説明

印刷方法および印刷機

【課題】高精度のパターン形成が要求される電子デバイス等の印刷において重要な因子である、印刷版と印刷基材との距離を、簡便な方法で精密に制御し得る印刷方法および印刷機を提供すること。
【解決手段】印刷版2上のインクを印刷基材4に転写することにより印刷を行う印刷方法において、印刷版2の版胴1と印刷基材4との間に互いに接近する方向に向けてかける荷重に抗して弾性力を発生させ、当該荷重と弾性力を用いて印刷版2と印刷基材4との距離を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度のパターン形成が要求される電子デバイス等の印刷において特に重要な因子である、印刷版と印刷基材との距離(以下印刷ギャップと記す)の制御に関し、簡便な機構で印刷ギャップを精密に制御し得る方法方式および印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や有機ELにおける画素パターン形成や導電回路パターン形成など、電子デバイス分野におけるパターン形成は、μmオーダーの高精度を要求される分野である。従来専フォトリソグラフィー法が用いられてきたが、同法は工程が煩雑であったり、廃液が発生するなどの難点があり、代替法の開発が切望されている。
【0003】
同法の代替法として最も注目されているのが印刷法であり、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの各種印刷法が検討されている。電子デバイスのパターン形成においては、基材としてガラス等の破損しやすい材質を用いる場合が多いため、柔軟な樹脂製の印刷版を用いることを特徴とするフレキソ印刷法や、グラビアオフセット印刷法等が特に注目されている。それらの印刷法においては、版のパターンを基材に正確に転写し、電子デバイス等で要求される高精度のパターン形成を実現するためには、印刷ギャップを精密に制御することが特に重要である。
【0004】
しかしながら、一般的に用いられている印刷機では、印刷ギャップの制御は困難である。一般的な印刷機の機構を図5により説明する。この印刷機は、印刷版2を備えた自力駆動可能な版胴1、印刷版2と接触して摩擦により駆動するアニロックスロール(インキングロール)8、該アニロックスロール8に所定量のインクを保持させるために設けられたドクターブレード7、印刷版2に印刷基材4を接触させ摩擦駆動するための圧胴6、印刷基材4を保持するための支持体5よりなる。
【0005】
このような印刷機においては、印刷基材4を前進させ、印刷を実行するために、印刷版2と印刷基材4との間にかなりの高荷重をかける必要があり、印刷ギャップの微妙な制御は事実上不可能である。
【0006】
ところで、高品質が要求される液晶表示用カラーフィルター、有機EL表示素子、ブラックマトリックス、導電回路などの電子デバイス製造に際して要求される、高精細な印刷パターンを忠実に再現するには、キスタッチと呼ばれる高精度の印刷ギャップ制御が不可欠となる。
【0007】
上述の印刷機において版胴1と印刷基材4が独立に駆動し、且つ高度な制御機構を備えた装置を製作すれば、キスタッチと呼ばれる高精度の印刷ギャップ制御は原理的には可能であるが、そのためには印刷版の周速度と印刷基材の前進速度を正確に一致させる必要がある。しかし、印刷版の周速度は、その厚みに応じて変化するので、両者をμmオーダーで正確に一致させるためには、現状最高水準の制御技術が必要となり、製作コストがかさむばかりでなく、運転操作が煩雑になるという難点があった。
【0008】
特許文献1には、圧胴と版胴の回転軸と直角方向の軸の回りを従動回転するコロを設けることにより、印刷ギャップを制御する方法が開示されているが、機構が複雑であり、製作コストがかさむという問題は避けがたい。
【0009】
【特許文献1】特開2002−120350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高精度のパターン形成が要求される電子デバイス等の印刷において特に重要な因子である印刷ギャップ制御に関し、簡便な機構で印刷ギャップを精密に制御し得る印刷方法および印刷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、版胴と印刷基材との間にかける荷重に対し弾性力を発生する機構を設けることにより印刷ギャップを精密に制御し得る簡便な方法を見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は下記の通りである。
【0012】
(1)印刷版上のインクを印刷基材に転写することにより印刷を行う印刷方法において、印刷版の版胴と印刷基材との間に互いに接近する方向に向けてかける荷重に抗する弾性力を発生させ、当該荷重と弾性力を用いて印刷版と印刷基材との距離を制御することを特徴とする印刷方法。
(2)前記版胴と前記印刷基材との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、(1)に記載の印刷方法。なお、本発明における「弾性体」は、剛体以外のものを示す。
(3)前記弾性体は、前記印刷版の外径より大きい外径の環状に形成され、前記印刷版と同心円に設けられていることを特徴とする、(2)に記載の印刷方法。
(4)前記印刷版と前記印刷基材との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、(1)に記載の印刷方法。
(5)前記印刷版と前記印刷基材の支持体との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、(1)に記載の印刷方法。
(6)前記弾性体は、前記印刷版と同じ材質であることを特徴とする、(2)〜(5)のいずれかに記載の印刷方法。
(7)前記版胴には、版胴と印刷基材が離れる方向に弾性力が作用する弾性体が取り付けられていることを特徴とする、(1)に記載の印刷方法。
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の印刷方法は、フレキソ印刷である。
【0013】
(9)印刷版上のインクを印刷基材に転写することにより印刷を行う印刷機であって、印刷版の版胴と印刷基材との間に互いに接近する方向に向けてかける荷重に抗して弾性力を発生させる弾性力発生機構を有し、当該荷重と弾性力を用いて印刷版と印刷基材との距離を制御していることを特徴とする、印刷機。
(10)前記弾性力発生機構は、前記版胴と前記印刷基材との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、(9)に記載の印刷機。
(11)前記弾性体は、前記印刷版の外径より大きい外径の環状に形成され、前記印刷版と同心円に設けられていることを特徴とする、(10)に記載の印刷機。
(12)前記弾性力発生機構は、前記印刷版と前記印刷基材との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、(9)に記載の印刷機。
(13)前記弾性力発生機構は、前記印刷版と前記印刷基材の支持体との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、(9)に記載の印刷機。
(14)前記弾性体は、前記印刷版と同じ材質であることを特徴とする、(10)〜(13)のいずれかに記載の印刷機。
(15)前記弾性力発生機構は、前記版胴に取り付けられ当該版胴と印刷基材が離れる方向に弾性力が作用する弾性体を有することを特徴とする、(9)に記載の印刷機。
(16)(9)〜(15)のいずれかに記載の印刷機は、フレキソ式の印刷機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高精度のパターン形成が要求される電子デバイス等の印刷において特に重要な因子である印刷ギャップを、極めて簡便な方法で制御する方法および印刷機を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1により本発明の実施の態様の一例を説明する。本実施の態様における印刷機は、版胴1と印刷基材4との間に設けられた弾性体としてのスペーサー3を有している。また、版胴1又は印刷基材4のいずれかは、当該版胴1と印刷基材4が互いに接近する方向に向けてかけられる荷重と、主にスペーサー3により生じる前記荷重に抗する弾性力(反発力)に応じて、上下動可能になっている。なお、印刷機のその他の構成は、例えば上記図5の印刷機の構造と同様とする。
【0016】
スペーサー3は、例えば印刷版2の直径を越える直径を有する環状に形成され、印刷版2と同心円に版胴1の表面に取り付けられている。スペーサー3は、例えば印刷版2の両端部の外側に設けられている。
【0017】
なお、スペーサー3は、弾性体であれば、材質も特に制限は無いが、例えば鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属の他、天然ゴム、合成ゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの樹脂が挙げられる。印刷ギャップの調整が容易という意味では、ゴムのような弾性限界の大きい弾性体を用いることが好ましく、その弾性限界の大きい弾性を有する樹脂を用いることがさらに好ましい。また、ギャップを精度良く制御できるという点から、印刷版2と同じ材質の樹脂を用いることが最も好ましい。
【0018】
そして、版胴1と印刷基材4との間に互いに接近する方向に、予め得られている適正な荷重を加えると、スペーサー3や版胴1が弾性変形し、その弾性変形に応じた弾性力が発生する。この荷重と弾性力が釣り合う位置に、例えば版胴1の印刷基材4に対する相対的な位置が調整される。この結果、版胴1の印刷版2と印刷基材4との隙間が所望の距離に調整されて、印刷ギャップを厳密に制御できる。同時に、スペーサー3が印刷基材4に押し付けられ摩擦力が発生するので、版胴1のみを自力駆動方式としておけば、当該摩擦力により印刷基材4が印刷版2の周速度と同じ速度で前進する。すなわち、何ら複雑な制御技術を要することなく、印刷版2の周速度と印刷基材4の前進速度を一致させることができる。インクや印刷基材の種類に応じ、要求される精度の印刷パターンが得られる荷重を一度把握することができれば、再現性よく要求精度を満たす印刷パターンが得られる。
【0019】
本実施の形態のようにスペーサー3を印刷版2と同心円に設ける場合、その設置箇所は少なくとも1箇所、好ましくは2箇所以上、必要に応じて、印刷版上に形成されているインクパターンの印刷基材への転写が妨げられない範囲において何箇所でも設置することは可能である。なお、本実施の形態では、例えばスペーサー3と版胴1によって弾性力発生機構が構成されている。
【0020】
次に本発明の別の実施の態様を図2により説明する。本実施の態様は、スペーサー3を印刷版2と印刷基材4との間に設けた場合である。例えばスペーサー3は、印刷基材4側に取り付けられている。なお、その他の部分は、例えば上記実施の形態と同様である。
【0021】
かかる実施の形態においても、版胴1と印刷基材4との間に互いに接近する方向に適正な荷重を加えると、スペーサー3や印刷版2、版胴1により弾性力が発生する。この荷重と弾性力のバランスにより、版胴1の印刷版2と印刷基材4との隙間が所望の距離に調整されて、印刷ギャップを厳密に制御できる。同時に、スペーサー3が印刷版2と印刷基材4に押し付けられ摩擦力が発生するので、版胴1のみを自力駆動方式としておけば、当該摩擦力により印刷基材4が印刷版2の周速度と同じ速度で前進する。すなわち、何ら複雑な制御技術を要することなく、印刷版2の周速度と印刷基材4の前進速度を一致させることができる。インクや印刷基材の種類に応じ、要求される精度の印刷パターンが得られる荷重を一度把握することができれば、再現性よく要求精度を満たす印刷パターンが得られる。
【0022】
本実施の形態のようにスペーサー3を印刷版2と印刷基材4との間に設ける場合、その設置箇所は少なくとも1箇所、好ましくは2箇所以上、必要に応じて、印刷版上に形成されているインクパターンの印刷基材への転写が妨げられない範囲において何箇所でも設置することは可能である。また、スペーサー3を印刷版2側に取り付けてもよい。なお、本実施の形態では、例えばスペーサー3、印刷版2及び版胴1によって弾性力発生機構が構成されている。
【0023】
次に本発明のさらに別の実施の態様を図3により説明する。本実施の態様は、印刷版2と支持体5との間にスペーサー3を設けた場合である。スペーサー3は、例えば支持体5側に取り付けられている。なお、その他の部分は、例えば上記実施の形態と同様である。
【0024】
かかる実施の形態においても、版胴1と印刷基材4との間に互いに接近する方向に適正な荷重を加えると、スペーサー3や、印刷版2、版胴1、支持体5により弾性力が発生する。この荷重と弾性力のバランスにより、版胴1の印刷版2と印刷基材4との隙間が所望の距離に調整されて、印刷ギャップを厳密に制御できる。同時に、スペーサー3が印刷版2と支持体5に押し付けられ摩擦力が発生するので、版胴1のみを自力駆動方式としておけば、当該摩擦力により印刷基材4が印刷版2の周速度と同じ速度で前進する。すなわち、何ら複雑な制御技術を要することなく、印刷版2の周速度と印刷基材4の前進速度を一致させることができる。インクや印刷基材の種類に応じ、要求される精度の印刷パターンが得られる荷重を一度把握することができれば、再現性よく要求精度を満たす印刷パターンが得られる。
【0025】
本実施の形態のようにスペーサー3を印刷版2と支持体5との間に設ける場合、その設置箇所は少なくとも1箇所、好ましくは2箇所以上、必要に応じて、印刷版上に形成されているインクパターンの印刷基材への転写が妨げられない範囲において何箇所でも設置することは可能である。また、スペーサー3を印刷版2側に取り付けてもよい。なお、本実施の形態では、例えばスペーサー3、印刷版2、版胴1及び支持体5によって弾性力発生機構が構成されている。
【0026】
以上の実施形態において、スペーサー3、印刷版2、版胴1、支持体5等の全体で所定の弾性力を発生させればよく、例えば印刷版2、版胴1等が比較的弾性の大きいものであれば、スペーサー3は、剛体に近い比較的弾性の小さいものであってもよい。
【0027】
以上の実施の形態では、弾性力発生機構が弾性体であるスペーサー3を有するものであったが、例えば図4に示すように版胴1に取り付けられた弾性体としてのばね10を有するものであってもよい。かかる場合、例えば版胴1は、ばね10によって吊るされ、ばね10の下端部が、軸受け11を介して版胴1の回転軸1aに取り付けられる。ばね10の上端部は、固定端になっている。また、回転軸1aには、軸受け11を介して錘支持部12が取り付けられ、当該錘支持部12に所定の重さの錘13が載せられる。
【0028】
この例では、錘支持部12に所定の重さの錘13を載せることにより、版胴1に下方向の適正な荷重が加わり、ばね10が伸び、その伸びに応じた上方向の弾性力が発生する。この荷重と弾性力が釣り合う位置に、例えば版胴1の印刷基材4に対する相対的な位置が調整される。この結果、版胴1の印刷版2と印刷基材4との隙間が所望の距離に調整されて、印刷ギャップを厳密に制御できる。
【0029】
なお、この例において、ばね10の取り付け位置等は、適宜変更できる。また、この例においても弾性体は、ばね10に限られない。また、この例における錘13を用いた荷重付加機構は、上記実施の形態で用いてもよい。
【0030】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に相到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0031】
例えば本実施の形態においては、版胴1と印刷基材4との間にかける荷重に対し弾性力を発生させることが必須であるが、その弾性力を発生させる弾性体の種類や構造に特に制限はない。
【実施例】
【0032】
本発明を更に詳細に説明するために、以下に、実施例及び比較例を示すが、これらの実施例は本発明の説明及びそれによって得られる効果などを具体的に示すものであって、本発明の範囲をなんら限定するものではない。なお、以下の実施例及び比較例における諸特性は、下記の方法に従って測定した。
【0033】
<測定方法>
1.ポリカーボネートジオールのOH価
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップしアセチル化試薬を調製した。100mlナスフラスコに、サンプルを1.0g精秤した。アセチル化試薬2mlとトルエン4mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。蒸留水1mlをホールピペットで添加、さらに10分間加熱撹拌した。
2〜3分間冷却後、エタノールを5ml添加し、指示薬として1%フェノールフタレイン/エタノール溶液を2〜3滴入れた後に、0.5mol/lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。
ブランク試験としてアセチル化試薬2ml、トルエン4ml、蒸留水1mlを100mlナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った。この結果をもとに、下記計算式(i)を用いてOH価を計算した。
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (i)
a:サンプルの滴定量(ml)
b:空試験の滴定量(ml)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
【0034】
2.ポリカーボネートジオールの分子量
合成例及び比較合成例中のポリカーボネートジオールの末端は、13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。また、ポリカーボネートジオール中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、合成例、比較合成例の全てにおいて、酸化が0.01以下であった。
そこで、得られたポリマーの数平均分子量を下記計算式(ii)により求めた。
数平均分子量Mn=2/(OH価×10―3/56.11) (ii)
【0035】
〔合成例〕
規則充填物ヘリパックパッキンNo.3を充填した、充填高さ300mm、内径30mmの蒸留塔及び分留頭を備えた500ml四口フラスコに、ジエチレングリコール214g(2.01mol)、エチレンカーボネート186g(2.12mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解し、系内を窒素置換した後、触媒としてテトラブトキシチタンを、0.177g加えた。このフラスコを、フラスコの内温が145〜150℃、圧力が2.5〜3.5kPaとなるように、分留頭から還流液の一部を抜き出しながら、オイルバスで加熱し、22時間反応した。その後、充填式蒸留塔を外して、単蒸留装置に取り替え、フラスコの内温170℃に上げ、圧力を0.2kPaまで落として、フラスコ内に残った、ジエチレングリコール、エチレンカーボネートを1時間かけて留去した。その後、フラスコの内温170℃、圧力0.1kPaでさらに5時間反応した。この反応により、室温で粘稠な液状のポリカーボネートジオールが174g得られた。得られたポリカーボネートジオールのOH価は60.9(数平均分子量Mn=1843)であった。
撹拌機を備えた300mlのセパラブルフラスコにこのポリカーボネートジオール65.0g、リン酸モノブチル0.05gを入れ、80℃で3時間撹拌することにより、テトラブトキシチタンを失活させた。その後、トリレンジイソシアナート4.63g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.07g、アジピン酸0.01g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で3時間撹拌した。その後、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート2.77g、ジ−n−ブチルスズジラウレート0.001gを加えて、乾燥空気雰囲気で、80℃で2時間撹拌した。この段階で、ポリカーボネートジオールの末端水酸基がウレタン結合により連結され、かつ二重結合を有するポリマーが得られたことを、赤外分光分析により確認した。
その後、エチレングリコールフェニルエーテルメタクリレート10.74g、トリメチロールプロパントリメタクリレート5.96g、シリカゲルC−1504(富士シリシア化学株式会社)5.55g、シリコーンオイルKF−410(信越化学工業株式会社)1.21g、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.72g、ベンゾフェノン1.21g、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.72g、リン酸トリフェニル2.17g、サノールLS−785(三共株式会社)1.21gを加えて80℃で撹拌しながら、13kPaに減圧して脱泡し、室温で粘稠な液体状の感光性樹脂組成物を得た。
【0036】
(印刷原版の作製)
合成例で得られた樹脂組成物を用いて、下記の方法で印刷原版を作製した。
12×11×0.3cmのガラス板にジエチレングリコールを薄く塗布した後、PETフィルムを乗せ、ヘラでこすり密着させた。そのフィルム上に両面シールにより固定させたスポンジ枠で作成した1辺10cmの四角枠と、その枠外の四隅に厚さ1.5mmのアルミスペーサーを置いた。この作成した治具を約90℃のホットプレート上に置いた。
治具の枠内に上記各樹脂組成物を注いだ後、ジエチレングリコールを塗布しPETフィルムを乗せたガラス板を、PETフィルム面が樹脂組成物に接触するようにかぶせた。その後に上下のガラス板をクリップで挟み固定した。
この治具について高圧水銀灯(HC−98、センエンジニアリング株式会社)を用いて、500mJ/cm2(照度33.7mW/cm2、時間14.8秒)露光した後、治具面を逆にし、更に500mJ/cm2露光した。これを両面もう一度ずつ行い、トータルで2000mJ/cm2露光して印刷原版を作成した。
【0037】
(実施例1)
合成例の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版にレーザー彫刻によりパターン(直径100μm、深さ50μmの円形のくぼみを、中心間隔100μmで多数形成)を描画した印刷版を用い、UVフレキソインキ(ザ・インクテック(株)製、UFL−639)で印刷評価を実施した。印刷にはアイジーティ・テスティングシステムズ社製 IGT 印刷適性試験機 Model F1を用いた。印刷版2およびスペーサー3の装着方法を図1に示す。
版胴1の周囲に印刷版2(厚さ3.0mm)を装着し、その両端に印刷版と同じ素材よりなるスペーサー3(厚さ3.2mm)を装着し、無荷重下において印刷版2と印刷基材4間に形成されるギャップが200μmとなるように設定した。印刷基材4として、厚さ0.7mmのガラス基板を用いた。版胴1と印刷基材4の間に30Nの荷重をかけ、印刷速度0.3m/sで印刷を行なったところ、ガラス基板上に直径50±3μmの均一な円形パターンが印刷できた。
【0038】
(実施例2)
合成例の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版にレーザー彫刻によりパターン(直径100μm、深さ50μmの円形のくぼみを、中心間隔100μmで多数形成)を描画した印刷版を用い、UVフレキソインキ(ザ・インクテック(株)製、UFL−639)で印刷評価を実施した。印刷にはアイジーティ・テスティングシステムズ社製 IGT 印刷適性試験機 Model F1を用いた。印刷版2およびスペーサー3の装着方法を図2に示す。
印刷基材4の表面に、ポリエチレンテレフタレート製の厚み200μmのフィルムをスペーサー3として装着し、無荷重下において印刷版2と印刷基材4間に形成されるギャップが200μmとなるように設定した。印刷基材4として、厚さ0.7mmのガラス基板を用いた。版胴1と印刷基材4の間に30Nの荷重をかけ、印刷速度0.3m/sで印刷を行なったところ、ガラス基板上に直径50±3μmの均一な円形パターンが印刷できた。
【0039】
(実施例3)
合成例の感光性樹脂組成物から得られた印刷原版にレーザー彫刻によりパターン(直径100μm、深さ50μmの円形のくぼみを、中心間隔100μmで多数形成)を描画した印刷版を用い、UVフレキソインキ(ザ・インクテック(株)製、UFL−639)で印刷評価を実施した。印刷にはアイジーティ・テスティングシステムズ社製 IGT 印刷適性試験機 Model F1を用いた。印刷版2およびスペーサー3の装着方法を図3に示す。
支持体5の表面に、印刷版と同じ素材よりなるスペーサー3(厚さ0.9mm)を装着し、無荷重下において印刷版2と印刷基材4間に形成されるギャップが200μmとなるように設定した。印刷基材4として、厚さ0.7mmのガラス基板を用いた。版胴1と印刷基材4の間に20Nの荷重をかけ、印刷速度0.3m/sで印刷を行なったところ、ガラス基板上に直径50±4μmの均一な円形パターンが印刷できた。
【0040】
(比較例1)
スペーサー3を装着しない以外は実施例1と同様にして印刷評価を実施した。得られた印刷パターンの直径は40±8μmと版のパターン(50μm)に比べて全体に小さく、ばらつきも大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、高精度のパターン形成が要求される電子デバイス等の印刷において重要な因子である、印刷版と印刷基材との距離を、簡便な方法で精密に制御し得る印刷方法および印刷機を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の印刷方法および印刷機の実施態様の一例を示す図である。(a)は、印刷機の正面図であり、(b)は、印刷機の側面図である。
【図2】本発明の印刷方法および印刷機の実施態様の一例を示す図である。(a)は、印刷機の正面図であり、(b)は、印刷機の側面図である。
【図3】本発明の印刷方法および印刷機の実施態様の一例を示す図である。(a)は、印刷機の正面図であり、(b)は、印刷機の側面図である。
【図4】本発明の印刷方法および印刷機の実施形態の一例を示す図である。
【図5】印刷機の概略構成を示す模式説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 版胴
2 印刷版
3 スペーサー
4 印刷基材
5 支持体
6 圧胴
7 ドクターブレード
8 アニロックスロール
9 インク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版上のインクを印刷基材に転写することにより印刷を行う印刷方法において、
印刷版の版胴と印刷基材との間に互いに接近する方向に向けてかける荷重に抗する弾性力を発生させ、当該荷重と弾性力を用いて印刷版と印刷基材との距離を制御することを特徴とする、印刷方法。
【請求項2】
前記版胴と前記印刷基材との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記弾性体は、前記印刷版の外径より大きい外径の環状に形成され、前記印刷版と同心円に設けられていることを特徴とする、請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記印刷版と前記印刷基材との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記印刷版と前記印刷基材の支持体との間には、弾性体が介在されていることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記弾性体は、前記印刷版と同じ材質であることを特徴とする、請求項2〜5のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項7】
前記版胴には、版胴と印刷基材が離れる方向に弾性力が作用する弾性体が取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の印刷方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の印刷方法は、フレキソ印刷である。
【請求項9】
印刷版上のインクを印刷基材に転写することにより印刷を行う印刷機であって、
印刷版の版胴と印刷基材との間に互いに接近する方向に向けてかける荷重に抗して弾性力を発生させる弾性力発生機構を有し、当該荷重と弾性力を用いて印刷版と印刷基材との距離を制御していることを特徴とする、印刷機。
【請求項10】
前記弾性力発生機構は、前記版胴と前記印刷基材との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、請求項9に記載の印刷機。
【請求項11】
前記弾性体は、前記印刷版の外径より大きい外径の環状に形成され、前記印刷版と同心円に設けられていることを特徴とする、請求項10に記載の印刷機。
【請求項12】
前記弾性力発生機構は、前記印刷版と前記印刷基材との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、請求項9に記載の印刷機。
【請求項13】
前記弾性力発生機構は、前記印刷版と前記印刷基材の支持体との間に介在された弾性体を有することを特徴とする、請求項9に記載の印刷機。
【請求項14】
前記弾性体は、前記印刷版と同じ材質であることを特徴とする、請求項10〜13のいずれかに記載の印刷機。
【請求項15】
前記弾性力発生機構は、前記版胴に取り付けられ当該版胴と印刷基材が離れる方向に弾性力が作用する弾性体を有することを特徴とする、請求項9に記載の印刷機。
【請求項16】
請求項9〜15のいずれかに記載の印刷機は、フレキソ式の印刷機である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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