説明

印刷用塗工紙

【課題】本発明の目的は、表面強度に優れ、且つ高光沢で印刷適性に優れた印刷用塗工紙を提供することである。
【解決手段】基紙上の片面あるいは両面に、それぞれ顔料と接着剤を含有する2層以上の塗工層を同一面に設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち、最上層に隣接する塗工層である隣接層が、顔料として該隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有し、且つ該最上層が、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することを特徴とする印刷用塗工紙に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面強度に優れ、且つ高光沢で印刷適性に優れた印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷物のビジュアル化、カラー化、高級化指向に伴い、印刷用塗工紙の高光沢、優れた印刷適性等への要望が高まっている。一般に印刷用塗工紙の白紙光沢度は、キャストコート紙が最も高く、次いでアート紙、コート紙、微塗工紙の順で低くなる。白紙光沢度の最も高いキャストコート紙は、鏡面ドラムを有するキャストコーターにて製造される。この製造方法は、顔料と接着剤を含有する湿潤塗工層を鏡面ドラムに圧接、乾燥後、離型させて強光沢仕上げをする方法で、一般のアート紙、コート紙あるいは微塗工紙に比べて製造速度がかなり遅いという問題がある。
【0003】
また、鏡面ドラムによらず、特定のガラス転移温度を有する重合体ラテックスを使用した塗工液を原紙上に塗工、乾燥し、該重合体ラテックスのガラス転移温度以上でカレンダーに圧着する方法(特許文献1を参照)、特定の重合体ラテックスと特定の離型剤を含有する塗工液を原紙上に塗工、乾燥し、高温カレンダー処理する方法(特許文献2を参照)、特定のカオリン及び中空プラスチックピグメントを含有する塗工液を原紙上に塗工、乾燥し、熱カレンダー処理する方法(特許文献3を参照)、特定の中空有機顔料を特定量含有する塗工液を原紙上に塗工、乾燥し、スーパーカレンダーで表面仕上げする方法(特許文献4を参照)、特定のプラスチックピグメント及び特定のサチンホワイトを含有した塗工液を原紙上に塗工、乾燥し、熱カレンダー処理する方法(特許文献5を参照)等も提案されている。これらの方法によれば、製造速度も速く、生産性に優れるが、何れの方法においても、キャストコート紙並みの高い白紙光沢度を得ることができず、また、高価な原材料を多量に使用する必要があるため、製造コストが高くなる問題がある。
【0004】
更に、別の方法として、原紙上に、最低造膜温度の異なる熱可塑性合成樹脂の2種あるいはそれ以上の混合物からなる塗工層を設ける方法(特許文献6を参照)、支持体上に顔料塗工層を設けた基材の顔料塗工層上に、二次転移温度が80℃以上の熱可塑性重合体ラテックスからなる最上層を有する印刷用塗工紙であって、該最上層が二次転移温度以下でカレンダー処理されている方法(特許文献7を参照)、支持体の少なくとも一面に顔料含有層を有し、その顔料含有層上に平均粒子径が100nm以下、二次転移温度が80℃以上の熱可塑性重合体ラテックス粒子を含有する最上層を設け、その最上層がカレンダー処理されていない方法(特許文献8を参照)、支持体上に顔料塗工層を設けた基材の顔料塗工層上に、ガラス転移温度が80℃以上の熱可塑性重合体ラテックスと表面サイズ剤を有する最上層を設ける方法(特許文献9を参照)が提案されているが、白紙光沢度、印刷光沢及び印刷適性において、更なる改善が求められている。
【0005】
更に、プラスチックピグメント、表面サイズ剤及びこれらの混合物からなる群から選択される成分を含有する最上層を設け、該最上層をスプレー塗工方式で製造する方法(特許文献10を参照)、あるいは、プラスチックピグメント及び特定のガラス転移温度を有する熱可塑性重合体ラテックスを含有する最上層を設け、平滑化処理する方法(特許文献11を参照)が提案されている。しかしながら、塗工、乾燥、平滑化や印刷工程において、塗工層中の顔料や接着剤の脱落によって、操業性や印刷作業性が低下する、あるいは、塗工層表面に擦れや引っ掻き等によるキズが入り、外観を損ねる可能性があり、表面強度において更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56−68188号公報
【特許文献2】特開平9−95897号公報
【特許文献3】特開昭6−235194公報
【特許文献4】特許第3249212号公報
【特許文献5】特開平2−14098号公報
【特許文献6】特開昭59−22683号公報
【特許文献7】特開平3−167396号公報
【特許文献8】特開平8−13390号公報
【特許文献9】特開2002−363884号公報
【特許文献10】特開2007−154330号公報
【特許文献11】特開2009−7690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表面強度に優れ、且つ高光沢で印刷適性に優れた印刷用塗工紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記に鑑み鋭意研究した結果、基紙上の片面あるいは両面に、それぞれ顔料と接着剤を含有する2層以上の塗工層を同一面に設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち、最上層に隣接する塗工層である隣接層が、顔料として該隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有し、且つ該最上層が、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することを特徴とする印刷用塗工紙を発明するに至った。また、より好ましくは該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物の平均粒子径が300nm未満であることを特徴とする印刷用塗工紙を発明するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面強度に優れ、且つ高光沢で印刷適性に優れた印刷用塗工紙が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の印刷用塗工紙について、詳細に説明する。
【0011】
本発明は、基紙上の片面あるいは両面に、それぞれ顔料と接着剤を含有する2層以上の塗工層を同一面に設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち、最上層に隣接する塗工層(以下、最上層に隣接する塗工層を隣接層とも記載する)が、顔料として隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有し、且つ該最上層が、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明においては、隣接層が、顔料として隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有することで、非常に高い白紙光沢度を発現させることができる。具体的には、プラスチックピグメントを含有しているため、塗工、乾燥後のカレンダー処理によって、印刷用塗工紙の白紙光沢度を非常に高くすることが可能である。本発明に係る隣接層中のプラスチックピグメントの含有量が25質量部に満たない場合、得られる印刷用塗工紙の白紙光沢度の向上効果が薄れる。該プラスチックピグメントの含有量の下限として好ましくは、隣接層中の全顔料固形分100質量部中、30質量部以上である。
【0013】
本発明に用いるプラスチックピグメントは、密実型、中空型、または、コア/シェル構造をもつ高分子化合物からなる微粒子(有機顔料)であり、熱風乾燥やカレンダー処理を施した後においても粒子形状を保持しているものである。本発明においては、これらを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではないが、中空型が最も光沢発現性に優れるため、好ましく使用される。
【0014】
本発明の印刷用塗工紙の隣接層においては、顔料として全顔料固形分に対して、特定の質量部数のプラスチックピグメントを含有するが、その効果を損なわない程度に、プラスチックピグメント以外の顔料を併用しても構わない。例えば、カオリン、焼成カオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、二酸化チタン、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、無定型シリカ、ケイソウ土等、印刷用塗工紙に顔料として一般に用いられるものは適宜自由に併用できる。
【0015】
本発明の隣接層に係る接着剤においても適宜自由に使用できる。例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン等のデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系等の各種ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリン等の水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白等の天然物及びこれらをカチオン化したもの等が挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0016】
また、本発明に係る隣接層には、顔料及び接着剤の他に、一般的に塗工紙を製造する上で用いられるものにおいても適宜自由に使用できる。例えば、増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸塩、カゼイン等の水溶性高分子、スチレンマレイン酸無水共重合体等の合成重合体、珪酸塩等が挙げられる。その他、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等の各種助剤、及びこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0017】
本発明の印刷用塗工紙において、隣接層の塗工固形分質量は特に限定されるものではないが、片面あたり0.1g/m〜3.0g/mの範囲であれば、目標とする白紙光沢度、印刷適性、表面強度に優れた印刷用塗工紙を得ることができる。
【0018】
また、隣接層を設ける方法は、何ら制限されるものではなく、ゲートロール、シムサイザー等の各種フィルムトランスファーコーター、サイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等が好適に用いられる。
【0019】
更に、本発明の印刷用塗工紙において、最上層が顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することが重要である。該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物は自己造膜性を有し、機械的に表面強度の優れた塗工層を形成することが可能である。これらは水中で分散させると、粒子は一次粒子近くまでミクロに分散した粘稠な液体を形成し、乾燥固化後に、分散した粒子の一次粒子同士が互いに強く結び付いて強固な膜を形成する。これにより、塗工、乾燥、平滑化や印刷工程において、塗工層中の顔料や接着剤の脱落による操業性や印刷作業性の低下、及び塗工層表面における擦れや引っ掻き等によるキズが大きく改善される。
【0020】
更に、該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物は透明性に優れる。これにより、これらの群から選ばれる少なくとも1つを含有する塗工液を用いて最上層を設けた後も、最上層に隣接する塗工層において発現する白紙光沢度が大きく損なわれることがない。従って、製造後、白紙光沢度の高い印刷用塗工紙を得ることができる。
【0021】
また、該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物を使用することで、オフセット印刷あるいはグラビア印刷におけるインキの吸収性が均一となり、優れた印刷面質を得ることが可能である。ここでいう優れた印刷面質とは、印刷面にインキ受理ムラが目立たない状態を示す。
【0022】
本発明に係るコロイダルアルミナは、ベーマイト型または擬ベーマイト型アルミナの所謂羽毛状、繊維状、あるいは盤状等の形状を有するコロイド状物である。また、本発明に係るコロイダルシリカは、従来汎用の無変性コロイダルシリカの他に、シリカ表面をアンモニア、カルシウム、及びアルミナ等のイオンや化合物で修飾し、コロイドのイオン性やpH変動に対する挙動を変えた変性コロイダルシリカの何れも使用することができる。
【0023】
本発明に係る膨潤性粘土化合物は、化合物の層間に水、その他の分子が入って、底面間隔が拡大する現象を呈する粘土系化合物である。具体例として、サポニナイト、ヘクトライト、ベントナイト及びモンモリロナイト等のスメクタイト群及びバーミキュライト群等が挙げられる。なかでも、透明性の点からスメクタイト群やバーミキュライト群等の天然粘土鉱物群の変性物や合成物が好ましい。
【0024】
また、本発明において、該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物の平均粒子径は透明性の点から可視光の波長より十分小さいものが好ましく、300nm未満が好ましい。ここでいう可視光とは、波長が400nm〜800nmの範囲の光をいう。300nmを超える場合は可視光波長と重なる粒子径のものも含まれるため、透明性の点で好ましくなく、印刷用塗工紙の白紙光沢度が低下する場合がある。ここでいう平均粒子径とは、電子顕微鏡観察により測定した一次粒子の大きさである。
【0025】
本発明の印刷用塗工紙に係る最上層において、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有するが、その効果を損なわない程度に接着剤及び一般的に塗工紙を製造する上で用いられるものを併用しても良い。
【0026】
本発明の最上層に係る接着剤においては、例えば、通常のデンプン、酸化デンプン、リン酸エステル化デンプン、酵素変性デンプンやそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性デンプン等のデンプン類、スチレン−ブタジエン系、アクリル系、酢酸ビニル系等の各種ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリン等の水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白等の天然物及びこれらをカチオン化したもの等が挙げられる。これを単独で用いても構わないし、これらのうち複数種を併用することは何ら制限されるものではない。
【0027】
また、本発明の最上層に係る一般的に塗工紙を製造する上で用いられるものにおいては、例えば、増粘剤として、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ等のポリアクリル酸塩、カゼイン等の水溶性高分子、スチレンマレイン酸無水共重合体等の合成重合体、珪酸塩等が挙げられる。その他、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、潤滑剤、消泡剤、耐水化剤、界面活性剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤等の各種助剤、及びこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。必要に応じて他の成分を配合して構わない。
【0028】
本発明の印刷用塗工紙において、最上層の塗工固形分質量は特に限定されるものではないが、片面あたり0.1g/m〜4.0g/mであれば、目標とする白紙光沢度、印刷適性、表面強度に優れた印刷用塗工紙を得ることができる。
【0029】
また、最上層の塗工層を設ける方法は、何ら制限されるものではなく、ゲートロール、シムサイザー等の各種フィルムトランスファーコーター、サイズプレス、エアナイフコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、スプレーコーター等が好適に用いられる。
【0030】
本発明の印刷用塗工紙において、本発明に係る隣接層と最上層は基紙の少なくとも一面にこの順に積層されていれば良く、基紙の両面に塗工層を設ける場合は、少なくとも一方面が本発明に係る隣接層と最上層を有していれば、これらを設けた基紙の反対面は本発明に係る隣接層及び最上層を包含するいかなる塗工層を設けても良い。また、基紙の両面に本発明に係る隣接層と最上層を設ける場合であっても、隣接層同士及び最上層同士はそれぞれ同一構成または塗工量でなくても良い。更に、本発明において、基紙と隣接層との間には顔料と接着剤を含有する、もしくは何れかの成分を含まない塗工層を有しても良いが、隣接層と最上層との間、及び最上層の上層には、少なくとも顔料と接着剤の両方を含有する塗工層は有さない。
【0031】
ここで、本発明に用いられる基紙は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGP等の機械パルプ、及び故紙パルプ等の各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等の各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤等の各種配合剤を好適に配合して抄造され、酸性、中性、アルカリ性の何れかでも抄造できる。
【0032】
本発明の基紙においては、ノーサイズプレス原紙、あるいは、澱粉、ポリビニルアルコール等でサイズプレスされた基紙等を用いることができる。また、本発明における基紙の抄紙方法における抄紙機は、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機等、製紙業界で公知の抄紙機が適宜使用できる。
【0033】
本発明における印刷用塗工紙は、最上層に用いる塗工液を塗工、乾燥後、ソフトカレンダーやスーパーカレンダーで処理することが好ましい。
【0034】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
各実施例、比較例における印刷用塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)白紙光沢度
印刷用塗工紙の白紙光沢度は、JIS P8142に準じて、角度75°−75°反射率で評価した。本発明においては、3点以上を発明の対象とした。
5点:白紙光沢度が93%以上
4点:白紙光沢度が88%以上93%未満
3点:白紙光沢度が83%以上88%未満
2点:白紙光沢度が78%以上83%未満
1点:白紙光沢度が78%未満
2)印刷面質
RI印刷適性試験機を用い、藍色、紅色、黄色の重色ベタ印刷を施した後、一昼夜室温にて放置し、印刷面を目視判定し、印刷面質を1〜5点の範囲で評価した。5点は印刷面にインキ受理ムラが目立たない状態、1点は印刷面にインキ受理ムラが目立つ状態であることを表し、点が下がるごとにインキ受理ムラが目立つ状態であることを表す。本発明においては、3点以上を発明の対象とした。
3)耐剥離性
カレンダー処理時での金属ロール表面への付着物を目視判定し、耐剥離性を1〜5点の範囲で評価した。5点は金属ロール表面への付着物がなく良好な状態、1点は金属ロール表面への付着物が目立ち、実用上問題がある状態を表し、点が下がるごとに金属ロール表面への付着物が目立つ状態であることを表す。本発明においては、3点以上を発明の対象とした。
4)耐擦過性
印刷用塗工紙の表面を指先で強く擦り、表面の擦れ傷の程度を目視判定し、耐擦過性を1〜5点の範囲で評価した。5点は表面の擦れ傷が目立たない状態、1点は表面の擦れ傷が目立ち、実用上問題がある状態を表し、点が下がるごとに表面の擦れ傷が目立つ状態であることを表す。本発明においては、3点以上を発明の対象とした。
【0036】
基紙は以下のような配合で調製し、坪量89g/mの塗工用基紙を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。
<基紙配合>
LBKP(濾水度440mlcsf) 70質量部
NBKP(濾水度490mlcsf) 30質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(基紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化デンプン 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留り向上剤 0.030質量部
【0037】
上記のようにして製造した基紙に対して、以下の各実施例、各比較例のようにして両面に最上層に隣接する塗工層及び最上層を設け、オフラインでスーパーカレンダー処理を施し、印刷用塗工紙とした。
【0038】
実施例1
最上層に隣接する塗工層である隣接層用の塗工液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、隣接層用塗工液中、全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。
【0039】
<隣接層用塗工液>
市販1級カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、BASF社製)40質量部、市販湿式磨砕重質炭酸カルシウム(商品名:カービタル90、イメリスミネラルズジャパン社製)30質量部、平均粒子径1.0μmの市販プラスチックピグメントA(中空型、商品名:ローペイクHP91、ロームアンドハース社製)30質量部からなる顔料に対し、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販燐酸エステル化澱粉を2.0質量部添加し、更に市販ステアリン酸カルシウムを0.30質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6になるよう隣接層用塗工液を調製した。この隣接層用塗工液を、片面あたりの塗工固形分質量が2.5g/mとなるよう基紙上にシムサイザー塗工方式で両面塗工し、乾燥後、隣接層塗工紙を得た。
【0040】
最上層を設けるための最上層用塗工液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、最上層用塗工液中、全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。
<最上層用塗工液>
膨潤性粘土化合物として平均粒子径40nmの合成スメクタイト(商品名:ルーセンタイトSWN、コープケミカル社製)を固形分濃度として、3.0質量%になるよう水、分散剤と混合、分散させた。この水性液が増粘して微乳白色透明となり、粘土化合物の粒子が殆ど観られなくなるまで分散を続行し、最上層用塗工液を調製した。この最上層用塗工液を、片面あたりの塗工固形分質量が3.0g/mとなるよう隣接層塗工紙上にエアナイフ塗工方式で両面塗工し、乾燥後、オフラインでスーパーカレンダー処理を施し、印刷用塗工紙とした。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0041】
実施例2
実施例1において、隣接層用塗工液の顔料固形分質量比を、市販1級カオリン:市販湿式磨砕重質炭酸カルシウム:プラスチックピグメントA=10:10:80にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例3
実施例1において、隣接層用塗工液中の市販プラスチックピグメントAを平均粒子径320nmの市販プラスチックピグメントB(密実型、商品名:V1004、日本ゼオン社製)に変更した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例4
実施例1において、隣接層の片面あたりの塗工固形分質量を7.0g/mに変更した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例5
実施例1において、最上層用塗工液を平均粒子径16nmの市販コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスST−40、日産化学工業社製)100質量部に対し、市販ポリビニルアルコール(商品名:NM−11、日本合成化学工業社製)を2.0質量部添加し、調製した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例6
実施例1において、最上層用塗工液を平均粒子径25nmの市販コロイダルアルミナ(商品名:HP−14、サソールジャパン社製)100質量部に対し、市販ポリビニルアルコール(商品名:NM−11、日本合成化学工業社製)を2.0質量部添加し、調製した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0046】
実施例7
実施例1において、最上層用塗工液を平均粒子径100nmの市販コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスST−ZL、日産化学工業社製)100質量部に対し、市販ポリビニルアルコール(商品名:NM−11、日本合成化学工業社製)を2.0質量部添加し、調製した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例8
実施例1において、最上層用塗工液を平均粒子径500nmの市販コロイダルシリカ(商品名:PST−5、日産化学工業社製)100質量部に対し、市販ポリビニルアルコール(商品名:NM−11、日本合成化学工業社製)を2.0質量部添加し、調製した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例9
実施例1において、最上層の片面あたりの塗工固形分質量を7.0g/mに変更した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0049】
実施例10
実施例1において、最上層用塗工液を設ける塗工方式をカーテン塗工方式に変更した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0050】
比較例1
実施例1において、隣接層用塗工液の顔料固形分質量比を、市販1級カオリン:市販湿式磨砕重質炭酸カルシウム:プラスチックピグメントA=50:35:15にした以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0051】
比較例2
実施例1において、最上層用塗工液を市販1級カオリン(商品名:ウルトラホワイト90、BASF社製)100質量部からなる顔料に対し、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販燐酸エステル化澱粉を2.0質量部添加し、更に市販ステアリン酸カルシウムを0.30質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0052】
比較例3
実施例1において、隣接層塗工紙上に最上層を設けず、オフラインでスーパーカレンダー処理を施した以外は、全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0053】
実施例1〜10、比較例1〜3の条件、評価結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の結果から明らかなように、基紙上の片面あるいは両面に、それぞれ顔料と接着剤を含有する2層以上の塗工層を同一面に設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち、最上層に隣接する塗工層である隣接層が、顔料として該隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有し、且つ該最上層が、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することを特徴とすることにより、表面強度に優れ、且つ高光沢で印刷適性に優れた印刷用塗工紙が提供される。また、より好ましくは該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物の平均粒子径が300nm未満であることにより、より上記効果に優れた印刷用塗工紙が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上の片面あるいは両面に、それぞれ顔料と接着剤を含有する2層以上の塗工層を同一面に設けてなる印刷用塗工紙において、該塗工層のうち、最上層に隣接する塗工層である隣接層が、顔料として該隣接層中の全顔料固形分100質量部中、25質量部以上のプラスチックピグメントを含有し、且つ該最上層が、顔料としてコロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物からなる群から選ばれた少なくとも1つを含有することを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
請求項1における該コロイダルアルミナ及びコロイダルシリカ及び膨潤性粘土化合物の平均粒子径が300nm未満であることを特徴とする請求項1記載の印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2012−72522(P2012−72522A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218926(P2010−218926)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】