説明

印刷機器及びその印刷工程

本発明は、転写装置と着色剤キャリアを備えた印刷機器に関する。印刷機器の動作時に、着色剤を前記転写装置から前記着色剤キャリア上に移動させる第1の転写領域を形成するように、前記転写装置と着色剤キャリアが互いに対して配置されている。前記印刷機器は、前記着色剤キャリア上の前記着色剤に局所的にエネルギーを印加することによって、印刷機器の動作時に、前記着色剤の少なくとも一部を前記着色剤キャリアから印刷媒体又は転写手段に送給するためのビーム状エネルギーを生成する装置を備える。本発明の目的は、例え、前記着色剤キャリアから印刷媒体又は転写手段に幾つかの着色剤が送給されたとしても、フィルムが着色剤キャリア上で均一かつ連続的に得られる印刷機器を提供することである。本発明によれば、印刷機器は着色剤容器を備えている。印刷機器の動作時に使用されなかった着色剤を前記着色剤キャリアから前記着色剤容器に移動させる第2の転写領域を形成するように、前記着色剤キャリア及び前記着色剤容器が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤支持体と、着色剤をタンクから着色剤支持体上に移動させる転写装置とを有する印刷機器に関し、特に、印刷機器の動作時に着色剤が転写装置から着色剤支持体上に移される第1の転写ゾーンを形成するよう、転写装置と着色剤支持体とが互いに対して配置されており、着色剤の少なくとも一部を着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段上に送給する送給装置を備える印刷機器に関する。
【0002】
本発明はまた、着色剤を転写装置から着色剤支持体上に移動させることによって着色剤の連続的な膜の少なくとも一部を着色剤支持体上に移動させるステップと、着色剤の少なくとも一部を着色剤支持体上から印刷媒体又は転写手段上に送給するステップとを含む印刷工程に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、着色剤を着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段上に移動させる印刷工程を開示しており、この工程では、エネルギー送給装置を制御することによって、着色剤の体積及び/又は位置を変化させ、印刷ドットを印刷媒体又は転写手段上に移動させる。このとき、実質的に連続的な膜が形成されるように、着色剤支持体上に着色剤を配置する。次に、このフィルムに対して局所的にエネルギーを加えると、フィルムにおいて、体積又は位置の局所的な変化が生じ、この領域内の着色剤が着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段上に移される。
【0004】
着色剤支持体上における着色剤の膜の均一性は、着色剤支持体から印刷媒体上への転写動作が完了したとき、損なわれている。着色剤が少なくとも部分的に着色剤支持体から除去されている領域もあれば、着色剤が依然として本来の厚さ又は本来の体積を有して膜を形成している領域もある。例えば、この時点で先ほどの動作時と同量の着色剤を使用し、浸漬ローラの原理により着色剤支持体に着色剤を補給すると、着色剤が除去された領域に集まる着色剤又は着色物質は少量である一方、着色剤が除去されなかった領域には、より厚い着色剤層が形成される。かくして、着色剤支持体の第2のインク盛りの時点までに、形成される着色剤の膜が均質ではなくなり、その体積及び/又は厚さが局所的に異なってしまっている。
【0005】
更に、使用される印刷用着色剤には、比較的揮発性の溶剤を含有するものが多く、そのため、着色剤支持体上で除去されないまま時間を経た着色剤膜の領域がすっかり乾燥してしまう。このため、特に、着色剤の膜があまり除去されない領域では、着色剤の膜が完全に乾燥して着色剤支持体に固着することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開公報第01/72518号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の先行技術に鑑み、本発明の目的は、着色剤を着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段に数回移した後でも、着色剤支持体上の連続的な膜が確実に均質である印刷機器及び対応する印刷工程を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
着色剤支持体と着色剤をタンクから着色剤支持体上に移動させる転写装置とを備えた印刷機器により、上記の目的が達成される。この印刷機器は、印刷機器の動作時に着色剤が転写装置から着色剤支持体上に移される第1の転写ゾーンを形成して転写装置と着色剤支持体とが互いに対して配置されており、着色剤の少なくとも一部を着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段上に送給する送給装置を備えている印刷機器において、着色剤剥ぎ取り装置が設けられ、印刷機器の動作時に使用されなかった着色剤が着色剤支持体から着色剤剥ぎ取り装置上に移される第2の転写ゾーンを形成して、着色剤支持体と着色剤剥ぎ取り装置とが配置されている印刷機器である。
【0009】
本発明に関して用いる「着色剤」という用語には、固体着色剤を含むあらゆる種類の印刷媒体が含まれる。アニリン染料などの液体着色剤が特に好適である。着色剤の粘度は、好ましくは10000mPas未満、更に好ましくは1000mPas未満である。
【0010】
かかる印刷機器により、着色剤支持体へのインク盛りが可能になり、印刷機器の容器又はタンクと、着色剤の層を担持する着色剤支持体と称される媒体との間において、一定量の着色剤が着色剤支持体に塗布される。このように、印刷動作によって、着色剤支持体上の着色剤が少なくとも部分的に、好ましくは完全に更新され続けるので、着色剤の沈着又はひいては着色剤の乾燥を殆ど完全に解消することができる。
【0011】
さらに、本発明による印刷機器の一実施形態では、着色剤支持体上における着色剤の層厚さを無段階調節することによって、着色剤の移動量を調節することができる。
【0012】
転写装置を板状の機構とする実施形態も想起可能であるが、本発明の一実施形態の転写装置は、印刷機器の連続運転に特に好適な転写ローラである。同様に、着色剤剥ぎ取り装置も、ローラとして形成するのが好適である。
【0013】
着色剤を印刷媒体又は転写手段上に移動させる着色剤支持体は、本発明の実施形態において、軸まわりに回転可能に取り付けられたローラとしても、適宜の案内部及び/又はローラの上を送られる、連続した経路上を移動可能な連続帯としてもよい。
【0014】
印刷対象の物体(印刷媒体とも称される)の印刷は、着色剤を着色剤支持体から印刷媒体上に直接転写するか、或いは、間接的に、着色剤を着色剤支持体から転写手段(例えばゴムシート)上に転写し、その後、転写手段から印刷媒体上に着色剤を転写するかのいずれかによって行われる。
【0015】
本発明の一実施形態では、印刷機器を用いて印刷媒体又は転写手段を印刷する際、先ず着色剤により着色剤支持体をインク盛りする、すなわち、着色剤支持体を少なくとも部分的に、好ましくは完全に被覆する着色剤の膜を着色剤支持体に塗布する。
【0016】
このようにして、本発明の一実施形態では、着色剤が実質的に凝集した連続的な膜を着色剤支持体上に創出することができる。
【0017】
着色剤支持体上に着色剤の膜を連続的に塗布できるよう、一実施形態において、印刷機器の転写装置は転写ローラを備えており、この転写ローラは、転写装置により案内される着色剤が転写装置から着色剤支持体上に転写される転写ゾーンを形成するよう、着色剤支持体に対して配置される。この転写は、本発明の一実施形態では、ローラとして形成された転写装置と、これもまたローラとして形成された着色剤支持体とをそれぞれの回転軸まわりで回転させることによって行われる。
【0018】
次のステップでは、着色剤支持体に膜として塗布される着色剤、すなわち着色剤が、着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段に送給される。
【0019】
一実施形態では、局所的なエネルギー、すなわちスポットエネルギーを着色剤に印加する。このエネルギー印加により、着色剤が局所的に加熱され、その結果、着色剤支持体上において着色剤の体積及び/又は位置が局所的に変化し、印刷ドット状の着色剤が、印刷対象の物体(印刷媒体又は転写手段)の方向に移動し、印刷対象の物体に取り込まれる。
【0020】
多様な方法により、スポットエネルギーを着色剤に印加することができる。一実施形態では、送給装置が、着色剤支持体上の着色剤に局所的にエネルギーを印加するためのビーム状エネルギーを生成する装置を備えており、これにより、印刷機器の動作時に、着色剤の少なくとも一部が着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段へと送給される。ビーム状エネルギーは、レーザなどによる電磁波であっても、電子又はイオンビームなどの有質量粒子ビームであってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態において、着色剤へのエネルギー印加を直接的に、すなわち、ビーム状エネルギーを着色剤そのものに吸収させること又は取り込ませることによって行うことができる。このため、ビーム状エネルギーは、着色剤支持体上の着色剤に印加される。エネルギービームを実質的に透過させる場合、すなわち、ビームが着色剤支持体を通り抜ける中空円筒状の着色剤支持体を用いることができる場合は、外側及び内側の両方から、着色剤へエネルギーを印加することができる。
【0022】
本発明のまた別の実施形態では、着色剤へのエネルギー印加を間接的に、ビーム状エネルギーを着色剤支持体そのものに吸収させるか、又は取り込ませて、このエネルギーを熱伝達などによって着色剤支持体から着色剤に伝達させることによって行う。
【0023】
着色剤を着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段へと移動又は転写した後、着色剤支持体上の着色剤の膜には、着色剤が移動したために着色剤の膜厚さが大幅に減少している、或いは、着色剤が完全に除去された領域が残る。
【0024】
そこで、着色剤支持体が次に回転した後も、着色剤が確実に均質な状態で印刷動作を行えるよう、本発明では、着色剤剥ぎ取り装置を、エネルギー印加位置よりも下流の工程の方向に配置する。本発明の一実施形態では、印刷機器の動作時に使用されなかった着色剤を着色剤支持体から着色剤剥ぎ取り装置上に移動させる第2の転写ゾーンを形成して、この装置を配置する。こうして、着色剤が部分的に移動した後、着色剤支持体のクリーニングを行ってから、すなわち、着色剤支持体上に残っている着色剤の少なくとも一部を少なくとも部分的に除去してから、転写装置から着色剤支持体に着色剤を新たに塗布する。
【0025】
冒頭に記載した特許文献1はまた、転写手段のクリーニングに用いる着色剤剥ぎ取り装置を開示している。しかし、この着色剤剥ぎ取り装置は、1つの転写手段、すなわち、着色剤支持体及び印刷媒体の中間にある転写手段から、印刷媒体と接触すると着色剤が汚染されるので着色剤タンクに戻すのに適さない着色剤残留物を除去するだけである。しかも、特許文献1の着色剤剥ぎ取り装置は、着色剤支持体のクリーニングを行わない。
【0026】
本発明のまた別の実施形態において、着色剤支持体にインクを盛る転写装置は、着色剤支持体に接触することなく着色剤を塗布するシステム、例えば、浸漬、噴射又は洗流システム、電子制御システム、蒸気又は昇華転写システム、或いは、これらと同様の着色剤塗布システムなどである。
【0027】
本発明の一実施形態では、転写装置と着色剤剥ぎ取り装置と着色剤支持体とがそれぞれ、着色剤支持面を有しており、これらの着色剤支持面を転写ゾーンにおいて逆方向に動作させる。その結果、着色剤支持体上に着色剤を一様に塗布すること及び着色剤支持体から除去することが可能になる。
【0028】
本発明のまた別の実施形態では、着色剤剥ぎ取り装置と転写装置とが同一物である。一実施形態では、これらの装置を、同一のローラによって構成することが好ましい。このため、第1及び第2の転写ゾーンを、互いに隣接させて配置することが好ましい。
【0029】
このことからわかるように、インク盛り、すなわち、着色剤支持体上に着色剤を移動させることと、クリーニング、すなわち、着色剤支持体から着色剤を移動させることとを、同一の装置により行うことができる。
【0030】
このとき、転写装置及び着色剤剥ぎ取り装置を同時に構成するローラと着色剤支持体のローラとが、同じ方向に回転可能である実施形態が好ましい。こうして、着色剤を転写ローラから着色剤支持体上に移動させる一方で、印刷後に残った着色剤を着色剤支持体から除去する転写ゾーンにおいて、転写ローラ及び着色剤支持体の着色剤支持面を逆方向に動作させる。
【0031】
転写装置と着色剤剥ぎ取り装置とが単一のローラとして構成され、転写装置又は着色剤剥ぎ取り装置のローラと着色剤支持体とが動作時に同一方向に回転する場合、転写装置のローラと着色剤支持体とは、それぞれの着色剤支持面が互いに最も接近する位置、且つ、殆ど接触しないような距離にある。その結果、第1及び第2の転写ゾーンが、着色剤支持面間に対して最短距離に隣接して配置されるので、ローラの回転運動が接触により妨げられることが無い。
【0032】
転写装置と着色剤支持体との距離を変化させる一方で、着色剤支持体と着色剤剥ぎ取り装置との間の距離を変化させることにより、着色剤支持体上における着色剤の膜厚さを調節することができる。
【0033】
また、転写装置と着色剤剥ぎ取り装置と着色剤支持体との着色剤支持面の速度を相対的に変化させることによって、着色剤の膜の厚さを更に調節することができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、印刷機器は、着色剤用タンクと、印刷機器の動作時に着色剤がタンクから取り出される浸漬ローラとを有する。このため、実施形態によっては、浸漬ローラを、転写装置と同一物としてもよく、別の実施形態では、転写装置と浸漬ローラとを別個の要素によって構成し、浸漬ローラによりタンクから着色剤を取り出して着色剤を転写装置に移動させてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態では、転写装置はゴム製である。
【0036】
本発明による印刷機器は、動作において、印刷動作後、着色剤支持体上に残った着色剤を着色剤剥ぎ取り装置により着色剤支持体から除去し、転写装置がその着色剤支持面上において、印刷動作後に着色剤支持体上に残った着色剤を担持する。着色剤を転写装置から除去するために、本発明の印刷機器は、一実施形態において、印刷機器の動作時に使用されなかった着色剤を転写装置から除去する着色剤剥ぎ取り装置を有する。この場合、着色剤剥ぎ取り装置は、使用されなかった着色剤がタンクに戻るよう、着色剤用タンクに接続されている。このように、印刷動作時に着色剤支持体から印刷媒体又は転写手段に移動しなかった一部の着色剤用に密閉回路を構成してもよい。
【0037】
本発明の目的は、更に、着色剤を転写装置から着色剤支持体上に移動させることによって、着色剤の凝集した膜の少なくとも一部を着色剤支持体に塗布するステップと、着色剤の少なくとも一部を着色剤支持体上から印刷媒体又は転写手段上に塗布するステップとを含む印刷工程により達成され、この工程では、着色剤支持体から送給されなかった一部の着色剤が、着色剤支持体から剥ぎ取られる。
【0038】
これより、添付図面を参照しながら、以下に記載の好適な実施形態を用いて、本発明の更なる利点、特徴、及び用途を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の印刷機器の第1実施形態を示す図である。
【図2】本発明の印刷機器のまた別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1に、本発明の印刷機器の第1実施形態の側断面図を示す。図示のプリンタは、ローラ型着色剤支持体1と、転写装置としてのゴムローラ2と、更に浸漬ローラ3とを有するローラ型プリンタである。
【0041】
次に、印刷動作を説明しながら、このプリンタの個別の要素について説明する。着色剤又は印刷用着色剤4の経路を、タンク5から印刷媒体(図示せず)まで辿る。
【0042】
図示の実施形態では、浸漬ローラ3により、アニリン染料である印刷用着色剤4をタンク5から取り出し、これをゴムローラ2に移動させる。浸漬ローラ3とゴムローラ2とが接触し、2つのローラ2、3がローラ同士の接触面が互いに接近するように逆方向に動作することにより、このように着色剤4が浸漬ローラ3からゴムローラ2に移動する。図示の実施形態では、浸漬ローラ3はスクリーンローラである。
【0043】
ゴムローラ2は、着色剤支持体1に隣接しており、これにより、ゴムローラ2から着色剤支持体1上に着色剤4を移動させること、及び、その逆に、着色剤支持体1からゴムローラ2に着色剤4を移動させることができる。印刷機器の動作時、ゴムローラ2と着色剤支持体1とが、それぞれの回転軸まわりにおいて同一方向に回転し、両者が最も接近する領域において着色剤支持面が互いに対して逆方向に動作する。ローラ1、2の回転時、第1の転写ゾーン6、すなわち、ローラ1、2の着色剤支持面どうしの間の距離が最短となる点よりも下方において、薄い着色剤膜7の状態で、着色剤がゴムローラ2から着色剤支持体1上に移動する。
【0044】
着色剤支持体1をレーザ光8により局所的に照射し、これにより、着色剤膜7を着色剤支持体1から印刷ドットとして、着色剤支持体1を通過する印刷媒体上に塗布する。適宜の偏向器(図示せず)により、着色剤支持体の回転軸に対して実質的に平行に延在する線上の任意の点に、レーザ光8を集束することができる。1つの列上を移動させて各ドットを印刷する際、必要に応じて、レーザ光8をスイッチ入れ又はスイッチ切りすることができる。これにより、1つの列上に、印刷ドットを着色剤支持体1から印刷媒体上に、任意の配置で移動させることができる。
【0045】
図示の実施形態では、着色剤4は、レーザ光8の波長を吸収しないので、着色剤支持体1上の着色剤膜7は、レーザ光に対して透過性を有している。その結果、レーザ光8は、実質的に減衰することなく、レーザ光8の波長に特別に適合された吸収層を担持する着色剤支持体1の表面に到達する。吸収層は、レーザ光8の焦点領域において局所的に、レーザ光8からエネルギーの少なくとも一部を吸収し、このエネルギーを、着色剤支持体1上の着色剤4の膜7に熱として送給する。着色剤膜7が急激且つ局所的に加熱されることによって、レーザ光8により間接的に加熱された部分の着色剤膜が膨張し、その結果、支持体1を通過する印刷媒体と着色剤支持体1から最小の距離において接触し、支持体1に付着、移動する。
【0046】
着色剤ローラ1の回転方向の、レーザ光8の照射点又は焦点よりも後方において、着色剤支持体1上の着色剤膜7には、着色剤膜7が変化していない領域と、それとは別に、着色剤が着色剤膜7から印刷媒体上にドットとして移動した領域とが存在する。その結果、着色剤フィルム7の層厚さは、回転方向のレーザ光8の焦点よりも後方において不均一となる。
【0047】
着色剤支持体1が完全に1回転した時点で、着色剤支持体上に再び均一な層厚さの着色剤膜7を形成するために、第2の転写ゾーン9、すなわち、ゴムローラ2及び着色剤支持体1の着色剤支持面どうしの間の距離が最短となる点よりも上方において、残りの着色剤膜7をゴム製担体2に移動させる。
【0048】
第1の転写ゾーン6において、当初の状態で均一な厚さを有し、且つ、レーザ光8により除去可能な着色剤膜7を、着色剤支持体1に新たに塗布する。着色剤支持体1から再びゴムローラ2に移動した着色剤を、スキージである着色剤剥ぎ取り装置10により、ゴムローラ2から除去し、適宜の接続部を介してタンク5に送り返す。このように、着色剤4が、タンク5から浸漬ローラ3及びゴムローラ2を介して着色剤支持体1上に至り、着色剤支持体1からゴムローラ2及びスキージ10を介してタンク5に戻る、密閉回路を構成する。
【0049】
図2に、ローラ型着色剤支持体1の代わりに連続帯101を用いる点で図1の実施形態とは異なる、本発明の印刷機器のまた別の実施形態を示す。図1の実施形態と同様に、着色剤104を、タンク105から浸漬ローラ103により、ゴムローラ102上に、そしてゴムローラ102から着色剤支持体としての連続帯101上に輸送する。第1の転写ゾーン106、すなわち、ゴムローラ102及び連続帯101の着色剤支持面どうしの間の距離が最短となる点よりも下方において、ゴムローラ102から連続帯101上へ着色剤104を転写する。第1の転写ゾーン106において、着色剤104を、薄い連続膜107として連続帯101に塗布する。連続帯101がゴムローラ102のすぐ隣りを通過しながらレーザ光108の照射を受けるよう、連続帯101を案内ローラ111により案内する。
【0050】
図示の実施形態では、連続帯101は、レーザ光108の波長に対して透過性を有しており、減衰することなくレーザ光が連続帯101を通過し、最終的に連続帯101のもう一方の面上に配置された着色剤膜107に達する。図2の実施形態では、着色剤104、従って着色剤膜107は、レーザ光108の波長を吸収するので、レーザ光108のエネルギーが着色剤膜107により直接吸収される。その結果、着色剤膜107が局所的に加熱され、レーザ光108の焦点に位置する部分の着色剤膜107の体積及び/又は位置が変化する。このように位置が変化すると、連続帯101の傍を通過する印刷媒体(図示せず)上に印刷ドットが転写されることになる。
【0051】
部分的に除去された着色剤膜107を、連続帯101上に載せたまま、レーザ光108の下流の連続帯の移動方向に更に、最終的に第2の転写ゾーン109、すなわち、連続帯101及びゴムローラ102の着色剤支持面どうしの間の距離が最短となる点よりも上方まで送り、着色剤104を着色剤支持体101からゴムローラ102上に移動させる。このとき、印刷用着色剤104は、次のサイクルに向けて、連続帯101からほぼ完全に除去されている。ゴムローラ102に戻った着色剤を、スキージ110を用いてゴムローラ102から除去し、適宜の接続部を介してスキージ110からタンク105に送る。
【0052】
こうして、図2に示す実施形態では、着色剤104がタンク105から浸漬ローラ103及びゴムローラ102を介して着色剤支持体101上に至り、着色剤支持体101からゴムローラ102及びスキージ110を介してタンク105に戻る、密閉回路を構成している。
【0053】
最も重要な点は、図2に示すまた別の実施形態では、着色剤支持体101とゴムローラ102とを、その接触点106、109において、着色剤支持面どうしを互いに対して逆方向に動作させることである。
【0054】
このように、着色剤支持体1、101及び転写装置2、102の着色剤支持面どうしの間の距離と、第1の転写ゾーン6、106及び第2の転写ゾーン9、109における相対速度との両方を調節することによって、使用する印刷媒体に好適な厚さの着色剤膜を着色剤支持体上に形成することができる。
【0055】
出願当初の開示内容を記載する目的において、本明細書の説明、添付の図面及び特許請求の範囲から当業者に想起可能な特徴は全て、たとえこれらの特徴が或る特定のまた他の特徴に関連して説明されただけであったとしても、本明細書に記載の特徴又は本明細書に記載した以外の特徴と別個独立にこれらの特徴を用いても、任意の態様で様々に組み合わせても、それらの可能性の排除が明示されない限り、このような組み合わせが不可能ではない、又は、何らかの技術的効果を有する限り、これらの特徴を様々に組み合わせることができることを理解されたい。本明細書では、説明の便宜上、全ての想起可能な特徴の組み合せを包括的に明示していない。
【符号の説明】
【0056】
1 着色剤支持体
2 ゴムローラ
3 浸漬ローラ
4 印刷用着色剤
5 タンク
6 第1の転写ゾーン
7 薄い着色剤膜
8 レーザ光
9 第2の転写ゾーン
10 着色剤剥ぎ取り装置
101 連続帯
102 ゴムローラ
103 浸漬ローラ
104 印刷用着色剤
105 タンク
106 第1の転写ゾーン
107 着色剤膜
108 レーザ光
109 第2の転写ゾーン
110 スキージ
111 案内ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤支持体(1、101)と着色剤をタンク(5、105)から該着色剤支持体(1、101)上に移動させる転写装置(2、102)とを有する印刷機器であって、印刷機器の動作時に、着色剤(4、104)を前記転写装置(2、102)から前記着色剤支持体(1、101)上に移動させる第1の転写ゾーン(6、106)を形成するよう、前記転写装置(2、102)及び前記着色剤支持体(1、101)が互いに対して配置されており、前記着色剤(4、104)の少なくとも一部を前記着色剤支持体(1、101)から印刷媒体又は転写手段上に送給する送給装置を備える印刷機器において、
着色剤剥ぎ取り装置(2、102)を更に備え、
印刷機器の動作時に消費されなかった前記着色剤(4、104)を前記着色剤支持体(1、101)から前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)上に移動させる第2の転写ゾーン(9、109)を形成するよう、前記着色剤支持体(1、101)及び前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)が配置されていることを特徴とする、印刷機器。
【請求項2】
前記送給装置が、
前記着色剤支持体(1、101)上の前記着色剤(4、104)に局所的にエネルギーを印加することによって、印刷機器の動作時に、前記着色剤(4、104)の少なくとも一部を前記着色剤支持体(1、101)から印刷媒体又は転写手段に送給するためのビーム状エネルギー(8、108)を生成する装置を備える、請求項1に記載の印刷機器。
【請求項3】
前記ビーム状エネルギー(8、108)を生成する装置がレーザ装置である、請求項1又は請求項2に記載の印刷機器。
【請求項4】
前記転写装置(2、102)と前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)と前記着色剤支持体(1、101)とがそれぞれ、着色剤支持面を備えており、該着色剤支持面どうしが、前記転写ゾーン(6、106、9、109)において逆方向に動作可能である、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項5】
前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)と前記転写装置(2、102)とが同一物である、請求項1〜4のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項6】
前記第1及び第2の転写ゾーン(6、106、9、109)が隣接配置されている、請求項1〜5のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項7】
前記着色剤支持体が、ローラ(1)又は連続帯(101)である、請求項1〜6のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項8】
前記着色剤(4、104)用のタンク(5、105)と浸漬ローラ(3、103)とを備え、
前記浸漬ローラ(3、103)が、印刷機器の動作時に、着色剤(4、104)を前記タンク(5、105)から取り出して前記転写装置(2、102)に塗布するよう構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項9】
印刷機器の動作時に消費されなかった着色剤を前記転写装置(2、102)から除去するよう構成され、且つ、前記着色剤(4、104)用のタンク(5、105)に接続された、前記消費されなかった着色剤(4、104)を再び前記タンク(5、105)へと案内するための着色剤剥ぎ取り装置(10、110)を備える、請求項1〜8のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項10】
前記着色剤の粘度が、10000mPas未満、好ましくは1000mPas未満である、請求項1〜9のいずれかに記載の印刷機器。
【請求項11】
着色剤(4、104)を転写装置(2、102)から着色剤支持体(1、101)上に移動させることによって、前記着色剤(4、104)の凝集膜(7、107)の少なくとも一部を前記着色剤支持体(1、101)に塗布するステップと、
前記着色剤(4、104)の少なくとも一部を前記着色剤支持体(1、101)から印刷媒体又は転写手段上に塗布するステップとを含む印刷工程であって、
前記着色剤支持体(1、101)から送給されなかった一部の前記着色剤(4、104)を、前記着色剤支持体(1、101)から剥ぎ取ることを特徴とする、印刷工程。
【請求項12】
前記送給ステップが、
前記着色剤支持体(1、101)上の前記着色剤(4、104)に局所的にエネルギーを印加し、前記着色剤(4、104)の少なくとも一部の体積又は位置を変化させることによって、前記着色剤支持体(1、101)から印刷媒体又は転写手段上に前記着色剤(4、104)を送給するステップを更に含む、請求項11に記載の印刷工程。
【請求項13】
前記エネルギーを、レーザ光により前記着色剤に直接的又は間接的に印加する、請求項12に記載の印刷工程。
【請求項14】
印刷媒体(4、104)の前記着色剤支持体(1、101)への転写と、前記着色剤支持体(1、101)からの除去とを、隣接位置において行う、請求項1〜13のいずれかに記載の工程。
【請求項15】
前記転写装置(2、102)及び前記着色剤支持体(1、101)がそれぞれ、着色剤支持面を備え、
前記転写装置(2、102)及び前記着色剤支持体(1、101)の前記支持面どうしが、前記着色剤(4、104)が移動する前記ゾーンにおいて逆方向に動作する、請求項11〜14のいずれかに記載の工程。
【請求項16】
前記着色剤(4、104)を着色剤剥ぎ取り装置(2、102)上に移動させることによって、前記着色剤(4、104)を前記着色剤支持体(1、101)から除去するために、前記着色剤支持体(1、101)及び前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)がそれぞれ着色剤支持面を備えており、
前記着色剤支持体(1、101)及び前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)の前記着色剤支持面どうしが、前記着色剤(4、104)が移動する前記ゾーンにおいて逆方向に動作する、請求項11〜15のいずれかに記載の工程。
【請求項17】
前記着色剤(4、104)をタンク(5、105)から取り出し、好ましくは浸漬ローラ(3、103)を用いて、前記転写装置(2、102)に塗布する、請求項11〜16のいずれかに記載の工程。
【請求項18】
送給されなかった前記着色剤(4、104)をタンク(5、105)に戻す、請求項11〜17のいずれかに記載の工程。
【請求項19】
前記着色剤支持体(1、101)を、着色剤(4、104)の実質的に均一な厚さの膜(7、107)により被覆する、請求項11〜18のいずれかに記載の工程。
【請求項20】
前記転写装置(2、102)と前記着色剤支持体(1、101)との着色剤支持面及び/又は前記着色剤支持体(1、101)と前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)との着色剤支持面の間における速度を相対的に変化させることによって、前記着色剤(4、104)の膜の厚さを調節する、請求項11〜19のいずれかに記載の工程。
【請求項21】
前記転写装置(2、102)と前記着色剤支持体(1、101)との着色剤支持面及び/又は前記着色剤支持体(1、101)と前記着色剤剥ぎ取り装置(2、102)との着色剤支持面の間における距離を変化させることによって、前記着色剤(4、104)の膜の厚さを調節する、請求項11〜20のいずれかに記載の工程。
【請求項22】
使用する前記着色剤が、10000mPas未満、好ましくは1000mPas未満の粘度を有する着色剤である、請求項11〜21のいずれかに記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−528907(P2010−528907A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511571(P2010−511571)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056512
【国際公開番号】WO2008/151932
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(502349612)オウレンタム イノベーションズ テクノロジエン ゲーエムベーハー (1)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】