説明

印刷機洗浄装置及び印刷機

【課題】洗浄液を主とする液体であって、ローラーの側周部に残留する液体の量を低減すること。
【解決手段】印刷機洗浄装置及び印刷機は、印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液掻き取り装置と、残留液の膜厚THを検出することで残留液の量を検出する膜厚センサと、残留液掻き取り装置が残留液の量を低減した後に膜厚センサが検出した残留液の膜厚THが所定値αよりも多い場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、強制乾燥モード中にローラーを回転させる制御装置とを備える。これにより、ローラーの側周部に残留する残留液は、ローラーの径方向外側に向かう遠心力が働く。よって、ローラーの側周部に残留する残留液は、側周部の表面から脱落する結果として、印刷機洗浄装置及び印刷機は、ローラーの各側周部に残留する残留液の量を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラーの側周部を洗浄する印刷機洗浄装置及び印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機は、例えば、現在の印刷ジョブが終了し次の印刷ジョブを実行する前に、ローラーの側周部に残留するインキが洗浄される必要がある。例えば、特許文献1には、洗浄時間の短縮と洗浄不良の防止を図ることができる輪転印刷機のインキローラー洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−95106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、ローラーの輝度を検出し、その結果に基づいて洗浄作業を終了するか否かを判定する。すなわち、特許文献1に開示されている技術は、ローラーの側周部の汚れの有無(インキの有無)に基づいて洗浄作業を終了するか否かを判定する。しかしながら、ローラーの側周部にインキが残留していなくても、ローラーの側周部に洗浄液が残留することもある。また、特許文献1に開示されている技術は、ブレードの劣化によって、ブレードによる洗浄液の掻き取りが不十分となることがある。この場合、ローラーの側周部には、液体が残留することになる。ローラーの側周部に洗浄液が残留している状態で次の印刷ジョブが開始されると、洗浄液が次の印刷ジョブで用いられるインキと混ざり、印刷開始直後の印刷品質の低下を招くおそれがある。このように、特許文献1に開示されている技術では、ローラーの側周部に残留する液体を十分に低減できない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、洗浄液を主とする液体であって、ローラーの側周部に残留する液体の量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷機洗浄装置は、印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷機は、ローラーと、前記ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
ローラーの側周部に残留する残留液は、ローラーの径方向外側に向かう遠心力が働く。よって、ローラーの側周部に残留する残留液は、側周部の表面から脱落する。これに加えて、ローラーは、自身の側周部が他のローラーの側周部と接触した状態で回転することになる。よって、ローラーの側周部は、温度が上昇する。これにより、側周部に残留する残留液は蒸発しやすくなる。以上のように、本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、残留液に遠心力を働かせてローラーの側周部から脱落させると共に、残留液の蒸発を促進できる。結果として、本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、ローラーの各側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷機洗浄装置は、印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る印刷機は、ローラーと、前記ローラーを回転させる回転力発生装置と、前記ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、残留液に遠心力を働かせてローラーの側周部から脱落させると共に、残留液の蒸発を促進できる。結果として、本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、ローラーの各側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0012】
ここで、残留液低減手段の劣化が進むと、残留液低減手段によってローラーの側周部から除去される残留液の液量の時間変化量が低下する。残留液の液量の変化量が所定値以下である場合、残留液低減手段の劣化に起因して残留液の低減が不十分となる。制御装置は、残留液低減手段の劣化に起因して残留液の低減が不十分となる場合は、ただちに運転モードを強制乾燥モードとする。よって、印刷機洗浄装置は、ローラーを所定回転させるよりも、劣化した残留液低減手段による作業の時間を低減できる。劣化した残留液低減手段による作業は、効率が低下した作業である。よって、本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、より迅速にローラーの側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0013】
なお、残留液の液量の変化量が所定値よりも大きい場合、残留液低減手段の劣化は問題にならない程度である。制御装置は、残留液低減手段の劣化が問題にならない程度である場合は、残留液の量が十分に低減されるまで残留液低減手段による残留液の液量の低減を継続し、残留液の量が十分に低減されると残留液低減手段による残留液の液量の低減を停止する。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、前記制御装置は、前記強制乾燥モードを開始してから、所定時間が経過したら前記強制乾燥モードを終了することが望ましい。
【0015】
上記構成により、本発明に係る制御装置は、所定時間が経過したら強制乾燥モードを終了することにより、ローラーを必要以上に回転させるおそれを低減できる。ローラーを必要以上に回転させると、摩擦熱によりローラーの温度が必要以上に上昇することになる。ローラーの必要以上な温度の上昇は、ローラーの耐久性の低下を招くおそれがある。よって、印刷機洗浄装置は、ローラーの耐久性の低下を抑制できる。
【0016】
本発明の好ましい態様としては、前記制御装置は、前記強制乾燥モード中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が前記所定量以下となったら前記強制乾燥モードを終了することが望ましい。
【0017】
本発明に係る印刷機洗浄装置は、残留液の量が所定量以下となると、残留液の量を十分に低減できたことになる。上記構成により、本発明に係る制御装置は、残留液の量が所定量以下となったら強制乾燥モードを終了することにより、ローラーを必要以上に回転させるおそれをさらに好適に低減できる。ローラーを必要以上に回転させると、摩擦熱によりローラーの温度が必要以上に上昇することになる。ローラーの必要以上な温度の上昇は、ローラーの耐久性の低下を招くおそれがある。よって、印刷機洗浄装置は、ローラーの耐久性の低下をさらに好適に抑制できる。
【0018】
本発明の好ましい態様としては、前記制御装置は、さらに、前記ローラーの側周部に気体を供給する送風装置を制御し、前記強制乾燥モード中に、前記送風装置を動作させて前記ローラーの側周部に気体を供給することが望ましい。
【0019】
残留液は、風が供給されると乾燥しやすくなる。上記構成により、本発明に係る印刷機洗浄装置は、残留液の乾燥を促進できる。よって、印刷機洗浄装置は、ローラーの側周部に残留する残留液の量を迅速に低減できる。
【0020】
本発明の好ましい態様としては、前記制御装置は、さらに、前記ローラーが収納されるケーシング内の空気の温度を現在の温度よりも上昇させる暖房装置を制御し、前記強制乾燥モード中に、前記暖房装置を動作させて前記ケーシング内の空気の温度を現在の温度よりも上昇させることが望ましい。
【0021】
残留液は、風が供給されると乾燥しやすくなる。上記構成により、本発明に係る印刷機洗浄装置は、残留液の乾燥を促進できる。よって、印刷機洗浄装置は、ローラーの側周部に残留する残留液の量を迅速に低減できる。
【0022】
本発明の好ましい態様としては、前記制御装置は、さらに、前記残留液低減手段に不具合が生じているおそれを報知する報知手段を制御することが望ましい。
【0023】
上記構成により、オペレータがブレードを交換すれば、本発明に係る印刷機洗浄装置は、次回の洗浄からローラーの側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、洗浄液を主とする液体であって、ローラーの側周部に残留する液体の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、印刷機の全体を示す外観図である。
【図2】図2は、各印刷ユニットの構成を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、残留液掻き取り装置を示す正面図である。
【図4】図4は、残留液掻き取り装置を示す側面図である。
【図5】図5は、印刷機制御装置が有する機能を示すブロック図である。
【図6】図6は、印刷機制御装置が実行する実施形態1の残留液低減方法を示すフローチャートである。
【図7】図7は、印刷機制御装置が実行する実施形態2の残留液低減方法を示すフローチャートである。
【図8】図8は、印刷機制御装置が実行する実施形態3の残留液低減方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0027】
(実施形態1)
図1は、印刷機の全体を示す外観図である。以下に説明する印刷機1は、枚葉印刷機である。但し、本実施形態の印刷機1は、輪転印刷機でもよい。印刷機1は、給紙部11と、印刷部12と、排紙部13と、印刷機制御装置30と、を含んで構成される。給紙部11は、印刷が施される被記録媒体としての紙Sを印刷部12に導く。なお、被記録媒体には、紙S以外に、例えば、フィルムや表面がアルミでコーティングされているシートなども含まれる。印刷部12は、紙Sに印刷を施す。排紙部13には、印刷が施された紙Sが印刷部12から排出される。
【0028】
印刷部12は、複数の印刷ユニット14を有する。複数の印刷ユニット14には、第1印刷ユニット14aと、第2印刷ユニット14bと、第3印刷ユニット14cと、第4印刷ユニット14dとが含まれる。第1印刷ユニット14aから第4印刷ユニット14dの各印刷ユニット14は、例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック等の単色を重ねて印刷する。
【0029】
印刷機制御装置30は、印刷機1の各部を制御したり、オペレータによる指示の入力を受け付けたり、オペレータに対して指示や警告を報知したりする。印刷機制御装置30は、例えば、給紙部11と、印刷部12と、排紙部13と電気的に接続される。これにより、印刷機制御装置30は、印刷機1の各部を制御する。また、印刷機制御装置30は、入力装置37と、表示装置38とが電気的に接続される。
【0030】
入力装置37は、例えば、キーボードや、マウスである。これにより、印刷機制御装置30は、オペレータによる指示の入力を受け付ける。表示装置38は、モニター装置や、警告ランプなどである。印刷機制御装置30は、このモニター装置に画像を表示したり、警告ランプを発光させたりして、オペレータに対して指示や警告を報知する。次に、印刷部12の各印刷ユニット14について説明する。
【0031】
図2は、各印刷ユニットの構成を模式的に示す説明図である。印刷部12は、印刷ユニット14毎に、図2に示すようにローラー群18を有する。なお、以下に説明するローラー群18の配置は、各印刷ユニット14の一例であり、本実施形態の各印刷ユニット14が有するローラーの数やローラーの配置は、以下に説明するローラーの数やローラーの配置に限定されない。
【0032】
ローラー群18には、インキ元ローラー15と、版胴16と、ブランケット胴17とが含まれる。さらに、これ以外に、ローラー群18には、呼び出しローラーBと、ローラーC1と、ローラーC2と、ローラーDと、ローラーDBと、ローラーDQと、ローラーDRと、ローラーDSと、ローラーDTと、ローラーE〜ローラーHと、ローラーHQと、ローラーJと、ローラーK1と、ローラーK2と、ローラーL〜ローラーNと、ローラーPと、インキ付けローラーW〜インキ付けローラーZとが含まれる。ローラー群18のうち、インキ元ローラー15と、ローラーC1と、ローラーC2と、ローラーDBと、ローラーDSと、ローラーDRと、ローラーJと、ローラーK1と、ローラーK2と、ローラーPとが金属製のローラーであり、その他はゴム製のローラーである。
【0033】
ローラーC1の側周部は、呼び出しローラーBの側周部と、ローラーEの側周部と、ローラーHQの側周部と、ローラーDの側周部と接触する。ローラーC2の側周部は、ローラーHQの側周部と、ローラーDの側周部と、ローラーMの側周部と、ローラーHの側周部と接触する。ローラーK1の側周部は、ローラーLの側周部と、インキ付けローラーXの側周部と、インキ付けローラーWと接触する。ローラーK2の側周部は、ローラーMの側周部と、ローラーHの側周部と、インキ付けローラーYの側周部と、インキ付けローラーZの側周部と、ローラーNの側周部と接触する。
【0034】
版胴16の側周部には、刷版が装着される。前記刷版は、インキ付けローラーWの側周部と、インキ付けローラーXの側周部と、インキ付けローラーYの側周部と、インキ付けローラーZの側周部と、ローラーDQの側周部と接触する。ブランケット胴17の側周部は、版胴16に巻きつけられる刷版の側周部と、各印刷ユニット14に供給される紙Sと接触する。呼び出しローラーBの側周部は、インキ元ローラー15の側周部と接触している。インキ元ローラー15は、インキパン15aに溜められたインキを引き出すローラーである。
【0035】
インキは、インキ元ローラー15から版胴16の間に配置される各ローラーで練られつつ、各ローラーを介して、インキ元ローラー15から版胴16に導かれる。そして、版胴16の刷版に導かれたインキは、ブランケット胴17の側周部に巻かれたゴム製のブランケットに転写される。そして、ブランケットに転写されたインキは、ブランケット胴17の側周部に接触する紙Sに転写される。これにより、各印刷ユニット14は、紙Sに印刷を施す。
【0036】
印刷機1は、さらに印刷機洗浄装置20を備える。印刷機1は、例えば現在の印刷ジョブが終了した後、各印刷ユニット14の各ローラーの側周部にインキが残っている。印刷機洗浄装置20は、各ローラーの側周部に残留したインキを除去して各ローラーの側周部を洗浄するための装置である。印刷機洗浄装置20は、残留液供給口21と、残留液量検出手段としての膜厚センサ22と、送風装置23と、暖房装置24と、残留液低減手段としての残留液掻き取り装置25と、を含む。残留液供給口21は、ローラーFの側周部と対向する位置に設けられる。残留液供給口21は、ローラー群18を覆うカバーに設けられる孔であって、ローラーFに残留液を供給するための残留液供給部である。
【0037】
ここで、以下、インキと、洗浄液と、インキと洗浄液との混合液とを総じて残留液という。膜厚センサ22は、各ローラーの側周部に残留する残留液の量を検出する。具体的には、膜厚センサ22は、検出の対象となるローラーの側周部に形成される残留液の液膜の厚みを検出することで、結果として残留液の量を検出する。膜厚センサ22は、検出した液膜の厚みに応じた信号を出力する。液膜の厚みとは、ローラーの側周部に形成される残留液の膜の径方向での寸法である。以下、残留液の液膜の厚みを膜厚という。
【0038】
膜厚センサ22は、検出の対象となるローラーの側周部に接触する接触式のセンサでもよいし、側周部に接触しない非接触式のセンサでもよい。本実施形態の膜厚センサ22は、非接触式のセンサである。膜厚センサ22は、検出の対象となるローラーの側周部と対向して設けられる。そして、膜厚センサ22は、自身(膜厚センサ22)と、ローラーの側周部に形成される液膜の表面までの距離を検出する。これにより、膜厚センサ22は、検出の対象となるローラーの側周部に形成された液膜の膜厚を検出する。
【0039】
膜厚センサ22は、例えば、ローラーK1の側周部と対向する位置に設けられる。ここで、膜厚センサ22は、ローラー群18のうち、インキ元ローラー15と、版胴16と、ブランケット胴17と以外のローラーならば、どのローラーの側周部を検出の対象としてもよい。但し、ゴム製のローラーは、金属製のローラーよりも、熱膨張に起因する径の変化量が大きい。よって、膜厚センサ22は、金属製のローラーを検出の対象とすると好ましい。これにより、ローラー群18の温度が変化した場合であっても、膜厚センサ22は、必要十分な精度で、検出対象のローラーの側周部に形成された液膜の厚みを検出できる。
【0040】
さらに、膜厚センサ22は、金属製のローラーのうち、ローラーK1を検出の対象とすると最も好ましい。これは、ローラーK1の側周部のうち露出している部分の面積が、他の金属製のローラーの側周部よりも比較的大きいためである。よって、ローラーK1の近傍が膜厚センサ22の設置場所として適している。また、ローラーK1は、ローラーFや、ローラーC1や、ローラーC2よりも、残留液の流れの下流側、つまり版胴16側に位置する。ここで、版胴16に近いほど、ローラーの側周部に残留した残留液が、次の印刷ジョブの印刷品質に与える影響は大きい。よって、膜厚センサ22は、ローラーC1や、ローラーC2よりもローラーK1や、ローラーK2を検出の対象とした方が好ましい。これにより、印刷機洗浄装置20は、印刷機1による印刷品質の低下を抑制できる。
【0041】
また、ローラーDBと、ローラーDSと、ローラーDRとは、湿し水をインキ付けローラーZや、ローラーNに供給するローラーである。よって、ローラーDBと、ローラーDSと、ローラーDRとは、各側周部が湿し水によって湿っている。本実施形態の印刷機洗浄装置20は、ローラーの側周部に残留するインキと、洗浄液と、インキと洗浄液の混合液とを低減する技術であり、ローラーの側周部に残留する湿し水を低減する技術ではない。よって、膜厚センサ22は、ローラーDBや、ローラーDSや、ローラーDRを検出の対象としない方が好ましい。以上により、膜厚センサ22による検出の対象として最も好ましいローラーは、ローラーK1である。以上により、膜厚センサ22は、ローラーK1の側周部に対向して設けられることが最も好ましい。
【0042】
送風装置23は、風を噴出す装置である。本実施形態の送風装置23は、熱風を吹き出す。熱風とは、印刷ユニット14のケーシング内の気温よりも温度が高い風である。送風装置23は、印刷ユニット14のケーシング内に設けられる。送風装置23は、ローラー群18と対向する位置に設けられる。送風装置23は、ローラー群18のうち、インキ元ローラー15と、版胴16と、ブランケット胴17と以外のローラーの少なくとも1つに気体を供給する。ここで、前記気体は空気である。すなわち、送風装置23は、風を吹き出す装置である。本実施形態では、送風装置23は、ローラー群18全体に気体を供給する。なお、送風装置23の数は、単数でも複数でもよい。暖房装置24は、各印刷ユニット14内のケーシング内の気温を現在の気温よりも上昇させる装置である。暖房装置24は、印刷ユニット14のケーシング内に設けられる。暖房装置24は、ローラー群18と対向する位置に設けられる。暖房装置24の数は、単数でも複数でもよい。
【0043】
図3は、残留液掻き取り装置を示す正面図である。図4は、残留液掻き取り装置を示す側面図である。図2から図4に示す残留液掻き取り装置25は、ローラーK1の側周部に残留する残留液を除去する。残留液掻き取り装置25は、図2に示すように、膜厚センサ22の検出の対象となるローラーの近傍に設けられる。
【0044】
残留液掻き取り装置25は、図3及び図4に示すように、ブレード25aと、残留液溜め25bとを備える。ブレード25aは、ローラーK1の回転軸方向に長い矩形の板状部材である。ブレード25aは、4辺のうちの長辺の1つが、図4に示すようにローラーK1の側周部に対向するように、図3及び図4に示すボルト25cでフレームに固定される。前記フレームは、図1に示す各印刷ユニット14のケーシングを構成する部材である。
【0045】
残留液溜め25bは、ブレード25aと隣接して設けられる。残留液溜め25bは、図4に示すように、ブレード25aの2つの長辺のうち、ローラーK1とは反対側の長辺を内部に含むように設けられる。つまり、ブレード25aは、長辺のうちの一方が残留液溜め25bの内部に設けられ、長辺のうちの他方が残留液溜め25bの外部でローラーK1に対向するように設けられる。以下、ブレード25aがローラーK1の側周部と対向する残留液掻き取り装置25の位置を所定の位置という。
【0046】
ブレード25aがローラーK1の側周部に対向した状態でローラーK1が回転すると、ローラーK1の側周部に残留する残留液のうちブレード25aに接触する残留液は、ブレード25aによって掻き取られる。そして、ブレード25aが掻き取った残留液は、ブレード25aの表面を伝って、残留液溜め25bに導かれる。このようにして、印刷機洗浄装置20は、ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する。
【0047】
図5は、印刷機制御装置が有する機能を示すブロック図である。図2に示す本実施形態の印刷機洗浄装置20は、印刷機洗浄装置20の制御装置としての洗浄装置制御装置を有する。本実施形態の洗浄装置制御装置は、印刷機制御装置30に含まれる。但し、洗浄装置制御装置は、印刷機制御装置30と別個に設けられてもよい。以下、洗浄装置制御装置を印刷機制御装置30として取り扱う。図5に示すように、印刷機制御装置30は、入出力部(I/O:Input/Output)に、膜厚センサ22と、電動機41と、ニップ圧発生装置42と、送風装置23と、暖房装置24とが電気的に接続される。
【0048】
電動機41は、図2に示すローラー群18に回転力を与える回転力発生装置である。ニップ圧発生装置42は、図2に示す隣接し合うローラーの回転軸同士を互いに近づく方向に移動させて、それぞれの側周部に圧力を与える装置である。印刷機制御装置30は、ニップ圧発生装置42を制御することで、各ローラーの側周部に与える圧力を調節する。以下、前記圧力が低下されて、隣接するローラーの側周部同士を非接触とすることを、ニップを解除するという。
【0049】
印刷機制御装置30は、ローラーを洗浄の開始から、残留液の低減が完了するまでの間、図2に示す、呼び出しローラーBとローラーC1とのニップを解除し、版胴16とインキ付けローラーWとのニップを解除し、版胴16とインキ付けローラーXとのニップを解除し、版胴16とインキ付けローラーYとのニップを解除し、版胴16とインキ付けローラーZとのニップを解除し、インキ付けローラーZとローラーDBとのニップを解除する。
【0050】
印刷機制御装置30は、残留液供給口21に洗浄液が投入されると、回転力発生装置を可動させて、図2に示すローラー群18を回転させる。これにより、洗浄液をローラー群18のうちの少なくとも1つに供給して、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18のうちの少なくとも1つを洗浄する。そして、ローラー群18の洗浄が完了し、図4に示すように残留液掻き取り装置25が所定の位置に取り付けられると、印刷機制御装置30は、回転力発生装置を可動させて、図2に示すローラー群18を回転させる。これにより、印刷機洗浄装置20は、ローラーK1の側周部に残留した残留液を残留液掻き取り装置25により低減する。
【0051】
印刷機制御装置30は、コンピュータである。印刷機制御装置30は、1つの装置が図5に示す各機能を実現してもよいし、図5に示す各機能をそれぞれ別個に実現する複数の装置が電気的に接続されることで各機能を実現してもよい。印刷機制御装置30は、処理部31と、記憶部36とを備える。記憶部36は、処理部31が実行する手順を示すプログラムや、処理部31によって生成された情報や、印刷機制御装置30に電気的に接続される図1に示す入力装置37で入力された情報などを記憶する。処理部31は、記憶部36から必要な情報を取得したり、記憶部36に情報を記憶させたりする。
【0052】
処理部31は、情報取得部32と、判定部33と、演算部34と、各種装置制御部35とを含む。情報取得部32は、印刷機制御装置30のI/Oに電気的に接続される図2に示す膜厚センサ22から信号を取得する。判定部33は、印刷機制御装置30が次にどの手順を実行するかを判定する。演算部34は、1サイクル毎に所定の数値(カウンタ)に加算を行うことで、所定の時期から経過した時間を検出する。各種装置制御部35は、電動機41と、ニップ圧発生装置42と、送風装置23と、暖房装置24とを制御する。次に、印刷機制御装置30が実行する手順を説明する。
【0053】
図6は、印刷機制御装置が実行する実施形態1の残留液低減方法を示すフローチャートである。本実施形態では、以下に説明する一連の手順は、図2に示すローラー群18の洗浄が完了し、図4に示すように、残留液掻き取り装置25が所定の位置に取り付けられてから、次の印刷ジョブのプリセットが実行されるまでの間に実行される。ここで、ローラー群18の洗浄とは、図2に示す残留液供給口21から洗浄液が投入され、ローラー群18が所定時間回転させられることをいう。
【0054】
ここで、本実施形態では、残留液掻き取り装置25は、作業員の手作業によって所定の位置に取り付けられるが、残留液掻き取り装置25は、ローラー群18の洗浄が完了した後に自動で所定の位置に移動されてもよい。この場合、印刷機洗浄装置20は、例えば、アクチュエータを備える。アクチュエータは、一方がフレームに固定され、他方が残留液掻き取り装置25に取り付けられる。そして、印刷機制御装置30がアクチュエータを伸張させることで、残留液掻き取り装置25は、所定の位置に移動される、
【0055】
図6に示す、ステップST101で、図5に示す各種装置制御部35は、図2に示すローラー群18を所定時間T1の間回転させる。これにより、残留液掻き取り装置25は、ローラーK1の側周部に残留する残留液の量を低減する。ここで、所定時間T1は、図3及び図4に示すブレード25aの劣化が問題とならない状態で、ローラーK1の側周部に残留する残留液を十分に低減するために必要な時間である。このとき、図5に示す演算部34は、1サイクル毎にカウンタに加算を行うことで、ローラー群18の回転を開始してから経過した時間を算出する。次に、ステップST102で、図5に示す情報取得部32は、図2に示す膜厚センサ22から信号を取得する。すなわち、情報取得部32は、ローラーK1の側周部に未だに残留する残留液の膜厚THを取得する。
【0056】
次に、ステップST103で、図5に示す判定部33は、残留液の膜厚THが所定値α以下であるか否かを判定する。所定値αは、残留液の膜厚THが所定値α以下であれば、残留液を十分に低減できたと判定できる値である。また、所定値αは、図3及び図4に示す残留液掻き取り装置25のブレード25aの劣化状態を判定するための値、すなわち劣化が問題にならないと判定できる値でもある。実際には、まず、図5に示す演算部34が、所定値αから残留液の膜厚THを減算する。次に、この減算の結果が0または正の値であるか、負の値であるか否かを判定部33が判定する。これらの手順を実行することにより、ステップST103で、判定部33は、残留液の膜厚THが所定値α以下であるか否か、すなわち残留液の低減が正常に完了したか否かを判定する。
【0057】
残留液の膜厚THが所定値α以下である、すなわち、残留液の低減が正常に完了した場合(ステップST103、Yes)、印刷機制御装置30は、一連の手順の実行を終了する。残留液の膜厚THが所定値αよりも大きい、すなわち、残留液の低減が正常に完了していない場合(ステップST103、No)、ステップST104で、各種装置制御部35は、運転モードを強制乾燥モードとし、図2に示すローラー群18を所定時間T2の間回転させる。
【0058】
これにより、ローラー群18の各側周部に残留する残留液は、各ローラーの径方向外側に向かう遠心力が働く。よって、ローラー群18の各側周部に残留する残留液は、各側周部の表面から脱落する。さらに、各ローラーの側周部同士が接触した状態でローラー群18が回転することになるため、各ローラーの側周部は、温度が上昇する。これにより、側周部に残留する残留液は蒸発しやすくなる。これらにより、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の各側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0059】
さらに、各種装置制御部35は、強制乾燥モードの間、ステップST104でローラー群18を回転させながら、図2に示す送風装置23から気体をローラー群18に供給する。送風装置23から吹き出される風は、熱風でもよいし冷風でもよい。但し、送風装置23からローラー群18に供給される風が熱風の方が、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の側周部に残留する残留液の乾燥をより迅速に促進できる。また、本実施形態の種装置制御部35は、送風装置23に加えて、強制乾燥モードの間、ステップST104でローラー群18を回転させながら、図2に示す暖房装置24を稼動させる。これにより、各種装置制御部35は、ステップST104で、各印刷ユニット14内のケーシング内の温度を上昇させる。これにより、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の側周部に残留する残留液の乾燥をより迅速に促進できる。
【0060】
ここで、各種装置制御部35は、ステップST104で、ローラー群18を回転させるのみでもよい。この場合であっても、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の各側周部に残留する残留液の量を低減できる。印刷機洗浄装置20は、送風装置23や暖房装置24を備える必要がないため、自身(印刷機洗浄装置20)を構成するために必要な部品点数を低減できる。また、各種装置制御部35は、ローラー群18を回転させると共に、送風装置23からローラー群18に気体を供給させるのみでもよい。または、各種装置制御部35は、ローラー群18を回転させると共に、暖房装置24を稼動させるのみでもよい。これらの場合であっても、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の側周部に残留する残留液の乾燥をより迅速に促進できる。
【0061】
次に、ステップST105で、印刷機制御装置30は、図3及び図4に示すブレード25aが劣化しているおそれがあることをオペレータに報知する。具体的には、各種装置制御部35は、ブレード25aが劣化しているおそれがある旨を伝える画像を図1に示す報知手段としての表示装置38に表示する。前記画像は、例えば、テキスト画像や、ブレード25aが劣化した状態を示すイラスト画像である。このとき、各種装置制御部35は、ブレード25aが劣化しているおそれがある旨を伝える画像と共に、ブレード25aの交換を促す旨を伝える画像を図1に示す表示装置38に表示してもよい。
【0062】
なお、例えば、印刷機洗浄装置20は、表示装置38に代えて報知手段としてランプを備えてもよい。ランプの近傍には、例えば「ブレードが劣化しているおそれがあります。交換してください。」のような文章が記載されている。各種装置制御部35は、ステップST105でこのランプを点灯することにより、ブレード25aが劣化しているおそれがあることをオペレータに報知してもよい。
【0063】
これらにより、印刷機洗浄装置20は、オペレータにブレード25aが劣化しているおそれがあり、ブレード25aを交換すべきである旨を報知できる。この報知によりオペレータがブレード25aを交換すれば、印刷機洗浄装置20は、次回の洗浄からローラー群18の側周部に残留する残留液の量を低減できる。ステップST105を実行すると、印刷機制御装置30は、一連の手順の実行を終了する。
【0064】
以上の一連の手順を実行することにより、印刷機洗浄装置20は、図3及び図4に示す残留液掻き取り装置25でローラー群18の側周部に残留する残留液の量を十分に低減できなかった場合、ローラー群18を回転させることで残留液の低減を促進できる。このとき、さらに風をローラー群18に供給したり、印刷ユニット14のケーシング内の気温を上昇させたりすることで、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の側周部に残留する残留液の乾燥を促進できる。また、印刷機洗浄装置20は、図3及び図4に示すブレード25aが劣化しているおそれがある旨をオペレータに報知する。これにより、オペレータがブレード25aを交換すれば、印刷機洗浄装置20は、次回の洗浄からローラー群18の側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0065】
ここで、本実施形態の印刷機洗浄装置20は、膜厚センサ22によってローラーの側周部に残留する残留液の量を検出するが、印刷機洗浄装置20は、例えば、膜厚センサ22に代えて荷重センサを備えてもよい。荷重センサは、検出する対象としてのローラーの回転軸に設けられる。荷重センサは、側周部に残留する残留液の変化により、出力する信号も変化する。印刷機制御装置30は、この荷重センサから取得した信号に基づいて、ローラーの側周部に残留する残留液の量を検出してもよい。
【0066】
(実施形態2)
図7は、印刷機制御装置が実行する実施形態2の残留液低減方法を示すフローチャートである。ここで、図6に示すステップST104及びステップST105を残留液低減ルーチンという。本実施形態の印刷機制御装置30が実行する一連の手順と、図6に示す一連の手順とでは、残留液低減ルーチンが異なる。よって、以下、残留液低減ルーチンのみを説明する。残留液の膜厚THが所定値αよりも大きい、すなわち、残留液の低減が正常に完了していない場合(図6のステップST103、No)、図7に示すステップST201で、各種装置制御部35は、図2に示すローラー群18の回転を開始する。また、各種装置制御部35は、図2に示す送風装置23からローラー群18への風の供給を開始する。なお、本実施形態では、一例として、図2に示す送風装置23は稼動しないものとして説明する。
【0067】
次に、図5に示す情報取得部32は、ステップST202で、図2に示す膜厚センサ22から信号を取得する。すなわち、情報取得部32は、ローラーK1の側周部に未だに残留する残留液の膜厚THを取得する。次に、ステップST203で、図5に示す判定部33は、残留液の膜厚THが所定値α以下であるか否かを判定する。残留液の膜厚THが所定値αよりも大きい場合(ステップST203、No)、各種装置制御部35は、再度、ステップST201を実行する。この場合、各種装置制御部35は、ローラー群18の回転を継続し、送風装置23からローラー群18への風の供給を継続することになる。
【0068】
残留液の膜厚THが所定値α以下である場合(ステップST203、Yes)、ステップST204で、各種装置制御部35は、図2に示すローラー群18の回転を停止する。また、各種装置制御部35は、図2に示す送風装置23からローラー群18への風の供給を停止する。そして、印刷機制御装置30は、一連の手順の実行を終了する。以上の一連の手順を実行することにより、印刷機制御装置30は、ローラー群18の側周部に残留する残留液の量が十分に低減されるまで、ローラー群18を回転させ、また、送風装置23からローラー群18へ風を供給する。これにより、印刷機洗浄装置20は、より確実にローラー群18の側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0069】
また、ローラー群18の側周部に残留する残留液の液量の低減が完了すると、印刷機制御装置30は、ローラー群18の回転と、送風装置23からローラー群18への風の供給とをただちに停止する。よって、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18を必要以上に回転させたり、送風装置23からローラー群18へ風を必要以上に供給したりするおそれを低減できる。ローラー群18を必要以上に回転させたり、送風装置23からローラー群18へ風を必要以上に供給したりすると、ローラー群18の温度が必要以上に上昇することになる。ローラー群18の必要以上な温度の上昇は、ローラー群18の耐久性の低下を招くおそれがある。よって、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の耐久性の低下を抑制できる。
【0070】
(実施形態3)
図8は、印刷機制御装置が実行する実施形態3の残留液低減方法を示すフローチャートである。ここで、図6に示すステップST101からステップST103の一連の手順を低減及び判定ルーチンという。本実施形態の印刷機制御装置30が実行する一連の手順と、図6に示す一連の手順とでは、低減及び判定ルーチンが異なる。よって、以下、低減及び判定ルーチンのみを説明する。図8に示すステップST301で、図5に示す各種装置制御部35は、図2に示すローラー群18の回転を開始する。これにより、各種装置制御部35は、ローラーK1の側周部に残留する残留液の残留液掻き取り装置25による低減を開始する。
【0071】
次に、図5に示す情報取得部32は、ステップST302で、図2に示す膜厚センサ22から信号を取得する。すなわち、情報取得部32は、ローラーK1の側周部に未だに残留する残留液の膜厚THiを取得する。次に、ステップST303で、図5に示す判定部33は、残留液の膜厚THiが所定値α以下であるか否かを判定する。残留液の膜厚THiが所定値α以下である場合(ステップST303、Yes)、ステップST304で、各種装置制御部35は、図2に示すローラー群18の回転を停止する。そして、印刷機制御装置30は、一連の手順の実行を終了する。
【0072】
残留液の膜厚THiが所定値αよりも大きい場合(ステップST303、No)、ステップST305で、判定部33は、膜厚の変化量ΔTHが所定値βよりも大きいか否かを判定する。膜厚の変化量ΔTHとは、膜厚センサ22から前回取得した残留液の膜厚THi−1から、膜厚センサ22から今回取得した残留液の膜厚THiを減算した値である。ここで、ステップST302を2度実行している場合は、1度目に膜厚センサ22から取得した残留液の膜厚がTHi−1になり、2度目に膜厚センサ22から取得した残留液の膜厚がTHiになる。ステップST302を1度実行しか実行していない場合、THi−1には初期値が代入される。初期値は、例えば、残留液の低減がまったくなされていない時の、ローラーK1の側周部に残留する残留液の膜厚である。所定値βは、劣化が問題となり始める頃合のブレード25aを用いた場合の膜厚の変化量ΔTHである。
【0073】
膜厚の変化量ΔTHが所定値βよりも大きい場合(ステップST305、Yes)、ブレード25aの劣化はまだ問題にならない程度である。よって、各種装置制御部35は、再度、ステップST301を実行する。これにより、印刷機洗浄装置20は、残留液掻き取り装置25による残留液の低減を続行する。膜厚の変化量ΔTHが所定値β以下である場合(ステップST305、No)、ブレード25aの劣化に起因して、残留液の低減が不十分となっている。この場合、印刷機制御装置30は、ステップST306で、図6や図7に示す残留液低減ルーチンを実行する。なお、図6及び図7に示す残留液低減ルーチンを実行する場合、各種装置制御部35は、ローラー群18の回転を停止してから残留液低減ルーチンを実行してもよいが、ローラー群18の回転を継続してもよい。この場合、印刷機制御装置30は、ローラー群18の回転を停止する手順と、ローラー群18の回転を再開する手順とを省略できる。
【0074】
以上の一連の手順を実行することにより、印刷機制御装置30は、ブレード25aの劣化が問題にならない程度である場合は、残留液の量が十分に低減されるまでローラー群18を回転し、残留液の量が十分に低減されるとローラー群18の回転を停止する。よって、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18を所定時間回転させるよりも、必要以上にローラー群18を回転させるおそれを低減できる。上述のように、ローラー群18を必要以上に回転させると、ローラー群18の温度が必要以上に上昇してローラー群18の耐久性の低下を招くおそれがある。よって、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18の耐久性の低下を抑制できる。
【0075】
また、印刷機制御装置30は、ブレード25aの劣化に起因して残留液の低減が不十分となる場合は、ただちに残留液低減ルーチンを実行する。よって、印刷機洗浄装置20は、ローラー群18を所定回転させるよりも、劣化したブレード25aによる作業の時間を低減できる。劣化したブレード25aによる作業は、効率が低下した作業である。よって、印刷機洗浄装置20は、より迅速にローラー群18の側周部に残留する残留液の量を低減できる。
【0076】
以下に記載する各付記項は、洗浄液を主とする液体であって、ローラーの側周部に残留する液体の量を低減することという課題を解決するための他の手段である。
(付記項1)
印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出することで前記残留液低減手段の劣化状態を検出する残留液量検出手段と、
前記劣化状態に基づいて、現在の運転モードを強制乾燥モードとするか否かを判定し、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機洗浄装置。
(付記項2)
前記制御装置は、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合に、現在の運転モードを強制乾燥モードとすることを特徴とする付記項1に記載の印刷機洗浄装置。
(付記項3)
前記制御装置は、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合に、現在の運転モードを強制乾燥モードとすることを特徴とする付記項1に記載の印刷機洗浄装置。
(付記項4)
ローラーと、
前記ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出することで前記残留液低減手段の劣化状態を検出する残留液量検出手段と、
前記劣化状態に基づいて、現在の運転モードを強制乾燥モードとするか否かを判定し、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機。
(付記項5)
前記制御装置は、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合に、現在の運転モードを強制乾燥モードとすることを特徴とする付記項4に記載の印刷機。
(付記項6)
前記制御装置は、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合に、現在の運転モードを強制乾燥モードとすることを特徴とする付記項4に記載の印刷機。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明に係る印刷機洗浄装置及び印刷機は、ローラーの側周部を洗浄する技術に有用であり、特に、洗浄液を主とする液体であって、ローラーの側周部に残留する液体の量を低減することに適している。
【符号の説明】
【0078】
1 印刷機
11 給紙部
12 印刷部
13 排紙部
14 印刷ユニット
14a 第1印刷ユニット
14b 第2印刷ユニット
14c 第3印刷ユニット
14d 第4印刷ユニット
15 インキ元ローラー
15a インキパン
16 版胴
17 ブランケット胴
18 ローラー群
20 印刷機洗浄装置
21 残留液供給口
22 膜厚センサ
23 送風装置
24 暖房装置
25 残留液掻き取り装置
25a ブレード
25b 残留液溜め
25c ボルト
30 印刷機制御装置
31 処理部
32 情報取得部
33 判定部
34 演算部
35 各種装置制御部
36 記憶部
37 入力装置
38 表示装置
41 電動機
42 ニップ圧発生装置
S 紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機洗浄装置。
【請求項2】
印刷機のローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機洗浄装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記強制乾燥モードを開始してから、所定時間が経過したら前記強制乾燥モードを終了することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷機洗浄装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記強制乾燥モード中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が前記所定量以下となったら前記強制乾燥モードを終了することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷機洗浄装置。
【請求項5】
前記制御装置は、さらに、
前記ローラーの側周部に気体を供給する送風装置を制御し、
前記強制乾燥モード中に、前記送風装置を動作させて前記ローラーの側周部に気体を供給することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷機洗浄装置。
【請求項6】
前記制御装置は、さらに、
前記ローラーが収納されるケーシング内の空気の温度を現在の温度よりも上昇させる暖房装置を制御し、
前記強制乾燥モード中に、前記暖房装置を動作させて前記ケーシング内の空気の温度を現在の温度よりも上昇させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷機洗浄装置。
【請求項7】
前記制御装置は、さらに、
前記残留液低減手段に不具合が生じているおそれを報知する報知手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷機洗浄装置。
【請求項8】
ローラーと、
前記ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減した後に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多い場合、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機。
【請求項9】
ローラーと、
前記ローラーを回転させる回転力発生装置と、
前記ローラーの側周部に残留する残留液の量を低減する残留液低減手段と、
前記残留液の量を検出する残留液量検出手段と、
前記残留液低減手段が前記残留液の量を低減している最中に前記残留液量検出手段が検出した前記残留液の量が所定量よりも多く、かつ、前記残留液の液量の変化量が所定値以下である場合、現在の運転モードを強制乾燥モードとし、前記強制乾燥モード中に前記ローラーを回転させる制御装置と、
を備えることを特徴とする印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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