
(図10のステップS310:yes)、再入力されたインクID番号を読み取った後(
ステップS312)、インクID番号が適正か否かを判断する(ステップS314)。
【0077】
その結果、全てのインクID番号が適正であると判断したら(ステップS314:ye
s)、今度は、適正と判断されたインクID番号を、使用済みID番号として、コンピュ
ーター200のRAM(またはROM)に記憶する(ステップS316)。こうして記憶
された使用済みID番号は、次回以降にインクID番号が適正であるか否かを判断するス
テップS314の処理で参照されて、入力されたインクID番号が正しく解読できて、尚
且つ、解読された内容に矛盾がなくても、使用済みID番号に記憶されていた場合には、
そのインクID番号は適正でないと判断されるようになっている。
【0078】
続いて、インク補充モジュールは、インク残量管理モジュールの通信機能部を介して、
インクジェットプリンター100の制御部140に向かってコマンド(初期化コマンド)
を送信することにより、インクジェットプリンター100の制御部140が計数している
計算上のインク残量を、満タン状態に初期化させる(ステップS320)。図2を用いて
前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140は、計算上のインク残
量が下限値に達すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまうが、
こうしてプリンタドライバー204からの初期化コマンドを受信して、計算上のインク残
量を初期化することにより印刷を再開することが可能となる。このように、入力されたイ
ンクID番号が適正であった場合にだけ、インク残量を初期化することが可能となること
から、インクID番号は、本発明における「初期化データ」に対応するものとなっている

【0079】
尚、ここでは、インクボトル160に収容されているインク量は、インクボトル160
内のインクを全て投入すると、下限ライン153まで低下していたインクタンク151の
インク液面が、ほぼ上限ライン157に達するようなインク量に設定されているものとし
ている。このことと対応して、図10のインク補充処理のステップS320では、インク
ボトル160からのインクの補充が完了すると、計算上のインク残量を満タン状態に初期
化している。しかし、収容されたインク量の異なる複数種類のインクボトル160を用意
しておき、インクボトル16に収容されたインク量に応じて、計算上のインク残量を異な
る状態に設定しても良い。また、インクボトル160に収容されたインク量は、ラベル1
64に印刷されたインクID番号に組み込んでおくことができる。
【0080】
たとえば、入力されたインクID番号を解読した結果、そのインクID番号が、最もイ
ンク量の多いインクボトル160のインクID番号であった場合には、計算上のインク残
量を満タン状態まで復帰させる。これに対して、インクID番号が、インク量の少ないイ
ンクボトル160のインクID番号であった場合には、満タン状態に対して半分程度まで
しか復帰させず、インク量が中くらいのインクボトル160のインクID番号であった場
合には、満タン状態に対して3分の2程度までしか復帰させないようにしても良い。
【0081】
以上のようにして、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されている
計算上のインク残量を復帰させたら、今度は、インクの補充が完了した旨を報知する画面
(補充完了画面)をモニター画面202上に表示する(ステップS322)。図16には
、コンピューター200のモニター画面202上に表示された補充完了画面が例示されて
いる。こうして補充完了画面を表示したら、図10に示したインク補充処理を終了して、
図3のインク残量管理処理に一旦復帰した後、インク残量管理処理の先頭に戻って、上述
した一連の処理を繰り返す。
【0082】
以上に説明したように本実施例の印刷システム10では、噴射ヘッド112から噴射し
たインク量に基づいて、インクジェットプリンター100の制御部140がインク残量を
計数している。そして、コンピューター200のプリンタドライバー204は、上述のイ
ンク残量管理処理を実行しながら、インクジェットプリンター100からインク残量を取
得することによって、インクタンク151内のインク残量を監視している。そして、イン
ク残量が少なくなると、図10のインク補充処理を行うことによって、インクジェットプ
リンター100の操作者にインクを補充させる。このため、インクカートリッジを交換し
てインクを補充する方式ではなく、インクタンク151にインクボトル160からインク
を補充する方式を採用しているにも拘わらず、性状が適切でないインクが補充されて噴射
ヘッド112内で目詰まりが発生することを回避することが可能となっている。以下では
、この点について説明する。
【0083】
先ず、図2を用いて前述したように、インクジェットプリンター100の制御部140
はドットデータに基づいてインク残量を計数しており、計数したインク残量が下限値に達
すると、噴射ヘッド112でインクを噴射する動作を停止してしまう。従って、印刷を継
続するためには、インクジェットプリンター100の制御部140で計数されているイン
ク残量を初期化する必要があり、そのためには、インクタンク151にインクを補充する
必要がある。そして、インクジェットプリンター100の操作者がインクを補充すると、
補充したインクのインクID番号を入力する画面がモニター画面202上に現れる。入力
したインクID番号はプリンタドライバー204によって適正か否かが判断されて、イン
クID番号が適正であった場合にだけ、インク残量が初期化されて、再び噴射ヘッド11
2からインクを噴射可能となる。すなわち、インクタンク151にインクを補充しても、
適正なインクID番号を入力しなければ、インクタンク151内のインクを噴射ヘッド1
12から噴射することができないようになっている。
【0084】
そして、前述したようにインクID番号は、複数の数字やアルファベットが一見無意味
に並んだ符号データとなっているので、インクボトル160のラベル164に印刷された
インクID番号を見て入力するのでない限り、適切なインクID番号を入力することは事
実上不可能である。その結果、インクジェットプリンター100の操作者は、自然と、純
正品(あるいはインクジェットプリンター100のメーカー推奨品)のインクボトル16
0を購入することになる。もちろん、一度購入した純正品のインクボトル160のインク
ID番号が何度も使用されたのでは、適正でない性状のインクが補充されることを回避す
ることができない。しかし、一度適正であるとして受け付けられたインクID番号は、使
用済みのID番号として記憶され、次にそのインクID番号が入力された時には、適正で
ないインクID番号と判断される。このため、インクを補充する際には、必ず新たに購入
された純正品(あるいはメーカー推奨品)のインクボトル160からインクが補充される
ことになるので、適正でない性状のインクが噴射ヘッド112に供給されて、噴射ヘッド
112を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
【0085】
また、図4および図5を用いて前述したように、本実施例の印刷システム10では、イ
ンクタンク151内のインク液面が下限ライン153まで低下すると初めて、補充するイ
ンクを選択する画面がモニター画面202上に表示される(図5参照)。そして、インク
ボトル160内の全てのインクをインクタンク151に補充すると、インクタンク151
のインク液面が、下限ライン153から上限ライン157のほぼ手前まで来るように、イ
ンクボトル160のインク収容量が設定されている。このためインクジェットプリンター
100の操作者は、インクを補充する際には自然と、インクボトル160内のインクを全
て補充するようになる。しかも図12に例示したように、モニター画面202上では、イ
ンクボトル160内の全てのインクを補充する旨が表示されるので、インクボトル160
内にインクを少し残すようなことはない。
【0086】
前述したように、純正品のインクボトル160であっても、一旦開封すると、インクボ
トル160内のインクの性状は、時間の経過とともに劣化が進行する。従って、一旦開封
された後、インクボトル160内に残ったインクが補充されると、噴射ヘッド112の内
部を目詰まりさせてしまう虞がある。しかし、上述したように、本実施例の印刷システム
10では、インクジェットプリンター100の操作者がインクを補充する際に、インクボ
トル160内にインクを残すことはない。このため、インクボトル160が一旦開封され
たため、インクボトル160内でインクの劣化が進んだために、噴射ヘッド112内が目
詰まりするような事態を回避することができる。
【0087】
加えて、上述したように、一度入力されて受け付けられたインクID番号は使えないの
で、次回の補充の際には必ず新たなインクボトル160が購入され、そして、そのインク
ボトル160内のインクを全て投入すると、インクタンク151内のインク液面はほぼ上
限ライン157に達してしまう。しかも図12に例示したように、モニター画面202上
では、インクタンク151内のインク液面が上限ライン157を超えないように注意する
旨が表示されている。このため、たとえ、古いインクボトル160内にインクが少し残っ
ていたとしても、その古いインクがインクタンク151に補充されて、噴射ヘッド112
内を目詰まりさせてしまうことを回避することが可能となる。
【0088】
C.変形例 :
上述した本実施例の印刷システム10には幾つかの変形例が存在する。以下では、これ
ら変形例について簡単に説明する。
【0089】
C−1.第1変形例 :
上述した実施例の印刷システム10では、コンピューター200からインクジェットプ
リンター100に向かって、タンクケース150のロック解除コマンドが送信され、イン
クジェットプリンター100の操作者がタンクケース150を取り外してインクタンク1
51にインクを補充した後に、コンピューター200のモニター画面202上に、インク
ID番号を入力する画面が表示されるものとして説明した。入力されたインクID番号が
適正でなかった場合には、インク残量が初期化されないので、インクタンク151内から
インクが吸い出されることがない。従って、純正品(あるいはメーカー推奨品)のインク
ボトル160を購入した後は、インクタンク151内のインクを捨てて、適正なインクに
入れ替えることができる。
【0090】
もっとも、コンピューター200からインクジェットプリンター100に向かってタン
クケース150のロック解除コマンドを送信する前に、インクID番号を入力する画面を
表示して、入力されたインクID番号が適正と判断された場合に初めて、タンクケース1
50のロック解除コマンドを送信するようにしても良い。こうすれば、適正なインクID
番号が入力されない限りタンクケース150が取り外せないので、適正でない性状のイン
クがインクタンク151に補充されることを回避することが可能となる。
【0091】
C−2.第2変形例 :
また、上述した実施例の印刷システム10では、各色のインクのインクタンク151が
1つのタンクケース150に収容されているものとして説明した。従って、あるインクを
補充するためにタンクケース150を取り外した時に、未だ補充可能なレベルまでインク
が減っていないインクタンク151にも、ついでにインクが補充されてしまうことが起こ
り得る。
【0092】
そこで、各色のインクタンク151を別個のタンクケース150に収納しておき、イン
クを補充するインクについてだけ、タンクケース150を取り外せるようにしても良い。
あるいは、各色のインクタンク151が1つのタンクケース150に収納されているが、
インクを補充する際には、タンクケース150を取り外すのではなく、補充するインクの
インクタンク151を取り外すようにしてもよい。
【0093】
こうすれば、補充の必要なインクを補充したついでに、別のインクが補充されてしまう
虞を回避することができる。また、補充の必要なインクのみ、インクを補充可能な状態と
なるので、間違えたインクタンク151にインクを補充してしまう事態を回避することも
可能となる。
【0094】
C−3.第3変形例 :
上述した実施例の印刷システム10では、インクボトル160は不透明な材質で形成さ
れており、インクID番号はインクボトル160に貼付されたラベル164の外側に印刷
されているものとして説明した。しかし、インクボトル160の少なくとも一部を透明な
材質で形成しておき、ラベル164の内側(すなわち、インクボトル160に貼付される
側の面)にインクID番号を印刷してもよい。たとえば、インクボトル160にラベル1
64が貼付される部分と、これに向き合う部分とを透明に形成しておく。そして、図17
に示されるように、インクボトル160内にインクが入っている状態ではインクID番号
を読み取ることが困難であるが、インクボトル160内のインクが無くなると、ラベル1
64の内側に印刷されたインクID番号が読み取れるようにしてもよい。
【0095】
こうすれば、インクボトル160内のインクを補充して初めてインクID番号を読み取
ることができるので、別のインクボトル160のインクID番号を誤って入力してしまう
可能性を小さくすることができる。
【0096】
C−4.第4変形例 :
また、上述した本実施例の印刷システム10では、プリンタドライバー204がコンピ
ューター200上で、図3のインク残量管理処理を実行するものとして説明した。しかし
、インクジェットプリンター100にも、CPUやRAM、ROMによって構成される制
御部140や、モニター画面104、操作ボタン105などが設けられていることから、
プリンタドライバー204がインクジェットプリンター100上で、図3のインク残量管
理処理を実行するようにしても良い。
【0097】
以上、各種の実施形態を説明したが、本発明は上記すべての実施形態に限られるもので
はなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0098】
たとえば、上述した実施例あるいは変形例では、ドットデータに従って噴射ヘッド11
2が噴射するインク量を累積することによって、インク残量を算出するものとして説明し
た。しかし、噴射ヘッド112内のインクの性状を適正に保っておくために、キャップ1
22および負圧ポンプ120を用いて噴射ヘッド112のインクを吸い出す動作(クリー
ニング動作)が行われることがある。このクリーニング動作を行った場合にもインクが消
費されるので、このインクの消費量も考慮してインク残量を算出するようにしてもよい。
【0099】
あるいは、噴射ヘッド112では、噴射するインク量を複数段階に切り換えながらイン
クを噴射する場合がある。このような場合は、単にインクを噴射した回数だけでなく、そ
れぞれの噴射で噴射したインク量を考慮しながら、インク残量を算出するようにしてもよ
い。
【符号の説明】
【0100】
1…印刷用紙、 10…印刷システム、 100…インクジェットプリンター、
101…給紙トレイ、 102…排紙口、 103…前面カバー、
103…排紙口、 104…モニター画面、 105…操作ボタン、
109…挿入孔、 110…キャリッジ、 112…噴射ヘッド、
117…インクチューブ、 120…負圧ポンプ、 122…キャップ、
124…負圧チューブ、 130…ガイドレール、 140…制御部、
150…タンクケース、 151…インクタンク、 152…確認窓、
153…下限ライン、 154…突起、 155…上面カバー、
156…キャップ、 157…上限ライン、 160…インクボトル、
162…キャップ、 164…ラベル、 200…コンピューター、
202…モニター画面、 204…プリンタドライバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からインクを補充可能なインクタンクと、該インクタンクから供給されたインクを
噴射する噴射ヘッドとを備え、該インクタンクから該噴射ヘッドに供給されたインク量の
計数値が所定の限界値に達すると該噴射ヘッドからのインクの噴射を停止する機能を有す
る印刷装置の動作を、コンピューターを用いて制御するためのプログラムであって、
前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを少なくとも判別可能な情報を、前
記印刷装置から取得する第1の機能と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達した場合には、該インク量の計数値を初期化す
るためのデータである初期化データの入力を受け付ける第2の機能と、
前記入力された初期化データの適否を判定して、該初期化データが適正であると判定さ
れると、前記印刷装置内の前記インク量の計数値を初期化すると共に、適正と判定された
該初期化データを不適正な初期化データとして記憶する第3の機能と
を、コンピューターを用いて実現するためのプログラム。
【請求項2】
請求項1に記載のプログラムであって、
前記第2の機能は、
前記インク量の計数値が前記限界値に達すると、前記インクタンクへの前記インクの
補充を行うか否かを前記印刷装置の操作者に確認するための所定の確認画像を表示する副
機能(2−1)と、
前記インクの補充を行う旨が前記印刷装置の操作者によって指定されたことを検出す
ると、該操作者が前記初期化データを入力するための所定の入力画像を表示する副機能(
2−2)と
を、コンピューターを用いて実現する機能であるプログラム。
【請求項3】
請求項2に記載のプログラムであって、
前記印刷装置は、複数の前記インクタンクと、該インクタンク毎に設けられた前記噴射
ヘッドと、該インクタンク毎に計数した前記インク量が前記限界値に達すると該インクタ
ンク毎にインクの噴射を停止する機能とを備えており、
前記第1の機能は、前記インク量の計数値が前記限界値に達したか否かを、少なくとも
前記インクタンク毎に判別可能な情報を取得する機能であり、
前記副機能(2−1)は、前記インク量の計数値が前記限界値に達した前記インクタン
クについて、前記確認画像を表示する副機能であり、
前記副機能(2−2)は、前記インクの補充を行う旨が指定された前記インクタンクに
ついて前記初期化データを入力するための前記入力画像を表示する副機能であるプログラ
ム。
【請求項4】
請求項3に記載のプログラムであって、
前記複数のインクタンクは、各々異なる色のインクを収容し、
前記初期化データは、インクの色情報を含むデータであるプログラム。
【請求項5】
外部からインクタンクに補充されたインクを、噴射ヘッドを用いて噴射する印刷部と、
該印刷部の動作を制御する制御部とを備える印刷システムであって、
前記制御部は、
前記印刷部で前記インクタンクから前記噴射ヘッドに供給されたインク量を計数する
インク量計数手段と、
前記インク量計数手段によって計数された前記インクタンクの累積のインク残量もし
くはインク消費量をインク量の計数値として記憶する手段と、
前記インク量の計数値が所定の限界値に達すると、前記噴射ヘッドからのインクの噴
射を停止する噴射停止手段と、
前記インク量の計数値が前記限界値に達すると、該インク量の計数値を初期化するた
めのデータである初期化データの入力を受け付ける初期化データ受付手段と、
前記入力された初期化データの適否を判定して、該初期化データが適正であると判定
されると、前記インク量の計数値を初期化すると共に、適正と判定された該初期化データ
を不適正な初期化データとして記憶する初期化データ判定手段と
を備えている印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−40822(P2012−40822A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185849(P2010−185849)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】