説明

印刷用インク組成物、および印刷物

【課題】ノズルの詰まりを解消し、印刷物の品質を向上させることができる印刷用インク組成物、および該印刷用インクを用いて印刷した印刷物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成、および該印刷用インクを用いて印刷した印刷物。


(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用インク組成物、および該印刷用インク組成物を用いて印刷した印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷は高速で高解像度の印刷物が得られるため、家庭用から産業用まで幅広く使用されている。
インクジェット印刷はマイクロプロセッサで生成された電気信号に応答して、紙やフィルム等の印刷媒体に微細な液滴を噴射する工程が含まれている。この工程は、印刷機のカートリッジに備わった極微小のノズルを有するオリフィスからインク滴が射出される。
インクジェット印刷の例としては、熱インクジェット印刷、圧電性インクジェット印刷、連続インクジェット印刷、およびエアブラシ印刷等が挙げられる。
このインクジェット印刷に用いるインク組成物として、従来から、顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤、および、種々の溶媒を用いたインクジェット用インク組成物の提案がなされている。
たとえば、a)少なくとも水と、グリコールおよびグリコールエーテルよりなる群から選択される水と相溶性の溶媒とを含有し、水がビヒクルの全重量を基にして80%以下である水性ビヒクルと、b)不溶性着色剤と、c)ポリマー分散剤と、d)シリコン界面活性剤およびフッ素化界面活性剤よりなる群から選択される界面活性剤とを含有する疎水性基体に直接印刷する使用に適したインクジェット用インキ組成物(特許文献1)、
シリコーン系グラフトポリマーが配合されており、前記シリコーン系グラフトポリマーが、前記顔料の外表面の少なくとも一部分に吸着された状態で、前記有機溶媒中に0.01μm〜0.3μmの範囲内の粒径を有する粒子状に分散していることを特徴とするインクジェットプリンタ用インク(特許文献2)、
有機溶媒、顔料およびシリコーン系ポリマーを含むインクジェットプリンター用インクにおいて、前記シリコーン系ポリマーとして、0℃〜−50℃の範囲内のガラス転移温度を有するシリコーン系グラフトポリマーを使用するインクジェットプリンター用インク(特許文献3)、
顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤および溶媒からなり、該溶媒がグリコールエーテルの少なくとも1種とラクトン化合物および2−ピロリドンの少なくとも1種とからなるインクジェット印刷用インク組成物(特許文献4)、および
顔料、バインダー樹脂、顔料分散剤および溶媒からなり、該溶媒がグリコールエーテルアセテートの少なくとも1種とシクロヘキサノンおよびイソホロンの少なくとも1種とからなるインクジェット印刷用インク(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−044858
【特許文献2】特開2001−342388
【特許文献3】特開2002−338863
【特許文献4】特開2006−056990
【特許文献5】特開2006−056991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来のインクジェット用インクを使って印刷した場合、極微小のノズルに詰まりが生じ、不安定なインクの噴射となることから、好ましい品質の印刷物とならない場合もあった。
本発明は、このような状況下になされたものであって、ノズルの詰まりを解消し、印刷物の品質を向上させることができる印刷用インク組成物、および該印刷用インク組成物を用いて印刷した印刷物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の溶媒を印刷用インクに採用することによって、その目的を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、以下を要旨とするものである。
1.下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
2.(A1)顔料0.1〜40質量%又は(A2)染料0.1〜40質量%、(A1)顔料を含む場合には(B1)顔料分散剤0〜10質量%、(A2)染料を含む場合には(B2)染料分散剤を0〜10質量%、(C)バインダー樹脂0〜25質量%、および(D)溶媒60〜98質量%を含み、該(D)溶媒が下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化2】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
3.一般式(1)で表される化合物において、R1およびR2の少なくとも1つがメチル基である上記1または2に記載の印刷用インク組成物。
4.一般式(1)で表される化合物において、Aが酸素原子である上記1〜3のいずれかに記載の印刷用インク組成物。
5.(D)溶媒中に、一般式(1)で表される化合物を、0.5〜90質量%含む上記1〜4のいずれかに記載の印刷用インク組成物。
6.(A1)顔料または(A2)染料、および(D)溶媒を含む印刷用インク組成物であって、該(D)溶媒が下記一般式(1)で表される化合物の変性物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化3】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
7.(A1)顔料、(B1)顔料分散剤、(C)バインダー樹脂、および(D)溶媒を含むインクジェット印刷用インク組成物であって、該(D)溶媒が下記一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを含むことを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物。
【化4】

(R1、R2、およびR3は、炭素数が、それぞれ独立に、1〜8のアルキル基を表す。)
8.一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルにおいて、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基である上記7に記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
9.一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルが、メチル N,N−ジメチルカーバメート、エチル N,N−ジメチルカーバメート、またはエチル N,N−ジエチルカーバメートである上記7または8に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
10.(A1)顔料0.1〜15質量%、(B1)顔料分散剤0.1〜10質量%、(C)バインダー樹脂0.5〜15質量%、および(D)溶媒60〜98質量%を含む上記7〜9のいずれかに記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
11.(D)溶媒中に、一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを0.5〜90質量%含む上記7〜10のいずれかに記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
12.上記1〜11のいずれかに記載の印刷用インク組成物を用いて印刷した印刷物。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、ノズルの詰まりを解消し、印刷物の品質を向上させることができる印刷用インク組成物、および該印刷用インク組成物を用いて印刷した印刷物を提供することができる。この印刷用インク組成物においては、ノズルの詰まりを生じることがないので、印字品質に優れた印刷物が得られ、さらに適度な乾燥速度が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物である。
本発明の印刷用インク組成物の例として、インクジェット印刷用インク組成物、スクリーン印刷用インク組成物、グラビア印刷用インク組成物、オフセット印刷用インク組成物がある。本発明の印刷用インク組成物は、インクジェット印刷用インク組成物として用いることが好ましい。
ここで、下記一般式(1)で表される化合物を含むとは、下記一般式(1)で表される化合物が化学変化を起こさずに、印刷用インク組成物中に存在している場合を示す。また、当該場合の他、本発明は、下記一般式(1)で表される化合物の変性物を含む場合も包含する。一般式(1)で表される化合物の変性物とは、化合物自身の加水分解や、存在する他の化合物との反応等により、一般式(1)で表される化合物が、何からの化学反応を起こして変性したものを表す。
【化5】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
上記一般式(1)のR4が単結合であり、Aが酸素原子であることが好ましい。
また、本発明は、(A1)顔料又は(A2)染料、(A1)顔料を含む場合には(B1)顔料分散剤、(A2)染料を含む場合には(B2)染料分散剤、(C)バインダー樹脂、および(D)溶媒を含み、該(D)溶媒が上記一般式(1)で表される化合物を含む印刷用インク組成物であることが好ましい。
なお、本発明は、(A1)顔料、(B1)顔料分散剤、(C)バインダー樹脂、および(D)溶媒を含むインクジェット印刷用インク組成物であって、該(D)溶媒が下記一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを含むことを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物であることがさらに好ましい。
【化6】

(R1、R2、およびR3は炭素数が、それぞれ独立に、1〜8のアルキル基を表す。)
以下、1.(D)溶媒に含まれる一般式(1)で表される化合物、2.(D)溶媒に含まれる一般式(1)で表される化合物以外の溶剤、3.(A1)顔料、4.(A2)染料、5.(B1)顔料分散剤、6.(B2)染料分散剤、7.(C)バインダー樹脂、8.印刷用インク組成物の製造方法、9.他の添加剤、の順に、本発明の印刷用インク組成物を詳細に説明する。
【0008】
1.(D)溶媒に含まれる一般式(1)で表される化合物
【化7】

上記一般式(1)において、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基であり、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基などである。R1、およびR2は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1〜4であり、さらに好ましくは、メチル基である。またR1、およびR2は、どちらか一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることが最も好ましい。R3は、好ましくは炭素数1〜4である。R1、R2、およびR3 のいずれかの炭素数が9以上のアルキル基のときには、一般式(1)で表される化合物は、室温で固体となる場合があり、インク組成物の溶剤として用いることができなくなる。
4は単結合または−CH2−である。ここで、R4が単結合であるとは、一般式(1)が下記一般式(2)であることを意味する。
【化8】

Aは、酸素原子または硫黄原子である。好ましくは、Aは、酸素原子である。
4が単結合、Aが酸素原子の場合、具体的には次の化合物が挙げられる。
メチル N,N−ジメチルカーバメート、 エチル N,N−ジメチルカーバメート、プロピル N,N−ジメチルカーバメート、 ブチル N,N−ジメチルカーバメート、ペンチル N,N−ジメチルカーバメート、 ヘキシル N,N−ジメチルカーバメート、ヘプチル N,N−ジメチルカーバメート、 オクチル N,N−ジメチルカーバメート、メチル N,N−ジエチルカーバメート、エチル N,N−ジエチルカーバメート、 プロピル N,N−ジエチルカーバメート、 ブチルN,N−ジエチルカーバメート、 ペンチル N,N−ジエチルカーバメート、 ヘキシル N,N−ジエチルカーバメート、ヘプチル N,N−ジエチルカーバメート、および、オクチル N,N−ジエチルカーバメート。
上記のうち、とりわけメチル N,N−ジメチルカーバメート、エチル N,N−ジメチルカーバメートが、顔料の分散性、およびバインダー樹脂の溶解性に優れている理由で好ましい。
4が−CH2−、Aが酸素原子の場合、具体的には次の化合物が挙げられる。
メトキシN,N−ジメチル酢酸アミド、メトキシN,N−ジエチル酢酸アミド、メトキシN,N−ジプロピル酢酸アミド、メトキシN,N−ジブチル酢酸アミド、エトキシN,N−ジメチル酢酸アミド、エトキシN,N−ジエチル酢酸アミド、エトキシN,N−ジプロピル酢酸アミド、エトキシN,N−ジブチル酢酸アミド、プロピルオキシN,N−ジメチル酢酸アミド、プロピルオキシN,N−ジエチル酢酸アミド、プロピルオキシN,N−ジプロピル酢酸アミド、プロピルオキシN,N−ジブチル酢酸アミド、ブトキシN,N−ジメチル酢酸アミド、ブトキシN,N−ジエチル酢酸アミド、ブトキシN,N−ジプロピル酢酸アミド、ブトキシN,N−ジブチル酢酸アミド。
一般式(1)で表される化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
また、本発明のインクジェット印刷用インク組成物に用いられる該(D)溶媒は、下記一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを含むものである。
【化9】

上記一般式(I)において、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基であり、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基などである。R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。
このようなN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルとして、具体的には次の化合物が挙げられる。
メチル N,N−ジメチルカーバメート、 エチル N,N−ジメチルカーバメート、プロピル N,N−ジメチルカーバメート、 ブチル N,N−ジメチルカーバメート、ペンチル N,N−ジメチルカーバメート、 ヘキシル N,N−ジメチルカーバメート、ヘプチル N,N−ジメチルカーバメート、 オクチル N,N−ジメチルカーバメート、メチル N,N−ジエチルカーバメート、エチル N,N−ジエチルカーバメート、 プロピル N,N−ジエチルカーバメート、 ブチルN,N−ジエチルカーバメート、 ペンチル N,N−ジエチルカーバメート、 ヘキシル N,N−ジエチルカーバメート、ヘプチル N,N−ジエチルカーバメート、および、オクチル N,N−ジエチルカーバメート。
上記のうち、とりわけメチル N,N−ジメチルカーバメート、エチル N,N−ジメチルカーバメートが、顔料の分散性、およびバインダー樹脂の溶解性に優れている理由で好ましい。
1、R2、およびR3のいずれかの炭素数が9以上のアルキル基のときには、室温で固体となる場合があり、本発明の目的に適さなくなる。
このN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0009】
一般式(1)で表される化合物は、好ましくは以下の方法で製造することができる。
4が単結合、Aが酸素原子の場合には、ジアルキルカーボネートとジアルキルアミンを水の存在下で反応させて、N,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを製造し、反応後に水を除去する際に、常圧での沸点が90℃以下である、水との共沸溶媒を添加することにより得られる。ここで、アルキル基は炭素数が、それぞれ独立に、1〜8のアルキル基である。
前記の共沸溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、酢酸エチル、または酢酸メチルが挙げられる。
水の量は、反応系中で0.5〜70質量%程度とし、共沸溶媒の添加量は、除去する水の0.5〜20質量倍とするのが好ましい。
この方法によれば、通常、N,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルの収率が70%以上で、かつ水分量が100質量ppm以下のN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルが得られる。
なお、前記の製造方法においては、通常は触媒を使用しなくても反応は進むが、塩基性触媒を使用すると、反応生成物の収率が向上するので、使用してもよい。使用する塩基としては、一般式(II)
【化10】

で表されるビリジン誘導体を使用することが好ましい。
一般式(II)において、Xは、OHまたはSHを表し、特に2位または4位が置換されたピリジン誘導体が好ましい。
一般式(II)で表されるピリジン誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシピリジン、4−ヒドロキシピリジン、2−メルカプトピリジン、4−メルカプトピリジン等を挙げることができる。
これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒の使用量は適宜決定すればよいが、ジアルキルカーボネートとジアルキルアミンの合計量に対して、通常0.5〜20質量%程度、好ましくは1〜10質量%とする。
4が−CH2−、Aが酸素原子の場合には、アルコキシ酢酸メチルエステルとジアルキルアミンを塩基性触媒の存在下、室温〜70℃の温度で1時間〜20時間混合し、蒸留することにより、アルコキシN,N−ジアルキル酢酸アミドが得られる。なお、塩基性触媒の代わりに少量の水を使用することもできる。
Aが硫黄の場合には、ジアルキルカーボネートの代わりにジアルキルチオカーボネートを、またはアルコキシ酢酸メチルエステルの代わりにアルコキシチオ酢酸メチルエステルを使用すれば良い。反応条件は、上記記載の通りである。
【0010】
2.(D)溶媒に含まれる一般式(1)で表される化合物以外の溶剤
上記の製造方法で得られた一般式(I)で表される化合物は、他の有機溶媒と混合して使用される。
ここで使用される他の有機溶媒としては、印刷する対象の基材により、水を含む場合と含まない場合があり、その目的により使用することができるが、いずれにしても、以下に例示する溶剤を使用して配合することが出来る。
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−トリエチレングリコール、ヘキサントリオール、チオジグリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールエーテルアセテート類、および、プロピレングリコールエーテルアセテート類。
上記のうち、とりわけポリアルキレングリコール類およびエチレングリコールエーテルアセテート類が、腐食性が無く溶解性に優れると言う理由で好ましい。
これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
一般式(1)で表される化合物は、水系および非水系のいずれにおいてもノズルの詰まりを防止する効果を有している。
印刷用インク組成物中における(D)溶媒の配合量は、前記印刷用インク組成物の粘度、表面張力を考慮して決められるが、通常は、前記印刷用インク組成物の60〜98質量%、好ましくは80〜95%である。
この配合量が60質量%以上であれば、ノズルの詰まりに対する高い防止効果を有し、98質量%以下であれば、印刷用インク組成物の他の薬剤の添加も行うことができる。
(D)溶媒中における前記一般式(1)で表される化合物の配合量は、通常、0.5〜90質量%、好ましくは5〜80質量%である。
この配合量が0.5質量%以上であれば、ノズルの詰まりに対する高い防止効果を有し、90質量%以下であれば、印刷用インク組成物の他の薬剤の添加も行うことができる。
【0011】
3.(A1)顔料
本発明の印刷用インク組成物に使用される(A1)顔料としては、有機顔料、無機顔料、有機/無機複合顔料、またはこれらの混合物が挙げられる。具体的には、以下の顔料が例示される。
有機顔料:アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、C.I.ピグメントイエロー12、同イエロー13、同イエロー17、同イエロー81、同イエロー81、同イエロー83、同オレンジ16等のジスアゾ系顔料;C.I.ピグメントイエロー93、同イエロー95、同イエロー128、同レッド144、同レッド144、同レッド166、同レッド220、同レッド221等の縮合アゾ系顔料、C.I.ピグメントイエロー1、同イエロー65、同イエロー73、同イエロー74、同イエロー116、同レッド3、同レッド48:1、同レッド48:2、同レッド48:3、同レッド53:1、同レッド57:1、同レッド115等のモノアゾ系顔料、ジアゾ系顔料、ヘテロサイクリックイエロー、ピランスロン、C.I.ピグメントレッド122、同レッド202、同レッド207、同レッド209、同バイオレット19等のキナクリドン顔料、C.I.ピグメントオレンジ48、同オレンジ49等のキナクリドンキノン系顔料;C.I.ピグメントバイオレット23、同バイオレット37等のジオキサジン顔料、インジゴ、C.I.ピグメントレッド88、同レッド181、同ブラウン27等のチオインジゴ顔料、C.I.ピグメントイエロー196、同オレンジ43等のペリノン顔料、C.I.ピグメントブルー15、同ブルー15:1、同ブルー15:2、同ブルー15:3、同ブルー15:4、同ブルー15:6、同ブルー16、同ブルー68、同グリーン7、同グリーン36等のフタロシアニン系顔料;C.I.ピグメントイエロー108等のアントラピリミジン系顔料;C.I.ピグメントオレンジ77、同レッド168等のアンサンスロン系顔料;C.I.ピグメントブルー60等のインダンスロン系顔料;C.I.ピグメントイエロー24等のフラバンスロン系顔料;C.I.ピグメントイエロー196、同レッド177等のアントラキノン系顔料;C.I.ピグメントレッド123、同レッド149、同レッド178、同レッド179、同レッド190、同レッド224等のペリレン顔料、C.I.ピグメントイエロー138等のキノフタロン系顔料;C.I.ピグメントオレンジ71、同オレンジ73、同レッド254、同レッド255、同レッド264、同レッド272等のジケトピロロピロール系顔料、ピグメントイエロー139、同イエロー185、同オレンジ69、同レッド260等のイソインドリン系顔料;C.I.ピグメントイエロー109、同イエロー110、同イエロー173等のイソインドリノン系顔料;C.I.ピグメントイエロー101、同イエロー129、同オレンジ65等のアゾメチン系顔料;C.I.ピグメントイエロー151、同イエロー154、同イエロー175、同イエロー180、同イエロー181、同オレンジ36、同レッド175、同レッド176、同レッド185等のベンズイミダゾロン系顔料、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、変性されたカーボンブラック、および酸化物カーボンブラック等のカーボンブラック。
上記のうち、とりわけキナクリドン顔料およびカーボンブラックが、耐光性が優れている為に好ましい。
【0012】
無機顔料:酸化チタン、群青、黄鉛、亜鉛華、酸化亜鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、シリカ、アルミナ、ベンガラ、モリブデンレッド、クロムバーミリオン、モリブデートオレンジ、クロムイエロー、カドミウムイエロー、酸化クロム、コバルトグリーン、チタンコバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、群青、ウルトラマリンブルー、紺青、セルリアンブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、マイカ、およびその他金属粉末。
上記のうち、とりわけ炭酸カルシウム、酸化鉄、酸化アルミ、および二酸化ケイ素等が毒性が少ないと言う理由で好ましい。
上記顔料は粉末状、顆粒状、あるいは塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
これらの顔料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0013】
インクジェットプリンターの典型的なノズル開口部の直径は10〜60μm程度である。
従って顔料粒径は、直径が0.02〜0.3μmであることが好ましい。
本発明の印刷用インク組成物中における(A1)顔料の配合量は、使用する顔料の種類等により任意に決定できる。好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜40質量%であり、さらに好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜15質量%であり、最も好ましくは、印刷用インク組成物の0.5〜10質量%である。
この配合量が0.1〜40質量%であれば、印刷物の発色の不具合等を軽減することができる。
【0014】
4.(A2)染料
本発明の印刷用インク組成物は、(A1)顔料に変えて、(A2)染料を含んでいてもよい。(A2)染料としては、イエロー染料、マゼンタ染料、シアン染料が挙げられる。
イエロー染料としては、ヘテリルアゾ染料、アゾメチン染料、ベンジリデン染料およびモノメチンオキソノール染料等のようなメチン染料、ナフトキノン染料およびアントラキノン染料等のキノン系染料、キノフタロン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、アクリジン染料、アクリジノン染料等を挙げられる。
マゼンタ染料としては、ヘテリルアゾ染料、例えば、カップリング成分としてピラゾロン類、ピラゾロトリアゾール類を有するアゾメチン染料、例えばアリーリデン染料、スチリル染料、メロシアニン染料、オキソノール染料のようなメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料、例えばナフトキノン、アントラキノン、アントラピリドンなどのキノン系染料、例えばジオキサジン染料などのような縮合多環系染料等を挙げられる。
シアン染料としては、例えば、インドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料、シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料、アントラキノン染料、例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類、ピロロピリミジン−オン、ピロロトリアジン−オン誘導体を有するアリール若しくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げられる。
商品化されている染料の例としてオリエント化学工業社製 Valifast Yellow4120、Valifast Yellow3150、Valifast Yellow3108、Valifast Yellow 2310N、Valifast Yellow1101、Valifast Red 3320、Valifast Red 3340、Valifast Red 1306、Valifast Blue 2610 、Valifast Blue 2606、Valifast Blue 1603、Valifast Blue 2606、Oil Yellow GG−S、Oil Yellow 3G、Oil Yellow 129、Oil Yellow 107等が挙げられる。
染料の配合量は、使用する染料の種類等により任意に決定できる。好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜40質量%であり、さらに好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜15質量%であり、最も好ましくは、印刷用インク組成物の0.5〜10質量%である。
この配合量が0.1〜40質量%であれば、印刷物の発色の不具合等を軽減することができる。
【0015】
5.(B1)顔料分散剤
本願発明の印刷用インク組成物は、顔料を含む場合には、顔料の分散性を向上させるために、必要に応じて、顔料分散剤をさらに含んでいてもよい。
本発明の印刷用インク組成物に使用する顔料分散剤は、通常印刷用インク組成物に使用されるものであればいかなるものでも良い。
具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ポリエステルポリアミド樹脂、および水溶性ポリウレタンが挙げられる。
上記のうち、とりわけスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体が、顔料分散効果が大きいため好ましい。
これらの顔料分散剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合わせて用いてもよい。
上記顔料分散剤の数平均分子量は、好ましくは2000〜15000、さらに好ましくは3000〜13000である。
この数平均分子量が2000以上であれば、優れた顔料分散性が発揮される。また、この数平均分子量が15000以下であれば、顔料分散剤自体の印刷用インク組成物への分散性がより優れる。
本発明の印刷用インク組成物中における(B1)顔料分散剤の配合量は、好ましくは印刷用インク組成物の10質量%以下であり、より好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜10質量%であり、最も好ましくは印刷用インク組成物の0.5〜5質量%である。
この配合量が10質量%以下であれば、印刷用インク組成物の粘度が大きくなりすぎるという不具合が軽減される。また、この配合量が0.1質量%以上であれば、より優れた顔料分散性が発揮されるため好ましい。
【0016】
6.(B2)染料分散剤
本発明の印刷用インク組成物は、染料を含む場合には、染料の分散性を向上させるために、必要に応じて、(B2)染料分散剤をさらに含んでいてもよい。(B2)染料分散剤として、界面活性剤が用いられ、通常使用される界面活性剤であれば、何れのアニオン、カチオン、ノニオン、両性等いずれの物を使用してもかまわない。
アニオン界面活性剤の具体例としては、硫酸アルキル塩、硫酸アルキルポリオキシエチレン塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩が挙げられる。
カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩およびアルキルベンジルジメチルアンモニウム塩が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アミノ酸型両性界面活性剤、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤およびイミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチルンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸ジエタノールアミドおよびアルキルジメチルアミンオキシドが挙げられる。
本発明の印刷用インク組成物中における(B2)染料分散剤の配合量は、好ましくは印刷用インク組成物の10質量%以下であり、さらに好ましくは、印刷用インク組成物の0.1〜10質量%であり、最も好ましくは、印刷用インク組成物の0.5〜5質量%である。
この配合量が10質量%以下であれば、印刷用インク組成物の粘度が大きくなりすぎるという不具合が軽減される。また、この配合量が0.1質量%以上であれば、より優れた染料分散性が発揮されるため好ましい。
【0017】
7.(C)バインダー樹脂
本発明の印刷用インク組成物は、バインダー効果を発揮させるために、必要に応じて、(C)バインダー樹脂をさらに含んでいてもよい。
本発明の印刷用インク組成物に使用されるバインダー樹脂は、通常の印刷用インク組成物に使用されているバインダー樹脂であれば、何れのものでも配合可能である。
具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸共重合体、塩化ビニル−マレイン酸共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等のアミノ樹脂、ポリアミド樹脂、セルローズジアセテート、セルローストリアセテート、ニトロセルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、等のセルロースエステル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリチルセルロース、シアンエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース等のセルロースエーテル樹脂、および酢酸ビニル共重合樹脂等を挙げることができる。
本発明に使用される前記バインダー樹脂の数平均分子量は、好ましくは5000〜30000、さらに好ましくは、8000〜26000である。
この数平均分子量が5000以上であれば、優れたバインダー効果が発揮される。一方、30000以下であれば、バインダー樹脂がノズルの詰まりの原因となる可能性を軽減することができる。
このバインダーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
本発明の印刷用インク組成物中における(C)バインダー樹脂の配合量は、好ましくは印刷用インク組成物の25質量%以下であり、より好ましくは印刷用インク組成物の0.5〜25質量%である。
この配合量が25質量%以下であれば、バインダー樹脂がノズルの詰まりの原因となる可能性が軽減できる。また、この配合量が0.5質量%以上であれば、より優れたバインダー効果の発揮が期待できるため好ましい。
バインダー樹脂が非水系の場合、さらに好ましくは印刷用インク組成物の0.5〜15質量%であり、最も好ましくは印刷用インク組成物の1〜10質量%である。
【0018】
8.印刷用インク組成物の製造方法
本発明においては、印刷用インク組成物の粘度が、1〜100mPa・s(20℃)程度、好ましくは2〜20mPa・s(20℃)、表面張力が2×10-2〜6×10-2mN/m程度、および比重が0.8〜1.2程度となるように、前記成分(A)〜(D)を適切に配合する。
前記印刷用インク組成物の混合方法としては、公知の混合方法を採用することができ、例えば、ロールミル、ボールミル、遠心ミル、遊星ボールミル等の容器駆動媒体ミル、サンドミル等の高速回転ミル、および撹拌槽型ミル等の媒体撹拌ミル等が挙げられる。
これらの方法により、均一な印刷用インク組成物となるまで混合する。
【0019】
9.他の添加剤
本発明の印刷用インク組成物は、必要により、他の添加剤、例えば保湿剤、消泡剤、界面活性剤、電導度調節剤、防腐剤を添加することができる。
本発明の印刷用インク組成物に使用される保湿剤としては、多価アルコール類を使用することができる。具体的には、例えば、ソルビトール、グリセリン、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、6−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ペンタエリスリトール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1−ブタノール、2,5−ヘキサンジオール,エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール等の水溶性多価アルコールが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いてもよい。これらの中でも、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、およびグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ソルビトールが最も好ましい。
【0020】
消泡剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸系、アルキル硫酸エステル系、脂肪酸塩系、4級アンモニウム塩系等のカチオン界面活性剤、アルキルベタイン、アミンオキサイド等の両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリメチルシロキサン共重合体等の有機シリコーン系非イオン性界面活性剤等が挙げられる。これらの中で好ましい消泡剤としては、ソルビタン酸エステル系等の脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびシリコーンオイル等が挙げられる。
電導度調整剤としては、たとえば、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、硝酸リチウム、テトラブチルアンモニウム臭化物や塩化物等の第4級アンモニウム塩、およびアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0021】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。これらの中で好ましい界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤である。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ソーダせっけん、オレイン酸カリせっけん、半硬化牛脂脂肪酸ソーダせっけん等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、高級アルコール硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキル燐酸カリウム等のアルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等のアルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、およびナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩、およびラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、およびステアリルベタイン等のアルキルベタイン等が挙げられる。
【0022】
防腐剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系防腐剤、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系防腐剤、2−ピリジンチオールナトリウム−1−オキシド、8−オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤、2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、およびサリチル酸等を挙げることができる。
【0023】
以上に説明した通り、本発明の印刷用インク組成物は、ノズルの詰まりを解消し、印刷物の品質を向上させることができる。また、この印刷用インク組成物を用いることによって、印字品質に優れた印刷物が得られ、さらに適度な乾燥速度が得られる等、優れた特性を有する。
【実施例】
【0024】
以下に、さらに実施例および比較例を掲げて、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。
第1表に示す各成分をそれぞれ所定の量(質量部)を計量し、サンドミルで5時間練り合わせることにより、実施例1〜16、および比較例1〜3欄記載のインク組成物を調製した。
各印刷用インク組成物の分散安定性、前記印刷用インク組成物をプリンターで使用したときのノズル詰まり、および印字の剥がれ具合を示すティシュ摩擦耐性を評価し、結果を第1表に示した。なお、使用した一般式(1)で表される化合物の製造方法、成分(A)〜(C)、および用いた各種試験方法は以下の通りである。
【0025】
使用したN,N−ジメチルカルバミン酸メチルの製造方法
冷却器、ディーンスタルクトラップ、攪拌装置、および温度計を備えた500mlのフラスコに、ジメチルカーボネート90g、ジメチルアミン68gを含む水溶液136ml(反応系中の水分量:30.1質量%)、および2−ヒドロキシピリジン4.75g(ジメチルカーボネートの5モル%)を入れ、室温で3時間攪拌した。オイルバスで95℃に加熱し、未反応のジメチルアミン、および副生したメタノールを留出させ、回収した。
次に、ヘキサン120mlを加え、ディーンスタルクトラップにより水を分離回収した。水の留出が無くなったところでさらに30分加熱を続けた。その後、蒸留装置により蒸留を行い、130℃から132℃の留分を回収した。
なお、他の一般式(1)で表された化合物についても、前記のジメチルカーボネートやジメチルアミンに替えて、ジエチルカーボネートやジエチルアミン、メトキシ酢酸メチルエステルやジメチルアミンを使用して、上記と同様の方法で、それぞれ対応する一般式(1)で表された化合物を製造した。
【0026】
使用した成分(A)〜(C)
(A1):カーボンブラック M100 (三菱化学社製カーボンブラック)
(B1):スチレン−アクリル酸共重合体 (Johnson 社製 Johncryl(商
標)、数平均分子量8300)
(C−1):塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 (Dow社製 UCAR(商標)、数平均
分子量22000)
(C−2):アクリル系エマルジョン (ローム&ハース社製アクリル系エマルジョン
Acryjet(商標)、数平均分子量5700)
【0027】
印刷用インク組成物の粘度の測定方法
印刷用インク組成物の粘度は、20℃の環境下において、B型粘度計を用いて測定した。なお、表1には、調整直後の印刷用インク組成物の粘度を示した。
印刷用インク組成物の分散安定性の評価方法
印刷用インク組成物の調製直後、および印刷用インク組成物をオーブン中、常圧、かつ空気存在下60℃で1ヶ月間保存した後の印刷用インク組成物の粘度を、B型粘度計を用いて20℃で測定し、以下の基準に従って評価した。
◎:60℃で1ヶ月保存後の粘度の変化が±5%以内
○:60℃で1ヶ月保存後の粘度の変化が5%超10%以内
×:60℃で1ヶ月保存後の粘度の変化が10%超
【0028】
印刷用インク組成物によるノズル詰まりの評価方法
調製したインクを、エプソン社製インクジェットプリンターを使って印刷し、印字状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
◎:所定の位置に鮮明に印字できている。
○:所定の位置に印字できているが、一部分鮮明度が不十分である。
×:ノズルの詰まりが発生して欠損を生じ、所定の位置に印字できていない部分があ
る。
【0029】
ティシュ摩擦耐性の評価方法
硬化したインクにティシュを押し付けてこすることにより、剥がれ具合を観察し、以下の基準でインクの付着性を評価した。
◎:10回以上こすっても剥がれない。
○:5から9回で剥がれる。
×:4回以下で剥がれる。
【0030】
第1表から、(D)溶媒として、本発明に使用される一般式(1)で表される化合物を使用しない比較例1,2、および3では、分散安定性、ノズル詰まり、およびティシュ耐摩擦性のいずれも、本発明のインク組成物に比較して劣っていることが明らかである。とりわけ、(D)溶媒として、メチル N,N−ジメチルカーバメート、およびエチル N,N−ジメチルカーバメートを使用すると、分散安定性、ノズル詰まり、およびティシュ耐摩擦性のいずれにおいても優れた性能を発揮することが分かる。
【0031】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の印刷用インク組成物は、ノズルの詰まりを解消し、印刷物の品質を向上させることができるので、家庭用、業務用問わず、各種の印刷用インクとして広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化1】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
【請求項2】
(A1)顔料0.1〜40質量%又は(A2)染料0.1〜40質量%、(A1)顔料を含む場合には(B1)顔料分散剤0〜10質量%、(A2)染料を含む場合には(B2)染料分散剤を0〜10質量%、(C)バインダー樹脂0〜25質量%、および(D)溶媒60〜98質量%を含み、該(D)溶媒が下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化2】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物において、R1およびR2の少なくとも1つがメチル基である請求項1または2に記載の印刷用インク組成物。
【請求項4】
一般式(1)で表される化合物において、Aが酸素原子である請求項1〜3のいずれかに記載の印刷用インク組成物。
【請求項5】
(D)溶媒中に、一般式(1)で表される化合物を、0.5〜90質量%含む請求項1〜4のいずれかに記載の印刷用インク組成物。
【請求項6】
(A1)顔料または(A2)染料、および(D)溶媒を含む印刷用インク組成物であって、該(D)溶媒が下記一般式(1)で表される化合物の変性物を含むことを特徴とする印刷用インク組成物。
【化3】

(一般式(1)中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、R1、R2およびR3は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。R4は単結合または−CH2−である。Aは、酸素原子または硫黄原子である。)
【請求項7】
(A1)顔料、(B1)顔料分散剤、(C)バインダー樹脂、および(D)溶媒を含むインクジェット印刷用インク組成物であって、該(D)溶媒が下記一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを含むことを特徴とするインクジェット印刷用インク組成物。
【化4】

(R1、R2、およびR3は、炭素数が、それぞれ独立に、1〜8のアルキル基を表す。)
【請求項8】
一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルにおいて、R1、R2、およびR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル基である請求項7に記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
【請求項9】
一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルが、メチル N,N−ジメチルカーバメート、エチル N,N−ジメチルカーバメート、またはエチル N,N−ジエチルカーバメートである請求項7または8に記載のインクジェット印刷用インク組成物。
【請求項10】
(A1)顔料0.1〜15質量%、(B1)顔料分散剤0.1〜10質量%、(C)バインダー樹脂0.5〜15質量%、および(D)溶媒60〜98質量%を含む請求項7〜9のいずれかに記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
【請求項11】
(D)溶媒中に、一般式(I)で表されるN,N−ジアルキルカルバミン酸アルキルを0.5〜90質量%含む請求項7〜10のいずれかに記載のインクジェット用印刷用インク組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の印刷用インク組成物を用いて印刷した印刷物。

【公開番号】特開2010−222561(P2010−222561A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273610(P2009−273610)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】