説明

印刷用液体容器、印刷用液体充填済み容器、画像形成装置及び印刷用液体充填済み容器の製造方法

【課題】封止膜の開口面積を大きくすることができる。
【解決手段】キャップ部に設けられ、キャップ部の口部を封止する封止膜138と、当該封止膜138の中心部に形成され、封止膜138を穿孔する穿孔具が当たる当り部140と、当り部140から封止膜138の外周部まで伸び、封止膜138より薄肉の第1破断部144と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用液体容器、印刷用液体充填済み容器、画像形成装置及び印刷用液体充填済み容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク等の印刷用の液体を液滴として吐出する記録ヘッドを用いた液滴吐出記録方式の画像形成装置が知られている。
【0003】
このような液滴吐出記録方式の画像形成装置には、記録ヘッドや当該記録ヘッドに連通するメインタンクに、印刷用液体容器から液体を供給するものがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、印刷用液体容器の口部を封止する封止部を穿孔具で穿孔し、当該印刷用液体容器から記録ヘッドにインクを供給するインク供給装置が開示されている。
具体的には、封止部を薄膜とし、且つ封止部にインク穴を設け、穿孔具で薄膜を伸ばし、インク穴を大きく拡大することにより封止部を穿孔し、口部からインクを流出させている。
【0005】
また、特許文献2には、印刷用液体容器の口部を閉塞する封止部において、穿孔具の先端が最初に当接する位置に十字状又は放射状の細溝を形成して、封止部をスムーズに穿孔し、かつ封止部の破損形状を所定の形に揃えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−290717号公報
【特許文献2】特開2007−38537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、封止部にインク穴を設けているので、インク穴からインクが垂れ落ちる恐れもある。また、穿孔具で薄膜を伸ばしてインク穴を拡大する方式であるため、穿孔具の大きさ以上には、封止部の開口面積を広げることができない。
【0008】
また、特許文献2の構成では、穿孔具の先端が最初に当接する位置にのみ細溝を形成しているので、穿孔具の大きさ以上には、封止部の開口面積を広げることができない。また、穿孔具の先端が最初に細溝に当接すると、他に位置の封止部に応力が伝わる前に、細溝が破れてしまい、他の位置の封止部が破れ難くなる。したがって、封止部の開口面積を広げることができない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、封止部の開口面積を大きくできる印刷用液体容器、印刷用液体充填済み容器、画像形成装置及び印刷用液体充填済み容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1態様に係る印刷用液体容器は、印刷用の液体を充填する口部が形成された容器本体と、前記口部に接続されたキャップ部と、前記キャップ部に設けられ、前記口部を封止する封止部と、前記封止部の中心部に形成され、前記封止部を穿孔する穿孔具が当たる当り部と、前記当り部から前記封止部の外周部まで伸び、前記封止部より薄肉の第1破断部と、を備える。
【0011】
この構成によれば、封止部を穿孔具で穿孔する際、この穿孔具が封止部の中心部に形成された当り部に当たることで、その当り部に応力が集中する。このため、封止部より薄肉の第1破断部において封止部の外周部側まで当り部から応力が伝わり易くなり、第1破断部全体を破断させることができ、もって封止部の開口面積を大きくすることができる。
【0012】
本発明の第2態様に係る印刷用液体容器では、第1態様において、前記当り部の外周には、前記封止部より薄肉とされ、前記第1破断部と繋がり前記第1破断部の破断を誘導する破断誘導部が形成されている。
【0013】
この構成によれば、当り部に集中した応力が、そのまま当り部の外周に形成された、封止部より薄肉の破断誘導部に伝わって、当該破断誘導部が破断する。そして、この破断によって、破断誘導部に繋がる第1破断部の破断を誘導することができる。
また、この破断誘導部が当り部の外周に形成されているので、当り部へ穿孔具をガイドすることもできる。
【0014】
本発明の第3態様に係る印刷用液体容器では、第1態様又は第2態様において、前記当り部は、前記封止部の表面よりへこんで、裏面から出張っている。
【0015】
この構成によれば、穿孔具の先端が封止部の表面よりも中に入り込んで当り部に当るので、穿孔具との相対的ずれを防止することができる。また、当り部は裏面から出張っており、肉厚となっているため、穿孔具が当り部だけを突き抜け、破断部に波及しないことがない。
【0016】
本発明の第4態様に係る印刷用液体容器では、第1態様〜第3態様の何れか1つの態様において、前記第1破断部の肉厚は、前記破断誘導部の肉厚よりも厚い。
【0017】
この構成によれば、当り部に集中した応力で、第1破断部よりも先に破断させ、確実に第1破断部の破断を誘導することができる。
【0018】
本発明の第5態様に係る印刷用液体容器では、第1態様〜第4態様の何れか1つの態様において、前記第1破断部は、前記封止部を平面視したとき曲線状の溝部とされ、複数本形成されている。
【0019】
この構成によれば、第1破断部が曲線状の溝部とされているので第1破断部の長さが例えば直線状の溝部とされた場合に比べて長くなり、破断長さを増して封止部の開口面積を大きくすることができる。また、このような曲線状の溝部とされた第1破断部が、封止部に複数本形成されているので、封止部の開口面積をより増やすことができる。
【0020】
本発明の第6態様に係る印刷用液体容器では、第5態様において、前記曲線状は、S字状である。
【0021】
この構成によれば、第1破断部の形状が一般的な穿孔具の形状に倣いにくくなり、封止部が穿孔具に貼り付いても、第1破断部が破断して封止部を開口するため、口部から液体を外部に流出させることができる。
【0022】
本発明の第7態様に係る印刷用液体容器は、第1態様〜第6態様の何れか1つの態様において、前記封止部の外周部に沿って形成され、前記第1破断部と繋がり、前記封止部より薄肉の第2破断部、を備える。
【0023】
この構成によれば、封止部を穿孔具で穿孔する際、第1破断部の破断により、第1破断部と繋がる第2破断部も破断することとなる。そして、第2破断部の一部が破断すると、封止部の外周部が開口するので、穿孔具を封止部から抜くときに、穿孔具との接触抵抗を減らすことができ、封止部の擦れクズの発生を防止できる。
【0024】
本発明の第8態様に係る印刷用液体容器では、第7態様において、前記第2破断部は、所定の間隔をあけて複数設けられている。
【0025】
この構成によれば、第2破断部を複数設けることにより、穿孔具との接触抵抗を減らしつつ、これら複数の第2破断部間で所定の間隔をあけることにより、封止部の外周部で破断しない箇所、すなわち封止部とキャップ部の結合箇所を残すことができ、封止部がキャップ部から剥がれ落ちることを防止することができる。
【0026】
本発明の第9態様に係る印刷用液体容器では、第1態様〜第8態様の何れか1つの態様において、前記キャップ部は、前記口部に打栓される。
【0027】
この構成によれば、キャップ部の構成をシンプルにすることができるとともに、一般的な螺子キャップが必要とするトルク管理等の煩雑な作業がなくてもキャップ部と口部との確実な嵌合いを実現することができる。
【0028】
本発明の第10態様に係る印刷用液体容器では、第9態様において、前記キャップ部は、筒体と、前記筒体の外周壁に突設された爪部を備え、前記爪部は前記口部の内周壁に形成された係止部に係止される。
【0029】
この構成によれば、液圧によりキャップ部が口部から抜けることを防止することができる。
【0030】
本発明の第11態様に係る印刷用液体容器は、第10態様において、前記係止部が形成された前記口部の内周壁には、前記筒体の先端が拡径方向へ変形可能とするスペースが形成されている。
【0031】
この構成によれば、例えば衝撃による内圧上昇で筒体の先端が拡径方向へ変形し、さらに爪部と係止部の係止が高まる。これにより、キャップ部が口部から抜けることを防止することができる。
【0032】
本発明の第12態様に係る印刷用液体容器は、第1態様〜第11態様の何れか1つの態様において、前記封止部よりも前記キャップ部の開口部側に設けられ、スリットが形成された弾性封止部、を備える。
【0033】
この構成によれば、口部を下に向けて容器をセットし、穿孔具をキャップ部内に挿入して封止部を穿孔する際、穿孔具が弾性封止部のスリットを押し広げた後、封止部を穿孔して開口する。また、開口した封止部から穿孔具を抜く際、印刷用液体容器に残った残液を弾性封止部が受け止め、穿孔具を弾性封止部から抜きとった後は、弾性封止部の弾性力により穿孔具により押し広げられたスリットが狭まる。これにより、残液がキャップ部から外部に漏れ出ることを防止できる。
【0034】
本発明の第13態様に係る印刷用液体充填済み容器は、第1態様〜第12態様の何れか1つに記載の印刷用液体容器に、印刷用の液体が充填されてなる。
【0035】
本発明の第14態様に係る画像形成装置は、第1態様〜第12態様の何れか1つの印刷用液体容器と、前記第1破断部の形状と異なる形状を有し、前記封止部を穿孔する穿孔具と、を備える。
【0036】
この構成によれば、穿孔具の形状を第1破断部の形状と異ならせることで、封止部が穿孔具に貼り付いても、第1破断部が破断して封止部を開口するため、口部から液体を外部に流出させることができる。
【0037】
本発明の第15態様に係る印刷用液体充填済み容器の製造方法は、印刷用の液体を充填する口部が形成された容器本体を用意するステップと、前記容器本体に、印刷用の液体を充填するステップと、前記口部に、第1態様〜第8態様の何れか1つに記載の印刷用液体容器に用いられるキャップ部を打栓するステップと、を有する。
【0038】
この方法によれば、一般的な螺子キャップが必要とするトルク管理等の煩雑な作業がなくてもキャップ部と口部との確実な嵌合いを実現することができる。
【0039】
本発明の第16態様に係る印刷用液体充填済み容器の製造方法は、第15態様において、前記キャップ部は、筒体と、前記筒体の外周壁に突設された爪部を備え、前記爪部は前記口部の内周壁に形成された係止部に係止される。
【0040】
本発明の第17態様に係る印刷用液体充填済み容器の製造方法は、第16態様において、前記係止部が形成された前記口部の内周壁には、前記筒体の先端が拡径方向へ変形可能とするスペースが形成されている。
【0041】
本発明の第18態様に係る印刷用液体充填済み容器の製造方法は、第15態様〜第17態様の何れか一つの態様において、前記封止部よりも前記キャップ部の開口部側に設けられ、スリットが形成された弾性封止部、を備える。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、封止部の開口面積を大きくできる印刷用液体容器、印刷用液体充填済み容器、画像形成装置及び印刷用液体充填済み容器の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る印刷用液体容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】液体供給装置を全体的に示す斜視図である。
【図3】図2に示す台座の内部について操作レバーを中心に示す側面図であって、(a)は操作レバーが下方に位置する状態を示し、(b)は操作レバーが上方に位置する状態を示す。
【図4】穿孔部の構成を示す断面図である。
【図5】穿孔具の構成を具体的に示す構成図であって、(a)は穿孔具の分解図を示し、(b)は穿孔具の断面図を示す。
【図6】タンクユニットを示す斜視図であって、(a)〜(c)は、角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニットの斜視図である。
【図7】カートンユニットの構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器のキャップ部の構成を示す断面図であり、キャップ部が口部に接続(打栓)される前の状態を示す図である。
【図9】キャップ部の構成を示す断面図であり、キャップ部が口部に接続(打栓)された後の状態を示す図である。
【図10】キャップ本体の平面図(キャップ本体開口部側から見た図)である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器の作用を説明する図であり、(a)は封止膜が穿孔具によって穿孔される前の様子を示す図であり、(b)は穿孔された後の様子を示す図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器のキャップ部の構成を示す断面図である。
【図13】弾性封止部材の正面図である。
【図14】本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器の作用を説明する図であり、(a)は穿孔具による穿孔前の状態を示し、(b)は穿孔具による穿孔途中の状態を示し、(c)は穿孔具による穿孔後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(第1実施形態)
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器及び画像形成装置について具体的に説明する。なお、図中、同一又は対応する機能を有する部材(構成要素)には同じ符号を付して適宜説明を省略する。
【0045】
−全体構成−
図1は、本発明の実施形態に係る印刷用液体容器を含むインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0046】
図1に示すように、インクジェット記録装置1は、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、記録媒体収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18と、を備えている。
【0047】
画像記録部14は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの一例として、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録する液滴吐出装置(以下、「インクジェットヘッド」という)10Y、10M、10C、10Kを備えている。なお、インクジェットヘッド10Y、10M、10C、10Kを総称する場合に、「インクジェットヘッド10Y〜10K」と示す場合がある。
【0048】
また、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、ノズル(図示省略)が形成されたノズル面22Y〜22Kをそれぞれ有している。このノズル面22Y〜22Kは、インクジェット記録装置1での画像記録が想定される記録媒体Pの最大幅と同程度か、又はそれ以上の記録可能領域を有している。
【0049】
さらに、インクジェットヘッド10Y〜10Kは、記録媒体Pの搬送方向の下流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で並列に並べられており、その各色に対応したインク滴を、圧電方式によって、複数のノズルから吐出し、画像を記録する構成となっている。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kにおいて、インク滴を吐出させる構成は、サーマル方式等の他の方式によって吐出させる構成であっても良い。
【0050】
インクジェット記録装置1には、液体を貯留する貯留部として、各色のインクを貯留するメインインクタンク21Y、21M、21C、21K(以下、21Y〜21Kと示す)が設けられている。このメインインクタンク21Y〜21Kから、各インクジェットヘッド10Y〜10Kへインクが供給される。なお、インクジェットヘッド10Y〜10Kへ供給されるインクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、各種インクの使用が可能である。
【0051】
搬送手段16は、記録媒体収容部12内の記録媒体Pを1枚ずつ取り出す取出ドラム24と、画像記録部14のインクジェットヘッド10Y〜10Kへ記録媒体Pを搬送しその記録面(表面)をインクジェットヘッド10Y〜10Kに対面させる搬送体としての搬送ドラム26と、画像が記録された記録媒体Pを記録媒体排出部18へ送り出す送出ドラム28と、を有している。そして、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28は、それぞれ記録媒体Pがその周面に静電的吸着手段、或いは吸引や粘着などの非静電的吸着手段によって保持されるように構成されている。
【0052】
また、取出ドラム24、搬送ドラム26、送出ドラム28には、それぞれ記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持する保持手段としてのグリッパー30が、例えば2組ずつ備えられており、これら3個のドラム24、26、28は、それぞれその周面に記録媒体Pを、グリッパー30によってこの場合は2枚まで保持可能に構成されている。そして、グリッパー30は、各ドラム24、26、28の周面に2つずつ形成された凹部24A、26A、28A内に設けられている。
【0053】
具体的には、各ドラム24、26、28の凹部24A、26A、28A内の予め定められた位置に、各ドラム24、26、28の回転軸32に沿って回転軸34が支持されており、この回転軸34には、その軸方向に間隔をおいて複数のグリッパー30が固定されている。したがって、回転軸34が、図示しないアクチュエーターによって正逆両方向に回転することにより、グリッパー30が各ドラム24、26、28の周方向に沿って正逆両方向に回転し、記録媒体Pの搬送方向下流側端部を挟んで保持したり、離したりするようになっている。
【0054】
つまり、グリッパー30は、その先端部が各ドラム24、26、28の周面から若干突出するように回転することで、取出ドラム24の周面と搬送ドラム26の周面とが対面する受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっており、搬送ドラム26の周面と送出ドラム28の周面とが対面する受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ記録媒体Pを受け渡すようになっている。
【0055】
また、インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド10Y〜10Kをメンテナンスするメンテナンスユニット(図示省略)を備えている。メンテナンスユニットは、インクジェットヘッド10Y〜10Kのノズル面を覆うキャップ、予備吐出(空吐出)された液滴を受ける受け部材、ノズル面を清掃する清掃部材、ノズル内のインクを吸引するための吸引装置等を有しており、メンテナンスユニットがインクジェットヘッド10Y〜10Kに対向する対向位置に移動し、各種のメンテナンスを行う。また、メンテナンスユニットには後述する洗浄液が供給される。
【0056】
次に、インクジェット記録装置1の画像記録動作について説明する。
【0057】
記録媒体収容部12から取出ドラム24のグリッパー30により1枚ずつ取り出されて保持された記録媒体Pは、取出ドラム24の周面に吸着されつつ搬送され、受渡位置36において、取出ドラム24のグリッパー30から搬送ドラム26のグリッパー30へ受け渡される。
【0058】
搬送ドラム26のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その搬送ドラム26に吸着されつつインクジェットヘッド10Y〜10Kの画像記録位置まで搬送され、そのインクジェットヘッド10Y〜10Kから吐出されるインク滴により、記録面に画像が記録される。
【0059】
記録面に画像が記録された記録媒体Pは、受渡位置38において、搬送ドラム26のグリッパー30から送出ドラム28のグリッパー30へ受け渡される。そして、送出ドラム28のグリッパー30により保持された記録媒体Pは、その送出ドラム28に吸着されつつ搬送され、記録媒体排出部18へ排出される。以上のように、一連の画像記録動作が行われる。
【0060】
メインインクタンク21Y〜21Kには、液体供給装置40が接続される。液体供給装置40は、メインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットにインクや洗浄液を供給する。
【0061】
−液体供給装置−
図2は、液体供給装置40を全体的に示す斜視図である。
【0062】
液体供給装置40は三段の棚状の筐体41と、筐体41に備えられる5個のタンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wから構成される。尚、タンクユニット42Y,42M,42C,42K,42Wを総称する場合に、「タンクユニット42Y〜42W」と示す場合がある。タンクユニット42Y〜42Wはそれぞれ略立方体を呈する。
【0063】
タンクユニット42Y,42M,42C,42Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクを充填しており、タンクユニット42Wは洗浄液を充填している。タンクユニット42Y〜42Wは筐体41の台座44から着脱自在であり、液体を供給先に供給する交換式の供給タンクである。
【0064】
筐体41の中段の台座44には、タンクユニット42Yとタンクユニット42Mが設けられる。筐体41の上段の台座44には、タンクユニット42Cとタンクユニット42Kとタンクユニット42Wが設けられる。タンクユニット42Yはメインインクタンク21Yに、タンクユニット42Mはメインインクタンク21Mに、タンクユニット42Cはメインインクタンク21Cに、タンクユニット42Kはメインインクタンク21Kに、タンクユニット42Wはメンテナンスユニットにそれぞれ対応する配管46(図1では図示省略。後述の図11、図12を参照)を介して接続される。
【0065】
各タンクユニット42Y〜42Wは、それぞれの接続先(供給先)であるメインインクタンク21Y〜21Kやメンテナンスユニットよりも重力方向において上方に設けられ、水頭差によってインクまたは洗浄液を接続先に供給する。
【0066】
筐体41の台座44には、各タンクユニット42Y〜42Wに対応して操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wが設けられる。操作レバー48Y,48M,48C,48K,48Wはタンクユニット42Y〜42Wの交換時に作業者によって上下方向に操作される。
【0067】
筐体41の右側上部付近には操作盤50が取り付けられる。操作盤50には、操作スイッチ52と複数の表示灯54が備えられる。メインインクタンク21Y〜21Kいずれかのインクまたはメンテナンスユニットの洗浄液の液量が予め定められた量まで減少したとき、対応する表示灯54が点灯し、操作者にタンクユニット42Y〜42Wの交換が促さられる。
【0068】
以下、各タンクユニット42Y〜42Wの構成や操作レバー48Y〜48Wの構成は同一であるので、1つのタンクユニット42Y及び操作レバー48Yについて具体的に説明する。尚、符号の添え字「Y」も適宜省略する。
【0069】
図3は、図2に示す台座44の内部について操作レバー48を中心に示す側面図である。尚、図3の(a)は操作レバー48が下方に位置する状態を示し、図3の(b)は操作レバー48が上方に位置する状態を示す。
【0070】
操作レバー48は、2つのレバーアーム60を有している(1つは不図示)。各レバーアーム60は回転軸62を介して台座44に支持されており、操作レバー48は回転軸62を中心に回転操作自在とされる。レバーアーム60には、長孔64や後述する係合ピン66と係合するための切り欠き溝68が形成される。この切り欠き溝68は、回転軸62を中心とした円周に沿って形成されており、係合ピン66との係合状態においてタンクユニット42を取り外すことを禁止する構成となっている。
【0071】
以上のような操作レバー48には、台座44の内部であってタンクユニット42に対向する位置に配置された穿孔部70が接続されている。穿孔部70は、操作レバー48の操作位置に応じて上下に動作させられる。具体的には、穿孔部70はレバーアーム60の間に配置されており、穿孔部70の両側端に設けられる側端ピン72をレバーアーム60に形成された長孔64にはめ込む形で操作レバー48に接続されており、穿孔部70は操作レバー48の回転操作に応じて、穿孔部70の側面に設けられた、図示しない2個の門状のガイド部材に沿って上下に移動させられる。
【0072】
後述するように、穿孔部70が操作レバー48によって上方に動作されるとタンクユニット42に挿入され(差し込まれ)、穿孔部70によってタンクユニット42が開封され、タンクユニット42から液体(インク)が排出される。
【0073】
図4は、穿孔部70の構成を示す断面図である。
【0074】
穿孔部70は、ベース部材74と、ベース部材74の凹部74Aに設けられると共に上方に向けて開口し、当該開口を囲む囲み部材76と、囲み部材76の内部に設けられる受け部材78と、受け部材78の内部に配置される穿孔具80から構成される。
【0075】
囲み部材76は、ベース部材74に対してねじ82で固定される。囲み部材76の底面の中央には、孔が予め設けられる。また、ベース部材74の凹部74Aの底面の中央にも囲み部材76の孔よりも一回り小さい孔が予め設けられる。
【0076】
受け部材78は、ゴム材からなると共に大略管状を呈し、管部84と、管部84の一端から外方に伸びる受け部86を備える。管部84の他端はベース部材74の凹部74Aの底に密着させられると共に、受け部86は囲み部材76の底に密着させられる。ベース部材74の凹部74Aに形成された孔には、液体の供給先と接続するための配管46の一端が接続される。穿孔具80の基部は配管46の端面に取り付けられ、穿孔具80はその先端部が上方を向いた状態で固定される。
【0077】
図5は、穿孔具80の構成を具体的に示す構成図である。図5(a)は穿孔具80の分解図を示し、図5(b)は穿孔具80の断面図を示す。
【0078】
穿孔具80は、2枚の板を互いに直角に組み合わせて形成される。具体的には、2枚の板の内の一方の板はその基部側から延びる溝を有し、他方の板はその先端側から延びる溝を有し、それら溝を互いに他方の板に挿入して組み合わせることで穿孔具80が形成される。各板同士は組み合わされた後、溶接あるいは接着材などで固定される。図示の如く、穿孔具80の先端側においては先端中心に向けて傾斜される傾斜部80Aが形成されると共に、断面視においては放射状、具体的には十文字状を呈する。即ち、穿孔具80は全体として十字針状を呈する。
【0079】
そして、このような穿孔具80は、穿孔部70が操作レバー48によって上方に動作されるとタンクユニット42に差し込まれる。
【0080】
図6は、タンクユニット42を示す斜視図である。この図6では(a)、(b)、(c)のように角度を変えて3方向から見た場合のタンクユニット42を示す。
【0081】
タンクユニット42は、カートンユニット90と、カートンユニット90を装着するカートンアダプタ92と、から構成される。図中のAで示す面はタンクユニットが台座に装着されるとき前面を向く面(前面)であり、Bで示す面は側面、Cで示す面は背面、Dで示す面は下面、Eで示す面は上面である。下面Dからは、液体の出入り口となるキャップ部94が突出している。
【0082】
カートンアダプタ92は肉薄の板金からなり、カートンユニット90の6面の内の前面と両側面と下面の4面を囲うように前板92A、側板92B、下板92Dが互いに直角をなすように形成されている。
【0083】
下板92Dには、カートンユニット90のキャップ部94を通すための開口部96が形成されている。この開口部96は、矩形に開口した部分(以下、「矩形開口部」という)96Aと半円形に開口した部分(以下、「半円形開口部」という)96Bからなる。矩形開口部96Aは、キャップ部94の横断面よりも大きく形成されており、キャップ部94を通すための部分である。半円形開口部96Bは、キャップ部94の横断面よりも小さく形成されており、矩形開口部96Aから通されたキャップ部94を引っ掛けてキャップ部94が開口部96から抜けないように保持するための部分である。
【0084】
また、下板92Dには、外方に向けて先端がやや丸みを帯びた位置決めピン100が2個形成される。この位置決めピン100は、タンクユニット42を台座44に装着させる際の位置合わせを目的としたものである。
【0085】
両側板92Bには、外方に向けて係合ピン66が1個ずつ形成される。この係合ピン66は、上述したように、操作レバー48が上方位置に操作されるとき、レバーアーム60の切り欠き溝66に係合されるものである。
【0086】
次に、以上のようなカートンアダプタ92に装着されるカートンユニット90について説明する。
【0087】
−カートンユニット−
図7は、カートンユニット90の構成を示す斜視図である。
【0088】
カートンユニット90は、略立方体状を呈する。このカートンユニット90は、本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110と、その液パック113を収容するカートン(紙箱)112から構成される。
【0089】
本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110は、液パック113と、キャップ部94と、を備える。液パック113は、柔軟性を有し、例えばポリエチレンからなる略立方体状を呈しており、液体(インク)を収容している。液パック113には、液体を充填する口部114が形成されている。この口部114には、キャップ部94が接続されており、カートン112にはそのキャップ部94を露出させるための開口116が設けられる。
なお、液パック113をカートン112に収容した上でカートンアダプタ92に装着するのは、液パック113をカートン112に収容した状態の方が液パック113のみの状態よりも取り扱いが平易であり、液パック113のカートンアダプタ92への装着が容易となるからである。
また、液パック113には、キャップ部94以外の空気孔などは設けられておらず、液パック113は液体の排出に伴ってつぶれるようになっている。
【0090】
図8は、本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110のキャップ部94の構成を示す断面図であり、キャップ部94が口部114に接続(打栓)される前の状態を示す図である。図9は、キャップ部94の構成を示す断面図であり、キャップ部94が口部114に接続(打栓)された後の状態を示す図である。
【0091】
キャップ部94は、インクが充填された液パック113の口部114に打栓されて接続される。このキャップ部94は樹脂材からなり、防塵キャップ120と、キャップ本体122と、を主に備える。
【0092】
防塵キャップ120は、キャップ本体122の外側先端に取り付けられ、カートンユニット90の輸送時や保管時にキャップ本体122内に塵等が入り込むことを防止するものである。したがって、カートンユニット90の使用時にはキャップ本体122から取り外される。また、防塵キャップ120は、爪部120Aを有しており、この爪部120Aをキャップ本体122に形成された係止部124に係止させることにより、防塵キャップ120がキャップ本体122から抜けることを抑制している。
防塵キャップ120の内壁とキャップ本体122の内周壁122Cとの間には、防塵キャップ120を押さえる押さえ板126と、防塵キャップ120を支える支え板128が設けられている。
【0093】
押さえ板126は、円筒状に形成されており、中心部に押さえ板126を貫通した貫通部126Aが形成されている。支え板128は、キャップ本体122の内周壁122Cに支持されており、押さえ板126と同様に、円筒状に形成され、中心部に貫通部126Aと連通する支え板128を貫通した開口部128Aが形成されている。
【0094】
同様に、キャップ本体122も、円筒状に形成されており、中心部にキャップ本体122を貫通した貫通部122Aが形成されている。キャップ本体122の内側(液パック113側)先端部の外周壁122Bには、爪部130が突設されている。爪部130は、キャップ本体122が液パック113の口部114に打栓された際に、口部114の内周壁114Aに形成された係止部132に係止される。この爪部130は、第1傾斜部130Aと第2傾斜部130Bとを備えている。第2傾斜部130Bは、第1傾斜部130Aよりも傾斜角度が大きくされ(緩やかとされ)、キャップ本体122が口部114に打栓され易くなっている。逆に、第1傾斜部130Aは、第2傾斜部130Bよりも傾斜角度が小さくされ(急とされ)、キャップ本体122が口部114から抜け難くなっている。
なお、キャップ本体122の内側先端部の外周壁122Bと、係止部132が形成された口部114の内周壁114Aとの間には、キャップ本体122の内側先端部が拡径方向へ変形可能とするスペース134が形成されている。
【0095】
また、キャップ本体122の外周壁122Bには、Oリング136が取り付けられている。このOリング136は、キャップ本体122が口部114に打栓された際に、キャップ本体122と口部114との間に形成される隙間から液漏れすることを防止する。
【0096】
また、キャップ本体122の内周壁122C中央部には、貫通部122Aを閉塞して、口部114を封止する封止膜138が設けられている。
【0097】
図10は、キャップ本体122の平面図(キャップ本体122開口部側から見た図)である。
【0098】
キャップ本体122に設けられた封止膜138は、平面視が円形状とされ、その直径が穿孔具80の横幅の長さよりも大きくされている。このような封止膜138は、当該封止膜138の中心部に形成され、上述の穿孔具80の先端が当たる平面視が円形状の当り部140と、この当り部140の外周を囲いキャップ本体122に結合された囲い部142と、この囲い部142を横断して当り部140から封止膜138の外周部まで伸び、これら当り部140及び囲い部142より薄肉の第1破断部144と、を主に備えている。
【0099】
当り部140は、囲い部142の表面よりへこんで、裏面から出張っている。
また、第1破断部144の形状は、穿孔具80の形状と異なるように形成されており、本第1実施形態では、第1破断部144は、封止膜138を平面視したとき略S字の曲線状の溝部とされ、放射状に3本形成されている。
【0100】
このような第1破断部144の一端には、封止膜138に破断誘導部146が繋がっている。破断誘導部146は、当り部140と囲い部142との間に形成され、当り部140と囲い部142を接続している。この破断誘導部146は、これら当り部140及び囲い部142よりも薄肉とされ、第1破断部144の破断を誘導する。また、破断誘導部146は、封止膜138を平面視したとき輪状の溝部とされている。すなわち、当り部140が外周に形成された溝部から上(キャップ本体122開口部側)に突出した形となる。
なお、第1破断部144の肉厚は、破断誘導部146の肉厚と同一である。
【0101】
一方、第1破断部144の他端には、第2破断部148が繋がっている。第2破断部148は、封止膜138の外周部に沿って形成され、当り部140及び囲い部142よりも薄肉とされている。また、第2破断部148は、封止膜138を平面視したとき所定の間隔をあけて形成された輪状の溝部とされている。
【0102】
−作用−
次に、本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110の作用について説明する。
図11は、本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110の作用を説明する図であり、(a)は封止膜138が穿孔具80によって穿孔される前の様子を示す図であり、(b)は穿孔された後の様子を示す図である。なお、図11(b)の封止膜138の穿孔状態は、模式的に表したものであり、実際の穿孔状態とは異なる。
【0103】
本発明の第1実施形態に係る印刷用液体容器110の封止膜138は、図11(a)及び(b)に示すように、穿孔具80によって穿孔される。ここで、封止膜138を穿孔具80で穿孔する際、この穿孔具80が図10に示す封止部の中心部に形成された当り部140に当たることで、その当り部140に応力が集中する。このため、封止膜138より薄肉の第1破断部144において封止膜138の外周部側まで当り部140から応力が伝わり易くなり、第1破断部144全体を破断させることができ、もって封止膜138の開口面積を大きくすることができる。
【0104】
また、当り部140の外周には、封止膜138より薄肉とされ、第1破断部144と繋がり当該第1破断部144の破断を誘導する破断誘導部146が形成されているので、当り部140に集中した応力が、そのまま当り部140の外周に形成された、封止膜138(当り部140及び囲い部142)より薄肉の破断誘導部146に伝わって、当該破断誘導部146が破断する。そして、この破断によって、破断誘導部146に繋がる第1破断部144の破断を誘導することができる。
また、この破断誘導部146が当り部140の外周に形成されているので、当り部140へ穿孔具80をガイドすることもできる。
【0105】
また、当り部140は、封止膜138(囲い部142)の表面よりへこんで、裏面から出張っているので、穿孔具80の先端が封止膜138の表面よりも中に入り込んで当り部140に当るので、穿孔具80のずれを小さくすることができる。また、当り部140は裏面から出張っており、肉厚となっているため、穿孔具80が当り部140を突き抜けることがない。
【0106】
また、第1破断部144が略S字の曲線状の溝部とされているので、第1破断部の長さが例えば直線状の溝部とされた場合に比べて長くなり、破断長さを増して封止膜138の開口面積を大きくすることができる。また、このような曲線状の溝部とされた第1破断部144が、封止膜138に複数本形成されているので、封止膜138の開口面積をより増やすことができる。
また、S字は、穿孔具80の形状(十文字状)と異なることとなり、封止膜138が穿孔具80に貼り付いても、第1破断部144が破断して封止膜138を開口するため、口部114から液体を外部に流出させることができる。
【0107】
また、キャップ本体122は、封止膜138の外周部に沿って形成され、第1破断部144と繋がり、封止膜138(当り部140及び囲い部142)より薄肉の第2破断部148、を備えるため、封止膜138を穿孔具80で穿孔する際、第1破断部144の破断により、第1破断部144と繋がる第2破断部148も破断することとなる。そして、第2破断部148の少なくとも一部が破断すると、封止膜138の外周部が開口するので、穿孔具80を封止膜138から抜くときに、穿孔具80との接触抵抗を減らすことができ、封止膜138の擦れクズの発生を防止できる。
【0108】
また、第2破断部148を複数設けることにより、穿孔具80との接触抵抗を減らしつつ、これら複数の第2破断部148間で所定の間隔をあけることにより、封止膜138の外周部で破断しない箇所、すなわち封止膜138とキャップ本体122の結合箇所を残すことができ、封止膜138がキャップ本体122から剥がれ落ちることを防止することができる。
【0109】
また、キャップ部94は、口部114に打栓される構成であるため、キャップ部94の構成をシンプルにすることができるとともに、一般的な螺子キャップが必要とするトルク管理等の煩雑な作業がなくてもキャップ部94と口部114との確実な嵌合いを実現することができる。
【0110】
また、キャップ部94は、筒体のキャップ本体122と、キャップ本体122の外周壁122Bに突設された爪部130を備え、爪部130は口部114の内周壁114Aに形成された係止部132に係止されるので、液圧によりキャップ部94が口部114から抜けることを防止することができる。
【0111】
また、係止部132が形成された口部114の内周壁114Aには、筒体とされたキャップ本体122の先端が拡径方向へ変形可能とするスペース134が形成されているので、例えば衝撃による内圧上昇でキャップ本体122の先端が拡径方向へ変形し、さらに爪部130と係止部132の係止が高まる。これにより、キャップ部94が口部114から抜けることを防止することができる。
【0112】
なお、印刷用液体容器110にインクが充填されてなる印刷用液体充填済み容器は、インクを充填する口部114が形成された液パック113を用意するステップと、液パック113にインクを充填するステップと、口部114に上述のようなキャップ部94を打栓するステップと、によって製造され得る。
【0113】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器について説明する。図12は、本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器のキャップ部の構成を示す断面図である。
【0114】
−印刷用液体容器−
本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器200は、第1実施形態に係る印刷用液体容器110の構成と同様であるが、キャップ部94の支え板128の代わりとして弾性封止部材202を備えている。
【0115】
弾性封止部材202は、キャップ部94の内部で封止膜138よりもキャップ部94の開口部側に取り付けられており、封止膜138と共に口部114を封止するものであるが、封止膜138と異なり、後述するように封止膜138を穿孔した後も口部114を封止することができるものである。
【0116】
弾性封止部材202と封止膜138との間の距離L1は、封止膜138から穿孔具80を抜くタイミングと、弾性封止部材202から穿孔具80を抜くタイミングとの時間差をつけるという点で長い方が好ましく、例えば10.0mmである。封止膜138とキャップ本体122の内側先端(印刷用液体容器200側)との間の距離L2は、特に限定されないが、例えば14.3mmである。
なお、封止膜138近辺の貫通部122Aの直径R1は、例えば21.4mmであり、押さえ板126により形成される貫通部126Aの直径R2は、例えば15.5mmである。
【0117】
図13は、弾性封止部材202の正面図である。
【0118】
弾性封止部材202は、シリコーンゴムからなり、弾性を有すると共に円盤状を呈する。弾性封止部材202の直径R3は、特に限定されないが、例えば32.0mmである。
【0119】
この弾性封止部材202の円状面の中央には、一側から他側に貫通する一文字状のスリット(切り込み)204が設けられる。このスリット204は、弾性封止部材202の弾性力により通常は閉じられており、当該スリット204からの液体の流出入は不可とされている。しかし、穿孔具80により封止膜138を穿孔する際、スリット204は、穿孔具80によって押し広げられて、当該スリット204からの液体の流出可能となる。
【0120】
スリット204の長さL3は、例えば20.0mmである。また、穿孔具80の横幅W1は、特に限定されないが、本実施形態では例えば15.0mmとされている。また、穿孔具80の厚みTは、例えば1.0mmである。
【0121】
−作用−
次に、本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器200の作用について説明する。
図14は、本発明の第2実施形態に係る印刷用液体容器200の作用を説明する図であり、(a)は穿孔具80による穿孔前の状態を示し、(b)は穿孔具80による穿孔途中の状態を示し、(c)は穿孔具80による穿孔後の状態を示す。
【0122】
図14(a)及び(b)に示すように、穿孔具80がキャップ部94の内部に挿入されると、弾性封止部材202のスリット204は穿孔具80によって矩形状に押し広げられる。尚、押し広げられる前の一文字状のスリット204の長さを上記L3とした場合、穿孔具80によって押し広げられた後の矩形状のスリット204の4辺の合計の長さは10%以内の範囲で増加し、2×L3から2×L×110%の範囲の長さとなる。
【0123】
穿孔具80によって封止膜138が突き破られると、液パック113内部の液体が下方に流出し始める。液体は穿孔具80の外壁面と矩形状に押し広げられたスリットの内壁面によって確保される空間206を通じて配管46まで導かれ、配管46を通って接続先であるメインインクタンク21に供給されることとなる。穿孔具80が注射針のように中空の針から構成され、中空部分を介して液体を排出させる場合に比べると、液体を排出させるための流路(空間206)には液体の排出を阻害するような流路壁が形成されることがなく、液体が口部近傍に溜まることがない。即ち、穿孔具80の外壁面とスリットの内壁面によって確保される流路(空間206)は液体の完全なる排出に資する構成と言える。
【0124】
図14(b)の状態から穿孔具80が口部114から引き抜かれると、弾性封止部材202のスリット204は図14(c)に示すように弾性封止部材202の弾性力により一文字状に復帰する。このため、液パック113に液体が残されていたとしても残液が漏れ出ることを防止できる。
【0125】
(変形例)
なお、本発明を特定の第1及び第2実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであり、例えば上述の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。また、以下の変形例を、適宜、組み合わせてもよい。
【0126】
例えば、第1実施形態では液パック113をカートン112に収容した上でカートンアダプタ92に装着させるように構成したが、カートン112を用いることなく液パック113を直接カートンアダプタ92に装着させるようにしてもよい。
【0127】
また、第1破断部144の肉厚は、破断誘導部146の肉厚と同一である場合を説明したが、第1破断部144の肉厚を、破断誘導部146の肉厚よりも厚くしてもよい。これにより、当り部140に集中した応力で、第1破断部144よりも先に破断誘導部146を破断させ、確実に第1破断部144の破断を誘導することができる。
逆に、第1破断部144の肉厚を、破断誘導部146の肉厚よりも薄くすることもできる。これにより、破断誘導部146が全て破断して当り部140が剥がれ落ちることを防止することができる。
【0128】
また、当り部140は、囲い部142の表面よりへこんで、裏面から出張っている場合を説明したが、当り部140と囲い部142との表面差は無くてもよいし、逆に、囲い部142の裏面よりへこんで、表面から出張っていてもよい。表面から出張っていると、穿孔具80が当り部140に最初にあたることを確実とすることができる。
【0129】
上記「液体」には、インクに限るものではなく、吐出されるときに液体となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料なども含まれる。
【0130】
また、第1破断部144は、平面視が略S字の曲線状の溝部とされる場合を説明したが、直線状や鋸歯状とすることもできる。
【符号の説明】
【0131】
1 インクジェット記録装置(画像形成装置)
80 穿孔具
94 キャップ部
110 印刷用液体容器(印刷用液体充填済み容器)
113 液パック(容器本体)
114 口部
122 キャップ本体
122B 外周壁
130 爪部
132 係止部
134 スペース
138 封止膜
140 当り部
144 第1破断部
146 破断誘導部
148 第2破断部
200 印刷用液体容器
202 弾性封止部材(弾性封止部)
204 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用の液体を充填する口部が形成された容器本体と、
前記口部に接続されたキャップ部と、
前記キャップ部に設けられ、前記口部を封止する封止部と、
前記封止部の中心部に形成され、前記封止部を穿孔する穿孔具が当たる当り部と、
前記当り部から前記封止部の外周部まで伸び、前記封止部より薄肉の第1破断部と、
を備える印刷用液体容器。
【請求項2】
前記当り部の外周には、前記封止部より薄肉とされ、前記第1破断部と繋がり前記第1破断部の破断を誘導する破断誘導部が形成されている、
請求項1に記載の印刷用液体容器。
【請求項3】
前記当り部は、前記封止部の表面よりへこんで、裏面から出張っている、
請求項1又は請求項2に記載の印刷用液体容器。
【請求項4】
前記第1破断部の肉厚は、前記破断誘導部の肉厚よりも厚い、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の印刷用液体容器。
【請求項5】
前記第1破断部は、前記封止部を平面視したとき曲線状の溝部とされ、複数本形成されている、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の印刷用液体容器。
【請求項6】
前記曲線状は、S字状である、
請求項5に記載の印刷用液体容器。
【請求項7】
前記封止部の外周部に沿って形成され、前記第1破断部と繋がり、前記封止部より薄肉の第2破断部、
を備える請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の印刷用液体容器。
【請求項8】
前記第2破断部は、所定の間隔をあけて複数設けられている、
請求項7に記載の印刷用液体容器。
【請求項9】
前記キャップ部は、前記口部に打栓される、
請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の印刷用液体容器。
【請求項10】
前記キャップ部は、筒体と、前記筒体の外周壁に突設された爪部を備え、
前記爪部は前記口部の内周壁に形成された係止部に係止される、
請求項9に記載の印刷用液体容器。
【請求項11】
前記係止部が形成された前記口部の内周壁には、前記筒体の先端が拡径方向へ変形可能とするスペースが形成されている、
請求項10に記載の印刷用液体容器。
【請求項12】
前記封止部よりも前記キャップ部の開口部側に設けられ、スリットが形成された弾性封止部、
を備える請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の印刷用液体容器。
【請求項13】
請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の印刷用液体容器に、印刷用の液体が充填されてなる印刷用液体充填済み容器。
【請求項14】
請求項1〜請求項12の何れか1項に記載の印刷用液体容器と、
前記第1破断部の形状と異なる形状を有し、前記封止部を穿孔する穿孔具と、
を備える画像形成装置。
【請求項15】
印刷用の液体を充填する口部が形成された容器本体を用意するステップと、
前記容器本体に、印刷用の液体を充填するステップと、
前記口部に、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の印刷用液体容器に用いられるキャップ部を打栓するステップと、
を有する印刷用液体充填済み容器の製造方法。
【請求項16】
前記キャップ部は、筒体と、前記筒体の外周壁に突設された爪部を備え、
前記爪部は前記口部の内周壁に形成された係止部に係止される、
請求項15に記載の印刷用液体充填済み容器の製造方法。
【請求項17】
前記係止部が形成された前記口部の内周壁には、前記筒体の先端が拡径方向へ変形可能とするスペースが形成されている、
請求項16に記載の印刷用液体充填済み容器の製造方法。
【請求項18】
前記封止部よりも前記キャップ部の開口部側に設けられ、スリットが形成された弾性封止部、
を備える請求項15〜請求項17の何れか1項に記載の印刷用液体充填済み容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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