説明

印刷制御装置

【課題】 大量ページの印刷ジョブを印刷後にその印刷ジョブ内の複数箇所のページを再印刷するとき、他の印刷ジョブに影響を与えることなく、効率よく再印刷することのできる印刷制御装置を提供する。
【解決手段】 印刷ジョブの中で印刷対象とするページを指定する再印刷ジョブ情報に登録番号を付加して登録する手段と、受信したデータから通常の印刷ジョブか再印刷ジョブかを識別する手段と、再印刷ジョブの場合には前記登録した再印刷ジョブ情報と上位装置からの印刷データが同じ印刷ジョブであるかを照合する手段と、同じ印刷ジョブであれば前記登録してある再印刷ジョブ情報を登録番号をキーに検索する手段と、検索した結果の再印刷ジョブ情報のデータを取り出す手段を設け、再印刷ジョブ情報の印刷対象ページに従い上位装置から受信した印刷ジョブの複数箇所に分散している印刷対象ページを抽出して印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上位装置でPostscriptなどで作成された大量ページを印刷する印刷ジョブで印刷終了後、印刷結果から該当印刷ジョブの複数箇所の複数ページを再印刷する印刷制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、汎用コンピュータシステムやオープンシステムにおいて、Postscriptによって作成された印刷ジョブで連続用紙(ロール紙)などに印刷する場合、少なくとも1印刷ジョブが2000ページ以上でかつ複数の印刷ジョブを印刷することが多い。
【0003】
例えば、ダイレクトメールのあて先など大量ページを複数ジョブ印刷し、印刷終了した結果を後処理装置などで裁断し封入したり、圧着紙を折り畳み圧着してハガキに加工することが多い。この後処理の後にオペレータが印刷結果を検査した際、印刷機器や後処理機のムラや不具合などにより、印刷したページに汚れや擦れ、印字ズレなどが複数箇所に分散して複数ページに発生した場合、再度すべての印刷ジョブを再印刷するか、または上位装置から再印刷するページを指定して必要なページだけを再印刷する。全て再印刷した場合、印刷ページの中には再印刷する必要のないページまで再印刷するため、無駄が多く、大量の印刷済みの用紙から必要なページだけを抽出して再度後処理を行なうのは大変な作業量で容易ではない。
【0004】
また、再印刷するページを指定して必要なページだけを再印刷する場合は、再印刷するべきページが印刷ジョブの複数の箇所に分散していると分散している箇所ごとにページを指定した再印刷の印刷ジョブを実行しなければならなかった。
【0005】
特に、Postscriptは、ページの区切りは明確に認識することは出来るが、ページにまたがって有効となるパラメータもあり、単純にページで区切る訳にはいかないため、少なくとも印刷ジョブの先頭から再印刷する最後のページまでの印刷データを印刷制御装置に転送し、再印刷する最初のページの前のページまでは、印刷しないようにする必要がある。
【0006】
いずれにしても指定した再印刷するページには必要でない印刷データも印刷制御装置に転送する必要がある。また、印刷制御装置も再印刷するページに必要でない印刷データを処理するため、この不要な印刷データの処理中は印刷出力を行えず無駄である。このため、再印刷する箇所が、複数箇所に分散していると箇所回数分、再印刷する印刷ジョブの印刷データを印刷制御装置に転送することになり、高価な高速プリンタを無駄に専有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2001−080142号公報
【特許文献2】特許第3262520号公報
【特許文献3】特開2007−179140号公報
【特許文献4】特開2007−015225号公報
【特許文献5】特開2005−346357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
印刷ジョブの再印刷については、用紙ジャム等が発生した際の回復方法として一般的には、中間ファイル等を印刷制御装置内に持ち、再印刷するときにプレビューで確認したり、再印刷したいページ情報を情報記録媒体に格納し印刷制御装置に読み込んだり、また、これらの情報を上位装置に送信し、該当ページのみ印刷するような機能やシステムが多く見受けられる。
【0009】
しかしながら、これらの方法は、数ページの再印刷であれば確実であり、かつ有効な手段であるが、本課題である大量ページの印刷ジョブ内の複数箇所に分散した複数ページの再印刷に当てはめた場合、大変な手間を要して容易ではない。
【0010】
また、大量ページの中間ファイルを印刷制御装置内に記憶する場合、物理的な限界があり、記憶容量は有限であるので、1回目の印刷から再印刷までが短時間であれば印刷制御装置に残っている中間ファイルなどから効率よく再印刷できるが、後処理機で処理した後に再印刷が必要なページが見つかるまでには時間が経過している場合には印刷制御装置の中には再印刷したい印刷ジョブが残っているとは限らない。印刷そのものが正常に終了した場合には、印刷ジョブは印刷制御装置から消去されるのが一般的である。
【0011】
本発明の目的は、大量ページの印刷ジョブを印刷後にその印刷ジョブ内の複数箇所のページを再印刷するとき、他の印刷ジョブに影響を与えることなく、効率よく再印刷することのできる印刷制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため本発明は、汎用コンピュータシステムやオープンシステムなどの上位装置とネットワークインタフェースで接続する手段と、ネットワークに接続されている前記上位装置から印刷データを受信する手段と、受信した印刷データをドットイメージに展開する機能と、その展開したドットイメージを印刷装置に出力して印刷する機能を有する印刷制御装置において、
印刷ジョブの中で印刷対象とするページを指定する再印刷ジョブ情報に登録番号を付加して1つまたは2つ以上登録する手段と、受信したデータから通常の印刷ジョブか再印刷ジョブかを識別する手段と、再印刷ジョブの場合には前記登録した再印刷ジョブ情報と上位装置からの印刷データが同じ印刷ジョブであるかを照合する手段と、同じ印刷ジョブであれば前記登録してある再印刷ジョブ情報を登録番号をキーに検索する手段と、検索した結果の再印刷ジョブ情報のデータを取り出す手段を設け、
前記再印刷ジョブ情報の印刷対象ページに従い上位装置から受信した印刷ジョブの複数箇所に分散している印刷対象ページを抽出して印刷することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、Postscriptなどで作成された印刷データでページ単位に印刷データを抜き出し、再印刷することが難しい印刷ジョブの場合であっても確実に指定した複数箇所の複数ページを効率良く再印刷することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明では、上位装置から送信された再印刷ジョブ情報を記憶し、該当する印刷ジョブが上位装置から送信された場合、記憶していた再印刷ジョブ情報と同一か判定することで、必要な複数箇所の複数ページのみ印刷することができる手段を備える。
【0015】
再印刷ジョブ情報は、印刷中に取得することはできない。オペレータは、印刷が全て終了した後や印刷済みの用紙をさらに後処理した結果を検査し、再印刷のページを確定するためである。この確定した再印刷ジョブ情報を印刷制御装置に記憶させるために、印刷制御装置の備え付けの表示器から入力することも可能であるが、この場合、多くの再印刷ジョブ情報をオペレータがキー入力しなければならない。また、オペレータが再印刷ジョブ情報を入力している間、再印刷に関係のない他の印刷ジョブも止めなければならなくなり、再印刷ジョブ情報を入力するために高価な高速のプリンタを長時間占有して効率が良くないことは明らかである。そこで、再印刷ジョブ情報を通常の印刷データと同じ手段で上位装置から送信することができ、かつ再印刷に関係の無い印刷ジョブを止めることなく再印刷することが出来る手段を備える。
【0016】
通常、印刷ジョブは、ネットワークを介して汎用コンピュータシステムやオープンシステムのデータ送信アプリケーションから印刷制御装置に転送されている。例えば、印刷制御装置にデータを送信するネットワークのプロトコルを一般的に利用されているlprとすると、このlprから送信するデータとして再印刷ジョブ情報を送信することで、新たな手段を設けることなく再印刷ジョブ情報を印刷制御装置に登録することができる。
【0017】
しかしながら、lprによって送信しても、通常の印刷ジョブか再印刷ジョブ情報が判断できないため、PDLであるPostscriptのコマンドにベンダユニークなコマンドとして再印刷ジョブ情報を指定する新たなコマンドを設ける。このコマンドとlprの情報を組み合わせることで、通常の印刷ジョブと区別することができるだけではなく、複数の上位装置から送信される再印刷ジョブ情報を記憶することができる。
【0018】
以下図面を参照して、本発明の実施形態に係る印刷制御装置を説明する。図1は、ネットワークに接続された高速プリンタおよび印刷制御装置の一例を示す図である。図2は、印刷制御装置に本発明を適用した例を示すブロック図である。図3は、再印刷ジョブ情報テーブルの例を示す図である。
【0019】
印刷制御装置103は、上位装置であるPC1(100)〜PC3(102)から送信された印刷ジョブを受信し、CPU204は印刷ジョブ記憶テーブル212に記憶する。その後、CPU204は、受信した印刷ジョブをドットイメージに展開しプリンタバッファ206に格納しデータ送信回路210からプリンタ211へドットイメージを送信し印刷する。オペレータは、印刷結果や印刷済み用紙を後処理した後にその結果をチェックし、再印刷が必要か判断する。
【0020】
再印刷が必要な場合、オペレータは、PC1(100)〜PC3(102)の何れかを使い、再印刷に必要な情報である再印刷ジョブ情報記憶テーブル301の内容を入力して印刷制御装置103に転送するための再印刷ジョブ情報ファイルを作成する。この作成した再印刷ジョブ情報ファイルをネットワーク105を介して、PCから印刷制御装置103にlprプロトコルで転送する。印刷制御装置103は、PCが送信した再印刷ジョブ情報ファイルを受信し再印刷ジョブ情報記憶テーブル209に記憶する。
【0021】
次に図2を用いて、上位装置200からの印刷ジョブを例に再印刷ジョブ情報の取得から再印刷までの動作を説明する。尚、ここで言う上位装置200は、印刷ジョブや再印刷ジョブ情報を印刷制御装置103に転送するPC1(100)〜PC3(102)であり、図1の印刷制御装置103と図2の印刷制御装置201は同じものを指している。
【0022】
上位装置200から受信した印刷ジョブを印刷制御装置201の受信バッファ203に格納し、CPU204は再印刷ジョブ情報検出205で再印刷ジョブ情報をチェックする。通常の印刷ジョブであれば、CPU204は受信バッファ203の印刷ジョブを印刷ジョブ記憶テーブル212に記憶させて、その後プリンタバッファ206にドットイメージを展開しデータ送信回路210を経由してプリンタ211で印刷する。
【0023】
その結果をオペレータが検査し、再印刷が必要と判断した場合、オペレータは、再印刷ジョブ情報を上位装置200から送信する。
【0024】
上位装置200から送信された再印刷ジョブ情報ファイルは、印刷制御装置201の受信バッファ203に一度格納される。CPU204は、受信バッファ203から格納したデータを読み出し再印刷ジョブ情報であるか通常印刷ジョブであるか再印刷ジョブ情報検出205でチェックする。再印刷ジョブ情報であった場合、CPU204は、再印刷ジョブ情報解析207を呼び出し詳細情報を取得し、その妥当性をチェックする。
【0025】
その後、CPU204は、取得した再印刷ジョブ情報を再印刷ジョブ情報格納バッファ208に一度退避する。CPU204は、再印刷ジョブ情報記憶テーブル300をサーチし、登録番号を新たに取得する。
【0026】
そして、取得した登録番号を再印刷ジョブ情報格納バッファ208に格納したデータに再印刷ジョブ情報記憶テーブル301のフォーマットに従い取得した登録番号を付加して、再印刷ジョブ情報記憶テーブル209に記憶する。
【0027】
CPU204は、再印刷ジョブ情報記憶テーブル209の印刷ジョブ情報を元に印刷ジョブ記憶テーブル212を検索する。
【0028】
そして、CPU204は、同じ印刷ジョブ情報を検出した場合、印刷ジョブ記憶テーブル212の印刷データをドットイメージに展開する。
【0029】
なお、再印刷ジョブ情報記憶テーブル209には、実印刷データは含まれず、再印刷に必要なパラメータのみ含まれる。実印刷データは、再印刷ジョブ情報を登録した後、印刷ジョブ記憶テーブルに記憶したジョブから印刷するか、再度、再印刷する必要がある印刷ジョブ(全体)をPC1(100)等から送信される。
【0030】
なお、印刷ジョブ記憶テーブルは、受信バッファ203の印刷ジョブをCPU204が、格納するテーブルです。1ジョブ全てを記憶するテーブルである(このテーブルには、再印刷ジョブ情報は格納されない)。処理は、CPU204と双方向で行う。
【0031】
その後、CPU204は、再印刷ジョブ情報テーブル300の印刷対象ページとドットイメージに展開したページ順番をチェックし、該当するページのみプリンタ206に送信する。これにより、指定したページのみ印刷することができる。
【0032】
このように、再印刷ジョブ情報にIPアドレスやホスト名を含めることで、仮に、複数の上位装置PC1(100)〜PC3(102)より同じJOB名を登録されてもホスト名またはIPアドレスにより、違うジョブであることを識別することで、JOB名の重複による意図しない再印刷とはならない。
【0033】
また、同じ上位装置PC1(100)から同じIPアドレス、同じJOB名を指定された場合、再度、再印刷ジョブ情報を登録することで繰返し適用することができる。この場合、特に印刷対象データの指定が無ければ、削除として扱うことで、記憶した再印刷ジョブ情報記憶テーブルから消去することも可能である。再印刷ジョブ情報記憶テーブル300をより詳細にすることで行単位の再印刷も可能である。行単位に再印刷できれば、ラインプリンタやシリアルドットプリンタにも適用することができる。
【0034】
また、再印刷ジョブ情報記憶テーブル209に再印刷情報が登録されているため、印刷ジョブ記憶テーブル212に該当ジョブがない場合は、上位装置200から該当ジョブを再送信することで、印刷ジョブ記憶テーブル212からの再印刷と同じ動作をすることも可能である。
【0035】
図3は再印刷ジョブ情報テーブルの例を示す図で、図中の400は再印刷ジョブ情報記憶テーブル、401は再印刷ジョブ情報、402は印刷ジョブ記憶テーブルある。
【0036】
なお、本発明は、問題のあるジョブを再印刷ジョブとしてテーブルに登録する。再印刷したいジョブは、登録後に、再印刷ジョブと共に送信してもよいし、何時送信しても構わない。
【0037】
本発明によれば、Postscriptなどで作成された印刷データでページ単位に印刷データを抜き出し、再印刷することが難しい印刷ジョブの場合であっても確実に指定した複数箇所の複数ページを効率良く再印刷することが出来る。
【0038】
また、再印刷ジョブ情報を登録することで、再印刷に関係のない印刷ジョブはそのまま印刷することができる。
【0039】
複数の再印刷ジョブ情報が登録できるため、再印刷が必要なページをまとめて再印刷することができるし、再印刷が必要な再印刷ジョブもまとめて再印刷することができる。
【0040】
以上のことから再印刷におけるページ指定が確実に可能となり、他のジョブ印刷を停止することなく実施できるため、効率の良い印刷が可能となる。
【0041】
また、不要なページを再印刷しないので、無駄な消耗品の消費を抑えることができ、環境やセキュリティの面でも望ましい再印刷方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るネットワークに接続された高速プリンタおよび印刷制御装置の一例を示す図である。
【図2】印刷制御装置に本発明を適用した例を示すブロック図である。
【図3】再印刷ジョブ情報テーブルの例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
100・・・上位装置PC1、101・・・上位装置PC2、102・・・上位装置PC3、103・・・印刷制御装置、104・・・プリンタ、105・・・ネットワーク、106・・・印刷情報送受信装置、107・・・表示機器を備えた携帯端末、200・・・上位装置、201・・・印刷制御装置、202・・・受信バッファ、203・・・CPU、204・・・再印刷ジョブ情報検出、205・・・プリンタバッファ、206・・・再印刷ジョブ情報解析、207・・・再印刷ジョブ情報格納バッファ、208・・・再印刷ジョブ情報記憶テーブル、209・・・データ送信回路、211・・・プリンタ、212・・・印刷ジョブ記憶テーブル、400・・・再印刷ジョブ情報記憶テーブル、401・・・再印刷ジョブ情報、402・・・印刷ジョブ記憶テーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置とネットワークインタフェースで接続する手段と、ネットワークに接続されている前記上位装置から印刷データを受信する手段と、受信した印刷データをドットイメージに展開する機能と、その展開したドットイメージを印刷装置に出力して印刷する機能を有する印刷制御装置において、
印刷ジョブの中で印刷対象とするページを指定する再印刷ジョブ情報に登録番号を付加して1つまたは2つ以上登録する手段と、受信したデータから通常の印刷ジョブか再印刷ジョブかを識別する手段と、再印刷ジョブの場合には前記登録した再印刷ジョブ情報と上位装置からの印刷データが同じ印刷ジョブであるかを照合する手段と、同じ印刷ジョブであれば前記登録してある再印刷ジョブ情報を登録番号をキーに検索する手段と、検索した結果の再印刷ジョブ情報のデータを取り出す手段を設け、
前記再印刷ジョブ情報の印刷対象ページに従い上位装置から受信した印刷ジョブの複数箇所に分散している印刷対象ページを抽出して印刷することを特徴とする印刷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−137449(P2010−137449A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316609(P2008−316609)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】