説明

印刷物及びその製造方法

【課題】高級紙箱などの外面に華麗な装飾感のある印刷表現を有する加飾を施した印刷物とそれを安定して簡易に製造するための方法を提供することが課題である。
【解決手段】絵柄印刷層が設けられた基材上に設けられた複数の略平行な線状の撥液性ニス層とその間に凸状に盛り上がって形成されたUV硬化ニス層とからなる表面層を有している印刷物であって、撥液性ニス層の線の幅が0.06mm超、0.36mm未満で、且つ、UV硬化ニス層の線の幅が0.14mm超、0.56mm未満であることを特徴するとする印刷物の製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙やプラスチックシートを主たる材料とした印刷物に関し、特に表面の反射の差を利用した加飾により華麗な視覚効果を奏する印刷物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表面反射により独特の視覚効果を奏する印刷物は、印刷絵柄に立体感を与える目的を中心として数多く提案されて来ている。
【0003】
印刷絵柄に立体感を与える試みとしては、実際に表面のエンボス(凹凸形状の賦型)を行い、さらに表面形状に対応して立体感を絵柄の着色で強調する方法がまず挙げられる。この方法は、実際の表面凹凸を基準にしているために視覚的な効果と実際の形状の関連が合致して効果としては優れた方法である。
【0004】
しかしながら、包装用紙容器のような紙に応用する場合は基材の厚紙に対するエンボスがむつかしいことと機械的に無理にエンボスを行うと、内容物保護という本来の機能を損なうおそれがあることから実際にはこれらの方法を適用することは困難であった。
【0005】
絵柄に立体感を与える試みのうちで実際のエンボスによらず表面の艶の差を利用して視覚的に立体感を与える方法が数多く提案されている。
【0006】
成形体の表面に艶あり(グロス)と艶消し(マット)の両方の混在した表面状態を形成する方法についても転写による方法を含めて多くの方法が開示されている。表面の隣接する光沢の異なる区域のうちでマットの部分が沈んで見え、グロスの部分が浮いて見えるという視覚的な効果を利用する方法は、実際の表面が凹凸になっていなくても適用できることから、実際のエンボスによる方法が適用できない色々な分野で試みられている。
【0007】
基材の表面にマットインキで印刷を行った後にマットインキ以外の表面にグロスニスで被膜を形成するという方法が提案されている。また、表面マットコート上にビーズ入りインキで導管柄以外の部分に印刷を施すことによって立体感を強調する化粧板の製法も提案されている。導管部分以外の木目印刷の上から全面にグロスニスを施し、その上から導管部をマットインキで印刷する化粧材の製法も示されている。
【0008】
導管部分以外の木目印刷の上から全面にマットニスを施し、その上から導管部分の印刷を行った後に導管部分以外の領域にグロスニスを施す方法も提案されている。さらに印刷絵柄の全面にグロスニスを施した後導管部をマットインキで印刷するという化粧シートの製造方法も提示されている。
【0009】
上述の方法では、製品の表面に、トップコートで被覆されていないインキが露出することにより、元来、表面保護層としてのトップコートが必要な用途においては耐性その他の物性的な面で問題が残る。
【0010】
表面にグロスニス及びマットニスを塗工した壁紙、光沢の異なる表面層を設けた化粧シート、紙基材の表面をマット及びグロスに塗り分けた化粧シート、全面をグロスにした上から模様状にマットニスを施した紙器印刷物がそれぞれ提示されている。これらの方法では表面の光沢差による装飾効果を期待できることは確かだが、透明な塗工剤の塗り分けの見当合わせが困難なことが問題の一つであった。
【0011】
この問題の解決のための一つの方法として、印刷絵柄上の全面にマットニスを施した後にグロスニスを絵柄で印刷するという方法が提案されている。この方法は絵柄状にマットニス及びグロスニスを印刷する方法に比べれば、透明ニスと透明ニスの見当合わせという困難な課題を回避出来ることによって実際の生産における安定性の確保に役立つ。
【0012】
透明ニスと透明ニスの見当合わせという困難な課題を回避する他の方法としては、片方のニス被膜の他方の塗工液に対する撥液性を利用する方法が提案されている。この方法では透明ニス間の見当ズレの問題は機構的に回避されるが、撥液による2回目塗工液の1回目塗工層からの排除効果が安定して実現するためには塗工液の性質の制限があり、通常は100%固形分の樹脂、例えばUV硬化性のニスが適用される。
【0013】
従来、高級紙箱などの外面にマット感のある印刷表現を行う場合は、オレフィン系、あるいはアルキッド系合成樹脂などの合成樹脂系やシリカ系、カオリン系など無機材料系のマット剤を適量添加したマットニスを印刷面に設け、マット剤がニスの表面に凹凸を付け光沢を抑えることにより行っていたが、耐摩擦性が弱くマットニスが擦れることによって光沢が出てきてしまう欠点が有った。また、この欠点を改良するために、紫外線硬化型高グロスニスを印刷し硬化させた後、紫外線硬化型低グロスニス(マットニス)を設けてなる印刷物が提案されている。
【0014】
また、撥液性インキとUV硬化型樹脂を重ねて印刷する方法としては、印刷層を有する基材上に撥液性を有するニス層を設けその上から紫外線硬化型グロスニス層を設けたことにより、撥液性を有するニス層に弾かれた紫外線硬化型ハイグロスニスが撥液性を有するニス層上に斑点状に凝集し、光を散乱させマット感のある印刷表現を与えるという方法も提案されている。
【0015】
以上のように、原紙の上に撥液性インキとUV硬化型樹脂を重ねて印刷する一般的な方法では、撥液性インキの上の領域のUV硬化型樹脂が粒状になってしまい、例えば、細いストライプ状の細線模様等での安定した撥きを実現することが出来なかった。
【特許文献1】特開平5−16228号公報
【特許文献2】特許第2757943号公報
【特許文献3】特開平5−278189号公報
【特許文献4】特開2000−62081号公報
【特許文献5】特開平8−132578号公報
【特許文献6】特開2004−114654号公報
【特許文献7】特開2006−282920号公報
【特許文献8】特開2007−229967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
高級紙箱などの外面に華麗な装飾感のある印刷表現を有する加飾を施した印刷物とそれを安定して簡易に製造するための方法を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の請求項1の発明は、絵柄印刷層が設けられた基材上に設けられた複数の略平行な線状の撥液性ニス層とその間に凸状に盛り上がって形成されたUV硬化ニス層とからなる表面層を有している印刷物であって、、撥液性ニス層の線の幅が0.06mm超、0.36mm未満で、且つ、UV硬化ニス層の線の幅が0.14mm超、0.56mm未満であることを特徴するとする印刷物である。
【0018】
本発明の請求項2の発明は、UV硬化ニス層の平均厚さが、5μmから8μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の印刷物である。
【0019】
本発明の請求項3の発明は、絵柄印刷層が設けられた基材上に、0.06mm超、0.36mm未満の線幅の複数の約平行な線状の撥液性ニス層をその間隔が0.14mm超、0.56mm未満になるように設け、該撥液性ニス層に重ねて、UV硬化ニスを塗布し、硬化させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の印刷物は、印刷層を有する基材上に略平行な複数の線状の撥液性を有するニス層を設け、その上からUV硬化ニスを塗布した時に撥液性ニス層に撥かれて線間の領域に溜まったUV硬化ニスがその表面張力によってかまぼこ状の表面を形成した状態でUV硬化させて固化した表面を持つ印刷物であるから、表面光沢差による加飾の場合よりもより華麗な装飾感のある加飾を実現することが出来る。
【0021】
表面の光沢の差(グロスマット)による方法では、グロスニスとマットニスを絵柄と同調させて印刷物表面に施すことで、グロス部分が浮き出てマット部分が沈み込むという視覚的な効果によって絵柄と同調したリアルな立体感を表現出来るという特徴がある。しかしながら、本発明の場合のようにレンズ効果によって見る方向それぞれに反射光線のきらめきが異なるといった不規則性を含めた華麗な効果は期待できない。このように、本発明の方法で作成した印刷物は、反射光をレンズを通して散乱させ華麗な表面装飾を実現することが出来る。
【0022】
また、本発明の印刷物は、撥液性ニスの塗工の線幅と塗工間隔及び塗工ピッチをそれぞれ0.06mm超から0.36mm未満、0.14mm超から0.56mm未満の範囲にすることで、上から塗工するUV硬化ニスの平均塗布膜厚が5μmから8μmの場合には、撥液性ニス層の上にUV硬化ニスが残ることによる欠陥を防止出来る。
【0023】
さらに、本発明の方法によれば、絵柄印刷の表面全面を撥液性ニス層とUV硬化ニスの硬化層で被覆するため、表面耐性も向上する。また、撥液性ニス層により撥かれたUV硬化ニスがかまぼこ状の表面を形成するので、容器として使う場合は表面のすべりが防止できて取り扱いが便利になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の印刷物を図面を参照して、以下に詳細に説明する。
図1は本発明の印刷物の一例の斜視断面拡大模式図である。図2は本発明の印刷物の一例の平面模式図である。
【0025】
本発明の印刷物は、例えば図2に示すように、絵柄印刷層が設けられた基材上に、0.06mm超、0.36mm未満の線幅(L1)の略平行な複数の線状の撥液性ニス層2をその間隔(L2)が0.14mm超、0.56mm未満になるように設け、該撥液性ニス層に重ねて、UV硬化ニス3を平均塗布厚が5μmから8μmになる量を塗布し、硬化させることにより製造される。図1は図2の一部の断面を模式的に示したもので、絵柄印刷層1の上から撥液性ニス層2を設け、さらにUV硬化ニスを塗工すると撥液性ニス層2によって撥かれたUV硬化ニスは撥液性ニス層2の線間に表面張力によるかまぼこ状の表面を形成しながら硬化する。このUV硬化ニス層の状態は模式的に図1のエンボス高さH1を持つような形状である。
【0026】
UV硬化ニスの塗工量が平均膜厚で上記の範囲に入らないとき、すなわち5μm未満の場合はUV硬化ニス層表面のふくらみが不足しているため目的とする装飾効果が得られな
い。また、8μmを超えるとUV硬化ニス層が表面張力で支えきれる限界を超えて撥液性ニス層の上で硬化して結果として粒状のかたまりとなり目的とする装飾効果が得られない場合がある。
【0027】
撥液性ニス層の線幅は、0.06mm未満であるとUV硬化ニスの撥き不足で撥液性ニス層の上までUV硬化ニスが覆ってしまうことが起こり、0.36mm超であると撥かれたUV硬化ニスが撥液性ニス層の線間に移動出来ずに撥液性ニス層の上で粒状のかたまりが散在するために目的とする装飾効果が得られない場合がある。
【0028】
撥液性ニス層の間隔も目的とする装飾効果を得るためには重要であり、0.14mm未満であるとUV硬化ニスが線間に溜まらず撥液性ニス層の上で撥かれた状態すなわち、粒状になってしまう場合が起こり、0.56mm超では表面張力の効果で得られるUV硬化ニス層の凸状の表面が低くなり断面が台形に近くなってしまうので目的とする装飾効果が得られない場合がある。
【0029】
以上を前提として、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0030】
本発明の絵柄印刷層が設けられた基材は、シート状もしくはフィルム状の印刷物であれば特に限定はない。例えば、紙、プラスチックフィルムやシート、金属箔、金属板、木材、などがあげられる。工程中にかかる熱収縮応力等を考慮するとある程度の硬さと厚さはあるほうが望ましい。原反が紙の場合は典型的にはコートボール、ノーコートボール、マニラボール、クラフトボール、色ボール、ダンボール原紙などの板紙が賞用される。
【0031】
本発明の基材の原反として用いることの出来るプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルムやポリ乳酸フィルムなどの生分解性プラスチックフィルム等が用いられ、延伸、未延伸のどちらでも良く、また機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。
【0032】
原反上に絵柄印刷層を設けて基材とするための絵柄印刷のインキは、その表面に撥液性ニスとUV硬化ニスの印刷が可能で必要な密着性があればよく、原反及び印刷方式に適合するものであれば任意である。例えば、代表的なものとしては、インキタイプが有機溶剤型の場合には、樹脂にはポリアミド、ビニル系、ニトロセルロースなどが、溶剤にはトルエン、エステル系、ケトン系、アルコールなどが用いられる。さらに、インキタイプが水性型の場合は、樹脂にはマレイン酸系、アクリル系が、溶剤には水、アルコール、グリコールなどが用いられる。
【0033】
絵柄印刷層の印刷方式は特に限定されず、オフセット、グラビア、フレキソ、スクリーンなどの印刷方式を取ることが可能である。
【0034】
絵柄印刷層を有する基材上には撥液性ニス層を複数の略並行な線状パターンで部分的に設けて、該撥液性ニス層上にUV硬化ニスを塗工してから硬化させる。
【0035】
本発明に使用する撥液性ニスは、特に限定されず、セルローズ系、ポリアミド系、塩酢ビ系、変性ポリオレフィン系、ゴム系アクリル系、ウレタン系などの樹脂成分に表面表力の低いぬれ調整剤及びシリコーンオイルなどのシリコーン系(フッ素系)添加剤等を添加したものが使用できる。このような撥液性ニスにおいてはニス組成内のシリコーン添加剤等が表面に局在化し、上から塗工するUV硬化ニスと比べて表面張力の低いニス皮膜層を
形成することで、上部の相対的に表面張力の高いUV硬化ニスをはじき凹凸形成をするものである。
【0036】
撥液性ニスに使用するシリコーンオイルなどのシリコーン系撥液剤としては、例えばエポキシ変性、カルボキシル変性、アミノ変性、カルビノール変性、アルコール変性、フェノール変性、メタクリル変性、メルカプト変性、異種官能基変性の如き反応性シリコーン;ポリエーテル変性、メチルスチリル変性、アルキル変性、アルキルアラルキル変性、脂肪酸変性、アルコキシ変性、フッ素変性の如き非反応性シリコーン;ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンの如きストレートシリコーンが挙げられる。
【0037】
これらのシリコーンオイルの中でも非反応性シリコーン、直鎖状シリコーンが好ましく用いられる。具体例としては、ジメチルシリコーン−ポリオキシアルキレン共重合体である。フッ素系撥液剤としては、一般的なフッ素オイル、フッ素含有アクリレート(フッ素アクリレート)等が挙げられる。
【0038】
撥液性ニスに使用するその他の添加剤としては、例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスなどの合成ワックスを使用することができる。
【0039】
撥液性ニスの印刷方式は特に限定されず、オフセット、グラビア、フレキソ、スクリーンなどの印刷方式を取ることが可能であるが、撥液性ニス層の線幅が0.06μm超から0.36μm未満であることと線間の幅が0.14μm超から0.56μm未満であることを考慮すると高精細な印刷に適するオフセット印刷方式もしくはグラビア印刷方式が望ましい。
【0040】
撥液性ニスの乾燥方式は特に限定はなく、加熱乾燥及び好ましくはUV硬化のいずれでも使用可能である。UV硬化型の撥液性ニスとしては、アクリル系や不飽和ポリエステル系のプレポリマーに、アクリルやスチレンなどのモノマー成分、及び、光重合開始剤の混合物にワックスやシリコンを添加したものが用いられる。
【0041】
撥液性ニス層の上から塗工されるUV硬化ニスとしては、基本的な組成は主にアクリル系等のエチレン性不飽和ニ重結合を有するポリマー又はプレポリマー、アクリルモノマー等エチレン性不飽和ニ重結合を有するモノマー成分、光重合開始剤及びその他添加剤を成分とするニスが挙げられる。
【0042】
UV硬化ニスに使用するポリマーもしくはプレポリマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。何れもエチレン性不飽和ニ重結合を有するモノマー可溶である樹脂が用いられる。
【0043】
UV硬化ニスに使用する単官能モノマーとしてはアルキル(カーボン数が2〜18)(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートがあり、さらにベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が例示される。
【0044】
UV硬化ニスに使用する多官能モノマーとしては(メタ)アクリレート類からはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート(通称マンダ)、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレ、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノーAジ(メタ)アクリレート、水添加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネート、テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0045】
UV硬化ニスに使用する反応性オリゴマーとしてはアルキッドアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン変性アクリレート等が使用出来る。
【0046】
UV硬化ニスに使用するラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。光重合開始剤と併用して、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル4−ジメチルアミノベンゾエート等の光促進剤を使用してもよい。
【0047】
UV硬化ニスの塗工方式は、目的に応じてフレキソ、グラビア、オフセット、ロールコートなどの方式が利用可能であるが平均塗布厚が5μmから8μmの間で安定した塗布量での塗工を行うためにはフレキソ塗工方式またはグラビア塗工方式が望ましい。また、撥液性ニスの塗工とUV硬化ニスの塗工を一工程で行うためにオフセット印刷機のフレキソコーターユニットを使用することも可能である。
【実施例】
【0048】
<実施例1>
原反として、坪量270g/m2のコートボール紙を用いてオフセット印刷機で絵柄印刷を行って絵柄印刷層が設けられた基材を作成した。続けて、撥液性ニスとしてダイキュアハイブライトメジュームEM(大日本インキ化学工業(株)製)を用いて上記絵柄印刷層の上から図2の同心円パターンの印刷を行い、さらにその上からオフセット印刷機に付属のフレキソコーターユニットを用いてUV硬化ニスとしてダイキュアクリアーUV−1601EM(大日本インキ化学工業(株)製)を全面に塗工してUV硬化して印刷物を作成した。
【0049】
UV硬化ニスの平均塗布厚一定(6.4μm)の条件で、撥液性ニスの印刷パターンの寸法を変化させて印刷物表面のUV硬化ニス層のエンボス形状とエンボス高さH1を比較した(円2〜円14)。光学顕微鏡及びレーザー顕微鏡を用いてこれらの印刷物表面形状と寸法の測定を行った結果を表1に示す。
【0050】
<実施例2>
原反として、坪量270g/m2のコートボール紙を用いてオフセット印刷機で絵柄印刷を行って絵柄印刷層が設けられた基材を作成した。続けて、撥液性ニスとしてダイキュアハイブライトメジュームEM(大日本インキ化学工業(株)製)を用いて上記絵柄印刷層の上から図2の同心円パターンの印刷を行い、さらにその上からオフセット印刷機に付属しているフレキソコーターユニットを用いてUV硬化ニスとしてダイキュアクリアーUV−1601EM(大日本インキ化学工業(株)製)を平均膜厚が5.0μm及び6.5μmになるような塗工量で全面に塗工してから紫外線硬化させて本発明の印刷物を作成した。
【0051】
撥液性ニスの印刷パターンの寸法一定(線幅0.12mm線間0.28mm)の条件で、UV硬化ニスの平均塗布厚を変化させて印刷物表面のUV硬化ニス層のエンボス形状とエンボス高さH1を比較した(円6)。
【0052】
光学顕微鏡及びレーザー顕微鏡を用いてこれらの印刷物表面形状と寸法の測定を行った結果を表1に示す。
【0053】
撥液性ニス層の線幅が小さくUV硬化ニスの線幅が大きいためにエンボス形状がかまぼこ状から台形に変化していく円8の場合、撥液不足で隣り合わせのUV硬化ニス層がつながり始める円2円9の場合、及び撥液不足で撥液性ニス状のUV硬化ニスが被膜にならないで粒状に散乱して硬化してしまう円14の場合を含めて、本発明の請求項3の製造方法で決められた範囲を逸脱する条件では、本発明の目的とする装飾効果を奏するエンボス形状が得られないことが確認出来た。
【0054】
本発明の請求項3の製造方法で決められた範囲内の条件では、見る角度によって変化するキラキラ感等の華麗な装飾感のある印刷表現を外面に有する加飾を施した印刷物が安定した簡易な製造方法で得られた。
【0055】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の印刷物の斜視断面拡大模式図である
【図2】本発明の印刷物の平面模式図である
【符号の説明】
【0057】
1‥‥印刷層
2‥‥撥液性ニス層
3‥‥UV硬化ニス層
L1‥‥撥液性ニス層の線幅
L2‥‥撥液性ニス層の線間隔
L3‥‥撥液性ニス層の線ピッチ
H1‥‥UV硬化ニス層のエンボス高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絵柄印刷層が設けられた基材上に、複数の略平行な線状の撥液性ニス層とその間に凸状に盛り上がって形成されたUV硬化ニス層とからなる表面層を有している印刷物であって、撥液性ニス層の線の幅が0.06mm超、0.36mm未満で、且つ、UV硬化ニス層の線の幅が0.14mm超、0.56mm未満であることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
UV硬化ニス層の平均厚さが、5μmから8μmの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
絵柄印刷層が設けられた基材上に、0.06mm超、0.36mm未満の線幅の複数の略平行な線状の撥液性ニス層をその間隔が0.14mm超、0.56mm未満になるように設け、該撥液性ニス層に重ねて、UV硬化ニスを塗布し、硬化させることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−172943(P2009−172943A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−15931(P2008−15931)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】