説明

印刷制御装置および印刷制御方法、並びにコンピュータープログラム

【課題】印刷発注が連続した場合に、印刷処理全体のスループットの向上を図る。
【解決手段】印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する印刷制御装置であって、画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する印刷発注受信部と、印刷発注受信部により受信した印刷発注に基づいて、印刷発注に含まれる各画像データを印刷装置に順に印刷させるとともに、印刷の終了に伴う終了時処理(例えば下端処理)を印刷装置に実行させる制御部とを備え、制御部は、印刷発注としての第1の印刷発注に基づく終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延する遅延部と、遅延部により遅延している間に、第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が印刷発注受信部により受信された場合に、第1の印刷発注に基づく終了時処理の実行を省略し、第2の印刷発注に基づく画像データの印刷に処理を移す連続印刷制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラの普及に伴い、デジタル画像データを銀塩写真に匹敵する画質で記録する記録装置が種々、提案されている。こうした記録装置の1つとして、ロール状に巻かれた長尺状の印刷媒体(いわゆるロール紙)に複数の画像を印刷し、オートカッターでシートを裁断することにより、画像が1つずつ載った画像シートを得るものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
なお、複数の画像は印刷発注を一単元として印刷がなされるが、その印刷発注の最終画像を印刷した後に、下端処理等の終了時処理を行うことが一般的である(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−266832号公報
【特許文献2】特開2006−116975号公報
【0005】
しかしながら、前記従来の技術では、複数の印刷発注が続いた場合に、先の印刷発注に基づく終了時処理を実行した後に、続けて、次の印刷発注に基づく画像データの印刷がなされ、一連の動作の中で終了時処理が何度も行なわれる。このために、印刷処理全体のスループットが低いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷発注が連続した場合に、印刷処理全体のスループットの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する印刷制御装置であって、
前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する印刷発注受信部と、
前記印刷発注受信部により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延する遅延部と、
前記遅延部により遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記印刷発注受信部により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す連続印刷制御部と
を備える印刷制御装置。
【0009】
適用例1の印刷制御装置によれば、終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延して、その間に、次の印刷発注が受信された場合に、前記終了時処理の実行を省略して、次の印刷発注に基づく画像データの印刷に処理が移される。このために、第1の印刷発注と第2の印刷発注とが連続してなされた場合に、第1の印刷発注に基づく終了時処理が削減されることから、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができる。
【0010】
[適用例2] 適用例1に記載の印刷制御装置であって、前記遅延部は、前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えてから、前記印刷装置で前記第1の印刷発注に基づく最終画像の印刷が開始されるまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【0011】
適用例2の印刷制御装置によれば、遅延部により遅延する所定期間が、第1の印刷発注における最終画像が印刷装置で実際に印刷開始されるまでの期間であることから、その遅延によって実際の印刷が遅延するようなことがない。
【0012】
[適用例3] 適用例1に記載の印刷制御装置であって、前記遅延部は、前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えてから、前記印刷装置で前記全ての画像の印刷が完了するまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【0013】
適用例3の印刷制御装置によれば、遅延部により遅延する所定期間が、印刷装置で第1の印刷発注に基づく全ての画像の印刷が完了するまでの期間であることから、その遅延によって実際の印刷が遅延するようなことがない。
【0014】
[適用例4] 適用例1に記載の印刷制御装置であって、前記遅延部は、前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えたときから、前記印刷装置で前記全ての画像についての印刷が完了後、所定時間が経過するときまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【0015】
適用例4の印刷制御装置によれば、遅延部により遅延する所定期間が、印刷装置で第1の印刷発注に基づく全ての画像の印刷が完了後、所定時間が経過するときまでであることから、より多い頻度で、終了時処理を省略する連続印刷を行うことができる。
【0016】
[適用例5] 適用例1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、前記制御部は、インターレース方式による印刷を実現する構成であり、前記終了時処理は、前記第1の印刷発注に基づく最終の印刷画像の下端処理領域を、下端処理領域より前の通常領域に比較して、小さな送り量で副走査を行なう下端処理を少なくとも含む構成である、印刷制御装置。
【0017】
適用例5の印刷制御装置によれば、インターレース方式による印刷の際の下端処理の削減を図ることができる。
【0018】
[適用例6] 印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する印刷制御方法であって、前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する印刷発注受信工程と、前記印刷発注受信工程により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる制御工程とを備え、前記制御工程は、前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延し、前記遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記印刷発注受信工程により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す構成である、印刷制御方法。
【0019】
[適用例7] 印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷するためのコンピュータープログラムであって、(a)前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する機能と、(b)前記機能(a)により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる機能とをコンピューターに実現させるとともに、前記機能(a)は、前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延する機能と、前記遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記機能(a)により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す機能とを備える、コンピュータープログラム。
【0020】
適用例6の印刷制御方法および適用例7のコンピュータープログラムは、適用例1の印刷制御装置と同様に、第1の印刷発注と第2の印刷発注とが連続してなされた場合に、第1の印刷発注に基づく終了時処理が削減されることから、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができる。
【0021】
さらに、本発明は、上記適用例1ないし7以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、適用例1の印刷制御装置を備えるネットワークシステム、適用例7のコンピュータープログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータープログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例としての印刷システム10の構成を示すブロック図である。
【図2】コンピューター90およびプリンター22のソフトウェアの構成を示すブロック図である。
【図3】印刷発注ODのデータ構造を示す説明図である。
【図4】プリンター22の概略構成を示す説明図である。
【図5】インク吐出用ヘッドにおけるインクジェットノズルNzの配列を示す説明図である。
【図6】印字ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。
【図7】制御回路40の内部構成を示す説明図である。
【図8】印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図9】インターレース方式による記録の様子を示す説明図である。
【図10】プリンターにおける画像データの印刷の様子の一例を示す説明図である。
【図11】下端処理領域における記録の様子を示す説明図である。
【図12】新たな印刷発注が連続してある場合の印刷の様子の一例を示す説明図である。
【図13】第2実施例における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図14】第3実施例における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき説明する。
【0024】
A.第1実施例:
・システム構成:
図1は、本発明の第1実施例としての印刷システムの構成を示すブロック図である。図示するように、印刷システム10は、複数台のクライアントパーソナルコンピュータ(以下、「クライアントPC」と呼ぶ)310、320と、印刷用のコンピューター90と、クライアントPC310,320とコンピューター90とを接続するローカルエリアネットワーク(以下、「LAN」と呼ぶ)330と、コンピューター90に接続されるカラープリンター(以下、単に「プリンター」と呼ぶ)22とを備える。
【0025】
クライアントPC310,320は、例えば、プリントラボステーションと呼ばれる店舗等に設置され、写真印刷を希望する利用者によって操作され、写真印刷の発注(以下、「印刷発注」と呼ぶ)を行う端末装置である。なお、クライアントPC310,320は、一般的なパーソナルコンピュータであってもよいし、写真画像の入力を容易とした専用端末装置であってもよい。クライアントPC310,320から入力された印刷発注は、LAN330を介して、コンピューター90に送信される。なお、クライアントPC310,320は、2台に換えて他の複数の台数とすることもでき、また、複数台に換えて1台とすることもできる。LAN330は有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0026】
コンピューター90は、所定のプログラムがロードされ実行されることによりプリンター22を制御する印刷制御装置として機能する。このコンピューター90は、プログラムに従って各種演算処理を実行するCPU81、ROM82、RAM83を中心に、バス80により相互に接続された次の各部を備える。入力インターフェース84はキーボード14などからの信号の入力を司り、出力インターフェース85は、プリンター22へのデータの出力を司る。CRTC86は、カラー表示可能なCRT21への信号出力を制御し、ディスクコントローラー(DDC)87は、ハードディスク16やCD−ROMドライブ15あるいは図示しないフレキシブルディスクドライブとの間のデータの授受を制御する。ハードディスク16には、RAM83にロードされて実行される各種プログラムやデバイスドライバーの形式で提供される各種プログラムなどが記憶されている。
【0027】
このほか、バス80には、LANインターフェース(LANI/F)88が接続されている。LANI/F88は、LAN330と接続するためのインターフェースである。
【0028】
プリンター22は、長尺状の記録媒体としてのロール紙専用のインクジェットプリンターである。詳細な構成は後述するが、インクを吐出するためのノズルを複数備えたヘッドを、ロール紙の長尺方向と直行する方向に往復動する主走査を行うとともに、長尺方向にヘッドとロール紙とを相対的に移動する副走査を行うことによって画像を印刷する。コンピューター90からプリンター22には、主走査中に各ノズルでいずれの画素にドットを形成するかを特定するラスターデータ、および副走査の送り量を指定する送り量データなどが印刷データとして出力される。プリンター22は、この印刷データに基づいて主走査および副走査を実行することで、ロール紙に写真画像を順に印刷する。プリンター22は、図示しないオートカッターを備えており、ロール紙に印刷された写真画像を個別に切断も行う。プリンター22は、適用例1に記載された印刷装置に該当する。
【0029】
・ソフトウェア構成:
図2は、コンピューター90およびプリンター22のソフトウェアの構成を示すブロック図である。コンピューター90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム94が動作している。アプリケーションプログラム94の内部には、印刷発注受信部95が設けられている。印刷発注受信部95は、クライアントPC310,320から送られてくる印刷発注ODを受信する。
【0030】
図3は、印刷発注ODのデータ構造を示す説明図である。図示するように、印刷発注ODは、写真画像を示す1または複数の画像データORGと、画像データORGが終わりである旨を示す終了コードCDEとを備える。クライアントPC310,320は、画像データORGを1つずつ順に送信し、すべての画像データORGの送信を終えた後に終了コードCDEを送信する。印刷発注受信部95は、それら画像データORGおよび終了コードCDEを順に受信する。
【0031】
図2に示すように、オペレーティングシステムには、ビデオドライバー91やプリンタードライバー96が組み込まれている。アプリケーションプログラム94は、印刷発注受信部95により受信した印刷発注ODに含まれる画像データORGを、ビデオドライバー91を介してCRTディスプレイ21に表示している。アプリケーションプログラム94で生成される画像データORGは、レッド(R),グリーン(G),ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。また、アプリケーションプログラム94は、前記印刷発注ODに含まれる画像データORGを、プリンタードライバー96を介して、次のようにしてプリンター22に印刷している。
【0032】
アプリケーションプログラム94は、印刷発注ODを構成する一の画像データORGを受信すると、その画像データORGをそのままコンピューター90のプリンタードライバー96に転送する。プリンタードライバー96は、スプーラー97により、描画命令のセットとしての形式で画像データORGをアプリケーションプログラム94から受け取り、スプールファイルSFに蓄える。プリンタードライバー96に備えられたデスプーラー98は、スプールファイルSFに蓄えられた描画命令をラスター処理して、画素ごとにR,G,Bの諧調値を有するイメージデータに変換する。
【0033】
プリンタードライバー96の内部には、スプーラー97、スプールファイルSF、デスプーラー98の他に、色変換モジュール99、ハーフトーンモジュール100、送り量設定部101、データ出力部102が備えられている。色変換モジュール99は、予め用意された色変換テーブルLUTに従って、イメージデータの色成分をR,G,Bからプリンター22が表現可能な色成分(ここではシアン、マゼンタ、イエロ、ブラックの各色)に補正する。本実施例のプリンター22は画素ごとにはドットのオン・オフの2値しか採り得ない。従って、ハーフトーンモジュール100は、プリンター22で形成するドットの分散性によって補正された画像データの階調値を表現できるように画素ごとのドットのオン・オフを設定する。
【0034】
送り量設定部101は、印刷の際の副走査量の設定を行う。副走査量は、印刷する1ページの下端付近では、通常時の副走査量よりも小さい副走査量とするが、この副走査量を定めるのが送り量設定部101である。送り量設定部101により設定された副走査量に基づいて、プリンター22の各ノズルの位置を判定し、印刷すべきラスターを選択する。
【0035】
データ出力部102は、ヘッドの主走査方向に合わせて各ラスターの印刷データをヘッドに出力する順序に並べ替える。プリンタードライバー96は、以上の処理を施された画像データおよび副走査の送り量を指定する送り量データを印刷データFNLとしてプリンター22に出力する。この印刷データFNLをプリンター22に出力するまでの処理は、アプリケーションプログラム94から一の画像データORGを受け取る都度に行われる。
【0036】
アプリケーションプログラム94は、印刷発注ODの終了コードCDEを受信すると、その終了コードCDEをコンピューター90のプリンタードライバー96に転送する。プリンタードライバー96は、終了コードCDEを受け取ると、図示しない経路を介して、データ出力部102に、ジョブ終了コマンドCMEをプリンター22に出力させる。上記印刷データFNLおよびジョブ終了コマンドCMEが印刷ジョブを構成することになる。
【0037】
プリンター22では、入力部201がコンピューター90から出力された印刷データFNLを受け取り、バッファ202に一時的に蓄える。バッファ202のデータは主走査部203に出力される。主走査部203は、ヘッドの主走査を行いつつ、印刷データに基づいてインクを吐出する。また、主走査部203によりラスターが形成されると、副走査部204がプリンタードライバー96から指定された副走査量でロール紙を搬送する。入力部201は、主走査部203および副走査部204が印刷を実行している間に残りの部分のデータを逐次入力する。このようにして、印刷データFNLに対応した画像データORGで表される画像が、ロール紙Pに印刷される。すなわち、アプリケーションプログラム94から画像データORGを1つ受ける毎に、その画像の印刷がなされる。
【0038】
また、プリンター22は、アプリケーションプログラム94からジョブ終了コマンドCMEを受け取ると、下端処理を行う。下端処理については、後ほど詳述する。
【0039】
プリンタードライバー96は、さらに、遅延部104および連続印刷制御部106を備える。連続印刷制御部106は、遅延部104からの信号を受けて、送り量設定部101およびデータ出力部102に制御信号を出力する。遅延部104および連続印刷制御部106についても、後ほど詳述する。なお、プリンタードライバー96は、もともとは、記録媒体としてのCD−ROM(図示せず)に記憶されている。なお、プリンタードライバーPrは、CD−ROMに替えて、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ICカード等の他の携帯型記録媒体(可搬型記録媒体)に格納された構成として、これらから提供されたものとすることができる。また、このプリンタードライバー96は、外部のネットワークに接続される特定のサーバから、ネットワークを介して提供されたものとすることもできる。上記ネットワークとしては、インターネットであってもよく、特定のホームページからダウンロードして得たプリンタードライバー96であってもよい。あるいは、電子メールの添付ファイルの形態で供給されたプリンタードライバー96であってもよい。
【0040】
・プリンター構成:
次に、図4によりプリンター22の概略構成を説明する。図示するように、このプリンター22は、紙送りモーター23によってロール紙Pを搬送する機構と、キャリッジモーター24によってキャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ31に搭載された印字ヘッド28を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモーター23,キャリッジモーター24,印字ヘッド28および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とから構成されている。
【0041】
キャリッジ31をプラテン26の軸方向に往復動させる機構は、プラテン26の軸と並行に架設されキャリッジ31を摺動可能に保持する摺動軸34と、キャリッジモーター24との間に無端の駆動ベルト36を張設するプーリ38と、キャリッジ31の原点位置を検出する位置検出センサー39等から構成されている。
【0042】
なお、このキャリッジ31には、黒インク(Bk)用のカートリッジ71とシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロ(Y)の3色のインクを収納したカラーインク用カートリッジ72が搭載可能である。キャリッジ31の下部の印字ヘッド28には計4個のインク吐出用ヘッド61ないし64が形成されている。キャリッジ31に黒(Bk)インク用のカートリッジ71およびカラーインク用カートリッジ72を上方から装着すると、各カートリッジから吐出用ヘッド61ないし64へのインクの供給が可能となる。
【0043】
図示を省略したが、ロール紙Pは保持部に軸支されてプリンター22に供給される。画像の印刷が終了すると、制御回路40からの信号に基づいて、図示しないオートカッターにより、自動的にロール紙Pが、印刷された画像の境界部分で切断される。
【0044】
図5は、インク吐出用ヘッド61〜64におけるインクジェットノズルNzの配列を示す説明図である。これらのノズルの配置は、色ごとにインクを吐出する4組のノズルアレイから成っており、48個のノズルNzが一定のノズルピッチkで千鳥状に配列されている。各ノズルアレイの副走査方向の位置は互いに一致している。本実施例のノズルピッチkは6ドット分に相当する。
【0045】
インクの吐出およびドット形成を行う機構について説明する。図6は印字ヘッド28の内部の概略構成を示す説明図である。図示の都合上、イエロのヘッドについては図示を省略した。各色のヘッド61ないし64に設けられた48個のノズルNzには、ノズルNzまでインクを導くインク通路68に接する位置に各ノズル毎にピエゾ素子PEが配置されている。ピエゾ素子PEとノズルNzとの構造を詳細に示したのが図6である。ピエゾ素子PEは、周知のように、電圧の印加により結晶構造が歪み、極めて高速に電気−機械エネルギの変換を行う素子である。ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に所定時間幅の電圧を印加すると、図示するように、ピエゾ素子PEが電圧の印加時間だけ伸張し、インク通路68の一側壁を変形させる。この結果、インク通路68の体積はピエゾ素子PEの伸張に応じて収縮し、この収縮分に相当するインクが、粒子Ipとなって、ノズルNzの先端から高速に吐出される。このインク粒子Ipがプラテン26に装着されたロール紙Pに染み込むことにより印刷が行われる。
【0046】
次にプリンター22の制御回路40の内部構成を説明する。図7は制御回路40の内部構成を示す説明図である。図示する通り、この制御回路40の内部には、CPU41,PROM42,RAM43の他、コンピューター90とのデータのやりとりを行うPCインターフェース44と、紙送りモーター23、キャリッジモーター24および操作パネル32などとの信号をやりとりする周辺入出力部(PIO)45と、計時を行うタイマー46と、ヘッド61〜64にドットのオン・オフの信号を出力する駆動用バッファ47などが設けられており、これらの素子および回路はバス48で相互に接続されている。また、制御回路40には、所定周波数で各ノズルのピエゾ素子PEを駆動するための駆動波形を出力する発信器51、および発信器51からの出力をヘッド61〜64に分配する分配出力器55も設けられている。
【0047】
制御回路40は、コンピューター90で処理された印刷データを受け取り、これを一時的にRAM43に蓄え、所定のタイミングで駆動用バッファ47に出力する。駆動用バッファ47からは、ノズルごとにドットのオン・オフを示すデータが分配出力器55に出力される。この結果、ドットを形成すべきノズルに対してはピエゾ素子PEを駆動するための駆動波形が出力され、ドットが形成される。
【0048】
なお、本実施例では、上述の通りピエゾ素子PEを用いてインクを吐出するヘッドを備えたプリンター22を用いているが、他の方法によりインクを吐出するプリンターを用いるものとしてもよい。例えば、インク通路に配置したヒータに通電し、インク通路内に発生する泡(バブル)によりインクを吐出するタイプのプリンターに適用するものとしてもよい。インクを吐出してドットを形成する他、いわゆる熱転写型のプリンター、昇華型のプリンター、ドットインパクト型のプリンターなど種々のタイプのプリンターに適用することも可能である。
【0049】
・印刷制御:
次に本実施例における印刷の制御処理について説明する。本実施例では、クライアントPC310,320から印刷発注ODの形で受け渡された1または複数の画像を、余白を設けることなくロール紙Pに順に印刷する。CPU81は、プリンター22を駆動して印刷を実行するためのプ/ログラムであるプリンタードライバープログラムを実行する。プリンタードライバープログラムは、アプリケーションプログラムからの印刷指示によって起動される。プリンタードライバープログラムを実行する際のCPU81の処理の一部である印刷制御処理の内容を図8のフローチャートに示す。
【0050】
この処理が開始されると、CPU81は画像データの入力を行う(ステップS110)。画像データは、前述したように、クライアントPC310,320からアプリケーションプログラム94を介して入力したもので、R,G,Bの階調値によって表現されている。CPU81は、画像データについて、色変換処理を行う(ステップS120)。色変換処理とは、画像データを特定するR,G,Bの色成分を画素ごとにプリンター22で使用可能なC,M,Y,Kの色成分に補正する処理をいう。この処理は、R,G,Bの色系で表された色相に対してC,M,Y,Kの色成分を与える色変換テーブルを用いて行われる。その後、CPU81は色変換された画像データのハーフトーン処理を行う(ステップS130)。ハーフトーン処理の方法としては、いわゆる誤差拡散法やディザ法などの周知の方法を適用することができる。色変換処理およびハーフトーン処理の内容は周知であるため詳細な説明は省略する。
【0051】
次に、CPU81は、プリンター22の副走査量を設定し、プリンター22に転送するデータを抽出するための処理を実行する(ステップS140)。つまり、CPU81は、プリンター22の副走査量を設定し、その副走査の送り量に基づいて、プリンター22の各ノズルが画像データのいずれのラスターを形成すべきかを判定し、該ラスターのデータを抽出する。ここでは、インターレース方式による記録を行うべくラスターデータの抽出を行っている。
【0052】
図9はインターレース方式による記録の様子を示す説明図である。図示の都合上、4ドットピッチで7つのノズルを備えるヘッドを例示した。図の左側には、1回目〜6回目の各主走査におけるヘッドの副走査方向の位置を示した。丸囲みの数字がそれぞれノズルを意味する。数字はノズル番号である。図の右側には、各ノズルで形成されるドットの様子を示した。図示する通り、各ラスターを1回の主走査で形成しつつ、7ラスターの一定の送り量で副走査を行うことにより、図中の印刷可能領域に画像を印刷することができる。ステップS140の処理では、一定値7ドットという副走査量を設定し、主走査用データであるラスターデータの抽出を行う。
【0053】
次に、CPU81は、こうして抽出された各ノズルへの供給データを副走査の送り量のデータとともに、印刷データFNLとしてプリンター22に出力する(ステップS150)。その後、CPU81は、終了コードCDEの入力があるか否かを判定する(ステップS160)。終了コードCDEは、前述したように、クライアントPC310,320からアプリケーションプログラム94を介して入力するもので、ステップS160では、この入力があるか否かを判定する。入力がない場合には、ステップS110に戻して、次の画像データORGについての印刷データFNLをプリンター22に出力する処理を行う。この印刷データFNLを出力する処理を、印刷発注ODに含まれる全ての画像データORGが終了するまで繰り返し実行する。
【0054】
ステップS160で、終了コードCDEの入力があると判定された場合には、CPU81は、新たな印刷発注ODの入力があるか否かを判定する(ステップS170)。アプリケーションプログラム94は、クライアントPC310、320から新たな印刷発注ODが発行されると、それを受信して、新たな印刷発注ODがあった旨をプリンタードライバー96に通知する。ステップS170では、この通知を受けることで、新たな印刷発注ODの入力があったと判定することができる。なお、新たな印刷発注ODとは、ステップS110ないしS150で印刷データの出力が完了した印刷発注とは相違する印刷発注ODである。以下、ステップS110ないしS150で印刷データの出力が完了した印刷発注を「第1の印刷発注」と呼び、新たな印刷発注を「第2の印刷発注」と呼ぶ。
【0055】
ステップS170で第2の印刷発注の入力がないと判定された場合には、CPU81は、ステップS180に処理を進める。ステップS180では、プリンター22に対して、現在印刷しているページ番号(以下、「印刷中ページ番号」と呼ぶ)を問い合わせて、プリンター22から印刷中ページ番号を取得する。印刷中ページ番号は、印刷発注ODに含まれる画像データORGのうちの何番目の画像データを印刷している最中であるかを特定しうる情報である。
【0056】
ステップS180の実行後、CPU81は、ステップS180で取得した印刷中ページ番号が、印刷発注ODに含まれる最終の画像データORGであるか否かを判定し(ステップS190)、最終の画像データORGであると判定されるまで、ステップS170、S180の処理を繰り返す。すなわち、終了コードCDEの入力がなされてから、プリンター22において最終の画像データORGが実際に印刷中となるまでの期間(以下、「所定期間」と呼ぶ)、ステップS170ないしS190が繰り返されて、時間の遅延がなされる。換言すれば、第1の印刷発注に基づく全ての画像データORGの受信を終えてから、プリンター22において最終の画像データORGが印刷開始されるまでの期間、時間の遅延がなされる。ステップS160ないしS190の処理が、遅延部104(図2)に対応する。
【0057】
ステップS190で、最終の画像データORGであると判定されると、CPU81は、下端処理用の送り量を設定し(ステップS192)、印刷ジョブが終了した旨を示すジョブ終了コマンドを、下端処理用の送り量のデータとともに、プリンター22に出力する(ステップS194)。このステップS194の処理が、適用例1における「終了時処理の実行指示の発行」に相当する。
【0058】
図10は、プリンター22における画像データの印刷の様子の一例を示す説明図である。図示は、図3に示した印刷発注ODの例示に対応するものである。ロール紙Pには、その先端PTPから5つの画像データのそれぞれに対応した画像が順に印刷される。5ページ目である最終の印刷画像の印刷領域では、予め設定された所定数のラスターの印刷が終了すると、下端処理領域に移行する。
【0059】
図11は、下端処理領域における記録の様子を示す説明図である。図9と同様、4ドットピッチで7つのノズルを備えるヘッドについて例示した。図中には、L−6回目〜L+5回目までの12回の主走査におけるヘッドの副走査方向の位置を示した。
【0060】
図11に示す通り、本実施例では、L−4回目の主走査が終了すると、下端処理として、5ラスターの送り量で副走査を行い、その後は3ラスターずつの送り量で副走査を行う。このため、下端処理領域より前の通常領域に比較して小さな送り量で副走査を実行するため、ラスターを副走査方向に密に形成することができる。この結果、図11に示す通り、領域Aの範囲内でラスターの抜けを生じることなく画像を印刷することができる。この領域Aの範囲は、下端処理を行わない場合に比べて遙かに小さいもので、下端処理を行うことにより、高精度送りでの印刷可能領域を拡張することができる。
【0061】
図8のステップS192では、下端処理用の送り量を、図11に例示したように通常領域よりも小さい値に設定する。そうして、ステップS194で、下端処理用の送り量のデータとともにジョブ終了コマンドを、プリンター22に出力する。
【0062】
プリンター22は、下端処理用の送り量のデータとジョブ終了コマンドの入力を受けると、その送り量に基づく下端処理を実行するとともに、ジョブ終了コマンドに基づく印刷後処理を実行する。下端処理は、図11に例示した前述したものである。印刷後処理は、印刷発注に含まれる全ての画像データの印刷が完了後に行なわれる処理である。本実施例では、印刷後処理は、最終の画像の後ろ側(ロール紙Pの搬送方向の上流側)の境界部分を切断する際に、切断箇所を最終前の画像の境界部分を切断する際の通常位置よりも所定量(わずかな量)だけ下流側に切断する切断制御を行い、その後、ロール紙をその収納部に巻き戻すといったものである。前記下端処理および印刷後処理が、適用例1に記載された終了時処理に該当する。
【0063】
ステップS194の実行後、「リターン」に抜けて、印刷制御処理を一旦終了する。一方、ステップS170で新たな印刷発注(第2の印刷発注)の入力があると判定された場合には、CPU81は、ステップS110に処理を戻して、第2の印刷発注についての画像データの入力を行う(ステップS110)。すなわち、ステップS170で第2の印刷発注の入力があると判定された場合には、CPU81は、第1の印刷発注に基づく下端処理用の送り量とジョブ終了コマンドのプリンター22への出力を省略して、直ちに第2の印刷発注についての画像データの印刷に処理を移す。この構成が、連続印刷制御部106(図2)に対応する。
【0064】
第1の印刷発注と第2の印刷発注との間が離れている場合、図10に例示した一の印刷発注に基づく印刷が、第1の印刷発注および第2の印刷発注のそれぞれに対して個別に実行される。すなわち、第1の印刷発注および第2の印刷発注のそれぞれに対して下端処理が施される。これに対して、前述した所定の期間に、新たな印刷発注(第2の印刷発注)の入力があると判定された場合には、ステップS170で肯定判別されることから、図12に示すように、第1の印刷発注に基づく下端処理が省略されて、第2の印刷発注に基づく画像が第1の印刷発注に基づく画像に連続して印刷され、第2の印刷発注に基づく下端処理だけが実行されることになる。
【0065】
なお、第2の印刷発注の処理中にステップS170で、新たな印刷発注(第3の印刷発注)の入力があったと判定された場合には、ステップS110に処理が戻される。このために、第2の印刷発注に基づく下端処理用の送り量とジョブ終了コマンドのプリンター22への出力が省略され、直ちに第3の印刷発注についての画像データの印刷に処理が移される。このように、先の印刷発注の処理中にステップS170で、新たな印刷発注の入力があったと判定された場合には、先の印刷発注に基づく下端処理用の送り量とジョブ終了コマンドのプリンター22への出力が省略され、新たな印刷発注についての画像データの印刷に処理が移され、こうした処理が繰り返されることになる。
【0066】
・効果:
以上のように構成された印刷システム10に含まれるコンピューター90によれば、図12に示したように、第1の印刷発注ODと第2の印刷発注ODとが連続してなされた場合に、第1の印刷発注ODに基づく下端処理および印刷後処理が削減される。したがって、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができる。また、本実施例では、第1の印刷発注ODの終わりを示す終了コードCDEが受信されてから、プリンター22により実際に、第1の印刷発注ODに基づく最終画像が印刷開始されるまでの間を所定期間として、この所定期間に第2の印刷発注ODの受信を検知するように構成している。このために、第2の印刷発注ODの受信を待つことによって実際の印刷が遅延するようなことがない。
【0067】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。本発明の第2実施例としての印刷システムは、第1実施例の印刷システム10と比較して、コンピューター90のCPU81で実行される印刷制御御処理(第1実施例では図8)が相違するだけで、ハードウェアの構成や、その他のソフトウェアの構成は同一である。なお、第1実施例と同一の構成については、第1実施例と同一の符号を用いて以下の説明を行う。
【0068】
図13は、第2実施例における印刷制御処理を示すフローチャートである。この印刷制御処理は、第1実施例における印刷制御処理(図8)と比較して、ステップS110ないしS160、S179、S192、S194の点で同一であり、ステップS265、S280、S290の点で相違する。
【0069】
図13に示すように、処理が開始されると、CPU81は、まず、第1実施例と同じ処理内容のステップS110ないしS160の処理を実行する。ステップS160で、終了コードCDEの入力があると判定された場合には、CPU81は、第1の印刷発注ODの最終の画像データORGがプリンター22により実際に印刷開始される時間を予測する(ステップS265)。この時間は、第1の印刷発注ODの印刷が開始されてから最終の画像データORGが印刷開始されるまでの時間であり、以下、最終画像印刷開始時間TAと呼ぶ。この最終画像印刷開始時間TAは、最終画像までの印刷枚数や、最終画像までの印刷データとして送信したデータ行数等から求めることができる。
【0070】
ステップS265の実行後、第1実施例と同じステップS170の処理を実行して、ステップS170で、新たな印刷発注の入力がないと判定された場合には、CPU81は、コンピューター90に設けられた図示しないタイマーを用いて、第1の印刷発注の印刷をプリンター22で開始してからの経過時間Tを取得し(ステップS280)、その経過時間Tが最終画像印刷開始時間TA以上となったか否かを判定する(ステップS290)。
【0071】
ステップS290で、経過時間Tが最終画像印刷開始時間TAを下回ると判定された場合には、ステップS170に処理を戻す。一方、ステップS290で、経過時間Tが最終画像印刷開始時間TA以上であると判定された場合には、ステップS192に処理を移行する。
【0072】
以上のように構成された第2実施例のコンピューター90によれば、第1実施例と同様に、第1の印刷発注ODと第2の印刷発注ODとが連続してなされた場合に、第1の印刷発注ODに基づく下端処理および印刷後処理が削減されることから、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができるという効果を奏する。また、第2実施例では、第1実施例と同様に、第1の印刷発注ODの終わりを示す終了コードCDEが受信されてから、プリンター22により第1の印刷発注ODに基づく最終画像が印刷開始されるまでの間、第2の印刷発注ODの受信を待つことができる。このために、第2の印刷発注ODの受信を待つことによって実際の印刷が遅延するようなことがない。
【0073】
C.第3実施例:
本発明の第3実施例について説明する。本発明の第3実施例としての印刷システムは、第2実施例の印刷システムと比較して、コンピューター90のCPU81で実行される印刷制御御処理(第2実施例では図13)が相違するだけで、ハードウェアの構成や、その他のソフトウェアの構成は同一である。なお、第1実施例と同一の構成については、第1実施例と同一の符号を用いて以下の説明を行う。
【0074】
図14は、第3実施例における印刷制御処理を示すフローチャートである。この印刷制御処理は、第2実施例における印刷制御処理(図13)と比較して、ステップS365およびS390(図13ではステップS265およびS290が対応)の内容が相違するだけで、その他のステップは同一である。
【0075】
ステップS160に続くステップS365では、終了コードCDEの入力があるまでに出力した全ての印刷データ、すなわち、第1の印刷発注ODについての全ての印刷データをプリンター22で印刷するに要する時間(以下、「印刷所要時間」と呼ぶ)TBを演算する。この印刷所要時間は、第2実施例と同様に、印刷枚数や、印刷データとして送信したデータ行数等から求める。ステップS280に続くステップS390では、経過時間Tが印刷所要時間TB以上となったか否かを判定する。
【0076】
すなわち、第1実施例では、遅延部により遅延する所定期間を、第1の印刷発注ODに基づく最終画像が印刷開始されるまでとしたが、これに対して、第3実施例では、プリンター22により第1の印刷発注ODに基づく全ての画像の印刷が完了するまでとした。
【0077】
以上のように構成された第3実施例によれば、第2実施例と同様に、第1の印刷発注ODと第2の印刷発注ODとが連続してなされた場合に、第1の印刷発注ODに基づく下端処理および印刷後処理が削減されることから、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができる。また、本実施例では、第1の印刷発注ODの終わりを示す終了コードCDEが受信されてから、プリンター22により第1の印刷発注ODに基づく全ての画像の印刷が完了するまでの間、第2の印刷発注ODの受信を待つことができる。
【0078】
D.第4実施例:
本発明の第4実施例について説明する。第3実施例で実現した構成、すなわち、遅延部により遅延する所定期間を、プリンター22により第1の印刷発注ODに基づく全ての画像の印刷が完了するまでとした構成を、この第4実施例では、第1実施例を変形することで得るようにした。詳しくは、第1実施例と同様に、プリンター22に対して何枚目の画像データを印刷中であるかを問い合わせて、全ての画像の印刷を完了したことを知る構成とし、全ての画像の印刷が完了したことを検知したときに、ステップS192(図8)に処理を進める構成とする。
【0079】
この第4実施例によれば、第3実施例と同様に、第1の印刷発注ODの終わりを示す終了コードCDEが受信されてから、プリンター22により第1の印刷発注ODに基づく全ての画像の印刷が完了するまでの間、第2の印刷発注ODの受信を待つことができる。
【0080】
E.第5実施例:
本発明の第5実施例について説明する。本発明の第5実施例は、第3実施例と比較して、印刷制御御処理(第3実施例では図14)におけるステップS390が相違するだけで、ハードウェアの構成や、その他のソフトウェアの構成は同一である。第3実施例のステップS390では、経過時間Tが印刷所要時間TB以上となったか否かを判定していたが、これに換えて、本実施例では、経過時間Tが、印刷所要時間TBと所定時間TCとの和以上となったか否かを判定する構成とする。ここで、所定時間TCは、一定の値であり、プリンター22で印刷を行ったときに、その印刷終了後から印字品質が安定するまでに要する時間である。所定時間TCは、例えば3分である。なお、所定時間TCは、印刷終了後から印字品質が安定するまでに要する時間に限る必要はなく、その他の時間に換えることもできる。
【0081】
この構成によっても、前記第1ないし第4実施例と同様に、第1の印刷発注ODと第2の印刷発注ODとが連続してなされた場合に、第1の印刷発注ODに基づく下端処理および印刷後処理が削減されることから、印刷処理全体のスループットの向上を図ることができるという効果を奏する。また、この第5実施例では、所定時間TCだけ余分に第2の印刷発注の受信を待つことができることから、より多い頻度で、終了時処理を省略する連続印刷を行うことができる。この結果、ジョブ終了コマンドを受けた後の印刷後処理で、終端を余分なマージンだけ切り落とす処理を行うような場合に、この印刷後処理を削減することができることから、ロール紙の節約を図ることができる。
【0082】
F.第6実施例:
本発明の第6実施例について説明する。第5実施例で実現した構成、すなわち、遅延部により遅延する所定期間を、所定時間TCだけ大きくした構成を、この第6実施例では、第4実施例を変形することで得るようにする。詳しくは、第4実施例と同様に、プリンター22に対して何枚目の画像データを印刷中であるかを問い合わせて、全ての画像の印刷を完了したことを知る構成とし、全ての画像の印刷が完了したことを検知したときから所定時間TCだけ遅延したときを、遅延部により遅延する所定期間の終端とする。
【0083】
この第6実施例によれば、第5実施例と同様に、所定時間TCだけ余分に第2の印刷発注の受信を待つことができ、第5実施例と同一の効果を奏する。
【0084】
G.変形例:
G−1.変形例1:
上記各実施例および変形例においては、遅延部により遅延する終了時処理を、前述した下端処理と印刷後処理との双方としたが、これに換えて、印刷後処理だけとすることができる。すなわち、ジョブ終了コマンドの送信だけを遅延する構成とすることができる。また、前記終了時処理は、前記下端処理とすることもできる。さらに、前記終了時処理として前記下端処理を少なくとも含む構成とすることもできる。さらに、終了時処理は、下端処理以外の他の処理に換えることもできる。
【0085】
G−2.変形例2:
上記各実施例および変形例においては、記録媒体としてのシートSを、ロール状に巻き重ねたロール紙としたが、これに限る必要はなく、長尺状の他の紙としてもよい。また、紙に限る必要もなく、フィルム等の他の記録媒体に適用することもできる。
【0086】
G−3.変形例3:
上記各実施例および変形例においては、印刷発注をクライアントPC310,320で行う構成としたが、これに換えて、クライアントPC310,320を不要なものとし、プリンター22に接続されるコンピューター90で印刷発注を行う構成としてもよい。
【0087】
G−4.変形例4:
上記各実施例および変形例では、インクジェットプリンターについて説明したが、本発明は、インクジェットプリンター以外のプリンター、例えばーレーザープリンター、インパクトプリンター等に適用することができる。また、プリンターに限る必要もなく、ファクシミリ等の他の記録装置に換えることもできる。
【0088】
なお、前述した実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明はこれらの実施例および各変形例になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の態様での実施が可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…印刷システム
14…キーボード
16…ハードディスク
22…プリンター
23…紙送りモーター
24…キャリッジモーター
26…プラテン
28…印字ヘッド
31…キャリッジ
32…操作パネル
34…摺動軸
36…駆動ベルト
38…プーリ
39…位置検出センサー
40…制御回路
41…CPU
61〜64…インク吐出用ヘッド
68…インク通路
72…カラーインク用カートリッジ
80…バス
81…CPU
84…入力インターフェース
85…出力インターフェース
90…コンピューター
91…ビデオドライバー
94…アプリケーションプログラム
95…印刷発注受信部
96…プリンタードライバー
97…スプーラー
98…デスプーラー
99…色変換モジュール
100…ハーフトーンモジュール
101…送り量設定部
102…データ出力部
104…遅延部
106…連続印刷制御部
201…入力部
202…バッファ
203…主走査部
204…副走査部
310、320…クライアントPC
TA…最終画像印刷開始時間
TB…印刷所要時間
PC…クライアント
TC…所定時間
OD…印刷発注
CDE…終了コード
CME…ジョブ終了コマンド
ORG…画像データ
FNL…印刷データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する印刷制御装置であって、
前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する印刷発注受信部と、
前記印刷発注受信部により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延する遅延部と、
前記遅延部により遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記印刷発注受信部により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す連続印刷制御部と
を備える印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷制御装置であって、
前記遅延部は、
前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えてから、前記印刷装置で前記第1の印刷発注に基づく最終画像の印刷が開始されるまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の印刷制御装置であって、
前記遅延部は、
前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えてから、前記印刷装置で前記全ての画像の印刷が完了するまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷制御装置であって、
前記遅延部は、
前記所定期間として、前記印刷発注受信部により前記第1の印刷発注に基づく全ての画像データの受信を終えたときから、前記印刷装置で前記全ての画像についての印刷が完了後、所定時間が経過するときまでの期間だけ、前記実行指示の発行を遅延する構成である、印刷制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷制御装置であって、
前記制御部は、インターレース方式による印刷を実現する構成であり、
前記終了時処理は、前記第1の印刷発注に基づく最終の印刷画像の下端処理領域を、下端処理領域より前の通常領域に比較して、小さな送り量で副走査を行なう下端処理を少なくとも含む構成である、印刷制御装置。
【請求項6】
印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷する印刷制御方法であって、
前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する印刷発注受信工程と、
前記印刷発注受信工程により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる制御工程と
を備え、
前記制御工程は、
前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延し、
前記遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記印刷発注受信工程により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す構成である、印刷制御方法。
【請求項7】
印刷装置を制御して、複数の画像を長尺状の印刷媒体へ順に印刷するためのコンピュータープログラムであって、
(a)前記画像を表す1または複数の画像データを含む印刷発注を受信する機能と、
(b)前記機能(a)により受信した印刷発注に基づいて、前記印刷発注に含まれる各画像データを前記印刷装置に順に印刷させるとともに、前記印刷の終了に伴う終了時処理を前記印刷装置に実行させる機能と
をコンピューターに実現させるとともに、
前記機能(a)は、
前記印刷発注としての第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行指示の発行を、所定期間、遅延する機能と、
前記遅延している間に、前記第1の印刷発注とは相違する第2の印刷発注が前記機能(a)により受信された場合に、前記第1の印刷発注に基づく前記終了時処理の実行を省略し、前記第2の印刷発注に基づく前記画像データの印刷に処理を移す機能と
を備える、コンピュータープログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−81717(P2012−81717A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232102(P2010−232102)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】