印刷システム、印刷方法及び調整方法
【課題】インク滴着弾位置ズレの調整の演算負荷を軽減させる。
【解決手段】予め、画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報をメモリに記憶する。移動方向に所定間隔でドットを形成するドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの移動方向の位置をずらすことにより、移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、(1)移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データを所定数のグループに振り分け、(2)繰り返し行われるドット形成動作毎に、位置情報に基づいて、所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、(3)各ドット形成動作において、割り当てられたグループに含まれる画素データに基づいて、インク滴を吐出させる。
【解決手段】予め、画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報をメモリに記憶する。移動方向に所定間隔でドットを形成するドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの移動方向の位置をずらすことにより、移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、(1)移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データを所定数のグループに振り分け、(2)繰り返し行われるドット形成動作毎に、位置情報に基づいて、所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、(3)各ドット形成動作において、割り当てられたグループに含まれる画素データに基づいて、インク滴を吐出させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して媒体にドットを形成する印刷システム及び印刷方法、並びに、インク滴を吐出して媒体にドットを形成する印刷装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンタでは、移動方向に移動するノズルからインク滴を吐出してドットを形成するドット形成動作と、紙などの媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する。正常にインク滴がノズルから吐出されると、紙上の所定の画素にインク滴が着弾し、紙上の所定の画素にドットが形成される。
【0003】
しかし、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が理想通りにはならず、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。
【0004】
そこで、ラスタデータの左右に調整画素と呼ばれるダミーの画素データ(ダミーデータ)を付加して、ドットの形成位置を調整する方法が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−318145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この調整方法では、調整量に応じたダミーデータを付加・削除する演算処理が必要になる。しかし、調整量に応じたダミーデータの付加・削除は、演算負荷が大きくなることがある。
そこで、本発明は、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、(E)を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】印刷システム100の構成を説明する図である。
【図2】プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。
【図3】プリンタ1の全体構成のブロック図である。
【図4】プリンタ1の全体構成の概略図である。
【図5】プリンタ1の全体構成の横断面図である。
【図6】ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。
【図7】ヘッドの制御の説明図である。
【図8】図8Aは、1回のパスにおけるヘッド(又はノズル)の位置とドットの形成の様子を示し、図8Bは、次のパスにおけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【図9】図9A及び図9Bは、インターレース印刷の説明図である。
【図10】図10A及び図10Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。
【図11】図11Aは、パス4のドット形成の様子を示し、図11Bは、パス8のドット形成の様子を示す。
【図12】1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷の説明図である。
【図13】図13A〜図13Dは、1つのラスタラインを4つのノズルで形成する場合(M=4)のあるラスタラインのドット形成の様子の説明図である。
【図14】図14Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。図14Bは、ラスタライズ処理の説明図である。
【図15】図15Aは、ラスタライズ処理前の画素データの並び方の説明図である。図15Bは、バンド印刷の場合のラスタライズ処理後の画素データの並び方の説明図である。
【図16】インターレース印刷の場合のラスタライズ処理の説明図である。
【図17】オーバーラップ印刷における、あるパスで必要な画素データの説明図である。
【図18】図18Aは、画素データの振り分け処理の説明図である。図18Bは、振り分け処理の結果の説明図である。
【図19】図19Aは、パス4の画素データの並ぶ順の説明図である。図19Bは、パス8の画素データの並ぶ順の説明図である。
【図20】オーバーラップ印刷のラスタライズ処理後の画素データの説明図である。
【図21】図21Aは、パス4でのドット形成の様子の説明図である。図21Bは、パス5でのドット形成の様子の説明図である。
【図22】各パスにおけるタイミング信号の説明図である。
【図23】図23Aは、正常な場合のドット形成の様子の説明図である。図23Bは、飛翔速度が遅い場合のドット形成の様子の説明図である。図23Cは、ドットの形成位置を調整した様子の説明図である。
【図24】調整値テーブルの説明図である。
【図25】第1参考例の調整方法の説明図である。
【図26】図26A及び図26Bは、第2参考例の調整方法の説明図である。
【図27】図27A及び図27Bは、第2参考例の調整方法をオーバーラップ印刷に適用した場合の説明図である。
【図28】本実施形態の調整方法のフロー図である。
【図29】あるパスにおける調整結果の説明図である。
【図30】ダミーデータを付加した後のパス4の画素データの説明図である。
【図31】図31A及び図31Bは、調整値が「−1」の場合のドット形成動作の様子の説明図である。
【図32】第1変形例の説明図である。
【図33】双方向印刷時の画素データの並び替えの説明図である。
【図34】第2変形例の説明図である。
【図35】第3変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備えることを特徴とする印刷システム。
このような印刷システムによれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0012】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、調整値に応じたダミーデータを付加する演算が必要なくなるので、演算負荷を軽減できる。
【0013】
かかる印刷システムであって、前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、前記メモリは前記印刷装置に設けられており、前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させることが望ましい。これにより、印刷装置は、インク滴の着弾位置を調整することが可能である。
【0014】
かかる印刷システムであって、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる際に、前記メモリから前記位置情報を読み出し、この位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、印刷データに位置情報を含めなくても済む。
【0015】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、印刷制御装置が吐出開始タイミングを制御できる。
【0016】
かかる印刷システムであって、前記制御部が双方向印刷を行わせる場合であって、前記位置情報が所定値の場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことが望ましい。また、前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことが好ましい。このような場合、ドットを形成できない画素が存在するためである。
【0017】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記関係に位置ずれのないことを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることが望ましい。これにより、調整処理の演算負荷をなくすことができる。
【0018】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることが望ましい。これにより、調整処理を行わない場合と比較して、高い画質の印刷画像をユーザーが得ることができる。
【0019】
かかる印刷システムであって、前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶することが望ましい。このような場合、演算負荷が大きくなり易いが、調整値に応じたダミーデータの付加・削除しなければ、演算負荷を抑制できる。
【0020】
かかる印刷システムであって、前記ヘッドは色毎に前記複数のノズルを備え、前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させることが望ましい。これにより、装置を簡略化できる。
【0021】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷方法。
【0022】
このような印刷方法によれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0023】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷装置の調整方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷装置の調整方法。
【0024】
このような調整方法によれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0025】
(1)印刷システム
まず、印刷装置を印刷システムとともに説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも含むシステムのことである。本実施形態の印刷システムは、プリンタ1と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータとを備えている。
【0026】
図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。
【0027】
プリンタ1は、紙、布、フィルム、OHP用紙等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体に関し、以下の説明では、代表的な媒体である紙S(図4を参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。
【0028】
(1−1)プリンタドライバ
図2は、プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。
コンピュータ110では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ112やアプリケーションプログラム114やプリンタドライバ116などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ112は、アプリケーションプログラム114やプリンタドライバ116からの表示命令に従って、例えばユーザインターフェース等を表示装置120に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム114は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム114のユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム114により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム114は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ116に画像データを出力する。
【0029】
プリンタドライバ116は、アプリケーションプログラム114から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタに出力する。ここで、印刷データとは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと画素データとを有するデータである。ここで、コマンドデータとは、プリンタに特定の動作の実行を指示するためのデータである。また、画素データとは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素に関するデータであり、例えば、ある画素に対応する紙上の位置(紙上の画素)に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
【0030】
プリンタドライバ116は、アプリケーションプログラム114から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・ラスタライズ処理などを行う。以下に、プリンタドライバ116が行う各種の処理について説明する。
【0031】
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム114から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、紙に印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、紙に画像を印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラム114から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0032】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンタが有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGB画像データの階調値とCMYK画像データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ116が参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
【0033】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンタが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば720×720dpi)を有している。本実施形態では、ハーフトーン処理された画像データは、各画素につき2ビットの画素データから構成される。
【0034】
ラスタライズ処理は、マトリクス状の画像データを、プリンタに転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタに出力される。
【0035】
(1−2)プリンタ
(1−2−1)プリンタの各ユニット
図3は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図4は、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図5は、プリンタ1の全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
【0036】
本実施形態のプリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0037】
搬送ユニット20は、紙Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で紙を搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、紙を搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、紙Sをプリンタの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
【0038】
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能である。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を移動方向に移動させるためのモータである。
【0039】
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ヘッド41は、複数のノズルを有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0040】
検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される紙の先端の位置を検出するためのものである。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。光学センサ54は、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、紙の有無を検出する。
【0041】
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御手段)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0042】
(1−2−2)ヘッド
図6は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル群Kと、シアンインクノズル群Cと、マゼンタインクノズル群Mと、イエローインクノズル群Yが形成されている。各ノズル群は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。
【0043】
各ノズル群の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。
【0044】
各ノズル群のノズルは、下流側のノズルほど小さい数の番号が付されている(♯1〜♯180)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯180よりも搬送方向の下流側に位置している。なお、前述の光学センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯180とほぼ同じ位置にある。
各ノズルには、それぞれインクチャンバー(不図示)と、ピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張し、ノズルからインク滴が吐出される。
【0045】
(1−2−3)ヘッドの制御
図7は、ヘッドの制御の説明図である。ユニット制御回路64は、タイミング生成部642と、ダブルバッファ644とを有する。タイミング生成部642は、リニア式エンコーダ51からの信号に応じて、タイミング信号を生成し、ダブルバッファ644へ出力する。ダブルバッファ644には、画素データを記憶するためのバッファが2つ設けられている。各バッファは、ノズル毎に1バイト分のデータ(4画素分の画素データ)を格納できる。そして、ダブルバッファ644は、タイミング信号を受けるたびに、バッファに格納されている画素データのうち、全ノズルの1画素分の画素データをヘッド41へシリアル転送する。
【0046】
ヘッド41がインクをノズルから吐出する際の動作について説明する。
まず、プリンタドライバが、プリンタ1へ印刷データを送信する。この印刷データには、無数の画素データが含まれている。一つの画素データは、1つの画素のドット形成状況(大ドット・中ドット・小ドット・ドットなし)を示しており、2ビットのデータ量である。プリンタ1が受信した画素データは、プリンタドライバのラスタライズ処理によって、印刷に適した並び順になっており(後述)、プリンタ1は、この並び順に従って画素データをメモリ63に格納する。メモリ63の1つのアドレスには1バイトの情報を格納できるので、1つのアドレスにつき4画素分の画素データが収容される。
ユニット制御回路64は、メモリ63の連続するアドレスに格納されている画素データを、バースト転送によってダブルバッファ644の一方のバッファに格納する。なお、メモリ63の隣接するアドレスには、プリンタドライバのラスタライズ処理によって、隣接するノズルに対応する画素データがそれぞれ格納されている。このため、全ノズルの4画素分の画素データをバースト転送することが可能である。
【0047】
次に、ユニット制御回路64は、キャリッジモータ32を駆動してキャリッジ31を移動方向に移動する。キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに、リニア式エンコーダ51は1周期のパルス信号を出力する。タイミング生成部642は、リニア式エンコーダ51からの信号に応じて、タイミング信号を生成する。
ダブルバッファ644は、最初にタイミング信号を受けると、図中の太線で示す第1領域に格納されている画素データをヘッド41へシリアル転送する。この領域には、全ノズルの1画素分の画素データが格納されている。ヘッド41は、画素データに応じて、各ノズルからインクを吐出(又は不吐出)する。この結果、紙上の最初の画素に、ドットが形成される。
【0048】
ヘッド41からインクが吐出される間もキャリッジ31は移動方向に移動しているので、ダブルバッファ644は所定のタイミング信号を受け続けることになる。そして、次のタイミング信号を受けると、ダブルバッファ644は、第2領域に格納されている画素データをヘッド41へシリアル転送し、ヘッド41は、画素データに応じてインクを吐出する。このようにして、タイミング信号に応じて、ヘッド41から間欠的にインクが吐出される。
ユニット制御回路64は、ダブルバッファ644の一方のバッファへ画素データを転送した後、メモリ63から他方のバッファへ次の画素データを転送する。これにより、ダブルバッファ644は、第4領域の画素データをヘッド41へ転送した後、他方のバッファの第5領域の画素データをヘッド41へ転送することが可能である。そして、第4領域の画素データをヘッド41へ転送した後、ユニット制御回路64は、メモリ63からダブルバッファの第1領域〜第4領域へ次の画素データを転送する。このように、ユニット制御回路64は、ダブルバッファ644の2つのバッファに対して、交互に画素データを転送する。
【0049】
なお、ヘッド41には色毎にノズル群が設けられており、ダブルバッファ644は、ノズル群ごと、すなわち色毎に設けられている。但し、タイミング生成部642は、色毎に設けられている複数のダブルバッファ644に対して、共通のタイミング生成部を生成する。この結果、各色のノズル群から、共通のタイミングでインク滴が吐出されることになる。
【0050】
(2)印刷方法
(2−1)バンド印刷(参考例)
図8A及び図8Bは、バンド印刷の説明図である。図8Aは、1回のパスにおけるヘッド(又はノズル)の位置とドットの形成の様子を示し、図8Bは、次のパスにおけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【0051】
説明の都合上、複数あるノズル群のうちの一つのノズル群のみを示し、ノズル群のノズル数も少なくしている(ここでは8個)。図中の黒丸で示されるノズルは、インクを吐出可能なノズルである。また、説明の便宜上、ヘッド(又はノズル群)が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッドと紙との相対的な位置を示すものであって、実際には紙が搬送方向に移動されている。また、説明の都合上、各ノズルは数ドット(図中の黒丸)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる。このドットの列をラスタラインともいう。黒丸で示されるドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されるドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。なお、「パス」とは、移動するノズルからインクを吐出して、ドットを形成する動作(ドット形成動作)をいう。各パスは、紙を搬送方向に搬送する動作(搬送動作)と交互に行われる。
「バンド印刷」とは、連続するラスタラインを1回のパスで形成する印刷方法を意味する。つまり、バンド印刷では、1回のパスでノズル長さ分のバンド状の画像片が形成される。そして、各パスの間に行われる搬送動作では、紙がノズル長さ分だけ搬送される。そして、各パスと搬送動作とが交互に繰り返されることにより、バンド状の画像片が搬送方向につなぎ合わされて、印刷画像が形成される。
このバンド印刷では、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチと同じになり、本実施形態では180dpiである。
【0052】
(2−2)インターレース印刷(参考例)
図9A及び図9Bは、インターレース印刷の説明図である。図9Aは、パス1〜パス4におけるヘッド(又はノズル群)の位置とドットの形成の様子を示し、図9Bは、パス5におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
説明の都合上、ここではノズル群のノズル数を12個にしている。なお、図中の白丸で示されるノズルは、インクを吐出不可のノズルである。
【0053】
「インターレース印刷」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方法を意味する。例えば、図中のインターレース印刷では、1回のパスで形成されるラスタラインの間に、3本のラスタラインが挟まれている。
【0054】
インターレース印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。
図中のインターレース印刷では、ノズル群は搬送方向に沿って配列された12個のノズルを有する。ノズル群のノズルピッチkは4なので、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、全てのノズルは用いずに、11個のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯11)を用いる。また、11個のノズルが用いられるため、紙は搬送量11・Dにて搬送される。
このインターレース印刷では、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチよりも小さくすることができ、本実施形態では720dpiである。つまり、前述のバンド印刷よりも高い品質の印刷画像を形成することができる。
【0055】
(2−3)オーバーラップ印刷(2パス)
図10A及び図10Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。図10Aは、パス1〜パス4におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示し、図10Bは、パス1〜パス8におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【0056】
「オーバーラップ印刷」とは、ラスタラインを複数のノズルで形成する印刷方法を意味する。例えば、図中におけるオーバーラップ印刷では、各ラスタラインは、2つのノズルで形成されている。
【0057】
オーバーラップ印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するように(ドットの間を埋めるように)ドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより形成される。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが形成される場合、「オーバーラップ数M」と定義する。図中のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。
【0058】
このオーバーラップ印刷では、パス1で各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス2で各ノズルが偶数画素にドットを形成し、パス3で各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス4で各ノズルが偶数画素にドットを形成する。つまり、前半の4回のパスでは、奇数画素−偶数画素−奇数画素−偶数画素の順にドットが形成される。そして、後半の4回のパス(パス5〜パス8)では、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成され、偶数画素−奇数画素−偶数画素−奇数画素の順にドットが形成される。なお、パス9以降のドットの形成順は、パス1からのドット形成順と同様である。
【0059】
オーバーラップ印刷において、搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)N/Mが整数であること、(2)N/Mはkと互いに素の関係にあること、(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定されること、が条件となる。
図中のオーバーラップ印刷では、ノズル群は搬送方向に沿って配列された12個のノズルを有する。しかし、ノズル群のノズルピッチkは4なので、オーバーラップ印刷を行うための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、12個のノズルのうち、10個のノズルを用いてオーバーラップ印刷が行われる。また、10個のノズルが用いられるため、紙は搬送量5・Dにて搬送される。
【0060】
このオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを複数のノズルで形成するので、ノズルによりドット形状にバラツキがあっても、印刷画像の劣化を目立たなくさせることができる(バンド印刷やインターレース印刷では、1つのラスタラインを同じノズルで形成するため、ノズルによりドット形状にバラツキがあると、印刷画像に縞(移動方向に沿う縞)が目立ってしまう)。また、このオーバーラップ印刷でも、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチよりも小さくすることができ、本実施形態では720dpiである。つまり、前述のインターレース印刷と同様に、前述のバンド印刷よりも高い品質の印刷画像を形成することができる。
【0061】
図11A及び図11Bは、図10Bにおいて矢印で示されたラスタラインのドット形成の様子の説明図である。図11Aは、パス4のドット形成の様子を示し、図11Bは、パス8のドット形成の様子を示す。
このラスタラインでは、パス4でノズル♯6が1ドットおきに間欠的にドットを形成し、何回かの搬送動作とパスとを経た後、パス8でノズル♯1がドットを補完するようにドットを形成する。なお、別のラスタラインでは、別の組み合わせの2つのノズル(例えば、ノズル♯7とノズル♯2)により形成される。
【0062】
(2−4)オーバーラップ印刷(4パス)
上記のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを2つのノズルで形成している。しかし、1つのラスタラインを2以上のノズルで形成しても良い。
図12は、1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷の説明図である。同図は、パス1〜パス16におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。但し、説明の省略のため、ヘッドの一部のみを示している。
【0063】
1つのラスタラインを4個のノズルで形成する場合、オーバーラップ印刷の条件を満たすため、全てのノズル(12個)を用いてドット形成動作が行われ、搬送量3・Dにて搬送動作が行われる。また、各ノズルは、ドット形成動作において、4画素に1画素の割合でドットを形成する。
【0064】
図13A〜図13Dは、1つのラスタラインを4つのノズルで形成する場合(M=4)のあるラスタラインのドット形成の様子の説明図である。
このラスタラインでは、パス4でノズル♯10が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス8でノズル♯7が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス12でノズル♯4が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス16でノズル♯1が残りの画素を補完するようにドットを形成する。なお、別のラスタラインでは、別の組み合わせの4つのノズル(例えば、ノズル♯11、ノズル♯8、ノズル♯5及びノズル♯2)により形成される。
【0065】
(3)各印刷方法に応じた画素データの並び方
(3−1)ラスタライズ処理前の画像データの並び方
図14Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ハーフトーン処理後の画像データは、各画素につき2ビットの画素データから構成されている。このため、1アドレスにつき1バイトの情報を格納するメモリに画像データを格納すると、1アドレスにつき4画素分の画素データが収容される。
【0066】
図14Bは、ラスタライズ処理の説明図である。なお、「ラスタデータ」とは、ラスタラインに対応する画素データ、すなわち、移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データのことである。また、例えば「パス1の画素データ」とは、パス1に必要な画素データである。
【0067】
ラスタライズ処理前の画素データは、ラスタラインの順にメモリに格納されている。言い換えると、メモリの連続するアドレスには、ラスタラインの順に画素データが格納されている。そして、ラスタライズ処理後の画素データは、パス順にメモリに格納されている。すなわち、ラスタライズ処理後の画素データは、印刷に必要な画素データの順にメモリに格納されている。
但し、印刷方式に応じて各パスで必要な画素データが異なるので、ラスタライズ処理後の画素データの並び方も印刷方式に応じて異なる。そこで、以下に、印刷方式に応じたラスタライズ処理について説明する。
【0068】
(3−2)バンド印刷の場合(参考例)
図15Aは、ラスタライズ処理前の画素データの並び方の説明図である。図15Bは、バンド印刷の場合のラスタライズ処理後の画素データの並び方の説明図である。ラスタライズ処理前の画像データは、図15Aに示す通り、ラスタラインの順にメモリ(コンピュータ側のメモリ)に格納されている。
【0069】
ところで、図15Aに示すように左から右へヘッドが移動してバンド印刷が行われる場合、最初の画素にドットを形成するためには、図中の太線で示す画素データが最初に必要になる。しかし、太線で示す各画素データは、メモリの連続するアドレスに格納されていない。また、最初の画素の画素データだけでなく、ノズル♯1〜ノズル♯8がインクを吐出する際に同時に必要となる画素データ(例えば、1番目〜8番目の各ラスタラインにおける左から5番目の画素データ)も、メモリの連続するアドレスに格納されていない。
そこで、プリンタドライバは、バンド印刷におけるラスタライズ処理として、図15Aのように並ぶ画素データを、図15Bに示すように並び替える。これにより、太線で示す画素データは、メモリの連続するアドレスに格納される。また、最初の画素の画素データだけでなく、ノズル♯1〜ノズル♯8がインクを吐出する際に同時に必要となる画素データも、メモリの連続するアドレスに格納される。また、バンド印刷においてドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。
なお、このように並び替えられた画素データは、印刷データとしてプリンタ1に送信され、同様の並び順でプリンタ1のメモリ63に格納される。そして、メモリ63の連続するアドレスの8バイト分の画素データをダブルバッファ644へバースト転送すれば、ユニット制御回路64は、各ノズルに4画素分のドットを形成させることができる。
【0070】
(3−3)インターレース印刷の場合(参考例)
図16は、インターレース印刷の場合のラスタライズ処理の説明図である。ラスタライズ処理前の画像データは、図15Aの場合と同様に、ラスタラインの順にメモリに格納されている。
インターレース印刷では、1回のパスで記録されるラスタラインの間に、記録されないラスタラインが挟まれている。このため、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、各ノズルが形成するラスタラインの画素データ(ラスタデータ)を、図16に示す順に並び替える。これにより、インターレース印刷においてドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。
【0071】
(3−4)オーバーラップ印刷の場合
図17は、オーバーラップ印刷における、あるパスで必要な画素データの説明図である。ここではオーバーラップ数M=4のオーバーラップ印刷(1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷)について説明する。なお、図中の丸印は、画素毎に対応する2ビットの画素データを示している。丸印内の数字は、その画素データが対応する画素の位置を示している。また、図中の黒丸で示す画素データは、そのパスで必要となる画素データである。
【0072】
既に説明した通り、ハーフトーン処理後において1アドレスに格納される4画素分の画素データは、移動方向に並ぶ4画素に対応している。前述のバンド印刷やインターレース印刷では、1つのラスタラインを1個のノズルで形成しているため、移動方向に並ぶ4画素には同じパスで連続してドットが形成されるので、ハーフトーン処理後の1アドレスに格納されている4画素分の画素データは、並び替える必要はなく、ラスタライズ処理後もそのままの状態である。
【0073】
一方、オーバーラップ印刷では、移動方向に並ぶ4画素には、同じパスでドットが形成されない(図13A及び図13B参照)。このため、あるパスにおいて、1アドレスに格納される4画素分の画素データのうちの一部しか必要とされない。例えば、あるパスにおいて、図中の太線で示す4画素分の画素データのうちの1番の画素データが必要になる場合、1番目の画素の次にドットが形成される画素は5番目の画素なので、1番の画素データと同じアドレスに格納されている2〜4番の画素データは必要ではない。にもかかわらず、仮に図中の太線で示す4画素分の画素データが同じアドレスに格納されるような印刷データを送信すると、プリンタ1のメモリ63からダブルバッファ644へ画素データをバースト転送する際に、1番目の画素データとともに2〜4番目の画素データがダブルバッファに格納され、2〜4番目の画素データに応じたインク滴がヘッドから吐出されてしまう。
【0074】
このため、オーバーラップ印刷のラスタライズ処理として、以下に説明するような処理が行われる。
【0075】
図18Aは、画素データの振り分け処理の説明図である。図には、あるラスタラインの画素データ(ラスタデータ)が示されている。プリンタドライバは、各ラスタデータを構成する画素データを、4グループ(グループA〜グループD)に振り分ける。プリンタドライバは、画素データをグループA→B→C→Dの順に振り分ける。この結果、n番の画素データは、nを4で割ったときの余りをaとすると、a=1ならばグループA、a=2ならばグループB、a=3ならばグループC、a=0ならばグループDに振り分けられる。
図18Bは、振り分け処理の結果の説明図である。各ラスタデータに対する振り分け処理の結果、各グループは、移動方向に画素データを間引いたようなラスタデータから構成されている。また、各グループには、画素データを間引いたようなラスタデータが、ラスタ順に並んでいる。
【0076】
図19Aは、パス4の画素データの並ぶ順の説明図である。図19Bは、パス8の画素データの並ぶ順の説明図である。なお、パス4のノズル♯10及びパス8のノズル♯7は、図12、図13A〜図13Dに示すように、同じラスタラインのドットを形成する。
【0077】
オーバーラップ印刷では、パス4の画素データはグループAから抽出され、パス8の画素データはグループBから抽出されている。なお、図示していないが、パス12の画素データはグループCから抽出され、パス16の画素データはグループDから抽出される。このように、オーバーラップ印刷では、各パスで形成するドットの位置に応じて、各パスの画素データを抽出するグループを変えている。
なお、各グループの画素データの中から、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、各ノズルが形成するラスタラインの画素データを抽出する処理は、前述のインターレース印刷におけるラスタライズ処理とほぼ同じである。
【0078】
図20は、オーバーラップ印刷のラスタライズ処理後の画素データの説明図である。ラスタライズ処理の結果、画素データはパス順に並び替えられ、各パスの画素データは、印刷に必要な画素データの順にメモリに格納されている(図20参照)。ここでは、パス4の最初の画素データ(1番の画素データ)と、パス8の最初の画素データ(2番の画素データ)は、同じような状態でメモリに格納されている。
【0079】
図21Aは、パス4でのドット形成の様子の説明図である。図21Bは、パス5でのドット形成の様子の説明図である。図22は、各パスにおけるタイミング信号の説明図である。オーバーラップ印刷では、パスに応じて、タイミング生成部642が生成するタイミング信号が異なる。
【0080】
図22に示すように、タイミング生成部642は、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに、パルス信号を発生する。このため、各パスにおいて、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに各ノズルからインク滴が吐出され、1/180インチ間隔のドットが形成される。
【0081】
図21Aの太線で示す画素データと図21Bの太線で示す画素データとを比較して理解できる通り、パス4のときにダブルバッファ644に格納される最初の画素データ(1番の画素データ)の状態と、パス8のときにダブルバッファ644に格納される最初の画素データ(2番の画素データ)の状態は、同じ状態になる。但し、図22に示すように、パス8のタイミング信号は、パス4のタイミング信号よりも、1/720インチ分だけ遅れている。この結果、パス8において最初にインク滴を吐出する位置が、パス4において最初にインク滴を吐出する位置よりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。この結果、パス8において最初に形成されるドットは、パス4において最初に形成されるドットよりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。つまり、1番の画素データにより形成されたドットと、2番の画素データにより形成されたドットとの間隔が、720dpiになる。他の画素も同様に、パス8で形成されるドットは、パス4で形成されるドットよりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。
【0082】
なお、パス12で形成されるドットは、図22のタイミング信号から理解できる通り、パス4で形成されるドットよりも2/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側になる。また、パス16で形成されるドットは、パス4で形成されるドットよりも3/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側になる。この結果、このラスタラインには、720dpi間隔のドットの列が形成されることになる。
【0083】
(4)着弾位置ズレについて
(4−1)着弾位置のズレ
上記の説明は、インク滴の着弾位置にズレがないことを前提としている。このため、上記の説明では、ある画素データに基づいて吐出されたインク滴は、その画素データに対応する紙上の仮想的な画素に正確に着弾し、その画素の位置にドットを形成している。
【0084】
しかし、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が、理想通りにはならない。このため、インクの着弾位置がずれ、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。
【0085】
図23Aは、正常な場合のドット形成の様子の説明図である。図23Bは、飛翔速度が遅い場合のドット形成の様子の説明図である。
図23Aでは、所定のタイミングで5番の画素データに応じてインク滴が吐出され、そのインク滴は紙上の5番目の画素に着弾し、5番目の画素に5番の画素データに応じたドットが形成される。一方、図23Bでは、同じタイミングで同じ画素データに応じてインク滴が吐出されるが、インク滴の飛翔速度が遅いため、紙に着弾するまでの時間がかかり、正常な場合よりもキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)にドットが形成される。このため、インク滴の飛翔速度が遅い場合、5番の画素データに応じたドットが、例えば紙上の6番目の画素に着弾してしまう。このように、本来形成すべき位置にドットが形成できないと、印刷画像の画質が低下する原因になる。
【0086】
(4−2)着弾位置の調整
図23Cは、ドットの形成位置を調整した様子の説明図である。このように、早いタイミングで5番の画素データに応じたインク滴が吐出されれば、インク滴の飛翔速度が遅くても、紙上の5番目の画素に、5番の画素データに応じたドットが形成される。
【0087】
どのくらい早いタイミング(又は遅いタイミング)でインク滴を吐出すべきかは、個々のプリンタ毎に異なる。また、インク滴の飛翔速度はインクの粘度の影響を受けるが、インクの粘度はインクの色によって異なる。
そこで、本実施形態では、プリンタ1のメモリ63に、図24に示すような調整値テーブルを記憶している。この調整値テーブルは、調整値を各ノズル群に対応付けたものであり、プリンタの個体差に応じてプリンタ毎に異なるものである。調整値が「−1」の場合、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出すべきであることを示している。調整値が「+1」の場合、正常な場合よりも1画素分遅いタイミングでインク滴を吐出すべきであることを示している。つまり、図23Cの場合、調整値「−1」による調整が行われていることになる。
【0088】
次に、どのようにして調整値に応じたタイミングでインク滴を吐出するかを説明する。本実施形態の調整方法を理解するために、まず参考例の調整方法について説明する。
【0089】
(5)ドット形成位置の調整方法(参考例)
(5−1)第1参考例(バンド印刷又はインターレース印刷+画素ずらし)
特許文献1(特開2000−318145号公報)には、ラスタデータの左右に調整画素と呼ばれるダミーの画素データ(ダミーデータ)を付加して、ドットの形成位置を調整する方法が開示されている。
図25は、この調整方法の説明図である。インク滴の吐出が正常な場合のラスタデータにも、左右に所定数のダミーデータが付加されている。そして、調整値が「−1」の場合、すなわち、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出すべき場合、キャリッジ移動方向が左から右ならば(左側の画素データから順に必要になるならば)、左側のダミーデータを1つ減らす。このように調整されたラスタデータに基づいてインクを吐出すれば、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出することができる。
【0090】
ところで、この調整方法では、1画素分の位置ズレを調整するとき、プリンタドライバは、1画素分のダミーデータを付加・削除する演算処理を行う必要がある。一方、1つのアドレスには4画素分の画素データが格納されている(図中の太線参照)。このため、4画素分のダミーデータを付加・削除する処理ならば演算負荷は軽いが、1画素分のダミーデータを付加・削除するような処理では演算負荷が大きくなってしまう。
【0091】
(5−2)第2参考例(バンド印刷又はインターレース印刷+開始位置変更)
図26A及び図26Bは、別の調整方法の説明図である。ここでは、比較説明の都合上、いずれの場合もインク滴が正常に吐出されているものとする。
第2参考例の調整方法では、まず、図25に示すように、ラスタデータの左右に、4画素分(1バイト分)のダミーデータを付加する。または、各パスの画素データの最初に、全ノズルに対して4画素分のダミーデータを付加する。なお、4画素分のダミーデータの付加は、演算の付加が少ない。
このようにダミーデータを付加した画素データをメモリ63(不図示)からダブルバッファ644へ画素データを転送すると、図26Aや図26Bに示す状態になる。
そして、この調整方法では、ダブルバッファ644に開始位置指示部644Aが設けられている。この開始位置指示部644Aは、最初にヘッド41へ転送する画素データを、指定するものである。図26Aでは開始位置指示部644Aは第3領域を指定し、図26Bでは第4領域を指定している。
【0092】
図26Aでは、第3領域の画素データから順に転送が行われる。この結果、2画素分のダミーデータによる2画素分のドット非形成の後、1番の画素データによるインク滴が吐出される。インク滴の吐出が正常な場合、このインク滴は紙上の1番目の画素に着弾し、1番目の画素に1番の画素データに応じたドットが形成される。
図26Bでは、第4領域の画素データから順に転送が行われる。この結果、1画素分のダミーデータによる1画素分のドット非形成の後、1番の画素データによるインク滴が吐出される。すなわち、図26Bの場合には、図26Aの場合と比較して、1画素分早いタイミングで1番の画素データに対応するインク滴が吐出され、1画素分だけキャリッジ移動方向上流側に1番の画素データに応じたドットが形成される。
【0093】
仮に、インク滴の飛翔速度が遅く、正常な場合と比較して1画素分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)にドットが形成される場合(図23B参照)、図26Bのように開始位置が調整されると、結果として1番目の画素に1番の画素データに応じたドットが形成される(図23C参照)。
【0094】
(5−3)比較例(オーバーラップ印刷+開始位置変更)
図27A及び図27Bは、第2参考例の調整方法をオーバーラップ印刷に適用した場合の説明図である。図27Aでは開始位置指示部644Aは第3領域を指定し、図27Bでは第4領域を指定している。
オーバーラップ印刷では、図22に示す通り、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびにタイミング信号のパルス信号が発生され、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに各ノズルからインク滴が吐出され、1/180インチ間隔のドットが形成される。このため、開始位置指示部644Aの指定する領域が第3領域から第4領域に変更されると、ドットの形成位置が1/180インチ(4画素分)だけキャリッジ移動方向上流側に変更される。
つまり、オーバーラップ印刷において第2参考例の調整方法を単に適用しただけでは、1/180インチの単位でしかドットの形成位置を調整できない。
そこで、本実施形態では、以下に説明する調整方法により、1/720インチの単位でドットの形成位置を調整する。
【0095】
(6)本実施形態(オーバーラップ印刷+パス変更)
図28は、本実施形態の調整方法のフロー図である。コンピュータ110は、プリンタドライバに基づいて、S101〜S107の処理を行う。言い換えると、プログラムであるプリンタドライバは、コンピュータ110に、S101〜S107の処理を実行させる。また、プリンタ1のコントローラ60は、メモリ63に記憶されているプログラムに基づいて、S201〜S206の処理を行う。
【0096】
また、図29は、あるパスにおける調整結果の説明図である。図中の「移動方向」の矢印は、キャリッジ31の移動方向を示す。「正常にインク滴が吐出された場合のインク滴着弾画素」の欄の升目は、1/720インチの間隔、すなわち1画素の範囲を示している。また、図中の「着弾可能画素」の欄の丸印は、正常にインク滴が吐出された場合において、インク滴が着弾可能な画素(ドット形成可能な画素)を示している。図中の丸数字は画素データの番号を示しており、丸数字の場所は、正常にインク滴が吐出された場合におけるインク滴の着弾画素を示している。丸数字の横の矢印は着弾位置のずれを示しており、矢印の先は、着弾位置のずれを考慮した実際の着弾画素を示している。図中の「グループ」の欄は、そのパスに必要な画素データを抽出すべきグループを示している(後述のS104で参照する)。例えば、「グループ」の欄に「A」又は「D→A」などとあるパスでは、グループAから画素データが抽出される。また、図中の「開始位置」の欄は、開始位置指示部644Aが指定する開始位置を示している(後述のS204で参照する)。例えば、「開始位置」の欄に「基準」とあるパスでは、開始位置指示部644Aはダブルバッファ644の第3領域を指定し、「+1」とあるパスでは第4領域を指定し、「−1」とあるパスでは第2領域を指定する。
【0097】
なお、図29の調整値「0」及び調整値「−1」の欄と、以下の説明とを比較すれば、図29の意味するところが明らかになる。以下、図28及び図29を用いて、本実施形態の調整方法を説明する。
【0098】
最初に、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリ63に記憶されている調整値テーブルを取得する(S101)。なお、プリンタ1のメモリ63の調整値テーブルを予めコンピュータ110側の記憶装置にコピーしてあれば、プリンタドライバはプリンタ1と通信する必要はない。
次に、プリンタドライバは、各ラスタデータを構成する画素データを、グループA〜グループDに振り分ける(S102)。この処理は既に説明したので、省略する(図18A及び図18B参照)。
【0099】
まず、プリンタドライバは、パス数と調整値とに応じて、4グループの中から1つを選択する(S103)。そして、プリンタドライバは、選択されたグループの画素データから、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、当該パスに必要な画素データを抽出する(S104)。なお、パスに必要な画素データの抽出方法は、既に説明した方法とほぼ同じなので説明を省略し、ここでは、どのグループから画素データを抽出するかについて注目する。
【0100】
例えば、調整値が「0」の場合、パス4の画素データはグループAから抽出され、パス8の画素データはグループBから抽出され、パス12の画素データはグループCから抽出され、パス16の画素データはグループDから抽出される(図19A、図19B及び図20参照)。これに対し、調整値が「−1」の場合、パス4の画素データはグループBから抽出され、パス8の画素データはグループCから抽出され、パス12の画素データはグループDから抽出され、パス16の画素データはグループAから抽出される。このように、本実施形態のプリンタドライバは、調整値に応じて、画素データを抽出すべきグループの順をシフトさせている(図29参照)。
【0101】
次に、プリンタドライバは、抽出された画素データにダミーデータを付加する(S105)。図30は、調整値が「−1」の場合において、ダミーデータを付加した後のパス4の画素データの説明図である。ここでは、全ノズル分に対して4画素分のダミーデータが付加されている。なお、この4画素分のダミーデータの付加は、演算の付加が少ない。また、図20と比較すると、パス4の画素データは、グループAの画素データ(1番、5番、9番…の画素データ)ではなく、グループBの画素データ(2番、6番、10番…の画素データ)から構成されている。
【0102】
プリンタドライバは、上記のS103〜S105の処理を全パスについて行う。これにより、プリンタドライバは、印刷に適した順に画素データを並び替えたことになるので、ラスタライズ処理を終了する(S106でYES)。そして、プリンタドライバは、ラスタライズ処理された画素データを含む印刷データをプリンタ1へ送信する(S107)。
【0103】
プリンタ1のコントローラ60は、コンピュータ110から印刷データを受信した後、印刷データに含まれる画素データをメモリ63へ格納する(S201)。そして、コントローラ60は、調整値を取得する(S202)。調整値の取得先は、プリンタ1のメモリ63に当初から記憶されている調整値テーブルからでも良いし、プリンタドライバが印刷データに調整値を含めていれば印刷データからでも良い。そして、コントローラ60は、給紙ローラ21や搬送ローラ23を回転させて、紙を印刷開始位置へ給紙する(S203)。
そして、コントローラ60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、移動方向に移動するヘッド41の各ノズルからインクを吐出させ、紙にドットを形成するドット形成動作(S205)と、紙を搬送方向に搬送する搬送動作(S203)とを交互に繰り返し(S206でNO)、印刷画像を紙に印刷する。
【0104】
本実施形態では、各パスを開始する前に、コントローラ60は、パス数と調整値とに応じて、ダブルバッファ644の開始位置指示部644Aに開始位置を調整させる(S204)。調整値が「0」の場合、開始位置指示部644Aは、いずれのパスにおいても、基準開始位置である第3領域を指定する。これに対し、例えば調整値が「−1」の場合、開始位置指示部644Aは、パス4、パス8及びパス12では基準開始位置である第3領域を指定するが、パス16では第4領域を指定する。
【0105】
図31A及び図31Bは、調整値が「−1」の場合のドット形成動作の様子の説明図である。ここでは、インク滴の飛翔速度等の影響により、正常なインク滴の着弾位置よりも、1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾するものとする。
図31Aに示すパス4では、正常にインク滴が吐出されれば、紙上の1番目の画素に最初のインク滴が着弾する。但し、インク滴の飛翔速度の影響により、このタイミングで吐出されたインク滴は、紙上の2番目の画素に着弾することになる。一方、本実施形態では、パス4の画素データはグループBから抽出されており、最初に2番の画素データに応じたインク滴が吐出される。このため、パス4において、紙上の2番目の画素に、2番の画素データに応じたドットが形成される。また、他の画素データ(例えば6番の画素データ)に応じたドットも、紙上の対応する画素に形成される。パス8及びパス12でも、パス4と同様に、画素データに応じたドットが、紙上の対応する画素に形成される。
【0106】
図31Bに示すパス16では、開始位置が第3領域(基準)で正常にインク滴が吐出されれば、紙上の4番目の画素に最初のインク滴が着弾する。調整値が「−1」の場合、開始位置が第4領域になるため、正常にインク滴が吐出されれば、紙上の1番目の画素の左隣の画素に、最初のインク滴が着弾する。但し、インク滴の飛翔速度の影響により、このタイミングで吐出されたインク滴は、紙上の1番目の画素に着弾することになる。一方、本実施形態では、パス16の画素データはグループAから抽出されており、最初に1番の画素データに応じたインク滴が吐出される。このため、パス16において、紙上の1番目の画素に、1番の画素データに応じたドットが形成される。また、他の画素データ(例えば5番の画素データ)に応じたドットも、紙上の対応する画素に形成される。
【0107】
なお、以上の説明では、特定のラスタラインにおけるドットの形成に注目しているが、他のラスタラインでも同様の処理が行われている。
【0108】
(7)本実施形態の変形例
上記のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを構成するのに4回のパスを必要としている。そして、上記のオーバーラップ印刷では、4回のパスの際のキャリッジ31の移動方向は、全て同じであった。但し、双方向印刷では、キャリッジ31の移動方向がパスにより異なることがある。
以下、キャリッジ31の移動方向がパスにより異なる場合について説明する。
【0109】
(7−1)第1変形例
図32は、第1変形例の説明図である。この変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス12では前述の実施形態と同様に左から右であるが、パス8及びパス16の際のキャリッジ31の移動方向は、前述の実施形態と異なり、右から左である。
例えば、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾する場合、キャリッジ31が左から右に移動するならば、ドットは右方向に寄って形成される(図29の調整値「−1」の矢印、図23B等を参照)。但し、キャリッジ31が右から左に移動するならば、ドットは左方向に寄って形成される(図32の調整値「−1」のパス8及びパス16の矢印を参照)。
このため、正常にインクが吐出された場合に紙上の2番目の画素にインク滴が着弾するようなパス8の所定タイミングにおいて、仮に前述の実施形態と同様に3番の画素データに応じたインク滴が吐出されると、このインク滴は、紙上の1番目の画素に着弾する。つまり、パス8のこのタイミングでは、3番の画素データではなく、1番の画素データに応じたインク滴を吐出すべきである。すなわち、パス8の画素データは、グループAからではなく、グループCから選択されるべきである。
【0110】
したがって、パスに応じてキャリッジ31の移動方向が異なる場合、プリンタドライバは、前述のS103を実行する際に、パス数と調整値だけではなく、キャリッジ31の移動方向も考慮して、4グループの中から1つを選択する(S103)。例えば調整値「−1」ならば、プリンタドライバは、前述の実施形態ではパス8の画素データをグループCから選択したが(図29の調整値「−1」の「グループ」の欄を参照)、パス8においてキャリッジ31が右から左へ移動する場合(逆方向に移動する場合)、パス8の画素データをグループAから選択する。同様に、プリンタドライバは、パス16の画素データを、グループAからではなく、グループCから選択する。
【0111】
なお、ラスタライズ処理では、ドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。このため、例えばパス4の画素データの中では、紙上の左側に位置する画素に対応する画素データが、紙上の右側に位置する画素に対応する画素データよりも先になるように、並び替えられている(図19Bと同様)。但し、パス8やパス16の画素データの中では、キャリッジ31の移動方向が逆方向なので、紙上の右側に位置する画素に対応する画素データが、紙上の左側に位置する画素データに対応する画素データよりも先になるように、並び替えられる(図33参照)。そして、パス8の画素データがダブルバッファ644に格納されたとき、紙上の右側の画素に対応する画素データがヘッド41へ転送されるようになっている。このように、双方向印刷において往路(キャリッジ31が左から右へ移動するとき)と復路(キャリッジ31が右から左へ移動するとき)とで画素データの並び方を変えることは、通常行われている処理なので、ここでは説明を省略する。
【0112】
また、プリンタ1のコントローラ60は、前述のS204を実行する際に、パス数と調整値だけではなく、キャリッジ31の移動方向も考慮して、ダブルバッファ644の開始位置指示部644Aに開始位置を調整させる(S204)。例えば調整値「−1」ならば、前述の実施形態ではパス16の開始位置は第4領域になるが(図29の調整値「−1」の「開始位置」の欄の「+1」を参照)、パス16においてキャリッジ31が右から左へ移動する場合、開始位置は第3領域になる。
【0113】
(7−2)第2変形例
図34は、第2変形例の説明図である。この第2変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス8では左から右であるが、パス12及びパス16では右から左である。つまり、第1変形例と比較すると、パス8とパス12でのキャリッジ31の移動方向が逆方向である。
この変形例では、調整値「+3」、調整値「+1」、調整値「−1」及び調整値「−3」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、インク滴の着弾位置を厳密に調整を行うことができない。この理由について、調整値「−1」(正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾する場合)の例で説明する。
【0114】
パス4では、キャリッジ31は左から右へ移動する。仮に、正常にインク滴が吐出された場合、パス4では、図34の「着弾可能画素」欄の「パス4」欄の丸印に示される画素にドットを形成することができる。但し、調整値「−1」の場合、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけ右方向に寄ってドットが形成される。つまり、パス4では、正常にインク滴が吐出された場合にパス8でドットが形成される位置に、ドットが形成される。同様に、パス8では、正常にインク滴が吐出された場合にパス12でドットが形成される位置に、ドットが形成される。
【0115】
一方、パス12では、キャリッジ31は右から左へ移動する。仮に、正常にインク滴が吐出された場合、パス12では、図34の「着弾可能画素」欄の「パス12」欄の丸印に示される画素にドットを形成することができる。但し、調整値「−1」の場合、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけ左方向に寄ってドットが形成される。つまり、パス12では、正常なインク滴が吐出された場合にパス8でドットが形成される位置に、ドットが形成される。同様に、パス16では、正常にインク滴が吐出された場合にパス12でドットが形成される位置に、ドットが形成される。
【0116】
このため、いずれのパスでも、正常にインク滴が吐出された場合にパス4及びパス16でドットが形成される位置に、ドットを形成することができない。つまり、調整値「−1」の場合、図34の「着弾可能位置」欄の「パス4」欄及び「パス16」欄の丸印に示される画素に、ドットを形成することができない。このため、調整値「−1」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた厳密な調整を行うことはできない。
【0117】
具体的には、以下の条件が揃うと、調整不可の状況になる。まず、第1の条件は、双方向印刷であることである。単方向印刷では、調整不可にはならない(図29参照)。但し、双方向印刷であっても、第1変形例のように調整不可の状況にならないことがある。つまり、双方向印刷であるだけでなく、次の条件も必要になる。第2の条件は、調整値「0」のときに、2×n画素(nは整数)離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、キャリッジ移動方向が逆方向のパスにそれぞれ割り当てられる場合であって、調整値が「n」である場合である。
【0118】
前述の本実施形態(図29参照)では、第1の条件を満たしていない。また、前述の第1変形例(図32参照)では、第1の条件を満たしているが、調整値「0」のとき、偶数画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データは、同じ移動方向のパスに割り当てられるので、第2の条件を満たしていない。一方、第2変形例(図34参照)では、調整値「0」ならば、例えば1番の画素データと3番の画素データは2画素離れた2つの画素にそれぞれ対応し、1番の画素データは左から右へノズルを移動させるパス4に割り当てられ、3番の画素データは右から左へノズルを移動させるパス12に割り当てられている。このため、第2変形例では、調整値「−1」のとき、調整不可になる。
【0119】
調整不可になる場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた調整処理を行わなくても良い(調整値「0」に応じた処理になる)。但し、例えば調整値「−3」の場合、調整処理を行わないと、ドットの着弾位置ズレが大きいため、画質の劣化が大きい。このため、プリンタドライバ及びプリンタ1は、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行っても良い。
【0120】
(7−3)第3変形例
図35は、第3変形例の説明図である。この第3変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス16では左から右であるが、パス8及びパス12では右から左である。
この第3変形例でも、調整値「+3」、調整値「+1」、調整値「−1」及び調整値「−3」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、インク滴の着弾位置を厳密に調整を行うことができない。この理由は第2変形例と同様なので詳しい説明を省略するが、例えば調整値「−1」の場合、図35の「タイミング信号」欄の「パス12」欄及び「パス16」欄の丸印に示される画素に、ドットを形成することができない。なお、第3変形例でも、前述の第1の条件及び第2の条件のいずれも満たしている。
【0121】
調整不可になる場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた調整処理を行わなくても良い(調整値「0」に応じた処理になる)。但し、例えば調整値「−3」の場合、調整処理を行わないと、ドットの着弾位置ズレが大きいため、画質の劣化が大きい。このため、プリンタドライバ及びプリンタ1は、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行っても良い。
【0122】
(7−4)その他
上記の実施形態等(実施形態及び第1〜第3変形例)は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
上記の実施形態等では、プリンタ1及びコンピュータ110からなる印刷システムを説明した。但し、これに限られるものではなく、プリンタドライバの機能をプリンタ1側に組み込み、プリンタ1側でラスタライズ処理等を行っても良い。この場合、プリンタ1が単体で印刷システムを構成する。
上記の実施形態等では、1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷(M=4のオーバーラップ印刷)について説明した。但し、これに限られるものではなく、M=2やM=6等のオーバーラップ印刷でもよい。
【0123】
(8)まとめ
(8−1)前述の印刷システムは、ヘッド41と、搬送ユニット20と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータ110のCPU及びプリンタ1のコントローラ60から構成される制御部と、を有する。ヘッド41は、複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出する(図6参照)。搬送ユニット20は、紙などの媒体を搬送する。また、制御部は、移動方向に移動するノズルからインク滴を吐出させて移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作(「パス」ともいう、図28のS205参照)と、搬送ユニットに紙を搬送させる搬送動作(S203)とを交互に繰り返し、紙に画像を印刷する。
【0124】
前述の実施形態のオーバーラップ印刷を行う場合、制御部は、180dpiの間隔でドットを形成するパスを繰り返すとともに、各パスで形成されるドットの位置を720dpiだけずらすことにより、720dpiの間隔で並ぶドット列を形成している(図13A〜図13D及び図22参照、)。なお、この場合、各ドット列は、4個のノズルにより形成される。
【0125】
このようなオーバーラップ印刷の際に、制御部は、まず、ラスタデータ(移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データ)を4つのグループに振り分け(図18参照)、各パスに必要な画素データをいずれかのグループからそれぞれ抽出し(図19A及び図19B参照)、各パスにおいてインク滴を吐出させる。
【0126】
ところで、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が、理想通りにはならない。このため、インクの着弾位置がずれ、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。インク滴の着弾位置にずれがあると、印刷画像が劣悪なものになるので、インクの着弾位置を調整することが望ましい。
【0127】
そこで、前述の印刷システムは、調整値(位置情報の一例)を記憶するメモリを備えている。調整値は、画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する紙上の画素の位置との関係を示している。例えば、調整値「−1」の場合、画素データに応じて吐出されるインク敵が形成するドットは、その画素データに対応する紙上の画素の位置に対して、1画素分だけキャリッジ移動方向下流側に位置する。
但し、この調整値に基づいてインク滴の着弾位置を調整するにしても、第1参考例の調整方法では、演算負荷が大きくなることがある。また、オーバーラップ印刷の場合、第2参考例の調整方法では、1/180インチ単位の粗い調整しかできない。
【0128】
そこで、本実施形態では、制御部は、繰り返し行われるパス毎に、調整値に基づいて、4グループのうちのいずれかのグループを割り当てている。例えば、制御部は、パス4、パス8、パス12及びパス16のそれぞれに対し、調整値「0」の場合、それぞれグループA、グループB、グループC、グループDの順に割り当てる。一方、図29における調整値「−1」の場合、制御部は、それぞれグループB、グループC、グループD、グループAの順に割り当てる。また、調整値「−2」の場合、制御部は、それぞれグループC、グループD、グループA、グループBの順に割り当てる。
このように調整値に応じてパスとグループとの対応付けを行うことにより、調整値に応じてダミーデータを付加する演算が必要なくなるので、調整処理の際の演算の負荷を軽減することができる。
【0129】
(8−2)
前述のプリンタのコントローラ60(制御部の一部)には、開始位置指示部644Aが設けられている。この開始位置指示部644Aは、最初にヘッド41へ転送する画素データを、指定するものである。そして、コントローラ60は、調整値(位置情報の一例)に応じて、各パスにおける開始位置指示部644Aの指定する領域を変更している。例えば、調整値「0」の場合、コントローラは、いずれのパスでも開始位置指示部644Aに第3領域を指定させているが、調整値「−1」の場合、コントローラは、パス16において開始位置指示部644Aに第4領域を指定させている(図29、図31A及び図31B参照)。そして、コントローラ60は、開始位置指示部644Aの指定する領域を変更することにより、インク滴の吐出開始タイミングを変更することができる(図27A及び図27B参照)。
このように、調整値に応じて吐出開始タイミングを変更することにより、調整値に応じたダミーデータを負荷する演算が必要なくなるので、調整処理の際の演算の負荷を軽減することができる(なお、図28のS105で付加されるダミーデータは、調整値によらず一定量である)。
【0130】
(8−3)
前述の印刷システムは、プリンタ1と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータ110とを備える。なお、プリンタ1には制御部の一部であるコントローラ60があり、コンピュータ110には制御部の一部であるCPU(不図示)がある。
調整値はプリンタの個体差に応じてプリンタ毎に異なるものであるので、汎用的なプリンタドライバに調整値を組み込むことは難しい。このため、プリンタ1の調整値は、そのプリンタ1のメモリ63に記憶されることが望ましい。一方、印刷データを生成するときにラスタライズ処理を行うため、コンピュータ110は、プリンタ1に応じた調整値が必要になる。
【0131】
そこで、調整処理を行う際に、プリンタドライバ(実際にはコンピュータ110のCPU)は、プリンタ1のメモリ63から調整値を読み出し(図28のS107参照)、調整値に基づいたラスタライズ処理により、各パスに応じて印刷データを生成し(図30参照)、印刷データをプリンタに送信する(図28のS107参照)。これにより、プリンタ1側のコントローラ60は、印刷データをコンピュータ110から受信し、この印刷データに基づいてインク滴を吐出すれば、インク滴の着弾位置を調整することが可能である。
【0132】
(8−4)
プリンタ1のコントローラ60は、印刷データに基づいてインク滴を吐出させる際に、メモリ63から調整値を読み出し、この調整値に基づいて開始位置指示部644Aを制御して、各パスにおけるインク滴の吐出開始タイミングを変更することができる。
【0133】
これにより、調整値に関するデータを含めなくても良いので、印刷データのデータ量を軽減できる。
【0134】
(8−5)
また、プリンタドライバは、調整値に関するデータを印刷データに含めて送信しても良い。この場合、プリンタ1のコントローラ60は、印刷データに含められている調整値に基づいて開始位置指示部644Aを制御して、各パスにおけるインク滴の吐出開始タイミングを変更することができる。
これにより、各パスの画素データを生成するプリンタドライバが、吐出開始タイミングを制御できる。
【0135】
(8−6)
双方向印刷の場合、所定の条件が重なると、調整不可の状況になる(図34及び図35参照)。このような場合、制御部は、調整値に基づかずに、ドット形成動作を行う。
【0136】
(8−7)
特に、調整値「0」ならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向にノズルを移動させるパスにそれぞれ割り当てられている場合であって、調整値が±nの場合、制御部は、調整値に基づかずに、ドット形成動作を行う。
例えば、図34において、1番の画素データと3番の画素データは、調整値「0」ならば2画素離れた2つの画素にそれぞれ対応し、1番の画素データは左から右へノズルを移動させるパス4に割り当てられ、3番の画素データは右から左へノズルを移動させるパス12に割り当てられている。このような状況で調整値が−1の場合、ドットを形成できない画素が存在して調整不可となるので、制御部は調整値に基づかずにドット形成動作を行う。
【0137】
(8−8)
調整不可とされる場合、制御部は、調整値「0」のときと同様に、パスとグループとの対応付けを行う。この場合、調整を行わずに印刷を行うので、調整処理の演算負荷がかからない。また、通常通りの印刷画像をユーザーは得ることができる。
【0138】
(8−9)
また、調整不可とされる場合、制御部は、その調整値に最も近い調整値に応じた処理を行っても良い。例えば図34において、調整値「−3」の場合、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行う。これにより、調整処理を行わない場合と比較して、高い画質の印刷画像をユーザーが得ることができる。
【0139】
(8−10)
また、前述のコンピュータ110側のメモリ(不図示)やプリンタ1側のメモリ63は、1アドレスに4画素分の画素データを格納している。このため、調整値に応じたダミーデータを付加する場合、演算負荷が大きくなることがある。
これに対し、前述の調整方法によれば、調整値に応じたダミーデータを付加する処理はないので(一定量のダミーデータを付加する処理だけなので)、制御部の演算負荷を軽減することができる。
【0140】
(8−11)
前述のヘッド41は、色毎に複数のノズルを備えている(図6参照)。そして、インク吐出タイミングを示すタイミング信号を各色共通に使用することにより、制御部は、各色のノズル群から、共通のタイミングでインク滴を吐出させている(図22参照)。
これにより、色毎にタイミング生成部642を設けずに済むので、装置を簡略化できる。
【符号の説明】
【0141】
1 プリンタ、S 紙、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラ、22 搬送モータ、23 搬送ローラ、
24 プラテン、25 排紙ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモータ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラ、61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリ、
64 ユニット制御回路、642 タイミング生成部、
644 ダブルバッファ、644A 開始位置指示部、
110 コンピュータ、112 ビデオドライバ、
114 アプリケーションプログラム、116 プリンタドライバ、
120 表示装置、130 入力装置、140 記録再生装置、
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク滴を吐出して媒体にドットを形成する印刷システム及び印刷方法、並びに、インク滴を吐出して媒体にドットを形成する印刷装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるインクジェットプリンタでは、移動方向に移動するノズルからインク滴を吐出してドットを形成するドット形成動作と、紙などの媒体を搬送方向に搬送する搬送動作とを交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する。正常にインク滴がノズルから吐出されると、紙上の所定の画素にインク滴が着弾し、紙上の所定の画素にドットが形成される。
【0003】
しかし、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が理想通りにはならず、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。
【0004】
そこで、ラスタデータの左右に調整画素と呼ばれるダミーの画素データ(ダミーデータ)を付加して、ドットの形成位置を調整する方法が行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−318145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この調整方法では、調整量に応じたダミーデータを付加・削除する演算処理が必要になる。しかし、調整量に応じたダミーデータの付加・削除は、演算負荷が大きくなることがある。
そこで、本発明は、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、(E)を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】印刷システム100の構成を説明する図である。
【図2】プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。
【図3】プリンタ1の全体構成のブロック図である。
【図4】プリンタ1の全体構成の概略図である。
【図5】プリンタ1の全体構成の横断面図である。
【図6】ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。
【図7】ヘッドの制御の説明図である。
【図8】図8Aは、1回のパスにおけるヘッド(又はノズル)の位置とドットの形成の様子を示し、図8Bは、次のパスにおけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【図9】図9A及び図9Bは、インターレース印刷の説明図である。
【図10】図10A及び図10Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。
【図11】図11Aは、パス4のドット形成の様子を示し、図11Bは、パス8のドット形成の様子を示す。
【図12】1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷の説明図である。
【図13】図13A〜図13Dは、1つのラスタラインを4つのノズルで形成する場合(M=4)のあるラスタラインのドット形成の様子の説明図である。
【図14】図14Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。図14Bは、ラスタライズ処理の説明図である。
【図15】図15Aは、ラスタライズ処理前の画素データの並び方の説明図である。図15Bは、バンド印刷の場合のラスタライズ処理後の画素データの並び方の説明図である。
【図16】インターレース印刷の場合のラスタライズ処理の説明図である。
【図17】オーバーラップ印刷における、あるパスで必要な画素データの説明図である。
【図18】図18Aは、画素データの振り分け処理の説明図である。図18Bは、振り分け処理の結果の説明図である。
【図19】図19Aは、パス4の画素データの並ぶ順の説明図である。図19Bは、パス8の画素データの並ぶ順の説明図である。
【図20】オーバーラップ印刷のラスタライズ処理後の画素データの説明図である。
【図21】図21Aは、パス4でのドット形成の様子の説明図である。図21Bは、パス5でのドット形成の様子の説明図である。
【図22】各パスにおけるタイミング信号の説明図である。
【図23】図23Aは、正常な場合のドット形成の様子の説明図である。図23Bは、飛翔速度が遅い場合のドット形成の様子の説明図である。図23Cは、ドットの形成位置を調整した様子の説明図である。
【図24】調整値テーブルの説明図である。
【図25】第1参考例の調整方法の説明図である。
【図26】図26A及び図26Bは、第2参考例の調整方法の説明図である。
【図27】図27A及び図27Bは、第2参考例の調整方法をオーバーラップ印刷に適用した場合の説明図である。
【図28】本実施形態の調整方法のフロー図である。
【図29】あるパスにおける調整結果の説明図である。
【図30】ダミーデータを付加した後のパス4の画素データの説明図である。
【図31】図31A及び図31Bは、調整値が「−1」の場合のドット形成動作の様子の説明図である。
【図32】第1変形例の説明図である。
【図33】双方向印刷時の画素データの並び替えの説明図である。
【図34】第2変形例の説明図である。
【図35】第3変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備えることを特徴とする印刷システム。
このような印刷システムによれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0012】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、調整値に応じたダミーデータを付加する演算が必要なくなるので、演算負荷を軽減できる。
【0013】
かかる印刷システムであって、前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、前記メモリは前記印刷装置に設けられており、前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させることが望ましい。これにより、印刷装置は、インク滴の着弾位置を調整することが可能である。
【0014】
かかる印刷システムであって、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる際に、前記メモリから前記位置情報を読み出し、この位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、印刷データに位置情報を含めなくても済む。
【0015】
かかる印刷システムであって、前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することが望ましい。これにより、印刷制御装置が吐出開始タイミングを制御できる。
【0016】
かかる印刷システムであって、前記制御部が双方向印刷を行わせる場合であって、前記位置情報が所定値の場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことが望ましい。また、前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことが好ましい。このような場合、ドットを形成できない画素が存在するためである。
【0017】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記関係に位置ずれのないことを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることが望ましい。これにより、調整処理の演算負荷をなくすことができる。
【0018】
かかる印刷システムであって、前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることが望ましい。これにより、調整処理を行わない場合と比較して、高い画質の印刷画像をユーザーが得ることができる。
【0019】
かかる印刷システムであって、前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶することが望ましい。このような場合、演算負荷が大きくなり易いが、調整値に応じたダミーデータの付加・削除しなければ、演算負荷を抑制できる。
【0020】
かかる印刷システムであって、前記ヘッドは色毎に前記複数のノズルを備え、前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させることが望ましい。これにより、装置を簡略化できる。
【0021】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷方法。
【0022】
このような印刷方法によれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0023】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷装置の調整方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷装置の調整方法。
【0024】
このような調整方法によれば、インク滴の着弾位置ズレの調整の際に、演算負荷を軽減できる。
【0025】
(1)印刷システム
まず、印刷装置を印刷システムとともに説明する。なお、印刷システムとは、印刷装置と、この印刷装置の動作を制御する印刷制御装置とを少なくとも含むシステムのことである。本実施形態の印刷システムは、プリンタ1と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータとを備えている。
【0026】
図1は、印刷システム100の構成を説明する図である。例示した印刷システム100は、印刷装置としてのプリンタ1と、印刷制御装置としてのコンピュータ110とを含んでいる。具体的には、この印刷システム100は、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有している。
【0027】
プリンタ1は、紙、布、フィルム、OHP用紙等の媒体に画像を印刷する。なお、この媒体に関し、以下の説明では、代表的な媒体である紙S(図4を参照。)を例に挙げて説明する。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。そして、プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に出力する。このコンピュータ110には、アプリケーションプログラムやプリンタドライバ等のコンピュータプログラムがインストールされている。
【0028】
(1−1)プリンタドライバ
図2は、プリンタドライバが行う基本的な処理の概略的な説明図である。
コンピュータ110では、コンピュータに搭載されたオペレーティングシステムの下、ビデオドライバ112やアプリケーションプログラム114やプリンタドライバ116などのコンピュータプログラムが動作している。ビデオドライバ112は、アプリケーションプログラム114やプリンタドライバ116からの表示命令に従って、例えばユーザインターフェース等を表示装置120に表示する機能を有する。アプリケーションプログラム114は、例えば、画像編集などを行う機能を有し、画像に関するデータ(画像データ)を作成する。ユーザは、アプリケーションプログラム114のユーザインターフェースを介して、アプリケーションプログラム114により編集した画像を印刷する指示を与えることができる。アプリケーションプログラム114は、印刷の指示を受けると、プリンタドライバ116に画像データを出力する。
【0029】
プリンタドライバ116は、アプリケーションプログラム114から画像データを受け取り、この画像データを印刷データに変換し、印刷データをプリンタに出力する。ここで、印刷データとは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと画素データとを有するデータである。ここで、コマンドデータとは、プリンタに特定の動作の実行を指示するためのデータである。また、画素データとは、印刷される画像(印刷画像)を構成する画素に関するデータであり、例えば、ある画素に対応する紙上の位置(紙上の画素)に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
【0030】
プリンタドライバ116は、アプリケーションプログラム114から出力された画像データを印刷データに変換するため、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・ラスタライズ処理などを行う。以下に、プリンタドライバ116が行う各種の処理について説明する。
【0031】
解像度変換処理は、アプリケーションプログラム114から出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、紙に印刷する際の解像度に変換する処理である。例えば、紙に画像を印刷する際の解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラム114から受け取った画像データを720×720dpiの解像度の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。
【0032】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間により表されるCMYKデータに変換する処理である。なお、CMYKデータは、プリンタが有するインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGB画像データの階調値とCMYK画像データの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)をプリンタドライバ116が参照することによって行われる。この色変換処理により、各画素についてのRGBデータが、インク色に対応するCMYKデータに変換される。なお、色変換処理後のデータは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
【0033】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンタが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理されたデータは、前述のRGBデータと同等の解像度(例えば720×720dpi)を有している。本実施形態では、ハーフトーン処理された画像データは、各画素につき2ビットの画素データから構成される。
【0034】
ラスタライズ処理は、マトリクス状の画像データを、プリンタに転送すべきデータ順に変更する処理である。ラスタライズ処理されたデータは、印刷データに含まれる画素データとして、プリンタに出力される。
【0035】
(1−2)プリンタ
(1−2−1)プリンタの各ユニット
図3は、プリンタ1の全体構成のブロック図である。また、図4は、プリンタ1の全体構成の概略図である。また、図5は、プリンタ1の全体構成の横断面図である。以下、本実施形態のプリンタの基本的な構成について説明する。
【0036】
本実施形態のプリンタ1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0037】
搬送ユニット20は、紙Sを印刷可能な位置に送り込み、印刷時に所定の方向(以下、搬送方向という)に所定の搬送量で紙を搬送させるためのものである。すなわち、搬送ユニット20は、紙を搬送する搬送機構(搬送手段)として機能する。搬送ユニット20は、給紙ローラ21と、搬送モータ22(PFモータとも言う)と、搬送ローラ23と、プラテン24と、排紙ローラ25とを有する。給紙ローラ21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンタ内に給紙するためのローラである。搬送モータ22は、紙を搬送方向に搬送するためのモータである。搬送ローラ23は、給紙ローラ21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラであり、搬送モータ22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラ25は、紙Sをプリンタの外部に排出するローラであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。この排紙ローラ25は、搬送ローラ23と同期して回転する。
【0038】
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモータ32(CRモータとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能である。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。キャリッジモータ32は、キャリッジ31を移動方向に移動させるためのモータである。
【0039】
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ヘッド41は、複数のノズルを有し、各ノズルから断続的にインクを吐出する。このヘッド41は、キャリッジ31に設けられている。そのため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0040】
検出器群50には、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、および光学センサ54等が含まれる。リニア式エンコーダ51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出するためのものである。ロータリー式エンコーダ52は、搬送ローラ23の回転量を検出するためのものである。紙検出センサ53は、印刷される紙の先端の位置を検出するためのものである。光学センサ54は、キャリッジ31に取付けられている。光学センサ54は、発光部から紙に照射された光の反射光を受光部が検出することにより、紙の有無を検出する。
【0041】
コントローラ60は、プリンタの制御を行うための制御ユニット(制御手段)である。コントローラ60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユニット制御回路64とを有する。インターフェース部61は、外部装置であるコンピュータ110とプリンタ1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU62は、プリンタ全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶手段を有する。CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
【0042】
(1−2−2)ヘッド
図6は、ヘッド41の下面におけるノズルの配列を示す説明図である。ヘッド41の下面には、ブラックインクノズル群Kと、シアンインクノズル群Cと、マゼンタインクノズル群Mと、イエローインクノズル群Yが形成されている。各ノズル群は、各色のインクを吐出するための吐出口であるノズルを複数個(本実施形態では180個)備えている。
【0043】
各ノズル群の複数のノズルは、搬送方向に沿って、一定の間隔(ノズルピッチ:k・D)でそれぞれ整列している。ここで、Dは、搬送方向における最小のドットピッチ(つまり、紙Sに形成されるドットの最高解像度での間隔)である。また、kは、1以上の整数である。例えば、ノズルピッチが180dpi(1/180インチ)であって、搬送方向のドットピッチが720dpi(1/720インチ)である場合、k=4である。
【0044】
各ノズル群のノズルは、下流側のノズルほど小さい数の番号が付されている(♯1〜♯180)。つまり、ノズル♯1は、ノズル♯180よりも搬送方向の下流側に位置している。なお、前述の光学センサ54は、紙搬送方向の位置に関して、一番上流側にあるノズル♯180とほぼ同じ位置にある。
各ノズルには、それぞれインクチャンバー(不図示)と、ピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子の駆動によってインクチャンバーが伸縮・膨張し、ノズルからインク滴が吐出される。
【0045】
(1−2−3)ヘッドの制御
図7は、ヘッドの制御の説明図である。ユニット制御回路64は、タイミング生成部642と、ダブルバッファ644とを有する。タイミング生成部642は、リニア式エンコーダ51からの信号に応じて、タイミング信号を生成し、ダブルバッファ644へ出力する。ダブルバッファ644には、画素データを記憶するためのバッファが2つ設けられている。各バッファは、ノズル毎に1バイト分のデータ(4画素分の画素データ)を格納できる。そして、ダブルバッファ644は、タイミング信号を受けるたびに、バッファに格納されている画素データのうち、全ノズルの1画素分の画素データをヘッド41へシリアル転送する。
【0046】
ヘッド41がインクをノズルから吐出する際の動作について説明する。
まず、プリンタドライバが、プリンタ1へ印刷データを送信する。この印刷データには、無数の画素データが含まれている。一つの画素データは、1つの画素のドット形成状況(大ドット・中ドット・小ドット・ドットなし)を示しており、2ビットのデータ量である。プリンタ1が受信した画素データは、プリンタドライバのラスタライズ処理によって、印刷に適した並び順になっており(後述)、プリンタ1は、この並び順に従って画素データをメモリ63に格納する。メモリ63の1つのアドレスには1バイトの情報を格納できるので、1つのアドレスにつき4画素分の画素データが収容される。
ユニット制御回路64は、メモリ63の連続するアドレスに格納されている画素データを、バースト転送によってダブルバッファ644の一方のバッファに格納する。なお、メモリ63の隣接するアドレスには、プリンタドライバのラスタライズ処理によって、隣接するノズルに対応する画素データがそれぞれ格納されている。このため、全ノズルの4画素分の画素データをバースト転送することが可能である。
【0047】
次に、ユニット制御回路64は、キャリッジモータ32を駆動してキャリッジ31を移動方向に移動する。キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに、リニア式エンコーダ51は1周期のパルス信号を出力する。タイミング生成部642は、リニア式エンコーダ51からの信号に応じて、タイミング信号を生成する。
ダブルバッファ644は、最初にタイミング信号を受けると、図中の太線で示す第1領域に格納されている画素データをヘッド41へシリアル転送する。この領域には、全ノズルの1画素分の画素データが格納されている。ヘッド41は、画素データに応じて、各ノズルからインクを吐出(又は不吐出)する。この結果、紙上の最初の画素に、ドットが形成される。
【0048】
ヘッド41からインクが吐出される間もキャリッジ31は移動方向に移動しているので、ダブルバッファ644は所定のタイミング信号を受け続けることになる。そして、次のタイミング信号を受けると、ダブルバッファ644は、第2領域に格納されている画素データをヘッド41へシリアル転送し、ヘッド41は、画素データに応じてインクを吐出する。このようにして、タイミング信号に応じて、ヘッド41から間欠的にインクが吐出される。
ユニット制御回路64は、ダブルバッファ644の一方のバッファへ画素データを転送した後、メモリ63から他方のバッファへ次の画素データを転送する。これにより、ダブルバッファ644は、第4領域の画素データをヘッド41へ転送した後、他方のバッファの第5領域の画素データをヘッド41へ転送することが可能である。そして、第4領域の画素データをヘッド41へ転送した後、ユニット制御回路64は、メモリ63からダブルバッファの第1領域〜第4領域へ次の画素データを転送する。このように、ユニット制御回路64は、ダブルバッファ644の2つのバッファに対して、交互に画素データを転送する。
【0049】
なお、ヘッド41には色毎にノズル群が設けられており、ダブルバッファ644は、ノズル群ごと、すなわち色毎に設けられている。但し、タイミング生成部642は、色毎に設けられている複数のダブルバッファ644に対して、共通のタイミング生成部を生成する。この結果、各色のノズル群から、共通のタイミングでインク滴が吐出されることになる。
【0050】
(2)印刷方法
(2−1)バンド印刷(参考例)
図8A及び図8Bは、バンド印刷の説明図である。図8Aは、1回のパスにおけるヘッド(又はノズル)の位置とドットの形成の様子を示し、図8Bは、次のパスにおけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【0051】
説明の都合上、複数あるノズル群のうちの一つのノズル群のみを示し、ノズル群のノズル数も少なくしている(ここでは8個)。図中の黒丸で示されるノズルは、インクを吐出可能なノズルである。また、説明の便宜上、ヘッド(又はノズル群)が紙に対して移動しているように描かれているが、同図はヘッドと紙との相対的な位置を示すものであって、実際には紙が搬送方向に移動されている。また、説明の都合上、各ノズルは数ドット(図中の黒丸)しか形成していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的にインク滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる。このドットの列をラスタラインともいう。黒丸で示されるドットは、最後のパスで形成されるドットであり、白丸で示されるドットは、それ以前のパスで形成されたドットである。なお、「パス」とは、移動するノズルからインクを吐出して、ドットを形成する動作(ドット形成動作)をいう。各パスは、紙を搬送方向に搬送する動作(搬送動作)と交互に行われる。
「バンド印刷」とは、連続するラスタラインを1回のパスで形成する印刷方法を意味する。つまり、バンド印刷では、1回のパスでノズル長さ分のバンド状の画像片が形成される。そして、各パスの間に行われる搬送動作では、紙がノズル長さ分だけ搬送される。そして、各パスと搬送動作とが交互に繰り返されることにより、バンド状の画像片が搬送方向につなぎ合わされて、印刷画像が形成される。
このバンド印刷では、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチと同じになり、本実施形態では180dpiである。
【0052】
(2−2)インターレース印刷(参考例)
図9A及び図9Bは、インターレース印刷の説明図である。図9Aは、パス1〜パス4におけるヘッド(又はノズル群)の位置とドットの形成の様子を示し、図9Bは、パス5におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
説明の都合上、ここではノズル群のノズル数を12個にしている。なお、図中の白丸で示されるノズルは、インクを吐出不可のノズルである。
【0053】
「インターレース印刷」とは、kが2以上であって、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような印刷方法を意味する。例えば、図中のインターレース印刷では、1回のパスで形成されるラスタラインの間に、3本のラスタラインが挟まれている。
【0054】
インターレース印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。
図中のインターレース印刷では、ノズル群は搬送方向に沿って配列された12個のノズルを有する。ノズル群のノズルピッチkは4なので、インターレース印刷を行うための条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、全てのノズルは用いずに、11個のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯11)を用いる。また、11個のノズルが用いられるため、紙は搬送量11・Dにて搬送される。
このインターレース印刷では、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチよりも小さくすることができ、本実施形態では720dpiである。つまり、前述のバンド印刷よりも高い品質の印刷画像を形成することができる。
【0055】
(2−3)オーバーラップ印刷(2パス)
図10A及び図10Bは、オーバーラップ印刷の説明図である。図10Aは、パス1〜パス4におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示し、図10Bは、パス1〜パス8におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。
【0056】
「オーバーラップ印刷」とは、ラスタラインを複数のノズルで形成する印刷方法を意味する。例えば、図中におけるオーバーラップ印刷では、各ラスタラインは、2つのノズルで形成されている。
【0057】
オーバーラップ印刷では、紙が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、数ドットおきに間欠的にドットを形成する。そして、他のパスにおいて、他のノズルが既に形成されている間欠的なドットを補完するように(ドットの間を埋めるように)ドットを形成することにより、1つラスタラインが複数のノズルにより形成される。このようにM回のパスにて1つのラスタラインが形成される場合、「オーバーラップ数M」と定義する。図中のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインが2つのノズルにより形成されているので、オーバーラップ数M=2になる。
【0058】
このオーバーラップ印刷では、パス1で各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス2で各ノズルが偶数画素にドットを形成し、パス3で各ノズルが奇数画素にドットを形成し、パス4で各ノズルが偶数画素にドットを形成する。つまり、前半の4回のパスでは、奇数画素−偶数画素−奇数画素−偶数画素の順にドットが形成される。そして、後半の4回のパス(パス5〜パス8)では、前半の4回のパスと逆の順にドットが形成され、偶数画素−奇数画素−偶数画素−奇数画素の順にドットが形成される。なお、パス9以降のドットの形成順は、パス1からのドット形成順と同様である。
【0059】
オーバーラップ印刷において、搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)N/Mが整数であること、(2)N/Mはkと互いに素の関係にあること、(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定されること、が条件となる。
図中のオーバーラップ印刷では、ノズル群は搬送方向に沿って配列された12個のノズルを有する。しかし、ノズル群のノズルピッチkは4なので、オーバーラップ印刷を行うための条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルを用いることはできない。そこで、12個のノズルのうち、10個のノズルを用いてオーバーラップ印刷が行われる。また、10個のノズルが用いられるため、紙は搬送量5・Dにて搬送される。
【0060】
このオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを複数のノズルで形成するので、ノズルによりドット形状にバラツキがあっても、印刷画像の劣化を目立たなくさせることができる(バンド印刷やインターレース印刷では、1つのラスタラインを同じノズルで形成するため、ノズルによりドット形状にバラツキがあると、印刷画像に縞(移動方向に沿う縞)が目立ってしまう)。また、このオーバーラップ印刷でも、搬送方向のドット間隔Dは、ノズルピッチよりも小さくすることができ、本実施形態では720dpiである。つまり、前述のインターレース印刷と同様に、前述のバンド印刷よりも高い品質の印刷画像を形成することができる。
【0061】
図11A及び図11Bは、図10Bにおいて矢印で示されたラスタラインのドット形成の様子の説明図である。図11Aは、パス4のドット形成の様子を示し、図11Bは、パス8のドット形成の様子を示す。
このラスタラインでは、パス4でノズル♯6が1ドットおきに間欠的にドットを形成し、何回かの搬送動作とパスとを経た後、パス8でノズル♯1がドットを補完するようにドットを形成する。なお、別のラスタラインでは、別の組み合わせの2つのノズル(例えば、ノズル♯7とノズル♯2)により形成される。
【0062】
(2−4)オーバーラップ印刷(4パス)
上記のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを2つのノズルで形成している。しかし、1つのラスタラインを2以上のノズルで形成しても良い。
図12は、1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷の説明図である。同図は、パス1〜パス16におけるヘッドの位置とドットの形成の様子を示している。但し、説明の省略のため、ヘッドの一部のみを示している。
【0063】
1つのラスタラインを4個のノズルで形成する場合、オーバーラップ印刷の条件を満たすため、全てのノズル(12個)を用いてドット形成動作が行われ、搬送量3・Dにて搬送動作が行われる。また、各ノズルは、ドット形成動作において、4画素に1画素の割合でドットを形成する。
【0064】
図13A〜図13Dは、1つのラスタラインを4つのノズルで形成する場合(M=4)のあるラスタラインのドット形成の様子の説明図である。
このラスタラインでは、パス4でノズル♯10が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス8でノズル♯7が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス12でノズル♯4が3画素分の間を空けて間欠的にドットを形成し、パス16でノズル♯1が残りの画素を補完するようにドットを形成する。なお、別のラスタラインでは、別の組み合わせの4つのノズル(例えば、ノズル♯11、ノズル♯8、ノズル♯5及びノズル♯2)により形成される。
【0065】
(3)各印刷方法に応じた画素データの並び方
(3−1)ラスタライズ処理前の画像データの並び方
図14Aは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ハーフトーン処理後の画像データは、各画素につき2ビットの画素データから構成されている。このため、1アドレスにつき1バイトの情報を格納するメモリに画像データを格納すると、1アドレスにつき4画素分の画素データが収容される。
【0066】
図14Bは、ラスタライズ処理の説明図である。なお、「ラスタデータ」とは、ラスタラインに対応する画素データ、すなわち、移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データのことである。また、例えば「パス1の画素データ」とは、パス1に必要な画素データである。
【0067】
ラスタライズ処理前の画素データは、ラスタラインの順にメモリに格納されている。言い換えると、メモリの連続するアドレスには、ラスタラインの順に画素データが格納されている。そして、ラスタライズ処理後の画素データは、パス順にメモリに格納されている。すなわち、ラスタライズ処理後の画素データは、印刷に必要な画素データの順にメモリに格納されている。
但し、印刷方式に応じて各パスで必要な画素データが異なるので、ラスタライズ処理後の画素データの並び方も印刷方式に応じて異なる。そこで、以下に、印刷方式に応じたラスタライズ処理について説明する。
【0068】
(3−2)バンド印刷の場合(参考例)
図15Aは、ラスタライズ処理前の画素データの並び方の説明図である。図15Bは、バンド印刷の場合のラスタライズ処理後の画素データの並び方の説明図である。ラスタライズ処理前の画像データは、図15Aに示す通り、ラスタラインの順にメモリ(コンピュータ側のメモリ)に格納されている。
【0069】
ところで、図15Aに示すように左から右へヘッドが移動してバンド印刷が行われる場合、最初の画素にドットを形成するためには、図中の太線で示す画素データが最初に必要になる。しかし、太線で示す各画素データは、メモリの連続するアドレスに格納されていない。また、最初の画素の画素データだけでなく、ノズル♯1〜ノズル♯8がインクを吐出する際に同時に必要となる画素データ(例えば、1番目〜8番目の各ラスタラインにおける左から5番目の画素データ)も、メモリの連続するアドレスに格納されていない。
そこで、プリンタドライバは、バンド印刷におけるラスタライズ処理として、図15Aのように並ぶ画素データを、図15Bに示すように並び替える。これにより、太線で示す画素データは、メモリの連続するアドレスに格納される。また、最初の画素の画素データだけでなく、ノズル♯1〜ノズル♯8がインクを吐出する際に同時に必要となる画素データも、メモリの連続するアドレスに格納される。また、バンド印刷においてドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。
なお、このように並び替えられた画素データは、印刷データとしてプリンタ1に送信され、同様の並び順でプリンタ1のメモリ63に格納される。そして、メモリ63の連続するアドレスの8バイト分の画素データをダブルバッファ644へバースト転送すれば、ユニット制御回路64は、各ノズルに4画素分のドットを形成させることができる。
【0070】
(3−3)インターレース印刷の場合(参考例)
図16は、インターレース印刷の場合のラスタライズ処理の説明図である。ラスタライズ処理前の画像データは、図15Aの場合と同様に、ラスタラインの順にメモリに格納されている。
インターレース印刷では、1回のパスで記録されるラスタラインの間に、記録されないラスタラインが挟まれている。このため、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、各ノズルが形成するラスタラインの画素データ(ラスタデータ)を、図16に示す順に並び替える。これにより、インターレース印刷においてドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。
【0071】
(3−4)オーバーラップ印刷の場合
図17は、オーバーラップ印刷における、あるパスで必要な画素データの説明図である。ここではオーバーラップ数M=4のオーバーラップ印刷(1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷)について説明する。なお、図中の丸印は、画素毎に対応する2ビットの画素データを示している。丸印内の数字は、その画素データが対応する画素の位置を示している。また、図中の黒丸で示す画素データは、そのパスで必要となる画素データである。
【0072】
既に説明した通り、ハーフトーン処理後において1アドレスに格納される4画素分の画素データは、移動方向に並ぶ4画素に対応している。前述のバンド印刷やインターレース印刷では、1つのラスタラインを1個のノズルで形成しているため、移動方向に並ぶ4画素には同じパスで連続してドットが形成されるので、ハーフトーン処理後の1アドレスに格納されている4画素分の画素データは、並び替える必要はなく、ラスタライズ処理後もそのままの状態である。
【0073】
一方、オーバーラップ印刷では、移動方向に並ぶ4画素には、同じパスでドットが形成されない(図13A及び図13B参照)。このため、あるパスにおいて、1アドレスに格納される4画素分の画素データのうちの一部しか必要とされない。例えば、あるパスにおいて、図中の太線で示す4画素分の画素データのうちの1番の画素データが必要になる場合、1番目の画素の次にドットが形成される画素は5番目の画素なので、1番の画素データと同じアドレスに格納されている2〜4番の画素データは必要ではない。にもかかわらず、仮に図中の太線で示す4画素分の画素データが同じアドレスに格納されるような印刷データを送信すると、プリンタ1のメモリ63からダブルバッファ644へ画素データをバースト転送する際に、1番目の画素データとともに2〜4番目の画素データがダブルバッファに格納され、2〜4番目の画素データに応じたインク滴がヘッドから吐出されてしまう。
【0074】
このため、オーバーラップ印刷のラスタライズ処理として、以下に説明するような処理が行われる。
【0075】
図18Aは、画素データの振り分け処理の説明図である。図には、あるラスタラインの画素データ(ラスタデータ)が示されている。プリンタドライバは、各ラスタデータを構成する画素データを、4グループ(グループA〜グループD)に振り分ける。プリンタドライバは、画素データをグループA→B→C→Dの順に振り分ける。この結果、n番の画素データは、nを4で割ったときの余りをaとすると、a=1ならばグループA、a=2ならばグループB、a=3ならばグループC、a=0ならばグループDに振り分けられる。
図18Bは、振り分け処理の結果の説明図である。各ラスタデータに対する振り分け処理の結果、各グループは、移動方向に画素データを間引いたようなラスタデータから構成されている。また、各グループには、画素データを間引いたようなラスタデータが、ラスタ順に並んでいる。
【0076】
図19Aは、パス4の画素データの並ぶ順の説明図である。図19Bは、パス8の画素データの並ぶ順の説明図である。なお、パス4のノズル♯10及びパス8のノズル♯7は、図12、図13A〜図13Dに示すように、同じラスタラインのドットを形成する。
【0077】
オーバーラップ印刷では、パス4の画素データはグループAから抽出され、パス8の画素データはグループBから抽出されている。なお、図示していないが、パス12の画素データはグループCから抽出され、パス16の画素データはグループDから抽出される。このように、オーバーラップ印刷では、各パスで形成するドットの位置に応じて、各パスの画素データを抽出するグループを変えている。
なお、各グループの画素データの中から、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、各ノズルが形成するラスタラインの画素データを抽出する処理は、前述のインターレース印刷におけるラスタライズ処理とほぼ同じである。
【0078】
図20は、オーバーラップ印刷のラスタライズ処理後の画素データの説明図である。ラスタライズ処理の結果、画素データはパス順に並び替えられ、各パスの画素データは、印刷に必要な画素データの順にメモリに格納されている(図20参照)。ここでは、パス4の最初の画素データ(1番の画素データ)と、パス8の最初の画素データ(2番の画素データ)は、同じような状態でメモリに格納されている。
【0079】
図21Aは、パス4でのドット形成の様子の説明図である。図21Bは、パス5でのドット形成の様子の説明図である。図22は、各パスにおけるタイミング信号の説明図である。オーバーラップ印刷では、パスに応じて、タイミング生成部642が生成するタイミング信号が異なる。
【0080】
図22に示すように、タイミング生成部642は、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに、パルス信号を発生する。このため、各パスにおいて、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに各ノズルからインク滴が吐出され、1/180インチ間隔のドットが形成される。
【0081】
図21Aの太線で示す画素データと図21Bの太線で示す画素データとを比較して理解できる通り、パス4のときにダブルバッファ644に格納される最初の画素データ(1番の画素データ)の状態と、パス8のときにダブルバッファ644に格納される最初の画素データ(2番の画素データ)の状態は、同じ状態になる。但し、図22に示すように、パス8のタイミング信号は、パス4のタイミング信号よりも、1/720インチ分だけ遅れている。この結果、パス8において最初にインク滴を吐出する位置が、パス4において最初にインク滴を吐出する位置よりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。この結果、パス8において最初に形成されるドットは、パス4において最初に形成されるドットよりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。つまり、1番の画素データにより形成されたドットと、2番の画素データにより形成されたドットとの間隔が、720dpiになる。他の画素も同様に、パス8で形成されるドットは、パス4で形成されるドットよりも、1/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)になる。
【0082】
なお、パス12で形成されるドットは、図22のタイミング信号から理解できる通り、パス4で形成されるドットよりも2/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側になる。また、パス16で形成されるドットは、パス4で形成されるドットよりも3/720インチ分だけキャリッジ移動方向下流側になる。この結果、このラスタラインには、720dpi間隔のドットの列が形成されることになる。
【0083】
(4)着弾位置ズレについて
(4−1)着弾位置のズレ
上記の説明は、インク滴の着弾位置にズレがないことを前提としている。このため、上記の説明では、ある画素データに基づいて吐出されたインク滴は、その画素データに対応する紙上の仮想的な画素に正確に着弾し、その画素の位置にドットを形成している。
【0084】
しかし、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が、理想通りにはならない。このため、インクの着弾位置がずれ、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。
【0085】
図23Aは、正常な場合のドット形成の様子の説明図である。図23Bは、飛翔速度が遅い場合のドット形成の様子の説明図である。
図23Aでは、所定のタイミングで5番の画素データに応じてインク滴が吐出され、そのインク滴は紙上の5番目の画素に着弾し、5番目の画素に5番の画素データに応じたドットが形成される。一方、図23Bでは、同じタイミングで同じ画素データに応じてインク滴が吐出されるが、インク滴の飛翔速度が遅いため、紙に着弾するまでの時間がかかり、正常な場合よりもキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)にドットが形成される。このため、インク滴の飛翔速度が遅い場合、5番の画素データに応じたドットが、例えば紙上の6番目の画素に着弾してしまう。このように、本来形成すべき位置にドットが形成できないと、印刷画像の画質が低下する原因になる。
【0086】
(4−2)着弾位置の調整
図23Cは、ドットの形成位置を調整した様子の説明図である。このように、早いタイミングで5番の画素データに応じたインク滴が吐出されれば、インク滴の飛翔速度が遅くても、紙上の5番目の画素に、5番の画素データに応じたドットが形成される。
【0087】
どのくらい早いタイミング(又は遅いタイミング)でインク滴を吐出すべきかは、個々のプリンタ毎に異なる。また、インク滴の飛翔速度はインクの粘度の影響を受けるが、インクの粘度はインクの色によって異なる。
そこで、本実施形態では、プリンタ1のメモリ63に、図24に示すような調整値テーブルを記憶している。この調整値テーブルは、調整値を各ノズル群に対応付けたものであり、プリンタの個体差に応じてプリンタ毎に異なるものである。調整値が「−1」の場合、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出すべきであることを示している。調整値が「+1」の場合、正常な場合よりも1画素分遅いタイミングでインク滴を吐出すべきであることを示している。つまり、図23Cの場合、調整値「−1」による調整が行われていることになる。
【0088】
次に、どのようにして調整値に応じたタイミングでインク滴を吐出するかを説明する。本実施形態の調整方法を理解するために、まず参考例の調整方法について説明する。
【0089】
(5)ドット形成位置の調整方法(参考例)
(5−1)第1参考例(バンド印刷又はインターレース印刷+画素ずらし)
特許文献1(特開2000−318145号公報)には、ラスタデータの左右に調整画素と呼ばれるダミーの画素データ(ダミーデータ)を付加して、ドットの形成位置を調整する方法が開示されている。
図25は、この調整方法の説明図である。インク滴の吐出が正常な場合のラスタデータにも、左右に所定数のダミーデータが付加されている。そして、調整値が「−1」の場合、すなわち、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出すべき場合、キャリッジ移動方向が左から右ならば(左側の画素データから順に必要になるならば)、左側のダミーデータを1つ減らす。このように調整されたラスタデータに基づいてインクを吐出すれば、正常な場合よりも1画素分早いタイミングでインク滴を吐出することができる。
【0090】
ところで、この調整方法では、1画素分の位置ズレを調整するとき、プリンタドライバは、1画素分のダミーデータを付加・削除する演算処理を行う必要がある。一方、1つのアドレスには4画素分の画素データが格納されている(図中の太線参照)。このため、4画素分のダミーデータを付加・削除する処理ならば演算負荷は軽いが、1画素分のダミーデータを付加・削除するような処理では演算負荷が大きくなってしまう。
【0091】
(5−2)第2参考例(バンド印刷又はインターレース印刷+開始位置変更)
図26A及び図26Bは、別の調整方法の説明図である。ここでは、比較説明の都合上、いずれの場合もインク滴が正常に吐出されているものとする。
第2参考例の調整方法では、まず、図25に示すように、ラスタデータの左右に、4画素分(1バイト分)のダミーデータを付加する。または、各パスの画素データの最初に、全ノズルに対して4画素分のダミーデータを付加する。なお、4画素分のダミーデータの付加は、演算の付加が少ない。
このようにダミーデータを付加した画素データをメモリ63(不図示)からダブルバッファ644へ画素データを転送すると、図26Aや図26Bに示す状態になる。
そして、この調整方法では、ダブルバッファ644に開始位置指示部644Aが設けられている。この開始位置指示部644Aは、最初にヘッド41へ転送する画素データを、指定するものである。図26Aでは開始位置指示部644Aは第3領域を指定し、図26Bでは第4領域を指定している。
【0092】
図26Aでは、第3領域の画素データから順に転送が行われる。この結果、2画素分のダミーデータによる2画素分のドット非形成の後、1番の画素データによるインク滴が吐出される。インク滴の吐出が正常な場合、このインク滴は紙上の1番目の画素に着弾し、1番目の画素に1番の画素データに応じたドットが形成される。
図26Bでは、第4領域の画素データから順に転送が行われる。この結果、1画素分のダミーデータによる1画素分のドット非形成の後、1番の画素データによるインク滴が吐出される。すなわち、図26Bの場合には、図26Aの場合と比較して、1画素分早いタイミングで1番の画素データに対応するインク滴が吐出され、1画素分だけキャリッジ移動方向上流側に1番の画素データに応じたドットが形成される。
【0093】
仮に、インク滴の飛翔速度が遅く、正常な場合と比較して1画素分だけキャリッジ移動方向下流側(図中の右側)にドットが形成される場合(図23B参照)、図26Bのように開始位置が調整されると、結果として1番目の画素に1番の画素データに応じたドットが形成される(図23C参照)。
【0094】
(5−3)比較例(オーバーラップ印刷+開始位置変更)
図27A及び図27Bは、第2参考例の調整方法をオーバーラップ印刷に適用した場合の説明図である。図27Aでは開始位置指示部644Aは第3領域を指定し、図27Bでは第4領域を指定している。
オーバーラップ印刷では、図22に示す通り、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびにタイミング信号のパルス信号が発生され、キャリッジ31が1/180インチ移動するたびに各ノズルからインク滴が吐出され、1/180インチ間隔のドットが形成される。このため、開始位置指示部644Aの指定する領域が第3領域から第4領域に変更されると、ドットの形成位置が1/180インチ(4画素分)だけキャリッジ移動方向上流側に変更される。
つまり、オーバーラップ印刷において第2参考例の調整方法を単に適用しただけでは、1/180インチの単位でしかドットの形成位置を調整できない。
そこで、本実施形態では、以下に説明する調整方法により、1/720インチの単位でドットの形成位置を調整する。
【0095】
(6)本実施形態(オーバーラップ印刷+パス変更)
図28は、本実施形態の調整方法のフロー図である。コンピュータ110は、プリンタドライバに基づいて、S101〜S107の処理を行う。言い換えると、プログラムであるプリンタドライバは、コンピュータ110に、S101〜S107の処理を実行させる。また、プリンタ1のコントローラ60は、メモリ63に記憶されているプログラムに基づいて、S201〜S206の処理を行う。
【0096】
また、図29は、あるパスにおける調整結果の説明図である。図中の「移動方向」の矢印は、キャリッジ31の移動方向を示す。「正常にインク滴が吐出された場合のインク滴着弾画素」の欄の升目は、1/720インチの間隔、すなわち1画素の範囲を示している。また、図中の「着弾可能画素」の欄の丸印は、正常にインク滴が吐出された場合において、インク滴が着弾可能な画素(ドット形成可能な画素)を示している。図中の丸数字は画素データの番号を示しており、丸数字の場所は、正常にインク滴が吐出された場合におけるインク滴の着弾画素を示している。丸数字の横の矢印は着弾位置のずれを示しており、矢印の先は、着弾位置のずれを考慮した実際の着弾画素を示している。図中の「グループ」の欄は、そのパスに必要な画素データを抽出すべきグループを示している(後述のS104で参照する)。例えば、「グループ」の欄に「A」又は「D→A」などとあるパスでは、グループAから画素データが抽出される。また、図中の「開始位置」の欄は、開始位置指示部644Aが指定する開始位置を示している(後述のS204で参照する)。例えば、「開始位置」の欄に「基準」とあるパスでは、開始位置指示部644Aはダブルバッファ644の第3領域を指定し、「+1」とあるパスでは第4領域を指定し、「−1」とあるパスでは第2領域を指定する。
【0097】
なお、図29の調整値「0」及び調整値「−1」の欄と、以下の説明とを比較すれば、図29の意味するところが明らかになる。以下、図28及び図29を用いて、本実施形態の調整方法を説明する。
【0098】
最初に、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリ63に記憶されている調整値テーブルを取得する(S101)。なお、プリンタ1のメモリ63の調整値テーブルを予めコンピュータ110側の記憶装置にコピーしてあれば、プリンタドライバはプリンタ1と通信する必要はない。
次に、プリンタドライバは、各ラスタデータを構成する画素データを、グループA〜グループDに振り分ける(S102)。この処理は既に説明したので、省略する(図18A及び図18B参照)。
【0099】
まず、プリンタドライバは、パス数と調整値とに応じて、4グループの中から1つを選択する(S103)。そして、プリンタドライバは、選択されたグループの画素データから、ノズル配列とラスタラインとの対応を考慮して、当該パスに必要な画素データを抽出する(S104)。なお、パスに必要な画素データの抽出方法は、既に説明した方法とほぼ同じなので説明を省略し、ここでは、どのグループから画素データを抽出するかについて注目する。
【0100】
例えば、調整値が「0」の場合、パス4の画素データはグループAから抽出され、パス8の画素データはグループBから抽出され、パス12の画素データはグループCから抽出され、パス16の画素データはグループDから抽出される(図19A、図19B及び図20参照)。これに対し、調整値が「−1」の場合、パス4の画素データはグループBから抽出され、パス8の画素データはグループCから抽出され、パス12の画素データはグループDから抽出され、パス16の画素データはグループAから抽出される。このように、本実施形態のプリンタドライバは、調整値に応じて、画素データを抽出すべきグループの順をシフトさせている(図29参照)。
【0101】
次に、プリンタドライバは、抽出された画素データにダミーデータを付加する(S105)。図30は、調整値が「−1」の場合において、ダミーデータを付加した後のパス4の画素データの説明図である。ここでは、全ノズル分に対して4画素分のダミーデータが付加されている。なお、この4画素分のダミーデータの付加は、演算の付加が少ない。また、図20と比較すると、パス4の画素データは、グループAの画素データ(1番、5番、9番…の画素データ)ではなく、グループBの画素データ(2番、6番、10番…の画素データ)から構成されている。
【0102】
プリンタドライバは、上記のS103〜S105の処理を全パスについて行う。これにより、プリンタドライバは、印刷に適した順に画素データを並び替えたことになるので、ラスタライズ処理を終了する(S106でYES)。そして、プリンタドライバは、ラスタライズ処理された画素データを含む印刷データをプリンタ1へ送信する(S107)。
【0103】
プリンタ1のコントローラ60は、コンピュータ110から印刷データを受信した後、印刷データに含まれる画素データをメモリ63へ格納する(S201)。そして、コントローラ60は、調整値を取得する(S202)。調整値の取得先は、プリンタ1のメモリ63に当初から記憶されている調整値テーブルからでも良いし、プリンタドライバが印刷データに調整値を含めていれば印刷データからでも良い。そして、コントローラ60は、給紙ローラ21や搬送ローラ23を回転させて、紙を印刷開始位置へ給紙する(S203)。
そして、コントローラ60は、キャリッジ31を移動方向に移動させ、移動方向に移動するヘッド41の各ノズルからインクを吐出させ、紙にドットを形成するドット形成動作(S205)と、紙を搬送方向に搬送する搬送動作(S203)とを交互に繰り返し(S206でNO)、印刷画像を紙に印刷する。
【0104】
本実施形態では、各パスを開始する前に、コントローラ60は、パス数と調整値とに応じて、ダブルバッファ644の開始位置指示部644Aに開始位置を調整させる(S204)。調整値が「0」の場合、開始位置指示部644Aは、いずれのパスにおいても、基準開始位置である第3領域を指定する。これに対し、例えば調整値が「−1」の場合、開始位置指示部644Aは、パス4、パス8及びパス12では基準開始位置である第3領域を指定するが、パス16では第4領域を指定する。
【0105】
図31A及び図31Bは、調整値が「−1」の場合のドット形成動作の様子の説明図である。ここでは、インク滴の飛翔速度等の影響により、正常なインク滴の着弾位置よりも、1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾するものとする。
図31Aに示すパス4では、正常にインク滴が吐出されれば、紙上の1番目の画素に最初のインク滴が着弾する。但し、インク滴の飛翔速度の影響により、このタイミングで吐出されたインク滴は、紙上の2番目の画素に着弾することになる。一方、本実施形態では、パス4の画素データはグループBから抽出されており、最初に2番の画素データに応じたインク滴が吐出される。このため、パス4において、紙上の2番目の画素に、2番の画素データに応じたドットが形成される。また、他の画素データ(例えば6番の画素データ)に応じたドットも、紙上の対応する画素に形成される。パス8及びパス12でも、パス4と同様に、画素データに応じたドットが、紙上の対応する画素に形成される。
【0106】
図31Bに示すパス16では、開始位置が第3領域(基準)で正常にインク滴が吐出されれば、紙上の4番目の画素に最初のインク滴が着弾する。調整値が「−1」の場合、開始位置が第4領域になるため、正常にインク滴が吐出されれば、紙上の1番目の画素の左隣の画素に、最初のインク滴が着弾する。但し、インク滴の飛翔速度の影響により、このタイミングで吐出されたインク滴は、紙上の1番目の画素に着弾することになる。一方、本実施形態では、パス16の画素データはグループAから抽出されており、最初に1番の画素データに応じたインク滴が吐出される。このため、パス16において、紙上の1番目の画素に、1番の画素データに応じたドットが形成される。また、他の画素データ(例えば5番の画素データ)に応じたドットも、紙上の対応する画素に形成される。
【0107】
なお、以上の説明では、特定のラスタラインにおけるドットの形成に注目しているが、他のラスタラインでも同様の処理が行われている。
【0108】
(7)本実施形態の変形例
上記のオーバーラップ印刷では、1つのラスタラインを構成するのに4回のパスを必要としている。そして、上記のオーバーラップ印刷では、4回のパスの際のキャリッジ31の移動方向は、全て同じであった。但し、双方向印刷では、キャリッジ31の移動方向がパスにより異なることがある。
以下、キャリッジ31の移動方向がパスにより異なる場合について説明する。
【0109】
(7−1)第1変形例
図32は、第1変形例の説明図である。この変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス12では前述の実施形態と同様に左から右であるが、パス8及びパス16の際のキャリッジ31の移動方向は、前述の実施形態と異なり、右から左である。
例えば、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾する場合、キャリッジ31が左から右に移動するならば、ドットは右方向に寄って形成される(図29の調整値「−1」の矢印、図23B等を参照)。但し、キャリッジ31が右から左に移動するならば、ドットは左方向に寄って形成される(図32の調整値「−1」のパス8及びパス16の矢印を参照)。
このため、正常にインクが吐出された場合に紙上の2番目の画素にインク滴が着弾するようなパス8の所定タイミングにおいて、仮に前述の実施形態と同様に3番の画素データに応じたインク滴が吐出されると、このインク滴は、紙上の1番目の画素に着弾する。つまり、パス8のこのタイミングでは、3番の画素データではなく、1番の画素データに応じたインク滴を吐出すべきである。すなわち、パス8の画素データは、グループAからではなく、グループCから選択されるべきである。
【0110】
したがって、パスに応じてキャリッジ31の移動方向が異なる場合、プリンタドライバは、前述のS103を実行する際に、パス数と調整値だけではなく、キャリッジ31の移動方向も考慮して、4グループの中から1つを選択する(S103)。例えば調整値「−1」ならば、プリンタドライバは、前述の実施形態ではパス8の画素データをグループCから選択したが(図29の調整値「−1」の「グループ」の欄を参照)、パス8においてキャリッジ31が右から左へ移動する場合(逆方向に移動する場合)、パス8の画素データをグループAから選択する。同様に、プリンタドライバは、パス16の画素データを、グループAからではなく、グループCから選択する。
【0111】
なお、ラスタライズ処理では、ドットが形成される画素の順に、画素データが並び替えられる。このため、例えばパス4の画素データの中では、紙上の左側に位置する画素に対応する画素データが、紙上の右側に位置する画素に対応する画素データよりも先になるように、並び替えられている(図19Bと同様)。但し、パス8やパス16の画素データの中では、キャリッジ31の移動方向が逆方向なので、紙上の右側に位置する画素に対応する画素データが、紙上の左側に位置する画素データに対応する画素データよりも先になるように、並び替えられる(図33参照)。そして、パス8の画素データがダブルバッファ644に格納されたとき、紙上の右側の画素に対応する画素データがヘッド41へ転送されるようになっている。このように、双方向印刷において往路(キャリッジ31が左から右へ移動するとき)と復路(キャリッジ31が右から左へ移動するとき)とで画素データの並び方を変えることは、通常行われている処理なので、ここでは説明を省略する。
【0112】
また、プリンタ1のコントローラ60は、前述のS204を実行する際に、パス数と調整値だけではなく、キャリッジ31の移動方向も考慮して、ダブルバッファ644の開始位置指示部644Aに開始位置を調整させる(S204)。例えば調整値「−1」ならば、前述の実施形態ではパス16の開始位置は第4領域になるが(図29の調整値「−1」の「開始位置」の欄の「+1」を参照)、パス16においてキャリッジ31が右から左へ移動する場合、開始位置は第3領域になる。
【0113】
(7−2)第2変形例
図34は、第2変形例の説明図である。この第2変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス8では左から右であるが、パス12及びパス16では右から左である。つまり、第1変形例と比較すると、パス8とパス12でのキャリッジ31の移動方向が逆方向である。
この変形例では、調整値「+3」、調整値「+1」、調整値「−1」及び調整値「−3」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、インク滴の着弾位置を厳密に調整を行うことができない。この理由について、調整値「−1」(正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけキャリッジ移動方向下流側にインク滴が着弾する場合)の例で説明する。
【0114】
パス4では、キャリッジ31は左から右へ移動する。仮に、正常にインク滴が吐出された場合、パス4では、図34の「着弾可能画素」欄の「パス4」欄の丸印に示される画素にドットを形成することができる。但し、調整値「−1」の場合、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけ右方向に寄ってドットが形成される。つまり、パス4では、正常にインク滴が吐出された場合にパス8でドットが形成される位置に、ドットが形成される。同様に、パス8では、正常にインク滴が吐出された場合にパス12でドットが形成される位置に、ドットが形成される。
【0115】
一方、パス12では、キャリッジ31は右から左へ移動する。仮に、正常にインク滴が吐出された場合、パス12では、図34の「着弾可能画素」欄の「パス12」欄の丸印に示される画素にドットを形成することができる。但し、調整値「−1」の場合、正常なインク滴の着弾位置よりも1画素分だけ左方向に寄ってドットが形成される。つまり、パス12では、正常なインク滴が吐出された場合にパス8でドットが形成される位置に、ドットが形成される。同様に、パス16では、正常にインク滴が吐出された場合にパス12でドットが形成される位置に、ドットが形成される。
【0116】
このため、いずれのパスでも、正常にインク滴が吐出された場合にパス4及びパス16でドットが形成される位置に、ドットを形成することができない。つまり、調整値「−1」の場合、図34の「着弾可能位置」欄の「パス4」欄及び「パス16」欄の丸印に示される画素に、ドットを形成することができない。このため、調整値「−1」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた厳密な調整を行うことはできない。
【0117】
具体的には、以下の条件が揃うと、調整不可の状況になる。まず、第1の条件は、双方向印刷であることである。単方向印刷では、調整不可にはならない(図29参照)。但し、双方向印刷であっても、第1変形例のように調整不可の状況にならないことがある。つまり、双方向印刷であるだけでなく、次の条件も必要になる。第2の条件は、調整値「0」のときに、2×n画素(nは整数)離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、キャリッジ移動方向が逆方向のパスにそれぞれ割り当てられる場合であって、調整値が「n」である場合である。
【0118】
前述の本実施形態(図29参照)では、第1の条件を満たしていない。また、前述の第1変形例(図32参照)では、第1の条件を満たしているが、調整値「0」のとき、偶数画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データは、同じ移動方向のパスに割り当てられるので、第2の条件を満たしていない。一方、第2変形例(図34参照)では、調整値「0」ならば、例えば1番の画素データと3番の画素データは2画素離れた2つの画素にそれぞれ対応し、1番の画素データは左から右へノズルを移動させるパス4に割り当てられ、3番の画素データは右から左へノズルを移動させるパス12に割り当てられている。このため、第2変形例では、調整値「−1」のとき、調整不可になる。
【0119】
調整不可になる場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた調整処理を行わなくても良い(調整値「0」に応じた処理になる)。但し、例えば調整値「−3」の場合、調整処理を行わないと、ドットの着弾位置ズレが大きいため、画質の劣化が大きい。このため、プリンタドライバ及びプリンタ1は、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行っても良い。
【0120】
(7−3)第3変形例
図35は、第3変形例の説明図である。この第3変形例でのキャリッジ31の移動方向は、パス4及びパス16では左から右であるが、パス8及びパス12では右から左である。
この第3変形例でも、調整値「+3」、調整値「+1」、調整値「−1」及び調整値「−3」の場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、インク滴の着弾位置を厳密に調整を行うことができない。この理由は第2変形例と同様なので詳しい説明を省略するが、例えば調整値「−1」の場合、図35の「タイミング信号」欄の「パス12」欄及び「パス16」欄の丸印に示される画素に、ドットを形成することができない。なお、第3変形例でも、前述の第1の条件及び第2の条件のいずれも満たしている。
【0121】
調整不可になる場合、プリンタドライバ及びプリンタ1は、調整値に応じた調整処理を行わなくても良い(調整値「0」に応じた処理になる)。但し、例えば調整値「−3」の場合、調整処理を行わないと、ドットの着弾位置ズレが大きいため、画質の劣化が大きい。このため、プリンタドライバ及びプリンタ1は、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行っても良い。
【0122】
(7−4)その他
上記の実施形態等(実施形態及び第1〜第3変形例)は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
上記の実施形態等では、プリンタ1及びコンピュータ110からなる印刷システムを説明した。但し、これに限られるものではなく、プリンタドライバの機能をプリンタ1側に組み込み、プリンタ1側でラスタライズ処理等を行っても良い。この場合、プリンタ1が単体で印刷システムを構成する。
上記の実施形態等では、1つのラスタラインを4個のノズルで形成するオーバーラップ印刷(M=4のオーバーラップ印刷)について説明した。但し、これに限られるものではなく、M=2やM=6等のオーバーラップ印刷でもよい。
【0123】
(8)まとめ
(8−1)前述の印刷システムは、ヘッド41と、搬送ユニット20と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータ110のCPU及びプリンタ1のコントローラ60から構成される制御部と、を有する。ヘッド41は、複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出する(図6参照)。搬送ユニット20は、紙などの媒体を搬送する。また、制御部は、移動方向に移動するノズルからインク滴を吐出させて移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作(「パス」ともいう、図28のS205参照)と、搬送ユニットに紙を搬送させる搬送動作(S203)とを交互に繰り返し、紙に画像を印刷する。
【0124】
前述の実施形態のオーバーラップ印刷を行う場合、制御部は、180dpiの間隔でドットを形成するパスを繰り返すとともに、各パスで形成されるドットの位置を720dpiだけずらすことにより、720dpiの間隔で並ぶドット列を形成している(図13A〜図13D及び図22参照、)。なお、この場合、各ドット列は、4個のノズルにより形成される。
【0125】
このようなオーバーラップ印刷の際に、制御部は、まず、ラスタデータ(移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の画素データ)を4つのグループに振り分け(図18参照)、各パスに必要な画素データをいずれかのグループからそれぞれ抽出し(図19A及び図19B参照)、各パスにおいてインク滴を吐出させる。
【0126】
ところで、実際のプリンタでは、インク滴の飛翔速度や、ノズルと紙との間隔等が、理想通りにはならない。このため、インクの着弾位置がずれ、理想通りの位置にドットが形成されないことがある。インク滴の着弾位置にずれがあると、印刷画像が劣悪なものになるので、インクの着弾位置を調整することが望ましい。
【0127】
そこで、前述の印刷システムは、調整値(位置情報の一例)を記憶するメモリを備えている。調整値は、画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する紙上の画素の位置との関係を示している。例えば、調整値「−1」の場合、画素データに応じて吐出されるインク敵が形成するドットは、その画素データに対応する紙上の画素の位置に対して、1画素分だけキャリッジ移動方向下流側に位置する。
但し、この調整値に基づいてインク滴の着弾位置を調整するにしても、第1参考例の調整方法では、演算負荷が大きくなることがある。また、オーバーラップ印刷の場合、第2参考例の調整方法では、1/180インチ単位の粗い調整しかできない。
【0128】
そこで、本実施形態では、制御部は、繰り返し行われるパス毎に、調整値に基づいて、4グループのうちのいずれかのグループを割り当てている。例えば、制御部は、パス4、パス8、パス12及びパス16のそれぞれに対し、調整値「0」の場合、それぞれグループA、グループB、グループC、グループDの順に割り当てる。一方、図29における調整値「−1」の場合、制御部は、それぞれグループB、グループC、グループD、グループAの順に割り当てる。また、調整値「−2」の場合、制御部は、それぞれグループC、グループD、グループA、グループBの順に割り当てる。
このように調整値に応じてパスとグループとの対応付けを行うことにより、調整値に応じてダミーデータを付加する演算が必要なくなるので、調整処理の際の演算の負荷を軽減することができる。
【0129】
(8−2)
前述のプリンタのコントローラ60(制御部の一部)には、開始位置指示部644Aが設けられている。この開始位置指示部644Aは、最初にヘッド41へ転送する画素データを、指定するものである。そして、コントローラ60は、調整値(位置情報の一例)に応じて、各パスにおける開始位置指示部644Aの指定する領域を変更している。例えば、調整値「0」の場合、コントローラは、いずれのパスでも開始位置指示部644Aに第3領域を指定させているが、調整値「−1」の場合、コントローラは、パス16において開始位置指示部644Aに第4領域を指定させている(図29、図31A及び図31B参照)。そして、コントローラ60は、開始位置指示部644Aの指定する領域を変更することにより、インク滴の吐出開始タイミングを変更することができる(図27A及び図27B参照)。
このように、調整値に応じて吐出開始タイミングを変更することにより、調整値に応じたダミーデータを負荷する演算が必要なくなるので、調整処理の際の演算の負荷を軽減することができる(なお、図28のS105で付加されるダミーデータは、調整値によらず一定量である)。
【0130】
(8−3)
前述の印刷システムは、プリンタ1と、プリンタドライバをインストールしたコンピュータ110とを備える。なお、プリンタ1には制御部の一部であるコントローラ60があり、コンピュータ110には制御部の一部であるCPU(不図示)がある。
調整値はプリンタの個体差に応じてプリンタ毎に異なるものであるので、汎用的なプリンタドライバに調整値を組み込むことは難しい。このため、プリンタ1の調整値は、そのプリンタ1のメモリ63に記憶されることが望ましい。一方、印刷データを生成するときにラスタライズ処理を行うため、コンピュータ110は、プリンタ1に応じた調整値が必要になる。
【0131】
そこで、調整処理を行う際に、プリンタドライバ(実際にはコンピュータ110のCPU)は、プリンタ1のメモリ63から調整値を読み出し(図28のS107参照)、調整値に基づいたラスタライズ処理により、各パスに応じて印刷データを生成し(図30参照)、印刷データをプリンタに送信する(図28のS107参照)。これにより、プリンタ1側のコントローラ60は、印刷データをコンピュータ110から受信し、この印刷データに基づいてインク滴を吐出すれば、インク滴の着弾位置を調整することが可能である。
【0132】
(8−4)
プリンタ1のコントローラ60は、印刷データに基づいてインク滴を吐出させる際に、メモリ63から調整値を読み出し、この調整値に基づいて開始位置指示部644Aを制御して、各パスにおけるインク滴の吐出開始タイミングを変更することができる。
【0133】
これにより、調整値に関するデータを含めなくても良いので、印刷データのデータ量を軽減できる。
【0134】
(8−5)
また、プリンタドライバは、調整値に関するデータを印刷データに含めて送信しても良い。この場合、プリンタ1のコントローラ60は、印刷データに含められている調整値に基づいて開始位置指示部644Aを制御して、各パスにおけるインク滴の吐出開始タイミングを変更することができる。
これにより、各パスの画素データを生成するプリンタドライバが、吐出開始タイミングを制御できる。
【0135】
(8−6)
双方向印刷の場合、所定の条件が重なると、調整不可の状況になる(図34及び図35参照)。このような場合、制御部は、調整値に基づかずに、ドット形成動作を行う。
【0136】
(8−7)
特に、調整値「0」ならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向にノズルを移動させるパスにそれぞれ割り当てられている場合であって、調整値が±nの場合、制御部は、調整値に基づかずに、ドット形成動作を行う。
例えば、図34において、1番の画素データと3番の画素データは、調整値「0」ならば2画素離れた2つの画素にそれぞれ対応し、1番の画素データは左から右へノズルを移動させるパス4に割り当てられ、3番の画素データは右から左へノズルを移動させるパス12に割り当てられている。このような状況で調整値が−1の場合、ドットを形成できない画素が存在して調整不可となるので、制御部は調整値に基づかずにドット形成動作を行う。
【0137】
(8−8)
調整不可とされる場合、制御部は、調整値「0」のときと同様に、パスとグループとの対応付けを行う。この場合、調整を行わずに印刷を行うので、調整処理の演算負荷がかからない。また、通常通りの印刷画像をユーザーは得ることができる。
【0138】
(8−9)
また、調整不可とされる場合、制御部は、その調整値に最も近い調整値に応じた処理を行っても良い。例えば図34において、調整値「−3」の場合、その調整値「−3」に最も近い調整値(例えば調整値「−2」又は調整値「−4」)に応じた処理を行う。これにより、調整処理を行わない場合と比較して、高い画質の印刷画像をユーザーが得ることができる。
【0139】
(8−10)
また、前述のコンピュータ110側のメモリ(不図示)やプリンタ1側のメモリ63は、1アドレスに4画素分の画素データを格納している。このため、調整値に応じたダミーデータを付加する場合、演算負荷が大きくなることがある。
これに対し、前述の調整方法によれば、調整値に応じたダミーデータを付加する処理はないので(一定量のダミーデータを付加する処理だけなので)、制御部の演算負荷を軽減することができる。
【0140】
(8−11)
前述のヘッド41は、色毎に複数のノズルを備えている(図6参照)。そして、インク吐出タイミングを示すタイミング信号を各色共通に使用することにより、制御部は、各色のノズル群から、共通のタイミングでインク滴を吐出させている(図22参照)。
これにより、色毎にタイミング生成部642を設けずに済むので、装置を簡略化できる。
【符号の説明】
【0141】
1 プリンタ、S 紙、
20 搬送ユニット、21 給紙ローラ、22 搬送モータ、23 搬送ローラ、
24 プラテン、25 排紙ローラ、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジモータ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、
60 コントローラ、61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリ、
64 ユニット制御回路、642 タイミング生成部、
644 ダブルバッファ、644A 開始位置指示部、
110 コンピュータ、112 ビデオドライバ、
114 アプリケーションプログラム、116 プリンタドライバ、
120 表示装置、130 入力装置、140 記録再生装置、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷システムであって、
前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、
前記メモリは、前記印刷装置に設けられており、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる際に、前記メモリから前記位置情報を読み出し、この位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記制御部が双方向印刷を行わせる場合であって、前記位置情報が所定値の場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷システムであって、
前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、
前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、
前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行う
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記関係に位置ずれのないことを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶することを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記ヘッドは、色毎に前記複数のノズルを備え、
前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項12】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備える印刷システムであって、
(F)前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更し、
(G)前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、
前記メモリは、前記印刷装置に設けられており、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させ、
(H)前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更し、
(I)前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、
前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、
前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
(J)前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶し、
(K)前記ヘッドは、色毎に前記複数のノズルを備え、
前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷方法。
【請求項14】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷装置の調整方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷装置の調整方法。
【請求項1】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備えることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更することを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷システムであって、
前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、
前記メモリは、前記印刷装置に設けられており、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させる際に、前記メモリから前記位置情報を読み出し、この位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項5】
請求項3に記載の印刷システムであって、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記制御部が双方向印刷を行わせる場合であって、前記位置情報が所定値の場合、前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行うことを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷システムであって、
前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、
前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、
前記制御部は、前記位置情報に基づかずに、前記ドット形成動作を行う
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記関係に位置ずれのないことを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることを特徴とする印刷システム。
【請求項9】
請求項6又は7に記載の印刷システムであって、
前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当てることを特徴とする印刷システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶することを特徴とする印刷システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の印刷システムであって、
前記ヘッドは、色毎に前記複数のノズルを備え、
前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項12】
(A)複数のノズルを備え、画素データに応じたインク滴を各ノズルから吐出するヘッドと、
(B)媒体を搬送する搬送ユニットと、
(C)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を記憶するメモリと、
(D)移動方向に移動する前記ノズルから前記インク滴を吐出させて前記移動方向に沿って前記ドットを形成するドット形成動作と、前記搬送ユニットに前記媒体を搬送させる搬送動作とを交互に繰り返し、前記媒体に画像を印刷する制御部であって、
移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる制御部と、
(E)を備える印刷システムであって、
(F)前記制御部は、前記位置情報に応じて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更し、
(G)前記印刷システムは、前記制御部の一部を有する印刷装置と、前記制御部の一部を有し前記印刷装置を制御する印刷制御装置とを備え、
前記メモリは、前記印刷装置に設けられており、
前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから前記位置情報を読み出し、前記位置情報に基づいて前記各ドット形成動作に応じた印刷データを生成し、前記印刷データを前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データを前記印刷制御装置から受信し、前記印刷データに基づいて前記インク滴を吐出させ、
(H)前記印刷制御装置側の前記制御部は、前記メモリから読み出した前記位置情報を前記印刷データに含めて前記印刷装置に送信し、
前記印刷装置側の前記制御部は、前記印刷データに含められている前記位置情報に基づいて、各ドット形成動作における前記インク滴の吐出開始タイミングを変更し、
(I)前記関係にずれのないことを前記位置情報が示すならば、2×n画素離れた2つの画素に対応する2つの画素データが、互いに逆方向に前記ノズルを移動させる前記ドット形成動作にそれぞれ割り当てられる場合であって、
前記関係がn画素ずれていることを前記位置情報が示す場合、
前記制御部は、前記関係がn+1画素又はn−1画素ずれていることを前記位置情報が示すときと同様に、繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
(J)前記画素データを記憶する記憶部は、1アドレスに複数の画素データを記憶し、
(K)前記ヘッドは、色毎に前記複数のノズルを備え、
前記制御部は、各色の複数のノズルから、共通のタイミングでインク滴を吐出させる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷方法。
【請求項14】
(A)移動方向に移動する複数のノズルから画素データに応じたインク滴を吐出して、前記移動方向に沿ってドットを形成するドット形成動作と、
媒体を搬送する搬送動作と、
を交互に繰り返し、媒体に画像を印刷する印刷装置の調整方法であって、
(B)前記画素データに応じて吐出されるインク滴が形成するドットの位置と、その画素データに対応する前記媒体上の画素の位置との関係を示す位置情報を予め記憶し、
(C)前記移動方向に所定間隔でドットを形成する前記ドット形成動作を繰り返すとともに、各ドット形成動作で形成されるドットの前記移動方向の位置をずらすことにより、前記移動方向に並ぶドットの列を2以上の所定数のノズルにより形成する際に、
前記移動方向に並ぶ複数の画素に対応する複数の前記画素データを前記所定数のグループに振り分け、
繰り返し行われる前記ドット形成動作毎に、前記位置情報に基づいて、前記所定数のグループのうちのいずれかのグループを割り当て、
各ドット形成動作において、割り当てられた前記グループに含まれる前記画素データに基づいて、前記インク滴を吐出させる、
(E)ことを特徴とする印刷装置の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2011−136586(P2011−136586A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87657(P2011−87657)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2005−56610(P2005−56610)の分割
【原出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【分割の表示】特願2005−56610(P2005−56610)の分割
【原出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]