説明

印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法

【課題】隠蔽印刷を行うことで機密情報の漏洩を防止する場合に、特に試し印刷時における情報の漏洩防止と試し印刷文書の再利用との両立できる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を提供する。
【解決手段】ページデータと帳票データとにより印刷を行う場合に、その帳票データから機密情報の領域に関する情報を機密領域抽出手段206で抽出し、抽出された機密情報領域情報とページデータとから領域使用判定手段208により判定し、その判定結果に基づいて隠蔽画像作成手段209により隠蔽データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機密文書や個人情報の記載された文書の秘匿情報に対して、隠蔽して印刷を行う印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法であって、特に、機密情報の漏洩防止と印刷された文書の再利用とを両立することができる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
営利団体、非営利団体を問わず、文書を取り扱う際には、情報の漏洩に注意をはらう必要がある。とりわけ企業秘密の記載された文書(以下、機密文書という)は会社内において秘密保全の管理がなされている。そして、機密文書が不要となった場合には、その機密文書が会社外へ漏洩することを防止するために、シュレッダーにより裁断したり、または溶解したりするような対策が取られている。
【0003】
また、今日においては、機密文書以外にも、会社において収集した個人情報については、会社内において情報漏洩防止のための管理が義務付けられており、個人情報が記載された文書(以下、個人情報文書という)は、機密文書と同様な取り扱いが必要となってきている。したがって、個人情報文書もシュレッダーや溶解の処置が必要である。
【0004】
一方で、環境保護という観点から古紙をリサイクルして再生紙として再利用することが一般的となってきている。情報の漏洩防止のためにシュレッダーにより機密文書や個人情報文書を処理してしまうと、紙の繊維が細かくなってしまうため再利用が困難となってしまうという問題がある。また、溶解処理の場合では、再利用という点ではシュレッダー処理よりも有利であるが、専門業者で溶解処理を行ってもらうため(第三者介入)、情報の漏洩という点では、シュレッダー処理よりも劣ってしまう。
【0005】
このような状況において、情報の漏洩防止という点に関する技術として伏字印刷による処理という技術がある。文書中の機密情報箇所を伏字印刷することにより、第三者にその機密情報の内容を知られることを防止できる。この伏字印刷に関する技術については、特許文献1に開示されており、特許文献1では、文書の機密情報箇所を指定して印刷データに含めることによって、印刷時に機密情報箇所をそのまま印刷するか、別の文字や記号への置換または矩形描画で塗りつぶして印刷するかを選択できる技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−173720公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、機密情報箇所の印刷可否を選択できる点においては良いが、試し印刷を行う場合に問題となる。一般的に印刷した文書が不要となるケースとしては、機密文書作成時や個人情報を含んだ帳票印刷作成時における試し印刷の場合であり、そのような試し印刷では、その内容を確認する必要がある。この時点では、機密情報箇所を印刷する必要があり、一方、機密情報箇所の確認が終われば不要となってしまう。
【0007】
文書の機密情報箇所を隠蔽して試し印刷をした場合には、その隠蔽した箇所の状況は、試し印刷であっても、その内容の判断が印刷済み用紙からは不可能となってしまう。
【0008】
すなわち、隠蔽した箇所の確認が不可能であるため、試し印刷が試し印刷の機能を達成することができない。したがって、その隠蔽箇所の誤記や文字化け等の確認を正確に行うことができないという問題を有している。
【0009】
そして、試し印刷を行った結果において、機密上の問題があった場合には、前記のようなシュレッダー処理や溶解処理を必要とするため、情報の漏洩防止と紙の再利用を両立できていない。
【0010】
本発明は、かかる課題を解決すべく、機密文書や個人情報文書の確認を確実に行いつつ、シュレッダー処理や溶解処理等、再利用に不利な処理を必要とせずに、情報の漏洩防止と再利用を両立することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明は、印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置であって、前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから前記機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定する判定手段と、前記抽出手段により抽出された前記機密情報の領域に関する情報に対応して隠蔽データを作成する隠蔽データ作成手段とを有し、前記判定手段により前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを前記隠蔽データ作成手段により作成することを特徴とする。
【0012】
第1の発明によれば、抽出手段によって、機密情報を確実に抽出し、隠蔽データ作成手段により、隠蔽データを作成し、必要に応じてこの隠蔽データを用いて印刷することで、機密情報の領域(すなわち、ページデータの一部又は全部)を隠蔽することができる。
【0013】
また、第1の発明において、前記隠蔽データ作成手段により作成される前記隠蔽データは、前記ページデータに対応して作成されることを特徴とする。
【0014】
ページデータが機密情報であることがほとんどであるため、このページデータに対応して、隠蔽データを作成することで機密情報を確実に隠蔽することができる。
【0015】
さらに、第1の発明において、前記隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行うか否かの操作を受け付ける操作受付手段をさらに具備し、前記操作受付手段により隠蔽印刷を行う操作を受け付けた場合には、前記操作受付手段は、印刷物に対して隠蔽印刷を行う際に、前記ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填指示、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を受け付けることを特徴とする。
【0016】
例えば、ページデータの内容を確認するために印刷した印刷物を所定のトレイに再装填し、当該ページデータに重ねて隠蔽データを印刷することで、用紙の再利用が可能となる。
【0017】
また、第1の発明において、前記操作受付手段により隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行わない操作を受け付けた場合には、ページデータと帳票データとにより印刷を行うことを特徴とする。
【0018】
ページデータの内容確認のために必要な処理となる。
【0019】
さらに、第1の発明において、前記操作受付手段は、前記ページデータと前記帳票データとにより印刷を行う際に、少なくとも全てのページを印刷するか又は次ページのみを印刷するかのいずれかを受け付けることにより印刷を行うことを特徴とする。
【0020】
ページデータの全てが機密情報とは限らないため、選択の余地を設けることで、隠蔽作業性を向上する。
【0021】
第2の発明は、印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置を制御するプロセッサに実行させる印刷制御プログラムであって、前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出する抽出工程と、前記抽出工程により抽出された前記機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから前記機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定する判定工程と、前記抽出工程により抽出された前記機密情報の領域に関する情報に対応して隠蔽データを作成する隠蔽データ作成工程とを有し、前記判定工程により前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを前記隠蔽データ作成工程により作成することを特徴とする。
【0022】
第2の発明によれば、機密情報を確実に抽出して隠蔽データを作成し、必要に応じてこの隠蔽データを用いて印刷することで、機密情報の領域(すなわち、ページデータの一部又は全部)を隠蔽することができる。 また、第2の発明において、前記隠蔽データ作成工程により作成される前記隠蔽データは、前記ページデータに対応して作成されることを特徴とする。
【0023】
ページデータが機密情報であることがほとんどであるため、このページデータに対応して、隠蔽データを作成することで機密情報を確実に隠蔽することができる。 さらに、第2の発明において、前記隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行うか否かの操作を受け付ける操作受付工程をさらに具備し、前記操作受付工程で隠蔽印刷を行う操作を受け付けた場合には、前記操作受付工程は、印刷物に対して隠蔽印刷を行う際に、前記ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填指示、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を受け付けることを特徴とする。
【0024】
例えば、ページデータの内容を確認するために印刷した印刷物を所定のトレイに再装填し、当該ページデータに重ねて隠蔽データを印刷することで、用紙の再利用が可能となる。
【0025】
また、第2の発明において、前記操作受付工程で隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行わない操作を受け付けた場合には、ページデータと帳票データとにより印刷を行うことを特徴とする。
【0026】
ページデータの内容確認のために必要な処理となる。
【0027】
さらに、第2の発明において、前記操作受付工程では、前記ページデータと前記帳票データとにより印刷を行う際に、少なくとも全てのページを印刷するか又は次ページのみを印刷するかのいずれかを受け付けることにより印刷を行うことを特徴とする。
【0028】
ページデータの全てが機密情報とは限らないため、選択の余地を設けることで、隠蔽作業性を向上する。
【0029】
第3の発明は、印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置の印刷制御方法であって、前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出し、抽出された機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定し、前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを作成することを特徴とする。
【0030】
第3の発明によれば、機密情報を確実に抽出して隠蔽データを作成し、必要に応じてこの隠蔽データを用いて印刷することで、機密情報の領域(すなわち、ページデータの一部又は全部)を隠蔽することができる。
【0031】
また、第3の発明において、ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を条件に、前記隠蔽データを用いた印刷を実行することを特徴としている。
【0032】
例えば、ページデータに基づいて印刷し、当該ページデータの内容を確認した後、このページデータが印刷された印刷物を所定のトレイに再装填し、当該所定のトレイを指定して隠蔽データの印刷を実行することで、ページデータに重なるように隠蔽データが印刷され、ページデータの内容を隠蔽することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、機密文書および個人情報文書における機密情報の漏洩防止のための管理が容易となり、また、普通文書(機密文書を含まない文書)化することが可能となるので、紙の再利用も可能となり、情報の漏洩防止と再利用を両立することができる。
また、部分的な塗りつぶしのため、トナーの消費を押さえることができ、これによりトナー消費を押さえることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下において、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法の一例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0035】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法についてプリンタ及びホストコンピュータに適用した場合の構成図である。
【0036】
図1において、ホストコンピュータ100は、書式作成手段101を有し、この書式作成手段101では、プリンタ200での印刷時に使用される書式またはオーバーレイを含む帳票データを作成することができるアプリケーションが起動する。この帳票データは、ユーザがホストコンピュータ100にて、そのアプリケーションを利用して任意に作成することができる。帳票データについては、具体的には、図2(a)に示されるような帳票の元となるデータである。
【0037】
また、ホストコンピュータ100は、データ作成手段102を有し、このデータ作成手段102は、実際に印刷すべきページデータを作成する。すなわち、データ作成手段102では、例えば、ワードプロセッサソフトウェアや表計算ソフトウェアに代表されるようなアプリケーションが起動する。
【0038】
したがって、データ作成手段102は、一般的に印刷操作が可能なアプリケーションであれば良く、汎用的なアプリケーションでも良い。なお、ページデータについては、具体的には、図2(b)に示されるような印字の元となる情報データである。
【0039】
さらに、ホストコンピュータ100には、データ転送手段103を有し、該データ転送手段103では、書式作成手段101で作成された帳票とデータ作成手段102で作成されたページデータとの合成を行い、転送先のプリンタ200で解釈可能なページ記述言語(PDL:Page Description Language)データへの変換を行い、当該変換されたPDLデータをプリンタ200に転送を行う。したがって、転送されるPDLデータには、帳票データとページデータが含まれる。このデータ転送手段103は、一般にはプリンタドライバに相当し、上記機能の他にプリントドライバとして有する機能も当然に有する。なお、第1の実施の形態では、ホストコンピュータ側で帳票データとページデータとを合成しているが、この合成については、プリンタ側で行ってもよい。この場合には、プリンタ側200に保存されている帳票データを選択することも可能である。したがって、プリンタ200に帳票データが保存されている場合、ホストコンピュータ側では、ページデータのみPDL変換を行うこととなる。
【0040】
一方、プリンタ200には、データ受信手段201を有し、データ受信手段201はホストコンピュータ100のデータ転送手段103と通信を行い、データ転送手段103から転送されてきたPDLデータをプリンタ200のデータ受信手段201で受信する。そして、データ受信手段201で受信したPDLデータは、データ編集手段202に受け渡される。
【0041】
データ編集手段202では、受け取ったPDLデータの解析を行い、その受け取ったPDLデータを帳票データ部分とページデータ部分に分離編集を行う。分離された帳票データ部分とページデータ部分は、それぞれ書式管理手段203とページ描画手段204に送られる。また、ページデータ部分については領域使用判定手段208にも送られる。ここで、ページデータ部分の転送を行うにあたり、ページデータの1ページ単位でページ描画手段204と領域使用判定手段208に対して送られる。
【0042】
書式管理手段203は、受信したPDLデータのうち、帳票データ部分についての書式およびオーバーレイに関するデータを保持し、その保持した情報の管理を行う。そして、書式管理手段203は、機密領域抽出手段206に対して帳票データ部分の解析指示を行う。
【0043】
ページ描画手段204は、書式管理手段203に保持されている帳票データ部分の情報を受け取り、データ編集手段202から受け取ったページデータ部分と合わせて、フォームオーバーレイ(実際に印刷される画像に相当する通常画像データの生成)を実施する。ここで、通常画像データとは、具体的には、図2(c)に示されるような実際に印字を行う元となるデータである。
【0044】
機密領域抽出手段206は、帳票データ部分から機密情報として予め指定されているすべての機密情報の領域を抽出し、その機密情報の領域情報を領域情報格納手段207へ受け渡す。ここで、機密情報の領域情報としては、例えば、機密情報のある領域の形状、位置、大きさ、範囲といったものであり、これらは、ページ単位で整理されており、そのような機密情報のある領域の形状、位置、大きさ、範囲といった全情報を帳票データに対応させている。本実施例においては、図2(a)に示すように、帳票データにおいて機密情報のある領域として、氏名、郵便番号、住所の3つのフィールドを機密属性として指定している。
【0045】
領域情報格納手段207では、機密情報の領域情報を保持し、前述の如く、ページ単位で、かつ、帳票データごとに保持・管理されている。
領域使用判定手段208では、領域情報格納手段207で保持している領域情報を参照して、データ編集手段202より受け取ったページデータ部分が領域情報から得られる機密領域を使用するか否かを判定する。
【0046】
また、領域使用判定手段208では、機密情報の領域を使用すると判定した場合には、その使用する領域に関するリストを作成して、隠蔽画像作成手段209に対して画像作成の際に指示が行われる。
【0047】
隠蔽画像作成手段209では、領域使用判定手段208で作成された使用する領域に関するリストと、領域情報格納手段207から取得した機密情報の領域情報とによって、塗りつぶす領域を判断して、塗りつぶしを行った隠蔽画像の作成を行い、出力判定手段210に対して隠蔽画像が送られる。ここで、隠蔽画像とは、具体的には、図2(d)に示されるような帳票データとページデータに関連したものであって、塗りつぶしのための画像データである。
【0048】
そして、出力判定手段210では、操作手段205からの指示に従って、ページ描画手段204又は隠蔽画像作成手段209の、いずれの画像を出力するかの判定が行われる。

ここで、操作手段205は、プリンタ200の操作パネルに相当し、オペレータからの印刷モード(全頁印刷、次頁印刷、印刷中止、隠蔽印刷)の指定をデータ編集手段202に指示するとともに、印字機構部211に対する給紙トレイ、排出トレイの指定も行い、また、出力判定手段210に対しても出力の指示が行われる。
【0049】
出力判定手段210からの出力(すなわち、ページ描画手段204からの出力、或いは隠蔽画像作成手段209からの出力)は、印字機構部211に受け渡され、印字機構部で最終的な印字が行われる。ここで、印字機構部211は、いわゆるプリントエンジンに相当し、印刷用紙に対する実際の印字を行う部分である。
【0050】
ナオ、プリンタ200には、少なくとも図示しないCPU等のプログラム制御デバイスと当該プログラムを格納する記憶デバイスとを有することは言うまでもない。プリンタ200において前記各種機能は、格納されているプログラムに従って動作している。すなわち、前記各種機能は、CPUに対して実行されるプログラムとして構成され、CPUとプログラムが協働して所望の各種機能を実現している。
【0051】
以下に第1の実施の形態の作用を説明する。まず、図3のフローチャートを用いて、通常画像と隠蔽画像の作成動作の内容について説明する。図3は、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方における通常画像と隠蔽画像作成動作の一例を示すフローチャートである。
【0052】
先ず、ホストコンピュータ(100)側で、オペレータは、書式作成手段101を利用して、図2(a)に例示される帳票データの作成を行う(S500)。次に、かかる帳票データに対して機密情報としての領域を指定する(S501)。この指定では、例えば、図2(a)のように帳票データのセル属性として指定する場合や、矩形・円などの領域として指定する場合がある。
【0053】
次に、図2(b)のような印字の元となる情報データとしてのページデータを作成する(S502)。そして、ページデータは、転送先のプリンタ200で解釈可能なPDLデータに変換され、また、帳票データは、プリンタ200にて登録開始・終了命令が付加された後、ページデータのPDLデータに対して追記がなされ、全体としての印刷ジョブを作成し(S503)、プリンタ200に対して送信される(S504)。ここまでが、ホストコンピュータ(100)側で行われる。
【0054】
ホストコンピュータ100から送信されてきた印刷ジョブは、データ受信手段201で受信し、データ編集手段202に受信した印刷ジョブを受け渡す(S505)。ここで、データ受信手段201は、印刷ジョブを受信中にページと関係なく、一定量に達した時点でデータ編集手段202に受信した印刷ジョブのデータを受け渡しを行う。データ受信手段201では、印刷ジョブが終了するまで、繰り返しデータ編集手段202へ受信データを渡し続ける。
【0055】
データ編集手段202では、受信した印刷ジョブのPDLデータの解析が行われ(S506)、解析の結果、登録開始から登録終了の間にあるデータを帳票データとして書式管理手段203に蓄積する(S507)。書式管理手段203では、蓄積した帳票データを再利用可能なデータとして管理も行われる。
【0056】
そして、機密領域抽出手段206で、帳票データの解析が行われ、機密領域として定義される領域情報の抽出され、領域情報格納手段207に蓄積される(S508)。
【0057】
一方、データ編集手段202での解析の結果(S506)、抽出されたページデータの1ページ分のページデータに対して、書式管理手段203から呼び出された登録済みの帳票データとともに、オーバーレイ描画がなされ、図2(c)に例示されるような1ページ分の通常画像が作成される(S511)。
【0058】
また、データ編集手段202で抽出されたページデータと領域情報格納手段207に蓄積されている機密領域として定義されている領域情報から、ページデータによって使用される領域の有無を領域使用判定手段208で判定する(S509)。この領域使用判定手段では、機密領域として定義されている領域にページデータによる印字がなされるか否かの領域リストが作成される。
そして、作成された領域リストに基づいて、図2(d)に例示されるような隠蔽画像の作成が行われる(S510)
以上のようにして、通常画像と隠蔽画像が作成される。
【0059】
次に、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法における実際の印刷について説明する。図6のフローチャートを用いて説明する。先ず、印刷においては、ホストコンピュータ100からの印刷ジョブをプリンタ200に対して送信して、図4(a)に例示されるような通常画像の印刷画像を出力する(S600)。このとき、出力判定手段210は、1ページ目の出力であって、ページ描画手段204で生成された通常画像を印刷物として出力する(S601)。1ページ目のみを出力するのは、試し印刷として、印刷物の内容を確認するためである。
【0060】
そして、その印刷物の内容について確認を行い、印刷内容が正確か否かを判断する(S602)。ここで、印刷内容が正確であると判断した場合には(S602のYes)、次ページ以降の印刷をどのように行うか判断する(S603)。次ページ以降の印刷方法の選択は、操作手段205により行われ、図5に例示されるように、「全頁」、「次頁」の操作部を介して出力判定手段210に対して行われる。
【0061】
次ページ以降すべてを印刷する場合としては(S603のYes)、最初の1ページのみに機密情報がある場合や2ページ以降に機密情報があっても、1ページ目と同様の機密情報がある場合である。このような場合については、印刷物から既に機密情報の内容を確認できているので、操作手段205から、「全頁」の印刷を指示し、以後の全ページについて印刷を行う(S604)。
【0062】
また、次ページ以降を順次印刷する場合として(S603のNo)、2ページ以降に別個の機密情報がある場合である。このような場合については、機密情報の内容を各ページごとに確認する必要があるので、2ページ以降も常に内容を確認するために、操作手段205から、「次頁」の印刷を指示し、2ページ目の印刷を行う(S605)。そして、2ページ目についても内容の確認をして(S602)、3ページ目以降の印刷方法を判断し(S603)、このような繰り返しを行っていく。
【0063】
なお、全ページの印刷が指示された場合には、操作手段205は、データ編集手段に対して以降のページで領域使用判定手段208への指示を停止する。
次に、1ページ目を印刷して、内容が正解でないと判断した場合には(S602No)、その印刷物に対して隠蔽印刷を行うために、その印刷物をプリンタ200に装てんし、装てんした給紙トレイと、隠蔽印刷が出力される排出トレイとを、操作手段205から設定した上で、図5に例示されるような操作部「隠蔽」を指示し、隠蔽画像による「隠蔽」印刷を実施する。
【0064】
隠蔽画像がされた出力の一例としては、図4(b)に示されるようなものであり、図4(a)の通常印刷がなされた印刷物に対して、機密領域に指定された部分に隠蔽画像がオーバーレイ印刷されている。
【0065】
なお、給紙トレイと排出トレイは、図5に例示されるようなプリンタ200のトレー属性としてのコンフィグ情報から設定される。
【0066】
その後、操作手段205により「中止」(図5参照)を指示することで、プリンタ200が受信した印刷ジョブを破棄し、帳票データおよびページデータの見直しを行い、データの修正を実施する。また、全ページを一括で印刷した後に不要となった場合には、操作手段205から「帳票隠蔽」(図5参照)を選択し、領域の使用有無に関係なく全機密領域の隠蔽画像を作成してオーバーレイ印刷を行う。
【0067】
なお、第1の実施の形態におけるこのような操作手段205による設定は、プリンタ200において実施することとして説明したが、ホストコンピュータ100とプリンタ200との通信により、ホストコンピュータ上でのプリンタドライバから実施できるようにしても良い。
【0068】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態として、プリントサーバに適用した場合の一例について説明する。
【0069】
図7は、印刷システムの一例を示すものであって、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したシステムの概略構成図である。本システムにおいては、本発明がプリントサーバを中心に適用されている一例である。
【0070】
図7に例示するシステム構成では、上位のホストコンピュータ700とプリントサーバ704とがLAN705により接続されており、ホストコンピュータ700においては、ホストコンピュータ700に対してコマンド指示やデータの転送指示を行う端末PC701が接続されている。そして、端末PC701においては、表示デバイスの画面を見ながらキーボード等(図示しない)を操作することで、ホストコンピュータ700と通信を行う。また、ホストコンピュータは、ハードディスクに代表されるストレージデバイス702にデータを保持している。
【0071】
一方、プリントサーバ704においては、LAN705経由で転送されてきたデータの印刷を行うために、プリンタ703a乃至703cと接続されており、プリントサーバ704は、プリンタ703a乃至703cへの指示により印刷を行うように印刷データの管理・制御を行っている。なお、第2の実施の形態では、プリンタ703aへの転送指示を行う場合として示している。そして、プリントサーバ704は、印刷時に必要なフォーム情報やフォント情報を保持するとともに、プリンタ703a乃至703cが解釈可能なPDLへの変換をも行っている。なお、この第2の実施の形態においては、プリントサーバ704に複数のプリンタ703a、703b、703cが接続されていることとして説明したが、このような態様に限られず、複数のプリンタが直接LAN705に接続されている態様であってもよい。この場合、プリントサーバ704はLAN705経由でプリンタ703a乃至703cの管理・制御を行う。
【0072】
次に、本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したシステムの構成について図8により説明する。なお、図8において、図1と符号が同じものは、同じ機能を実現する手段であり、ここでは、図1を構成する機能手段と異なる機能手段について主として説明する。
【0073】
ホストコンピュータ100には、データ作成手段102とデータ転送手段103とを有し、データ作成手段102で作成されたページデータをデータ転送手段103によりプリントサーバ704が識別可能なPDLデータに変換した上で送信する機能を有する。なお、データ転送手段103は、一般的にはプリントドライバに相当し、上記の機能の他にプリントドライバとして有する機能も当然に有する。
【0074】
一方、プリントサーバ704は、操作画面等の表示手段303と書式作成手段101とを有し、その表示手段303を利用して書式作成手段101により作成された帳票データを書式管理手段203に登録できる機能を有する。
【0075】
また、プリントサーバ704は、ジョブ蓄積手段301を有し、データ受信手段201が受信したホストコンピュータから転送されてきた印刷ジョブを蓄積するとともに、印刷ジョブのスケジュールや印刷ジョブの再印刷、削除などの一般的なプリントサーバとしての機能を有する。
【0076】
さらに、プリントサーバ704には操作手段205を有し、これはプリントサーバ704の操作画面に相当する。図5で説明したような全頁印刷、次頁印刷、印刷中止および隠蔽印刷などの印刷モードの指定や、給紙位置および排紙位置の指定などに加え、出力先のプリンタの指定を行うことができ、その受付と同時に出力判定手段210に指示することができる。
【0077】
そして、プリントサーバ704は、出力先変更手段302を有し、出力先変更手段302は、出力判定手段210を経由して受け取った操作手段205からの出力先プリンタの指示に従って、プリンタ703,703b、703cの何れかに出力するよう制御を行う機能を有する。
【0078】
上記のような構成に基づく本実施例の動作について説明すると、プリントサーバ704では、プリントサーバ704の書式作成手段101により作成された機密領域を指定した帳票データを予め書式管理手段203に登録しておく。そして、データ作成手段102により作成されたページデータを含む印刷ジョブをプリントサーバ704のデータ受付手段201で受信する。
【0079】
プリントサーバ704は、データ受信手段201で受信した印刷ジョブを、すべてジョブ蓄積手段301に渡し、印刷出力とは関係なく、蓄積を行う。
【0080】
プリントサーバ704では、既にページデータと帳票データは分離されているので、それぞれのデータに基づいて、通常画像と隠蔽画像の作成が行われる。
【0081】
機密領域抽出手段206では、帳票データの解析が行われ、機密領域として定義される領域情報の抽出され、領域情報格納手段207に蓄積される。
【0082】
ページ描画手段204で、データ編集手段202に有するページデータの1ページ分のページデータに、書式管理手段203から呼び出された登録済みの帳票データを適用して、オーバーレイ描画がなされ、通常画像の作成が行われる。
【0083】
また、データ編集手段202に有するページデータと領域情報格納手段207に蓄積されている機密領域として定義されている領域情報から、ページデータによって使用される領域の有無を領域使用判定手段208で判定し、この領域使用判定手段で機密領域として定義されている領域にページデータによる印字がなされるか否かの領域リストを作成した上で、その作成された領域リストに基づいて隠蔽画像の作成が行われる。
【0084】
そして、出力判定手段210で通常画像を出力する場合には、出力先変更手段302に対して印刷ジョブで指定されている出力先プリンタを使用するように指示する。一方、隠蔽画像を出力する場合には、操作手段205で指定されたプリンタ703a、703b、703cへ出力するように出力先変更手段302に対して指示を行う。
【0085】
なお、上記第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、プリンタへの適用とプリントサーバへの適用について例示したが、これに限定されることなく、画像形成に関する装置やその周辺装置に組み込んでも適用することができる。このときの画像形成装置の他の例としては、複合機やファクシミリ装置などがあげられ、周辺装置としては、他の種類のサーバなどが上げられる。また、当然に本発明を実現できるソフトウェアであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、印刷用紙などの印刷媒体に情報を出力するプリンタ等に適用可能であり、特に、機密文書や個人情報文書などの秘匿性の高い情報を出力する場合に情報の漏洩防止を可能とするのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法についてプリンタ及びホストコンピュータに適用した場合の一例を示す構成図である。
【図2】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して作成されるデータまたは画像の一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したプリンタ及びホストコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して作成される印刷結果の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したプリンタ側の操作手段の一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したプリンタ側の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したプリントサーバ及びホストコンピュータの一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明に係わる印刷装置、印刷制御プログラムおよび印刷制御方法を適用して構成したプリントサーバ及びホストコンピュータの一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0088】
100 ホストコンピュータ
101 書式作成手段
102 データ作成手段
103 データ転送手段
200 プリンタ
201 データ受信手段
202 データ編集手段
203 書式管理手段
204 ページ描画手段
205 操作手段
206 機密領域抽出手段
207 領域情報格納手段
208 領域使用判定手段
209 隠蔽画像作成手段
210 出力判定手段
704 プリントサーバ
301 ジョブ蓄積手段
302 出力先変更手段
703a、703b、703c プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置であって、
前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出する抽出手段と
前記抽出手段により抽出された前記機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから前記機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定する判定手段と
前記抽出手段により抽出された前記機密情報の領域に関する情報に対応して隠蔽データを作成する隠蔽データ作成手段とを有し、
前記判定手段により前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを前記隠蔽データ作成手段により作成することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記隠蔽データ作成手段により作成される前記隠蔽データは、前記ページデータに対応して作成されることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行うか否かの操作を受け付ける操作受付手段をさらに具備し、
前記操作受付手段により隠蔽印刷を行う操作を受け付けた場合には、前記操作受付手段は、印刷物に対して隠蔽印刷を行う際に、前記ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填指示、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を受け付けることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記操作受付手段により隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行わない操作を受け付けた場合には、ページデータと帳票データとにより印刷を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の印刷装置。
【請求項5】
前記操作受付手段は、前記ページデータと前記帳票データとにより印刷を行う際に、少なくとも全てのページを印刷するか又は次ページのみを印刷するかのいずれかを受け付けることにより印刷を行うことを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置を制御するプロセッサに実行させる印刷制御プログラムであって、
前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出する抽出工程と
前記抽出工程により抽出された前記機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから前記機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定する判定工程と
前記抽出工程により抽出された前記機密情報の領域に関する情報に対応して隠蔽データを作成する隠蔽データ作成工程とを有し、
前記判定工程により前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを前記隠蔽データ作成工程により作成することを特徴とする印刷制御プログラム。
【請求項7】
前記隠蔽データ作成工程により作成される前記隠蔽データは、前記ページデータに対応して作成されることを特徴とする請求項6記載の印刷制御プログラム。
【請求項8】
前記隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行うか否かの操作を受け付ける操作受付工程をさらに具備し、
前記操作受付工程で隠蔽印刷を行う操作を受け付けた場合には、前記操作受付工程は、印刷物に対して隠蔽印刷を行う際に、前記ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填指示、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を受け付けることを特徴とする請求項6又は請求項7記載の印刷制御プログラム。
【請求項9】
前記操作受付工程で隠蔽データを印刷する隠蔽印刷を行わない操作を受け付けた場合には、ページデータと帳票データとにより印刷を行うことを特徴とする請求項6又は請求項7記載の印刷制御プログラム。
【請求項10】
前記操作受付工程では、前記ページデータと前記帳票データとにより印刷を行う際に、少なくとも全てのページを印刷するか又は次ページのみを印刷するかのいずれかを受け付けることにより印刷を行うことを特徴とする請求項9記載の印刷制御プログラム。
【請求項11】
印字情報としてのページデータと書式情報としての帳票データとにより印刷物を作成する印刷装置の印刷制御方法であって、
前記帳票データから機密情報の領域に関する情報を抽出し、
抽出された機密情報の領域に関する情報と前記ページデータとから機密情報の領域にページデータを有するか否かを判定し、
前記機密情報の領域にページデータを有すると判定した場合には、前記機密情報の領域を隠蔽する隠蔽データを作成することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項12】
ページデータが印刷済の印刷物の所定のトレイへの再装填、並びに当該所定のトレイからの給紙指示を条件に、前記隠蔽データを用いた印刷を実行することを特徴とする請求項11記載の印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−313662(P2007−313662A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142762(P2006−142762)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】