説明

印刷システム及びランゲージモニタプログラム

【課題】印刷ジョブのユーザによるキャンセル時における利便性を高めた印刷システム及び当該印刷システムを構成するコンピュータに搭載されるランゲージモニタプログラムを提供する。
【解決手段】印刷システム1は、コンピュータ10とプリンタ50により構成される。プリンタ50は、コンピュータ10からのジョブ開始指示によりJOB INモードとなり、コンピュータ10からのジョブ終了指示によりアイドルモードとなる。ジョブキャンセル時には、コンピュータ10のランゲージモニタ34は、EndJobをプリンタ50に送信する。EndJobは、NULLデータ列と用紙排出指示とジョブ終了指示を含む。プリンタ50は、NULLデータ列により、後の印刷データと区別する。又、プリンタ50は、用紙排出指示に基づいて、給排紙機構部53に保持されている用紙を排紙し、ジョブ終了指示により、アイドルモードに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタと、コンピュータを備える印刷システム、及び、コンピュータに搭載されるランゲージモニタプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタと、コンピュータを接続した印刷システムが知られている。コンピュータから印刷データ等が送信されると、当該プリンタは、給排紙機構により給紙された用紙に対して、印刷機構部を用いて印刷を行う。特許文献1には、このような印刷システムに関する発明の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−216693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記印刷システムにおいて印刷ジョブを実行している場合に、ユーザが、当該印刷ジョブをキャンセルする場合も生じる。この場合、プリンタは、印刷ジョブを実行している途中で処理を中止するため、用紙を給排紙機構部に保持したまま停止することがある。又、当該印刷システムで印刷データの送信が途中で中断された場合、中断前に送信された印刷データは、次回の印刷ジョブの印刷に悪影響を及ぼす場合もある。本明細書は、ユーザにとって利便性の高い印刷システム及びランゲージモニタプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る印刷システムは、プリンタと、当該プリンタと接続されたコンピュータにより構成される。前記プリンタは、印刷手段と、給排紙手段と、制御手段と、を有している。そして、当該プリンタは、アイドル状態でコンピュータからジョブ開始コマンドを受信すると、コマンド受付状態となり、コマンド受付状態で、コンピュータから印刷ジョブに係る制御の終了が通知されると、アイドル状態となる。又、前記コンピュータは、操作手段と、接続手段と、を備え、スプーラと、プリンタドライバと、ランゲージモニタプログラムを有している。当該ランゲージモニタプログラムは、スプーラを介して、プリンタドライバから印刷ジョブの開始が通知された場合に、前記プリンタにジョブ開始コマンドを送信する。又、当該ランゲージモニタプログラムは、前記スプーラを介して、印刷ジョブの終了が通知された場合、前記プリンタにジョブ終了コマンドを送信する。そして、前記操作手段により印刷ジョブがキャンセルされた場合においても、当該ランゲージモニタプログラムは、前記プリンタにジョブ終了コマンドを送信する。そして、当該ジョブ終了コマンドは、NULLデータ列と、排紙指示と、ジョブ終了指示を含んでいる。
【0006】
これにより、当該印刷システムにおいて、ユーザによる印刷ジョブのキャンセル(以下、ジョブキャンセルという)があった場合であっても、プリンタは、ランゲージモニタプログラムから、ジョブ終了コマンドを受信する。即ち、当該印刷システムによれば、プリンタは、ジョブキャンセルにより用紙が給排紙手段に保持されたままとなっても、排紙指示に基づいて、当該用紙を排紙し得る。これにより、当該印刷システムは、ジョブキャンセル時における利便性をユーザに提供し得る。又、当該印刷システムによれば、キャンセルされた印刷ジョブの印刷データは、ジョブ終了コマンドのNULLデータ列と、排紙指示と、ジョブ終了指示に基づいて、新たな印刷ジョブに係る印刷データと明確に区別される。従って、当該印刷システムは、ユーザによる印刷ジョブのキャンセルがその後の印刷に及ぼす影響を排除し得る。
又、ランゲージモニタプログラムは、接続手段の種類を問わずに機能する。従って、当該印刷システムは、プリンタが接続されている接続手段の種類を問わず、ジョブキャンセル時における利便性を提供し得る。
【0007】
そして、請求項2記載の印刷システムにおいては、前記請求項1に記載の印刷システムに係るプリンタは、当該プリンタがアイドル状態にある場合、前記ジョブ開始コマンドを除くコマンド及び前記ジョブ終了コマンドに含まれるNULLデータ列を読み捨てる。
【0008】
当該印刷システムによれば、プリンタは、NULLデータ列と、排紙指示と、ジョブ終了指示に基づく印刷を、用紙に行うことはない。即ち、当該印刷システムは、印刷ジョブを正常に完了した場合であってもNULLデータ列等の影響を受けることなく、印刷ジョブに係る印刷結果を出力し得る。この結果、当該印刷システムは、ジョブキャンセル時の利便性を提供しつつ、正常作動時における利便性も提供し得る。
【0009】
又、請求項3記載のランゲージモニタプログラムは、プリンタと接続されたコンピュータと協働することにより、前記請求項1に係る印刷システムと同様の効果を奏する。この場合におけるプリンタは、印刷手段、給排紙手段、制御手段を備える。又、この場合におけるコンピュータは、接続手段、操作手段を備え、スプーラ、プリンタドライバ、ランゲージモニタプログラムを有する。
【0010】
即ち、請求項3記載のランゲージモニタプログラムは、プリンタと接続されたコンピュータと協働することにより、ジョブキャンセル時における排紙に関する利便性をユーザに提供し得る。又、当該ランゲージモニタプログラムは、請求項1記載の印刷システムと同様に、ユーザによる印刷ジョブのキャンセルがその後の印刷に及ぼす影響を排除し得る。更に、当該ランゲージモニタプログラムは、請求項1記載の印刷システムと同様に、プリンタが接続されている接続手段の種類を問わず、ジョブキャンセル時における利便性を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る印刷システムの構成を示すブロック図である。
【図2】印刷システムの印刷アーキテクチャを示す説明図である。
【図3】印刷システムを構成するコンピュータにおける制御プログラムのフローチャートである。
【図4】通常時におけるプリンタドライバ、ランゲージモニタ、プリンタ間の処理シーケンス図である。
【図5】ジョブキャンセル時におけるプリンタドライバ、ランゲージモニタ、プリンタ間の処理シーケンス図である。
【図6】コマンド“EndJob”の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る印刷システム及びランゲージモニタプログラムを具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る印刷システム1の概略構成について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る印刷システム1の概略構成を示す説明図である。
【0013】
本実施形態に係る印刷システム1は、コンピュータ10と、プリンタ50により構成される。コンピュータ10は、パーソナルコンピュータ等の情報端末である。プリンタ50は、当該コンピュータ10と接続されている。
【0014】
コンピュータ10は、制御部20を有している。制御部20は、コンピュータ10に対する制御の中枢を担う。当該制御部20は、CPU21、ROM22、RAM23を備えている。CPU21は、各種制御プログラムを実行する中央演算装置である。ROM22は、CPU21で実行される各種制御プログラムや恒久的なデータを格納している。RAM23は、CPU21による制御プログラムの演算結果等を一時的に記憶する。
【0015】
そして、コンピュータ10は、出力I/F24、ディスプレイ25、入力I/F26、マウス27、キーボード28を有している。ディスプレイ25は、出力I/F24を介して、制御部20と接続されている。ディスプレイ25は、制御部20の制御に基づいて、多様な内容を画面に表示する。マウス27及びキーボード28は、入力I/F26を介して、制御部20と接続されている。
【0016】
又、コンピュータ10は、LAN I/F40、USB I/F41を備えている。コンピュータ10は、LAN I/F40、ローカルエリアネットワークNを介して、プリンタ50と接続されている。そして、コンピュータ10は、USB I/F41を介して、プリンタ50と接続されている。
【0017】
そして、コンピュータ10は、記憶装置30を有している。当該記憶装置30として、例えばHDD(Hard Disk Drive)を用いることができる。記憶装置30は、アプリケーションプログラム31、プリントスプーラ32、プリンタドライバ33、ランゲージモニタ34を記憶している。
【0018】
アプリケーションプログラム31は、特定の目的に対する処理を実行するためのプログラムである。当該アプリケーションプログラム31は、文書作成プログラム、表計算プログラム、ウェブブラウザプログラム等の種々のアプリーケーションプログラムを含む。
【0019】
プリンタ50は、プリンタ制御部51、印刷部52、給排紙機構部53を備えている。
【0020】
プリンタ制御部51は、プリンタ50の制御の中枢を担う。当該プリンタ制御部51は、CPU、ROM、RAMを備えている。後述する制御プログラム(図3参照)は、プリンタ制御部51のROMに格納されており、プリンタ制御部51のCPUにより実行される。
【0021】
印刷部52は、プリンタ制御部51の制御に基づいて、用紙等の被記録媒体に対して、印刷データに基づく印刷を行う。当該印刷部52は、種々の方式(例えば、電子写真式、インクジェット方式等)を採用し得る。当該印刷部52の詳細については、既に公知であるため、その説明は省略する。
【0022】
給排紙機構部53は、プリンタ制御部51の制御に基づいて、印刷部52に対する用紙の供給(給紙)や、印刷部52からの用紙の排出(排紙)を行う。当該給排紙機構部53は、後述する用紙排出指示(図6参照)の受信に基づくプリンタ制御部51の制御に従って、印刷部52から用紙を排出し得る。給排紙機構部53の詳細な構成については、既に公知であるためその説明を省略する。
【0023】
更に、プリンタ50は、LAN I/F54と、USB I/F55を有している。当該プリンタ50は、ローカルエリアネットワークNを介して、コンピュータ10からの印刷データを印刷し得る(図1参照)。尚、LAN I/F54を介して、コンピュータ10に接続されたプリンタ50を「ネットワーク接続されたプリンタ50」という。
【0024】
そして、プリンタ50は、USB I/F55を介して接続されたコンピュータ10からの印刷データを、用紙に印刷し得る。尚、USB I/F55を介して、コンピュータ10に接続されたプリンタ50を「ローカル接続されたプリンタ50」という。
【0025】
図2は、印刷システム1の印刷アーキテクチャに関する説明図である。
アプリケーションプログラム31実行中にキーボード28等の操作により、印刷データの印刷操作が行われると、プリンタドライバ33は、当該印刷操作に基づく印刷指示を受け付ける。この時、プリントスプーラ32は、当該印刷指示に基づく印刷ジョブの管理を行う。そして、プリンタドライバ33は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、当該プリンタドライバ33に対応するプリンタ50の制御を行う。
【0026】
ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、プリンタ50に対するデータの送受信を行う。又、ランゲージモニタ34は、プリンタ50に対するデータ出力時における状態監視や、エラー制御を行う。
【0027】
前記印刷ジョブに係る印刷データは、ポートモニタ35、LAN I/F40を介して、ネットワーク接続されたプリンタ50に書き込まれる。同様に、当該印刷データは、ポートモニタ35、USB I/F41を介して、ローカル接続されたプリンタに書き込まれる。
【0028】
ここで、ポートモニタ35は、プリンタドライバ33によるプリンタポートに対するデータの入出力状態を監視する。プリンタポートは、ネットワーク接続されたプリンタ50と、ローカル接続されたプリンタ50に、夫々対応している。
【0029】
そして、プリンタ50は、プリンタポートに書き込まれた印刷データ(ラスターデータ)を順次、印刷部52により用紙に印刷する。印刷の実行に際し、プリンタ50は、給排紙機構部53により、用紙を印刷部52に供給する。そして、当該印刷が正常に終了した場合、用紙は、給排紙機構部53により、プリンタ50外部に排出される。
【0030】
図3は、プリンタ50の制御プログラムのフローチャートである。図3に示すように、S1において、後述するJOB INフラグがRAMにセットされているか否かに基づいて、判断処理を行う。現在「JOB INモード」である場合(S1:YES)、S5に処理を移行する。一方、そうでない場合(S1:NO)、S2に処理を移行する。
【0031】
ここで、「JOB INモード」とは、コンピュータ10からの印刷データに基づく印刷ジョブを実行している状態である。この「JOB INモード」では、プリンタ制御部51は、コンピュータ10から送信された全ての指示(制御コマンド等を含む)に従って、当該指示に従った制御を行う。この点については後述する。
【0032】
又、本実施形態に係るプリンタ50は、「JOB INモード」ではない場合、「アイドルモード」となる。この「アイドルモード」では、プリンタ50は、後述するジョブ開始指示を除く全ての指示やデータを破棄する。この点についても後述する。
【0033】
S2に移行すると、ジョブ開始指示をコンピュータ10から受信したか否かを判断する。ジョブ開始指示を受信している場合(S2:YES)、S4に処理を移行する。そうでない場合(S2:NO)、S3に処理を移行する。
【0034】
S3においては、「アイドルモード」にあるので、コンピュータ10から受信した全てのデータ及び制御コマンド等を読み捨てる。
【0035】
S4では、ジョブ開始指示の受信(S2:YES)に伴い、プリンタ制御部51のRAMにJOB INフラグをセットする。
【0036】
一方、プリンタ50が「JOB INモード」にあるS5においては、直前に行われた印刷ジョブの終了を示すジョブ終了指示を受信したか否かを判断する。ジョブ終了指示を受信した場合(S5:YES)、S7に処理を移行する。一方、そうでない場合(S5:NO)、S6に処理を移行する。
【0037】
S6においては、種々の制御コマンドに基づくコマンド処理を実行する。例えば、印刷データを構成するラスターデータの描画コマンドを受信した場合、当該描画コマンドに従って、印刷部52等を制御し、用紙に当該ラスターデータを描画・印刷する。その後、当該制御プログラムを終了する。
【0038】
S7では、ジョブ終了指示の受信に基づいて、JOB INフラグをクリアする。
【0039】
ここで、ジョブ終了指示は、プリンタドライバ33から、ランゲージモニタ34を介して通知される「DrvEndDoc」と、ランゲージモニタ34から通知される「EndJob」の両者に含まれている。
【0040】
図6に示すように、「EndJob」は、当該ジョブ終了指示と、1000バイト分のNULLデータからなるNULLデータ列と、用紙排出指示と、を含んでいる。
「EndJob」を受信した場合のS7では、前記NULLデータ列により、「EndJob」受信時に実行中の印刷ジョブに係る印刷データが終了していることを把握し、その後の印刷ジョブと区別する。又、用紙排出指示に従って、給排紙機構部53を制御することにより、給排紙機構部53における印刷途中の用紙を、プリンタ50外部へ排出する。
【0041】
続いて、コンピュータ10からの印刷ジョブが正常に完了される場合(通常時)におけるプリンタドライバ33、ランゲージモニタ34、プリンタ50間の処理シーケンスについて、図4を参照しつつ詳細に説明する。
尚、下記の説明において、処理シーケンス開始時には、プリンタ50は、「アイドルモード」であるものとする。
【0042】
コンピュータ10において、ユーザによる印刷操作が行われると、ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、「StartJob」をプリンタ50に通知する。「StartJob」は、当該印刷ジョブに関する処理の開始を意味する。
【0043】
その後、ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、「WritePort」を読み出す。「WritePort」は、特定のプリンタポートに対して、各種データや制御指示(例えば、ラスターデータや制御コマンド)を書き込むことを意味する。
【0044】
一方、プリントスプーラ32は、プリンタドライバ33の「DrvStartDoc」を呼び出す。「DrvStartDoc」は、印刷ジョブの実行に必要なデータの送信準備が整ったことを意味する。「DrvStartDoc」が呼び出されると、プリンタドライバ33は、ジョブ開始指示を含む情報を、プリントスプーラ32に返す。ジョブ開始指示を含む「DrvStartDoc」に基づく情報を受け取ると、プリントスプーラ32は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を呼び出す。
【0045】
これにより、「DrvStartDoc」に基づく情報は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、プリンタ50に通知される。プリンタ50は、当該「DrvStartDoc」に基づく情報が通知されると(S2:YES)、「アイドルモード」から「JOB INモード」に変更される(S4)。
【0046】
次に、プリントスプーラ32は、プリンタドライバ33の「DrvStartBanding」を読み出し、「DrvStartBanding」をランゲージモニタ34に通知する。この場合も、「DrvStartBanding」は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、プリンタ50に通知される。当該「DrvStartBanding」は、印刷ジョブに係る印刷データを構成する画像データ(ラスターデータ)のうち、最初の部分の描画指示を意味する。従って、プリンタ50は、プリンタポートに書き込まれた部分を用紙に印刷する(S6)。
【0047】
その後、プリントスプーラ32は、「DrvNextBand」をプリンタドライバ33から読み出し、ランゲージモニタ34に通知する。同様に、「DrvNextBand」は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、プリンタ50に通知される。当該「DrvNextBand」は、印刷ジョブに係る印刷データを構成する画像データ(ラスターデータ)のうち、印刷済みの部分に続く部分の描画指示を意味する。従って、プリンタ50は、印刷画像の残りの部分を用紙に印刷する(S6)。
【0048】
尚、この「DrvNextBand」に係る処理は、印刷データを構成する画像データを全てプリンタポートに書き込むまで、繰り返し行われる。図4においては、2回繰り返す態様を記載しているが、この態様に限定されるものではない。
【0049】
続いて、プリントスプーラ32は、「DrvEndDoc」をプリンタドライバ33から呼び出す。「DrvEndDoc」は、印刷ジョブの処理に必要なデータの送信が完了したことを意味する。「DrvEndDoc」が呼び出されると、プリンタドライバ33は、ジョブ終了指示を含む情報を、プリントスプーラ32に返す。ジョブ終了指示を含む「DrvEndDoc」に基づく情報を受け取ると、プリントスプーラ32は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を呼び出す。これにより、当該「DrvEndDoc」に基づく情報は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、プリンタ50に通知される。
【0050】
当該「DrvEndDoc」に基づく情報を受信すると(S5:YES)、プリンタ50は、「JOB INモード」から「アイドルモード」に変更される(S7)。この時、プリンタ50は、当該印刷ジョブに係る印刷を完了しているので、給排紙機構部53により、印刷が施された用紙をプリンタ50外部に排紙している。
【0051】
その後、ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、「EndJob」をプリンタ50に通知する。
【0052】
この点、図4に示す場合においては、「EndJob」が通知される段階で、プリンタ50は、「アイドルモード」になっている。従って、当該「EndJob」が通知された場合であっても、プリンタ50は、当該「EndJob」を読み捨てる(S3)。
【0053】
続いて、印刷ジョブのキャンセルがあった場合におけるプリンタドライバ33、ランゲージモニタ34、プリンタ50間の処理シーケンスについて、図5を参照しつつ詳細に説明する。
【0054】
尚、図4の場合と同様に、処理シーケンス開始時には、プリンタ50は、「アイドルモード」であるものとする。又、コンピュータ10において、ユーザにより印刷ジョブのキャンセルが行われるまでの処理シーケンスは、正常時における処理シーケンスと同様であるため、その説明を省略する。
【0055】
図5に示す場合、ジョブキャンセルは、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、「DrvStartDoc」、「DrvStartBanding」、最初の「DrvNextBand」がプリンタ50に通知されている段階で行われている。従って、プリンタ50は、ユーザ操作に基づく印刷処理を、途中の段階まで実行している。つまり、用紙には、ユーザ所望の印刷データに基づく画像が、途中の段階まで印刷されている。
【0056】
ここで、ユーザがキーボード28等により印刷ジョブのキャンセル操作を行うと、ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に従って、「WritePort」を終了する。ジョブキャンセルが行われると、その後のデータ等は、ランゲージモニタ34の「WritePort」を介して、プリンタポートに書き込まれることはなく、プリンタ50に伝達されることもない。
【0057】
ここで、この場合も、プリントスプーラ32は、プリンタドライバ33から2度目の「DrvNextBand」、「DrvEndDoc」を呼び出し、ランゲージモニタ34に通知する。しかしながら、この時、ランゲージモニタ34は、「WritePort」を終了している。従って、当該「DrvNextBand」、「DrvEndDoc」は、ランゲージモニタ34を介して、プリンタポートに書き込まれることはなく、プリンタ50に伝達されることもない。
【0058】
この結果、続きの「DrvNextBand」を受信することができないので、プリンタ50は、印刷ジョブに係る印刷を途中で中断した状態となる。即ち、印刷が施されている用紙は、完全にプリンタ50の外部へ排紙されることなく、印刷部52近傍に留まっている。
【0059】
又、「DrvEndDoc」を受信することもないので、プリンタ50は、当該印刷ジョブの終了を把握できず、「DrvEndDoc」に基づき排紙を行うこともできない。更に、「DrvEndDoc」を受信できないため、プリンタ50は、当該印刷ジョブに係るデータと、次の印刷ジョブに係るデータを区別できず、印刷に不具合が生じてしまうことがある。
【0060】
ジョブキャンセルが行われた場合も、図4の場合と同様に、当該ランゲージモニタ34は、プリントスプーラ32の制御に基づいて、「EndJob」をプリンタ50に通知する。
【0061】
プリンタ50は、「JOB INモード」であるので、「EndJob」を受信すると(S5:YES)、プリンタ50は、「JOB INモード」から「アイドルモード」に変更される(S7)。
【0062】
この時、プリンタ50は、「EndJob」に含まれるNULLデータ列により、当該印刷ジョブに係る印刷データが終了したことを把握し得る。従って、その後の印刷ジョブが開始された場合であっても、当該プリンタ50は、前後の印刷ジョブに係るデータの混在による印刷不良を起こすことはない。
【0063】
更に、この時、プリンタ50は、「EndJob」に含まれる用紙排出指示に従って、給排紙機構部53を制御し、印刷の中断により排紙が完了していない用紙を、プリンタ50外部に排紙する。これにより、ユーザは、ジョブキャンセルを行った場合でも、用紙を取り除くためにプリンタ50に向かう必要はない。即ち、当該印刷システム1は、ジョブキャンセル時における利便性を、ユーザに提供し得る。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る印刷システム1によれば、ジョブキャンセルがあった場合でも、プリンタ50は、ランゲージモニタ34から「EndJob」を受信する。即ち、当該印刷システム1によれば、プリンタ50は、「EndJob」に含まれる用紙排出指示に従って用紙の排紙を行う。この結果、当該印刷システム1によれば、当該プリンタ50は、ジョブキャンセルにより用紙が給排紙機構部53に保持されたままとなった場合でも、確実に用紙を排紙することができ、ユーザにジョブキャンセル時の利便性を提供し得る。
【0065】
又、当該印刷システム1によれば、キャンセルされた印刷ジョブに係る印刷データは、「EndJob」に含まれるNULLデータ列、用紙排出指示、ジョブ終了指示に基づいて、新たな印刷ジョブに係る印刷データと明確に区別される。従って、当該印刷システムによれば、ユーザのジョブキャンセルがその後の印刷ジョブに与える影響を排除し得る。
【0066】
尚、ランゲージモニタ34は、LAN I/FやUSB I/F等の接続インターフェイスの種類を問わずに機能する。従って、当該印刷システム1は、プリンタ50が接続されている接続インターフェイスの種類を問わず、ジョブキャンセル時における利便性を提供し得る。
【0067】
更に、当該印刷システム1によれば、プリンタ50は、正常時には「EndJob」の前に伝達される「DrvEndDoc」のジョブ終了指示により、「アイドルモード」に変更される。当該「アイドルモード」では、プリンタ50は、「DrvStartDoc」に含まれるジョブ開始指示のみ受け付け、それ以外の制御コマンドやデータを読み捨てる(S3)。つまり、正常時においては、プリンタ50は、「アイドルモード」時に通知された「EndJob」に従って、NULLデータ列と、用紙排出指示と、ジョブ終了指示に基づく印刷を、用紙に行うことはない。この結果、当該印刷システム1は、印刷ジョブを正常に完了した場合であってもNULLデータ列等の影響を受けることなく、印刷ジョブに係る印刷結果を出力し得る。この結果、当該印刷システム1は、ジョブキャンセル時の利便性を提供しつつ、正常作動時における利便性も提供し得る。
【0068】
そして、ランゲージモニタ34は、プリンタ50と接続された別のコンピュータで実行されることにより、印刷システム1と同様の効果を奏する。即ち、ランゲージモニタ34は、当該コンピュータと協働することにより、ジョブキャンセル時における排紙に関する利便性をユーザに提供し得る。この場合に、当該ランゲージモニタ34は、ユーザによる印刷ジョブのキャンセルがその後の印刷に及ぼす影響を排除し得る。更に、当該ランゲージモニタ34は、プリンタ50が接続されている接続インターフェイスの種類を問わず、ジョブキャンセル時における利便性を提供し得る。
【0069】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、本実施形態においては、「EndJob」は、NULLデータ列と、用紙排紙指示と、JOB終了指示と、により構成されていたが、この態様に限定されるものではない。即ち、本発明は、「EndJob」に、NULLデータ列と、用紙排紙指示と、JOB終了指示に加え、他の制御指示を含めることもできる。
【0070】
又、本実施形態においては、NULLデータ列が、先の印刷データの終了を示し、当該NULLデータ列により、次の印刷データと区別可能に構成しているが、この態様に限定されるものではない。先の印刷データと次の印刷データを区別できるデータであれば、種々の態様を採用し得る。
【0071】
更に、本実施形態においては、「DrvStartDoc」の呼び出しに基づいて、ジョブ開始指示をプリンタ50に通知するように構成していたが、この態様に限定されるものではなく、種々の態様を採用し得る。例えば、本発明は、プリントスプーラ32が「DrvStartBanding」を呼び出したことを条件に、ジョブ開始指示をプリンタ50に通知する構成を採用し得る。又、本発明は、プリントスプーラ32が最初の「DrvNextBand」が呼び出した際に、ジョブ開始指示をプリンタ50に通知する構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0072】
1 印刷システム
10 コンピュータ
20 制御部
27 マウス
28 キーボード
32 プリントスプーラ
33 プリンタドライバ
34 ランゲージモニタ
40 LAN I/F
41 USB I/F
50 プリンタ
51 プリンタ制御部
52 印刷部
53 給排紙機構部
54 LAN I/F
55 USB I/F
N ローカルエリアネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷データに基づく印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段に対する用紙の給紙及び排紙を行う給排紙手段と、
前記印刷手段及び前記給排紙手段を制御し、印刷データの印刷に関する制御を行う制御手段と、を備えるプリンタと、
前記印刷データに基づく印刷ジョブのキャンセル操作に用いられる操作手段と、
前記プリンタとの間で、印刷データを含む種々の情報を通信可能に接続する接続手段と、を備えるコンピュータと、
を有する印刷システムにおいて、
前記プリンタは、
前記印刷データに基づく印刷ジョブに係る印刷制御を待機するアイドル状態にある場合に、前記印刷ジョブに係る印刷制御を開始することを示すジョブ開始コマンドを受信すると、前記制御手段により、前記コンピュータから受信したコマンドに基づいて前記印刷手段及び前記給排紙手段に対する制御を実行するコマンド受付状態へ切り換え、
前記コマンド受付状態にある場合に、前記印刷ジョブに係る印刷制御の終了が通知されると、前記制御手段により、前記アイドル状態に切り換え、
前記コンピュータは、
複数の印刷ジョブを受け付け、各印刷ジョブの処理順序を管理するスプーラと、
前記接続手段に接続されたプリンタを制御するためのプリンタドライバと、
前記スプーラの制御に基づいて、前記プリンタに対するデータの送受信を行うランゲージモニタプログラムと、を有し、
前記ランゲージモニタプログラムは、
前記スプーラを介して、前記プリンタドライバから印刷ジョブの開始が通知された場合に、前記ジョブ開始コマンドを前記プリンタに対して送信し、
前記スプーラを介して、前記印刷ジョブの終了が通知された場合、当該印刷ジョブに係るイメージデータの終了を示すNULLデータ列と、前記プリンタの給排紙手段における用紙の排紙を指示する排紙指示と、前記プリンタにおける印刷ジョブの終了を示すジョブ終了指示と、を含むジョブ終了コマンドを前記プリンタに対して送信し、前記プリンタに印刷ジョブに係る印刷制御の終了を通知し、
前記操作手段に基づく印刷ジョブのキャンセルがあった場合に、前記ジョブ終了コマンドを前記プリンタに対して送信し、前記プリンタに印刷ジョブに係る印刷制御の終了を通知する
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の印刷システムにおいて、
前記プリンタは、
前記アイドル状態にある場合、
前記ジョブ開始コマンドを除くコマンド及び前記ジョブ終了コマンドに含まれるNULLデータ列を読み捨てる
ことを特徴とする印刷システム。
【請求項3】
用紙に印刷データに基づく印刷を行う印刷手段と、前記印刷手段に対する用紙の給紙及び排紙を行う給排紙手段と、前記印刷手段及び前記給排紙手段を制御し、印刷データの印刷に関する制御を行う制御手段と、を備えるプリンタとの間で、印刷データを含む種々の情報を通信可能に接続する接続手段と、
前記印刷データに基づく印刷ジョブのキャンセル操作に用いられる操作手段と、
複数の印刷ジョブを受け付け、各印刷ジョブの処理順序を管理するスプーラと、
前記接続手段に接続されたプリンタを制御するためのプリンタドライバと、
前記スプーラの制御に基づいて、前記プリンタに対するデータの送受信を行うランゲージモニタプログラムと、を有するコンピュータのランゲージモニタプログラムにおいて、
前記ランゲージモニタプログラムは、
前記スプーラを介して、前記プリンタドライバから印刷ジョブの開始が通知された場合に、前記印刷ジョブに係る印刷制御を開始することを示すジョブ開始コマンドを前記プリンタに対して送信することにより、前記印刷ジョブに係る印刷制御を待機するアイドル状態にあるプリンタを、前記コンピュータから受信したコマンドに基づいて前記印刷手段及び前記給排紙手段に対する制御を実行するコマンド受付状態へ切り換え、
前記スプーラを介して、印刷ジョブの終了が通知された場合、当該印刷ジョブに係るイメージデータの終了を示すNULLデータ列と、前記プリンタの給排紙手段における用紙の排紙を指示する排紙指示と、前記プリンタにおける印刷ジョブの終了を示すジョブ終了指示と、を含むジョブ終了コマンドを送信し、
前記操作手段に基づく印刷ジョブのキャンセルがあった場合に、前記ジョブ終了コマンドを前記プリンタに対して送信し、前記プリンタに印刷ジョブに係る印刷制御の終了を通知することにより、前記コマンド受付状態にあるプリンタを、前記アイドル状態に切り換える
ことを特徴とするランゲージモニタプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−198151(P2010−198151A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40192(P2009−40192)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】