説明

印刷物

【課題】改ざんや偽造を防止する必要のある印刷物や真贋判定が必要な印刷物、識別コードや個人情報があって1枚1枚が異なり個人情報を保護する必要のある印刷物において、改ざんや偽造の防止対策、不正使用防止対策が安価であり、物理的に堅牢であると共に、その印刷物の防止対策されている部位や構造・機能を偽造する側や不正使用する側に推測され難く悟られないようにすることにある。
【解決手段】基材シート1片面又は両面に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部2を有する印刷物において、前記基材シート1片面又は両面に目的とする表示画像3の他に繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像4が印刷されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券印刷物や個人情報印刷物等の印刷物であって、改ざんや偽造を防止する必要のある印刷物、真贋判定が必要な印刷物や、識別コードや個人情報があって1枚1枚が異なり個人情報を保護する必要のある印刷物等の印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
株券、クレジットカード、キャッシュカード、旅券や、宝くじ券などの抽選券、あるいは入場券や指定席等の有価証券印刷物は、改ざんや偽造を防止するための対策や真贋判定を必要とする印刷物である。また、メンバーズカードや会員証等の個人情報印刷物は、識別コードや個人情報があって、印刷物の1枚1枚が異なり、改ざんや偽造を防止すると共に不正使用を防止し、個人情報を保護する対策を必要とする印刷物である。
【0003】
このような改ざんや偽造を防止する対策や不正使用を防止する対策を講じている印刷物においては、その防止対策が物理的に堅牢であることだけでなく、その防止対策がその印刷物のいずれの部位や構造・機能に講じられているかを、偽造する側や不正使用する側に推測され難くし、悟られないようにすることが重要である。
【0004】
下記に本発明に関連する先行技術文献を記載する。
【特許文献1】特開2002−166689号公報
【特許文献2】特開2004−009565号公報
【特許文献3】特開2004−223975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、改ざんや偽造を防止する必要のある印刷物や真贋判定が必要な印刷物、識別コードや個人情報があって1枚1枚が異なり個人情報を保護する必要のある印刷物において、改ざんや偽造の防止対策、不正使用防止対策が安価であって、物理的に堅牢であるとともに、その印刷物の防止対策されている部位や構造・機能を、偽造する側や不正使用する側に推測され難く、悟られないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る発明は、基材シートの片面又は両面に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有する印刷物において、前記基材シートの片面又は両面に、目的とする表示画像の他に、繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像が印刷されていることを特徴とする印刷物である。
【0007】
本発明の請求項2に係る発明は、基材シートの片面又は両面に、個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有する印刷物において、前記基材シートの片面又は両面に、目的とする表示画像の他に、繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像が印刷され、前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像形状データに基づき作成されていることを特徴とする印刷物である。
【0008】
本発明の請求項3に係る発明は、上記請求項1又は2に係る印刷物において、前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像位置データに基づき作成されていることを特徴とする印刷物である。
【0009】
本発明の請求項4に係る発明は、上記請求項1乃至3のいずれか1項に係る印刷物において、前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像色調データに基づき作成されていることを特徴とする印刷物である。
【0010】
本発明の請求項5に係る発明は、上記請求項2乃至4のいずれか1項に係る印刷物において、前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した曲線制御点を入力して得られる自由曲線関数によって決められる曲線形状を示す画像形状データに基づき作成されていることを特徴とする印刷物である。
【0011】
本発明の請求項6に係る発明は、上記請求項1乃至5のいずれか1項に係る印刷物において、前記擬態画像の画像形状データ、画像位置データ、画像色調データ等の画像データは、前記識別データを暗号化処理して得られる暗号化識別データを演算処理することにより決定されることを特徴とする印刷物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の印刷物(請求項1)によれば、印刷基材シート上に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有し、目的とする表示画像の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像が、固有の画像形状、画像位置、画像色調等に基づいて、実写原稿や描画デザイン原稿、あるいはCG画像など画像データを用いて、モノクロあるいはカラー製版、印刷されているため、その擬態画像を目視しても、一般的に通常の印刷物に時々発生している微細な印刷傷や印刷ゴミなどとして観察され判断されるため、目立ち難く、偽造する側や不正使用する側には、偽造防止機能のある特殊加工された擬態画像としては推測され難く、偽造防止対策を悟られないようにすることができる。
【0013】
そのために印刷物を目視あるいは光学検査機にて観察し、真偽を検査判定する際には、検査した前記印刷物に擬態画像が存在するか、また検査した前記印刷物に存在する擬態画像が、上記のようにして擬態させて作成した真正の印刷物に存在する擬態画像と、その識別コードと画像形状、又は識別コードと画像位置、又は識別コードと画像色調、又は識別コードと画像形状と画像位置と画像色調が、整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には改ざんされた偽造印刷物であると判定することができる。
【0014】
本発明の印刷物(請求項2)によれば、印刷基材シート上に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有し、目的とする表示画像の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像が印刷され、その擬態画像は、印刷物に備える識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算処理し、決定した画像形状(例えば曲線形状)を示す画像データに基づき作成されており、その各々印刷物の擬態画像は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に、そのようにして作成された固有の形状を有する。
【0015】
そのために印刷物を目視あるいは光学検査機にて観察し、真偽を検査判定する際には、検査した前記印刷物に擬態画像が存在するか、また検査した前記印刷物に存在する擬態画像が、上記のようにして識別データに基づいて作成した真正の印刷物に存在する固有の擬態画像と、その識別コードと画像形状が整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には改ざんされた偽造印刷物であると判定することができる。
【0016】
本発明の印刷物(請求項3)によれば、上記請求項1に係る印刷物のように、印刷基材シート上に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有し、目的とする表示画像の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像が、実写原稿、描画原稿、あるいは画像データを用いて、製版、印刷等により作成され、又は上記請求項2に係る印刷物のように、識別データに基づいて演算処理し、決定した画像形状(例えば曲線形状)を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像位置を示す画像データに基づき作成されており、その各々印刷物の擬態画像は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に異なる固有の形状と印刷物上の位置とを有する。
【0017】
そのために印刷物を目視あるいは光学検査機にて観察し、真偽を検査判定する際には、検査した前記印刷物が、上記のようにして識別データに基づいて作成した個々の真正の印刷物毎に存在するそれぞれ固有の擬態画像と、その識別コードと画像形状、又は識別コードと画像位置、又は識別コードと画像形状と画像位置が、整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は、真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には、改ざんされた偽造印刷物であると判定することができる。
【0018】
本発明の印刷物(請求項4)によれば、上記請求項3に係る印刷物のように、印刷基材シート上に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有し、目的とする表示画像の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像が、実写原稿、描画原稿、あるいは画像データを用いて、製版、印刷等により作成され、又は識別データに基づいて演算処理し、決定した画像形状(例えば曲線形状)を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像位置を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像色調を示す画像データに基づき作成されており、その各々印刷物の擬態画像は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に、そのようにして作成された固有の形状と印刷物上の位置と色調とを有する。
【0019】
そのために印刷物を目視あるいは光学検査機にて観察し、真偽を検査判定する際には、検査した前記印刷物が、上記のようにして識別データに基づいて作成した個々の真正の印刷物毎に存在するそれぞれ固有の擬態画像と、その識別コードと画像形状、又は識別コードと画像位置、又は識別コードと画像色調、又は識別コードと画像形状と画像色調が、整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には改ざんされた偽造印刷物であると判定することができる。
【0020】
本発明の印刷物(請求項5)によれば、上記請求項1、2、3、4に係る印刷物の前記擬態画像が、前記識別データに基づいて演算し、決定した制御点を任意に入力することにより得られる各種形状の曲線、例えばベジェ曲線数式、スプライン曲線数式などの自由曲線関数によって決められる曲線形状の画像データに基づき作成されている。
【0021】
そのため、その自由曲線関数の制御点を識別データに基づいて求めることにより、識別データ毎に、印刷物上に、例えば印刷傷や印刷ゴミなどのパターンである偽造防止パターンとしては目立たないパターンに擬態させた擬態画像に相応しい固有の曲線を得ることが可能であり、例えば、1乃至数本のパルプ繊維などの繊維状パターンに類似させて擬態させた形状の擬態画像を容易に得ることができる。
【0022】
本発明の印刷物(請求項6)によれば、上記請求項1、2、3、4、5に係る印刷物の前記擬態画像の画像形状データ、画像位置データ、画像色調データ等の画像データは、前記識別データを暗号化処理して得られる暗号化識別データを演算処理することにより決定される。
【0023】
そのため、本発明の各印刷物の印刷基材シート上の識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードを、万一、偽造や不正をする側によって解読されたとしても、識別コードは暗号化処理されているため、前記識別コードから擬態画像の画像形状データ、画像位置データ、画像色調データ等の画像データを解析、解読されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の請求項1に係る印刷物を、その実施の形態に沿って以下に詳細に説明すれば、図1は、本発明の印刷物Aの平面図であり、基材シート11の片面又は両面に、識別コード(例えば、01498743)を可視状態又は不可視状態にて記録した識別コード記録部12を備え、また前記基材シート11の片面又は両面には、その印刷物の名称、所在、銘柄、あるいはその印刷物の内容、記事など、必要に応じて目的とする顔写真等の写真画像、絵柄、風景画、彩色、文字、数字等の表示画像13が、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、あるいは転写インクシートを用いた転写方式等にて画像形成されている。
【0025】
本発明の印刷物Aには、前記表示画像13の他に、繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像14が印刷されている。図2は、一例としてゴミのラインを擬態表現した擬態画像14の拡大平面図である。
【0026】
印刷物Aの識別コード記録部12に記録されている前記識別コードは、印刷にて印字された可視表示記録コード、あるいは磁気記録コード、ICチップのメモリ記録コードなどであり、その印刷物の一枚毎に個々に異なる識別コード、あるいはその印刷物の各ロット毎に個々に異なる識別コードとして記録されている。
【0027】
前記擬態画像14は、印刷物Aの表面、裏面、あるいは表裏両面の任意な位置に形成されていて、該擬態画像14の位置は、印刷物の原稿入校工程、製版工程、印刷工程など、いずれかの印刷物の製造工程にて予め設定されたものである。印刷物A上の前記擬態画像14のパターンは、その形状、色調などを、通常の繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて形成してある。
【0028】
そのために、一見して、この印刷物Aの製造工程中にゴミが付着したり傷が付いたりして発生する普通のゴミ又は傷等、人為的でない損傷印刷画像パターンとして観察されて、擬態による特殊加工された人為的な画像としては観察され難いことが特徴である。そのため本発明の印刷物Aの擬態画像14は、当該印刷物Aに固有の位置、形状、色調等の情報を持つ画像として成立する。
【0029】
上記印刷物Aの真偽を検査判定する際には、この印刷物Aを、目視あるいは光学検査機
にて観察し、検査した前記印刷物Aが、上記のようにして擬態画像が作成された真正の印刷物に存在する擬態画像と、その形状、位置、色調のうちいずれか1種乃至全てが整合(一致)する擬態画像を備えているか否かを検査し、整合(一致)する場合は、真正の印刷物であると判定し、整合しない(不一致)場合には、改ざんされた偽造印刷物であると判定するものである。
【0030】
本発明における上記印刷物Aは、その識別コード記録部12に記録された識別コードの情報と、印刷物A上での擬態画像14の形成位置、形状、色調等の擬態画像の情報とが関連付けられていない場合である。
【0031】
本発明における印刷物Aとしては、識別コード記録部12に記録された識別コードの情報と、印刷物A上での擬態画像14の形成位置、形状、色調等の擬態画像の情報とを関連付けて、下記のように識別コードの情報に基づいて擬態画像の情報を適宜に設定するようにすることができる。そして本発明の上記印刷物Aは、その擬態画像14が、印刷物Aの一枚毎に識別コード記録部12に記録された個々に異なる識別コード、あるいはその印刷物Aの各ロット毎に個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し決定した画像形状データ、画像位置データ、画像色調データの画像データに基づき作成されているものである。
【0032】
すなわち、本発明の請求項2に係る印刷物Aは、図1に示すように、基材シート11の片面又は両面に、個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部12を有する印刷物において、前記基材シート11の片面又は両面に、目的とする表示画像13の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させて作成した擬態画像14が印刷されていて、前記擬態画像14は、前記識別コード記録部12に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて、演算し、決定した画像形状データに基づき作成されているものである。
【0033】
この印刷物Aの真偽を検査判定する際には、印刷物Aを目視あるいは光学検査機にて観察し、観察、検査した前記印刷物に擬態画像が存在するか、また検査した前記印刷物に存在する擬態画像が、上記のようにして識別データに基づいて作成した真正の印刷物に存在する固有の擬態画像と、その識別コードと画像形状が整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は、真正の印刷物であると判定し、整合しない(不一致)場合には、改ざんされた偽造印刷物であると判定するものである。
【0034】
また、本発明の請求項3に係る印刷物Aは、図1に示す上記請求項1に係る印刷物Aのように、基材シート11の片面又は両面に、個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部12を有する印刷物において、前記基材シート11の片面又は両面に、目的とする表示画像13の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像14が、実写原稿、描画原稿、あるいは画像データを用いて、製版、印刷等により作成されていて、その各々印刷物Aの擬態画像14は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に異なる、固有の形状と印刷物上の位置とを有する。
【0035】
あるいは、上記請求項2に係る印刷物Aのように、上記擬態画像14が、識別データに基づいて演算処理し、決定した画像形状(例えば曲線形状)を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像位置を示す画像データに基づき作成されていて、その各々印刷物Aの擬態画像14は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に異なる、固有の形状と印刷物上の位置とを有する。
【0036】
この印刷物Aの真偽を検査判定する際には、印刷物Aを目視あるいは光学検査機にて観察し、観察、検査した前記印刷物Aが、上記のようにして作成した個々の真正の印刷物毎に存在するそれぞれ固有の擬態画像14と、その識別コードと画像形状、又は識別コードと画像位置、又は識別コードと画像形状と画像位置が、整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は、真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には、改ざんされた偽造印刷物であると判定するものである。
【0037】
また、本発明の請求項4に係る印刷物Aは、上記請求項3に係る印刷物のように、印刷基材シート上に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有し、目的とする表示画像の他に、印刷中に用紙等の被印刷体や印刷用材などによって発生したゴミや埃など、あるいは印刷版や印刷物に発生した擦り傷などのパターンによる損傷印刷画像(ヤレ画像)に擬態させた擬態画像が、実写原稿、描画原稿、あるいは画像データを用いて、製版、印刷等により作成され、又は識別データに基づいて演算処理し、決定した画像形状(例えば曲線形状)を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像位置を示す画像データに基づき作成され、更に前記識別データに基づいて演算処理し、決定した画像色調を示す画像データに基づき作成されており、その各々印刷物の擬態画像は、各印刷物共通の又は各印刷物毎に、そのようにして作成された固有の形状と印刷物上の位置と色調とを有する。
【0038】
そのために印刷物を目視あるいは光学検査機にて観察し、真偽を検査判定する際には、検査した前記印刷物が、上記のようにして識別データに基づいて作成した個々の真正の印刷物毎に存在するそれぞれ固有の擬態画像と、その識別コードと画像形状、又は識別コードと画像色調、又は識別コードと画像形状と画像色調が、整合して(同じに)存在するか否かを検査し、整合(一致)する場合は真正の印刷物であると判定でき、整合しない(不一致)場合には改ざんされた偽造印刷物であると判定することができる。
【0039】
本発明の印刷物Aの擬態画像14は、印刷物A上に設けられた識別コード記録部12に記録されている前記識別データに基づいて演算し、決定した制御点(x,y座標値)を任意に入力することにより得られる各種形状の曲線、例えばベジェ曲線数式、スプライン曲線数式などの自由曲線関数によって決められる曲線形状の画像データに基づき作成することができる。図3は、図2に示す擬態画像14の曲線ラインと、その曲線ラインを決定するために自由曲線関数(例えばベジェ曲線数式)に入力する曲線ライン両端の制御点0、9と、その曲線ライン上の中間の制御点1、2、3、・・・8を示す。
【0040】
そして、その自由曲線関数に入力するための制御点は、各印刷物A1枚毎、又は各印刷物Aの製造ロット毎に異なる識別データに基づいて決定し、その決定した制御点を自由曲線関数に入力することにより、識別データ毎に、印刷物A上に、例えば印刷傷や印刷ゴミなどのパターンである偽造防止パターンとしては目立たないパターンに擬態させた擬態画像に相応しい固有の曲線を得るものである。例えば、1乃至数本のパルプ繊維などの繊維状パターンに類似させて擬態させた形状の擬態画像を得る。
【0041】
ここでベジェ曲線とは、4個の点(制御点)で構成され、両端の制御点は曲線の端点(オンカーブ点)を表し、両端間の2個の制御点は曲線の両端点(制御点)における接線方向を示す方向点(オフカーブ点)を表す。そして両端の制御点の間を3次関数で表現したものである。ベジェ曲線の数式(三次式)は下記のように表される。
【0042】
x,y;座標値 t;0≦t≦1
x=(1−t)3 1 +3(1−t)2 tx2 +3(1−t)t2 3 +t3 4
・・・・・(1)
y=(1−t)3 1 +3(1−t)2 ty2 +3(1−t)t2 3 +t3 4
・・・・・(2)
また、N次スプライン曲線とは、n+1個の点(オンカーブ点)を結ぶ滑らかな曲線の一種であり、各点と点の間を3次関数で表現し、点での接続が滑らかになるようにしたものである。N次スプライン曲線数式(二次スプライン曲線;二次式)は下記のように表される。
【0043】
x,y;座標値 t;0≦t≦1
x=(1−t)2 1 +2t(1−t)x2 +t2 3 ・・・・・(3)
y=(1−t)2 1 +2t(1−t)y2 +t2 3 ・・・・・(4)
また、本発明の印刷物Aにおいては、各印刷物Aの識別コード基づいて得られる識別データによって求められる擬態画像14の画像形状データ、画像位置データ、画像色調データ等の画像データは、前記識別データを、一旦、暗号化処理して暗号化識別データとして、擬態画像14の作成用データのセキュリティ性能を高めた上で、得られた暗号化識別データを演算処理することにより決定することができる。
【0044】
本発明の印刷物Aの擬態画像及びその擬態画像の形成方法について以下に説明する。図4は、擬態画像としてのゴミライン画像の形成工程を説明するフローチャート図、図5は本発明の印刷物Aの一例を説明する平面図である。
【0045】
<ステップS1>
図4に示すように、まず、本発明の印刷物Aの識別コード記録部12に記録される識別コードとしては、例えばICAO規格で指定される88キャラクタのコードが使用される。このコードから演算に必要な係数や結果を求めるわけであるが、偽造や変造、不正改ざんをしようとする者がゴミの存在に気付いた場合、識別コードとして単純に見えているコードを使用してしまうと、そのコードの解析を行うことにより簡単に模造品が作られてしまう危険性がある。
【0046】
<ステップS2>
そこで識別コードに対して暗号化処理を行う。
【0047】
<ステップS3>
次に、擬態画像14となるゴミラインの画像色調は、Red、Green、Blueの3色の各8ビットデータで構成されるが、この各色のデータを、88キャラクタのコードから複雑に関連付けることにより暗号化処理して、画像色調データの演算に必要な係数や結果を求め、色コードの生成を行う。
【0048】
例えば、「3文字目のキャラクタコードの13で割った剰余に88キャラクタのコードの総和を掛けて250で割った剰余を加算する」といったものである。このような暗号手法は、本発明においては他にも様々な手段を採用することが可能である。
【0049】
<ステップS4>
次に、擬態画像14となるゴミラインの画像位置は、印刷物A(基材シート11)の面の横方向X、縦方向Yを独立して求め、上記の画像色調を表す色データと同様に88キャラクタのコードから複雑に関連付けて、画像位置データの演算に必要な係数や結果を求め、擬態画像14の配置位置の生成を行う。
【0050】
<ステップS5>
次に、擬態画像14となるゴミラインの画像形状は、例えばベシェ曲線の作成の場合は、ベジェ関数(ベジェ曲線数式)に用いる制御点を生成する。例えば、その制御点を10点程、生成させる。
【0051】
<ステップS6>
制御点を生成した後は、この制御点を使ってベジェ関数に則り、ベシェ曲線によるライン形状の描画生成をする。また画像形状の描画は、例えばスプライン関数(スプライン曲線数式)を用いてスプライン曲線によるラインを描画することも可能である。あるいは、幾つかのベジェ曲線を接合した形状でもよい。図3に示す曲線は、制御点0〜3のベジェ曲線、3〜6のベジェ曲線、6〜9のベジェ曲線を繋いで描画したものである。
【0052】
<ステップS7>
擬態画像14となるゴミラインの画像色調、画像位置、画像形状が決定した後は、更に、如何にもゴミらしく見えるように、ラインにスムージングなどの画像処理(イフェクト)を施すようにしてもよい。
【0053】
<ステップS8>
その後、画像位置のデータ情報に基づいて、目的とする本来の表示画像13の画像データに、擬態画像14となるゴミラインの画像データを挿入する。
【0054】
<ステップS9>
続いて、その画像データをプリンタに送信する。
【0055】
<ステップS10>
続いて、その画像データに基づいて、図2に示すようなゴミラインによる擬態画像14を含んだ画像をプリント出力して、図1、図5に示すような印刷物Aを作成する。
【0056】
例えば、本発明の印刷物Aとして、図5に示すようなパスポート冊子は、元々、有色の繊維や蛍光繊維などを含んだ用紙を使用しており、ゴミに擬態させたゴミ画像は発見がされ難い上、発見されたとしても、識別コード(あるいは暗号化処理された識別コード)から決定される制御点や曲線形状による画像形状、あるいは画像色調、画像位置までは、偽造することは非常に困難となる。
【0057】
また、このゴミラインによる擬態画像14を無視して偽造品が作成されたとしても、その偽造された印刷物Aの識別コード(例えば88キャラクタ)に基づいて、本来真正品(本物)にあるべき擬態画像14のゴミラインの画像形状、あるいは画像色調、画像位置を生成するソフトウエアを用いて、真正品(本物)に本来あるべき擬態画像14の画像形状、あるいは画像色調、画像位置を生成することにより、その印刷物Aの真贋を検証することが可能である。特に印刷物Aがパスポートや旅券等の場合には、入国管理場などでのチェックが容易になる。また、擬態画像14の印刷には、耐候性(耐光性)のある顔料インクを用いることにより長期間の品質保持が可能になる。
【0058】
本発明の印刷物Aのプリント出力や印刷方法としては、本発明においては特に限定されるものではないが、静電印刷(電子写真)方式プリンタ、レーザーヘッド方式プリンタ、サーマルヘッド方式プリンタなどの電子方式プリンタを用いた印刷方法、あるいはオフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷などの印刷方法や、中間転写フィルムなどの転写フィルム(シート)を用いた転写印刷方式、間接転写印刷方式などが使用できる。
【0059】
本発明の印刷物Aの印刷方式として、間接転写印刷方式による製造工程の一例を、図6に示す製造装置の側面図に基づいて以下に説明する。
【0060】
間接転写印刷方式は、図6に示すように、巻出部21から巻取部23に巻き出されて巻き取られるインクリボン22(例えば顔料インクリボン)は、プラテンローラ28の周面
から僅かに離間した位置にガイドローラ24b、24cなどのガイドローラを介して巻き出される。巻出部26から巻取部32に巻き出されて巻き取られる被転写体である中間転写フィルム27はプラテンローラ28の周面に半周程度が密着して巻き付けられる。なお、28aは中間転写フィルム27の巻き出し位置を検知するための位置検知センサー、28b、28cはクランプローラ、28dはクリーニングローラである。
【0061】
前記インクリボン22と中間転写フィルム27との対向位置にはサーマルヘッド24(サーマルプリンティングヘッド)が設置されて第一次転写工程が実施される。即ち、サーマルヘッド24は、インクリボン22及び中間転写フィルム27が送行を停止中において、プラテンローラ28周面に密着する中間転写フィルム27面に僅かに離間して対向する前記インクリボン22側から中間転写フィルム27面に向かって前進して押し付けられて、前記リボン22とフィルム27との対向内面側にある該インクリボン22の所定の色のインク層(顔料インク層)をサーマルヘッド24により画像状(ドット画像状)に加熱する。これにより、該顔料インクリボン22の加熱溶融した画像状(ドット画像状)の顔料インク層が、前記インクリボン22とフィルム27との対向内面側にある中間転写フィルム27の受像層上に溶解転写方式によりカラー若しくはモノクロの転写用画像として転写する。転写が終了した後は、前記サーマルヘッド24は一旦、後退してインクリボン22から離反し、インクリボン22と中間転写フィルム27とは離反する。
【0062】
前記インクリボン22は、インク層がC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)などの色に塗り分けられており、順方向(巻出部21から巻取部23の方向)にインクリボン22を送行させながら、センサー24aにて、該センサー24aと対向してインクリボン22に形成されている色パネル(図示せず)(センサーマーク)を読み取る。これによりインクリボン22の色パネルの位置を認識し、その色パネル位置認識信号に基づいて、定位置にあるサーマルヘッド24と発熱すべき当該色のインク層の位置とを整合させるために巻き出すべきインクリボン2の巻き出し送行量が決定される。
【0063】
そして、前記インクリボン22と被転写体である中間転写フィルム27とは、それぞれ巻出部21と巻取部23、及び巻出部26と巻取部32とによる間欠的な巻き出し送行動作、及びブラテンローラ28とその周面にて周接回転するクランプローラ28b、28c(押さえローラ)との間欠的な回転動作により、互いに同期して同一速度にて間欠的に巻き出されて送行する。
【0064】
また、被転写体である中間転写フィルム27は、ブラテンローラ28周面に周接して回転するクランプローラ28a、28aによって押さえられ、該プラテンローラ28周面の半周程度に密接して位置ズレのないように送行する。
【0065】
図6に示すように、前記中間転写フィルム27の受像層上に画像状(ドット画像状)の顔料インク層によるカラー若しくはモノクロの転写用画像が転写された中間転写フィルム27は、プラテンローラ28の回転により、ガイドロール30aを介して送行移動して、該中間転写フィルム27の巻き出し送行速度と同じ速度で同期的に、前進(図面右方向)移動動作及び後退復帰動作可能な被印刷体台盤29上に載置固定した基材シート11(印刷物となる被印刷体)上に、その転写用画像が対向する位置まで導入される。そして、プレスロール30を介して、該基材シート11面に中間転写フィルム27の転写用画像のある受像層側が重ね合わせられて第二次転写工程が実施される。なお、31はヒータローラ、31aはヒータローラ31に内装するヒーター、31bは温度検出センサー、31cはクリーニングローラである。
【0066】
即ち、図6に示すように、被印刷体台盤9上に載置された基材シート11面に中間転写フィルム27の転写用画像のある受像層側が重ね合わせられ、閉鎖しているヒートローラ
シャッター31dが開放し、ヒートローラ31(ローラ内部にヒータ31aを内装)の周面が中間転写フィルム27面まで下降動作して受像層の加熱を開始すると共に、被印刷体台盤29の基材シート11及び中間転写フィルム27が同じ速度にて同期的に前進(図面右方向)移動して、プレスロール30により押圧している中間転写フィルム27の受像層にある転写用画像を、識別コード記録部12、表示画像13、擬態画像14等として、基材シート11に転写して本発明の印刷物Aが形成される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の印刷物の一実施の形態を説明する平面図。
【図2】本発明の印刷物の擬態画像におけるライン形状を説明する平面図。
【図3】本発明の印刷物の擬態画像のライン形状を作成するための制御点を説明する平面図。
【図4】本発明の印刷物において擬態画像を作成する工程を説明するフローチャート図。
【図5】本発明の印刷物の他の実施の形態を説明する平面図。
【図6】本発明の印刷物を製造するための工程及び装置を説明する側面図。
【符号の説明】
【0068】
11…基材シート
12…識別コード記録部
13…表示画像
14…擬態画像
A…印刷物
21…巻出部
22…インクリボン
23…巻取部
24…サーマルヘッド
26…巻出部
27…中間転写フィルム
28…プラテンローラ
29…被印刷体台盤
30…プレスローラ
31…ヒーターローラ
32…巻取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの片面又は両面に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有する印刷物において、前記基材シートの片面又は両面に、目的とする表示画像の他に、繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像が印刷されていることを特徴とする印刷物。
【請求項2】
基材シートの片面又は両面に個々に異なる識別コードを記録した識別コード記録部を有する印刷物において、前記基材シートの片面又は両面に、目的とする表示画像の他に、繊維状のゴミ又は傷等の損傷印刷画像パターン(ヤレ画像パターン)に擬態させて作成した擬態画像が印刷され、前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像形状データに基づき作成されていることを特徴とする印刷物。
【請求項3】
前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像位置データに基づき作成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷物。
【請求項4】
前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した画像色調データに基づき作成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の印刷物。
【請求項5】
前記擬態画像が、前記識別コード記録部に記録された個々に異なる識別コードに基づいて求められる識別データに基づいて演算し、決定した曲線制御点を入力して得られる自由曲線関数によって決められる曲線形状を示す画像形状データに基づき作成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項記載の印刷物。
【請求項6】
前記擬態画像の画像形状データ、画像位置データ、画像色調データ等の画像データは、前記識別データを暗号化処理して得られる暗号化識別データを演算処理することにより決定されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−93974(P2008−93974A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278567(P2006−278567)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】