説明

印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラム

【課題】 シートの種別の違いによる地紋画像の見え方の差異を小さくする。
【解決手段】 本発明は、シートに画像を印刷する印刷装置であって、潜像画像の印刷濃度を入力する印刷濃度入力手段と、背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力手段と、印刷に用いるシートの種別を入力する種別入力手段と、種別入力手段によって入力されたシートの種別に従って、印刷濃度入力手段によって入力された潜像画像の印刷濃度、及び背景濃度入力手段によって入力された背景画像の印刷濃度を変更する変更手段と、変更手段によって変更された潜像画像の印刷濃度及び背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷手段と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷装置の制御方法、及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帳票や領収書等の偽造を抑止する目的のために、シートに地紋画像を印刷する印刷装置がある。地紋画像には、潜像画像と背景画像がある。潜像画像は、当該潜像画像が印刷された原稿上は確認できないが、印刷物を複写した複写物において人間の目に見えるように現れる画像をいう。背景画像は、複写によって消えるかあるいは複写物で顕像化した潜像の濃度に比べて低濃度の画像をいう。
【0003】
図12は、この2つの画像の印刷領域におけるドットの状態を示す図である。同図に示すように、所定の領域内にドットが分散して配置される背景画像と、ドットが集中して配置される潜像画像によって地紋画像が構成される。
【0004】
一般に、複写機の読取部には、原稿上の微小なドットを読み取る入力解像度の限界レベルが存在し、画像形成部には、微小なドットを再現する出力解像度の限界レベルが存在する。地紋画像の背景画像のドットが、複写機で再現できるドットの限界レベルより小さく形成され、かつ潜像画像のドットが限界レベルより大きく形成されている場合、複写物上では潜像画像のドットは再現でき、背景画像の小さなドットは再現されない。こうした特性を利用することで、地紋画像を複写した複写物上で潜像画像が顕在化される。
【0005】
図12(a)および(b)は、潜像画像の顕像化を示す図である。図12(a)は複写される原稿の画像を表し、図12(b)は印刷される画像を示す。図12(b)に示されるように、ドットが集中して配置される潜像画像が複写物において顕像化し、ドットを分散させた背景画像が複写物において再現されない。
【0006】
このような地紋画像を印刷する際に、潜像画像及び背景画像を異なる濃度設定に従って生成した複数の地紋画像を、1枚の用紙に並べて印刷するサンプルプリントを行う技術がある(特許文献1参照)。ユーザは、このサンプルプリントを見て、異なる濃度設定に従って印刷された複数の地紋画像のうち、所望する濃度の地紋画像を選択し、選択された地紋画像に対応する濃度設定値によって本番の印刷を実行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−91730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術の場合、シートの種別によって、印刷された地紋画像の濃さが変わることを考慮していなかったため、次のような課題がある。
例えば、ユーザがサンプルプリントを見て濃度を決定する場合、本番の印刷で使用するシートの種別がコート紙のような特殊紙であれば、サンプルプリントで用いるシートの種別もコート紙を選択することが望ましい。なぜならば、同じ濃度設定値で印刷しても、シートの種別によって、シートに印刷される潜像画像及び背景画像の濃さが異なるからである。そのため、ユーザが、本番の印刷でコート紙を用いて印刷しようと考えている場合、サンプルプリントでもコート紙を選択して印刷を行い、コート紙に印刷された地紋画像のうち、所望の地紋画像に対応する濃度設定値を入力することが望ましい。
【0009】
しかしながら、一般的に特殊紙は高価であるため、ユーザは、サンプルプリント時には安価な普通紙を選択して地紋画像の印刷を実行させ、本番の印刷を行う場合にのみ特殊紙を選択して地紋画像の印刷を実行させることがある。その場合、本番で印刷された地紋画像の濃さが、サンプルプリント時に印刷された地紋画像の濃さと異なってしまう。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、シートの種別の違いによる地紋画像の濃さの差異を小さくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、シートに画像を印刷する印刷装置であって、潜像画像の印刷濃度を入力する印刷濃度入力手段と、背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力手段と、印刷に用いるシートの種別を入力する種別入力手段と、前記種別入力手段によって入力されたシートの種別に従って、前記印刷濃度入力手段によって入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力手段によって入力された前記背景画像の印刷濃度を変更する変更手段と、前記変更手段によって変更された前記潜像画像の印刷濃度及び前記背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シートの種別の違いによる地紋画像の濃さの差異を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例における画像処理装置の構成を説明するためのブロック図
【図2】本実施例における地紋パラメータを調整するための調整画面を説明するための図
【図3】本実施例におけるサンプルプリント出力の設定を行う画面を説明するための図
【図4】本実施例における潜像部濃度を設定するための画面を説明するための図
【図5】本実施例における背景部濃度を設定するための画面を説明するための図
【図6】本実施例におけるサンプルプリントの例を示す図
【図7】本実施例における背景部濃度の設定値と読取濃度の関係を説明するための図
【図8】本実施例における潜像部濃度の設定値と読取濃度の関係を説明するための図
【図9】本実施例における処理を説明するためのフローチャート
【図10】本実施例における処理を説明するためのフローチャート
【図11】地紋画像におけるドットの状態を説明するための図
【図12】複写時に地紋画像が顕像化する状態を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る画像処理装置(印刷装置)の構成を説明するブロック図である。
画像処理装置は、コントローラユニット300、操作部301、スキャナ302、プリンタ303から構成される。
コントローラユニット300は、CPU305、データバス306、HDD307、RAM308、画像処理部303、画像メモリ312、バスI/F部313、地紋パラメータ変換部318、地紋生成部319、ネットワークI/F320を有する。
【0015】
CPU305は、画像処理装置を統括的に制御する制御部である。HDD307は、画像データや、CPU305によって実行されるプログラムを格納する記憶媒体である。RAM308は、CPU305の作業領域として機能するメモリである。CPU305は、HDD307に格納されたプログラムを、データバス306を経由してRAM308に読み出し、実行することによって画像処理装置の各種制御を行う。また、CPU305は、ネットワークI/F320を介して、PC等の外部装置とネットワークを介して通信する。
【0016】
操作部301は、タッチパネルLCDとハードキーで構成されており、操作画面を表示し、表示した操作画面またはハードキーを介してユーザから指示を受け付ける。また、操作部301は、CPU305からの指示に従って画面表示を行うことによってユーザに対して通知を行う。操作部301の画面表示は、CPU305により、フレームバッファを書き変える処理によって行われる。また、操作部301を介して受け付けた指示は、IOデータバス315、IO制御部316を経由してCPU305に入力される。CPU305は、入力された指示に応じて、スキャン処理、プリント処理を適宜行う。
【0017】
CPU305は、操作部317からコピーの実行指示を受けると、スキャナ302によって原稿を読み取らせ、読み取られた原稿の画像を、スキャナ制御部309を介して受信し、画像処理部303に転送する。画像データは、画像処理部303によって、変倍、色空間変換、圧縮等の処理が施された後、画像データバス311を経由して画像メモリ312に一旦蓄積される。そして、CPU305は、画像メモリ312内の画像データを読み出し、読み出した画像データを、画像データバス311、バスI/F部0313、データバス306を経由してHDD307に蓄積する。
【0018】
その後、印刷を実行する際に、CPU305は、HDD307に蓄積された画像データを読み出して、データバス306、バスI/F部313、画像データバス311を介して画像メモリ312に転送する。画像メモリ312から読み出された画像データは、画像処理部313で、復号、回転、変倍、印刷濃度の調整、ハーフトーン化等の処理が適宜施され、プリンタ制御部314を経由してプリンタ303に出力される。
【0019】
プリンタ303は、給紙部304−1または給紙部304−2からシートを給紙し、受信した画像データに従って給紙したシートに画像を印刷する。印刷の実行時、CPU305は、ユーザによって指定された給紙部にセットされたシートのサイズや種別(メディアタイプ)をプリンタ303に通知する。ここで通知される用紙のサイズ及び種別は、CPU305によってHDD307で管理される。プリンタ303は、通知されたシートのサイズや種別に従って、定着温度や、搬送速度等のプロセス条件を切り替えて印刷を実行する。なお、本実施例では給紙部を2つとして説明を行うが、さらに多数の給紙部を持つことも可能である。
【0020】
このような画像処理装置を用いて地紋印刷を行う場合、ユーザは、操作部301に設けられた地紋パラメータ入力部317を介して地紋印刷の調整を行うパラメータ(地紋画像の色、後述する潜像画像の濃度や、背景画像の濃度)の入力を行う。地紋パラメータ入力部317は、例えば、操作部301のタッチパネルLCDに地紋印刷の設定用の画面として提供され、表示した画面を介して地紋パラメータの入力を受け付ける。地紋パラメータ入力部317から入力された地紋パラメータは、IO制御部316、地紋パラメータ変換部318を介して地紋生成部319に渡される。地紋生成部319は、渡された地紋パラメータに従って地紋パターンを生成し、画像メモリ312上に展開する。このとき、地紋生成部319は、地紋パラメータ変換部318を介して得られた地紋パラメータのみに従って地紋パターンを形成し、画像処理部303が地紋画像以外の画像(原稿の画像)を印刷するときに用いる濃度調整のパラメータを用いない。
【0021】
コピーされる印刷物に地紋を付与する場合、スキャナ302にセットされた原稿を読み取り、読み取った原稿の画像データに対して、画像処理部303が、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)のハーフトーン処理を施す。そして、画像処理部303は、ハーフトーン処理を施された原稿の画像データに対し、画像メモリ312上に展開されている地紋パターンを画像処理部303で合成し、画像メモリ312に格納する。そして、CPU305は、画像メモリ312に格納された、合成後の画像データをプリンタ303に転送して印刷させる。それによって、原稿画像の複写物に、地紋画像を埋め込むことができる。
【0022】
<サンプルプリントによる地紋画像の調整>
原稿の画像に地紋画像を埋め込んで印刷する場合、画像処理装置は、地紋パラメータとして予め設定された設定値を用いる。地紋パラメータには、地紋の色、潜像画像の濃度(潜像濃度ともいう)、背景画像の濃度(背景濃度ともいう)、相対コントラスト値等がある。潜像画像及び背景画像は地紋画像に含まれる画像である。潜像画像は、当該潜像画像が印刷された印刷物上では確認できないが、印刷物を複写した複写物において人間の目に見えるように現れる画像のことである。背景画像は、複写によって消えるかあるいは複写物で顕像化した潜像の濃度に比べて低濃度の画像のことである。
【0023】
ユーザは、サンプルプリント機能を用いて地紋画像を印刷し、印刷された印刷物を目で見て確認する。そして、ユーザは、地紋画像の背景濃度または潜像画像の濃度が濃すぎる、薄すぎると思った場合に操作部301を操作して地紋パラメータを変更し、地紋画像の背景濃度または潜像濃度を調整することができる。
【0024】
図2を用いて、地紋画像の背景濃度または潜像濃度の調整について詳述する。
調整画面400は、操作部301上のLCDタッチパネルに表示される地紋パラメータ入力部の例である。地紋色設定キー401は地紋の色を設定するキーである。本実施形態では、ブラック、シアン、マゼンタが選択可能である。選択されている地紋の色を視覚的に判別できるように、ユーザが選択したキーは反転表示される。コントラスト表示欄402は、潜像画像と背景画像の相対コントラスト値を表示しているフィールドである。コントラスト調整キー403は、相対コントラスト値を変更するためのキーである。基準値の設定キー405は背景濃度の調整を行う画面を表示させるためのキーであり、潜像部の濃度キー406は潜像濃度の調整を行う画面を表示させるためのキーである。OKキー407は、図2〜図5で設定された地紋パラメータを確定させるためのキーである。ユーザによって、OKキー407が押された場合、CPU305は、設定された地紋パラメータをRAM308に記憶する。そして、操作部317のスタートキーが押されることによって印刷指示がなされると、CPU305は、スキャナ302にセットされた原稿の画像を読み取り、当該原稿の画像に、地紋パラメータに従って生成された地紋パターンを合成して印刷する。
【0025】
サンプルプリント出力キー404は、サンプルプリントを行うためのキーである。サンプルプリントとは、図6に示すような印刷物をいう。サンプルプリント出力キー404が押下されると、図5で示されるサンプルプリント出力画面500が表示される。サンプルプリント出力画面500には、画像処理装置が備える給紙部304−1及び給紙部304−2に対応する給紙部ボタン501−1及び給紙部ボタン502−2が表示されている。
【0026】
ユーザによって給紙部ボタン501−1または給紙部ボタン502−2が選択された後、プリント開始キー502が押された場合に、CPU305は、選択された給紙部にセットされたシートを給紙してサンプルプリント出力を行う。シート情報表示欄503は、給紙部ボタン501−1、給紙部ボタン501−2のうち、ユーザによって選択された状態の給紙部の情報を表示するフィールドである。ここでは、CST1(給紙部304−1に対応する)、サイズ(A4)、及びメディアタイプ(普通紙)が表示されている。
サンプルプリント出力は、図4の潜像濃度設定画面で設定された濃度値と、図5の背景濃度設定画面で設定された濃度値とに従って実行される。
【0027】
図4の潜像濃度設定画面600は、潜像濃度入力部として機能し、基準値の設定キー405が押された場合に表示される画面である。潜像濃度表示欄601は、現在設定されている潜像濃度の値が表示されているフィールドである。潜像濃度調整キー602が押されることによって、潜像濃度の値が増減する。OKキー603が押されると、その時点で設定されていた潜像濃度の値がHDD307に記憶される。設定取消キーが押されると、その時点で設定されていた潜像濃度の値をキャンセルして図3の画面が表示される。
【0028】
図5の背景濃度設定画面700は、潜像部の濃度キー406が押された場合に表示される画面である。背景濃度表示欄701は、背景濃度入力部として機能し、現在設定されている背景濃度の値が表示されているフィールドである。背景濃度調整キー702が押されることによって、背景濃度の値が増減する。OKキー704が押されると、その時点で設定されていた潜像濃度の値がHDD307に記憶される。設定取消キーが押されると、その時点で設定されていた背景濃度の値をキャンセルして図3の画面が表示される。サンプルプリントキー703は、図3に示す画面を表示するためのキーである。図2に示すコントラスト調整画面400からだけでなく、背景濃度設定画面700からも、図3に示す画面を表示させることができる。
【0029】
サンプルプリントキー404によって図3に示す画面を表示させた場合も、サンプルプリントキー703によって図3に示す画面を表示させた場合も、図3のプリント開始キー502の押下によって、サンプルプリントが実行される。
サンプルプリントの出力例を図6に示す。サンプルプリント800は、潜像画像濃度設定画面600で設定されている、潜像濃度一定で、背景濃度を段階的に切り替えつつ複数の画像を生成し、生成された画像を並べて印刷したものである。ここで印刷される画像の元となる画像データは予めHDD307に用意されている。例えば、図12に示す文字画像を印刷するための画像データが予めHDD307に格納されており、当該文字画像が、図6に示される矩形ごとに異なる潜像濃度及び異なる背景濃度に従って印刷される。
【0030】
サンプルプリント800の中心(0で示される箇所)に、図4の画面で設定された潜像濃度の値と、図5の画面で設定された背景画像の値をそのまま使用して地紋画像生成部319によって生成された地紋画像が配置される。そして、その画像を中心に、潜像濃度を変えずに、背景濃度を+7〜−7まで変更した際の、それぞれの地紋画像が並べて配置される。また、それぞれの地紋画像に下部に、その地紋画像の印刷に用いた背景濃度の加減値(+7〜−7)が記録されている。複数の地紋画像のうち、ユーザによって現在設定されている潜像濃度及び背景濃度に従って印刷された地紋画像が縁取りされている。それによって、ユーザは、現在の設定で地紋画像を印刷した場合に、印刷された地紋画像の濃さ(見え方)がどのようになるかを容易に判別することができる。
【0031】
ユーザは、このサンプルプリント800に印刷された背景濃度別の地紋画像を確認し、複数の地紋画像の中から所望の地紋画像を決める。そして、ユーザは、決めた地紋画像に対応する背景濃度の加減値を、相対コントラスト値として図2に示すコントラスト表示欄402にコントラスト調整キー403を操作して入力する。例えば、サンプルプリント800の左下に配置された−3で示される地紋画像の濃度を採用したいと思った場合、ユーザはコントラスト表示欄402に−3を入力する。
このように、ユーザは、サンプルプリント800に印刷された複数の地紋画像を確認しつつ、背景画像、及び、潜像画像の見え方に応じて、相対コントラスト値を増減させることで地紋パターンの調整を行うことが可能である。
【0032】
上記のような操作により、ユーザが任意に決定した背景濃度、及び潜像濃度は、地紋パラメータ入力部317から、IO制御部0316、IOデータバス315を経由して地紋パラメータ変換部318に渡される。地紋パラメータ変換部318では、渡された背景濃度、及び潜像濃度に従って地紋画像を印刷する。
このように、ユーザは、背景濃度及び潜像濃度等の地紋パラメータを設定および調整することによって、本番の印刷で、意図した通りの地紋画像が印刷された印刷物を得ることが可能となる。
【0033】
ここで、ユーザがサンプルプリント800を見て濃度を決定する場合、本番の印刷で使用するシートの種別がコート紙であれば、サンプルプリント出力で用いるシートの種別もコート紙を選択することが望ましい。具体的には、給紙部304−1にコート紙をセットし、図3に示す画面で給紙部ボタン501−1を選択した状態でサンプルプリント出力を実行することが望ましい。なぜならば、同じ濃度設定値で印刷しても、シートの種別によって、シートに印刷される潜像画像及び背景画像の濃さ(見え方)が異なるからである。その理由について説明する。
【0034】
普通紙や再生紙と比較して、コート紙や厚紙はトナーを定着しづらい。そのため、画像処理装置は、普通紙に地紋画像を印刷する場合のプリンタ303のプロセス速度と比較して、コート紙や厚紙に地紋画像を印刷する場合のプリンタのプロセス速度を遅くし、時間をかけてシート上のトナーを定着させる。プロセス速度とは、シートの搬送速度や、定着器が有する定着ローラ及び加圧ローラの回転速度、感光ドラムの回転速度等をいう。これらの速度は、シート搬送速度を遅くするのに合わせて遅くする必要がある。プロセス速度を遅くすると、感光ドラムの回転速度も遅くなり、感光ドラムに対する単位時間あたりの露光量が大きくなる。そのため、現像器から感光ドラムに転写される単位面積あたりのトナーの量が多くなる。その結果、感光ドラムに転写されたトナーがシートに転写される際に、シートの単位面積あたりのトナーの量も多くなり、シートに印刷される地紋画像の濃度が濃くなる。
【0035】
そのため、ユーザが、本番の印刷でコート紙を用いて印刷しようと考えている場合、サンプルプリントでもコート紙を選択して印刷を行い、コート紙に印刷された地紋画像のうち、所望の地紋画像に対応する濃度設定値を入力することが望ましい。
【0036】
しかしながら、一般的にコート紙のような特殊紙は高価であるため、ユーザは、サンプルプリント出力時には安価な普通紙を選択して地紋画像の印刷を実行させ、本番の印刷を行う場合にのみ特殊紙を選択して地紋画像の印刷を実行させることがある。そして、ユーザは、サンプルプリント800に印刷された地紋画像を確認して、潜像画像と背景画像の濃度を決定する。その後、ユーザは、サンプルプリント800ではなく、本番の印刷を実行させる場合に、コート紙を指定すると、コート紙に印刷された潜像画像や背景画像の濃度が、サンプルプリント800に印刷された画像よりも濃くなってしまう。
つまり、本番で印刷された地紋画像の濃さが、サンプルプリント出力時に印刷された地紋画像の濃さと異なってしまう。そのため、ユーザの意図した通りの出力結果が得られなくなってしまうという課題がある。
【0037】
また、同じ濃度設定値で印刷しても、シートのサイズによって、シートに印刷される潜像画像及び背景画像の濃さ(見え方)が異なることもある。例えば、A3以下のサイズのシートに印刷する場合と比較して、A3より搬送方向の長さが長いA3ノビのシートに印刷する場合には、プロセス速度を遅くする必要がある。その理由について説明する。定着器に電力を供給することによって定着器の温度(熱量)はトナーの定着に必要な温度まで上昇されるが、定着器にシートを通す際にシートに熱を奪われるため定着にかかる時間が長いと定着器の温度は低下していく。
【0038】
ここで、A3以下のサイズのシートにトナーを定着させる際に、定着器は、シートに適切にトナーを定着するために必要な温度を維持することができる。しかしながら、A3よりも搬送方向の長さが長いA3ノビのシート上のトナーを定着させる際には、シートに奪われる熱量が大きいため、定着器は、シートに適切にトナーを定着するための温度を維持することができない。実際に、実験の結果、A3ノビのシートの後端にトナーを定着する際には、定着器の温度は定着を開始する前よりも著しく下がってしまっていることが確認できた。このように定着器の温度が下がってしまうと、トナーを適切にシートに定着することができず、意図した通りの印刷結果が得られなくなる。これを防止するために、A3ノビのシートにトナーを定着する際には、シートの搬送速度を遅くし、定着器によってトナーをシートに定着させるための時間を長くした。シートの搬送速度を遅くしても、トナー及びシートが定着器から奪う熱量が多いという事実に変わりはないが、その定着中に電源から定着器に供給できる合計の熱量は増加する。その結果、定着器の温度が、トナーを適切にシートに定着するために必要な温度より下がらないようにすることができた。このような理由により、A3ノビのシートの場合には、A3以下のサイズのシートとシートの搬送速度(プロセス速度)を変えている。
【0039】
ここで、定着器による定着スピードを遅くするためには、シートの搬送速度を遅くする必要がある。シートの搬送速度を遅くすると、シートの搬送速度に合わせた速度で回転する感光ドラムの回転速度も遅くなる。その結果、感光ドラムが露光される時間が長くなり、感光ドラムの電位量が増えることになる。感光ドラムの電位量が増えると、その感光ドラムにはトナーが載りやすくなり、結果として感光ドラムからシートに転写されるトナーの濃度は濃くなってしまう。それを防ぐためには、感光ドラム上に作成する画像データの濃度値を補正する必要がある。
【0040】
そこで、本画像処理装置では、原稿の画像データの濃度値を減らす処理(いわゆるγ補正)をかけている。この処理は、原稿の画像データが多値画像の状態でかけられることになる。これにより、原稿の画像データの印刷物における濃度は、A3サイズ以下のシートの場合と同じになることとなる。
【0041】
しかしながら、それだけでは、地紋画像データの印刷物における濃度はやはり高まったままとなる。これを解決するために、地紋画像データの濃度に対して同様にγ補正をかけるという手法も考えられるが、そうすると地紋画像データの印刷物における画質が著しく低下することになる。その理由を、簡単に説明する。地紋画像データの濃度に対して同様にγ補正をかけると、本来濃度値255の箇所が、濃度値240などの中間的な濃度になることとなる。印刷に際しては、この濃度値240の部分にハーフトーン処理がかかり、ハーフトーン結果が1(トナーをのせる画素であることを示す)になったり、0(トナーをのせない画素であることを示す)になったりすることとなる。つまり、元々トナーを載せたかった画素(濃度値255の画素)にトナーがのったり、載らなかったりすることとなる。また、誤差拡散等のハーフトーン処理を行うと、元々トナーをのせたかった画素(濃度0の画素)にトナーがのってしまうことにもつながる。その結果、本来大ドットを配置したかった領域に中ドットが配置されたり、小ドットを配置したかった領域に小ドットが配置されたりすることになり、地紋画像としての効果(複写すると模様、文字列が浮かび上がるという効果)を奏さなくなる。こうした問題があり、γ補正を地紋画像データに対してかけるのは望ましくない。そこで、本実施例においては、地紋画像データにおける潜像画像、背景画像の夫々に対して、地紋画像データに対しては、原稿画像データとは別の濃度補正処理をかけるのである。
【0042】
<地紋印字パラメータに従った地紋画像の変換>
そこで本実施形態に係る画像処理装置は、ユーザによって入力された背景濃度、及び潜像濃度をそのまま採用するのではなく、使用するシートの種別(メディアタイプ)に従って変更して用いる。具体的に、普通紙を用いてサンプルプリント800が行われ、本番で普通紙とは異なる特殊紙を用いて印刷する場合に、画像処理装置は、本番で印刷される地紋画像の濃度がサンプルプリント800で印刷された地紋画像の濃さ(見え方)に近くなるよう制御する。
【0043】
図7の背景濃度グラフ900は、背景濃度の設定値と実濃度との関係を表すグラフである。図7背景濃度変更テーブル903は、ユーザによって入力された背景濃度を変更するためのテーブルである。図7の背景濃度変換テーブルは、HDD307に予め記憶されている。
図7の背景濃度グラフ900は、CPU305が用いる背景濃度の値に従って印刷された背景画像を、画像処理装置のスキャナ302で読み取った場合の背景画像の濃度値を表したものである。901が普通紙に印刷された地紋画像を読み取った場合の背景画像の読取濃度であり、902がコート紙に印刷された地紋画像を読み取った場合の背景画像の読取濃度である。902が線形に濃度が上昇しているのに対し、901は902よりも高い読み取り濃度を示す。ここで表される濃度値に基づいて、シートの種別による背景画像の濃度の差分を吸収するための背景濃度変更テーブル903が作成される。具体的に、背景濃度の設定値を線形的に変換させながら印刷した画像をスキャナ302で順に読み取らせ、読み取った画像の背景濃度と、ユーザによって入力された背景濃度の値とを比較することによって、どれだけ濃度値を変更すれば良いかを予め求めておく。本実施形態では、画像処理装置のスキャナ302で背景濃度を計測する例を説明するが、画像処理装置のスキャナ302とは別の測色器を使って背景濃度を計測してもよい。
【0044】
そして、地紋パラメータ変換部318は、このシートの種別による背景画像の濃度の差分を吸収するために背景濃度変更テーブル903を参照して、ユーザによって入力された背景濃度の値を変更する。
例えば、印刷に用いられるシートの種別がコート紙である場合、地紋パラメータ変換部318は、背景濃度変更テーブル903を用いて、ユーザによって入力された背景濃度を変更する。具体的に、印刷に用いられるシートの種別がコート紙で、ユーザによって入力された背景濃度の値が6であった場合、地紋パラメータ変換部318は背景濃度を6から4に変換する。なお、印刷に用いられるシートの種別が普通紙である場合、地紋パラメータ変換部318によって、ユーザが入力した背景濃度の値を変更することなく用いる。具体的に、印刷に用いられるシートの種別が普通紙で、ユーザによって入力された背景濃度の値が6であった場合、背景濃度の値として6を用いる。
【0045】
図8の潜像濃度グラフ1000は、潜像濃度の設定値と実濃度との関係を表すグラフである。図8の潜像濃度変更テーブルは、ユーザによって入力された潜像濃度を変更するためのテーブルである。図8の潜像濃度変換テーブルは、HDD307に予め記憶されている。
図8の潜像濃度グラフ1000は、CPU305が用いる潜像濃度の値に従って印刷された潜像画像を、画像処理装置のスキャナ302で読み取った場合の潜像画像の濃度値を表したものである。1001が普通紙に印刷された画像を読み取った場合の潜像画像の読取濃度であり、902がコート紙に印刷された画像を読み取った場合の潜像画像の読取濃度である。1001が線形に濃度が上昇しているのに対し、1002は1001よりも高い読み取り濃度を示す。ここで表される濃度値に基づいて、シートの種別による背景画像の濃度の差分を吸収するための潜像濃度変更テーブル1003が作成されている。具体的に、潜像濃度の設定値を線形的に変換させながら印刷した画像をスキャナ302で順に読み取らせ、読み取った画像の潜像濃度と、ユーザによって入力された潜像濃度の値とを比較することによって、どれだけ濃度値を変更すれば良いかを予め求めておく。本実施形態では、画像処理装置のスキャナ302で潜像濃度を計測する例を説明するが、画像処理装置のスキャナ302とは別の測色器を使って潜像濃度を計測してもよい。
そして、地紋パラメータ変換部318は、シートの種別による潜像画像の濃度の差分を吸収するために潜像濃度変更テーブル1003を参照して、ユーザによって入力された潜像濃度の値を変更する。
【0046】
例えば、印刷に用いられるシートの種別がコート紙である場合、地紋パラメータ変換部318は、潜像濃度変更テーブル1003を用いて、ユーザによって入力された潜像濃度を変更する。具体的に、印刷に用いられるシートの種別がコート紙で、ユーザによって入力された潜像濃度の値が6であった場合、地紋パラメータ変換部318は背景濃度を6から5に変換する。なお、印刷に用いられるシートの種別が普通紙である場合、地紋パラメータ変換部318によって、ユーザが入力した潜像濃度の値を変更することなく用いる。具体的に、印刷に用いられシートの種別が普通紙で、ユーザによって入力された潜像濃度の値が6であった場合、潜像濃度の値として6を用いる。
【0047】
なお、本実施形態では詳細に言及しないが、シートの種別による濃度変化が特定の数式により近似可能な変化を示すような場合には、数式モデルによる設定値の変更を行ってもよい。また、画像形成プロセス時の温度等の条件により、読み取り濃度が動的に変わっていくような場合には、動的なオフセットを加えて変更を行ってもよい。
次に、本実施形態に係るサンプルプリント出力について、図9のフローチャートを用いて説明する。図9のフローチャートに示す各ステップは、CPU305がHDD307に記憶されたプログラムを、RAM308に読み出して実行することによって行われる。
【0048】
操作部301の地紋パラメータ入力部317を介して、地紋画像のサンプルプリントの実行が指示された際に、図9のフローチャートに示す各処理が実行される。
まず、S1101で、CPU305は、ユーザにより地紋パラメータ入力部317を介して指定された背景濃度の値を取得する。次に、S1102で、CPU305は、ユーザにより地紋パラメータ入力部317を介して指定された潜像画像の値を取得する。CPU305は、取得された値を、CPU305はRAM308に記憶しておく。
【0049】
次に、S1103で、CPU305は、操作部301を介して受け付けた印刷設定(コピー設定)から、ユーザによって指定された給紙カセットの情報を取得する。例えば、CPU305は、図3の画面を介して指定された給紙カセットの情報を取得し、当該給紙カセットにセットされたシートの種別や、サイズ等を認識する。CPU305は、取得された給紙カセットの情報をRAM308に記憶する。
【0050】
S1104で、CPU305は、印刷用に指定されたシートの種別が、A4普通紙のプロセス速度と同じプロセス速度で印刷するシートの種別であるか否かを判定する。例えば、印刷用に指定されたシートの種別が、普通紙、再生紙、または薄紙の場合には、S1105に処理を進め、コート紙、厚紙の場合には、S1107に処理を進める。
【0051】
S1105で、CPU305は、印刷用に指定されたシートのサイズが、A4普通紙のプロセス速度と同じプロセス速度で印刷する用紙のサイズであるか否かを判定する。例えば、印刷用に指定されたシートのサイズが、A4、A3、B4、B5である場合には、S1106に処理を進め、A3ノビである場合にはS1107に処理を進める。
【0052】
S1106で、CPU305は、地紋生成部319に指示を出し、サンプルプリント800用に、S1101で取得した背景濃度に従って背景画像を作成させ、S1102で取得した潜像濃度に従って潜像画像を作成させる。ここで、背景画像と潜像画像は、サンプルプリント出力用に用意された画像を用いて作成される。そして、CPU305は、作成された背景画像及び潜像画像を画像メモリ212に格納する。ここで、CPU305は、ユーザによって設定された背景濃度と潜像濃度に対応する地紋画像を、サンプルプリント800の中心(0で示される箇所)に配置し、背景画像を−7〜+7に変更した地紋画像が、図6を用いて説明したように並べて配置する。
そして、S1110で、CPU305は、画像メモリ212に格納された画像データをプリンタ303に転送し印刷を実行させる。
【0053】
S1107に処理を進めた場合、CPU305は、地紋パラメータ変換部318に指示を出し、ユーザによって指定された背景濃度の値を、S1103で認識したシートの種別に応じた背景濃度変換テーブルに従って変更させる。また、S1108で、CPU305は、地紋パラメータ変換部318に指示を出し、ユーザによって指定された潜像濃度の値を印刷に使用するシートの種別に応じた潜像濃度変換テーブルに従って変更させる。S1103で認識したシートの種別がコート紙である場合、背景濃度変換テーブル903に従って背景濃度の値を変更し、潜像濃度変換テーブル1003に従って潜像濃度の値を変更する。
【0054】
S1109で、CPU305は、地紋生成部319に指示を出し、S1107で変更された背景濃度の値に従って背景画像を作成させ、S1108で変更された潜像濃度の値に従って潜像画像を作成させる。ここで、背景画像と潜像画像は、サンプルプリント出力用に用意された画像を用いて作成される。そして、CPU305は、作成された背景画像及び潜像画像を画像メモリ212に格納する。ここで、CPU305は、S1107及びS1108で変更された背景濃度と潜像濃度に対応する地紋画像を、サンプルプリント800の中心(0で示される箇所)に配置し、背景画像を−7〜+7に変更した地紋画像が、図6を用いて説明したように並べて配置する。
【0055】
そして、S1110で、CPU305は、画像メモリ212に格納された画像データをプリンタ303に転送し印刷を実行させる。
次に、本実施形態に係る本番の印刷処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。図10のフローチャートに示す各ステップは、CPU305がHDD307に記憶されたプログラムを、RAM308に読み出して実行することによって行われる。このフローチャートに示す処理は、操作部301のスタートキーが押された場合に開始される。
【0056】
まず、S1201で、CPU305は、ユーザにより地紋パラメータ入力部317を介して指定された背景濃度の値を取得する。次に、S1202で、CPU305は、ユーザにより地紋パラメータ入力部317を介して指定された潜像画像の値を取得する。これらの値は、サンプルプリントを実行するときと同じ画面を使って入力される。CPU305は、取得された値を、CPU305はRAM308に記憶しておく。
【0057】
S1203で、CPU305は、操作部301を介してユーザによって指定された、本番の印刷用の給紙カセットの情報を取得する。給紙カセットの指定は、直接ユーザによって給紙部304−1または給紙部304−2が指定されてもよいし、ユーザがシートのサイズや種別を選択し、CPU305が、そのシートサイズや種別に適合するシートがセットされた給紙部を自動的に選択してもよい。
【0058】
S1204で、CPU305は、印刷用に指定されたシートの種別が、A4普通紙のプロセス速度と同じプロセス速度で印刷するシートの種別であるか否かを判定する。例えば、印刷用に指定されたシートの種別が、普通紙、再生紙、または薄紙の場合には、S1205に処理を進め、コート紙、厚紙の場合には、S1207に処理を進める。
【0059】
S1205で、CPU305は、印刷用に指定されたシートのサイズが、A4普通紙のプロセス速度と同じプロセス速度で印刷する用紙のサイズであるか否かを判定する。例えば、印刷用に指定されたシートのサイズが、A4、A3、B4、B5である場合には、S2106に処理を進め、A3ノビである場合にはS1207に処理を進める。
【0060】
S1206で、CPU305は、地紋生成部319に指示を出し、S1201で取得した背景濃度に従って背景画像を作成させ、S1102で取得した潜像濃度に従って潜像画像を作成させる。ここで、背景画像と潜像画像は、本番の印刷用に、HDD307に格納された地紋画像の中から、ユーザが操作部301を介して指定した地紋画像の画像データに従って作成される。
【0061】
一方、S1207に処理を進めた場合、CPU305は、地紋パラメータ変換部318に指示を出し、ユーザによって指定された背景濃度の値を、S1203で認識したシートの種別に応じた背景濃度変換テーブルに従って変更させる。また、S1208で、CPU305は、地紋パラメータ変換部318に指示を出し、ユーザによって指定された潜像濃度の値を印刷に使用するシートの種別に応じた潜像濃度変換テーブルに従って変更させる。S1203で認識したシートの種別がコート紙である場合、背景濃度変換テーブル903に従って背景濃度の値を変更し、潜像濃度変換テーブル1003に従って潜像濃度の値を変更する。
【0062】
S1209で、CPU305は、地紋生成部319に指示を出し、S1207で変更された背景濃度の値に従って背景画像を作成させ、S1208で変更された潜像濃度の値に従って潜像画像を作成させる。ここで、背景画像と潜像画像は、本番の印刷用に、ユーザが操作部301を介して指定した地紋画像の画像データに従って作成される。
【0063】
そして、S1210で、CPU305は、スキャナ302に指示を出し、スキャナ302に原稿の画像を読み取らせる。S1211で、CPU305は、S1210で読み取られた原稿の画像データに対してγ補正をかける。S1212で、CPU305は、S1211で補正された原稿の画像と、S1206またはS1209で作成された地紋の画像を合成して画像メモリ212に記憶する。そして、S12121で、CPU305は、画像メモリ212に格納された画像データをプリンタ303に転送し印刷を実行させる。
【0064】
以上のような制御によって、コート紙のような特殊紙に印刷される潜像画像の濃度及び背景画像の濃度と、サンプルプリントで印刷された潜像画像の濃度及び背景画像の濃度の差異を小さくすることができる。すなわち、シートに地紋画像を印刷する際のプロセス速度の違いによって、潜像画像の濃度、及び背景画像の濃度に差が出てしまう点が解消される。そのため、サンプルプリントを実行する時と、実際の地紋画像を印刷する時とで、別の種別のシートを選択して印刷を行った場合においても、実際の地紋画像を印刷した場合に、意図した通りの印刷物を手に入れることができる。
【0065】
なお、上述した実施形態では、コート紙の背景濃度変換テーブル及び潜像濃度変換テーブルを用意する場合を例に説明したが、コート紙に限らず、普通紙とは異なるプロセス速度によって印刷されるその他の特殊紙に対しても、同様の制御を行うことができる。その場合、ユーザによって設定された値に従って普通紙に地紋画像を印刷した場合と、ユーザによって設定された値に従って特殊紙に地紋画像を印刷した場合との潜像画像と背景画像の濃度の差を割り出して、その差を補正する変換テーブルを用意すればよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、プロセス速度が変わるような種別、あるいはサイズの用紙に地紋画像を印刷する際の濃度の差を埋める方法を説明したが、本発明は、これに限られるものではない。例えば、同じプロセス速度で印刷する用紙だが、印刷された地紋画像が異なる見え方をする種類の用紙間で変換テーブルを用意し、互いに、印刷された地紋画像の見え方が同じになるように補正するようにしてもよい。具体的には、色付きのシート用の変換テーブルを用意しておき、色付きのシートに印刷される地紋画像が、基準となる白色の普通紙に地紋画像を印刷するときと同じ見え方をするように、ユーザによって入力された濃度値を変更するようにしてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、サンプルプリント800を印刷するために、本番の印刷に用いる地紋画像とは別の、予め用意されたデータを使用する例を説明したが、サンプルプリント800を印刷するために本番の印刷に用いる地紋画像を選択できてもよい。つまり、サンプルプリント800を印刷するために用いる地紋画像のデータをユーザがHDD307から選択し、選択された地紋画像を用いて、サンプルプリント800を印刷するようにしてもよい。それによって、ユーザは、本番で印刷される地紋画像により近い画像を選択することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、スキャナ302によって読み取った原稿の画像と、地紋生成部319で生成した地紋画像とを合成して、プリンタ303で印刷する場合を例に説明するが、本発明はこれに限られない。例えば、ネットワークI/F320によって外部装置から受信した画像と、地紋生成部319で生成した地紋画像とを合成して、プリンタ303で印刷する場合に適用してもよい。また、不図示のファクス受信部から受信した画像と、地紋生成部319で生成した地紋画像とを合成して、プリンタ303で印刷する場合に適用してもよい。
【0069】
本実施例では、CPU上で実行されたファームウェアによる処理により変換を行うが、ファームウェアでの制御に限定されるものではない。同様に、本実施例では、メディアタイプによりパラメータの変換を行う例を示すが、メディアタイプでの切り替え動作に限定されるものではない。たとえば気温や、湿度等の画像形成プロセス、または使用する用紙の色に影響するような条件に応じて切り替えることも可能である。
【0070】
本実施形態におけるフローチャートに示す機能は、ネットワーク又は各種記憶媒体を介して取得したソフトウエア(プログラム)をコンピュータパソコン等の処理装置(CPU、プロセッサ)にて実行することでも実現できる。
【符号の説明】
【0071】
305 CPU
308 RAM
317 地紋パラメータ入力部
318 地紋パラメータ変換部
319 地紋生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに潜像画像と背景画像を含む地紋画像を印刷する印刷装置であって、
前記潜像画像の印刷濃度を入力する潜像濃度入力手段と、
前記背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力手段と、
印刷に用いるシートの種別に従って、前記潜像濃度入力手段によって入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力手段によって入力された前記背景画像の印刷濃度を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更された前記潜像画像の印刷濃度及び前記背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷手段と、を備える印刷装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記印刷に用いるシートの種別及びシートのサイズに従って、前記潜像濃度入力手段によって入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力手段によって入力された前記背景画像の印刷濃度を変更することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷手段によって印刷される画像をユーザが確認するためのサンプルプリントを実行するサンプルプリント手段をさらに備え、
前記変更手段は、前記サンプルプリント手段による前記サンプルプリントに用いるシートの種別に従って、前記潜像濃度入力手段によって入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力手段によって入力された前記背景画像の印刷濃度を変更することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記潜像画像の印刷濃度のための変換テーブルと、前記背景画像の印刷濃度のための変換テーブルとを別々に記憶する記憶手段と、
前記変更手段は、前記記憶手段に記憶された前記潜像画像の印刷濃度のための変換テーブルと、前記背景画像の印刷濃度のための変換テーブルに従って前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景画像の印刷濃度を変更することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
シートに潜像画像と背景画像を含む地紋画像を印刷する印刷装置であって、
前記潜像画像の印刷濃度を入力する潜像濃度入力手段と、
前記背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力手段と、
印刷に用いるシートのサイズに従って、前記潜像濃度入力手段によって入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力手段によって入力された前記背景画像の印刷濃度を変更する変更手段と、
前記変更手段によって変更された前記潜像画像の印刷濃度及び前記背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷手段と、を備える印刷装置。
【請求項6】
シートに潜像画像と背景画像を含む地紋画像を印刷する印刷装置の制御方法であって、
前記潜像画像の印刷濃度を入力する潜像濃度入力工程と、
前記背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力工程と、
印刷に用いるシートの種別に従って、前記潜像濃度入力工程で入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力工程で入力された前記背景画像の印刷濃度を変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記潜像画像の印刷濃度及び前記背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷工程と、を備える印刷装置の制御方法。
【請求項7】
シートに潜像画像と背景画像を含む地紋画像を印刷する印刷装置の制御方法であって、
前記潜像画像の印刷濃度を入力する潜像濃度入力工程と、
前記背景画像の印刷濃度を入力する背景濃度入力工程と、
印刷に用いるシートのサイズに従って、前記潜像濃度入力工程で入力された前記潜像画像の印刷濃度、及び前記背景濃度入力工程で入力された前記背景画像の印刷濃度を変更する変更工程と、
前記変更工程で変更された前記潜像画像の印刷濃度及び前記背景画像の印刷濃度に従って、シートに前記地紋画像を印刷する印刷工程と、を備える印刷装置の制御方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の印刷装置の制御方法を、コンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−83485(P2012−83485A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228795(P2010−228795)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】