説明

印刷制御装置および印刷制御プログラム

【課題】複数の表色系の画像で合成された印刷ジョブに対しても効率よいハーフトーン処理を可能とする。
【解決手段】各画素がいずれかの表色系の色情報を有する画像データをハーフトーンデータに変換する印刷制御装置であって、前記ハーフトーン処理手段は、前記画像データを取得する取得手段と、前記表色系ごとに備えられ、前記画像データを、各画素が印刷装置によって記録媒体に付着させられるインク量を特定するインク量情報を有するインク量画像データに変換する複数の前処理手段と、各画素の前記色情報の表色系に応じて、前記インク量情報への変換を実行する前記前処理手段を切り換える切換手段と、複数の前記前処理手段によって変換された複数の前記インク量画像データを合成することにより合成画像データを生成する合成手段と、前記合成画像データを、各画素がインクドットを吐出するか否かを指定する記録情報を有する前記ハーフトーンデータに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置および印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターに出力させる画像データの種類が多様化する傾向にあり、複数の表色系の画像で合成された印刷ジョブが印刷対象とされる場合もある。例として、広告などを印刷する場合に、広告主のロゴだけは厳密に色を再現したいため、ロゴについてはプリンターが使用するインク量を指定する場合などが挙げられる。プリンターを制御させる印刷データを生成するためには、各種表色系の画像データをインク量の画像データに変換する色変換処理と、インク量の画像データをインクドットの記録可否の画像データに変換するハーフトーン処理を行う必要がある。色変換処理とハーフトーン処理を実行するためのプログラムの構造として、色変換処理を行う色変換モジュールとハーフトーン処理を行うハーフトーン処理モジュールとを一体的なモジュールとすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−354129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように色変換モジュールとハーフトーン処理モジュールを一体的なモジュールとした場合、複数の表色系の画像で合成された印刷ジョブを印刷させるためには、一体的なモジュール全体を各表色系に対応して複数用意しておかなければならないという問題があった。複数の表色系の画像で合成された印刷ジョブが投入された際に、一体的なモジュール全体を複数ロードしなければならず、効率が悪いという問題があった。また、複数の一体的なモジュールで個別にハーフトーン処理を行った後にハーフトーンデータを合成しなければならず、一括してハーフトーン処理を行うことができないという問題があった。
本発明は前記課題にかんがみてなされたもので、複数の表色系の画像で合成された印刷ジョブに対しても効率よいハーフトーン処理が可能な印刷制御装置および印刷制御プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷制御装置では、いずれかの表色系の色情報を有する複数の画素で構成される画像データをハーフトーンデータに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーンデータを印刷装置が解釈可能な制御コマンドに変換するコマンド変換手段とが備えられる。前記ハーフトーン処理手段は取得手段を備え、該取得手段は前記画像データを取得する。前記ハーフトーン処理手段は、前記表色系ごとに前処理手段を備え、各前処理手段は前記画像データを、各画素が印刷装置によって記録媒体に付着させられるインク量を特定するインク量情報を有するインク量画像データに変換する。さらに、前記ハーフトーン処理手段は合成手段を備え、該合成手段は複数の前記インク量画像データを合成することにより合成画像データを生成する。前記ハーフトーン処理手段は後処理手段を備え、該後処理手段は各画素が前記記録媒体上におけるインクドットの記録可否を特定する記録情報を有する前記ハーフトーンデータに変換する。かかる構成によれば、前記切換手段によれば、各画素の前記色情報の表色系に応じて前記前処理手段を切り換えるため、前記ハーフトーン処理手段全体を切り換えなくても済む。従って、効率のよい印刷制御を実現することができる。
【0006】
また、複数の前記前処理手段によって複数の前記インク量画像データに変換すると、同一の画素について複数の前記インク量情報が重複する場合が生じる。この場合、前記合成手段は、前記インク量画像データの変換元の前記画像データの表色系に応じた優先度に基づいて、複数の前記インク量画像データを重畳する。これにより、特定の表色系の前記色情報に基づいて変換された前記インク量情報を維持して印刷を実行させることができる。ところで、最初から各画素が前記色情報として前記インク量情報を有する前記画像データが取得される場合もある。このような場合には、前記画像データを変換することなくそのまま前記合成手段にすればよい。すなわち、前記前処理手段による変換処理は実質的にスキップされる。この場合、前記合成手段は、前記前処理手段が変換することなく出力し前記インク量画像データを、他の前記インク量情報に優先させて重畳する。すなわち、最初から前記インク量情報が指定されている画像については、最初から指定された前記インク量情報を優先する。これにより、指定した通りの前記インク量情報によって印刷を実行させることができる。従って、厳密な再現性を実現することができる。
【0007】
通信回線を介して接続された外部のコンピュータや前記印刷装置と前記ハーフトーン手段との間でデータ授受を行う手法の一例として、前記コンピュータと前記印刷装置がアクセス可能な記憶領域を前記印刷制御装置に備えさせるようにしてもよい。そして、該記憶領域において、前記コンピュータから送信された前記画像データを前記取得手段が取得可能に格納するとともに、前記コマンド変換手段によって変換された前記制御コマンドを前記印刷装置が取得可能に格納する。なお、前記通信回線は有線/無線LAN回線であってもよいし、USBインターフェイスであってもよい。
【0008】
また、本発明の具体的態様の一例において、前記合成手段は、前記画像データに添付された添付データに基づいて前記色情報の合成方法を取得し、該合成方法に準じて合成を行う。また、前記記録媒体としてのラベルシートをロールから巻き出して印刷するラベルプリンターで印刷を実行させるための前記印刷制御装置に本発明を適用してもよい。
【0009】
さらに、本発明の技術的思想は、具体的な印刷制御装置にて具現化されるのみならず、当該装置にて実行される方法において具現化することもできる。すなわち、上述した印刷制御装置が具備する各手段が行う処理に対応する工程を行う印刷制御方法としても本発明を特定することができる。むろん、上述した印刷制御装置がプログラムを読み込んで上述した各手段を実現する場合には、当該各手段に対応する機能を実行させるプログラムや当該プログラムを記録した各種記録媒体においても本発明の技術的思想が具現化できることは言うまでもない。なお、本発明の印刷制御装置は、単一の装置のみならず、複数の装置によって分散して存在可能であることはいうまでもない。さらに、印刷制御装置が単独で存在しているものに限られず、例えばプリンターやスキャナ等の一部として組み込まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】印刷システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】PCのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】ラベルプリンターの外観を示す斜視図である。
【図4】ラベルプリンターの駆動系と制御系の関係を示すブロック図である。
【図5】印刷システムのソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図6】印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】印刷画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
1.装置構成:
2.印刷処理:
【0012】
1.装置構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷システムの構成を示すブロック図である。同図において、印刷システム1は、クライアントPC10とコントロールPC20とラベルプリンター30とから構成されている。クライアントPC10とコントロールPC20とラベルプリンター30は、LAN回線40を介して相互に通信可能に接続されている。クライアントPC10とコントロールPC20は、一般的なコンピュータであり、ほぼ同様のハードウェア構成を有している。むろん、クライアントPC10とコントロールPC20は同様のハードウェア構成を有しているものに限られず、相互に異なるハードウェア構成を有していてもよい。本実施形態では、クライアントPC10とコントロールPC20が同様のハードウェア構成を有しているものとして以下説明する。
【0013】
図2は、クライアントPC10とコントロールPC20が有する共通のハードウェア構成を示している。同図において、クライアントPC10とコントロールPC20は、それぞれCPUとRAMとROMとハードディスクドライブ(HDD)とLANインターフェイス(I/F)とビデオインターフェイス(I/F)と入力インターフェイス(I/F)とBUSとから構成されている。BUSは、CPUとRAMとROMとHDDとLANI/Fと入力I/Fを相互に通信可能に接続し、CPUとRAMとROMとHDDとLANI/Fと入力I/Fとの間でデータやコマンドの授受が可能となっている。HDDおよびROMにはプログラムデータが記憶されており、該プログラムデータをCPUが読み出してRAMに展開する。そして、CPUが該プログラムデータに準じた演算を実行することにより、後述する各種プログラムが実行される。ビデオI/Fを介して外部のディスプレー50が接続され、入力I/Fを介して外部のキーボード60aとマウス60bが接続されている。
【0014】
図3は、ラベルプリンター30の外観を示す斜視図である。図4は、ラベルプリンター30の駆動系と制御系の関係を示す図である。本実施形態のラベルプリンター30は、一対の脚部31と、該脚部31に支持される本体部32とを有している。脚部31には、支柱31aが設けられているとともに、回転自在なキャスタ31bがキャスタ支持部31cに取り付けられている。本体部32は、不図示のシャーシに支持される状態で内部の各種機器が搭載されており、該各種機器が外部ケース32bによって覆われている。また、図4に示すように、本体部32には、DCモータを用いる駆動系として、ロール駆動機構33とキャリッジ駆動機構34と用紙搬送機構35とが設けられている。
【0015】
ロール駆動機構33は、本体部32に存在するロール搭載部32aに設けられている。ロール搭載部32aは、図3に示すように、本体部32のうち、背面側かつ上方側に設けられており、上述の外部ケース32bを構成する一要素である開閉蓋32cを開くことにより、その内部にロール体RPを搭載し、ロール駆動機構33によってロール体RPを回転駆動させることが可能となっている。ロール体RPには記録媒体としてのラベルシートPが巻回されており、ロール体RPを回駆動させることによりラベルシートPが巻き出される。キャリッジ駆動機構34は、インク供給/噴射機構の構成要素の一部ともなるキャリッジ34aとキャリッジ軸34bを具備し、その他不図示のキャリッジモータやベルト等を具備している。
【0016】
キャリッジ34aは、各色のインク(流体に対応)を貯留するためのインクタンク34cを具備していて、このインクタンク34cには、図示しないチューブを介して、本体部32の前面側に固定的に設けられている不図示のインクカートリッジからインクが供給可能となっている。なお、本実施形態においてはシアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,オレンジ,グリーン,マットブラック,クリアー(C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Cl)のインクを貯留したインクカートリッジが設けられている。C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clのインク量はそれぞれ0〜255の階調によって表される。C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clのインク量の組み合わせ(ベクトル)は、本発明のインク量情報に相当する。図2に示すように、キャリッジ34aの下面には、インク滴を吐出可能な印刷ヘッド34dが設けられている。印刷ヘッド34dには、各インクに対応づけられた不図示のノズル列が設けられていて、このノズル列を構成するノズルには、不図示のピエゾ素子が配置されている。このピエゾ素子の作動により、インク通路の端部にあるノズルからインク滴を吐出することが可能となっている。
【0017】
なお、これらのキャリッジ34aとインクタンク34cと不図示のチューブとインクカートリッジと印刷ヘッド34dによって、インク供給/噴射機構が構成されている。また、印刷ヘッド34dは、ピエゾ素子を用いたピエゾ駆動方式に限られず、例えばインクをヒータで加熱し、発生する泡の力を利用するヒータ方式や磁歪素子を用いる磁歪方式やミストを電界で制御するミスト方式等を採用してもよい。また、インクカートリッジ/インクタンク34cに充填されるインクは、染料系インク/顔料系インク等、いずれの種類のインクを搭載してもよい。
【0018】
用紙搬送機構35は、搬送ローラ対35aとギヤ輪列35bとPFモータ35cと回転検出部35dとを有している。搬送ローラ対35aは、搬送駆動ローラ35a1と搬送従動ローラ35a2とを具備していて、これらの間で、ロール体RPから引き出されるラベルシートPを挟持可能となっている。また、PFモータ35cは、搬送駆動ローラ35a1に対して、ギヤ輪列35bを介して駆動力(回転力)を与えるものである。搬送ローラ対35aよりも下流側(排紙側)には、図示しないプラテンが設けられていて、ラベルシートPは該プラテン上をガイドさせられる。また、プラテンに対向するように印刷ヘッド34dが配設されている。以上の構成により、印刷ヘッド34dとラベルシートPとが、ラベルシートPの面方向に相対移動することが可能となり、ラベルシートP上の任意の位置にノズルからインク滴を吐出することにより、インクドットを記録することが可能となっている。
【0019】
図4に示すように、制御部36は、CPU36aとROM36bとRAM36cとNVRAM36dとASIC36eと(モータ)ドライバー36fとLANI/F36gを具備していて、これらが例えばバス等の伝送路36hを介して相互に接続されている。制御部36は、LANI/F36gを介してコントロールPC20と接続されている。制御部36は、コントロールPC20のHDDに設けられたホットフォルダーHFにアクセスし、該ホットフォルダーHFに記憶されている制御コマンドデータを取得する。そして、制御コマンドデータを解釈することにより、ロール駆動機構33とキャリッジ駆動機構34と用紙搬送機構35を制御するための制御信号を生成し、ロール駆動機構33とキャリッジ駆動機構34と用紙搬送機構35の制御を実行する。具体的には、制御コマンドデータに基づいてラベルシートPの各位置に対してインクドットを記録するか否かが特定される。そして、ラベルシートPの各位置に各ノズルを相対移動させながら、インクドットを記録(インク滴をノズルから吐出)させるための制御信号を生成する。このとき、単位面積あたりに形成される多数のインクドットがラベルシートPを被覆するインク被覆率は、C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clのインク量に対応した大きさとなるように印刷ヘッド34dが制御される。
【0020】
図5は、クライアントPC10とコントロールPC20において実行されるプログラムのソフトウェア構成を示している。クライアントPC10は、アプリケーションP1とプリンタードライバーP2とRIP(Raster Image Processor)P3を実行している。アプリケーションP1は例えばDTPプログラムやCGプログラムやワープロプログラム等であり、画像を描画するための描画コマンドで構成されるベクターデータを作成する。プリンタードライバーP2とRIP P3はベクターデータを取得し、該ベクターデータの描画コマンドに基づいて描画を行うことにより、各画素が色情報を有する画像データを生成する。本実施形態において、プリンタードライバーP2は各画素がRGB表色系の色情報(RGB色空間における位置を表すRGBベクトル)を有する画像データ(RGB画像データ)を生成する。RIP P3は各画素がCMYK表色系の色情報(CMYK色空間における位置を表すCMYKベクトル)を有する画像データ(CMYK画像データ)を生成する。また、RIP P3は、各画素がインク量情報(C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量空間における位置を表すベクトル)を有する画像データ(インク量画像データ)も生成する。
【0021】
コントロールPC20は、ホットフォルダー監視部P5とハーフトーン処理部P4とコマンド変換部P6を実行している。さらにハーフトーン処理部P4は、切換部P4aと第1色変換部P4b(前処理手段)と第2色変換部P4c(前処理手段)とハーフトーン部P4d(後処理手段)と合成部P4eとから構成されている。コントロールPC20のHDDの一部の記憶領域にホットフォルダーHFが割り当てられている。コントロールPC20のHDDには、RGBテーブルTRとCMYKテーブルTCが記憶されている。ホットフォルダー監視部P5は、常駐型のプログラムであり、ホットフォルダーHFに記憶されたデータ(ジョブファイル)を監視する。ハーフトーン処理が未処理の画像データを含むジョブファイルがホットフォルダーHFに記憶されている場合には、ハーフトーン処理部P4が該画像データに対してハーフトーン処理を実行する。
【0022】
具体的には、ホットフォルダーHFに記憶されたジョブファイルが含む画像データがRGB画像データである場合とインク量画像データである場合には、該画像データを第1色変換部P4bによってインク量画像データに色変換するように切換部P4aが切換を行う。なお、ホットフォルダーHFに記憶されたジョブファイルが含むインク量画像データについては、実質的に色変換は行われず、そのままインク量画像データが出力されることとなる。一方、ホットフォルダーHFに記憶されたジョブファイルが含む画像データがCMYK画像データである場合には、該画像データを第2色変換部P4cによってインク量画像データに色変換するように切換部P4aが切換を行う。なお、ホットフォルダーHFに記憶されたジョブファイルに複数の画像データが含まれている場合には、それぞれの画像データに対して、第1色変換部P4bまたは第2色変換部P4cが色変換を行う。
【0023】
なお、RGB画像データは、ドットマトリクス状の多数の画素によって構成されており、各画素がRGB表色系の色情報(RGB色空間における位置を表すRGBベクトル)を有するデータである。CMYK画像データにおいて、各画素がCMYK表色系の色情報(CMYK色空間における位置を表すCMYKベクトル)を有する。インク量画像データにおいては、各画素がインク量情報(C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量空間における位置を表すベクトル)を有する。なお、CMYK画像データとインク量画像データの各画素が有するCMYKの情報は互いに別のものを意味している。合成部P4eは、第1色変換部P4bと第2色変換部P4cから出力されたインク量画像データを取得し、インク量画像データを合成する処理を行う。ハーフトーン部P4dは、合成後のインク量画像データに対して誤差拡散法やディザ法等によるハーフトーン処理を実行する。次に、コマンド変換部P5が該ハーフトーンデータを制御コマンドデータに変換する。ホットフォルダーHFに記憶された制御コマンドデータはラベルプリンター30によって取得され、該制御コマンドデータに基づく印刷が実行される。
【0024】
2.印刷処理
図6は、印刷処理の流れを示している。ステップS100においては、クライアントPC10にて実行されるRIP P3が印刷画像を描画するためのベクターデータを作成する。本実施形態では、プリンターの新機種の広告に社名(EPSON)のロゴが合成されたラベルを印刷するためのベクターデータが作成されるものとする。RIP P3は、キーボード60aとマウス60b等からの入力を受け付けることにより、ベクターデータを作成するために必要な情報を取得する。
【0025】
図7は、本実施形態において印刷される印刷画像を示している。同図において、印刷画像は、プリンターの新機種の写真Iと機種名等を示す文字列TがレイアウトされたCMYKレイヤーL1と、社名のロゴEがレイアウトされたインク量レイヤーL2とから構成されている。RGBレイヤーL1は、写真Iと文字列Tを特定するデータと、写真Iと文字列Tをレイアウトするための位置や大きさや向きを特定するデータとから構成されている。同様に、インク量レイヤーL2も、ロゴEを特定するデータと、ロゴEをレイアウトするための位置や大きさや向きを特定するデータとから構成されている。さらに、各レイヤーL1,L2の重ね合わせ方法を指定するデータもベクターデータには含められている。本実施形態では、CMYKレイヤーL1の上にインク量レイヤーL2を不透明度100%で重ね合わせを行うように指定されているものとする。
【0026】
ステップS110においては、クライアントPC10にて実行されるRIP P3がベクターデータを取得し、該ベクターデータに基づいて描画を行う。本実施形態の印刷画像は、CMYKレイヤーL1とインク量レイヤーL2とから構成されているため、RIP P3はCMYKレイヤーL1とインク量レイヤーL2のそれぞれについて描画を行う。この描画においては、図7に図示したように、写真Iと文字列TをCMYK画像データに配置し、ロゴEをインク量画像データに配置する処理を行う。CMYK画像データは、ドットマトリクス状の多数の画素によって構成されており、各画素がCMYK表色系の色情報(CMYK色空間における位置を表すCMYKベクトル)を有するデータである。インク量画像データは、ドットマトリクス状の多数の画素によって構成されており、各画素がインク量情報(C,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量空間における位置を表すベクトル)を有するデータである。なお、ロゴEは各画素がインク量情報を有する画像オブジェクトであり、インク量情報を直接指定することができるため、より厳密にラベルプリンター30による印刷色や画質を指定することができる。
【0027】
CMYK画像データとインク量画像データは同じサイズ(画素数)とされる。CMYK画像データとインク量画像データとが描画できると、RIP P3はCMYK画像データとインク量画像データの合成方法を指定する添付データを生成する。本実施形態では、CMYKレイヤーL1の上にインク量レイヤーL2を不透明度100%で重ね合わせを行うように指定する添付データが作成される。合成方法は、使用者によって任意に指定されてもよいが、本実施形態ではインク量レイヤーL2が含まれる場合には強制的にインク量レイヤーL2を不透明度100%として上から重ね合わせるようにする。ステップS120において、RIP P3は、以上のようにして作成したCMYK画像データとインク量画像データと添付データを単一のジョブファイルとし、該ジョブファイルをLAN回線40を介してコントロールPC20に送信し、該コントロールPC20のHDDに割り当てられたホットフォルダーHFに記憶させる(ステップS115)。
【0028】
ステップS120においては、コントロールPC20において常駐しているホットフォルダー監視部P5がホットフォルダーHFに記憶されたジョブファイルを検知し、該ジョブファイルを取得する。それと同時に、ハーフトーン処理部P4が起動し、ジョブファイルを取得する(取得手段)。ステップS130においては、ハーフトーン処理部P4の切換部P4aがジョブファイルに含まれる各画像データの種類(表色系)を認識し、各画像データの種類に対応する第1色変換部P4bまたは第2色変換部P4cをロードする。そして、第1色変換部P4bと第2色変換部P4cに対応する画像データが、それぞれ第1色変換部P4bと第2色変換部P4cに出力される。本実施形態では、写真Iと文字列Tが描画されたCMYK画像データと、ロゴEが描画されたインク量画像データがジョブファイルに含まれているため、CMYK画像データに対応する第2色変換部P4cと、インク量画像データに対応する第1色変換部P4bをロードする。ステップS140においては、第1色変換部P4bと第2色変換部P4cが画像データをインク量画像データに変換する。
【0029】
本実施形態では、第1色変換部P4bにはインク量画像データが入力されるため、実質的に変換を行うことなく、インク量画像データがそのまま出力されることとなる。一方、第2色変換部P4cにはCMYK画像データが出力され、該CMYK画像データがインク量画像データに変換される。CMYK画像データをインク量画像データに変換する際に、CMYKテーブルTCが参照される。CMYKテーブルTCはCMYK色空間内とC,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量空間との対応関係を規定したルックアップテーブルであり、CMYKテーブルTCを参照して補間演算を行うことにより、CMYK画像データの各画素が有するCMYKベクトルをC,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量のベクトルに変換することができる。なお、第1色変換部P4bにRGB画像データが入力された場合には、RGBテーブルTRが参照される。RGBテーブルTRとCMYKテーブルTCは、基本的にラベルプリンター30がC,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量に基づいて印刷を行った場合の印刷色と、CMYKまたはRGBの色情報が示す色との間に等色関係が成立するような対応関係が規定されているが、CMYK色空間の色域とRGB色空間の色域とラベルプリンター30が再現可能な色域との差を調整するためのガマットマッピングが考慮されている。従って、変換後のインク量画像データの各画素は、ラベルプリンター30が実際に印刷可能なC,M,Y,K,Or,Gr,mK,Clインク量を有することとなる。
【0030】
第1色変換部P4bと第2色変換部P4cは、厳密な意味で同時にロードされる必要はなく、最初に第1色変換部P4bをロードして色変換を完了した後に、第2色変換部P4cをロードして色変換を実行させるようにしてもよい。いずれにしても、ステップS140が完了する段階で、インク量画像データを色変換した(実質的に変換しなかった)インク量画像データと、CMYK画像データを色変換したインク量画像データとが生成されている。ステップS150においては、合成部P4eが色変換後の各インク量画像データおよびジョブファイルに含まれる添付データを取得する。そして、添付データによって指定された合成方法に基づいて、インク量画像データを合成する。ここでは図7に示すように、写真Iと文字列Tが描画されたCMYK画像データの上に、ロゴEが描画されたインク量画像データを不透明度100%にて重畳する。図7に示すように、ロゴEと写真Iとが同一画素において重複することとなるが、写真Iの上にロゴEが不透明度100%で重ねられるため、ロゴEに基づくインク量が優先されることとなる。以上のようにして、色変換後のインク量画像データが合成できると、該合成を行ったインク量画像データ(合成画像データ)に対してハーフトーン部P4dがハーフトーン処理を実行する(ステップS160)。
【0031】
ステップS170においては、ハーフトーン処理後のハーフトーンデータをコマンド変換部P5が取得し、該コマンド変換部P5が該ハーフトーンデータを制御コマンドデータに変換する。具体的には、ハーフトーンデータに基づいてロール駆動機構33とキャリッジ駆動機構34と用紙搬送機構35を制御するためのデータとして制御コマンドデータが生成される。制御コマンドデータが生成できると、ステップS180において制御コマンドデータがホットフォルダーHFに記憶される。すると、ホットフォルダー監視部P5が制御コマンドデータを検知し、該制御コマンドデータをラベルプリンター30にLAN回線40を介して転送する(ステップS190)。制御コマンドデータを受け取ったラベルプリンター30は、該制御コマンドに基づいてロール駆動機構33とキャリッジ駆動機構34と用紙搬送機構35を制御し、印刷を実行させる。
【0032】
本実施形態のように、インク量画像データとCMYK画像データとを含むジョブファイルが入力された場合でも、単一のハーフトーン処理部P4のみが起動するだけで済む。ハーフトーン処理部P4は、切換部P4aによって第1色変換部P4bと第2色変換部P4cを切り換えるため、インク量画像データとCMYK画像データの双方に対応することができる。インク量画像データとCMYK画像データのそれぞれを色変換したインク量画像データは合成部P4eによって単一の合成画像データに合成されるため、ハーフトーン部P4dは単一の合成画像データについてハーフトーン処理を実行すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1…印刷システム,10…クライアントPC,20…コントロールPC,30…ラベルプリンター,40…LAN回線,P1…アプリケーション,P2…プリンタードライバー,P3…RIP,P4…ハーフトーン処理部,P5…ホットフォルダー監視部,P6…コマンド変換部,P4a…切換部,P4b…第1色変換部,P4c…第2色変換部,P4d…ハーフトーン部,P4e…合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素がいずれかの表色系の色情報を有する画像データをハーフトーンデータに変換するハーフトーン処理手段と、前記ハーフトーンデータを印刷装置が解釈可能な制御コマンドに変換するコマンド変換手段とを備える印刷制御装置であって、
前記ハーフトーン処理手段は、
前記画像データを取得する取得手段と、
前記表色系ごとに備えられ、前記画像データを、各画素が印刷装置によって記録媒体に付着させられるインク量を特定するインク量情報を有するインク量画像データに変換する複数の前処理手段と、
各画素の前記色情報の表色系に応じて、前記インク量情報への変換を実行する前記前処理手段を切り換える切換手段と、
複数の前記前処理手段によって変換された複数の前記インク量画像データを合成することにより合成画像データを生成する合成手段と、
前記合成画像データを、各画素がインクドットを吐出するか否かを指定する記録情報を有する前記ハーフトーンデータに変換し、該ハーフトーンデータを前記コマンド変換手段に出力する後処理手段と、を具備することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
前記合成手段は、複数の前記インク量画像データを変換元の各画像データの表色系に応じた優先度に基づいて重畳することを特徴とする請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
前記前処理手段は、各画素が前記色情報として前記インク量情報を有する前記画像データについては、該画像データを変換することなく前記合成手段に出力し、
前記合成手段は、前記前処理手段が変換することなく出力した前記インク量画像データを他の前記インク量画像データに優先させて重畳することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項4】
通信回線を介して接続された外部のコンピュータと前記印刷装置とによってアクセス可能であるとともに、
前記コンピュータから送信された前記画像データを前記取得手段が取得可能に格納し、
前記コマンド変換手段によって変換された前記制御コマンドを前記印刷装置が取得可能に格納する記憶領域をさらに具備することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項5】
前記合成手段は、前記画像データに添付された添付データに基づいて前記合成を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項6】
前記印刷装置は、前記記録媒体としてのラベルシートをロールから巻き出して印刷するラベルプリンターであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷制御装置。
【請求項7】
各画素がいずれかの表色系の色情報を有する画像データをハーフトーンデータに変換するハーフトーン処理機能と、前記ハーフトーンデータを印刷装置が解釈可能な制御コマンドに変換するコマンド変換機能をコンピュータに実行させる印刷制御プログラムであって、
前記ハーフトーン処理機能は、
前記画像データを取得する取得機能と、
前記表色系ごとに備えられ、前記画像データを、各画素が印刷装置によって記録媒体に付着させられるインク量を特定するインク量情報を有するインク量画像データに変換する複数の前処理機能と、
各画素の前記色情報の表色系に応じて、前記インク量情報への変換を実行する前記前処理機能を切り換える切換機能と、
複数の前記前処理機能によって変換された複数の前記インク量画像データを合成することにより合成画像データを生成する合成機能と、
前記合成画像データを、各画素がインクドットを吐出するか否かを指定する記録情報を有する前記ハーフトーンデータに変換し、該ハーフトーンデータを前記コマンド変換機能に出力する後処理機能と、コンピュータに実行させることを特徴とする印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−161574(P2010−161574A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1839(P2009−1839)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】