説明

印刷用塗工紙

【課題】本発明は、原紙被覆性、印刷面感に優れ、且つ良好な塗工適性を有した印刷用塗工紙に関するものである。
【解決手段】原紙の上に、少なくとも顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けた印刷用塗工紙において、該塗工層の最下層中に顔料成分として、平均粒子径0.5〜3μmの中空樹脂粒子、および粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上のカオリンの少なくとも2種を含有し、かつ該中空樹脂粒子の含有量が該最下層中の全顔料の10〜30質量%であり、更に該最下層中に接着剤としてポリビニルアルコールを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷用塗工紙に関するものであり、更に詳しくは2層以上の塗工層からなり、その最下層に中空樹脂粒子と微粒カオリン及びポリビニルアルコール(PVA)を用いることにより、原紙被覆性、印刷面感に優れ、塗工適性が良好な印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術の発達およびユーザーのより一層の高級化指向に伴い、印刷用塗工紙に対し種々の特性が要求されるようになっている。例えば白色度が高いこと、印刷光沢が高いことのほかに、印刷物の面感すなわち視覚で判断される表面特性が優れていることが求められている。
【0003】
具体的には、原紙被覆性が良好で、印刷面にガサツキ感やボコツキ感、そして光沢ムラが認められない場合に面感(以下、印刷面感と称する)が優れていると言える。このような優れた印刷面感を得るためには、原紙が塗工層によって確実にしかもムラ無く被覆されている必要があり、そのためには塗工紙が高い平滑性を有していることが好ましく、更には塗工前原紙の平滑性が重要な因子となる。
【0004】
それらの要求に対しては、原紙の地合を良くして原紙表面の平滑性を向上させる方法、カレンダー処理を強化する方法、塗工液の配合及び塗工量で対処する方法が一般的であり、最近では原紙上に塗工液を複層に設けることによって塗工層面を平滑化する方法等もなされている。
【0005】
地合の改良によって平滑性を改善させることには限界があり、一方、原紙の平滑性を向上させる点でマシンカレンダーの強化は有効であるが、原紙表面の微細な凹凸までは十分に解消できない。また、塗工後に対処する場合、カレンダー処理を強化すると不透明度及び剛直度の低下を引き起こすことになる。
【0006】
そして、塗工液配合を工夫する方法では、例えば下塗り層と上塗り層の2層を有する印刷用塗工紙の上塗り液に特定のガラス転移点を持つアルカリ増粘型共重合体ラテックスを含有させ、嵩高な塗工層構造を形成して原紙被覆性を向上させる手法が提案されているが、上塗り層の接着剤の対処だけでは、根本的な原紙被覆性の改良には不十分である(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、塗工層を2層とし、その下塗り層に通常の無機顔料より比重の小さいプラスチックピグメントを一定量含有させ嵩高な塗工層として原紙被覆性を改善する手法が採られているが、プラスチックピグメント以外に使用する顔料に規定がなく、該プラスチックピグメントの配合量による原紙被覆性能としては不十分である(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
一方、塗工量を多くして原紙被覆性を向上させる方法としては、例えばフィルムトランスファー塗工方式を用いて、塗工液にポリビニルアルコールを助剤として添加し、塗工液の転写性を改善する手法が知られている。しかし、ポリビニルアルコールの添加量が少なく、アプリケーションロール上での塗工液膜の保水性が十分得られないため、塗工適性(操業性)が不十分である(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
以上のことにより、原紙被覆性が良好で印刷面感に優れ、且つ塗工適性の良好な印刷用塗工紙及びその製造方法の開発が望まれてきた。
【特許文献1】特開2001−073295号公報
【特許文献2】特開2003−306892号公報
【特許文献3】特開2004−300595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、原紙被覆性が良好で、印刷物にガサツキ感、ボコツキ感、更に光沢ムラのない優れた印刷面感を有し、且つ塗工適性の良好な印刷用塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記の如き現状から鋭意研究を重ねた結果、顕著に効果が確認された印刷用塗工紙を見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明における印刷用塗工紙は、原紙上に、少なくとも顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けた印刷用塗工紙において、該塗工層の最下層中に顔料成分として、平均粒子径0.5〜3μmの中空樹脂粒子、および粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上のカオリンの少なくとも2種を含有し、かつ該中空樹脂粒子の含有量が該最下層中の全顔料の10〜30質量%であり、更に該最下層中に接着剤としてPVAを含有することを特徴とする印刷用塗工紙である。
【0013】
上記発明において、PVAの重合度が500〜1000であることを特徴とする印刷用塗工紙である。
【0014】
また、上記発明において中空樹脂粒子の含有量が最下層中の全顔料の16〜30質量%であることを特徴とする印刷用塗工紙である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、原紙被覆性が良好で、印刷物にガサツキ感、ボコツキ感、そして光沢ムラのない優れた印刷面感を有し、且つ塗工適性の良好な印刷用塗工紙を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の印刷用塗工紙について、詳細に説明する。
【0017】
本発明の印刷用塗工紙は、塗工層の最下層に使用する顔料として中空樹脂粒子と微粒カオリンを使用することにより原紙被覆性と印刷面感が向上し、更にはPVAを使用することにより塗工適性を満足して、操業性の低下がなく効率よく生産できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0018】
通常、塗工紙の原紙としては、地合や平滑度の優れた原紙に塗工液を塗工することで面感の良い塗工紙が得られると考えられているが、これらをコントロールすることは抄紙機やカレンダーの性能によるところが大きく、容易ではない。そのため、原紙に下塗り層を設けることによって原紙の凹凸を十分に被覆し、次いで上塗り層を設けることにより、原紙に直接上塗り用塗工液を塗工するよりも優れた原紙被覆性が得られる。しかしながら、多くの場合下塗り層の塗工量に制限があり、下塗り層の塗工だけで被覆性を向上させるには、塗工液配合に工夫が必要である。
【0019】
具体的には、塗工層の最下層において全顔料固形分のうち10〜30質量%を中空樹脂粒子で配合し、併せて粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上の微粒カオリンを配合することにより、原紙表面の凹凸を有効に被覆する作用が増加し、均一な塗工面が構成される。
【0020】
上記の顔料組成物において、良好な原紙被覆性および高い印刷面感が得られる理由は必ずしも明確ではないが、球状の中空樹脂粒子と六角板状結晶のカオリンが嵩高な塗層構造を形成し、十分な被覆性が得られているものと考えられる。この場合、カオリンの粒径分布としては、小粒径のものが多いものが好ましく、大粒径のものが多く分布する場合には中空樹脂粒子の存在によりカオリンの配向が大きく乱れるため、均一な被覆性が得られにくいものと思われる。
【0021】
なお、本発明に用いる中空樹脂粒子の平均粒子径は0.5〜3μmであり、1〜3μmが更に好ましい。中空樹脂粒子の平均粒子径がこの範囲であれば、原紙被覆性、塗工層の均一性、およびモトリング等の印刷品質が良好となる。
【0022】
また、原紙被覆性向上のため嵩高な塗工層を得るために中空樹脂粒子を用いるが、中空樹脂粒子の中空率が30%以上になることで、本発明の特徴である印刷用塗工紙の原紙被覆性は著しく向上する。
【0023】
中空樹脂粒子の組成は、スチレンを主としたポリマーであり、アクリル、ブタジエンなどのモノマーを含む共重合体であっても良い。また、中空樹脂粒子は、代表的にはアルカリ/酸二段階処理法などの製造方法により得られる。また、中空樹脂粒子のガラス転移点(Tg)は、熱や圧力による変形が過度にならないために、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは60℃以上が必要である。
【0024】
塗工層の最下層に用いる顔料は、前記中空樹脂粒子と共に、粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上の微粒カオリンを用いる。該粒子含有率が95質量%に満たないもの、いわゆる大粒径のカオリンを多く占めるものは、中空樹脂粒子と共存する塗層において配向が大きく乱れた構造となり、均一な被覆がなされない。
【0025】
また、カオリンの使用は、その六角板状の特徴である高い平滑性を備えているため本発明の目的には重要であり、カオリン以外の顔料の使用では所望の原紙被覆性を得ることは困難である。
【0026】
前記カオリンとして本発明の粒度分布を満足するカオリンを選択して使用すればよく、一般に市販されている微粒カオリンが使用できる。
【0027】
塗工層の最下層に用いる顔料は前記中空樹脂粒子と前記カオリンを混合して調製する。この際、中空樹脂粒子の割合を、最下層中の全顔料のうち10〜30質量%、好ましくは16〜30質量%とする。中空樹脂粒子が10質量%未満であると原紙被覆性の向上を図ることが出来ず、一方、中空樹脂粒子が30質量%を上回ると塗工液濃度の低下による乾燥負荷が増大したり、塗工層表面に凹凸が生じるなどの悪影響が出てくる。なお、本発明において、本発明の効果を妨げない範囲で、塗工層の最下層中に前記中空樹脂粒子と前記カオリン以外に、炭酸カルシウム等の塗工紙関係で従来公知の他の顔料を併用してもよい。
【0028】
本発明において、塗工層の最下層には、接着剤の一部としてポリビニルアルコール(PVA)を使用することが塗工適性向上のため好ましい。本発明の場合、中空樹脂粒子のように極端に比重の小さな顔料や微粒カオリンのように高度に細かいグレードの顔料を用いると、塗工液自体の保水性が不十分となり、高せん断速度の粘性が急激に上昇するため、例えばフィルムトランスファー方式の塗工ではガムアップ(ロール径、周速が異なるロール間にかかるせん断力によって塗工液が固まってロール表面に付着する現象)や、剥離パターン(アプリケーションロールニップ出口で紙離れが安定せず、紙表面に一定のパターン状の面ムラを生じる現象)等の問題が起こるようになる。同様に、ブレードコーターによる塗工では、スタラグマイト(ブレード先端に高濃度、あるいは半固化した塗工液が堆積する現象)等の操業性に問題が起こり、更にはストリークやスクラッチの原因となって良好な塗工面を形成できなくなる。以上の問題は、特に高速塗工になるほど顕著である。
【0029】
これらの問題は、塗工液濃度や粘度を低下させることによって低減できることが知られているが、このような処置は下塗り塗工液の原紙へのしみ込みが多くなるため、塗工量のコントロールが難しくなると同時に、原紙被覆性も低下し上塗り後の面感が悪化してしまうという品質上の問題が起こる。
【0030】
上記の問題を解決するためには、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、合成保水性改良剤、増粘剤等の助剤を配合して塗工液に保水性を付与する方法、同様な意味で接着剤として澱粉を配合する方法があるが、いずれも本発明が目的とする塗工紙品質と塗工操業性の両立は困難であり、接着剤としてポリビニルアルコールを使用するのが有効である。
【0031】
本発明にかかるポリビニルアルコール(PVA)としては、完全ケン化PVA、部分ケン化PVAの他、カルボキシル基変性PVA、スルホン基変性PVA、シリコーン変性PVA等の公知の変性PVAが使用できる。これらのポリビニルアルコールのうちでも、重合度が1000以下、好ましくは500〜1000の範囲にある完全ケン化PVAの使用が望ましい。この範囲の重合度のPVAを使用することで塗工時の塗工操業性に影響の大きな機械的安定性や塗工液の皮膜形成性に優れた塗工液が容易に得られる。また、塗工液の粘度バランスを考慮すると最も好ましいPVAの配合量は顔料100質量部当たり2〜8質量部である。
【0032】
塗工層の最下層に用いる接着剤は、本発明で使用するPVA以外に、本発明の効果を妨げない限りスチレン−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単体量で変性したアルカリ感応性あるいはアルカリ非感応性の重合体ラテックス等の共重合体ラテックス、メラミン樹脂等の合成樹脂系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤の一種以上を適宜選択して併用しても構わない。これらPVA以外の接着剤を使用する場合は顔料100質量部当たり30質量部以下、より好ましくは10〜20質量部の範囲で使用される。30質量部を超えると、印刷用塗工紙同士の密着性が過度になり、ブロッキング、貼り付きなどのトラブルを生じる場合があって好ましくない。
【0033】
また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、滑剤、着色剤、蛍光剤等、通常の塗工紙用顔料に配合される各種助剤を適宜使用しても良い。本発明にかかる塗工液の固形分濃度は、45〜62質量%に調整することが好ましい。
【0034】
塗工層の最下層の塗工量は、乾燥後の重量として、片面につき通常4〜20g/m2、好ましくは6〜10g/m2である。
【0035】
本発明に用いられる原紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、TGW、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプの他に、ケナフやバガスなどの非木材パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0036】
使用される抄紙機としては、長網方式、円網方式、ツインワイヤー方式、ハイブリッド方式、ギャップフォーマー型、ロールフォーマー型など各種形式の抄紙機を用いて抄造することができる。
【0037】
本発明の原紙においては、ノーサイズプレス原紙、澱紛、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙(ただし本発明においてサイズプレス層は塗工層に含めない)などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得るために各種カレンダー処理を施す場合も有る。
【0038】
本発明による最下層および最上層を含めた各塗工層を塗工する方法は特に限定されるものではなく、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種メタードフィルムトランスファー、エアーナイフ、ロッド、ブレード、ダイレクトファウンテンなどの通常の各種塗工装置を用い、2層以上塗工する。各層塗工する毎に、あるいは2層以上塗工した後、塗工紙は乾燥される。かくして塗工、乾燥された塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。カレンダー処理する際の装置は特に限定されるものではなく、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の各種カレンダー装置により処理される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性評価値は次の方法によって得られたものである。
【0040】
[印刷面感]
オフセット枚葉印刷機を用い、藍色のハーフトーン印刷を施した後、インキ着肉の均一性を目視評価した。また、藍色、紅色、黄色、墨色の重色ベタ印刷を施した後、印刷光沢の均一感とガサツキ感を目視評価した。これらの3つの目視評価の合計を10段階評価で表した。ただし本発明においては○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好) :9〜10点
○(良好) :6〜8点
△(普通) :3〜5点
×(不良) :1〜2点
【0041】
[原紙被覆性]
塗工紙を、水:エチルアルコール:塩化アンモニウム=50:50:5(質量比)の水溶液に1時間浸した後、オーブンで150℃で3時間加熱した。褐色に焼けた原紙上の顔料の分布状態を観察し、塗工層の原紙被覆性を10段階評価で表した。原紙が塗工層によってムラなく被覆されているものを良好とし、原紙が被覆されていない部分が広く見られているものを不良とした。ただし本発明においては○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好) :9〜10点
○(良好) :6〜8点
△(普通) :3〜5点
×(不良) :1〜2点
【0042】
[塗工適性]
最下層塗工液を塗工したときの塗工適性について10段階評価で目視評価を行った。フィルムトランスファーコーターにおいてはガムアップや剥離パターンのないもの、ブレードコーターにおいてはスタラグマイト、ブリーディング、ストリークのないものを塗工適正が良好と判断した。ただし本発明においては○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好) :9〜10点
○(良好) :6〜8点
△(普通) :3〜5点
×(不良) :1〜2点
なお、実施例中の部および%は、特に指定のない限り、すべて質量部および質量%を示す。
【0043】
<最上層塗工液(上塗り液)配合>
・カオリン(DBプライム、Imerys社製) 70部
・湿式重質炭酸カルシウム(FMT−90、ファイマテック社製) 30部
・市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
・市販燐酸エステル化澱粉 5部
・市販スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス 15部
・市販ステアリン酸カルシウム 0.3部
・水酸化ナトリウム 0.15部
・塗工液固形分濃度 63質量%
上記組成物を分散し、上塗り液を調製した。
【0044】
<最下層塗工液(下塗り液)配合>
・市販顔料(表1および表2に記載) 100部
・市販ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
・接着剤:市販スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス 10部
・接着剤:市販PVA(表1及び2に記載) 4部
・市販ステアリン酸カルシウム 0.3部
・水酸化ナトリウム 0.15部
上記組成物を分散し、下塗り液を調製した。
【0045】
坪量80g/m2(絶乾)の原紙上にロッドメタードフィルムプレス方式のコーターを用いて、下記それぞれの実施例、比較例における配合からなる最下層塗工液(下塗り)を、固形分で片面8g/m2となるように両面塗工し、乾燥し、その上に上塗りをブレードコーターを用いて固形分で片面10g/m2となるように両面塗工し、乾燥して塗工紙を得た。得られた塗工紙は、処理速度300m/min、線圧2.2kN/cmでスーパーカレンダー処理した。
【0046】
(実施例1)
平均粒子径が1.0μmの中空樹脂粒子(HP−91、ローム&ハース社製)20部および粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上の微粒カオリン(HYDRAGLOSS90、J.M.Huber社製)80部に、市販ポリアクリル酸系分散剤(アロンT−40、東亜合成社製)0.1部添加して分散機で分散したものに、接着剤として重合度が400の完全ケン化PVA(ポバール104、クラレ社製)を溶解させたもの2部と重合度が1100の完全ケン化PVA(ポバール110、クラレ社製)を同じく溶解させたものを2部添加し、市販スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックスを10部添加し、これに市販ステアリン酸カルシウムを0.3部添加し、更に水酸化ナトリウムを0.15部添加し、下塗り液を得た。この下塗り液は上記の製造方法の中で塗工され、印刷用塗工紙を得た。この印刷用塗工紙の原紙被覆性、印刷面感、塗工適性の評価結果を、表1および表2に示す。
【0047】
(実施例2)
実施例1において、中空樹脂粒子の粒子径を、0.55μm(OP−84J、ローム&ハース社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0048】
(実施例3)
実施例1において、中空樹脂粒子の添加部数を、10部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0049】
(実施例4)
実施例1において、中空樹脂粒子の添加部数を、15部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0050】
(実施例5)
実施例1において、中空樹脂粒子の添加部数を、30部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0051】
(実施例6)
実施例1において、PVAは、重合度が400の完全ケン化PVA(ポバール104、クラレ社製)のみを使用し、添加量を4部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0052】
(実施例7)
実施例1において、PVAは、重合度が1100の完全ケン化PVA(ポバール110、クラレ社製)のみを使用し、添加量を4部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0053】
(比較例1)
実施例1において、中空樹脂粒子の粒子径を、0.4μm(HP−433J、ローム&ハース社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0054】
(比較例2)
実施例1において、中空樹脂粒子を密実樹脂粒子(サイビノールPG−1、粒子径0.8μm、サイデン化学社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0055】
(比較例3)
実施例1において、中空樹脂粒子の添加部数を、5部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0056】
(比較例4)
実施例1において、中空樹脂粒子の添加部数を、40部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0057】
(比較例5)
実施例1において、カオリンの種類を粒子径2μm以下の粒子含有率が87〜90質量%の一級カオリン(DBプライム、Imerys社製)に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0058】
(比較例6)
実施例1において、接着剤にPVAの替わりに、燐酸エステル化澱粉(MS−4600、日本食品化工社製)4部に変更した以外は、すべて実施例1と同様に行った。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
表1および表2に示した結果から明らかなように、中空樹脂粒子の平均粒子径が大きくなるに従って原紙被覆性及び印刷面感が向上し、同じく中空樹脂粒子の添加量が多くなるに従って原紙被覆性及び印刷面感が向上していることが判る。中空樹脂粒子の添加量が10質量%より少ない場合は、原紙被覆性及び印刷面感に劣り、30質量%より多い場合は、塗工適性が劣る結果となった。また、比較例2のように、中空以外の構造(密実)の樹脂粒子の使用も原紙被覆性及び印刷面感が劣る結果となった。一方、中空樹脂粒子と併用するカオリンであるが、粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%のものは原紙被覆性及び印刷面感に優れていたが、同87〜90質量%のものは原紙被覆性及び印刷面感が劣る結果となった。更に比較例6のように、PVAの替わりに澱粉を用いた場合、塗工適性が非常に劣る結果となった。
【0062】
本発明により、原紙被覆性、印刷面感に優れた印刷用塗工紙が得られた。また、下塗り塗工層形成時の塗工適性(操業性)も問題なく、製造できた。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の原紙被覆性が良好で、優れた印刷面感を有し、且つ製造時の塗工適性が良好な印刷用塗工紙は、通常のオフセット印刷用紙に利用することが可能であり、特に高級オフセット印刷用紙に利用することは非常に有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙上に、少なくとも顔料および接着剤を含有する塗工層を少なくとも2層以上設けた印刷用塗工紙において、該塗工層の最下層中に顔料成分として、平均粒子径0.5〜3μmの中空樹脂粒子、および粒子径2μm以下の粒子含有率が95質量%以上のカオリンの少なくとも2種を含有し、かつ該中空樹脂粒子の含有量が該最下層中の全顔料の10〜30質量%であり、更に該最下層中に接着剤としてポリビニルアルコールを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
上記ポリビニルアルコールの重合度が500〜1000である請求項1記載の印刷用塗工紙。
【請求項3】
上記中空樹脂粒子の含有量が該最下層中の全顔料の16〜30質量%である請求項1または2記載の印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2006−188784(P2006−188784A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−677(P2005−677)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】