説明

印刷装置およびその制御方法

【課題】適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供する。
【解決手段】印刷装置において、潜像部と背景部とを含む地紋画像データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された地紋画像データの印刷出力が指示された場合、地紋画像データが生成された時の地紋濃度設定値と、印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値とを比較する比較手段と、比較手段により地紋濃度設定値が同一ではないと判定された場合、地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンを濃度の異なる他の画像パターンで置換する置換手段と、潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンが置換された地紋画像データを印刷出力する制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびその制御方法に関するものであり、特に、地紋画像を印刷出力する際の画像濃度調整技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
領収書や証券、証明書などの原本には、それらを複写すると、一定の文字が浮かび上がる特殊な模様が背景に印刷されているものがある。この特殊な模様は、一般に「地紋画像」と呼ばれる。この地紋画像によって、複写行為を心理的に牽制したり、仮に複写がなされてもその使用を抑止したりすることができている。
【0003】
この地紋画像は、基本的に複写後にドットが残る領域(潜像部)と複写後にドットが消える領域(背景部)の2つの領域から構成されている。これら2つの領域は原本上でほぼ同じ反射濃度となっている。そして、潜像部には集中型の大ドットが配置され、背景部には分散型の小ドットが配置されている。ここで、分散型の小ドットは、一般的な複写機においては再現できないほど小さなドット(例えば42μm×42μm程度)となっている。一方、集中型の大ドットは、一般的な複写機においても再現できる程度の大きさのドット(例えば84μm×84μm程度)となっている。
【0004】
そのため、地紋画像が印刷された原本を複写すると、その複写物上では、大ドットの配置された潜像部のみが再現されることになる。ここで、潜像部が、ある文字列の形をしていれば、複写物上で、所定の文字列が浮き上がったように見えることになる。
【0005】
集中した大ドットや分散した小ドットは、それぞれ異なるディザマトリックスを用いたディザ処理によって生成されている。例えば、特許文献1では、集中したドット配置を得るためにドット集中型ディザマトリックスを用い、分散したドット配置を得るためドット分散型ディザマトリックスを用いることが開示されている。
【0006】
画像処理装置では、地紋画像の濃度調整を行い、原本上での潜像部と背景部の反射濃度がほぼ同じになるように設定される。特許文献2には、潜像部の画像の濃度値を一定値に定め、背景部の画像の濃度値を段階的に変化させた複数のパッチデータを生成する技術が開示されている。そして、生成されたパッチデータをシート上に形成している。ユーザは、このシート上から、潜像部の画像の反射濃度と背景部の画像の反射濃度とが略同一になっているパッチを見つけ出し、当該見つけ出したパッチの番号をUI上から選択する。すると、次回以降、地紋印刷を行う際には、上記選択された番号のパッチを生成する際に用いた反射濃度を用いて地紋画像を生成することになる。
【0007】
さらに、特許文献3は、安定した地紋画像を生成するため、地紋画像の濃度調整技術の利用をユーザに促す技術を開示している。特許文献2に記載される技術にて、地紋画像の濃度調整を行ったとしても、ある程度時間が経過すると、必ずしもその濃度調整の結果が適切とは言えない。そのため、特許文献3では、画像処理装置のその時点の測定濃度値と地紋濃度調整時の濃度測定値とを比較し、地紋濃度調整時からその時点までの画像処理装置の出力濃度の変動量を算出する。算出した濃度変動量が地紋画像として有効となる濃度領域(濃度変動量閾値)を超えているか否かを判定する。濃度変動量閾値を超えている場合は、ユーザに濃度変動により地紋画像の濃度が地紋画像として不適切な濃度になっている可能性があることを通知する。これにより、ユーザは現状の地紋画像が適切か否かを確認することができる。
【特許文献1】特開2001−197297号公報
【特許文献2】特開2005−091730号公報
【特許文献3】特開2007−129694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の技術は、新たに地紋画像を生成する際には有効であるが、既に生成された地紋画像を出力する際には十分な効果が得られない場合がある。例えば、生成されてから時間が経過した地紋画像を出力した場合、出力した地紋画像に不都合が生じることがある。これは、地紋生成時には、最適に濃度調整された状態で地紋画像が生成されていても、生成時と出力時とで時間が異なる場合、画像処理装置の印刷特性の変動により、出力時に地紋画像の濃度が変わってしまうことによる。
【0009】
たとえば、画像処理装置に記憶される地紋画像を出力した地紋画像の背景部の濃度が上昇した場合、当該地紋画像の出力物を複写したときに背景画像が消滅せず、潜像部が顕像しないことになる。つまり、本来、地紋画像の出力物を複写した際の潜像画像の顕像による、複写に対する心理的抑止力が失われてしまうことになる。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の少なくとも1つの問題点を解決するため、本発明の印刷装置は以下の構成を備える。すなわち、印刷装置において、潜像部と背景部とを含む地紋画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記地紋画像データの印刷出力が指示された場合、前記地紋画像データが生成された時の地紋濃度設定値と、前記印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値とを比較する比較手段と、前記比較手段により前記地紋濃度設定値が同一ではないと判定された場合、前記地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンを濃度の異なる他の画像パターンで置換する置換手段と、潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンが置換された前記地紋画像データを印刷出力する制御手段と、を備える。
【0012】
上述の少なくとも1つの問題点を解決するため、本発明の印刷装置の制御方法は以下の構成を備える。すなわち、印刷装置の制御方法において、潜像部と背景部とを含む地紋画像データを記憶部に記憶する記憶制御工程と、前記記憶部に記憶された前記地紋画像データの印刷出力が指示された場合、前記地紋画像データが生成された時の地紋濃度設定値と、前記印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値とを比較する比較工程と、前記比較工程により前記地紋濃度設定値が同一ではないと判定された場合、前記地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンを濃度の異なる他の画像パターンで置換する置換工程と、潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンが置換された前記地紋画像データを画像形成部により印刷出力する制御工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を詳しく説明する。なお、以下の実施の形態はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する趣旨のものではない。
【0015】
(第1実施形態)
本発明に係る画像処理装置の第1実施形態として、地紋画像を合成して印刷する印刷装置を例に挙げて以下に説明する。
【0016】
<地紋画像の説明>
地紋画像は、潜像部と背景部とにより構成される。潜像部に対応する画像はドット集中型ディザマトリックスを用いてドットが集中して配置されるように設計され、背景部に対応する画像はドット分散型ディザマトリックスを用いてドットが離散的に配置されるように設計される。また、潜像部の画像生成に用いるディザマトリックスを潜像ディザマトリックス、背景部の画像生成に用いるディザマトリックスを背景ディザマトリックスと呼ぶ。なお、潜像ディザマトリックスとして図3に示すような集中型ディザマトリックスが用いられ、背景ディザマトリックスとして図5に示すような分散型ディザマトリックスが用いられる。これらのディザマトリックスは、それぞれサブマトリックスから構成され、異なる空間周波数特性を持っている。
【0017】
また、以下の説明では、潜像部を構成する4画素×4画素の2値画像を潜像閾値パターンと呼び、背景部を構成する4画素×4画素の2値画像を背景閾値パターンと呼ぶ。例えば、潜像閾値パターンは、図4の401であり、背景閾値パターンは、図6の601である。なお、本実施形態では、印刷時に潜像部と背景部の反射濃度が等しくなるような、潜像閾値パターンと背景閾値パターンとの組み合わせが予め設定されている。つまり、例えば、4画素×4画素内の3画素を黒画素としたパターンを潜像閾値パターン(図4の401参照)とし、4画素×4画素内の2画素を黒画素としたパターンを背景閾値パターン(図6の601参照)とするように予め構成されている。
【0018】
次に、潜像部と背景部におけるドットの配置方法についてより詳細に説明する。第1実施形態では、潜像部の画像パターンをドット集中型ディザマトリックス、背景部の画像パターンをドット分散型ディザマトリックスに基づいて生成する。
【0019】
潜像部を生成する際に用いるドット集中型ディザマトリックスの代表としては、渦巻き型ディザマトリックスが挙げられる。
【0020】
図3は、4×4の集中型ディザマトリックスの一例を示す図である。図3の各ドット内の数値は集中型ディザマトリックスの閾値を示しており、渦巻状に中心から数値が増加する形で配置されている。
【0021】
図4は、図3の4×4の集中型ディザマトリックスを用いて所定の濃度値を閾値処理して得られる潜像閾値パターン(ドット配置)を表す図である。図4において、401、402、403は濃度値“3”、“6”、“9”を、図3に示すディザマトリックスでそれぞれ閾値処理して得られる閾値パターンを示している。ここで得られる潜像閾値パターン(ドット配置)は、各々のドットが集中して配置されるパターンとなっている。
【0022】
一方、背景部を形成するためのドット分散型ディザマトリックスの代表としては、Bayer型ディザマトリックスが挙げられる。
【0023】
図5は、4×4の分散型ディザマトリックスの一例を示す図である。図5の各ドット内の数値は分散型ディザマトリックスの閾値を示しており、閾値パターンはBayer型ディザマトリックスでディザ処理を行うことにより各ドットが分散して配置される。
【0024】
図6は、図5に示した4×4の分散型ディザマトリックスを用いて所定の濃度値を閾値処理して得られる背景閾値パターン(ドット配置)を表す図である。図6において、601、602、603は濃度値“2”、“4”、“5”を図5に示すディザマトリックスでそれぞれ閾値処理して得られる閾値パターンを示している。ここで得られる閾値パターン(ドット配置)は、各々のドットがお互いに分散して配置されるパターンとなっている。Bayer型ディザマトリックスでは、閾値マトリクスの各要素は相互になるべく接触しない位置に順に配置され、その閾値パターンは孤立した格子状のドット配置を取る。
【0025】
第1実施形態では、背景に用いるディザマトリックスとしてBayer型ディザマトリックスを用いる場合を中心に説明するが、他のドット分散型ディザマトリックスを用いても良い。
【0026】
上述したように、ドット集中型ディザマトリックスを用いた場合、集中型の大ドットが生成される。このようなドット集中型のパターンは、一般にプリンタの印字特性変動の影響を受けにくいため、大ドットは大ドットとしてシート上に形成される。
【0027】
一方、ドット分散型ディザマトリックスを用いた場合、孤立ドットの集合体が生成される。このような孤立ドットである小ドットは、上述の大ドットに比較して一般にプリンタの印字特性変動の影響を受けやすく、安定してシート上に形成されるとは言い難い。
【0028】
このため、背景閾値パターン内の黒画素の数は、潜像閾値パターン内の黒画素の数より多くなるように設定して地紋画像を生成する場合が多い。また、地紋画像内には小ドットが存在するため、地紋画像の濃度調整は例えば特許文献2の技術を用いて頻繁に行う必要がある。
【0029】
なお、第1実施形態においては、背景閾値パターンと潜像閾値パターンのディザマトリックスのサイズを4画素×4画素にて説明したが、これに限るものではない。8画素×8画素、16画素×16画素など、その他のサイズでも構わない。
【0030】
<基本装置構成>
図1は、第1実施形態に係る印刷装置の内部構成を示すブロック図である。
【0031】
印刷装置100は、主な機能部として、地紋画像生成部101、入力原稿データ処理部102、合成部103、印刷データ処理部104、印刷部105、濃度補正部106、記憶部107、文書管理部108を備えている。また、これらの各部を統合的に制御する制御部や時刻を管理するタイマを併せて備えている。
【0032】
地紋画像生成部101には、入力背景画像112、潜像閾値パターン114、潜像背景領域指定画像115、背景閾値パターン116が入力される。潜像背景領域指定画像115は、潜像部と背景部の領域を指定するための画像であり、1画素1ビットで構成される。たとえば、潜像背景領域指定画像115の一方のビット”0”は背景部を表し、他方のビット”1”は潜像部を表す。この潜像背景領域指定画像115は、複写物上で浮き上がる文字列の形をしている。
【0033】
地紋画像生成部101は、潜像背景領域指定画像115により潜像領域として指定された領域の全面に潜像閾値パターン114を貼り付け、背景領域として指定された領域の全面に背景閾値パターン116を貼り付ける。これにより、図7のように、集中型のドットが潜像部に配置され、分散型のドットが背景部に配置された地紋画像を生成する。この地紋画像生成部101における処理内容は、図2を用いて後述する。地紋画像生成部101で生成された地紋画像117を合成部103に入力される。
【0034】
また、入力原稿画像118は、入力原稿データ処理部102で、RGB−CMYK変換、濃度補正処理(ガンマ補正処理)、ハーフトーン処理などの画像処理がなされた後、合成部103に入力される。
【0035】
なお、濃度補正(ガンマ補正)処理は、濃度補正(ガンマ補正)部106で作成された濃度補正(ガンマ補正)パラメータを用いて行われる。濃度補正(ガンマ補正)パラメータの決定方法については、後述する。
【0036】
合成部103は、入力原稿データ処理部102で画像処理が実行された入力原稿画像と地紋画像生成部101で生成された生成された地紋画像117を合成し、地紋合成出力画像を生成する。なお、入力原稿画像118の内容に関わらず、地紋画像117をそのまま地紋合成出力画像とする場合には、合成部103で入力原稿画像118を参照する必要はない。
【0037】
印刷データ処理部104は、合成部103で合成された地紋合成出力画像を受け取って後段の印刷部105に送る。このとき、地紋画像出力画像の生成時とその画像に関する情報を、文書管理部108に記憶する。
【0038】
画像形成部である印刷部105は、入力された地紋合成出力画像データの情報に従って、地紋画像を合成した出力原稿を印刷出力する。ここで、印刷部105は、画像を中間転写体上に形成し、当該形成された中間転写体上の画像をシート上に形成するプリンタエンジンとなっている。さらに、この印刷部105は、中間転写体上の画像の濃度を測定して濃度補正部106に対して測定結果を送信することができる。
【0039】
なお、第1実施形態では、地紋画像(地紋画像データ)、入力原稿画像(入力原稿画像データ)、地紋合成出力画像(地紋合成出力画像データ)は全てデジタルデータを示すものとする。用紙などの記録媒体上に印刷された画像を示す場合にはその都度説明する。
【0040】
<装置の基本動作>
図2は、第1実施形態に係る印刷装置の地紋画像生成部101の動作を示すフローチャートである。なお、以下の各ステップは図1には不図示の制御部により実行される。
【0041】
ステップS201では、ユーザインターフェース等を介した入力情報に従い、地紋画像生成処理を開始する。
【0042】
ステップS202では、入力背景画像112、背景閾値パターン116、潜像閾値パターン114、潜像背景領域指定画像115を読み込む。
【0043】
ステップS203では、地紋画像を生成する際の初期画素を決定する。例えば、入力画像全体に対して左上から右下までラスター走査順に画像処理を行い、地紋画像に変更する場合、左上を初期位置とする。
【0044】
ステップS204では、背景閾値パターン116、潜像閾値パターン114、潜像背景領域指定画像115を、それぞれ入力背景画像112の左上からタイル状に配置する。そして、処理対象となっている入力背景画像112の画素に対して、ドット計算処理をし、印刷時のドットに対応する画素値を書き込むか否かを判定する。このとき画素値は入力された色情報111に対応する。
【0045】
ドット計算処理は、例えば以下のように処理される。
【0046】
(a)潜像背景領域指定画像115で潜像部に相当する画素で、潜像閾値パターン114の画素値が黒であれば”1”、白であれば”0”とする。
【0047】
(b)潜像背景領域指定画像115で背景部に相当する画素で、背景閾値パターン116の画素値が黒であれば”1”、白であれば”0”とする。
【0048】
ステップS205では、ステップS204での計算結果を判定する。ここで、”1”ならばステップS206へ進み、”0”ならばステップS207へ進む。
【0049】
ステップS206では、印刷時のドットに対応する画素値を書き込む処理を行う。なお、画素値の値は、地紋画像117の色によって変えることができる。黒色の地紋を作成したい場合、入力背景画像112の処理対象画素を黒に設定する。その他、プリンタのトナーあるいはインクの色に合わせてシアン、マゼンダ、イエローに設定することにより、カラーの地紋画像117を作成することができる。
【0050】
ステップS207では、入力背景画像112の全画素が処理されたか否かを判定する。入力背景画像112の全画素が処理されていない場合はステップS208へ進み、未処理の画素を選択し、再びステップS204〜ステップS206の処理を実行する。一方、入力背景画像112の全画素に対する処理が完了していれば、ステップS209へ進み、地紋画像生成部101における画像処理を終了する。上述の処理により、地紋画像117が生成されることになる。
【0051】
<地紋画像の濃度調整(地紋濃度調整処理)>
背景技術および課題で述べたように、プリンタを用いて実際に地紋画像を出力する場合、様々な原因により、必ずしも潜像部と背景部が意図した通りの濃度で出力されるとは限らない。原因は、エンジンの経時変化(感光ドラムやレーザー出力部の劣化)、湿度や気温などの印刷環境、プリンタのインクやトナーの状態等、様々な要因がある。すなわち、潜像部と背景部のディザマトリックスに対する最適な濃度値は、プリンタの機種、ディザマトリックス、プリンタの個体、印刷環境、インクやトナー等に依存して異なる。
【0052】
従って、プリンタのエンジン特性や印刷環境が異なる場合においても、印刷時にほぼ等しい反射濃度となる潜像閾値パターン、背景閾値パターンを得た上で地紋画像を生成する必要がある。このため、地紋合成印刷を実行する前に、プリンタ毎に潜像部と背景部の反射濃度がほぼ同一になるような潜像閾値パターンと背景閾値パターンとを得る処理、すなわち、地紋濃度調整を行うことが必要になる。
【0053】
地紋濃度調整方法として、潜像ディザマトリックス、背景ディザマトリックスの一方または双方に対する濃度値の階調を変化させて、シート上での反射濃度がほぼ等しくなるように調整する方法が特許文献2に開示されている。この特許文献2の技術を簡単に説明する。
【0054】
図8は、地紋画像の濃度調整を行うための地紋濃度試し刷りを実行する構成を示すブロック図である。図8に示すように、地紋濃度試し刷りを実行する構成は、設定情報入力部802、パターン生成部803、試し刷り地紋画像生成部804、印刷データ処理部805、印刷部806から構成されている。
【0055】
設定情報入力部802は、設定情報801が保存されている初期設定ファイルから設定情報801を読み取る処理を行う。あるいは、ユーザインターフェースを通じて入力される設定情報801を受け付ける処理を行う。パターン生成部803は、設定情報入力部802から入力される設定情報801に基づき、地紋を生成するために必要な閾値パターン(潜像閾値パターン及び背景閾値パターン)を生成し、後段の試し刷り地紋画像生成部804に出力する。第1実施形態では、入力される設定情報801から生成されるパターンは潜像閾値パターンおよび背景閾値パターンである。また、地紋濃度試し刷り処理においては、パターン生成部803は複数の潜像閾値パターンと背景閾値パターンとを生成する。試し刷り地紋画像生成部804は、パターン生成部803から入力されたパターンに基づき、試し刷り地紋画像を生成する。この試し刷り地紋画像生成部804で生成される試し刷り地紋画像の詳細については後述する。
【0056】
印刷データ処理部805は、試し刷り地紋画像生成部804で生成された試し刷り地紋画像に対し、必要な画像処理を実行する。但し、印刷データ処理部805では地紋画像の画素値(シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック)に対しては、印刷時に複数のインクやトナーが混じった混色とならないように考慮して試し刷り地紋画像に画像処理を行う。必要な画像処理が施された試し刷り地紋画像は印刷部806へ送られる。そして、印刷部806は、入力されたデータに従って、試し刷り地紋画像を印刷出力する。
【0057】
次に、試し刷り地紋画像生成部804で生成される、潜像部と背景部の双方の濃度を変化させた複数の地紋画像(パッチ)を2次元的に配置した試し刷りシートについて説明する。潜像部と背景部の濃度を2次元的に変化させた試し刷りシートには、薄い濃度から濃い濃度の範囲でパッチが印刷されており、1枚のシート内に潜像部と背景部の濃度がほぼ同じになる複数のパッチが存在する。従って、地紋画像の濃度も選択可能な入力値としてユーザに提供することができる。
【0058】
1枚のシート内に、潜像部と背景部の双方の濃度を変化させて2次元的に配置した試し刷りシートを用いることから、ユーザは、潜像部が好ましい濃さで、かつ潜像部と背景部の濃度がほぼ等しいパッチを特定することができる。すなわち、複写時に潜像がはっきり現れる地紋画像を生成するための地紋濃度パラメータ(潜像閾値パターンと背景閾値パターン)を速やかに特定することができる。潜像部と背景部の双方の濃度を変化させて2次元的に配置した試し刷りシートは1枚から得られる情報が多いだけでなく、一覧性に優れ、利便性が高い。また、ユーザが最適な地紋の濃さを探す際に出力する試し刷りシートの枚数を削減することができるため、用紙コストの削減に繋がる効果が得られる。
【0059】
図9は、潜像部と背景部の濃度を変えたパッチを2次元的に配置した試し刷りシートの一例を示す図である。各々のパッチには、潜像部と背景部とが必ず含まれており、カモフラージュを含んでいても良い。図9に示す各々のパッチは、中心部が潜像部、周辺部が背景部を示す。図9に示す例では、潜像部と背景部を指定する潜像背景領域指定画像は四角の矩形となっている。
【0060】
図9に示す試し刷りシートでは、用紙の横方向に対して潜像部の濃度(潜像ディザマトリックスに加える濃度値)を変化させて、縦方向に対して背景部の濃度(背景ディザマトリックスに加える濃度値)を変化させている。
【0061】
図10は、地紋濃度調整機能を実行する構成を示すブロック図である。図1に示した印刷装置(図10の装置1004)の前段に選択情報入力部1002およびパターン生成部1003を配置した構成となっている。
【0062】
図10において、選択情報入力部1002では、ユーザが試し刷りシートにおいて最適と判断したパッチに関する情報(例えば、パッチの近傍に印刷された番号等)を選択情報1001として、ユーザインターフェースを通じて入力する。ここで、最適な地紋画像のパッチとは、例えば、ユーザが望む濃さであり、かつ、潜像部と背景部がほぼ同一の濃度となっており、ターゲットとする複写機で試し刷りシートを複写した際に潜像部が残り、背景部が消失するパッチである。
【0063】
パターン生成部1003は、選択情報入力部1002から入力される選択情報1001に基づき、地紋を生成するために必要なパターン(潜像閾値パターンと背景閾値パターンと)を生成し、印刷装置1004に入力する。
【0064】
そして、印刷装置1004は、パターン生成部1003から入力される背景閾値パターンと潜像閾値パターンに基づいて地紋画像を生成し、地紋画像と入力原稿画像を合成し、出力原稿を印刷出力する。印刷装置1004における処理については既に詳しく述べたので、説明は省略する。このように、本発明の第一の実施形態の印刷装置は、図1に示した印刷装置に、選択情報入力部1002とパターン生成部1003が構成され、地紋濃度調整を可能とするものである。具体的には、ユーザインターフェースやそれを介した入力情報に基づく処理を行う、CPUなどを有した処理部によって構成される。
【0065】
図11は、最も単純な試し刷りおよびそれに基づく地紋濃度パラメータ設定の手順を示すフローチャートである。なお、ステップS1105を除く各ステップは図10には不図示の制御部により実行される。
【0066】
ステップS1101では、ユーザインターフェース等を介してユーザからの入力を受け、試し刷りを開始する。
【0067】
ステップS1102では、設定情報が保存されている初期設定ファイルから設定情報を読み取る処理を行う。あるいは、ユーザインターフェースを介して入力される設定情報を受け付ける処理を行う。
【0068】
ステップS1103では、ステップS1102で入力された設定情報に基づき、地紋画像を生成する際に潜像部と背景部の印刷濃度を決定するべく地紋濃度パラメータを生成する。第1実施形態では、入力される設定情報から生成される地紋濃度パターンは背景閾値パターンと潜像閾値パターンとなる。
【0069】
ステップS1104では、ステップS1103で生成した地紋濃度パラメータに基づき、図9に示すような試し刷りシートを生成し、プリンタで印刷出力する。
【0070】
ステップS1105において、ユーザが、試し刷りシートの各々のパッチにおける潜像部と背景部の濃度を視覚的に比較する。なお、このステップの処理は一般的にはユーザが行う処理である。ただし、スキャナなどの画像読取装置により読み取った画像データに対し評価を行なうよう構成してもよい。
【0071】
ユーザによる視覚的な評価では、試し刷りシートの中から潜像部と背景部の反射濃度がほぼ等しく、かつ、ターゲットとする複写機で試し刷りシートを複写した際に潜像部が残り背景部が消失するパッチを選択する。具体的には、適したパッチと関連付けられた番号を選択する。例えば、図9に示す例では、用紙の横方向には、A列、B列、C列と潜像部の濃度を変化させたパッチが並べられている。また、用紙の縦方向には、背景部の濃度を変化させたパッチが並べている。さらに、各々のパッチの横に背景部の濃度を表す値が記載されている。ここで、地紋画像として好ましい濃度のパッチが存在したとする。そして、そのパッチの潜像部の濃度はA列で表され、背景部の濃度は16で表されたとする。その場合には、そのパッチをA−16としてユーザは選択し、その情報を以下のステップS1106において入力する。
【0072】
ステップS1106では、ステップS1105で選択したパッチに関する番号(例えばA−16)を選択情報としてユーザインターフェース等を介してユーザからの入力を受け付ける。入力された選択情報は、地紋画像生成部101内に保持したり、あるいは、印刷装置の文書管理部108などに、その情報を記憶しておく。このとき、選択情報以外に、その時の日時なども合わせて記憶しておく。
【0073】
ステップS1107では、ステップS1106で入力された情報に基づき、地紋画像の潜像部と背景部の印刷濃度を決定する地紋濃度パラメータを設定する。具体的には、地紋濃度パラメータは、潜像部と背景部の濃度がほぼ等しくなり、複写時に背景部が消失するような潜像閾値パターンと背景閾値パターンとして設定される。
【0074】
<原稿画像の濃度補正>
図12〜図16を参照して、入力原稿画像の補正を行う濃度補正(ガンマ補正)部106(図1)について説明する。なお、この濃度補正は、原稿画像の濃度の補正を行うためのものであり、上述の地紋画像の濃度調整とは異なる。
【0075】
図12は、濃度補正(ガンマ補正)部106の詳細な構成を示すブロック図である。図において、濃度測定部1201は複数のパッチの反射濃度を測定する。濃度補正(ガンマ補正)パラメータ作成部1202は、測定した反射濃度値に基づいて所望の濃度特性になるように濃度階調を補正する変換パラメータ(ガンマ補正パラメータ)を新たに作成する。そして、作成した新たな濃度補正パラメータ(ガンマ補正パラメータ)を原稿データ処理部102に送る。
【0076】
図13は、濃度測定部1201の構成を示す図である。図13において、図1の印刷部105の現像ユニットを構成する中間転写体1302上に、階調値5%、10%、40%、80%のパッチのデータ(図14)を、CMYK各色について形成し、これらの反射濃度をセンサー1301で測定する。そして、測定した反射濃度値を濃度補正パラメータ作成部1202に送る。この濃度測定部1201の処理は、規定の印刷枚数や時間、環境変化、印刷装置の部品交換等の所定のタイミングで自動的に実行される。つまり、画像形成濃度の変化を補償するために自動的に実行される。
【0077】
次に、濃度補正パラメータ作成部1202における濃度補正パラメータの作成方法について説明する。図15は、プリンタの濃度特性の一例を示す図である。濃度測定部1201で測定した、5%、10%、40%、80%のパッチの測定濃度値が、図15においてそれぞれ、○(白点)の反射濃度値である場合、そのときのプリンタの濃度特性は、実線の濃度特性となる。破線は、所望の理想とする濃度特性(リニア特性)を示す。理想の濃度特性(図15の破線)となるような濃度補正パラメータを作成すると、その補正特性は図16の実線に示すものとなる。
【0078】
原稿データ処理部102では、CMYKデータに変換された後の入力原稿画像を、濃度補正パラメータ作成部1202で作成された濃度補正(ガンマ補正)パラメータを用いて、階調値の補正(変換)を行う。これにより、印刷される出力原稿の色味の変動などを抑制するようにしている。
【0079】
<プリンタ部の濃度変動を補償するための濃度調整処理>
上述のように、印刷部105の濃度変動が起こったことを検出した際には、濃度補正部106で生成された新たなガンマ補正パラメータを用いて、入力原稿画像の各画素の濃度値を補正している。この濃度値の調整により、入力原稿画像については、印刷部105の濃度変動が起こったとしても、期待通りにシート上に形成されることになる。
【0080】
ところで、このガンマ補正は、地紋画像117の濃度の補正は行われない。なぜなら、濃度補正部106は原稿データ処理部102とデータをやり取りする処理部であって、地紋画像生成部101とデータをやり取りする処理部ではないからである。そのため、印刷部105の濃度変動が発生した場合、地紋画像については、印刷部105の濃度変動の影響を直接受けることになる。その場合、潜像部と背景部の反射濃度に差が生じ、地紋画像は、本来の地紋画像ではなくなってしまう。
【0081】
つまり、図1に記載される記憶部107に記憶される、印刷データ処理部104で処理された地紋合成出力画像を、図示しない制御部の指示で印刷部から出力する場合、その出力するタイミングにより、濃度変動の影響を大きく受ける。特に、地紋合成出力画像を生成し、記憶してから時間が経過した場合、印刷部の状態が大きく変化し、印刷部105から出力される出力原稿画像119に付加される地紋画像の潜像部と背景部の反射濃度に差が生じる。
【0082】
例えば、上述した地紋濃度調整方法で調整した際、図17(図9の抜粋)に示す試し刷りシートで、背景部1704と潜像部1714が見た目の反射濃度の差が少なく、ユーザが選択した(B−16)を地紋濃度調整の結果としたとする。この調整結果に基づき生成された地紋合成出力画像を、図18の1801に示す。「無効」という文字部が潜像部1802で、文字部の背景が背景部1803である。地紋合成出力画像1801が紙に印刷されたものが、出力原稿画像1811である。このとき、潜像部1812と背景部1813では、見た目の反射濃度は等しく見えるため、「無効」という文字は浮き出ていない。この出力原稿画像1811を、ターゲットとする複写機で複写すると、背景部1823がきれいに消失し、潜像部1822である「無効」という文字がきれいに顕像する。
【0083】
一方、このとき生成した地紋合成出力画像を記憶部107に記憶し、1ヶ月後に再び出力したものを図19に示す。地紋合成出力画像1801が紙に印刷されたものが、出力原稿画像1911である。このとき、潜像部1912の反射濃度が高くなり、潜像部1912と背景部1913では、見た目の反射濃度に差が生じる。出力原稿画像1911では、「無効」という文字が浮き出てくる。また、この出力原稿画像1911を、ターゲットとする複写機で複写すると、背景部1923が消滅せず、潜像部1822である「無効」という文字が明瞭には顕像しない。つまり、本来地紋画像が持つ、出力原稿画像では潜像し、その複写原稿画像で潜像画像が顕像するという特性が失われ、地紋が持つ複写に対する心理的抑止力が失われてしまう。
【0084】
そこで、第1実施形態に係る、プリンタ部(印刷部105)の濃度変動に対し、自動で地紋画像の濃度調整を行う処理について説明する。ここでは、図1に示す印刷装置の記憶部107に記憶される地紋合成出力画像を出力する場合について説明する。なお、地紋合成出力画像を生成してから印刷するまである程度時間が経過しており、印刷装置の印刷部の状態は変動しているものとする。具体的には、経過時間内に、濃度補正部106で印刷部の濃度補正が実施されているものとする。また、それと並行し、地紋画像生成部101においても地紋濃度補正が実施されているものとする。そてにより、地紋合成出力画像の生成時と出力時において、印刷出力の濃度特性が大きく異なっている。
【0085】
図22は、自動で地紋画像出力時に濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。なお、以下の各ステップは図1には不図示の制御部により実行される。
【0086】
ステップS2201では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0087】
ステップS2202では、文書管理部108に記憶される地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、予め設定した日数以内かどうか比較する。なお、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶するよう記憶制御してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶するよう記憶制御してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時(時刻情報)のほか、地紋濃度調整の実施日時(時刻情報)や地紋濃度調整値も含まれる。
【0088】
ステップS2202での比較結果に基づき、図1には図示しない制御部が、処理ルートを決定する。ステップS2202の比較結果がYesの場合には、ステップS2206の印刷処理へ進む。ステップS2202の比較結果がNoの場合には、ステップS2203へ進む。
【0089】
ステップS2203では、地紋合成出力画像の生成時点と印刷時点(つまり現在)の地紋濃度設定を取得する。このとき、地紋画像の潜像部および背景部の双方の地紋濃度設定値を取得することが望ましいが、変動が大きい背景部の設定値のみ取得するよう構成してもよい。
【0090】
ステップS2204では、取得した生成時と印刷時の地紋濃度設定値に基づいて、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0091】
ステップS2205では、ステップS2203で取得した地紋濃度設定値と、ステップS2204で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、後述する。
【0092】
ステップS2206では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2207で、濃度補正された出力原稿画像を得る。そして、ステップS2208で、地紋印刷を終了する。
【0093】
次に、ステップS2205の地紋画像の濃度補正について、詳細に説明する。たとえば、背景部の地紋濃度調整値が14の状態(図17)で生成した地紋画像があるとき、その背景閾値パターンは図20の2011に示されるパターンとなる。この状態で生成された地紋合成出力画像を、記憶部107に長期間記憶した後、印刷部105から印刷する場合、経年変化により印刷部の濃度状態は変化しているため、作成時と同じ品位の出力原稿画像119は得られない。
【0094】
たとえば、図19に示したように、背景部の濃度が上昇した出力原稿画像1911を得る。この地紋付きの出力原稿画像1911をターゲットとする複写機で複写すると、背景部が消滅せず、潜像部が十分潜像しない複写原稿1921を得る。これでは、地紋の機能を十分果たせていない。そのため、印刷部105から印刷する前に、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を行うことで、この問題を解決する。
【0095】
図22に示したフローチャートに従い、地紋合成出力画像生成時の地紋設定値と、印刷時の地紋設定値を取得する。ここでは、生成時の背景部の地紋濃度調整値が14(図17)で、印刷時の背景部の地紋濃度調整値が10(図17)であったとする。これに対応する背景閾値パターンは、生成時が図20の2011、印刷時が図20の2001である。ただし、図20の背景閾値パターンは、4画素×4画素のドット分散型ディザマトリックスを4つ並べた図である。ここでは、生成時に比べ、印刷時の地紋画像の背景部の濃度が上昇している。つまり、印刷時の地紋画像の背景部の濃度を適切に低下させる必要がある。
【0096】
具体的には、生成時と印刷時の地紋濃度調整値を参照し、生成時の背景閾値パターンを、印刷時の背景閾値パターンに置換することで、背景部の濃度を適切に低下させることができる。ただし、背景閾値パターンは既に画像に合成されているため、単純に置換するというわけにはいかない。そこで、図29に示す通り、地紋合成出力画像を、印刷時の閾値パターンでマッチングし、合成した背景閾値パターンを検出し、その位置で、4画素×4画素単位で地紋合成出力画像と印刷時の閾値パターンで論理演算を実施すればよい。図29のフローチャートを簡単に説明する。なお、地紋濃度調整値と背景閾値パターンは予め対応付けられているため、新たに生成するのではなく、地紋濃度調整値から、それに対応する背景閾値パターンを選択すればよい。
【0097】
ステップS2901で、図22のステップS2205の地紋データ置換処理を開始する。
【0098】
ステップS2902で、読み込んだ地紋合成出力画像を生成した際に用いた、閾値パターンを読み込む。ステップS2903で、地紋合成出力画像を読み込む。
【0099】
ステップS2904では、ステップS2903で読み込んだ閾値パターンを用い、同じくステップS2902で読み込んだ地紋合成出力画像に対し、パターンマッチングを行う。パターンにヒットすれば”1”、ヒットしなければ”0”を出力する。
【0100】
ステップS2905では、ステップS2904でのパターンマッチング結果を判定する。ここで、”1”ならばステップS2906へ進み、”0”ならばステップS2907へ進む。
【0101】
ステップS2906では、先に説明した4画素×4画素単位で、地紋合成出力画像に対し印刷時の閾値パターンで論理演算を実施する。
【0102】
ステップS2907では、地紋合成出力画像の全画素が処理されたかを判定する。地紋合成出力画像の全画素が処理されていない場合はステップS2908へ進み、未処理の画素を選択し、再びステップS2904〜ステップS2906の処理を実行する。また、地紋合成出力画像の全画素に対する処理が完了していれば、ステップS2909へ進み、ステップS2205の地紋データ置換処理を終了する。
【0103】
なお、第1実施形態のように、地紋画像生成時から印刷時の時間経過によりプリンタの印字特性が変動し、地紋画像の背景部の濃度が上昇してしまう場合には、背景濃度を下げて印刷する必要がある。つまり、地紋画像生成時に用いた潜像閾値パターンより低く濃度が再現される潜像閾値パターンに置き換えればよいことが分かる。そのため、印刷時の背景濃度を生成時の背景濃度より下げたい場合には、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンの論理積を取ればよい。逆に、印刷時の背景濃度を生成時の背景濃度より上げたい場合には、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンの論理和を取ればよい。なお、濃度を上げる(論理和)、あるいは、濃度を下げる(論理積)ことの判断は、上述の通り、地紋画像生成時と印刷時の地紋濃度調整値を参照して決定される。ここでは、地紋濃度調整値を小さくすると、背景濃度が低くなる。逆に、地紋濃度調整値を大きくすると、背景濃度が高くなる。そのため、これに従い、濃度の上げ下げを制御すればよい。
【0104】
図20は、地紋(背景部)の濃度調整の具体例を説明する図である。対象としている地紋合成出力画像の生成時の背景閾値パターンは2011で、当該地紋合成出力画像の印刷時の背景閾値パターンは2001である。図20では、黒画素が背景ドットが印字される画素で、白画素が印字されない画素である。背景画素が印字される黒画素を”1”、印字されない白画素を”0”として、論理演算を実施する。濃度を低下させたい場合には、生成時の背景閾値パターンと印刷時の背景閾値パターンとの論理積をとる。その場合、2021に示すグレー部2022の背景ドットが消去される。説明のために、生成時の背景閾値パターンと印刷時の背景閾値パターンとの論理積をとると説明したが、実際には、生成時の背景閾値パターンは地紋合成出力画像に合成されているため、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンの論理積をとる。
【0105】
逆に、生成時の背景閾値パターンが2001で、印刷時の背景閾値パターンが2011であるとき、印刷時の濃度に合わせるために濃度を上げるためには、生成時の背景閾値パターンと印刷時の背景閾値パターンの論理和をとる。この場合、生成時の背景閾値パターン2001に対し、2021に示すグレー部2022の背景ドットが付加される。こちらの場合も、実際には、生成時の背景閾値パターンは地紋合成出力画像に合成されているため、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンとの論理和をとる。
【0106】
以上のように、印刷時に地紋濃度を上げたいときには、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンの論理和をとることで地紋濃度を上昇させることができる。逆に、印刷時に地紋濃度を下げたいときには、地紋合成出力画像と印刷時の背景閾値パターンの論理積をとることで地紋濃度を下げることができる。
【0107】
なお、これまで背景部について説明したが、潜像部についても同様の手法で濃度を調整することが可能である。図21に示す潜像閾値パターンも規則的に配列されたドットなので、同様の手法で可能である。生成時の潜像閾値パターンが2101で、印刷時の潜像閾値パターンが2111のとき、印刷時の潜像部の濃度を上昇させたい場合には、地紋合成出力画像と印刷時の潜像閾値パターンの論理和をとることで潜像部の地紋濃度を上昇させることができる。逆に、印刷時に潜像部の地紋濃度を下げたいときには、地紋合成出力画像と印刷時の潜像閾値パターンの論理積をとることで潜像部の地紋濃度を下げることができる。
【0108】
以上説明したとおり第1実施形態に係る印刷装置によれば、生成時と印刷時の地紋濃度設定値を参照し、地紋の閾値パターンを変更することで、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することが出来る。それにより、過去に記憶しておいた地紋合成出力画像を時間が経過した後に出力した場合であっても、画像処理装置の印刷濃度変動の影響を低減することが出来る。それにより、本来、地紋画像が持つ、出力物を複写した際、潜像画像が顕像するという、複写に対する心理的抑止力を損なうことも低減することが可能となる。
【0109】
(変形例1)
変形例1では作成日と印刷日の地紋濃度設定値を参照して地紋の濃度補正を実施するか否かを判断する例を示す。図23は、変形例1に係る地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0110】
ステップS2301では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0111】
ステップS2302では、文書管理部108に記憶される地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、予め設定した日数以内かどうか比較する。このとき、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時のほか、地紋濃度調整の実施日時や地紋濃度調整値も含まれる。ステップS2302での比較結果に基づき、処理ルートが決定される。ステップS2302の比較結果がYesの場合には、ステップS2307の印刷処理へ進む。ステップS2302の比較結果がNoの場合には、ステップS2303へ進む。
【0112】
ステップS2303では、地紋合成出力画像の生成時と印刷時の地紋濃度設定を取得する。このとき、地紋画像の潜像部と背景部の両方の地紋濃度設定値を取得することが望ましいが、変動が大きい背景部の設定値のみでもよい。
【0113】
ステップS2304では、地紋合成出力画像の作成時の濃度設定と印刷時の濃度設定とが同一かを比較する。ステップS2304の比較結果がYesの場合には、ステップS2307の印刷処理へ進む。ステップS2304の比較結果がNoの場合には、ステップS2305へ進む。
【0114】
ステップS2305では、取得した生成時と印刷時の地紋濃度設定値から、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0115】
ステップS2306では、ステップS2304で取得した地紋濃度設定値と、ステップS2305で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様であるため説明は省略する。
【0116】
ステップS2307では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2308で、濃度補正された出力原稿画像が生成される。その後、ステップS2309で、地紋印刷を終了する。
【0117】
以上のように、地紋画像を含む地紋合成出力画像が作成された作成日時と印刷日時との差が所定の日時より大きく、かつ、地紋濃度設定値が生成時と印刷時とで異なる時、地紋の閾値パターンを変更する。その結果、第1実施形態と同様、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することが出来る。
【0118】
(変形例2)
変形例2ではさらに地紋濃度設定値の信頼性を考慮して地紋の濃度補正を実施するか否かを判断する例を示す。図24は、変形例2にかかる地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0119】
ステップS2401では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0120】
ステップS2402では、文書管理部108に記憶される地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、予め設定した日数以内かどうか比較する。このとき、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時のほか、地紋濃度調整の実施日時や地紋濃度調整値も含まれる。ステップS2402での比較結果に基づき処理ルートが決定される。ステップS2402の比較結果がYesの場合には、ステップS2407の印刷処理へ進む。ステップS2402の比較結果がNoの場合には、ステップS2403へ進む。
【0121】
ステップS2403では、地紋合成出力画像の生成時と印刷時の地紋濃度設定を取得する。このとき、地紋画像の潜像部と背景部の両方の地紋濃度設定値を取得することが望ましいが、変動が大きい背景部の設定値のみでもよい。
【0122】
ステップS2404では、地紋合成出力画像の作成時の濃度設定と印刷時の濃度設定とが同一かを比較する。ステップS2404の比較結果がNoの場合には、ステップS2405へ進む。ステップS2404の比較結果がYesの場合には、ステップS2410へ進む。
【0123】
ステップS2410では、地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、ステップS2402とは異なる予め設定した日数以内かどうか比較する。ステップS2410の比較結果がYesの場合には、濃度設定値の信頼性が高いと判断し、ステップS2407の印刷処理へ進む。ステップS2410の比較結果がNoの場合には、ステップS2405へ進む。
【0124】
ステップS2405では、取得した生成時と印刷時の地紋濃度設定値から、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0125】
ステップS2406では、ステップS2404で取得した地紋濃度設定値と、ステップS2405で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様であるため説明は省略する。
【0126】
ステップS2407では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2408で、濃度補正された出力原稿画像が生成される。その後、ステップS2409で、地紋印刷を終了する。
【0127】
以上のように、変形例1の判断に加え、地紋濃度設定値の信頼性を考慮して、地紋の閾値パターンを変更する。その結果、第1実施形態と同様、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することが出来る。
【0128】
(変形例3)
変形例3ではさらにユーザに地紋濃度調整を促す旨の通知を実施する例を示す。図25は、変形例3にかかる地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0129】
ステップS2501では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0130】
ステップS2502では、文書管理部108に記憶される地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、予め設定した日数以内かどうか比較する。このとき、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時のほか、地紋濃度調整の実施日時や地紋濃度調整値も含まれる。次に、ステップS2502での比較結果に基づき処理ルートが決定される。ステップS2502の比較結果がYesの場合には、ステップS2507の印刷処理へ進む。ステップS2502の比較結果がNoの場合には、ステップS2503へ進む。
【0131】
ステップS2503では、地紋合成出力画像の生成時と印刷時の地紋濃度設定を取得する。このとき、地紋画像の潜像部と背景部の両方の地紋濃度設定値を取得することが望ましいが、変動が大きい背景部の設定値のみでもよい。
【0132】
ステップS2504では、地紋合成出力画像の作成時の濃度設定と印刷時の濃度設定とが同一かを比較する。ステップS2504の比較結果がNoの場合には、ステップS2505へ進む。ステップS2504の比較結果がYesの場合には、ステップS2510へ進む。
【0133】
ステップS2510では、地紋合成出力画像の生成日時と印刷開始日時とが、ステップS2502とは異なる予め設定した日数以内かどうか比較する。ステップS2510の比較結果がYesの場合には、濃度設定値の信頼性が高いと判断し、ステップS2507の印刷処理へ進む。ステップS2510の比較結果がNoの場合には、ステップS2511へ進む。
【0134】
ステップS2511では、図示しないUI部(表示部など)により、ユーザに対し地紋濃度調整の実施を喚起する旨を表示する(問合せ手段)。
【0135】
ステップS2512では、ユーザからの入力を受けたUI部が、制御部へその結果を通知する。その結果がNoの場合(地紋濃度調整を実施しない場合)には、ステップS2507の印刷処理へ進む。一方、Yesの場合(地紋濃度調整を実施する場合)には、ステップS2505へ進む。
【0136】
ステップS2505では、取得した生成時と印刷時の地紋濃度設定値から、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0137】
ステップS2506では、ステップS2504で取得した地紋濃度設定値と、ステップS2505で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0138】
ステップS2507では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2508で、濃度補正された出力原稿画像が生成される。その後、ステップS2509で、地紋印刷を終了する。
【0139】
以上のように、変形例2の判断に加え、ユーザから地紋濃度調整を実施するか否かの最終判断を受け付けることにより、より好適に地紋合成出力画像を印刷することが可能となる。
【0140】
(変形例4)
変形例4では変形例1の一部動作を変更した例を示す。図26は、変形例4にかかる地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0141】
より具体的には、ステップS2302における判定結果に基づく後続の動作が異なる。なお、他のステップについての動作は変形例1と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0142】
ステップS2602(ステップS2302の判定と同様)において、比較結果がYesの場合には、ステップS2603へ進み地紋合成出力画像の生成時と印刷時の地紋濃度設定を取得する。一方、比較結果がNoの場合には、ステップS2605の閾値パターン取得処理へ進む。
【0143】
つまり、変形例4においては、地紋画像を含む地紋合成出力画像が作成された作成日時と印刷日時とで差が所定の日時より大きい場合においても、地紋濃度設定値が生成時と印刷時とで異なる時、地紋の閾値パターンを変更する。すなわち、可能な限り最新の地紋濃度設定に基づいて、地紋パターンの置換を行う構成となっている。その結果、より好適に地紋合成出力画像の印刷出力結果を取得することが可能となる。
【0144】
(第2実施形態)
第2実施形態では、地紋調整日時と印刷日時との差が所定時間以内であるか否か、および、ユーザによる実施の可否指示に基づいて地紋の濃度補正を実施するか否かを判断する例を示す。図27は、第2実施形態に係る地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0145】
ステップS2701では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0146】
ステップS2702では、文書管理部108に記憶される地紋濃度調整の実施日時と印刷開始日時とが、予め設定した日数以内かどうか比較する。このとき、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時のほか、地紋濃度調整の実施日時や地紋濃度調整値も含まれる。ステップS2702での比較結果に基づき処理ルートが決定される。ステップS2702の比較結果がYesの場合には、ステップS2709の印刷処理へ進む。ステップS2702の比較結果がNoの場合には、ステップS2703へ進む。
【0147】
ステップS2703では、地紋濃度調整の実施時と印刷時の地紋濃度設定を取得する。このとき、地紋画像の潜像部と背景部の両方の地紋濃度設定値を取得することが望ましいが、変動が大きい背景部の設定値のみでもよい。
【0148】
ステップS2704では、地紋濃度調整の実施時の濃度設定と印刷時の濃度設定とが同一か否かを比較する。ステップS2704の比較結果がYesの場合には、ステップS2709の印刷処理へ進む。ステップS2704の比較結果がNoの場合には、ステップS2705へ進む。
【0149】
ステップS2705では、図示しないUI部(表示部など)により、ユーザに対し地紋濃度調整の実施を喚起する旨を表示する。
【0150】
ステップS2706では、地紋濃度調整実施に有無を確認する。その結果が、Noの場合には、ステップS2709の印刷処理へ進む。Yesの場合には、ステップS2705へ進む。
【0151】
ステップS2707では、取得した生成時と印刷時の地紋濃度設定値に基づいて、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0152】
ステップS2708では、ステップS2704で取得した地紋濃度設定値と、ステップS2705で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0153】
ステップS2709では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2710で、濃度補正された出力原稿画像が生成される。その後、ステップS2711で、地紋印刷を終了する。
【0154】
以上説明したとおり第2実施形態に係る印刷装置によれば、地紋濃度調整の実施日時と印刷日時との差に基づいて、生成時と印刷時の地紋濃度設定値を参照し、地紋の閾値パターンを変更する。そのようにすることで、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することが出来る。また、ユーザから地紋濃度調整を実施するか否かの最終判断を受け付けることにより、より好適に地紋合成出力画像を印刷することが可能となる。
【0155】
(第3実施形態)
第3実施形態では、印刷装置の濃度調整の実施の有無と地紋濃度調整の実施の有無に基づいて地紋の濃度補正を実施するか否かを判断する例を示す。図28は、第3実施形態に係る地紋画像出力時の濃度調整を実施する手順を示すフローチャートである。
【0156】
ステップS2801では、ユーザインターフェース等からの入力を受け、地紋印刷を開始する。
【0157】
ステップS2802では、文書管理部108に記憶される地紋濃度調整の実施日時が印刷装置の濃度調整の実施日時より以前かどうかを比較する。このとき、地紋合成出力画像の生成時の情報は、文書管理部108に記憶してもよいし、また、地紋画像生成部101に記憶してもよい。あるいは、地紋合成出力画像を記憶する記憶部107に保持してもよい。いずれの場合も、地紋合成出力画像とその生成時の情報が関連付けられていればよい。なお、生成時の情報には、生成日時のほか、地紋濃度調整の実施日時や地紋濃度調整値も含まれる。ステップS2802での比較結果に基づき処理ルートが決定される。ステップS2802の比較結果がNoの場合には、ステップS2807の印刷処理へ進む。ステップS2802の比較結果がYesの場合には、ステップS2803へ進む。
【0158】
ステップS2803では、図示しないUI部(表示部など)により、ユーザに対し地紋濃度調整の実施を喚起する旨を表示する。
【0159】
ステップS2804では、地紋濃度調整実施に有無を確認する。その結果が、Noの場合には、ステップS2807の印刷処理へ進む。Yesの場合には、ステップS2805へ進む。
【0160】
ステップS2805では、地紋印刷データの生成時と最新の地紋濃度設定値から、両者の潜像閾値パターンと背景閾値パターンを取得する。
【0161】
ステップS2806では、ステップS2804で取得した地紋濃度設定値とステップS2805で取得した閾値パターンとから、地紋合成出力画像の地紋画像について濃度補正を実施する。この濃度補正方法の詳細は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0162】
ステップS2807では、濃度補正された地紋画像を含む地紋合成出力画像を印刷する。その結果、ステップS2808で、濃度補正された出力原稿画像が生成される。その後、ステップS2809で、地紋印刷を終了する。
【0163】
以上説明したとおり第3実施形態に係る印刷装置によれば、印刷装置の濃度調整の実施の有無と地紋濃度調整の実施の有無とに基づいて、生成時と印刷時の地紋濃度設定値を参照し、地紋の閾値パターンを変更する。そのようにすることで、地紋の機能を損なうことのない適切な画像濃度の地紋合成画像を印刷出力可能とする技術を提供することが出来る。また、ユーザから地紋濃度調整を実施するか否かの最終判断を受け付けることにより、より好適に地紋合成出力画像を印刷することが可能となる。
【0164】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また、一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0165】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するコンピュータプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置が、供給されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0166】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0167】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどがある。
【0168】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される。その他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0169】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】第1実施形態に係る印刷装置のハードウェア構成図である。
【図2】第1実施形態に係る印刷装置の地紋画像生成部の処理を示すフローチャートである。
【図3】渦巻き(集中)型ディザマトリックスの一例を示す図である。
【図4】渦巻き型ディザマトリックスを用いた閾値パターンの一例を示す図である。
【図5】Bayer型ディザマトリックスの一例を示す図である。
【図6】Bayer型ディザマトリックスを用いた閾値パターンの一例を示す図である。
【図7】地紋画像の一例を示す図である。
【図8】地紋画像の濃度調整方法を示すブロック図である。
【図9】地紋画像の濃度調整方法に用いられるパッチの一例を示す図である。
【図10】濃度調整機構を備えら印刷装置のハードウェア構成図である。
【図11】地紋画像の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図12】原稿画像の濃度補正の構成を示すブロック図である。
【図13】原稿画像の濃度補正に用いる濃度補正部の構成を示す図である。
【図14】原稿画像の濃度補正に用いる濃度パッチを示す図である。
【図15】原稿画像の濃度補正の実施対象となるプリンタの濃度特性を示す図である。
【図16】原稿画像の濃度補正の実施対象となるプリンタの濃度補正特性を示す図である。
【図17】図9に示すパッチの具体例を示す図である。
【図18】地紋機能の効果を示す図である。
【図19】背景濃度が上昇し、地紋機能の効果が不十分な例を示す図である。
【図20】地紋の濃度調整の方法を示す図である。
【図21】地紋の濃度調整の方法を示す図である。
【図22】第1実施形態における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図23】変形例1における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図24】変形例2における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図25】変形例3における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図26】変形例4における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図27】第2実施形態における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図28】第3実施形態における地紋の濃度調整方法を示すフローチャートである。
【図29】第1実施形態に係る印刷装置の地紋パターンの検出方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像部と背景部とを含む地紋画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記地紋画像データの印刷出力が指示された場合、前記地紋画像データが生成された時の地紋濃度設定値と、前記印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値とを比較する比較手段と、
前記比較手段により前記地紋濃度設定値が同一ではないと判定された場合、前記地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンを濃度の異なる他の画像パターンで置換する置換手段と、
潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンが置換された前記地紋画像データを画像形成部により印刷出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記記憶手段に記憶された前記地紋画像データの印刷出力が指示された場合、前記置換手段は、前記生成された時の地紋濃度設定値に対応する画像パターンを、前記印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値に対応する画像パターンに置換することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
さらに、
前記地紋画像データが生成された時の時刻情報と前記地紋画像データが印刷される時の時刻情報とに基づいて、前記地紋画像データの生成からの経過時間が所定の経過時間を超えるか否かを判定する判定手段を備え、
前記置換手段は、前記判定手段により前記経過時間が前記所定の経過時間を超えると判定され、かつ、前記比較手段により前記地紋濃度設定値が同一でないと判定された場合に前記置換を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
さらに、
前記画像形成部における画像形成濃度の変化を補償するため、前記地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像濃度を調整する地紋濃度調整手段と、
前記判定手段により前記経過時間が前記所定の経過時間を超えると判定された場合に、ユーザに対し前記地紋濃度調整手段による地紋濃度調整処理を実行するか否かを問い合わせる問合せ手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
潜像部と背景部とを含む地紋画像データを記憶部に記憶する記憶制御工程と、
前記記憶部に記憶された前記地紋画像データの印刷出力が指示された場合、前記地紋画像データが生成された時の地紋濃度設定値と、前記印刷出力が指示された時の地紋濃度設定値とを比較する比較工程と、
前記比較工程により前記地紋濃度設定値が同一ではないと判定された場合、前記地紋画像データに含まれる潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンを濃度の異なる他の画像パターンで置換する置換工程と、
潜像部および背景部の少なくとも一方の画像パターンが置換された前記地紋画像データを画像形成部により印刷出力する制御工程と、
を備えることを特徴とする印刷装置の制御方法。
【請求項6】
コンピュータを請求項1乃至4の何れか一項に記載の印刷装置の各手段として機能させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−109753(P2010−109753A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280273(P2008−280273)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】