説明

印刷装置、印刷方法およびプログラム

【課題】顔料インクと染料インクとを用いた印刷によって形成される印刷画像の画質の低下を抑制する技術を提供する。
【解決手段】印刷装置100は、双方向印刷において、ブラックの顔料インクと染料インクとを用いたバンド印刷を実行する。印刷装置100では、印刷ヘッド60が往路方向へと移動する往路印刷領域では、顔料インクドットが先に形成され、染料インクドットが後に形成される。また、印刷ヘッド60が復路方向への移動する復路印刷領域では、染料インクドットが先に形成され、顔料インクドットが後に形成される。印刷装置100は、往路印刷領域における顔料インクのドット形成の際に、副走査方向に顔料インクドットと隣り合う染料インクのドットサイズが所定のサイズ以上である場合には、顔料インクドットのサイズを変更する。また、当該染料インクのドットサイズが所定のサイズより小さい場合には、顔料インクドットのサイズを変更しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、顔料インクと染料インクとを用いた印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置としては、印刷媒体に対して、ノズルからインクを吐出させて、インクドットを形成することにより、印刷画像を形成するインクジェット方式の印刷装置が知られている(下記特許文献1等)。インクジェット方式の印刷装置には、インクとして、顔料インクと染料インクの2種類のインクを用いて印刷を実行するものがある。「顔料インク」とは、インクの色料として顔料を用いたインクであり、「染料インク」とは、インクの色料として染料を用いたインクである。一般に、顔料インクは、染料インクに比較して、印刷用紙ににじみにくく、透明度が低いため、文字印刷など、ベタ画像の印刷に適している。また、染料インクは、顔料インクに比較して、印刷用紙ににじみやすく、透明度が高いため、写真画像の印刷に適している。
【0003】
ところで、顔料インクと染料インクの両方を用いて印刷画像を形成する場合には、顔料インクのインクドットと染料インクのインクドットとが重なる順番によって、表現される色彩の濃度が異なってしまう場合があることが知られている。印刷ヘッドを往復移動させて双方向印刷を実行する印刷装置では、印刷ヘッドの移動方向に顔料インクのノズルと染料インクのノズルとが並列に配置されていると、印刷ヘッドの往路と復路とで顔料インクと染料インクとが吐出される順番が入れ替わってしまう。従って、このような印刷装置では、印刷ヘッドの往路において形成される印刷画像と、復路において形成される印刷画像とで階調性が異なってしまい、印刷画像の画質が低下してしまう可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−188896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、顔料インクと染料インクとを用いた印刷によって形成される印刷画像の画質の低下を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
印刷装置であって、
顔料インクを吐出して、印刷媒体に顔料インクドットを形成する顔料インクノズルと、
染料インクを吐出して、印刷媒体に染料インクドットを形成する染料インクノズルと、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルから吐出されるインク量を制御することによって、前記顔料インクドットと前記染料インクドットのサイズを制御するノズル制御部と、
を備え、
前記ノズル制御部は、
前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを形成させる第1の印刷処理と、
前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを形成させる第2の印刷処理と、
を実行して、前記第1と第2の印刷処理のそれぞれによって形成される第1と第2の印刷画像領域を含む印刷画像を形成し、
前記ノズル制御部は、前記第1または第2の印刷処理において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成する際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更する
ドットサイズ調整処理を実行する、印刷装置。
この印刷装置によれば、顔料インクドットが染料インクドットと重なる順序が異なることにより、第1の印刷領域と第2の印刷領域との間で濃度ムラが発生してしまう可能性がある場合であっても、顔料インクドットまたは染料インクドットのサイズを変更することにより、第1または第2の印刷領域における濃度を調整し、その濃度ムラの発生を抑制することができる。従って、顔料インクと染料インクとを用いた印刷によって形成される印刷画像の画質の低下を抑制することができる。
【0008】
[適用例2]
適用例1記載の印刷装置であって、
前記ドットサイズ調整処理は、前記第1の印刷処理において実行され、
前記第1種のインクドットは、顔料インクドットであり、
前記第2種のインクドットは、染料インクドットである、印刷装置。
この印刷装置によれば、顔料インクドットと染料インクドットとの重なる順序が異なることにより、第1の印刷領域と第2の印刷領域との間で濃度ムラが発生してしまう可能性がある場合であっても、顔料インクドットのサイズを変更することにより、第1の印刷領域における濃度を調整し、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0009】
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の印刷装置であって、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルとがそれぞれ一定の方向に一定のノズルピッチで配列された、互いに並列な顔料インクノズル列と染料インクノズル列とを有し、前記顔料インクノズル列と前記染料インクノズル列の列方向と交差する第1と第2の方向に往復移動する、印刷ヘッドを備え、
前記顔料インクノズル列と前記染料インクノズル列は、前記印刷ヘッドにおいて、前記顔料インクノズル列を第1の方向側とし、前記染料インクノズル列を前記第2の方向側として配置されるとともに、前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルとは、前記列方向に互いにオフセットされており、
前記第1の印刷処理は、前記印刷ヘッドを前記第1の方向に移動させつつ前記第1の印刷画像領域を印刷する処理を含み、
前記第2の印刷処理は、前記印刷ヘッドを前記第2の方向に移動させつつ前記第2の印刷画像領域を印刷する処理を含み、
前記ノズル制御部は、前記第1と第2の印刷処理を交互に実行することにより、前記印刷媒体に印刷画像を形成する、印刷装置。
この印刷装置によれば、顔料インクと染料インクとを用いた双方向印刷を実行することができ、その双方向印刷において、往路の印刷において形成されるの印刷領域と、復路の印刷において形成される印刷領域との間の濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0010】
[適用例4]
適用例1〜3のいずれか一つに記載の印刷装置であって、
前記ノズル制御部は、前記ドットサイズ調整処理における閾値である前記予め設定されたサイズ、または、前記ドットサイズ調整処理における前記第1種のインクドットのサイズの変更比率の少なくとも一方を、前記印刷媒体の種類に応じて変更する、印刷装置。
この印刷装置によれば、印刷媒体の種類が異なることによって、印刷媒体に形成されるインクドットのサイズが変化してしまう場合であっても、印刷媒体の種類に応じたドットサイズ調整処理を実行できるため、印刷画質の低下を抑制できる。
【0011】
[適用例5]
染料インクを吐出する染料インクノズルと、顔料インクを吐出する顔料インクノズルとを有する印刷装置が実行する印刷方法であって、
(a)前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させて、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを含む第1の印刷画像領域を形成する工程と、
(b)前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させて、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを含む第2の印刷画像領域を形成する工程と、
(c)前記工程(a)と前記工程(c)とを繰り返すことによって、前記第1と第2の印刷画像領域を含む印刷画像を形成する工程と、
を備え、
前記印刷装置は、前記工程(a)または前記工程(b)において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成する際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更するドットサイズ調整処理を実行する、印刷方法。
【0012】
[適用例6]
顔料インクを吐出して、印刷媒体に顔料インクドットを形成する顔料インクノズルと、
染料インクを吐出して、印刷媒体に染料インクドットを形成する染料インクノズルと、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルから吐出されるインク量を制御することによって、前記顔料インクドットと前記染料インクドットのサイズを制御するノズル制御部とを備える印刷装置に印刷を実行させるプログラムであって、
前記印刷装置に、
前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを形成させる第1の印刷処理と、
前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを形成させる第2の印刷処理と、
を実行させるプログラムを含み、
前記印刷装置に、前記第1または第2の印刷処理において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成させる際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更する
ドットサイズ調整処理を実行させる、プログラム。
【0013】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、印刷装置および印刷方法、印刷装置の制御方法および制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータープログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置の構成を示す概略図。
【図2】印刷ヘッドに設けられたノズルの配置構成を説明するための模式図。
【図3】第1と第2の駆動信号生成部によって生成される駆動信号の一例を示す模式図。
【図4】本実施例の印刷装置で用いられるブラックの顔料インクおよび染料インクのそれぞれの特性をまとめた説明図。
【図5】用紙に形成される顔料インクのドットと、染料インクのドットとの相違を説明するための模式図。
【図6】染料インクを用いた疑似バンド印刷の工程を工程順に示す模式図。
【図7】ブラックの顔料インクおよび染料インクを用いて実行するバンド印刷の工程を工程順に示す模式図。
【図8】バンド印刷における顔料インクのドットと染料インクのドットとの間の重なりについて説明するための模式図。
【図9】バンド印刷の際に印刷実行部が実行する制御処理の手順を示すフローチャート。
【図10】顔料インクドットのサイズの調整処理を説明するための模式図。
【図11】バンド印刷の印刷結果を説明するための模式図。
【図12】バンド印刷の印刷結果を説明するための模式図。
【図13】第2実施例における印刷装置の印刷ヘッドの構成を示す概略図。
【図14】第2実施例の印刷装置が実行するバンド印刷を工程順に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
A.第1実施例:
図1は本発明の一実施例としての印刷装置100の構成を示す概略図である。この印刷装置100は、印刷媒体である用紙PPにインク滴を吐出して形成したインクドットによって印刷画像を形成するインクジェット方式のプリンターであり、双方向印刷による印刷処理を実行する。印刷装置100は、制御ユニット10と、キャリッジ50と、印刷ヘッド60と、キャリッジ駆動部70と、用紙搬送部80とを備える。
【0016】
制御ユニット10は、CPU20と、RAM31と、ROM33と、EEPROM35と、第1と第2の駆動信号生成部41,42とを備える。CPU20と、RAM31と、ROM33と、EEPROM35とは、内部バス11によって互いに接続されている。CPU20は、ROM33やEEPROM35に予め格納されているプログラムを読み出し、RAM31上に展開して実行することにより、通信制御部21や、印刷実行部23として機能する。
【0017】
通信制御部21は、印刷装置100と印刷装置100に接続されるパーソナルコンピューター(PC)200などの外部機器との間の通信を制御する。印刷実行部23は、パーソナルコンピューター200から受信した印刷データに基づいて、印刷装置100の各構成部を制御し、印刷処理を実行する。第1と第2の駆動信号生成部41,42はそれぞれ、印刷実行部23の指令により、ノズルを駆動するための駆動信号を生成する。なお、具体的な駆動信号の内容については後述する。
【0018】
キャリッジ50には、5つのインクカートリッジ51〜55が搭載されている。第1ないし第3のインクカートリッジ51〜53にはそれぞれ、イエローの染料インク(Yd)と、マゼンタの染料インク(Md)と、シアンの染料インク(Cd)とが封入されている。また、第4のインクカートリッジ54には、ブラックの顔料インク(Kp)が封入され、第5のインクカートリッジ55には、ブラックの染料インク(Kd)が封入されている。即ち、この印刷装置100では、カラー印刷については、染料インクによる印刷が可能であり、モノクロ印刷については、染料インクによる印刷と、顔料インクによる印刷とが可能である。
【0019】
印刷ヘッド60は、キャリッジ50の下部に配置されている。印刷ヘッド60の下面(用紙PPと対向する面)には、上記の各色の染料インクおよびブラックの顔料インクを吐出するための第1ないし第5のノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdが設けられている。
【0020】
上記の各インクカートリッジ51〜55は、対応する各色のノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdの上に装着されており、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdにインクを供給する。なお、印刷ヘッド60の下面における各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdの配置構成については後述する。
【0021】
キャリッジ駆動部70は、キャリッジ50を用紙PPの面に沿って直線方向(図1の紙面左右方向)に往復移動させるための駆動機構である。キャリッジ駆動部70は、キャリッジモータ71と、駆動ベルト72と、プーリー73と、摺動軸74とを備える。摺動軸74は、キャリッジ50の移動方向に架設され、キャリッジ50を摺動可能に保持する。駆動ベルト72は、キャリッジモータ71とプーリー73との間に無端状に張り渡されており、キャリッジ50が固定的に取り付けられている。
【0022】
キャリッジモータ71は、印刷実行部23からの指令で回転駆動する。キャリッジモータ71の回転駆動に応じて、駆動ベルト72に取り付けられたキャリッジ50および印刷ヘッド60が、用紙PPの印刷面に沿って往復移動する。なお、本明細書では、このキャリッジ50および印刷ヘッド60の往復移動の方向を「主走査方向」と呼び、便宜上、特に、図1の紙面右方向および紙面左方向をそれぞれ、「往路方向」および「復路方向」と呼ぶ。
【0023】
用紙搬送部80は、搬送モータ81と、プラテン82とを備える。プラテン82は、主走査方向と平行な方向に架設された回転軸であり、搬送モータ81によって回転する。搬送モータ81は、印刷実行部23の指令に応じて駆動する。用紙PPは、印刷処理の際に、プラテン82の側面上に載置され、プラテン82の回転によって搬送される。なお、本明細書では、印刷処理の際に用紙PPが搬送される方向を単に「搬送方向」、または「副走査方向」と呼ぶ。
【0024】
印刷実行部23は、パーソナルコンピューター200から印刷データを受け取ると、双方向印刷による印刷処理を実行する。具体的には、印刷実行部23は、印刷ヘッド60を往路方向または復路方向に一定の距離だけ移動させるとともに、印刷データに応じて、各色ごとのノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdからインクを吐出させる。インクの吐出は、印刷実行部23が、第1と第2の駆動信号生成部41,42によって生成された駆動信号を取得するとともに、印刷データに応じて各ノズルに印加することによって実行される。この印刷ヘッド60の移動とインクの吐出とを繰り返すことにより、用紙PPには、主走査方向に沿って配列されたインクドット列が形成される。
【0025】
印刷実行部23は、印刷ヘッド60の往路方向または復路方向への走査を完了した後、用紙PPを所定の搬送距離だけ搬送方向に移動させる。そして、印刷実行部23は、印刷ヘッド60を前述の走査方向とは反対の方向への走査を開始するとともに、印刷データに応じた各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdからインクの吐出を実行する。これによって、用紙PPには、先に形成されたインクドット列と並列なインクドット列が形成される。印刷装置100では、このような印刷ヘッド60の主走査方向への走査によるインクドット列の形成と、用紙PPの搬送とを交互に繰り返すことにより、印刷画像が形成される。
【0026】
図2は、印刷ヘッド60に設けられたノズルの配置構成を説明するための模式図である。図2には、印刷ヘッド60の下面(用紙PPと対向する面)が模式的に示されている。各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61kdはそれぞれ、N(Nは任意の自然数)個が副走査方向に沿って一列に配列されて、第1ないし第5のノズル列62Yd,62Md,62Cd,62Kp,62kdを構成している。具体的には、第1ないし第3のノズル列62Yd,62Md,62Cdは、イエロー、マゼンタ、シアンの染料インクのためのノズル61Yd,61Md,61Cdによって構成されている。また、第4と第5のノズル列62Kp,62kdは、ブラックの顔料インクとブラックの染料インクのためのノズル61Kp,61kdによって構成されている。
【0027】
各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61kdは、各ノズル列62Yd,62Md,62Cd,62Kp,62kdにおいて、略一定の間隔D(以後、「ノズルピッチD」と呼ぶ)で配列されている。また、第1ないし第4のノズル列62Yd,62Md,62Cd,62Kpのノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kpは、各色ごとのノズルが、主走査方向に沿って一直線に整列するように設けられている。一方、第5のノズル列62Kdの各ノズル61kdは、第4のノズル列62Kpの各ノズル61Kpに対して、ノズルピッチDの半分の距離(1/2D)だけオフセットするように設けられている。
【0028】
このようなノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61kdの配置構成を有することにより、本実施例の印刷装置100では、染料インクを用いた疑似バンド印刷と、顔料インクと染料インクとを用いたバンド印刷の2種類の印刷処理を適宜実行する。疑似バンド印刷およびバンド印刷については後述する。
【0029】
図3(A),(B)はそれぞれ、第1と第2の駆動信号生成部41,42によって生成される駆動信号の一例を示す模式図である。図3(A),(B)にはそれぞれ、第1と第2の駆動信号DS1,DS2が、縦軸を電圧とし、横軸を時間として図示されている。第1と第2の駆動信号DS1,DS2は、ROM33に予め格納された電位の変化パターンを表す駆動信号生成用データに基づいて生成される。なお、駆動信号生成用データは、印刷実行部23がROM33から読み出すとともに、第1と第2の駆動信号生成部41,42に送信する。
【0030】
第1の駆動信号生成部41が生成する第1の駆動信号DS1は、各色の染料インクのためのノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kdに供給される。また、第2の駆動信号生成部42が生成する第2の駆動信号DS2は、ブラックの顔料インクのノズル61Kpに供給される。第1の駆動信号DS1と第2の駆動信号DS2とでは、顔料インクと染料インクのそれぞれのインク特性(後述)に応じて、信号のパルス幅や振幅が変えられている。
【0031】
染料インクのための第1の駆動信号DS1(図3(A))は、第1ないし第4の駆動パルスP1d〜P4dを有している。第1ないし第3の駆動パルスP1d,P2d,P3dはそれぞれ、染料インクの大ドット、中ドット、小ドットを形成するためのパルスである。第4の駆動パルスP4dは、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kdにインクの吐出を実行させないためのパルスである。顔料インクのための第2の駆動信号DS2(図3(B))は、第1の駆動信号DS1と同様な、第1ないし第4の駆動パルスP1p〜P4pを有している。
【0032】
第1と第2の駆動信号DS1,DS2はそれぞれ一定の周期Tで繰り返し生成され、印刷ヘッド60の対応する各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdに送信される。なお、第1と第2の駆動信号DS1,DS2の周期Tはそれぞれ、第1と第2の駆動信号DS1,DS2とともに送信されるラッチパルス(図示せず)によって規定される。同様に、第1と第2の駆動信号DS1,DS2における各パルスP1d〜P4d,P1p〜P4pの送信期間は、第1と第2の駆動信号DS1,DS2とともに送信されるチェンジパルス(図示せず)によって規定されている。
【0033】
ここで、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdは、インクの充填されるインク室と連通しており、インク室の壁面には、圧力発生素子として機能するピエゾ素子が配置されている。各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdに対応するピエゾ素子には、上述の駆動信号DS1,DS2に含まれる駆動パルスP1d〜P4d,P1p〜P4pのいずれかが印加される。各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdに印加される駆動パルスは、印刷実行部23が、印刷データに基づき決定したドットサイズに応じて、ノズルごとに選択する。
【0034】
ピエゾ素子は、印加された駆動パルスの電位の変化に応じて変形し、インク室内の圧力を変化させる。これによって、インク室内の圧力変化に応じたインク量のインク滴が、各ノズルから吐出される。なお、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdには、インクを吐出しない場合にも、第4の駆動パルスP4d、P4pが印加される。これらのパルスP4d、P4pによってインク室内の圧力が変化することにより、ノズル開口部に形成されたインクのメニスカスが振動し、ノズル開口部近傍におけるインクの増粘が抑制される。
【0035】
図4は、本実施例の印刷装置100で用いられるブラックの顔料インクおよび染料インクのそれぞれの特性をまとめた説明図である。一般に、顔料インクと染料インクとでは、同じブラックであっても、用紙PPへのインク成分の浸透のしやすさ(本明細書では「用紙浸透性」とも呼ぶ)や色相が異なる。顔料インクと染料インクとを比較すると、これらの用紙浸透性は、顔料インクの方が低く、染料インクの方が高い。即ち、顔料インクの方が、そのインク滴が印刷用紙において滲みにくく、染料インクの方が、そのインク滴が印刷用紙において滲みやすい。これは、顔料インクについては、その顔料成分が印刷用紙の表面上に留まりやすいためである。
【0036】
このような用紙浸透性の相違により、印刷ヘッド60のノズル61Kp,61Kdからそれぞれ同じ量のインクを吐出させたときに、用紙PPに形成されるインクドットのサイズは、顔料インクドットの方が染料インクドットよりも小さくなる傾向にある。また、顔料インクによるインクドットの表面には、用紙PPの表面に残留する顔料成分によって凹凸が形成されてしまう。そのため、顔料インクのインクドットによって形成される印刷画像は、染料インクによる印刷画像よりも光沢感が低くなる。
【0037】
さらに、色相については、顔料インクのブラックはマゼンタ側に寄った色相を有しており、染料インクのブラックはシアン側に寄った色相を有している。従って、顔料インクによって形成された印刷画像と、染料インクによって形成された印刷画像とでは、単位面積あたりに含まれるインク量が同じである場合には、顔料インクによる印刷画像の方が、染料インクによる印刷画像よりも濃度が高くなる。
【0038】
なお、他のインク特性の相違としては、顔料インクの方が、染料インクよりも耐水性や、耐候性が高い。また、顔料インクは、そのにじみにくさや色彩の濃度の高さから、一般に、文字の印刷に適しており、染料インクは、そのにじみやすさや透明度から、一般に、写真画像の印刷に適している。
【0039】
図5は、本実施例の印刷装置100によって用紙PPに形成される顔料インクのドットと、染料インクのドットとの相違を説明するための模式図である。この図では、前記した顔料インクと染料インクとの間のインクドットのサイズの差異や濃度の差異を模式的に示してある。図3で説明したように、本実施例の印刷装置100では、各駆動パルスP1d〜P3d,P1p〜P3pによって、用紙PPには、顔料インクおよび染料インクのそれぞれについて、大ドット、中ドット、小ドットが形成される。
【0040】
しかし、同種のドットサイズとして形成されたインクドットであっても、顔料インクのドットの方が、染料インクのドットよりも比較的小さいサイズで形成されるように設定されている。この理由は、染料インクのみを用いて濃度が均一なベタ画像を用紙PPに形成する場合より、顔料インクのみを用いて同じ濃度のベタ画像を用紙PPに形成する場合の方が、単位面積あたりに含まれるインク量を少なくすることができるためである。
【0041】
ここで、本実施例の印刷装置100では、前記したとおり、染料インクのみを用いる疑似バンド印刷と、顔料インクと染料インクの両方を用いるバンド印刷とを実行する。具体的には、写真画像などのカラー印刷は、疑似バンド印刷を実行し、モノクロ画像やブラックによる文字印刷には、バンド印刷を実行する。
【0042】
図6(A),(B)は、染料インクを用いた疑似バンド印刷の工程を工程順に示す模式図である。図6(A),(B)にはそれぞれ、印刷ヘッド60のうちのブラックの染料インクのための第5のノズル列62Kdが図示されている。なお、図6(A),(B)では、便宜上、第5のノズル列62Kdのノズル61Kdの個数は7個(N=7)として図示されている。また、図6(A),(B)には、疑似バンド印刷における各ノズル61Kdの移動軌跡Ldが一点鎖線で図示され、その線上に、ブラックの染料インクの吐出位置Pdが白丸で図示されている。
【0043】
さらに、図6(B)には、便宜上、図6(A)の工程完了直後における第5のノズル列62Kdの位置と、図6(A)の工程におけるインク吐出位置Pdとを破線で図示してある。なお、カラー画像の印刷の際には、他の染料インクのノズル列62Yd,62Md,62Cdによる疑似バンド印刷も並行して実行されるが、その内容については、第5のインクノズル列62Kdと同様であるため、図示および説明は省略する。
【0044】
疑似バンド印刷では、印刷実行部23は、第5のインクノズル列62Kd(印刷ヘッド60を往路方向へと移動させるとともに、印刷画像の画素ピッチに応じた間隔でインクを吐出させる(図6(A))。これによって、用紙PPには、互いにノズルピッチDだけ離れた副走査方向に並列なインクドット列が、ノズル61Kdの個数に応じた列数で形成される。
【0045】
次に、印刷実行部23は、用紙PPを、搬送方向にノズルピッチDの半分の距離(1/2D)だけ移動させる。そして、印刷実行部23は、印刷ヘッド60を復路方向へと移動させるとともに、印刷画像の画素ピッチに応じた間隔でインクを吐出させる(図6(B))。これによって、図6(A)の工程において形成された並列なインクドット列のそれぞれの隣に、新たなインクドット列が形成される。
【0046】
図6(B)のインクドット列の形成工程の後には、印刷実行部23は、用紙PPを1バンド分(即ち、ノズルの個数N×ノズルピッチDの距離)だけ移動させ、再び、図6(A)と同様な往路方向のインクドット列の形成工程を実行する。即ち、この疑似バンド印刷では、印刷ヘッド60の1度の往復走査によって、印刷画像の1バンド分が形成され、その1バンド分の印刷を繰り返すことにより印刷画像が形成される。
【0047】
図7(A),(B)は、ブラックの顔料インクおよび染料インクを用いて実行するバンド印刷の工程を工程順に示す図6と同様な模式図である。図7(A),(B)には、印刷ヘッド60のうちの第4と第5のノズル列62Kp,62Kdが図示されている。また、図7(A),(B)には、バンド印刷におけるノズル61Kp,61Kdのそれぞれの移動軌跡Lp,Ldを示す一点鎖線および二点鎖線と、ブラックの顔料インクおよび染料インクの吐出位置Pp,Pdを示す黒丸および白丸が図示されている。なお、図7(B)には、便宜上、図7(A)の工程におけるインクの吐出位置Pp,Pdが図示されているとともに、図7(A)の工程完了直後における第4と第5のノズル列62Kp,62Kdの配置位置が破線で図示されている。
【0048】
このバンド印刷では、印刷実行部23は、第4と第5のノズル列62Kp,62Kd(印刷ヘッド60)を往路方向へと移動させるとともに、印刷画像の画素ピッチに応じた間隔で、ブラックの顔料インクおよび染料インクを吐出させる(図7(A))。これによって、用紙PPには、互いにノズルピッチDの半分の距離(1/2D)だけ離れた並列なインクドット列(副走査方向に交互に配列された染料インクのドット列と顔料インクのドット列)が、ノズル61Kp,61Kdの個数Nに応じた列数で形成される。
【0049】
次に、印刷実行部23は、用紙PPを、搬送方向に1バンド分の距離(N×D)だけ移動させる。そして、印刷実行部23は、印刷ヘッド60を復路方向へと折り返して移動させつつ、印刷画像の画素ピッチに応じた間隔で、ブラックの顔料インクおよび染料インクを吐出させる(図7(B))。これによって、図7(A)で説明した工程において形成された並列な複数のインクドット列群の搬送方向下流側に、新たなインクドット列群が形成される。
【0050】
即ち、このバンド印刷では、印刷ヘッド60の1度の往復走査によって、印刷画像の2バンド分が形成され、その2バンド分の印刷を繰り返すことにより印刷画像が形成される。このように、本実施例の印刷装置100では、モノクロ印刷画像を印刷する場合には、このバンド印刷を実行することにより、疑似バンド印刷によって印刷する場合よりも、高速な印刷が可能となる。
【0051】
なお、本明細書では、バンド印刷によって形成される印刷画像のうち、往路方向への印刷ヘッド60の移動の際に形成される印刷画像の領域を「往路印刷領域」と呼ぶ。また、復路方向への印刷ヘッド60の移動の際に形成される印刷画像の領域を「復路印刷領域」と呼ぶ。
【0052】
図8は、バンド印刷における顔料インクのドットと染料インクのドットとの間の重なりについて説明するための模式図である。ここで、バンド印刷によって形成された印刷画像においては、搬送方向に沿って顔料インクのドットDpと染料インクのドットDdとが一列に並ぶ(図7)。この互いに隣り合う顔料インクドットDpと染料インクドットDdとは、それらのドットサイズの組み合わせによっては、互いに重なり合う。
【0053】
図8(A),(B)はそれぞれ、大ドットサイズ(図5)のインクドットDp,Dd同士の重なりを模式的に示している。図8(A)は、往路印刷領域において顔料インクドットDpと染料インクドットDdとが重なり合っている状態を示しており、図8(B)は、往路印刷領域において顔料インクドットDpと染料インクドットDdとが重なり合っている状態を示している。
【0054】
バンド印刷における往路方向への印刷の場合には、ブラックの顔料インクのための第4のノズル列62Kpを前段側とし、ブラックの染料インクのため第5のノズル列62Kdを後段側として、印刷ヘッド60は移動する(図7(A))。従って、往路印刷領域の印刷においては、顔料インクドットDpの後に、隣り合う染料インクドットDdが形成される(図8(A))。
【0055】
一方、バンド印刷における復路方向への印刷の場合には、ブラックの染料インクのため第5のノズル列62Kdを前段側とし、ブラックの顔料インクのための第4のノズル列62Kpを後段側として、印刷ヘッド60は移動する(図7(B))。従って、復路印刷領域の印刷においては、染料インクドットDdの後に、隣り合う顔料インクドットDpが形成される(図8(B))。
【0056】
ここで、用紙PPに形成された顔料インクドットDpに重ねて染料インクが吐出される場合には(図8(A))、色相の濃い顔料インクの顔料成分が用紙PPの外表面を被覆している上に、色相が薄く透明度が高い染料インクが重ねられることとなる。この場合には、ドットDp,Dd同士が重なり合っている領域の濃度は、顔料インクのドットの濃度とほぼ同じ程度の濃度となる。
【0057】
これに対して、染料インクのドットに重ねて顔料インクが吐出される場合には(図8(B))、用紙PPに浸透した染料インクの成分中に、顔料インクの顔料成分が浸透・拡散していく。そのため、ドット同士が重なり合っている領域における濃度は、図8(A)に比較して低くなる。
【0058】
図8(C)は、本実施例の印刷装置100のバンド印刷において、各ノズル61Kp,61Kdによって大ドットのサイズを有するインクドットを生成した場合の印刷画像を示す模式図である。この場合には、往路印刷領域では、顔料インクと染料インクのドット同士の重なりが図8(A)のようになり、復路印刷領域では、顔料インクと染料インクのドット同士の重なりが図8(B)のようになる。このように、インクドット同士が重なり合う領域の濃度差に応じて往路印刷領域と復路印刷領域とでは全体の濃度が異なってくる。即ち、往路印刷領域の方が濃度が高く、復路印刷領域の方が濃度が低くなる。
【0059】
即ち、本実施例の印刷装置100が実行するバンド印刷では、往路印刷領域と復路印刷領域とで形成されるドットの配列構成が同一であっても、顔料インクと染料インクのドット同士の重なりの度合いによっては、これらの領域ごとの濃度が異なってしまう。そこで、本実施例の印刷装置100では、往路印刷領域と復路印刷領域との間において濃度差が発生することを抑制するために、印刷実行部23は、以下に説明する制御処理を実行する。
【0060】
図9は、バンド印刷の際に印刷実行部23が実行する制御処理の手順を示すフローチャートである。ステップS10では、印刷実行部23は、印刷データに基づいて、形成されるインクドットごとのインクドットのサイズを決定する。このインクドットのサイズは、予め準備された印刷画像の濃度ごとのドットの配列パターンやマップを用いて決定されるものとしても良い。
【0061】
ステップS20では、印刷実行部23は、現在の各ノズル61Kp,61Kdの配置位置に形成すべきインクドットのサイズを取得する。ステップS30では、印刷実行部23は、これから形成するインクドットが、往路印刷領域のインクドットであるのか、復路印刷領域のインクドットであるのかを、印刷ヘッド60の移動方向から特定する。往路印刷領域にインクドットを形成する場合には、印刷実行部23は、ステップS40〜S60の処理によって、顔料インクによって形成されるべきインクドットのサイズを調整する。また、復路印刷領域にインクドットを形成する場合には、印刷実行部23は、ステップS70の処理を実行する。
【0062】
ステップS40では、印刷実行部23は、このインク吐出工程において形成する顔料インクドットの、副走査方向に隣り合う位置に形成される染料インクドット(以下、単に「隣接染料インクドット」と呼ぶ)のサイズを取得する。即ち、後のインク吐出工程において形成される隣接染料インクドットのサイズを取得する。ステップS50では、このインク吐出工程において形成される顔料インクドットのサイズと、ステップS30で取得した隣接染料インクドットのサイズとの組み合わせから、顔料インクドットと隣接染料インクドットの重なりの度合い(干渉量)についての判定を実行する。この判定処理によって、顔料インクドットと隣接染料インクドットとの間の干渉量が大きいと判定された場合には、本実施例の印刷装置100では、形成すべき顔料インクドットのサイズを縮小する(ステップS50)。
【0063】
図10は、ステップS50〜S60における顔料インクドットDpのサイズの調整処理を説明するための模式図である。本実施例の印刷装置100では、図10(A)〜(D)のそれぞれに示したインクドットDp,Ddの組み合わせのときに、インクドットDp,Dd同士の重なりの度合いが大きいものとして、顔料インクドットDpのドットサイズを縮小して形成する。なお、図10(A)〜(D)には、顔料インクドットDpの縮小処理の対象となる組み合わせが図示されるとともに、縮小処理の後の顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとが、模式的に図示されている。
【0064】
本実施例では、顔料インクドットDpが大ドットであり、その顔料インクドットDpの2つの隣接染料インクドットDdのうち、少なくとも一方が大ドットである場合に、顔料インクドットDpのサイズを中ドットに縮小する。具体的には、図10(A)は、顔料インクドットDpが大ドットであり、2つの隣接染料インクドットDdのいずれもが大ドットである場合である。図10(B),(C)は、顔料インクドットDpが大ドットであり、隣接染料インクドットDdの一方が大ドット、他方が中ドットまたは小ドットである場合である。図10(D)は、顔料インクドットDpが大ドットであり、隣接染料インクドットDdの一方が大ドットで形成され、他方は形成されない場合である。これらの場合にはいずれも、印刷時において、顔料インクドットDpは中ドットのサイズで形成される。
【0065】
なお、ステップS50における判定処理では、図10で説明したドットサイズの組み合わせ以外の組み合わせの時に、顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの間の干渉量が大きいと判定するものとしても良い。また、ステップS60では、顔料インクドットDpは、大ドットから中ドットへのドットサイズの縮小処理が実行されていたが、他のドットサイズの縮小処理が実行されるものとしても良い。例えば、顔料インクドットDpが中ドットで、2つの隣接染料インクドットDdのいずれもが大ドットであるときに、顔料インクドットDpを小ドットに変更するものとしても良い。
【0066】
ところで、印刷用紙は、一般に、その種類によってインクのにじみやすさが異なってくる。従って、本実施例の印刷装置100においても、用紙PPの種類が変更されたときに、形成されるインクドットの大きさが異なってくる場合がある。即ち、この場合には、用紙の種類の変更により、互いに隣り合う顔料インクドットと染料インクドットとの重なりの度合いが異なってくる可能性がある。また、ステップS60において顔料インクドットのサイズを変更した場合であっても、調整後の顔料インクドットと隣接染料インクドットとの重なりの度合いが、所望の重なりの度合いとならない可能性がある。
【0067】
そこで、ステップS50の判定処理では、用紙PPの種類に応じて、判定の基準を変更するものとしても良い。例えば、一般に、普通紙を用いたインクジェット方式の印刷の場合には、光沢紙などのインクジェット印刷用の用紙に比較して、インクがじみやすい。そこで、用紙PPとして普通紙が用いられる場合には、光沢紙などのインクジェット印刷用の用紙が用いられている場合よりも、ステップS60の顔料インクドットのサイズを変更する処理が実行されるための条件を緩やかにするものとしても良い。より具体的には、用紙PPとして普通紙が用いられている場合には、インクジェット印刷用の用紙が用いられている場合よりも、ステップS60の処理が実行される顔料インクドットと隣接染料インクドットの組み合わせが多く設定されているものとしても良い。
【0068】
また、ステップS60における顔料インクドットのサイズの変更処理では、用紙PPの種類に応じて、顔料インクドットのサイズが変更される比率を変えるものとしても良い。具体的には、用紙PPとして普通紙が用いられている場合には、インクジェット印刷用の用紙が用いられている場合よりも、顔料インクドットのサイズが、より小さく変更されるものとしても良い。
【0069】
このように、用紙PPの種類に応じて、ステップS50における判定処理の基準や、ステップS60における顔料インクドットのサイズの変更比率を変えることにより、より適切に顔料インクドットと染料インクドットとの重なりの度合いを調整することができる。従って、図8(C)で説明した顔料インクと染料インクとを用いたバンド印刷における往路印刷領域と復路印刷領域との間の濃度ムラの発生の抑制が可能である。なお、用紙PPの種類は、パーソナルコンピューター200を介してユーザーが予め設定した情報から印刷装置100が取得するものとしても良い。
【0070】
ステップS70(図9)では、印刷実行部23は、形成すべきインクドットのサイズに応じて、各ノズル61Kp,61Kdに、第1または第2の駆動信号DS1,DS2から選択された駆動パルスP1p〜P4p,P1d〜P4dのいずれかを印加する。そして、次のインクドット列を形成するために、印刷ヘッド60を主走査方向へと移動させる。また、印刷画像の主走査方向における両端までのインクドット列の形成が完了した場合には、印刷実行部23は、用紙PPを1バンド分搬送し、印刷ヘッド60の移動方向を逆転させる。以後、印刷実行部23は、印刷が完了するまで、ステップS20〜S70の処理を繰り返す(ステップS80)。
【0071】
図11は、本実施例の印刷装置100におけるバンド印刷の印刷結果を説明するための模式図である。図11(A)は、黒色のベタ画像を形成する場合に、ステップS10において、染料インクおよび顔料インクのいずれについても一様に大ドットでのインクドットの形成が決定される場合の印刷結果を模式的に示している。図11(A)では、紙面右側に、往路印刷領域と復路印刷領域とを含む印刷画像の一部が図示してあり、紙面左側に、往路印刷領域と復路印刷領域とを構成するインクドットDp,Ddの配列を拡大して図示してある。
【0072】
この例の場合には、往路印刷領域の顔料インクドットDpは、図9のステップS40〜S60の処理によって、大ドットから中ドットに置換・縮小される。一方、復路印刷領域の顔料インクドットDpは、ステップS20で取得されたドットサイズである大ドットのサイズによって形成される。
【0073】
図11(B)は、図11(A)の比較例として、同様なベタ画像の形成の際に、ステップS30〜S60における顔料インクドットDpのサイズ調整処理が省略された場合の印刷結果を図11(A)と同様に図示している。顔料インクドットDpのサイズが変更されないまま、ベタ画像を構成する全てのインクドットDp,Ddを大ドットで形成した場合には、図8(C)で説明したのと同様に、往路印刷領域の濃度が高く、復路印刷領域の濃度が低くなり、印刷画像全体の濃度は不均一となってしまう。
【0074】
図12は、本実施例の印刷装置100におけるバンド印刷の印刷結果を説明するための図11と同様な模式図である。図12(A)は、図11で説明した例より濃度の低い黒色のベタ画像を形成する場合に、ステップS10において、顔料インクおよび染料インクのいずれについても一様に中ドットでのインクドットDp,Ddの形成が決定される場合の印刷結果を模式的に示している。
【0075】
この場合には、往路印刷領域を構成するインクドットDp,Ddは、図10で説明した顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの組み合わせのいずれにも該当しない。即ち、顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの重なりの度合いが、所定の度合いより低いため、図11(B)で説明したような濃度ムラが発生する可能性は低い。そのため、往路印刷領域においても、復路印刷領域においても、顔料インクドットDpは、ステップS20において取得されたサイズ(この場合には中ドットのサイズ)で形成される。
【0076】
図12(B)は、図12(A)の比較例として、図12(A)と同様なベタ画像の形成の際に、ステップS30〜S60における顔料インクドットDpのサイズ変更処理が実行された場合の印刷結果を図示している。この比較例では、顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの重なりの度合いが、所定の度合いより低いにもかかわらず、往路印刷領域の顔料インクドットDpのサイズが小ドットに縮小されている。このように、ステップS50の判定処理を省略して、往路印刷領域を構成する顔料インクドットDpに、ステップS60のドットサイズの変更処理を適用してしまうと、往路印刷領域の濃度を低下させてしまうこととなり、かえって濃度ムラが発生する原因となる。
【0077】
なお、図11および図12のいずれの例も、ベタ画像を形成する場合を説明したが、このような印刷画像の品質の劣化は、ベタ画像の形成時に限られず、写真画像などをブラックの染料インクと顔料インクとを用いてバンド印刷する場合にも同様に発生する。そうした印刷画像においては、画像内に、所望のブラックの濃度が再現されない領域が生じてしまう可能性があり、印刷品質は低下する。
【0078】
このように、本実施例の印刷装置100によれば、顔料インクドットDpと染料インクドットDdとの重なりの順番が異なる印刷領域ごとの濃度ムラの発生を抑制することができる。従って、顔料インクと染料インクとを用いた印刷によって形成される印刷画像の画質の低下を抑制することが可能である。
【0079】
B.第2実施例:
図13は本発明の第2実施例としての印刷装置の印刷ヘッド60Aの構成を示す概略図である。図13は、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kdのノズルピッチが異なる点と、第4と第5のノズル61Kp,61Kdの形成位置が互いに副走査方向にオフセットされていない点以外は、図2とほぼ同じである。なお、第2実施例の印刷装置における他の構成は、第1実施例の印刷装置100と同様である。
【0080】
本実施例の印刷ヘッド60Aでは、各ノズル61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61KdのノズルピッチDAは、第1実施例のノズルピッチDの約半分程度(DA=1/2D)である。また、顔料インクのための各ノズル61Kpの形成位置と、染料インクのための各ノズル61kdの形成位置とは、主走査方向に一列に整列している。そこで、第2実施例の印刷装置では、ブラックの顔料インクと染料インクとを用いて、以下に説明するバンド印刷を実行する。
【0081】
図14(A),(B)は、第2実施例の印刷装置が実行するバンド印刷を工程順に示す模式図である。図14(A),(B)は、図示されるノズル61Kp,61kdの数が異なる点と、各ノズル列62Kp,62kdの配置構成が異なる点と、染料インクと顔料インクの吐出位置Pp,Pdの配列が異なる点以外は、図7とほぼ同様である。なお、図14(A),(B)では、各ノズル61Kp,61Kdの移動軌跡Ld,Lpを示す一点鎖線および二点鎖線が互いに重なり合うため、前段側として先行して移動する方のノズルの移動軌跡を優先して図示してある。
【0082】
第2実施例の印刷装置では、印刷ヘッド60Aの往路方向への移動(図14(A))の際にも、復路方向への移動(図14(B))の際にも、顔料インクドットと染料インクドットとが主走査方向に交互に形成されるように、インクの吐出が実行される。即ち、印刷ヘッド60Aは、バンド印刷実行時には、印刷画素の2画素分の距離の主走査方向への移動と、インクの吐出とを交互に繰り返す。これによって、用紙PPには、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とが交互に形成される。
【0083】
なお、このようなバンド印刷を実行した場合にも、第1実施例と同様に、往路印刷領域と復路印刷領域とでは、顔料インクドットDpと染料インクドットDdとの重なり合う順番が異なってくる。従って、第2実施例の印刷装置においても、バンド印刷の実行時には、第1実施例と同様な制御処理(図9)を実行する。これによって、ブラックの顔料インクと染料インクとを組み合わせたベタ画像を印刷した場合に、往路印刷領域と復路印刷領域との間で、濃度ムラが発生することが抑制される。なお、この第2実施例では、ステップS50の判定処理においては、顔料インクドットと、その顔料インクドットと主走査方向に隣接する染料インクドットとの間の重なりの度合いが判定される。
【0084】
このように、第2実施例の印刷装置によれば、染料インクのドット列と顔料インクのドット列とが、主走査方向に交互に形成されるようなバンド印刷においても、印刷画像の画質の低下を抑制することができる。
【0085】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0086】
C1.変形例1:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしても良く、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしても良い。例えば、印刷実行部23の機能の一部を他のプログラムや、他のハードウェアが実行するようにすることも可能である。
【0087】
C2.変形例2:
上記実施例では、印刷実行部23が実行する制御処理(図9)のステップS50において、顔料インクドットDpと副走査方向または主走査方向に隣り合う染料インクドットDdとの重なりの度合いについて判定していた。しかし、ステップS50の判定処理は、上記の隣り合う染料インクドットDdとの重なりの度合いのみならず、主走査方向または副走査方向に対して斜めの方向に隣り合う染料インクドットDdとの重なりの度合いについて判定するものとしても良い。
【0088】
C3.変形例3:
上記実施例の制御処理(図9)では、往路印刷領域の印刷において、顔料インクドットDpのサイズを縮小する方向に変更する処理を実行していた(ステップS60)。しかし、上記の処理に換えて、復路印刷領域における顔料インクドットのサイズを拡大する方向に実行するものとしても良い。この処理によれば、復路印刷領域において吐出される単位面積あたりの顔料インクの量を増大させ、復路印刷領域の濃度を高くすることができる。従って、図8(C)や図11で説明した往路印刷領域と復路印刷領域との間の濃度ムラの発生を抑制できる。また、往路印刷領域と復路印刷領域との間の濃度ムラの発生が抑制されるように、往路印刷領域および復路印刷領域の両方において、上記の顔料インクドットのサイズを縮小または拡大する処理を実行するものとしても良い。
【0089】
C4.変形例4:
上記実施例では、顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの間の重なりの度合いが所定の度合いより大きい場合に、顔料インクドットDpのサイズを変更することにより、印刷画像の濃度の調整を実行していた。しかし、顔料インクドットDpと隣接染料インクドットDdとの間の重なりの度合いが所定の度合いより大きい場合に、隣接染料インクドットDdのサイズを変更して、印刷画像の濃度の調整を実行するものとしても良い。即ち、ステップS50〜S60では、2種類のインクドットDp,Ddのうちから予め選択された第1種のインクドットについて、隣り合う第2種のインクドットとの重なりの度合いに基づき、そのサイズの調整を実行するものとしても良い。
【0090】
C5.変形例5:
上記実施例では、印刷装置100は、ブラックの顔料インクを印刷に用いていた。しかし、印刷装置100は、ブラック以外の色の顔料インクを、ブラックに換えて、または、ブラックに加えて、印刷に用いるものとしても良い。また、この場合には、ブラックの顔料インクドットDp以外の色の顔料インクドットと染料インクドットについても、図9のステップS40〜S60と同様な処理を実行するものとしても良い。
【0091】
C6.変形例6:
上記実施例では、印刷装置100が、用紙PPに形成するインクドットのサイズは、大ドット、中ドット、小ドットの3種類であった。しかし、印刷装置100は、用紙PPに、さらに他のサイズのドットを形成するものとしても良い。
【符号の説明】
【0092】
10…制御ユニット
11…内部バス
20…CPU
21…通信制御部
23…印刷実行部
31…RAM
33…ROM
35…EEPROM
41…第1の駆動信号生成部
42…第2の駆動信号生成部
50…キャリッジ
51〜55…インクカートリッジ
60,60A…印刷ヘッド
61Yd,61Md,61Cd,61Kp,61Kd…ノズル
62Yd,62Md,62Cd,62Kp,62kd…ノズル列
70…キャリッジ駆動部
71…キャリッジモータ
72…駆動ベルト
73…プーリー
74…摺動軸
80…用紙搬送部
81…搬送モータ
82…プラテン
100…印刷装置
200…パーソナルコンピューター
DS1…第1の駆動信号
DS2…第2の駆動信号
Dd…染料インクドット
Dp…顔料インクドット
Ld,Lp…移動軌跡
P1d〜P4d,P1p〜P4p…駆動パルス
PP…用紙
Pd,Pp…インク吐出位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
顔料インクを吐出して、印刷媒体に顔料インクドットを形成する顔料インクノズルと、
染料インクを吐出して、印刷媒体に染料インクドットを形成する染料インクノズルと、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルから吐出されるインク量を制御することによって、前記顔料インクドットと前記染料インクドットのサイズを制御するノズル制御部と、
を備え、
前記ノズル制御部は、
前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを形成させる第1の印刷処理と、
前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを形成させる第2の印刷処理と、
を実行して、前記第1と第2の印刷処理のそれぞれによって形成される第1と第2の印刷画像領域を含む印刷画像を形成し、
前記ノズル制御部は、前記第1または第2の印刷処理において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成する際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更する
ドットサイズ調整処理を実行する、印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記ドットサイズ調整処理は、前記第1の印刷処理において実行され、
前記第1種のインクドットは、顔料インクドットであり、
前記第2種のインクドットは、染料インクドットである、印刷装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置であって、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルとがそれぞれ一定の方向に一定のノズルピッチで配列された、互いに並列な顔料インクノズル列と染料インクノズル列とを有し、前記顔料インクノズル列と前記染料インクノズル列の列方向と交差する第1と第2の方向に往復移動する、印刷ヘッドを備え、
前記顔料インクノズル列と前記染料インクノズル列は、前記印刷ヘッドにおいて、前記顔料インクノズル列を第1の方向側とし、前記染料インクノズル列を前記第2の方向側として配置されるとともに、前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルとは、前記列方向に互いにオフセットされており、
前記第1の印刷処理は、前記印刷ヘッドを前記第1の方向に移動させつつ前記第1の印刷画像領域を印刷する処理を含み、
前記第2の印刷処理は、前記印刷ヘッドを前記第2の方向に移動させつつ前記第2の印刷画像領域を印刷する処理を含み、
前記ノズル制御部は、前記第1と第2の印刷処理を交互に実行することにより、前記印刷媒体に印刷画像を形成する、印刷装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷装置であって、
前記ノズル制御部は、前記ドットサイズ調整処理における閾値である前記予め設定されたサイズ、または、前記ドットサイズ調整処理における前記第1種のインクドットのサイズの変更比率の少なくとも一方を、前記印刷媒体の種類に応じて変更する、印刷装置。
【請求項5】
染料インクを吐出する染料インクノズルと、顔料インクを吐出する顔料インクノズルとを有する印刷装置が実行する印刷方法であって、
(a)前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させて、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを含む第1の印刷画像領域を形成する工程と、
(b)前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させて、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを含む第2の印刷画像領域を形成する工程と、
(c)前記工程(a)と前記工程(c)とを繰り返すことによって、前記第1と第2の印刷画像領域を含む印刷画像を形成する工程と、
を備え、
前記印刷装置は、前記工程(a)または前記工程(b)において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成する際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更するドットサイズ調整処理を実行する、印刷方法。
【請求項6】
顔料インクを吐出して、印刷媒体に顔料インクドットを形成する顔料インクノズルと、
染料インクを吐出して、印刷媒体に染料インクドットを形成する染料インクノズルと、
前記顔料インクノズルと前記染料インクノズルから吐出されるインク量を制御することによって、前記顔料インクドットと前記染料インクドットのサイズを制御するノズル制御部とを備える印刷装置に印刷を実行させるプログラムであって、
前記印刷装置に、
前記顔料インクノズルに顔料インクドットを形成させた後に、前記染料インクノズルに、前記顔料インクドットと隣り合う染料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う顔料インクのドット列と染料インクのドット列とを形成させる第1の印刷処理と、
前記染料インクノズルに染料インクドットを形成させた後に、前記顔料インクノズルに、前記染料インクドットと隣り合う顔料インクドットを形成させることにより、互いに隣り合う染料インクのドット列と顔料インクのドット列とを形成させる第2の印刷処理と、
を実行させるプログラムを含み、
前記印刷装置に、前記第1または第2の印刷処理において、顔料インクドットと染料インクドットの2種類のインクドットのうちから予め選択された第1種のインクドットを形成させる際に、
(i)前記第1種のインクドットと隣り合う第2種のインクドットのサイズが予め設定されたサイズより小さい場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更せず、
(ii)前記第2種のインクドットのサイズが前記予め設定されたサイズ以上である場合には、前記第1種のインクドットのサイズを変更する
ドットサイズ調整処理を実行させる、プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−6160(P2012−6160A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141416(P2010−141416)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】