説明

印刷物

【課題】 本発明は、立体画像が視認できる印刷物に関するものである。
【解決手段】 基材上に第1の領域と第2の領域が複数配置されて濃度階調を有する可視画像が形成され、第2の領域は、第1の領域内に毛抜き合わせで配置されて潜像画像を形成し、第1の領域によって濃度階調を有する可視画像から潜像画像を構成するための第2の領域を除いた画像が形成され、第1の領域は第1の印刷インキで、第2の領域は第2の印刷インキで印刷され、第1の印刷インキと第2の印刷インキの分光反射率は可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値であるメタメリックペアインキで印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、カード、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、各種チケット等の貴重品又は、絵本、パンフレット、ポスター等に適用可能な立体画像が視認できる印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のディジタル機器の発展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。このようなことから偽造防止対策としては、メタメリズムを応用したメタメリックペアインキを用いた印刷物が用いられている。
【0003】
一方、立体的に視認できる印刷物として、絵本等の印刷物に補助具を用いて立体的に視認されるアナグリフ法がある。アナグリフ法では、印刷物に左目用画像と右目用画像の色を変えて印刷し、印刷された印刷物を左右の目で異なる色のフィルタ(例えば赤青メガネ)を介して観察した場合に、左目は左目用画像だけが見え、右目は右目用画像だけが見えることにより立体画像として視認されるものである。
【0004】
例えば、立体視用印刷物の製造方法であって、立体視のための第1の左目用画像と立体視のための第1の右目用画像を作成し、視線方向に対して斜め方向となる面、かつ被写体である物体よりも上方に設定された面を基準面とした場合に、第1の左目用画像の基準面における画像の少なくとも奥行き方向へのパースペクティブをなくすための補正処理を、第1の左目用画像に対して施し、第2の左目用画像を作成し、第1の右目用画像の基準面における画像の少なくとも奥行き方向へのパースペクティブをなくすための補正処理を、第1の右目用画像に対して施して第2の右目用画像を作成し、第2の左目用画像と第2の右目用画像とに基づいて立体視用印刷物を作成することを特徴とする立体視用印刷物の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
通常、有色であるメタメリックペアインキによって印刷された印刷物は、400〜700nmの可視全波長である波長領域Aと、使用する所定のフィルタ等が透過する所定の波長である波長領域Bの二つの波長領域で観察される。
【0006】
図1(a)に示す印刷物A1は、基材1に可視画像4を形成し、可視画像4は、第1のインキで印刷される第1の領域2と第2のインキで印刷される第2の領域3で構成される。印刷物A1は、太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下における肉眼で観察した場合に、図1(b)に示すように、第1のインキで印刷される第1の領域2と、第2のインキで印刷される第2の領域3が等色で視認され、可視画像4のみが確認できる。印刷物A1は、所定のフィルタ等を通して肉眼で観察した場合に、図1(c)に示すように、第1のインキで印刷される第1の領域2と第2のインキで印刷される第2の領域3の色が異なって視認されるため、潜像画像として確認できる。印刷物A1は、可視画像4に対して所定のフィルタ10等を通して第1の領域2と第2の領域3の色の差異が生じた場合に本物と判断し、色の差異が生じない場合に偽物と判断して真偽判別が行われる。
【0007】
例えば、太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下では同色に見えるが、所定の分光エネルギー分布を有する光源の下で見るか、所定のフィルタを通して見るか、又は所定のフィルタを通過させた光の下で見ると、一方が異なった色相に見えるメタリックな性質を有する二種類の色料のそれぞれによってパターンを互いに対比観察できるように基材上に形成することに特徴を有する偽造防止策を施した画像形成体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特許第3640256号公報(第1-22頁、第1-27図)
【特許文献2】特公昭60−58711号公報(第1-4頁、第1-11図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、アナグリフ法では、印刷物に左目用画像と右目用画像の色を変えて印刷しているため、赤青メガネを使用せずに、通常光下で肉眼で観察した場合、その印刷物自体に違和感が生じる問題があった。このため、アナグリフ法を用いた印刷物は印刷物全体のデザインを損ねる問題があった。また、偽造防止技術にアナグリフ法を用いた場合は、アナグリフ法を用いた印刷物であることが一見して判断されてしまう問題があった。
【0010】
また、従来のメタメリックペアインキで印刷される印刷物は、色相変化や潜像画像の出現の有無を認証する場合に、一般的にベタの印刷パターンにより印刷する形態であり、また、図1に示したように潜像画像は可視画像の一部をそのまま空白化して、その空白化した部位に重ね合わせて置き換える、いわゆる単純な「抜き」と呼ばれる構成を用いて付与される場合がほとんどであった。さらに、可視画像内に埋め込まれた潜像画像が通常光下で視認される恐れがあり、デザインの自由度がなく、通常光下で視認される可視画像及び所定のフィルタ等を介して色彩の差異で視認される潜像画像は濃度階調がほとんど形成されていない、文字及びマーク等の単純なものであった。特公昭60−58711号公報については、濃度階調を有する可視画像又は濃度階調を有する潜像画像を形成することについては記載されていない。さらに、通常光下において肉眼で視認されるメタメリックペア印刷物は複数色の色彩が用いられることがないため色彩に乏しかった。また、潜像画像は立体的に視認できるものではなかった。
【0011】
仮に、メタメリックペアインキを用いた印刷物に対して前述の「抜き」の構成を用い、通常光下において視認されるメタメリックペアインキにより印刷される可視画像4をベタ画像だけではなく、少なくとも二つの濃度階調、例えば、濃度階調が図2(a)のようなハイライト領域、中間調領域及びシャドー領域を有する印刷物A2の場合に、所定のフィルタ10等を通して出現する第2の領域3から成る潜像画像の視認性が図2(b)のように劣るという問題があった。これは、通常光下において視認される可視画像4に階調を表現するためには、第2の領域3から成る潜像画像にも可視画像4の階調を反映させておく必要がある。このため、所定のフィルタ10等を通して観察した場合に、第2の領域3から成る潜像画像の中に可視画像4の階調が出現してしまい、第2の領域3から成る潜像画像に薄い領域が形成されてしまい視認性が劣るものとなる。また、可視画像4自体もフィルタを通した場合に階調表現域を若干失う程度の変化しかしない場合が多く、可視画像4自体の階調が目視可能な程度に出現してしまい、第2の領域3から成る潜像画像と混ざり合ってしまうことも、可視画像4に階調を付与した場合に潜像画像の視認性が劣る原因の一つであった。
【0012】
本発明は、このような従来の問題を解決することを目的としたもので、通常光下において肉眼により視認される印刷物自体に違和感が生じることがなく、左目用画像又は右目用画像の他方は視認されないため、アナグリフ法を用いた印刷物であることが一見して判断されることがない。アナグリフフィルタを通して観察した場合に、左目用画像及び右目用画像が合成された立体画像が視認されるため、容易に真偽判別することが可能である。また、通常光下において視認される画像に、分光反射率が640〜700nm間で反射率の高い少なくとも一色のインキ(例えば、マゼンタインキ及び/又はイエローインキ)を重ね刷りすることが可能となり、複数色の色彩を付与することもできる。
【0013】
本発明は上記記載の立体画像が視認可能なメタメリックペアインキで印刷される印刷物を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基材上に第1の領域と第2の領域が複数配置されて濃度階調を有する可視画像が形成され、第2の領域は、第1の領域内に毛抜き合わせで配置されて潜像画像を形成し、第1の領域によって濃度階調を有する可視画像から潜像画像を構成するための第2の領域を除いた画像が形成され、第1の領域は第1の印刷インキで、第2の領域は第2の印刷インキで印刷され、第1の印刷インキと第2の印刷インキの分光反射率は、可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値であるメタメリックペアインキで印刷され、濃度階調を有する可視画像は左目用画像又は右目用画像のいずれか一方として視認され、潜像画像は左目用画像又は右目用画像の他方として視認されることを特徴とする印刷物である。
【0015】
また、本発明は、基材上に第1の領域と第3の領域が交互に隣接されて複数配置され、第3の領域内に第2の領域が毛抜き合わせで配置されて濃度階調を有する可視画像が形成され、第1の領域によって濃度階調を有する画像が形成され、第2の領域によって潜像画像が形成され、第3の領域は潜像画像のカムフラージュ領域となり、第1の領域及び第3の領域は第1の印刷インキで、第2の領域は第2の印刷インキで印刷され、第1の印刷インキと第2の印刷インキの分光反射率は可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値であるメタメリックペアインキで印刷され、濃度階調を有する可視画像は左目用画像又は右目用画像のいずれか一方として視認され、潜像画像は左目用画像又は右目用画像の他方として視認されることを特徴とする印刷物である。
【0016】
また、本発明における濃度階調を有する可視画像は、網点面積率が40〜80%以下で形成され、潜像画像は、網点面積率が40%以下で形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0017】
また、本発明における濃度階調を有する可視画像は、網点面積率が40〜80%以下で形成され、潜像画像は、網点面積率が40%以下で形成され、カムフラージュ領域は、網点面積率が40%以下で形成されたことを特徴とする印刷物である。
【0018】
また、本発明は、第1の印刷インキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値は、第2の印刷インキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、第1の印刷インキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値は、第2の印刷インキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値と略同一であることを特徴とする印刷物である。
【0019】
また、本発明は、濃度階調を有する可視画像と潜像画像の図柄が、同一又は略同一であり、濃度階調を有する可視画像と潜像画像は、互いに水平方向に所定の距離だけずらして配置されたことを特徴とする印刷物である。
【0020】
また、本発明は、潜像画像が濃度階調を有することを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明はデザインに制約を受けることがない立体画像が視認可能なメタメリックペアインキで印刷される印刷物が得られる。
【0022】
可視光下において印刷物は、濃度階調を有する可視画像(左目用画像又は右目用画像のいずれか一方)が視認される。さらに、可視光下では潜像画像(左目用画像又は右目用画像の他方)は視認され難い状態又は視認されることはない。アナグリフフィルタを通して観察した場合に、左目用のフィルタからは左目用画像のみが視認され、右目用のフィルタからは右目用画像のみが視認されることで左目用画像及び右目用画像が合成された立体画像が視認される。立体画像が視認されるため容易に真偽判別することが可能である。潜像画像(左目用画像又は右目用画像の他方)は、濃度階調を有する可視画像(左目用画像又は右目用画像のいずれか一方)の濃度階調が反映されることがなく、潜像画像(左目用画像又は右目用画像の他方)とその他の領域では鮮明な濃度差を有して視認される。
【0023】
本発明の潜像画像(左目用画像又は右目用画像のいずれか一方)は、肉眼で視認されることがないため、通常光下において肉眼により視認される印刷物自体に違和感が生じることはない。よって、アナグリフ法を用いた印刷物であることが一見して判断されることがない。
【0024】
また、微細な網点構成や最低網点面積率と最高網点面積率を適切に設定することによって、可視光下での潜像画像の隠蔽性が向上し、アナグリフフィルタを通して観察した場合に、明瞭に立体画像が視認できる。
【0025】
また、潜像画像以外の濃度階調を有する可視画像に分光反射率が640〜700nm間で反射率の高い少なくとも一色のインキ(例えば、マゼンタインキ及び/又はイエローインキ)で印刷することもでき、複数色の色彩を付与することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。通常、メタメリックペアインキによって、構成された画像は、400〜700nmの可視全波長である波長領域Aと、使用する所定のフィルタ等が透過する所定の波長領域Bの二つの波長領域で観察される。本発明の実施の形態における印刷物とは、2種類以上のインキを用いて基材に印刷されて作製される。
【0027】
本発明の印刷物は、メタメリックペアインキとなる第1の印刷インキで左目用画像又は右目用画像のいずれか一方を印刷し、メタメリックペアインキとなる第2の印刷インキで左目用画像又は右目用画像の他方を印刷して作製される。
【0028】
(実施の形態1)
図3(a)に印刷物B1を示す。図3(a)に示すように基材1上に第1の領域2と第2の領域3が複数配置されて濃度階調を有する可視画像4が形成される。第2の領域3は、第1の領域2内に毛抜き合わせで配置される。ここでいう、毛抜き合わせは、図3(b)に示すように第1の領域2の非印刷領域Sに第2の領域3が形成される。さらに、図4に示すように第1の領域2の非印刷領域Sに第2の領域3が形成される位置は特に限定されるものではない。また、図5に示すように第1の領域2と第2の領域3の境界は、図5(a)に示すように重なることなく刷り合わさった形態、又は、図5(b)に示すように第1の領域2と第2の領域3の一部が重なった領域15を有する形態であってもよい。一部が重なった領域15は、第1の領域2上に第2の領域3を印刷又は第2の領域3上に第1の領域2を印刷しても良い。この場合は、第1の領域2と第2の領域3の一方又は両方の重なった領域は、クラデーション等の濃度調整をすることが好ましい。
【0029】
図6に示すように第1の領域2によって濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6が形成され、第2の領域3によって潜像画像5が形成され、さらに、図3、図4、図5に示すように第1の領域2と第2の領域3の境界の第1の領域2内は、潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7が設けられる。
【0030】
濃度階調を有する可視画像4は左目用画像又は右目用画像のいずれか一方となり、潜像画像5は左目用画像又は右目用画像の他方となる。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5の図柄は、同一又は略同一(図6では略同一)であり、濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は、互いに水平方向(X方向)に所定の距離だけずらして配置される。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5の図柄が同一の場においてアナグリフフィルタを通して観察した場合、像全体が一体の平面として基材から浮き上がって近くに見えたり、遠くに見えたり、いわゆる像全体の平面と基材の遠近感が視認でき、略同一の場合は、像の一部は近くに見え、像の他の一部は遠くに見える、像の連続的な奥行き感、いわゆる像の立体感を有して視認できる。
【0031】
濃度階調を有する可視画像4は右目用画像、潜像画像5は左目用画像として説明する。第1の領域2から成る濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6は、第1の印刷インキで、第2の領域3から成る潜像画像5は第2の印刷インキで印刷される。濃度階調を有する可視画像4である右目用画像及び潜像画像5である左目用画像はアナグリフ法で形成される。つまり、濃度階調を有する可視画像4である図柄と潜像画像5である図柄は同一又は略同一な図柄(違う角度又は配置が異なる位置で撮影された画像又は描かれたデザイン)であることが必要である。違う角度については0〜4度程度が好ましく、撮影方法はカメラを2台用意し、カメラを平行に並べて左のカメラで潜像画像5を撮影し、右目のカメラで濃度階調を有する可視画像4を撮影する。製版段階では潜像画像5と濃度階調を有する可視画像4は水平方向に両目の間隔(65mm)以下、好ましくは40mm以下程度ずらすことが好ましい。このずらす距離によって、立体像の基材からの浮き出し量、沈み量が決定されるが、40mmを超えて形成した場合には、視覚が不安定になりやすいことから好ましくない。なお、潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6は右目用画像の構成要素となる。図6では、潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6と潜像画像5はデザイン的に重なっているが、本発明はこれに限定されることなく、濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は重なることなく両眼の距離65mm程度まで離しても良い。また、立体画像を見る平行法又は交差法を用いてもよい。
【0032】
第1の印刷インキと第2の印刷インキの関係について説明する。第1の印刷インキと第2の印刷インキの分光反射率は可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値となる。つまり、第1の印刷インキと第2の印刷インキはメタメリックペアインキの関係にある。また、第1の印刷インキの640〜700nm間での分光反射スペクトルの積分値は、第2の印刷インキの640〜700nm間での分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、第1の印刷インキの400〜600nm間での分光反射スペクトルの積分値は、第2の印刷インキの400〜600nm間での分光反射スペクトルの積分値と略同一であることを特徴とすることが好ましい。
【0033】
図7は、本発明で使用するメタメリックペアインキである第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの分光反射率曲線の一例である。図7に示すように第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの分光反射率の関係が、640〜700nm間で30%以上の分光反射率の差が生じる設計とし、400〜600nmで20%以下の分光反射率の差が生じる設計で第1の印刷インキ及び第2の印刷インキを作製している。図7に示す分光反射率曲線を有する第1の印刷インキ及び第2の印刷インキは茶系の色彩のインキである。ただし、本発明においては茶系の色彩のメタメリックペアインキを用いて説明を記載しているが、通常光下での等色性に優れ、かつ特定波長域における異色性に優れたメタメリックペアインキを使用することを前提とした場合には、その色彩についての制限はない。
【0034】
図7に示すメタメリックペアインキである第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの関係は、640nm以上の分光反射率に大きな違いが生じる設計とし、波長領域Bは、640nmから目視可能な最高波長である700nmの範囲としている。図7では、660nm以上でより顕著な分光反射率の差異が見受けられるが、660〜700nmの光を透過するシャープカットフィルタ等を用いる場合、通常の屋内の光源では透過する光量が不足してしまい、インキの反射又は吸収特性が如何に優れている場合でも全体画像自体が暗く沈み、ほとんど視認不可能となることから、強力な光源を必要とする場合が多い。以上のことから、640〜700nmを波長領域Bとしている。この波長領域Bの設定については、ユーザが希望する認証波長を取り決め、それにしたがったインキ材を選択してメタメリックペアインキを作製すればよいのであって、当然のことながら、特にこの波長領域に限定されるものでない。
【0035】
次に、第1の領域2から成る濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6の網点面積率、潜像画像5の網点面積率及び第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7の網点面積率の関係について説明する。
【0036】
第1の領域2及び第2の領域3によって印刷される濃度階調を有する可視画像4は、第1の所定範囲の網点面積率で印刷され、第1の領域2によって印刷される濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6は、第2の所定範囲の網点面積率で印刷され、第2の領域3によって印刷される潜像画像5は、第3の所定範囲の網点面積率で印刷され、第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7は、第4の所定範囲の網点面積率で印刷する必要がある。
【0037】
第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2及び第2の領域3から成る濃度階調を有する可視画像4は、第1の所定範囲の網点面積率で印刷され、第2の印刷インキの印刷される第2の領域3から成る潜像画像5は濃度階調を有する可視画像4の最小網点面積率以下で印刷する必要がある。
【0038】
第1の領域2及び第2の領域3によって印刷される濃度階調を有する可視画像4の第1の所定範囲の網点面積率は40〜80%以下で印刷され、第1の領域2によって印刷される濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6の第2の所定範囲の網点面積率は0〜80%以下で印刷され、第2の領域3によって印刷される潜像画像5の第3の所定範囲の網点面積率は40%以下で印刷され、第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7の第4の所定範囲の網点面積率は40%以下で印刷することが好ましい。
【0039】
潜像画像を隠蔽する手段としては、潜像画像5を形成する第2の印刷インキで印刷される第2の領域3の網点と、第1の印刷インキで印刷される第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためのカムフラージュ領域7の網点の組み合わせの網点面積率の合計が、一定の値となるようにする。
【0040】
波長領域Aにおける、ある特定の反射濃度で表現された第1の印刷インキで印刷される領域及び第2の印刷インキで印刷される領域は、波長領域Bにおいては互いの領域で良好な濃度差を得ることが可能となる。波長領域Bで高い濃度差を得るための最高網点面積率を網点面積率Aとする。これは、濃度階調を有する可視画像4の濃度が高すぎると、波長領域Bにおいても濃度階調を有する可視画像4が視認されてしまうことから一定の階調制限を設けることが好ましい。
【0041】
波長領域Aにおいては、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2及び第2の領域から成る濃度階調を有する可視画像4と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3から成る潜像画像5と、第1の印刷インキで印刷される第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためのカムフラージュ領域7の濃度階調領域の関係について図8を用いて説明する。
【0042】
第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2及び第2の領域3から成る濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)は、第2の領域3から成る潜像画像5(左目用画像)を表現する最高網点面積率(例えば40%)以上、かつ、網点面積率A(例えば80%)以下で構成し、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3から成る潜像画像5(左目用画像)の濃度階調領域は、濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)の最低網点面積率以下、例えば0〜40%で構成する。第1の印刷インキで印刷される第1の領域2内の潜像画像5(左目用画像)を隠蔽するためのカムフラージュ領域7の濃度階調領域は、網点面積率A(例えば80%)以下、例えば0〜40%で構成する。カムフラージュ領域7の網点面積率については潜像画像5(左目用画像)を構成する網点と、前記網点と対となるカムフラージュ領域7の網点の組み合わせの網点面積率の合計が一定の値(例えば40%)となるようにする。例えば、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が0の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が40%となり、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が20%の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が20%となり、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が40%の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が0%となる。
【0043】
メタメリックペアインキを用いる場合、フィルタ等を用いて目視される潜像画像は、観察環境に存在する光のうち、波長領域Bの光のみを利用するものであるから、波長領域Aでは低濃度と感じる画像であっても、波長領域Bにおいては、その光量自体が大きく低下するため、波長領域Bの光に対する反射又は吸収特性がより強く反映され、波長領域Aで得られる濃度よりも高い濃度であると目視上感じさせることができる。すなわち、波長領域Bにおけるインキの反射又は吸収特性が優れている場合には、波長領域Aではハイライト程度としか目視されない濃度であっても、フィルタを通して観察した場合に、中間からシャドーの濃度として観察者に認識させることが可能となる。
【0044】
次に、立体画像の見え方について説明する。図9(a)はステレオグラムにおける平行法の見え方を示し、図9(b)は交差法の見え方を示し、図9(c)はアナグリフ法の見え方を示す。図9(a)に示すように平行法は、右目の視線と左目の視線を平行に保って、遠くを見る感じでぼんやりと観察すると2枚の画像が3枚に視認され、真ん中の1枚に焦点を合わせると立体画像として視認できるものである。図9(b)に示すように交差法は、右目の視線と左目の視線を交差して観察することで、2枚の画像が3枚に視認され、真ん中の1枚に焦点を合わせると立体画像として視認できるものである。図9(c)に示すようにアナグリフ法は、赤青等のメガネで観察すると立体画像として視認できるものである。
【0045】
印刷物B1は特定波長Aである太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下では、図10(a)に示すように右目用画像の濃度階調を有する可視画像4が確認され、左目用画像の潜像画像5は確認することができない。潜像画像5は濃度階調を有する可視画像4以下の反射濃度によって、可視画像の中に目視不可能な程度に微細な構造で違和感なく配置されることにより、濃度階調を有する可視画像4の中に完全に隠蔽される。
【0046】
印刷物B1は左目に波長領域Bを透過し、右目に波長領域Cを透過するアナグリフフィルタ16を通して観察した場合に、図10(b)に示すように左目用のフィルタ16aからは潜像画像5(左目用画像)のみが視認され、右目用のフィルタ16bからは濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)が視認されることで濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像(左目用画像)5が合成された立体画像が確認される。なお、波長領域Cは400〜500nmでの透過特性を有し、ピークの透過率が約50%程度であることを有する。右目用のフィルタ16bがなくても、つまり、左目用のフィルタ16aのみで観察することも場合によっては可能である。
【0047】
左目用のフィルタ16aからは潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6はあたかも消出したようになり、潜像画像5(左目用画像)のみが視認されているように見える。潜像画像5は、濃度階調を有する可視画像4以下の反射濃度で構成されながらも、波長領域Bにおいて潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた第1のインキで印刷される画像6が、一定濃度に収束されるため、潜像画像5と潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6の濃度差が高くなることで、視認性の高い潜像画像として発現させることを可能とする。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5はデザイン的に重なっているが、左目用のフィルタ16aを介して観察した場合に、潜像画像5に潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6の濃度階調がほとんど反映されず、潜像画像5と潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6に鮮明な濃度差を有して視認される。右目用のフィルタ16bからは潜像画像5(左目用画像)が視認されることなく、特定波長Aである太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下と同様な濃度階調を有する可視画像4のみが確認される。よって、濃度階調を有する可視画像4である右目用画像及び潜像画像5である左目用画像はアナグリフ法で形成されているため、濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像5(左目用画像)が合成された立体画像が確認される。
【0048】
印刷物B1に用いる第1の印刷インキにより印刷される第1の領域2から成る濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)から、潜像画像5(左目用画像)を構成するための第2の領域3を除いた画像6の第1の版面13と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3から成る潜像画像5(左目用画像)の第2の版面14を作製するための容易な手順としては、図11(a)に示す第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためのカムフラージュ領域7と、図11(b)に示す潜像画像5を形成し、カムフラージュ領域7と、潜像画像5を合成した図11(c)に示す濃度が一定な画像11を形成する。この場合の濃度は、濃度階調を有する可視画像4の最低網点面積率以下まで引き下げる。次に、図11(d)に示す濃度階調を有する画像12に対して、図11(c)に示した潜像画像5とカムフラージュ領域7のうち、カムフラージュ領域7のみを抽出し、濃度階調を有する画像12に加算して、網点面積率Aまで引き下げ、図11(e)に示す第1の領域2を形成する第1の版面13を作製する。第2の版面14は図11(c)に示した潜像画像5とカムフラージュ領域7のうち、潜像画像5のみを抽出して第2の版面14を作製する。ただし、本発明はこの手順にのみ限定されるものではないことはいうまでもない。
【0049】
(実施の形態2)
図12(a)に印刷物B2を示す。印刷物B2の濃度階調を有する可視画像4の構成は、印刷物B1とは異なり、図12(b)に示す配置構成となる。この配置構成は、特許第3544536号公報の構成と同様である。m×mピクセルの第1のハーフトーン領域に濃度階調を有する画像を形成し、n×nピクセルの第2のハーフトーン領域に潜像画像と潜像画像を隠蔽するカムフラージュ領域が形成される。この特殊な網点構成は、ポストスクリプト網点生成法の中で、二種類の網点データを直接定義する技術と、特開2001-205917号公報で提案した二種類の網点画像を同一平面上に均等配置する画像処理法により生成される。
【0050】
図12(a)に示すように、基材1上に第1の領域2と第3の領域3aが交互に隣接されて複数配置され、第3の領域3a内に第2の領域3bが毛抜き合わせで配置されて濃度階調を有する可視画像4が形成される。ここでいう毛抜き合わせは、図12(b)に示すように第3の領域3aの非印刷領域Sに第2の領域3bが形成される。さらに、図13に示すように第3の領域3aの非印刷領域Sに第2の領域3bが形成される位置は特に限定されるものではない。また、図13に示すように第3の領域3aと第2の領域3bの境界は、図14(a)に示すように重なることなく刷り合わさった形態、又は、図14(b)に示すように第3の領域3aと第2の領域3bの一部が重なった領域15を有する形態であってもよい。一部が重なった領域15は、第3の領域3a上に第2の領域3bを印刷、又は第2の領域3b上に第3の領域3aを印刷しても良い。この場合は、第3の領域3aと第2の領域3bの一方又は両方の重なった領域は、クラデーション等の濃度調整をすることが好ましい。また、ここでいう第1の領域2と第3の領域3aが交互に隣接するとは、領域自体は隣り合って接しているが、第1の領域2に濃度階調を有する画像が形成されるため、大小の網点が生じ、第1の領域2と第3の領域3aの網点同士は接していない領域は当然生じるものである。
【0051】
次に、第1の領域2と第3の領域3aの領域の大きさについて説明する。図12では一つの第1の領域2と、第1の領域2に隣接する一つの第3の領域3aとが複数組配置され、第3の領域3aの周囲が、複数の第1の領域2により囲まれ、第1の領域2は、第3の領域3aより面積が大きく、さらに、第3の領域3a内には第2の領域3bが毛抜き合わせで形成されている。本発明はこれに限定されることなく、図15(a)に示すように一つの第1の領域2と、第1の領域2に隣接する一つの第3の領域3aとが複数組配置され、第1の領域2の周囲が複数の第3の領域3aにより囲まれ、第3の領域3aは、第1の領域2より面積が大きく、さらに、第3の領域3a内には第2の領域3bが毛抜き合わせで形成してもよい。また、図15(b)に示すように一つの第1の領域2と、第1の領域2に隣接する一つの第3の領域3aとが複数組配置され、第1の領域2の周囲が複数の第3の領域3aにより囲まれ、第3の領域3aの周囲が複数の第1の領域2により囲まれ、第1の領域2は、第3の領域3aと面積が同一で、さらに、第3の領域3a内には第2の領域3bが毛抜き合わせで形成してもよい。
【0052】
図16に示すように第1の領域2によって濃度階調を有する画像6’が形成され、第2の領域3bによって潜像画像5が形成され、第3の領域3aは潜像画像5のカムフラージュ領域7となる。第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aによって、濃度階調を有する可視画像4が形成される。
【0053】
濃度階調を有する可視画像4は、左目用画像又は右目用画像のいずれか一方となり、潜像画像5は、左目用画像又は右目用画像の他方となる。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5の図柄は、同一又は略同一(図16では略同一)であり、濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は、互いに水平方向(X方向)に所定の距離だけずらして配置される。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5の図柄が同一の場合には、アナグリフフィルタを通して観察すると、像全体が一体の平面として基材から浮き上がって近くに見えたり、遠くに見えたり、いわゆる像平面全体と基材の遠近感が視認でき、略同一の場合は、像の一部は近くに見え、像の他の一部は遠くに見える、像の連続的な奥行き感、いわゆる像の立体感を有して視認できる。
【0054】
濃度階調を有する可視画像4は右目用画像、潜像画像5は左目用画像として説明する。第1の領域2から成る濃度階調を有する画像6’及び第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7は第1の印刷インキで、第2の領域3bから成る潜像画像5は第2の印刷インキで印刷される。濃度階調を有する可視画像4となる右目用画像及び潜像画像5となる左目用画像はアナグリフ法で形成される。つまり、濃度階調を有する可視画像4である図柄と潜像画像5である図柄は同一又は略同一な図柄(違う角度又は配置が異なる位置で撮影された画像又は描かれたデザイン)であることが必要である。違う角度については0〜4度程度が好ましく、撮影方法はカメラを2台用意し、カメラを平行に並べて左のカメラで潜像画像5を撮影し、右目のカメラで濃度階調を有する可視画像4を撮影する。製版段階では潜像画像5と濃度階調を有する可視画像4は水平方向に両目の間隔(65mm)以下、好ましくは40mm以下程度ずらすことが好ましい。このずらす距離によって、立体像の基材からの浮き出し量及び沈み量が決定されるが、40mmを超えて形成した場合には、視覚が不安定になりやすいことから好ましくない。第1の領域2及び第3の領域3aは右目用画像の構成要素となる。図16では第1の領域2から成る濃度階調を有する画像6’と潜像画像5はデザイン的に重なっているが、本発明はこれに限定されることなく、濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は重なることなく両眼の距離65mm程度まで離しても良い。また、立体画像を見る平行法又は交差法を用いてもよい。
【0055】
次に、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aから成る濃度階調を有する可視画像4と、第1の印刷インキで印刷される第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5の網点面積率について説明する。
【0056】
第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aによって印刷される濃度階調を有する可視画像4は、第1の所定範囲の網点面積率で印刷され、第1の領域2によって印刷される濃度階調を有する画像6’は、第2の所定範囲の網点面積率で印刷され、第3の領域3aによって印刷されるカムフラージュ領域7は、第3の所定範囲の網点面積率で印刷され、第2の領域3bによって印刷される潜像画像5は、第4の所定範囲の網点面積率で印刷する必要がある。
【0057】
第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aからなる濃度階調を有する可視画像4は、所定範囲の網点面積率で印刷され、第2の印刷インキの印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5は濃度階調を有する可視画像4の最小網点面積率以下で印刷する必要がある。
【0058】
第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aによって印刷される濃度階調を有する可視画像4の第1の所定範囲の網点面積率は、40〜80%以下で印刷され、第1の領域2によって印刷される濃度階調を有する画像6’の第2の所定範囲の網点面積率は、0〜80%以下で印刷され、第3の領域3aによって印刷されるカムフラージュ領域7の第3の所定範囲の網点面積率は、40%以下で印刷され、第2の領域3bによって印刷される潜像画像5の第4の所定範囲の網点面積率は、40%以下で印刷することが好ましい。
【0059】
潜像画像を隠蔽する手段としては、潜像画像5を形成する第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bの網点と、前述の網点と対となるカムフラージュ領域7を形成する第1の印刷インキで印刷される第3の領域3aの網点の組み合わせの網点面積率の合計が一定の値となるようにする。
【0060】
波長領域Aにおける、ある特定の反射濃度で表現された第1の印刷インキで印刷される領域及び第2の印刷インキで印刷される領域は、波長領域Bにおいては互いの領域で良好な濃度差を得ることが可能となる。波長領域Bで高い濃度差を得るための最高網点面積率を網点面積率Aとする。これは、濃度階調を有する可視画像4の濃度が高すぎると、波長領域Bにおいても濃度階調を有する可視画像4が視認されてしまうことから一定の階調制限を設けることが好ましい。波長領域Aにおいて、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aから成る濃度階調を有する可視画像4と、第1の印刷インキで印刷される第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5の濃度階調領域の関係について図17を用いて説明する。
【0061】
第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aから成る濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)は、第2の領域3bから成る潜像画像5(左目用画像)を表現する最高網点面積率(例えば40%)以上、かつ、網点面積率A(例えば80%)以下で構成し、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5(左目用画像)の濃度階調領域は、濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)の最低網点面積率以下、例えば0〜40%で構成する。第1の印刷インキで印刷される第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7は、網点面積率A(例えば80%)以下、例えば0〜40%で構成する。第1の印刷インキで印刷される第1の領域2から成る濃度階調を有する画像6’の濃度階調領域は網点面積率A(例えば80%)以下で構成する。カムフラージュ領域7の網点面積率については、潜像画像5(左目用画像)を構成する網点と、前述の網点と対となるカムフラージュ領域7の網点の組み合わせの網点面積率の合計が一定の値(例えば40%)となるようにする。例えば、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が0%の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が40%となり、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が20%の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が20%となり、潜像画像5(左目用画像)の網点面積率が40%の場合は、対となるカムフラージュ領域7の網点面積率が0%となる。
【0062】
印刷物B2は特定波長Aである太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下では図18(a)に示すように右目用画像の濃度階調を有する可視画像4が確認され、左目用画像の潜像画像5は確認することができない。潜像画像5は濃度階調を有する可視画像4以下の反射濃度によって可視画像の中に目視不可能な程度に微細な構造で違和感なく配置されることにより、濃度階調を有する可視画像4の中に完全に隠蔽される。
【0063】
印刷物B2は左目に波長領域Bを透過し、右目に波長領域Cを透過するアナグリフフィルタ16を通して観察した場合に、図18(b)に示すように左目用のフィルタ16aからは潜像画像5(左目用画像)のみが視認され、右目用のフィルタ16bからは濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)が視認されることで濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像5(左目用画像)が合成された立体画像が確認される。なお、波長領域Cは400〜500nmでの透過特性を有し、ピークの透過率が約50%程度であることを有する。右目用のフィルタ16bがなくても、つまり、左目用のフィルタ16aのみで観察することも場合によっては可能である。
【0064】
左目用のフィルタ16aからは、潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6はあたかも消出したようになり、潜像画像5(左目用画像)のみが視認されているように見える。潜像画像5は、潜像画像5を構成するための第2の領域3bを除いた領域以下の反射濃度で構成されながらも、波長領域Bにおいて潜像画像5を構成するための第2の領域3bを除いた第1のインキで印刷される領域が、一定濃度に収束されるため、潜像画像5と潜像画像5を構成するための第2の領域3bを除いた領域の濃度差が高くなることで、視認性の高い潜像画像として発現させることが可能となる。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5はデザイン的に重なっているが、左目用のフィルタ16aを介して観察した場合に、潜像画像5に潜像画像5を構成するための第2の領域3bを除いた領域の濃度階調がほとんど反映されず、潜像画像5と潜像画像5を構成するための第2の領域3bを除いた領域に鮮明な濃度差を有して視認される。右目用のフィルタ16bからは潜像画像5(左目用画像)が視認されることなく、特定波長Aである太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下と同様な濃度階調を有する可視画像4のみが確認される。よって、濃度階調を有する可視画像4となる右目用画像及び潜像画像5となる左目用画像はアナグリフ法で形成されているため、濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像5(左目用画像)が合成された立体画像が確認される。
【0065】
印刷物B2に用いる第1の印刷インキにより印刷される第1の領域2から成る濃度階調を有する画像6’と、第1の印刷インキの印刷される第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7の第1の版面13と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5(左目用画像)の第2の版面14を作製するための容易な手順としては、図19(a)に示すカムフラージュ領域7と、図19(b)に示す潜像画像5(左目用画像)を形成し、カムフラージュ領域7と、潜像画像5(左目用画像)を合成した図19(c)に示す濃度が一定な画像11を形成する。この場合の濃度は、濃度階調を有する可視画像4の最低網点面積率以下まで引き下げる。次に、図19(d)に示す濃度階調を有する画像6’に対して図19(c)に示した潜像画像5(左目用画像)とカムフラージュ領域7のうち、カムフラージュ領域7のみを抽出し、濃度階調を有する画像6’に加算して、網点面積率Aまで引き下げ、図19(e)に示す濃度階調を有する画像6’及びカムフラージュ領域7の画像から第1の版面13を作製する。第2の版面14は図19(c)に示した潜像画像5(左目用画像)とカムフラージュ領域7のうち、潜像画像5のみを抽出して第2の版面14を作製する。ただし、本発明はこの手順にのみ限定されるものではないことは言うまでもない。
【0066】
本発明の印刷物において、濃度階調を有する可視画像4上に分光反射率が640〜700nm間で反射率の高い少なくとも一色のインキ(例えば、マゼンタインキ及び/又はイエローインキ)で模様を刷り重ねて、複数色の色彩を付与することが可能となる。反射率の高い少なくとも一色のインキは、潜像画像以外の濃度階調を有する可視画像4に印刷することができる。当然、立体画像を形成する領域以外に印刷してもよい。所定のフィルタ(例えば、FUJI FILM製 SC64)の波長以上のインキ(例えば、マゼンタインキ及び/又はイエローインキ)で濃度階調を有する可視画像4に重ね刷りした場合、その印刷物にフィルタ(潜像画像を視認するフィルタ、例えば左目用のフィルタ)を重ねて観察しても重ね刷りしたインキは視認することができない。
【0067】
(実施の形態3)
実施の形態1、2は少なくとも一組のメタメリックペアインキを用いて濃度階調を有する可視画像4を形成し、濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5の二つの画像で立体画像を構成する例を記したが、メタメリックペアインキを用いて濃度階調を有する潜像画像と潜像画像を隠蔽するカムフラージュ領域7を一定濃度で形成し、濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5及びカムフラージュ領域7を除いた画像6”又は濃度階調を有する画像6’を640〜700nmでの反射率の高いインキで形成することで、実施の形態1及び2と同様な効果が得られる。
【0068】
網点形状は、円形ドットに限定されるものではなく、ランダムドットや本出願人が先に出願した特開平11-268228号公報で提案している特殊網点生成法を用いて意匠性を加味した入力画像を網点(ハーフトーンスクリーン)から成る連続階調網点に変換した自由度のある特殊網点形状を用いても良い。
【0069】
実施の形態1に示した第1の領域2及び第2の領域3は、60〜700line/inchで印刷されることが好ましい。実施の形態2の第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aは、60〜700line/inchで印刷されることが好ましい。
【0070】
実施の形態1に示した潜像画像5及び濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6は、階調表現域が網点面積率の差で25%以上に達していることが望ましい。実施の形態2に示した潜像画像5及び濃度階調を有する画像6’は、階調表現域が網点面積率の差で25%以上に達していることが好ましい。
【0071】
また、本発明の印刷物に用いる基材は、特に限定されることがなく、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類又はフィルム等を用いることができる。
【0072】
本発明の印刷物の印刷方式は、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェットプリンタ又はレーザプリンタ等、特に限定されるものではないが、刷り合わせ精度が要求される場合が多いため、特にオフセット印刷方式が好ましい。実際に印刷物を作製する場合、ほとんどの印刷方式において、印刷物と版面間ではドットゲインによる網点面積率の上昇が見込まれることから、版面作製に当たっては、あらかじめそれを見込んだ網点面積率にする必要があることはいうまでもない。
【0073】
なお、印刷物で印刷される濃度階調を有する可視画像、潜像画像及び重ね刷り模様のデザインは特に限定されることなく、文字、数字、記号、図柄及び絵柄等を用いることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
発明を実施するに当たっては、図7に示した第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの特性に応じて、まず網点面積率A、潜像画像5とカムフラージュ領域7の合成濃度の決定を行った。はじめに使用する第1の印刷インキ及び第2の印刷インキのグラデーションスケールをそれぞれ印刷し、図20のとおり波長領域Aにおける両インキの反射濃度特性を確認した。波長領域Aにおいて、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの網点面積率と反射濃度がほぼ比例関係にあることが重要であり、比例関係にあることが確認できた。次に、波長領域Bにおいて、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの濃度差は、シャープカットフィルタを通して目視による判定を行った。また、第1の印刷インキ及び第2の印刷インキのそれぞれの網点面積率における分光スペクトルの波長領域Bにおける積分値で算出することも可能である。
【0076】
左目用画像となる潜像画像5は、網点面積率が0〜40%以下の範囲で第2の印刷インキで印刷した場合は、波長領域Bにおいて十分な階調を有していることが確認できた。第1の印刷インキで印刷されるカムフラージュ領域7は網点面積率が0〜40%以下の範囲で形成し、潜像画像5を構成する網点と、前述の網点と対となるカムフラージュ領域7の網点の組み合わせの網点面積率の合計が一定の値(40%)となるようにした。第1の印刷インキで印刷する網点面積率は波長領域Bにおいて、80%以下の連続階調が一定の階調に収まっている範囲であることが確認できたため、第1の印刷インキで印刷される領域は、網点面積率が80%以下の範囲で形成した。よって、第1の印刷インキ及び第2のインキで印刷した右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4は網点面積率が40〜80%以下の範囲で形成した。
【0077】
濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は撮影位置をずらして撮影し、撮影方法はカメラを2台用意し、カメラを平行に並べて左目用のカメラで潜像画像5を撮影し、右目用のカメラで濃度階調を有する可視画像4を撮影した。製版段階では濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5は水平方向(X方向)に10mmずらして形成した。濃度階調を有する可視画像4と潜像画像5はデザイン的に重なっている。
【0078】
図7に示した
第1の印刷インキ及び第2の印刷インキを用いて、濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6は、第1の印刷インキで印刷し、潜像画像5は第2の印刷インキでオフセット校正印刷機で印刷物C1を作製した。
【0079】
印刷物C1は、図21に示すように基材1上に第1の領域2と第2の領域3が交互に隣接されて複数配置され、第2の領域3内に第3の領域3aが毛抜き合わせで配置されて右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4が形成した。右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4の網点面積率は、40〜80%以下の範囲で形成した。第1の領域2によって右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領域3を除いた画像6が形成され、第2の領域3によって左目用画像となる潜像画像5が形成し、第1の領域2と第2の領域3の境界の第1の領域2内は、左目用画像となる潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7を形成した。潜像画像5の網点面積率は、0〜40%以下の範囲で形成し、カムフラージュ領域7の網点面積率は、0〜40%以下の範囲で形成し、カムフラージュ領域7と潜像画像5の合成領域の網点面積率は、40%となるように調整し、印刷物C1を得た。
【0080】
印刷物C1は特定波長Aである太陽光、蛍光灯又は白熱電球等からの通常光下では図22(a)に示すように右目用画像の濃度階調を有する可視画像4が確認され、左目用画像の潜像画像5は確認することができなかった。
【0081】
図22(b)に示すように印刷物C1は左目に波長領域Bを透過し、右目に波長領域Cを透過するアナグリフフィルタ16を通して観察した場合に、左目用のフィルタ16a(FUJI FILM製 SC64)からは潜像画像5(左目用画像)のみが視認され、右目用のフィルタ16b(400〜500nmでの透過特性を有し、ピークの透過率が約50%のフィルタ)からは濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)が視認されることで濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像5(左目用画像)が合成された立体画像が確認された。
【0082】
(実施例2)
図7に示した第1の印刷インキ及び第2の印刷インキを用いて、実施例1の印刷物C1とは異なる網点構成で実施例2の印刷物C2を作製した。濃度階調を有する画像6’及びカムフラージュ領域7は、第1の印刷インキで印刷し、潜像画像5は第2の印刷インキでオフセット校正印刷機で印刷物C2を作製した。
【0083】
印刷物C2は、図23に示すように、基材1上に第1の領域2と第3の領域3aが交互に隣接されて複数配置され、第3の領域3a内に第2の領域3bが毛抜き合わせで配置されて右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4が形成されている。右目用画像となる濃度階調を有する可視画像4の網点面積率は、40〜80%以下の範囲で形成されている。第1の領域2によって濃度階調を有する画像6’が形成し、第2の領域3bによって左目用画像となる潜像画像5が形成し、第3の領域3aによってカムフラージュ領域7を形成した。潜像画像5の網点面積率は、0〜40%以下の範囲で形成し、カムフラージュ領域7の網点面積率は、0〜40%以下の範囲で形成し、カムフラージュ領域7と潜像画像5の合成領域の網点面積率は、40%となるように調整し、印刷物C2を得た。
【0084】
印刷物C2は特定波長Aである太陽光・蛍光灯・白熱電球等からの通常光下では図24(a)に示すように右目用画像の濃度階調を有する可視画像4が確認され、左目用画像の潜像画像5は確認することができなかった。
【0085】
図24(b)に示すように印刷物C2は左目に波長領域Bを透過し、右目に波長領域Cを透過するアナグリフフィルタ16を通して観察した場合に、左目用のフィルタ16a(FUJI FILM製 SC64)からは潜像画像5(左目用画像)のみが視認され、右目用のフィルタ16b(400〜500nmでの透過特性を有し、ピークの透過率が約50%のフィルタ)からは濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)が視認されることで濃度階調を有する可視画像4(右目用画像)及び潜像画像5(左目用画像)が合成された立体画像が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】従来のメタメリックペア印刷物を示す図である。
【図2】従来のメタメリックペア印刷物の問題点を示す図である。
【図3】本発明の印刷物B1である。
【図4】毛抜き合わせの位置関係を示す図である。
【図5】第1の領域2と第2の領域3の境界を示す図である。
【図6】本発明の印刷物B1の説明図である。
【図7】本発明で使用するメタメリックペアインキである第1の印刷インキ及び第2の印刷インキの分光反射率曲線の一例を示す図である。
【図8】第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2及び第2の領域3から成る濃度階調を有する可視画像4と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3から成る潜像画像5と、第1の印刷インキで印刷される第1の領域2内の潜像画像5を隠蔽するためにカムフラージュ領域7の濃度階調領域の関係についての説明図である。
【図9】立体画像の見え方についての説明図である。
【図10】本発明の印刷物B1の作用についての説明図である。
【図11】第1の版面と、第2の版面を作製するための方法を示す説明図である。
【図12】本発明の印刷物B2である。
【図13】毛抜き合わせの位置関係を示す図である。
【図14】第2の領域3bと第3の領域3aの境界を示す図である。
【図15】第1の領域2、第2の領域3及び第3の領域3aの関係を示す図である。
【図16】本発明の印刷物B2の説明図である。
【図17】第1の印刷インキ及び第2の印刷インキで印刷される第1の領域2、第2の領域3b及び第3の領域3aから成る濃度階調を有する可視画像4と、第1の印刷インキで印刷される第3の領域3aから成るカムフラージュ領域7と、第2の印刷インキで印刷される第2の領域3bから成る潜像画像5の濃度階調領域の関係についての説明図である。
【図18】本発明の印刷物B2の作用についての説明図である。
【図19】第1の版面13と、第2の版面14を作製するための方法を示す説明図である。
【図20】第1の印刷インキ及び第2の印刷インキのグラデーションスケールをそれぞれ印刷し、波長領域Aにおける反射濃度特性を示す図である。
【図21】実施例1の印刷物C1の説明図である。
【図22】実施例1の印刷物C1の作用を示す図である。
【図23】実施例2の印刷物C2の説明図である。
【図24】実施例2の印刷物C2の作用を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 基材
2 第1の領域
3、3b 第2の領域
3a 第3の領域
4 濃度階調を有する可視画像
5 潜像画像
6 濃度階調を有する可視画像4から潜像画像5を構成するための第2の領 域を除いた画像
6’ 濃度階調を有する画像
7 カムフラージュ領域
10 フィルタ
11 濃度が一定な画像
12 濃度階調を有する画像
13 第1の版面
14 第2の版面
A1、A2、B1、B2、C1、C2 印刷物
15 重なった領域
16 アナグリフフィルタ
16a 左目用のフィルタ
16b 右目用のフィルタ
S 非印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に第1の領域と第2の領域が複数配置されて濃度階調を有する可視画像が形成され、前記第2の領域は、前記第1の領域内に毛抜き合わせで配置されて潜像画像を形成し、前記第1の領域によって前記濃度階調を有する可視画像から前記潜像画像を構成するための前記第2の領域を除いた画像が形成され、前記第1の領域は第1の印刷インキで、前記第2の領域は第2の印刷インキで印刷され、前記第1の印刷インキと前記第2の印刷インキの分光反射率は可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値であるメタメリックペアインキで印刷され、前記濃度階調を有する可視画像は左目用画像又は右目用画像のいずれか一方として視認され、前記潜像画像は前記左目用画像又は前記右目用画像の他方として視認されることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
基材上に第1の領域と第3の領域が交互に隣接されて複数配置され、前記第3の領域内に第2の領域が毛抜き合わせで配置されて濃度階調を有する可視画像が形成され、前記第1の領域によって濃度階調を有する画像が形成され、前記第2の領域によって潜像画像が形成され、前記第3の領域は前記潜像画像のカムフラージュ領域となり、前記第1の領域及び前記第3の領域は第1の印刷インキで、前記第2の領域は第2の印刷インキで印刷され、前記第1の印刷インキと前記第2の印刷インキの分光反射率は可視領域内の第1の波長の範囲では近似し、可視領域内の第2の波長の範囲では異なる値であるメタメリックペアインキで印刷され、前記濃度階調を有する可視画像は左目用画像又は右目用画像のいずれか一方として視認され、前記潜像画像は前記左目用画像又は前記右目用画像の他方として視認されることを特徴とする印刷物。
【請求項3】
前記濃度階調を有する可視画像は、網点面積率が40〜80%以下で形成され、前記潜像画像は、網点面積率が40%以下で形成されたことを特徴とする請求項1記載の印刷物。
【請求項4】
前記濃度階調を有する可視画像は、網点面積率が40〜80%以下で形成され、前記潜像画像は、網点面積率が40%以下で形成され、前記カムフラージュ領域は、網点面積率が40%以下で形成されたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の印刷物。
【請求項5】
前記第1の印刷インキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値は、前記第2の印刷インキの640〜700nm間における分光反射スペクトルの積分値の2倍以上を有し、前記第1の印刷インキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値は、前記第2の印刷インキの400〜600nm間における分光反射スペクトルの積分値と略同一であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の印刷物。
【請求項6】
前記濃度階調を有する可視画像と前記潜像画像の図柄は、同一又は略同一であり、前記濃度階調を有する可視画像と前記潜像画像は、互いに水平方向に所定の距離だけずらして配置されたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の印刷物。
【請求項7】
前記潜像画像が濃度階調を有することを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2008−73989(P2008−73989A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256956(P2006−256956)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】