説明

印刷管理装置、印刷管理方法および印刷管理プログラム

【課題】印刷装置で使用者が消費するインク量に応じて適切に課金すること。
【解決手段】プリンター1(印刷管理装置)は、使用者が利用可能なインク量を記憶する使用可能カウンター17c(印刷使用可能量記憶部)、使用可能カウンター17cが記憶しているインク量に更なるインク量を加算する加算制御部17d(印刷使用可能量加算部)、並びに使用可能カウンター17cが記憶しているインク量に基づいてプリンター1での印刷処理の可否判定を実行する印字制御部17aを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷管理装置、印刷管理方法および印刷管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、消耗物品の枯渇に伴う機器の不稼動状態や消耗物品の枯渇に伴う不便さを回避するために、サービス受給者に納入する消耗物品のうち、実際に使用した消耗物品に対してのみ課金対象とすることにより、予測といった不確実な方法を採ることなしに、不必要な出費を抑制することができる方法およびシステム等に関する技術内容が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4397534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
消耗物品の交換を前提とした機器については、予備としての消耗物品を購入して用意しておかなければならないという問題があるが、上述の特許文献1で示されるように、現在必要とする数以上の消耗物品を予備として保持し、実際に使用したインクカートリッジについて課金対象とすることで、不必要な出費を抑制することができる。
【0005】
ところで、消耗物品の交換を前提とした機器の一例である着脱式のインクカートリッジを使用した印刷装置では、印刷ヘッドのフラッシングの際、クリーニングのための強制的なインク吸引の際などにもインクを消費するため、これらの頻度が高いほど1つのインクカートリッジで印刷できる枚数が少なくなるという問題がある。ここで、特許文献1に開示される方法およびシステムにおいて、課金対象となる単位はインクカートリッジの使用数単位であるため、印刷ヘッドのフラッシング等で消費されたインク量の多少にかかわらず、インクカートリッジの使用数単位で課金されてしまう。
【0006】
また、特許文献1に開示される機器は、消耗物品の管理を行うためのサービス管理装置とネットワークで接続することが前提であるため、サービス管理装置とネットワークで接続できない環境にある使用者、またはサービス管理装置とネットワーク経由での接続を望まない使用者に対しては不便な方法およびシステムといえる。
【0007】
本発明は、上記の事情に基づき為されたもので、その目的とするところは、印刷装置で使用者が消費するインク量に応じて適切に課金することができる印刷管理装置、印刷管理方法および印刷管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の印刷管理装置は、印刷装置で利用可能なインク量を記憶する印刷使用可能量記憶部と、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に更なるインク量を加算する印刷使用可能量加算部と、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に基づいて印刷装置での印刷処理の可否判定を実行する印刷管理制御部と、を具備するものである。なお、ここでいう「インク量」には、通常のインク量という意味の他に、「インクドット数」が含まれる。
【0009】
このように構成する場合、印刷管理装置は、自己で管理する印刷装置で使用可能なインク量を管理し、当該印刷装置において使用可能なインク量に基づいて印刷が実行される。また、印刷使用可能量加算部によって印刷使用可能量記憶部に所定の数が加算されることで、上述した印刷装置において使用できるインク量が加算される。これにより、たとえば、上述した印刷装置の使用者と当該印刷装置を製造および/または販売等した会社間において所定のインク量を使用できる契約を締結した場合に、当該契約によって定められたインク量の範囲内で印刷装置が利用されると共に、使用者が更に印刷装置を使用することを所望する場合には、印刷管理装置を介して使用可能なインク量を加算することが可能となる。すなわち、使用者にとっては、印刷装置で使用するインク量に応じて費用を支払うことが可能となる。また、印刷装置を製造および/または販売した会社にとっては、当該印刷装置のインクの使用状況に応じて課金する仕組みを実現することが可能となる。すなわち、この印刷管理装置によって管理される印刷装置では、特許文献1に開示される機器のように、インクカートリッジの使用数単位で課金されることはない。また、この印刷管理装置および印刷装置は、消耗物品の管理を行うためのサービス管理装置とネットワーク接続することが必須ではない。
【0010】
また、本発明の他の一側面は、上述の発明の構成に加えて、所定の時点からの印刷装置で使用されたインク量の累計を記憶する累計印刷使用量記憶部と、をさらに備え、印刷管理制御部は、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と、累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量とを比較し、当該比較結果に基づいて印刷装置での印刷処理の可否判定を実行するものである。
【0011】
このように構成する場合、上述した発明の効果に加えて、所定の時点からの印刷装置で使用されたインク量の累計と使用可能とされるインク量とを比較することで、印刷使用量を記録し、使用されたインク量に基づいて印刷可否判定を厳密に実行することが可能となる。
【0012】
また、本発明の他の一側面は、上述した発明のいずれかの構成に加えて、印刷管理制御部は、累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量が印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と等しい場合または大きい場合には、印刷装置での印刷を禁止するまたは警告する制御信号を印刷装置に対して出力するものであることが好ましい。
【0013】
このように構成する場合、上述した発明のいずれかの効果に加えて、印刷管理装置から出力された印刷処理を禁止するまたは警告する制御信号によって印刷装置で実際に使用可能とされているインク量以上の使用を制限する、または使用者に対して超過している旨を通知することが可能となる。
【0014】
また、本発明の他の一側面は、上述した発明のいずれかの構成に加えて、印刷管理制御部は、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と、累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量との差分および印刷装置の1枚あたりのインク使用量に基づいて印刷装置における印刷可能枚数を算出し、当該印刷可能枚数を印刷装置に対して出力することが好ましい。
【0015】
このように構成する場合、上述した発明のいずれかの効果に加えて、使用可能なインク量に基づく印刷可能枚数を使用者に対して通知することが可能となる。
【0016】
また、本発明の他の一側面は、上述した発明のいずれかの構成に加えて、印刷使用可能量加算部は、印刷装置で使用可能なインク量に関する情報が記憶された記録媒体から当該インク量を取得すると共に、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に加算するものであることが好ましい。
【0017】
このように構成する場合、上述した発明のいずれかの効果に加えて、たとえば、印刷装置の使用者と当該印刷装置を製造および/または販売等した会社間の契約により、定期的に所定のインク量の使用契約を締結している場合であって、当該使用契約内で定められているインク量が記録された記録媒体から印刷使用可能量加算部が情報を取得して、印刷使用可能量記憶部に定期的に加算することで、使用者が当該契約の範囲内で印刷装置を使用される。また、使用者の使用状況に応じて、使用可能なインク量に関する情報が記憶された記録媒体を追加して購入すれば、印刷装置で使用するインク量に応じて費用を支払うことが可能となる。
【0018】
また、本発明の他の一側面は、上述した発明のいずれかの構成に加えて、印刷管理制御部は、印刷装置が使用するインク量のうち、印刷装置の使用者が所望のデータを印刷するために使用され、かつ正常に印刷が完了した際のインク量以外は、使用者により消費されたインク量とみなさないことが好ましい。
【0019】
このように構成する場合、上述した発明のいずれかの効果に加えて、印刷装置が実行するフラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作、またはインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインク、印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては課金対象とならないため、使用者にとっては、実際の印刷処理で使用したインク量にのみ課金される方法となるためより好ましいものとなる。
【0020】
また、本発明の他の一側面は、印刷装置の使用するインク量を管理する印刷管理装置が実行する印刷管理方法に係るものである。すなわち、上述した印刷管理装置が、印刷装置で利用可能なインク量を記憶するステップ、印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に更なるインク量を加算するステップ、並びに印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に基づいて印刷装置での印刷処理の可否判定を実行するステップと、を有するものである。
【0021】
このように構成する場合、印刷管理装置が実行する印刷管理方法は、自己で管理する印刷装置で使用可能なインク量を管理し、当該印刷装置において使用可能なインク量に基づいて印刷が実行される。また、加算するステップによって印刷使用可能量記憶部に更なるインク量が加算されることで、上述した印刷装置において使用できるインク量が加算される。これにより、たとえば、上述した印刷装置の使用者と当該印刷装置を製造および/または販売等した会社間において所定のインク量を使用できる契約を締結した場合に、当該契約によって定められたインク量の範囲内で印刷装置が利用されると共に、使用者が更に印刷装置を使用することを所望する場合には、印刷管理装置を介して使用可能なインク量を加算することが可能となる。すなわち、使用者にとっては、印刷装置で使用するインク量に応じて費用を支払うことが可能となる。また、印刷装置を製造および/または販売した会社にとっては、当該印刷装置のインクの使用状況に応じて課金する仕組みを実現することが可能となる。すなわち、この印刷管理装置が実行する印刷管理方法によって管理される印刷装置では、特許文献1に開示される機器のように、インクカートリッジの使用数単位で課金されることはない。また、この印刷管理方法では、消耗物品の管理を行うためのサービス管理装置とネットワーク接続することが必須ではない。
【0022】
また、本発明の他の一側面は、コンピューターを上述した印刷管理装置として機能させるための印刷管理プログラムに係るものである。すなわち、コンピューターを、印刷装置で利用可能なインク量を記憶する印刷使用可能量記憶手段、印刷使用可能量記憶手段が記憶しているインク量に更なるインク量を加算する印刷使用可能量加算手段、並びに印刷使用可能量記憶手段が記憶しているインク量に基づいて印刷装置での印刷処理の可否判定を実行する印刷管理制御手段、として機能させるための印刷管理プログラムである。
【0023】
このように構成する場合、コンピューターを印刷管理装置として機能させる印刷管理プログラムは、自己で管理する印刷装置で使用可能なインク量を管理し、当該印刷装置において使用可能なインク量に基づいて印刷が実行される。また、印刷使用可能量加算手段によって印刷使用可能量記憶手段に所定のインク量が加算されることで、上述した印刷装置において使用できるインク量が加算される。これにより、たとえば、上述した印刷装置の使用者と当該印刷装置を製造および/または販売等した会社間において所定のインク量を使用できる契約を締結した場合に、当該契約によって定められたインク量の範囲内で印刷装置が利用されると共に、使用者が更に印刷装置を使用することを所望する場合には、印刷管理装置を介して使用可能なインク量を加算することが可能となる。すなわち、使用者にとっては、印刷装置で使用するインク量に応じて費用を支払うことが可能となる。また、印刷装置を製造および/または販売した会社にとっては、当該印刷装置のインクの使用状況に応じて課金する仕組みを実現することが可能となる。すなわち、この印刷管理装置として機能させるための印刷管理プログラムによって管理される印刷装置では、特許文献1に開示される機器のように、インクカートリッジの使用数単位で課金されることはない。また、この印刷管理プログラムでは、消耗物品の管理を行うためのサービス管理装置とネットワーク接続することが必須ではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例に係るプリンターの外観構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示すプリンターの概略構成とプリンターと通信可能なPCを説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示すジョブ情報記憶部に記憶されるジョブ情報履歴の一例を模式的に示す表である。
【図4】図1に示すプリンターで実行される印刷ジョブ情報の記録処理およびインクドットカウント値の比較処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図1に示すプリンターで使用可能なインク量が追加される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る印刷管理装置、印刷管理方法、印刷管理プログラムの実施例について説明する。本発明の印刷管理方法については、印刷管理装置の動作と共に説明することとする。
【0026】
(プリンターの外観構成)
図1は、本発明の実施例に係るプリンター1の外観構成を示す斜視図である。図1に示すプリンター1は、請求項の印刷管理装置と当該印刷管理装置が管理する印刷装置とが一体化して構成した場合の一例であり、複数種のインクを使用し、記録媒体である用紙に印刷処理を実行するインクジェット方式の印刷装置、いわゆるインクジェットプリンターであり、後述するPC30(図2)と接続される。なお、プリンター1に示すように請求項の印刷管理装置と当該印刷管理装置が管理する印刷装置とが一体化して構成されずに、別々に構成されるようにしてもよい。
【0027】
このプリンター1は、使用者が印刷によって実際に使用したインク量に応じて課金を行うシステムを実現するために、印刷ジョブに対応したインク使用量と、プリンター1にて使用可能なインク使用可能量とを情報として保持し、所定のタイミングで比較することにより、使用されたインク量に応じた課金が行われるように構成されている。また、プリンター1側の都合により、印刷が失敗したような場合や、プリンター1が適切に稼動するために使用されるインクについては課金されないように構成されている。すなわち、このプリンター1では、利用者にとっては、実際の印刷処理以外の使用によって不必要に課金が行われてしまうことによるストレスが低減され、また、プリンター1を販売する会社側にとっては実質的なインクの使用に応じた課金を行うことができる仕組みが実現されている。以下、このプリンター1について具体的に説明する。
【0028】
図1に示すプリンター1は、前面上部パネル2及びケースカバー3から構成される。前面上部パネル2には、プリンター1の電源ON/OFFを行うための電源スイッチ4、印刷用紙が格納される印刷用紙格納部5、プリンター1の状態を使用者に通知する複数のLEDランプ6、装着部開閉カバー7、およびICカード挿入口8から構成されている。印刷用紙格納部5及び装着部開閉カバー7は、下部に設けられたヒンジ(不図示)を介していずれも前方に開閉可能に設けられている。
【0029】
印刷用紙格納部5の内部には、印刷用紙(不図示)が格納されており、印刷用紙格納部5を開くことにより、印刷用紙の交換または補充が可能となる。一方、装着部開閉カバー7の内部には、着脱式のインクカートリッジ(不図示)が装着されており、装着部開閉カバー7を開くことにより、当該インクカートリッジの着脱が可能になる。本実施例では、インクカートリッジは、カートリッジケース内にイエロー、シアン、マゼンダおよびブラックの4色のインクパックを一つまたは別々にパッケージングしたものであり、プリンター1は、これら4色のインクを用いて印刷用紙上に文字、図形といった画像の印刷を実行することができる。なお、インクカートリッジは、本実施例で示した以外の色数を有するもの(たとえば、1〜3色のもの、あるいは5色以上のものなど)、あるいは本実施例で示した色の組み合わせ以外のものとしてもよい。
【0030】
また、このプリンター1では、ICカード挿入口8を備えており、このICカード挿入口8に専用のICカードを挿入することで、プリンター1を販売および/または販売する会社と使用者との間で締結されたインク使用可能量の契約情報を読み取ることが可能となっている。ただし、インク使用可能量の契約情報がプリンター1の製造出荷時点で既に設定されているようにしてもよい。なお、プリンター1を製造/販売する会社と使用者との間で締結されたインク使用可能量の契約情報の詳細については後述する。
【0031】
(プリンターの概略構成等)
図2は、図1に示すプリンター1の概略構成とプリンター1と通信可能なPC30を説明するためのブロック図である。プリンター1は、たとえば、シリアル、パラレル、USB(Universal Serial Bus)、Bluetoothのいずれか、またはこれら複数の通信インタフェースを介して、PC30と通信可能に接続されており、PC30から送信される各種コマンドに応じて動作する。また、プリンター1は、ICカードスロット20(図1のICカード挿入口8と対応)に挿入された専用のICカードから上述した契約情報などを読み取ることが可能となっている。
【0032】
図2に示すPC30は、使用者の操作に応じて、印刷にあたって必要な各種動作を指示するコマンド、または印刷すべき画像に応じたデータとからなる印刷ジョブをプリンター1に対して送信する。また、PC30から送信される各印刷ジョブには他の印刷ジョブと識別するための印刷ジョブIDが付与されている。プリンター1は、このPC30から送信された印刷ジョブに応じて動作することにより、印刷処理を実行する。
【0033】
図2に示すように、プリンター1は、受信部11と、受信バッファー12と、コマンド解析部13と、印刷バッファー14と、印刷制御部15と、主制御部16と、印刷管理制御部17(請求項の印刷管理制御部の一例)と、ジョブ情報記憶部18と、送信部19と、ICカードスロット20とを備えている。また、図2に示す印刷管理制御部17は、印字制御部17aと、累計使用量カウンター17b(請求項の累計印刷使用量記憶部の一例)と、使用可能カウンター17c(請求項の印刷使用可能量記憶部の一例)と、加算制御部17d(請求項の印刷使用可能量加算部の一例)と、RTC17eとから構成されている。
【0034】
受信部11は、PC30から送信される各種コマンドや印刷データを受信する。受信バッファー12は、受信部11がPC30から受信した制御コマンドや印刷データを一時的に保持する。受信バッファー12によって受信されたデータは、コマンド解析部13に順次読み出されて解析され、制御コマンドの場合は主制御部16に送信され、印刷データの場合には印刷バッファー14にDMA(Direct Memory Access)転送などにより転送されて一時保存される。
【0035】
印刷バッファー14に一時保存された印刷データは、印刷制御部15によってデータ展開処理が行われてデータ変換され、印刷ヘッド(不図示)のノズル列に対応したドットパターンデータが生成されて印刷バッファー14に記憶される。このドットパターンデータは、例えば2ビットの階調情報データであり、印刷ヘッドの各ノズルから、インクを噴射しない、小ドットのインクを噴射する、中ドットのインクを噴射する、大ドットのインクを噴射する、のいずれかを示すものである。印刷制御部15は、この印刷バッファー14に記憶されたドットパターンデータを基に印刷ヘッドを駆動し、印刷用紙上に画像を形成することができる。印刷制御部15は、正常に印刷処理が終了すると、その旨を主制御部16へ通知する。
【0036】
主制御部16は、コマンド解析部13で読み出され、そこから送信された各種コマンドに基づいて、指示内容に応じた印刷制御処理、紙送り処理などの各種処理を実行する。また、主制御部16は、ある一つの印刷ジョブに対応する印刷が成功したか否かについて判断する。主制御部16が判断した印刷結果の成功可否は、後述するジョブ情報記憶部18に記録される。
【0037】
ここで、印刷が成功したとは、印刷ジョブを開始する印刷ジョブ開始コマンドを主制御部16がコマンド解析部13から受信してから、印刷ジョブが終了した旨を印刷制御部15から通知されるまでの間に実行されたコマンドが全て正常に処理され、印刷ジョブに対応した画像が全て印刷用紙上に形成され、正しく印刷処理が実行された状態を指す。一方、印刷が成功しなかった、すなわち印刷が失敗したとは、たとえば印刷用紙切れ、インク切れ、各種カバー開、その他のエラーなどにより、印刷ジョブ開始コマンドを主制御部16がコマンド解析部13から受信してから、印刷ジョブ終了コマンドを受信するまでの間のコマンドが正常に処理されない、または処理が途中で中断してしまいタイムアウトとなって、印刷が実行できないまたは中断されてしまう状態を指す。
【0038】
主制御部16が印刷結果の成功可否を判断する理由は、後述する印字制御部17aが印刷用紙上に噴射されたインクドット数をそのままカウントする性質のものであるため、印刷ジョブに対応する印刷が最後まで完全に行われない場合であっても、正常に印刷された場合と同じようにインクドット数としてカウントし、課金対象として記録しないようにするためである。
【0039】
続いて、請求項の印刷管理制御部の一例である印刷管理制御部17について説明する。印刷管理制御部17は、使用者とプリンター1を製造および/または販売した会社等との間で締結されたインク使用可能量の契約に基づいて印刷処理を管理、制御することができるように構成されている。ここで、インク使用可能量の契約とは、たとえば、使用者が所定の代金を前もって支払うことにより1ヶ月毎に使用可能なインク量が定められた契約であり、この契約に反しない範囲(つまり、インク使用可能量の契約で定められたインク量の範囲)に基づいて使用者はプリンター1を使用することができる。以下、印刷管理制御部17を構成する各要素について説明する。
【0040】
印字制御部17aは、所定の処理を実行して、処理後の値を累計使用量カウンター17bに加算する。ここで、印字制御部17aが実行する所定の処理とは、印刷バッファー14に記憶された印刷データまたはその印刷データを基に生成されたドットパターンデータに基づき、印刷ヘッドから噴射されるインク量をドット単位で色毎のドット数としてカウントし、これらの総和を算出し(以下、インクドット数の総和を「インクドットカウント値」という)、算出したインクドットカウント値を累計使用量カウンター17bに加算する処理のことである。また、印字制御部17aが算出した各色のインクドット数は、後述するジョブ情報記憶部18に記憶される。
【0041】
なお、印刷ヘッドから噴射されるインクは、小ドット、中ドット、大ドットなどドットの大きさおよびインク量が異なる。ここで、上述した印字制御部17aが実行する所定の処理は、インクドットの大きさに関係なく、インクの色毎に単純にカウントする方法としてもよいが、これらのインク量が異なるため、この差を考慮したインクドット数としてカウントすることが好ましい。すなわち、印字制御部17aが実行する所定の処理は、各インクドットのインク量の差を考慮して比較用のドット数として変換して算出するようにしてもよい。たとえば、印字制御部17aは、小ドットの1ドットを「1」としてカウントする場合には、中ドットの1ドットは「2」、大ドットの1ドットは「4」などとそのインク量の差に応じて変換し、総ドット数を算出するようにしてもよい。
【0042】
また、印字制御部17aが実行する所定の処理は、インクドット数単位ではなく、インク量そのものを求めて、比較、管理する方法を採用するようにしてもよい。その場合には、印字制御部17aが実行する所定の処理は、各インクドットの大きさ毎に標準的なインク量を予め記憶しておき、噴射された大きさ毎のドット数と、当該標準的なインク量とをそれぞれ乗算し、乗算したそれぞれの色の総和をインク量として求めるようにしてもよい。
【0043】
また、印字制御部17aは、フラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、インク吸引手段(不図示)により印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作又はインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインクおよび/または印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては、累計使用量カウンター17bに加算しないことが好ましい。
【0044】
また、印字制御部17aは、インクカートリッジがインクエンドとなった場合でも、インクカートリッジ内にインクが残存している場合もあるが、この残存インクについてカウントしないことが好ましい。すなわち、印字制御部17aは、インクが実際に印刷用紙上に噴射されると共に、使用者の印刷指示によって正常に印刷がなされたときのインクについてカウント対象とするように制御することが好ましい。
【0045】
なお、使用されたインクを累計使用量カウンター17bに加算しない方法としては、たとえば、PC30から送信されたコマンドを上述したフラッシング動作、吸引動作、目詰まり回復動作、インク充填動作などの処理と通常の印刷処理との違いがわかるように設定し、主制御部16がコマンドの種類から印字加算可否判定を実行し、ジョブ情報記憶部18に当該情報については記録しない、または加算判定フラグ(たとえば、「1」は加算する、「0」は加算しないなど)を更に記録することにより実現できる。その他にも、印刷制御部15が、印刷バッファー14に該当する印刷データが存在せず、上記の動作をするときは主制御部16に対してその旨を通知するようにしてもよい。
【0046】
また、印字制御部17aは、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値を印刷処理実行毎または所定のタイミング毎に参照し、参照した値が累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値より小さいか否かを判定することで、使用者とプリンター1を販売した会社との間で締結されたインク使用可能量の範囲内で使用されているか否かを判断するようにしてもよい。
【0047】
累計使用量カウンター17bは、所定の時点からプリンター1で使用されたインクドットカウント値を記憶しておくものである。ここで、所定の時点とは、たとえば、プリンター1が製造されて、使用者が購入して使用を開始した時点、使用を開始して保証期間が経過した時点などである。なお、累計使用量カウンター17bは、所定の時点からプリンター1で使用されたインクドットカウント値を記憶するものであるが、使用可能カウンター17cと等しくなったときは、当該使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値と共にリセットされるようにしてもよい。これにより、プリンター1が長期間使用されるにつれて、無限にインクドットカウント値が増大してしまうことによるメモリー領域が不足してしまう不都合を解消することができる。
【0048】
加算制御部17dは、ICカードスロット20に挿入された専用のICカードから読み取られたインク使用可能量の契約情報に基づいて、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値に更なるインク量を加算する。ここで、専用のICカードから読み取られたインク使用可能量の契約には、たとえば、使用者を識別する情報、使用開始日、使用可能期間、加算されるインク使用可能量(インクドットカウント値またはインク量を表す情報)などが含まれる。RTC17eは、加算制御部17dが使用可能カウンター17cに加算するタイミングを通知する。なお、RTC17eは、インク使用可能量の契約において1ヶ月毎のインク使用可能量の契約が締結されている場合には、使用開始日から所定のタイミング毎(たとえば1ヶ月毎など)に加算するタイミングを加算制御部17dへ通知するようにプリンター1の製造時点または販売時点において設定される。
【0049】
ジョブ情報記憶部18は、主制御部16が記録する印刷ジョブ情報および印字制御部17aにより算出された各色のインクドット数情報をジョブ情報履歴として形成する記憶領域であり、電源オフ時にもその値を保持できるように、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)やフラッシュROM(Read Only Memory)等の不揮発性記憶媒体上に設定されている。
【0050】
(印刷ジョブ情報例)
図3は、図2に示すジョブ情報記憶部18に記録されるジョブ情報履歴の一例を模式的に示す表である。主制御部16は、少なくとも各印刷ジョブに含まれる印刷ジョブIDと、その印刷ジョブに対応して使用された色毎のインクドット数と、印刷日時情報と、印刷ジョブに対応する印刷結果とを関連づけてジョブ情報記憶部18に記録する。本実施例では、使用されたインクドット数は、印字制御部17がカウントしたインクドット数としてインク色毎(ここではC:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:ブラックの4色)に表される。
【0051】
また、印刷結果は、各印刷ジョブIDに関連づけて記録されるものであり、たとえば図3の場合では、成功した場合にはフラグとして印刷結果の欄に「0」を、そして失敗した場合には「1」を付して示すことができる。図3からわかるように、ジョブ情報記憶部18を参照することにより、各印刷ジョブに対してどの程度のインクが色毎に消費されたのかをインクドット数を基準として把握するとともに、その印刷ジョブが正しく終了し、かつ正常な印刷処理がなされたかどうかを確認することができる。
【0052】
(印刷ジョブ情報の記録処理およびインクドット数比較処理)
次に、プリンター1で実行される印刷ジョブ情報の記録処理およびインクドット数比較処理について説明する。図4は、図1に示すプリンター1で実行される印刷ジョブ情報の記録処理およびインクドットカウント値の比較処理の流れを示すフローチャートである。
【0053】
プリンター1では、PC30から送信される印刷ジョブを受信部11が受信するまで待機し、受信部11が印刷ジョブを受信すると、以下の処理が開始される(START)。印刷制御部15は、受信した印刷ジョブを基に印刷イメージデータとしてのドットパターンデータを印刷バッファー14に生成する(ステップS11)。その後、印刷制御部15は、この生成されたドットパターンデータに応じて、印刷ヘッドを駆動し、印刷用紙上への印刷処理を実行すると共に、ドットパターンデータを基にして当該印刷に伴って使用されるインクドット数を色毎に算出する(ステップS12)。
【0054】
主制御部16は、印刷ジョブを参照しつつ、印刷制御部15による印刷処理を監視し、印刷ジョブが正しく処理されたか否かを判断する(ステップS13)。主制御部16は、ステップS13において、印刷ジョブが正しく処理されたと判断された場合には、受信した印刷ジョブ中に含まれるジョブIDに印刷成功を示すフラグ(ここでは0)を付して、算出されたインクドット数とともに印刷ジョブ情報としてジョブ情報記憶部18に記録する(ステップS14)。
【0055】
一方、主制御部16は、ステップS13において、印刷ジョブが正しく処理されなかったと判断された場合には、受信した印刷ジョブ中に含まれるジョブIDに印刷失敗を示すフラグ(ここでは1)を付して、算出されたドット数とともに印刷ジョブ情報としてジョブ情報記憶部18に記録する(ステップS15)。
【0056】
主制御部16は、ステップS14またはステップS15の処理後に、ジョブ情報記憶部18に記録された印刷ジョブ情報であって、正常に処理されたものに含まれる色毎のインクドット数を印刷管理制御部17へ受け渡す(ステップS16)。なお、ステップS16の処理は、ステップS15の処理後ではなく、所定のタイミング毎に主制御部16がジョブ情報記憶部18を参照するようにし、前回参照したときから新規に記録されている印刷ジョブ情報がある場合に印刷管理制御部17へ受け渡すようにしてもよい。印刷管理制御部17の一要素である印字制御部17aは、主制御部16から受け渡されたインクドット数を上述したような所定の処理を実行後の値(すなわち、インクドットカウント値)を累計使用量カウンター17bに加算する(ステップS17)。
【0057】
そして、印字制御部17aは、累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値と、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値とを比較する(ステップS18)。印字制御部17aは、累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値が使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値と等しい場合もしくは大きい場合(ステップS18でYES)には、当該ステップS18の判定時以降の印刷処理を禁止する制御信号を主制御部16へ出力し(ステップS19)、処理を終了する(END)。ステップS19で送信された印刷処理を禁止する制御信号を受信した主制御部16は、使用されたインク量が契約の使用限度の範囲に達したため印刷できない旨をPC30へ通知する。なお、主制御部16は、PC30へ通知する代わりに、プリンター1のLED6を点滅させるなどしてプリンター1側で出力するようにしてもよい。
【0058】
また、ステップS19において、印字制御部17aは、累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値と、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値との差分が所定値よりも小さくなった場合には、送信部19を介してその旨を警告する信号をPC30へ通知するようにしてもよい。なお、印字制御部17aは、上述した差分とプリンター1での1枚あたりに使用される平均的なインクドットカウント値とから印刷可能枚数を算出し、印刷可能枚数情報をPC30へ通知するようにしてもよい。
【0059】
一方、印字制御部17aは、累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値が使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値より小さい場合(ステップS18でNO)には、そのまま処理を終了する(END)。
【0060】
(インク使用可能量加算処理の説明)
次に、専用のICカードをプリンター1のICカード挿入口8に挿入し、読み取られたインク使用可能量の情報に基づいてプリンター1で使用可能なインク量を加算する処理について説明する。図5は、図1に示すプリンター1で使用可能なインク量が加算される処理の流れを示すフローチャートである。なお、この処理の前提として、専用のICカードには少なくとも使用可能なインクドット数に関する情報が保持されているものとする。また、使用者が、プリンター1の会社から送付された専用のICカードまたは電気店などで購入した専用のICカードをICカード挿入口8(図1)に挿入し、加算制御部17d(図2)には、ICカードスロット20(図2)に挿入されたこのICカードに記録されている使用可能なインクドットカウント値が予め記憶されている状態とする。
【0061】
加算制御部17dは、RTC17eからの加算タイミングが通知されると(START)、印字制御部17aに加算制御部17dに記憶されている印刷で使用可能なインクドットカウント値を受け渡す(ステップS21)。加算制御部17dからインクドットカウント値を受け渡された印字制御部17aは、このインクドットカウント値を使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値に加算し(ステップS22)、処理を終了する(END)。
【0062】
以上、説明したように、プリンター1の使用者とこのプリンター1を製造および/または販売した会社間において所定のインク量を使用できる契約を締結した場合に、この契約によって定められたインク使用可能量がプリンター1の加算制御部17dおよび印字制御部17aを介して使用可能カウンター17cへ所定のタイミングで加算することが可能となる。また、そのように構成された場合には、プリンター1で使用するためのインク使用可能量が定期的に加算されると共に、使用者が更にプリンター1を使用することを所望する場合には、インク使用可能量を専用のICカードによりプリンター1へ加算することも可能となる。すなわち、使用者にとっては、実際に印刷で使用するインク量に応じて費用を支払うことが可能となり、プリンター1を製造および/または販売した会社にとっては、このプリンター1のインクの使用状況に応じて課金する仕組みを実現することが可能となる。特に、プリンター1は、請求項の印刷管理装置の機能が一体化して構成されているため、プリンター1自体で自己が使用できるインクドットカウント値に基づいて印刷処理の制御することになるため、特許文献1に開示される機器のように、消耗物品の管理を行うためのサービス管理装置とネットワーク接続することが必須ではない。
【0063】
また、プリンター1の印刷管理制御部17は、使用可能カウンター17cが記憶しているインクドットカウント値と、累計使用量カウンター17bが記憶しているインクドットカウント値とを比較して等しくなったときは、この比較判定時以降の印刷処理を禁止するまたは警告する制御信号を出力するものである。これにより、プリンター1から出力された印刷処理を禁止するまたは警告する制御信号によって実際に使用可能とされているインクドットカウント値以上の印刷処理を制限することが可能となる。
【0064】
また、プリンター1の印刷管理制御部17は、使用可能カウンター17cが記憶しているインクドットカウント値と、累計使用量カウンター17bが記憶しているインクドットカウント値との差分および、プリンター1で使用される1枚あたりのインクドットカウント値(インク使用量)に基づいてプリンター1における印刷可能枚数を算出し、この印刷可能枚数を出力することも可能である。これにより、使用可能なインクドットカウント値に基づく印刷可能枚数を把握することが可能となる。
【0065】
また、プリンター1の加算制御部17dは、印刷で使用可能なインク追加情報等が記憶された専用のICカードからこのインク追加情報等を取得すると共に、使用可能カウンター17cが記憶しているインクドットカウント値にこのインク追加情報等に基づく値(更なるインク量)を加算するものである。これにより、プリンター1の使用者とこのプリンター1を製造および/または販売した会社間の契約により、定期的に所定のインク量の使用契約を締結している場合に、使用可能なインク量が記録された専用のICカードから加算制御部17dがインク量に関する情報を取得して、使用可能カウンター17cに定期的に加算することで、使用者によりこの契約の範囲内でプリンター1が適切に使用される。また、使用者の使用状況に応じて、使用可能なインク量に関する情報が記憶された専用のICカードを追加で購入すれば、印刷で使用するインク量に応じて課金することが可能となる。
【0066】
また、プリンター1の印刷管理制御部17は、プリンター1が使用するインク量のうち、フラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作、またはインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインク、印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては、使用者により使用されたインクとはみなさないため、累計使用量カウンター17bに記憶されているインクドットカウント値には加算しないものである。これにより、プリンター1が実行する上述した動作により使用されたインクについては課金対象とならないため、使用者にとっては、実際に印刷で使用されたインク量にのみ課金される方法となるためより好ましいものとなる。
【0067】
また、他の観点として、着脱式のインクカートリッジを使用したプリンター1では、1つのインクカートリッジに含まれるインク量は数cc程度であり、大量に印刷する場合にはインクがすぐに無くなり、印刷が継続できないという問題がある。このような問題を解消するために、プリンター1を製造および/または販売する会社側も、着脱式のインクカートリッジを搭載したプリンター1ではなく、固定式でより大容量のインクを保持できるインクカートリッジを搭載したプリンター1を検討しているが、インク量を販売価格に加算する必要があるため、高額になるという問題を抱えていた。しかしながら、このような課金方法を採用することにより、固定式のインクカートリッジを備えるプリンター1が搭載するインク量のコストを価格に転嫁することなく販売することが可能になる。さらに、固定式の大容量のインクを保持できるインクカートリッジを備えるプリンター1とした場合には、着脱式のインクカートリッジとは異なり、インクカートリッジをリサイクルしなくてもよくなり、消耗品の回収にかかる費用が低減される。
【0068】
<変形例>
以上、本発明の一実施例について述べたが、本発明はこれ以外にも種々変形可能である。例えば、上述した実施例では、請求項の印刷管理装置は、プリンター1に実現されているが、PC30側に請求項の印刷管理装置の機能の一部または全部が実現される構成を採用しても良い。また、PC30とプリンター1の間に跨り、請求項の印刷管理装置の機能が分散されている構成を採用してもよく、PC30/プリンター1以外の、外部接続可能な装置から実現されていてもよい。
【0069】
また、上述の実施例および変形例においては、プリンター1にICカード挿入口8を備えた構成を例示して説明している。しかしながら、プリンター1の使用者とこのプリンター1を製造および/または販売した会社間の契約情報が読み取れるものであれば、ICカード挿入口8を備えていないプリンター1としてもよい。たとえば、専用のICカードに記憶されている情報をUSBメモリー(不図示)などに外部記憶媒体に記憶すると共に、このUSBメモリーをプリンター1に差し込むことによって加算制御部17dに読み込むようにしてもよい。また、専用のICカードとしたが、その他の用途がある汎用のICカードを使用するようにしても構わない。
【0070】
また、上述の実施例および変形例においては、専用のICカードに記憶されている情報としては、インク使用可能量追加情報を例示して説明している。しかしながら、ICカードには、所定期間内での印刷可能枚数といった情報とし、印刷管理制御部17では印刷枚数単位で管理、制御するように構成してもよい。なお、その場合には、プリンター1での1枚あたりに使用される標準的なインクドットカウント値を予め記憶しておき、印字制御部17aにて変換処理を行うことが好ましい。また、契約条件によっては、インクの使用制限がない旨の情報を専用のICカードに記憶しておき、この情報を加算制御部17dが読み取ったときには、印字制御部17に通知して、使用可能カウンター17cの数値いかんに関わらず、プリンター1の使用を可能とする制御をするようにしてもよい。
【0071】
また、上述の実施例および変形例においては、PC30からプリンター1の管理状況を積極的に知ることができる構成とはしていない。しかしながら、プリンター1の印刷管理制御部17は、PC30からの要求に応じて、累計使用量カウンター17bに記憶しているインク累計使用量および/または使用可能カウンター17cに記憶しているインク使用可能量についてPC30へ送信するようにしてもよい。これにより、使用者は、PC30からインク使用状況送信要求を送信することにより、今までに使用されたインクドットカウント値およびその時点での使用可能なインクドットカウント値を容易に入手することが可能で、利用状況に応じて、専用のICカードを追加購入する、またはプリンター1の製造および/または販売した会社との契約条件を見直すことができる。
【0072】
さらに、プリンター1の主制御部16は、PC30からの要求に応じて、ジョブIDに対応する使用インク量及び印刷結果をPC30へ送信するようにしてもよい。これにより、使用者は、PC30からジョブIDを指定したジョブ情報送信要求を送信することにより、印刷毎に使用されたインク量についての情報を容易に入手し、これらの情報から将来的なコスト削減等の対策に利用することができる。
【0073】
また、上述の実施例および変形例においては、累計使用量カウンター17bの値と使用可能カウンター17cの値とを比較して累計使用量カウンター17bの値が使用可能カウンター17cの値と等しくなったときまたは累計使用量カウンター17bの値の方が大きくなったときは、比較判定時以降の印刷処理を禁止する制御信号を主制御部16へ送信するようにしている(図4のステップS19)。しかしながら、上述の場合であっても印刷が継続できるように警告する制御信号をPC30へ送信するのみとし、その後、累計使用量カウンター17bの値が使用可能カウンター17cの値から所定の閾値を超えた場合、または連続して実行される一連のジョブが終了した場合は、印刷処理を禁止する制御信号を主制御部16へ送信し、その後の印刷処理を制限するようにしてもよい。これにより、使用者が緊急を要する場合や連続して印刷しているときに使用可能なインク量が不足して途中で印刷できなくなるような状況を、ある程度の割合で回避することができ、プリンター1の評価を著しく低下させることがなくなる。
【0074】
また、上述の実施例および変形例においては、累計使用量カウンター17bを備えるプリンター1としている。しかしながら、累計使用量カウンター17bを備えていないプリンター1としてもよく、その場合には、印字制御部17aは、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値から印刷処理で使用されたインクドット数を減算していき、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値がゼロになった時点で、印刷を禁止または警告する制御信号をPC30へ送信するようにしてもよい。なお、そのように構成した場合であっても、プリンター1の印刷管理制御部17は、プリンター1が使用するインクドット数のうち、フラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作、またはインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインク、印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては、使用者により使用されたインクとはみなさずに、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値から減算しないことが好ましい。これにより、プリンター1が実行するフラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作、またはインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインク、印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては課金対象とならないため、使用者にとっては、実際の印刷で使用されたインク量にのみ課金される方法となるためより好ましいものとなる。
【0075】
また、上述の実施例および変形例においては、PC30から印刷処理を開始する印刷処理要求(印刷開始コマンドおよび印刷データ)が送信された後に、この印刷処理要求は必ず実行することを前提とした上で、プリンター1の印刷管理制御部17によって比較判定時以降の印刷処理を禁止するまたは警告するように構成されている。しかしながら、PC30から印刷処理要求が送信されてきた際に、この印刷処理についてプリンター1の印刷管理制御部17によって印刷可否を判定し、この判定に基づいて印刷処理を禁止するまたは警告するように構成してもよい。たとえば、累計使用量カウンター17bを備えていないプリンター1の印字制御部17aが、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値から印刷処理で使用されたインクドット数を減算していき、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値がゼロまたは不足していると判定した時点で、印刷を禁止または警告するものとして構成する。そして、PC30から印刷処理を開始する印刷処理要求が送信されてきた場合には、印字制御部17aは、この印刷処理に含まれる印刷データに対して図4に示すステップS12のインクドット数の算出まで実行し、その後に使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値と比較して、このインクドットカウント値の方が印刷データから算出されたインクドット数より大きいまたは等しい場合には印刷処理の続行を許可すると共に、正常に印刷された後に印刷データのインクドット数を使用可能カウンター17cから減算する。一方、印字制御部17aは、使用可能カウンター17cに記憶されているインクドットカウント値の方が印刷データから算出されたインクドット数より小さい場合には、印刷を禁止または警告する制御とするようにしてもよい。
【0076】
また、上述の実施例および変形例においては、使用者が実際に使用したインク量に基づいて課金される仕組みを実現しているが、次のような仕組みを加えるまたは代替してもよい。たとえば、上述したような、プリンター1が使用するインクドット数のうち、フラッシング動作により印刷ヘッドから噴射されたインクや、印刷ヘッドから吸引されたインク、目詰まり回復動作、またはインク充填動作により使用されたインクなど、インクを印刷ヘッドから良好に噴射させるために使用されたインク、印刷が正常に完了しなかったときに使用されたインクについては、使用者により使用されたインクとはみなさない構成としたプリンター1のインクカートリッジに、印刷管理制御部17の累計使用量カウンター17bの機能を少なくとも備えたICチップを取り付けておく。そして、専用のICカードを使用者が購入することで、所定のインク量を購入し、プリンター1で印刷を実行する。使用者が当該インクカートリッジを全て使用した後に、プリンター1のインクカートリッジを使用者から回収し、当該ICチップに記憶されている累計使用量カウンター17bのインクドットカウント値に対応する費用と、ICカードを購入した費用の差額を計算し、残金を使用者に返還するようにしてもよい。このような方法を採用しても、使用者にとっては実際に印刷で使用したインク量にのみ課金される方法と同等の効果を奏するため、より好ましいものとなる。
【0077】
また、上述の実施例および変形例においては、インクジェット方式のプリンター1を例示して説明している。しかしながら、インク量が把握可能なものであれば、インクジェット方式のプリンター1には限られない。例えば、ジェルジェット方式のプリンター、トナー方式のプリンター、ドットインパクト方式のプリンター等、種々のプリンターに対して、本発明を適用することが可能である。また、上述の実施の形態におけるプリンター1は、プリンター機能以外の機能(スキャナー機能、コピー機能等)を備える構成のような、複合的な機器の一部であってもよい。
【0078】
また、上述した請求項における各機能は、ハードウエア的に実現されていても良く、ソフトウエア的に実現されていても良い。たとえば、上述した印刷管理制御部17に相当する機能を備えた集積回路をプリンター1に備える構成としてもよい。また、上述した印刷管理制御部17に相当する機能を実現する手段として機能させるための印刷管理プログラムを、例えば、CD、DVD、各種メモリー等に記憶させておき、かかる印刷管理プログラムをPC30および/またはプリンター1に読み込ませて、上述の各処理を実行するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1:プリンター(請求項の印刷管理装置の一例)、17:印刷管理制御部(請求項の印刷管理制御部の一例)、17b:累計使用量カウンター(請求項の累計印刷使用量記憶部の一例)、17c:使用可能カウンター(請求項の印刷使用可能量記憶部の一例)、17d:加算制御部(請求項の印刷使用可能量加算部の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置で利用可能なインク量を記憶する印刷使用可能量記憶部と、
前記印刷使用可能量記憶部が記憶している前記インク量に更なるインク量を加算する印刷使用可能量加算部と、
前記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に基づいて前記印刷装置での印刷処理の可否判定を実行する印刷管理制御部と、
を備えることを特徴とする印刷管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷管理装置であって、
所定の時点からの前記印刷装置で使用されたインク量の累計を記憶する累計印刷使用量記憶部と、をさらに備え、
前記印刷管理制御部は、前記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と、前記累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量とを比較し、当該比較結果に基づいて前記印刷装置での印刷処理の可否判定を実行することを特徴とする印刷管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷管理装置であって、
前記印刷管理制御部は、
前記累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量が、前記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と等しい場合または大きくなった場合、前記印刷装置での印刷を禁止するまたは警告する制御信号を前記印刷装置に対して出力することを特徴とする印刷管理装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の印刷管理装置であって、
前記印刷管理制御部は、
前記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量と、前記累計印刷使用量記憶部が記憶しているインク量との差分および、前記印刷装置で使用される1枚あたりのインク使用量に基づいて前記印刷装置における印刷可能枚数を算出し、当該印刷可能枚数を前記印刷装置に対して出力することを特徴とする印刷管理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷管理装置であって、
前記印刷使用可能量加算部は、
印刷で使用可能なインク量に関する情報が記憶された記録媒体から当該インク量を取得すると共に、前記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に加算するものであることを特徴とする印刷管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷管理装置であって、
前記印刷管理制御部は、前記印刷装置が使用するインク量のうち、前記印刷装置の使用者が所望のデータを印刷するために使用され、かつ正常に印刷が完了した際のインク量以外は、上記使用者により消費されたインク量とみなさないことを特徴とする印刷管理装置。
【請求項7】
印刷装置の使用するインク量を管理する印刷管理装置が実行する印刷管理方法であって、
上記印刷管理装置が、
印刷装置で利用可能なインク量を記憶するステップ、
上記印刷使用可能量記憶部が記憶している上記インク量に更なるインク量を加算するステップ、並びに
上記印刷使用可能量記憶部が記憶しているインク量に基づいて上記印刷装置での印刷処理の可否判定を実行するステップ、
を有することを特徴とする印刷管理方法。
【請求項8】
コンピューターを、
印刷装置で利用可能なインク量を記憶する印刷使用可能量記憶手段、
上記印刷使用可能量記憶手段が記憶している上記インク量に更なるインク量を加算する印刷使用可能量加算手段、並びに
上記印刷使用可能量記憶手段が記憶しているインク量に基づいて上記印刷装置での印刷処理の可否判定を実行する印刷管理制御手段、
として機能させるための印刷管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20492(P2012−20492A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160337(P2010−160337)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】