説明

印刷物とその検査方法

【課題】 簡単な構成で、容易かつ確実に印刷物の種類を確認することができ、異種混入等を防止することができる印刷物とその検査方法を提供する。
【解決手段】 所定の印刷表示部14を施す印刷表面12aに、可視光の下では肉眼でほとんど見えない、または見えない蛍光インキで印刷された検査用印刷部16を形成する。印刷物12を検査用印刷部16に折り目が掛かるように折り畳んで、複数枚を同じ向きに並べて印刷物12の束18を形成する。この状態で検査用印刷部16のある折り目側の、印刷物12の束の側面に、紫外線を照射して、検査用印刷部16が発する蛍光により1乃至複数の帯状またはライン状の表示16aを形成させることにより、印刷物12の種類を検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬品の包装箱に収納される添付文書等の印刷物の種類や有無等を検査可能にする印刷物とその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば医薬品の包装箱には、その包装箱内の医薬品の説明書である添付文書の印刷物が収納されている。この添付文書は、医薬品毎に作成され、異なる種類の添付文書が医薬品の包装箱に収納されないように、それらの種類を確認する検査が行われている。
【0003】
添付文書等の印刷物の種類を識別する方法としては、所定の印刷を目視等で確認して種類を識別する以外に、印刷物の空きスペースにバーコードを印刷し、そのバーコードをリーダで読み取ることが行われている。また、特許文献1,2に開示されているように、添付文書や収納物に無線タグを取り付けて、確認作業を行うシステムも提案されている。その他、特許文献3に開示されているように、磁気マーカーを収納物に印刷し、外部から収納物を検知するシステムも提案されている。
【特許文献1】特開2004−338744号公報
【特許文献2】特開2001−261012号公報
【特許文献3】特開平6−119565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術のバーコードが印刷された印刷物の場合、印刷箇所に制約があったり、印刷物の記載項目等が多かったりした場合には、空きスペースが無くバーコードを印刷できない場合もあった。
【0005】
また、特許文献1〜3に開示されたように非接触で収納物を検知するシステムは、個々の印刷物の収納の有無を確認するには効率的なシステムであるが、印刷された大量の印刷物の種類の確認や混入検査においては、印刷物一枚一枚に対する確認検査システムが使えず、別途印刷物面にバーコード表示等を設ける必要があり、上記と同様の問題があった。また、検査装置のコストが高いという問題もあった。
【0006】
この発明は上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、容易かつ確実に印刷物の種類を確認することができ、異種混入の防止等の検査をおこなうことができる印刷物とその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、所定の印刷が施された印刷表示部と、可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは全く見えない蛍光インキで印刷された検査用印刷部を備えた印刷物であり、好ましくは、前記検査用印刷部は、前記印刷物を折り畳んで複数同じ向きに並べて印刷物の束にした状態で、各々の印刷物の折り目の同じ位置に現れ、紫外線照射により束の前記折り目側の側面に紫外線照射すると、前記検査用印刷部が発する蛍光により1乃至複数の帯状またはライン状の表示が形成されるものである。
【0008】
また、この発明は、可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは全く見えない蛍光インキで表示された検査用印刷部を印刷物に設け、この印刷物の前記検査用印刷部に紫外線を照射し、前記検査用印刷部が発する蛍光により前記印刷物の種類を検査する印刷物検査方法である。
【0009】
また、この発明は、所定の印刷が施された印刷表示部と、可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは全く見えない蛍光インキで表示された検査用印刷部を印刷物に設け、この印刷物を前記検査用印刷部に折り目が掛かるように折り畳んで複数枚を同じ向きに並べて印刷物の束にし、前記印刷物の束の前記折り目側の側面に紫外線照射して、前記検査用印刷部が発する蛍光により1乃至複数の帯状またはライン状の表示を形成させることによって、前記印刷物の種類を検査する印刷物検査方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明の印刷物とその検査方法は、印刷物の表示部分や空きスペースに影響されることなく、既存の印刷方法により、容易かつ確実に印刷物の種類を特定することができる印刷を、印刷物の種類毎等に施すことができる。また、確認作業は、紫外線を印刷物または印刷物の束に照射するだけで、容易である。検査用印刷部の印刷は、可視光の下ではほとんど見えないかまたは見えないので、所定の印刷がなされた印刷表示部の表示に重なって印刷しても、印刷表示部を見えにくくしたりする影響がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明の一実施形態を示すもので、例えば医薬品等を収容した包装箱に収納される添付文書等の印刷物12を検査するものである。印刷物12の表面である印刷表面12aには、図3に示すように、効能書きや注意書き等の説明文や図面等の印刷表示部14が施されている。また、印刷表面12aには、可視光の下では肉眼で見えない、または全く見えない蛍光インキで印刷された検査用印刷部16が設けられている。
【0012】
印刷表示部14に使用するインキは、一般に印刷物に用いられるインキで良く、それらは、例えば酸化重合乾燥型または紫外線硬化乾燥型のオフセット印刷用インキである。
【0013】
検査用印刷部16に使用するインキは、肉眼では見えない400nm以下の波長の紫外線を当てると、光エネルギーを吸収し可視光を放射する蛍光顔料をメジウムインキと呼ばれる透明インキ中に混ぜ込んだ蛍光インキであり、印刷表示部14に酸化重合乾燥型インキを使用する場合には検査用印刷部16にも酸化重合乾燥型の蛍光インキを用い、印刷表示部14に紫外線硬化乾燥型インキを使用する場合には、検査用印刷部16にも紫外線硬化乾燥型の蛍光インキを用いることにより、一回の印刷により印刷物を印刷終了することが出来るので経済的である。
【0014】
インキ中への蛍光顔料の混入量は多いほど発色が明瞭となるが、印刷に適したインキであるように調整される。蛍光インキの印刷盛量によって蛍光の放射量が異なるが、検査用印刷部16を印刷するオフセット印刷方式であれば、この調整されたインキでの印刷で、検査に使用出来るだけの印刷インキ盛量を確保することが可能である。
【0015】
検査用印刷部16に使用するインキの放射する可視光は、青、赤、黄、緑などがあり、印刷表示部14に使用するインキの色に合わせて検査しやすい色調を選択可能である。例えば、印刷表示部14に一般に最も使用される黒色の場合、検査用印刷物16は黄色を放射する蛍光インキを使用する場合が最も目視検査に適している。また、印刷表示部14に青色が使用される場合にも同様に黄色が優れているが、補色関係にある赤発色もまた有効であり、逆に青色発色は検査しにくい色である。
【0016】
検査用印刷部16は印刷表面12aの任意の位置に設けることができるが、印刷表示部14に全部または部分的に重ねてもよい。印刷表示部14と検査用印刷部とを重ねて印刷する場合、重なる部分における印刷表示部14に使用する画線は文字が好ましい。本発明の用途の1つである添付文書は文字の印刷が多く、最も適している。
【0017】
印刷物に使用する用紙は、紙面の白度を向上させるために一般に用いられる蛍光増白剤を含まない用紙を用いることにより検査がより容易となるため、蛍光増白剤を含まない用紙が好ましい。蛍光増白剤が使用された用紙であっても、放射する色調を適宜選択することにより本発明を実施出来る。
【0018】
検査用印刷部16に使用する画線は、印刷物の種類を識別することが可能な画線であればよいが、1乃至複数の帯状またはライン状であること好ましく、3〜数十の帯状またはライン状であることがより好ましい。
【0019】
印刷物12は、折り目のない印刷部であっても、折り目のある印刷物であってもよいが、折り畳んだ印刷物は、その種類の識別が困難になりやすいので、本発明が好適に使用できる。本発明の用途の1つである添付文書は、折り畳んで包装箱に収納されるので、最も適している。
【0020】
検査用印刷部16を印刷物の折り目に重なるようにしておくと、検査用印刷部16は、図2(b)に示すように、印刷物12を折り畳んで、所定の枚数を同じ向きに並べて一体に束ねた状態で、各々の印刷物の折り目の同じ側の同じ位置に現れる。そして、印刷物12の束18を、検査用印刷部16の現れている折り目側を表に向けて、さらに複数同じ向きに並べて、図1に示すように収納箱20に入れて、紫外線照射すると、各々の印刷物12の折り目に現れている検査用印刷部16により、束18の表に、帯状またはライン状の表示16aが形成される。
【0021】
また、折り目のない印刷部または折り目のある印刷物を、ベルトコンベアー等で搬送する場合に、搬送中に露出する部分に、検査用印刷部16を設けておけば、搬送中の印刷物に紫外線照射すると、次々に搬送される印刷物の検査用印刷部16により、帯状またはライン状の表示や、眼の残像効果により図柄の表示が形成される。
【0022】
印刷物12の束18に形成される帯状またはライン状の表示16aや、ベルトコンベアー等での搬送中に形成される帯状またはライン状の表示は、1乃至複数であってよいが、異なった太さの複数の帯状またはライン状であることが好ましい。異なった太さの複数の帯状またはライン状の表示となる場合、最も細いものと最も太いものとの太さの比は、1:2〜1:20であることが好ましい。また、帯状またはライン状の表示の太さの合計は、折り目またはベルトコンベアー等での搬送中の露出部分の幅の、5〜50%であることが好ましく、10〜30%であることがより好ましい。また、最も細いものの太さは、折り目またはベルトコンベアー等での搬送中の露出部分の幅の、1〜20%が好ましく、3〜10%がより好ましい。なお、蛍光の発する帯状またはライン状の表示の太さを任意にし、蛍光の発する印刷部分以外の場所、すなわち帯状またはライン状の表示の隙間の太さを、異なった太さにして、帯状またはライン状の表示の太さのように、好ましい太さにして、その太さによって印刷物の種類を識別できるようにすることでも構わない。
【0023】
この実施形態は、印刷物の種類を識別する検査に用いることができるが、同じ印刷物であるかどうかを識別する目的ばかりなく、同じもしくは異なった印刷物または印刷表示部を印刷する前の無印刷物に、例えば特定の用途、製造場所、製造日等の特定の情報に応じて異なる検査用印刷部を設けて、特定の用途、製造場所、製造日等の種類を識別する検査に用いることもできる。本願においける印刷物の種類の検査とは、同じ印刷物であるかどうかを識別する検査以外に、同じもしくは異なった印刷物または印刷表示部を印刷する前の無印刷物の、特定の用途、製造場所、製造日等の種類を識別する検査も含む。
【0024】
この実施形態の印刷物12の検査方法を詳しく説明すると、まず、印刷物12の印刷表面12aに印刷表示部14および可視光の下では肉眼で見えない蛍光インキで表示された検査用印刷部16を形成する。そして、この印刷物12を折り畳んで、図2(a)に示すように、複数枚同じ向きに並べて印刷物の束18を形成する。この状態では、検査用印刷部16は肉眼では見えないが、紫外線ランプ22により紫外線を照射すると、検査用印刷部16が蛍光を発して、帯状またはライン状の表示16aを肉眼で確認することができる。
【0025】
印刷物検査方法は、印刷物12の1枚単位で行う場合と、数十枚の印刷物12を折り畳んだ束(18)単位で行う場合、及び収納箱20の単位で行う場合がある。1枚単位で検査を行う場合は、紫外線ランプ22を印刷物12の印刷表面12aの検査用印刷部16に照射し、検査用印刷部16の印刷パターンから印刷物12の検査を行うことができる。また、数十枚の印刷物12を同様に折り畳んで検査用印刷部16の折り目を所定の側面に露出させても良い。この場合も、図2(a)に示すように、可視光では検査用印刷部16は視認できないが、図2(b)に示すように、紫外線ランプ22を印刷物12の束18に照射することにより、検査用印刷部16が一部露出した束18の側面から蛍光が発せられることにより、帯状またはライン状の表示16aが目視によって検査が可能となる。
【0026】
また、製品として出荷または入荷した印刷物12を検査する場合、数十枚の印刷物12の束18の方向を揃えて、図1に示すように、収納箱20に収納した状態で行うこともできる。この場合、箱詰めに際しては検査用印刷部16の折り目が露出した部分を上にして収納する。これにより、紫外線ランプ22を収納箱20の開口に照射すると、検査用印刷部16の折り目が露出した束18から蛍光を発し、収納箱22内で帯状またはライン状の表示16aが目視によって確認され、印刷物12の検査が可能となる。
【0027】
検査における異種混入の確認方法は、検査用印刷部16の折り目が印刷物12の束18の側面に、1乃至複数の帯状またはライン状に現れることを利用する。これにより、異なる印刷物が混入していた場合、紫外線ランプ22の照射により、検査用印刷部16による蛍光位置が異なる束18または印刷物12が、収納箱20内または検査位置で目視により発見可能となる。
【0028】
この発明の印刷物とその検査方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、検査用印刷部の位置や形状は適宜設定可能であり、紫外線により蛍光を発するインキであれば適宜のインキを使用可能である。また、印刷物が入れられる対象物も、医薬品の印刷物の他、食品の説明書や、お菓子のおまけ、その他包装材に収納される内容物に適宜利用される。又、検査方法は目視での確認用途としても有効ではあるが、検査の瞬間に紫外線を照射してカメラで検査するような画像処理装置を用いる場合においても、本発明の技術を用いると視認しやすいような大きく幅の広い画像を用いることが出来るため、処理能力を大幅に向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態の印刷物の複数の束を収納した状態の平面図である。
【図2】この発明の一実施形態の印刷物の束(a)と、紫外線を当てた状態の印刷物の束(b)の側面図である。
【図3】この発明の一実施形態の印刷物の平面図である。
【符号の説明】
【0030】
12 印刷物
12a 印刷表面
14 印刷表示部
16 検査用印刷部
18 束
20 収納箱
22 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の印刷が施された印刷表示部と、可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは見えない蛍光インキで印刷された検査用印刷部を備えたことを特徴とする印刷物。
【請求項2】
前記印刷表示部と前記検査用印刷部とが同一の面に印刷され、且つ印刷表示部と前記検査用印刷部が全部または部分的に互いに重なり合うことを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項3】
前記検査用印刷部が、1乃至複数の帯状またはライン状の印刷が施された検査用印刷部である請求項1または2記載の印刷物。
【請求項4】
折り目のある印刷物であって、前記検査用印刷部が折り目に掛っていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷物。
【請求項5】
前記検査用印刷部は、前記印刷物を折り畳んで複数同じ向きに並べて印刷物の束にした状態で、各々の印刷物の折り目の同じ位置に現れ、束の前記折り目側の側面に紫外線照射すると、前記検査用印刷部が発する蛍光により1乃至複数の帯状またはライン状の表示が形成される請求項4記載の印刷物。
【請求項6】
印刷物が、医薬品の添付文書である請求項1乃至5のいずれか記載の印刷物。
【請求項7】
前記検査用印刷部が、印刷物の種類を識別するための検査用印刷部である請求項1乃至6記載の印刷物。
【請求項8】
可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは見えない蛍光インキで表示された検査用印刷部を印刷物に設け、この印刷物の前記検査用印刷部に紫外線を照射し、前記検査用印刷部が発する蛍光により前記印刷物の種類を検査することを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項9】
所定の印刷が施された印刷表示部と、可視光の下では肉眼でほとんど見えないかまたは見えない蛍光インキで表示された検査用印刷部を印刷物に設け、この印刷物を前記検査用印刷部に折り目が掛かるように折り畳んで複数枚を同じ向きに並べて印刷物の束にし、前記印刷物の束の前記折り目側の側面に紫外線照射して、前記検査用印刷部が発する蛍光により1乃至複数の帯状またはライン状の表示を形成させることにより前記印刷物の種類を検査することを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項10】
前記検査用印刷部が、1乃至複数の帯状またはライン状の印刷が施された検査用印刷部である請求項8または9記載の印刷物検査方法。
【請求項11】
印刷物が、医薬品の添付文書である請求項8乃至10のいずれかに記載の印刷物検査方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−68590(P2008−68590A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251338(P2006−251338)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(391019500)朝日印刷株式会社 (70)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】