説明

印刷装置および制御方法

【課題】 ロール紙に印刷を行う装置において消費電力をこれまで以上に抑制することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】 この印刷装置は、ロール紙を給紙する給紙手段と、主走査方向への印刷中はロール紙の搬送を停止させ、主走査方向への印刷終了後、副走査方向へロール紙を所定の送り量ほど搬送する搬送手段と、給紙手段と搬送手段との間に配置され、搬送手段が給紙を停止させたことにより弛むロール紙にテンションを付加するテンション付加手段とを含む。このテンション付加手段は、ロール紙の搬送路の一部を形成するテンションガイド板10と、テンションガイド板10と接続されるスプリング11とを含み、スプリング11がロール紙の弛みに応じてテンションガイド板10を所定方向へ移動させる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を給紙するための給紙ローラを駆動する給紙モータの消費電力を低減させることができる印刷装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
企業や一般家庭へのPCやデジタルカメラ等の普及により、プリンタや、プリンタ機能を備えた複合機も普及している。このプリンタは、その印字方式により、熱転写方式、インクジェット方式、ドットインパクト方式、電子写真方式がある。その中で、一般家庭では、インクジェット方式のプリンタが広く使用されている。このインクジェット方式のプリンタは、近年、画素の高密度化や印刷速度の向上が急速に進み、デジタルカメラ等の急速な普及に伴い、写真プリンタとして応用されている。
【0003】
インクジェット方式のプリンタは、インクを微滴化し、それをプリント媒体に直接吹き付けて印刷を行う装置である。この装置は、電子写真方式のプリンタのように、加熱定着処理が不要で、機構が単純であるため、安価で提供でき、多色のカラー印刷の実現も比較的容易である。この方式では、小型プリンタとしてオンデマンド型が主流となっており、そのオンデマンド型には、ピエゾ素子をインクが充填された微細管に取り付け、このピエゾ素子に電圧を印加し、ピエゾ素子を変形させることにより、インクを管外へ吐出させるピエゾ方式と、ピエゾ素子に代えてヒータを取り付け、瞬時に加熱し、インク内に気泡を発生させることにより、インクを管外へ吐出させるサーマル方式とがある。
【0004】
インクジェット方式のプリンタは、こういった方式のプリントヘッドを用い、プリント媒体に印刷を行うが、その他の機構として、給紙機構、紙送り機構、キャリッジ機構等を備えている。このプリンタは、こういった機構の駆動に専用のモータ等を配置し、最適なタイミングで動作させることにより、高速化および高精度な紙搬送を達成している。
【0005】
しかしながら、高速化および高精度な紙搬送を実現するためには、同時に駆動されるモータ類が増加してピーク電力が上昇し、電源が大型化し、それに伴う装置も大型化するという問題が生じていた。
【0006】
そこで、複数の駆動源の電力配分を最適化することで、低電力で高速化および高精度なプリンタが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1には、キャリッジが動作中かつ紙送り機構が駆動中である場合は低速で給紙し、キャリッジも紙送り機構も停止状態であるときは高速で給紙を行うことが開示されている。
【0007】
このプリンタは、給紙機構、紙送り機構、キャリッジ機構部等に専用のモータを配置してもそれぞれの制御部の競合状態を判定して、その時点で最適な電力を供給するような電力配分判定手段を持つことで、上記の低電力で高速化および高精度なプリンタを実現している。
【0008】
消費電力を抑制するための技術ではないが、用紙すべりがなく、正確なバンド送りを可能とする画像形成装置が提案されている(特許文献2参照)。この画像形成装置は、記録媒体としてロール紙を用い、記録ヘッドに対してロール紙を搬送しながら記録ヘッドによりロール紙上に帯状画像部分を逐次記録していく装置で、画像形成に先だって、記録ヘッドを通過する前のロール紙部分に少なくとも複数の帯状画像部分に相当する長さ分以上の弛みを形成し、画像形成時には、ロール紙の弛み部分を搬送しながら記録ヘッドによりロール紙上に複数の帯状画像部分を逐次記録するように構成されている。
【0009】
記録媒体としてロール紙を用いる場合、巻き数が相当多く、かなりの重量があるため、ロール紙から用紙を引き出そうとする際、用紙を静止状態から移動させ再び静止状態とするためには加速的に動かす必要があり、その結果、ロール紙によるバックテンションを生じ、用紙すべりの発生原因となっている。上記装置は、このバックテンションを生じさせないようにし、用紙すべりを未然に防止することができる装置とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の上記プリンタは、重いロール紙の給紙および停止を繰り返す間欠駆動するために、給紙モータを急に停止させたり、急に動作させたりすることで電力を大幅に消費してしまう等の問題があった。
【0011】
一方、上記の画像形成装置は、弛みを生じさせているため、キャリッジが動作中かつ紙送り機構が駆動中、重いロール紙を間欠駆動することはない。
【0012】
しかしながら、上記の画像形成装置は、適宜弛みを持たせるために、適宜ロール紙を一度所定長さほど引き出し、再び巻き戻す処理を行う必要があり、この処理は重いロール紙の給紙および停止を伴う間欠駆動であるため、このときに大幅に電力を消費してしまう。
【0013】
その結果、これらの装置では消費電力を十分に抑制することができず、装置の小型化も実現することができない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記課題に鑑み、給紙モータの消費電力を低減させるために給紙モータを出来るだけ連続的に動作させ、モータの急加速や急停止を行わないような構成とした印刷装置を提供する。
【0015】
すなわち、その印刷装置は、ロール紙を給紙する給紙手段と、主走査方向への印刷中はロール紙の搬送を停止させ、主走査方向への印刷終了後、副走査方向へロール紙を所定の送り量ほど搬送する搬送手段と、給紙手段と搬送手段との間に配置され、搬送手段が給紙を停止させたことにより弛むロール紙にテンションを付加する(張りを与える)テンション付加手段とを含む構成とする。なお、ロール紙の両端にフランジをはめ込み、受け台にセットしてロール紙を引き出して給紙する構成であり、給紙精度を高めるために、給紙手段へ供給されるロール紙にテンションが付加された状態が好ましく、バックテンションが生じることが必要とされる。
【0016】
テンション付加手段は、例えば、ロール紙の搬送路の一部を形成するテンションガイド板と、そのテンションガイド板と接続され、ロール紙の弛みに応じて、そのテンションガイド板を所定方向へ移動させる弾性体とを含む構成とすることができる。弾性体は、ばねやゴム等とすることができる。
【0017】
印字方法は、解像度等によって変わり、この解像度等により紙の送り量も変わってくる。そして、その送り量によって給紙手段を連続動作させた場合よりも、間欠動作させた場合のほうが、消費電力が少なくなる場合がある。そこで、印刷装置は、解像度を含む印刷設定情報に基づいて送り量を計算し、計算した送り量から給紙手段を連続動作させるか、間欠動作させるかを決定する動作決定手段をさらに含むことができる。
【0018】
印刷装置は、第1制御手段をさらに備えることができ、この第1制御手段は、上記の動作決定手段により連続動作させると決定されたことを受けて、その送り量と、搬送手段がその送り量ほど搬送する搬送時間と主走査方向へ印刷する印刷時間とからなる1回の間欠動作時間とから、ロール紙の給紙速度を計算し、給紙手段を給紙速度で動作させることができる。
【0019】
上記のテンション付加手段は、ロール紙の弛み量を検出する検出手段をさらに含むことができる。印刷装置は、第2制御手段を備えることができ、この第2制御手段は、上記の動作決定手段により間欠動作させると決定されたことを受けて、給紙手段により所定の弛み量とさせた後、給紙手段を停止させ、定期的に送り量と弛み量とを比較し、送り量が弛み量以上になったことを検知して、給紙手段を起動させ、所定の弛み量になるまで動作させることができる。
【0020】
この検出手段は、例えば、テンションガイド板の長手方向の一端と連結され、テンションガイド板の移動に伴って回転する回転部と、ロール紙の弛みがないときのテンションガイド板の位置を示すホームポジションパターンと、一定間隔で縁部に設けられる回転角度算出用パターンとを備えるホイールと、移動されたテンションガイド板の位置を検出する位置検出手段とを含む構成とすることができる。この検出手段は、位置検出手段により検出された位置とホームポジションパターンと回転角度算出用パターンとから得られる回転角度から、テンションガイド板の長手方向の長さを用いて、弛み量を計算する。
【0021】
本発明は、上記の印刷装置のほか、ロール紙に印刷を行う印刷装置の消費電力を抑制するために、該ロール紙の搬送を制御する方法も提供することができる。この方法は、上記の各手段が行う処理を、処理ステップとして含むものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の印刷装置の一実施形態を示すインクジェット方式のプリンタの全体構成図。
【図2】ロール給紙装置の詳細な構成を例示した図。
【図3】インクジェットプリンタの給紙部の構成を詳細に示した図。
【図4】検出手段としてのエンコーダの構成を例示した図。
【図5】給紙モータによる搬送制御を示したフローチャート図。
【図6】解像度と送り量との関係を示した図。
【図7】連続搬送を行う場合の制御を示したフローチャート図。
【図8】図7に示す制御におけるレジストモータ、キャリッジ駆動モータ、給紙モータの動作および停止のタイミングを示したタイミングチャート図。
【図9】間欠搬送を行う場合の制御を示したフローチャート図。
【図10】図9に示す制御におけるレジストモータ、キャリッジ駆動モータ、給紙モータの動作および停止のタイミングを示したタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の印刷装置の一実施形態を示すインクジェット方式のプリンタの全体構成図である。このプリンタは、3つのロール給紙装置と、ロール給紙装置を駆動させるための給紙モータ7と、上側に配置される2つのロール給紙装置を収納する上側ロールトレイ8と、下側に配置される1つのロール給紙装置を収納する下側ロールトレイ9とを備えている。
【0024】
ロール給紙装置は、中空円筒状の紙管の周囲に何周にもわたって巻かれたロール紙2の両側に設けられ、紙管に挿入される突出部とロール紙2が両側へ崩れないように支持する円形の支持面とを備えるフランジ1と、ロール紙2がセットされるフランジ受け台3と、給紙モータ7により回転し、給紙方向へロール紙2を搬送する給紙ローラ6と、給紙モータ7により回転し、給紙方向とは反対方向へロール紙2を搬送する巻き戻しローラ4と、フランジ1を支持し、フランジ1の回転に従って回転するフロントコロ5およびリアコロ24とを備えている。なお、このロール給紙装置および給紙モータ7は、ロール紙2を給紙する給紙手段として機能する。
【0025】
このロール給紙装置は、図2に示すように、ロール紙2の両端にフランジ1をはめ込み、フランジ受け台3にセットしてロール紙2を引き出して給紙する構成であり、給紙精度を高めるために、給紙手段へ供給されるロール紙2にテンションが付加された状態が好ましく、バックテンションが生じることが必要とされる。
【0026】
再び図1を参照して、プリンタは、さらに、ロール給紙装置から用紙搬送路へと給紙されたロール紙2の弛みを調整する、用紙搬送路の途中に設けられたテンション付加手段と、テンション付加手段の後流に配置され、搬送されるロール紙2を一時停止させて斜行等の搬送姿勢を調整し、印刷タイミングに合わせて給紙するレジストローラ13と、レジストローラ13に対向して配置され、レジストローラ13の回転に従って回転するとともにロール紙2を平らにするために加圧するレジスト加圧ローラ14と、そのレジストローラ13を回転させるレジストモータ12とを備えている。
【0027】
用紙テンション付加手段は、内周側へ移動可能な搬送ガイド板10と、その搬送ガイド板10に一端が連結されたスプリング11とから構成され、搬送されるロール紙2に対し、テンションを付加する(張りを与える)ことができるようにされている。この用紙テンション付加手段は、ロール紙2に対し、常にテンションを付加することで、微少送り等の少ない搬送精度を高めることができる。なお、搬送ガイド板10に連結されるものは、弾性体とされ、ばねであるスプリング11に限られるものではなく、ゴムであってもよい。
【0028】
また、プリンタは、レジストローラ13により搬送されるロール紙2が載置され、複数の穴が形成されたプラテン板と、プラテン板の下側に設置されるチャンバー18と、チャンバー18の下側に設置される吸引ファン19とを備えている。
【0029】
吸引ファン19は、チャンバー18内の空気を吸引し、チャンバー18内に負圧を形成する。チャンバー18上にあるプラテン板上に載置されたロール紙2は、チャンバー18内に形成された負圧により、プラテン板に形成された複数の穴を介して吸い付けられ、用紙の平面度が維持される。すなわち、レジストローラ13を通過したロール紙2は、給紙されるまでは巻かれていたため、丸まろうとするが、このチャンバー18によりプラテン板上に吸い付けられ、水平に維持される。
【0030】
プリンタは、このプラテン板の上部に配置されたインクを吐出するためのプリントヘッド15を搭載したキャリッジ16と、このキャリッジ16を所定方向に移動させるために設けられる主走査ステー17と、印刷後のロール紙2を所定長さにカットするカッター20と、カットされた用紙が排出される排紙トレイ22と、排紙トレイ22へ用紙を搬送する反転用紙ガイド21とをさらに備えている。
【0031】
キャリッジ16は、図示しないキャリッジ駆動モータにより、主走査ステー17に沿って用紙の幅方向である主走査方向へ移動し、インクをプリントヘッド15からプラテン板に吸い付けられたロール紙2へ向けて吐出することにより、そのロール紙2に印刷を行う。ロール紙2は、プリントヘッド15の幅に対応してキャリッジ16が移動するたびに、主走査方向とは垂直な用紙の長さ方向である副走査方向へレジストローラ13により所定長さ分だけ送り出され(間欠搬送)、その後、再びキャリッジ16が主走査方向へ移動し、用紙へ印刷が行われる。
【0032】
このため、レジストローラ13およびレジストローラ13を駆動させるためのレジストモータ12は、主走査方向への印刷中はロール紙2の搬送を停止させ、その終了後はロール紙2を副走査方向へ所定の送り量ほど搬送する搬送手段として機能する。
【0033】
次に、図3を参照して、プリンタの給紙部の構成および動作について詳細に説明する。この図3は、インクジェットプリンタの給紙部の構成を詳細に示した図である。この給紙部は、ロール給紙装置と、給紙モータ7と、テンション付加手段と、レジストローラ13およびレジスト加圧ローラ14とを含んで構成されている。
【0034】
搬送ガイド板10は、少なくともロール紙2の幅と同じ幅を有し、搬送方向へ延ばされ、いずれの位置に移動してもロール紙2がスムーズに搬送されるように、その搬送方向へ延びる一端が矢線Rに示す内周方向へ曲げられた形とされている。また、搬送ガイド板10は、スプリング11により、その内周方向と矢線Rとは反対方向である矢線Sに示す外周方向とに移動可能とされ、ロール紙2に弛みを持たせる場合には、搬送ガイド板10を矢線Sに示す外周方向へ移動させ、弛みを持たせない場合は、搬送ガイド板10を矢線Rに示す内周方向へ移動させることができる。
【0035】
具体的には、給紙ローラ6とレジストローラ13によりロール紙2が張った状態である場合は、スプリング11が伸び、矢線Rに示す方向へ搬送ガイド板10が移動する。一方、レジストローラ13の回転が停止し、給紙ローラ6の回転が継続している場合、ロール紙2に弛みが生じ、その弛み量に応じてスプリング11が元に戻ろうとして縮み、矢線Sに示す方向へ搬送ガイド板10が移動する。ここでは、搬送ガイド板10が矢線Rに示す方向へ移動する際、スプリング11が伸びる構成として説明したが、縮む構成であってもよいものである。
【0036】
ここで、テンション付加手段を設ける理由について説明する。一般に、印刷を行う場合、レジストローラ13の回転を停止させ、キャリッジ16を主走査ステー17に沿って主走査方向へ移動させている間、給紙ローラ6を停止させる。そして、その主走査方向への印刷が終了すると、副走査方向へ1バンド分移動させるため、レジストローラ13を回転させ、同時に給紙ローラ6も回転させる。これを繰り返すことにより、印刷を実行する。
【0037】
しかしながら、この印刷においてロール紙2を使用する場合、ロール紙2は重いため、給紙ローラ6をこのように駆動と停止を繰り返すことは、急加速と急停止を繰り返すことになり多大な電力を消費する。そこで、レジストローラ13の回転を停止させている間も給紙ローラ6を回転させ続け、給紙されたロール紙2は、給紙ローラ6とレジストローラ13との間に弛ませることにより、消費電力を抑制する。
【0038】
給紙ローラ6とレジストローラ13との間の用紙搬送路には、給紙ローラ6から搬送方向へ伸びた状態の用紙が、その搬送方向へその状態を維持しながらレジストローラ13へ搬送されるようにされており、図1ではその間に1組のローラが設けられている。このため、ロール紙2を弛ませるだけでは、この1組のローラで詰まり等を生じさせ、また、レジストローラ13へ搬送する際にも、用紙の長手方向が搬送方向に向けて搬送されず、斜めに搬送されることもありうる。これでは、望む印刷結果を得ることができず、用紙の無駄が生じる。したがって、上記の少ない搬送精度を高めるという効果のほか、この斜めに搬送されることを防止しつつ弛みを持たせるために、テンション付加手段が設けられる。テンション付加手段は、ロール紙2の弛みに応じて弾性体であるスプリング11が搬送ガイド板10を外周方向である矢線Sに示す方向へ移動させ、弛むロール紙2にテンションを付加する。
【0039】
給紙ローラ6の回転による給紙速度と、レジストローラ13の回転による給紙速度とを同じにすると、レジストローラ13が間欠的に駆動するため、ロール紙2の弛み量が増加し続けてしまう。したがって、給紙ローラ6の回転による給紙速度をレジストローラ13より小さくすることができるが、あまり低速にしすぎると、給紙ローラ6の回転および停止を繰り返す間欠搬送の場合に比較して、この低速で連続搬送する場合、消費電力が大きくなってしまうことがある。そこで、解像度等の条件に応じて、間欠搬送するか、連続搬送するかを決定し、連続搬送する場合に、上記のテンション付加手段を利用することができる。
【0040】
テンション付加手段を利用する場合、搬送ガイド板10を移動させ、ロール紙2に弛みを持たせることができるが、その弛み量は、搬送ガイド板10に接続されるエンコーダ26により検出することができる。したがって、プリンタは、エンコーダ26といった弛み量を検出する手段をさらに備えることができる。
【0041】
エンコーダ26は、エンコーダホイールと、エンコーダセンサとを含み、図4(a)に示すように、エンコーダホイール26aは、円形とされ、その縁部に一定間隔でスリット状のパターン26bが形成され、また、搬送ローラのホームポジションを定めるためのパターン26cが形成されたものを用いることができる。図示しないエンコーダセンサは、これらのパターン26b、26cを検出することで、搬送ローラの搬送量や回転角度等を求めることができ、これらを管理することを可能にする。
【0042】
図4(b)を参照して、エンコーダ26を使用して回転角度を検出し、搬送量を算出する方法について説明する。エンコーダ26が、図4(b)に示すように、搬送ガイド板10が支点を中心として回転し、それにより移動する構成である場合、ロール紙2に弛みを持たせない状態にある、搬送ガイド板10が実線で示された位置を、ホームポジション(HP)に設定する。図4(b)では、実線で示される搬送ガイド板10の内周方向に向いた面が、HPを定めるためのパターン26cに一致しているのが示されている。
【0043】
エンコーダ26の仕様、例えば1つのパターン26b間の間隔(ピッチ幅)等と、搬送ガイド板10の支点からの長さとから、任意の回転角度ほど移動させた場合の搬送ローラの搬送量を求めることができる。このようにして算出された値は、回転角度とともに、CPUが制御可能な不揮発性メモリにテーブルとして格納しておき、エンコーダセンサにより回転角度を検出した場合にそれを使用して計算することができる。
【0044】
給紙モータ7による搬送制御を、図5に示すフローチャートを参照しながら説明する。この処理は、ステップ500から開始し、まず、ステップ505において、印刷を実行するオペレータから解像度等を受け付け、印刷モードを設定する。次に、ステップ510において、設定された印刷モードの解像度等からレジスト送り量を求める。
【0045】
ここで、レジスト送り量とは、レジストローラ13により副走査方向へ搬送される用紙量を指し、1バンド分の送り量である。解像度が変わると、印字方法が変わり、また、印刷モードがカラーか、モノクロかによっても送り量が変わる。例えば、図6に示すように、解像度が300dpiである場合は、レジスト送り量が64.7mmで、解像度がその2倍の600dpiになると、レジスト送り量はほぼその半分の32.4mmになる。そして、解像度が4倍の1200dpiになると、レジスト送り量は約1/4の16.2mmになり、微小送りモードを設定した場合は、レジスト送り量が4mmとなる。
【0046】
詳細に説明すると、副走査300dpi(モノクロの1パス、1/1インターレース、1スキャン)とした場合、副走査幅は764ノズルを使用して、ノズルピッチ分64.7mmで印字する。これに対し、2スキャンの副走査600dpiとした場合は、副走査幅を32.4mm分ずらして2回に分けて印字し、600dpiを実現している。
【0047】
したがって、レジスト送り量は、印字方向が片方向か、双方向かによって、スキャン回数が1、2、4、8、16回といった回数によって、インタレースが1/1か、1/2か、1/4かによっても変動する。
【0048】
再び図5を参照して、ステップ510ではさらに、求めたレジスト送り量が33mm以上であるかを判定する。33mm以上であると判定した場合、ステップ515へ進み、給紙ローラ6がロール紙2を給紙および停止を繰り返す間欠搬送するように給紙モータ7を間欠的に動作させる。
【0049】
一方、ステップ510で、33mm未満と判定した場合は、ステップ520へ進み、レジスト送り量が16mm以上であるかを判定する。16mm以上であると判定した場合は、ステップ525へ進み、給紙モータ7を連続動作させる。
【0050】
16mm未満と判定した場合、ステップ530へ進み、給紙ローラ6が間欠搬送するように給紙モータ7を間欠的に動作させる。搬送が終了したところで、ステップ535においてこの処理を終了する。
【0051】
このようなレジスト送り量の判定を設けたのは、レジスト送り量が33mm以上、16mm未満の場合、給紙モータ7を連続動作させ、連続搬送を行うより、そのつど動作させ、間欠搬送を行うほうが、消費電力が少なくて済むからである。なお、レジスト送り量が16mm以上33mm未満の場合は、間欠搬送より連続搬送のほうが、電力消費量が少ないため、連続搬送を行うように制御される。
【0052】
この条件は、あくまで一例であり、その他の条件に基づき、連続搬送するか間欠搬送するかの判定を行うことも可能である。なお、この判定処理は、解像度等を含む印刷設定情報に基づき送り量を計算し、その送り量から連続搬送するか、間欠搬送するかを決定する動作決定手段により実現することができる。この手段は、プログラムとして構成し、そのプログラムをCPUが実行することにより実現することができる。
【0053】
連続搬送を行う場合の制御を、図7に示すフローチャートを参照して詳細に説明する。この処理は、ステップ700から開始し、ステップ705で、オペレータが印刷開始コマンドを選択し、それを受け付ける。ステップ710で、レジストモータ12がONになるまで、給紙モータ7の速度を予め設定された速度Z0に設定して給紙モータ7を動作させ、ロール紙2の給紙を行う。ステップ715で、レジストセンサがONになると、ステップ720で、レジストモータ12が間欠動作を開始する。
【0054】
すなわち、ロール紙2の先端がレジストセンサにより検出可能な領域に入ると、レジストモータ12がONにされ、ロール紙2が所定位置に到達したとき、レジストモータ12を停止して、ロール紙2の搬送を一時停止し、主走査方向への印字を開始する。その後は、ステップ725で、キャリッジ16を主走査方向へ移動させ、その主走査方向への印字を行い、それが終了すると、副走査方向へ用紙を移動させるため、再びレジストモータ12を動作させ、所定位置まで移動させ、その位置に到達したとき、再びレジストモータ12を停止し、主走査方向への印字を行う。これを繰り返し、用紙全体への印字を行う。
【0055】
そのレジストモータ12が動作を開始する前に、ステップ730で、次のレジスト送り量X0と、現在のレジストローラ13により所定の送り量ほど搬送する搬送時間と主走査方向へ印刷する印刷時間との和である1回の間欠動作時間Y1から給紙モータ7の速度を求める。
【0056】
レジスト送り量および搬送時間は、上述した印字方向、解像度、スキャン回数、インタレース、モノクロ/カラーによって変動することから、これらの条件設定を参照し、決定するが、主走査方向へ印刷する印刷時間も、条件によって変動するため、条件設定を参照し、決定を行う。参照する条件は、印字領域となる用紙幅、印字後の乾燥時間が異なることから、普通紙、トレペ、フィルム等の紙の種類、空吐出等の維持動作の有無を挙げることができる。
【0057】
ステップ735で、求めたその速度で給紙モータ7を動作させる。ステップ735でロール紙2が所定位置に到達し、レジストモータ12が停止している間、搬送ガイド板10を外周方向へ移動させ、ロール紙2を弛ませる。このとき、同時に、レジスト間欠動作にて用紙を印字位置まで搬送し、キャリッジ間欠動作にて印字が行われる。
【0058】
ステップ740で、印字が終了したかの判定を行い、印字が終了した場合は、ステップ745へ進み、用紙を排出してこの処理を終了する。印字が終了していない場合は、ステップ720へ戻り、ステップ720〜740までの処理を繰り返す。
【0059】
このときのレジストモータ12、キャリッジ駆動モータ、給紙モータ7の動作および停止のタイミングを、図8に示すタイミングチャートを参照して説明する。まず、給紙モータ7を予め設定された初期速度Z0で動作させ、ロール紙2の先端が検出される位置にまで搬送されるとレジストセンサがONにされ、給紙モータ7の速度が計算され、その速度になるように制御される。
【0060】
このときの速度Z1は、上記で求めた間欠動作時間Y1と、次の間欠動作時間Y2におけるレジスト送り量X1とを用いて次式により求めることができる。
【0061】
【数1】

【0062】
図8では、求めたZ1が初期速度Z0より小さいことから、Z1へ減速し、Z1の速度に維持する。一方、レジストモータ12は、動作を開始し、A-A’で示される時間だけ動作し、A’に到達したところで一時停止する。それに応答して、キャリッジ駆動モータが動作を開始し、主走査方向への印字を開始する。この主走査方向へ印字している間、次の用紙の先端を検出し、レジストセンサがONにされると、速度Z2が求められ、給紙モータ7の速度がそのZ2に減速される。
【0063】
給紙モータ7の速度がZ2へ減速されている間に、主走査方向への印字が終了し、キャリッジ駆動モータは、停止される。そして、給紙モータ7の速度がZ2になると、レジストモータ12が動作を再開し、X1だけ用紙を搬送する。搬送が終了すると、再びレジストモータ12は一時停止し、キャリッジ駆動モータが動作を開始する。なお、これらの制御は、制御手段により実現することができ、制御回路やこの制御を実現するための制御プログラムを実行するCPU等の制御手段からの指示により各モータを動作させることができる。
【0064】
これまで、連続搬送を行う場合の制御について詳細に説明してきたが、以下、間欠搬送を行う場合の制御について説明する。
【0065】
図9は、給紙モータ7が間欠動作をする場合の処理の流れを示したフローチャート図である。ステップ900からこの処理を開始し、まず、ステップ905において、オペレータから印刷開始コマンドを受け付け、ステップ910で、給紙モータ7が動作を開始する。ステップ915で、テンション付加手段の弛み量が33mm以上となるまで給紙モータ7を初期速度Z0で動作させ、用紙を搬送する。このステップ915では、用紙の弛み量が33mm以上かどうかを判定し、33mm未満なら、ステップ905へ戻り、給紙モータ7を動作させ、33mm以上になったところで、ステップ920へ進み、給紙モータ7を停止させる。
【0066】
次に、ステップ925で、次回のレジスト送り量と次回の用紙弛み量を求め、弛み量が大きいかを判定する。大きい場合には、ステップ930へ進み、レジストモータ12を間欠動作させ、ステップ935で、キャリッジ16を間欠動作させる。小さい場合には、ステップ940へ進み、用紙の弛み量が33mmとなる速度で給紙モータ7を動作させる。
【0067】
ステップ945で、印字が終了したかを判定する。その用紙のすべての印字が終了していない場合は、ステップ925へ戻り、再び弛み量が大きいかを判定する。一方、終了した場合は、ステップ950へ進み、この処理を終了する。
【0068】
このときのレジストモータ12、キャリッジ駆動モータ、給紙モータ7の動作および停止のタイミングを、図10に示すタイミングチャートを参照して説明する。まず、給紙モータ7を予め設定された初期速度Z0で動作し、用紙を搬送する。そして、用紙の弛み量が33mm以上になったと判断すると、給紙モータ7は停止し、次回のレジスト送り量と弛み量を求め、それらを比較する。
【0069】
弛み量が大きい場合、レジストモータ12は、動作を開始し、A-A’で示される時間稼働し、A’に到達したところで一時停止する。それに応答して、キャリッジ駆動モータが動作を開始し、主走査方向への印字を開始する。この主走査方向へ印字している間、さらに次のレジスト送り量と弛み量を求め、それらを比較する。
【0070】
弛み量が大きい場合、レジストモータ12は、動作を開始し、B-B’で示される時間稼働し、B’に到達したところで一時停止する。それに応答して、キャリッジ駆動モータが動作を開始し、主走査方向への印字を開始する。この処理は、弛み量が大きいと判断される間、繰り返される。
【0071】
これに対し、レジスト送り量が大きくなった場合は、レジストモータ12にて送る紙の量が足りなくなるので、給紙モータ7を稼働し、用紙弛み量が33mmになる速度で用紙を搬送する。そして、弛み量が33mmになったところで、給紙モータ7を停止し、上記の比較、レジストモータ12の間欠動作、キャリッジ駆動モータの間欠動作を行う。この処理も、上述した制御手段により実現することができる。
【0072】
これまで本発明を上述した実施の形態をもって説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
1…フランジ、2…ロール紙、3…フランジ受け台、4…巻き戻しローラ、5…フロントコロ、6…給紙ローラ、7…給紙モータ、8…上側ロールトレイ、9…下側ロールトレイ、10…搬送ガイド板、11…スプリング、12…レジストモータ、13…レジストローラ、14…レジスト加圧ローラ、15…プリントヘッド、16…キャリッジ、17…主走査ステー、18…チャンバー、19…吸引ファン、20…カッター、21…反転用紙ガイド、22…排紙トレイ、24…リアコロ、26…エンコーダ、26a…エンコーダホイール、26b、26c…パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2001−71603号公報
【特許文献2】特開平10−147026号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙に印刷を行う印刷装置であって、
前記ロール紙を給紙する給紙手段と、
主走査方向への印刷中は前記ロール紙の搬送を停止させ、前記主走査方向への印刷終了後、副走査方向へ前記ロール紙を所定の送り量ほど搬送する搬送手段と、
前記給紙手段と前記搬送手段との間に配置され、前記搬送手段が給紙を停止させたことにより弛む前記ロール紙にテンションを付加するテンション付加手段とを含む、印刷装置。
【請求項2】
前記テンション付加手段は、前記ロール紙の搬送路の一部を形成するテンションガイド板と、前記テンションガイド板と接続され、前記ロール紙の弛みに応じて前記テンションガイド板を所定方向へ移動させる弾性体とを含む、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置は、解像度を含む印刷設定情報に基づいて前記送り量を計算し、計算した該送り量から前記給紙手段を連続動作させるか、間欠動作させるかを決定する動作決定手段をさらに含む、請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷装置は、前記動作決定手段により前記連続動作させると決定されたことに応答して、前記送り量と、前記搬送手段が該送り量ほど搬送する搬送時間と前記主走査方向へ印刷する印刷時間とからなる1回の間欠動作時間とから、前記ロール紙の給紙速度を計算し、前記給紙手段を前記給紙速度で動作させる第1制御手段をさらに含む、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記テンション付加手段は、前記ロール紙の弛み量を検出する検出手段をさらに含み、
前記印刷装置は、前記動作決定手段により前記間欠動作させると決定されたことに応答して、前記給紙手段により所定の弛み量とさせた後、前記給紙手段を停止させ、定期的に前記送り量と前記弛み量とを比較し、前記送り量が前記弛み量以上になったことを検知して、前記給紙手段を起動させ、前記所定の弛み量になるまで動作させる第2制御手段をさらに含む、請求項3に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記テンションガイド板の長手方向の一端と連結され、前記テンションガイド板の移動に伴って回転する回転部と、前記ロール紙の弛みがないときの前記テンションガイド板の位置を示すホームポジションパターンと、一定間隔で縁部に設けられる回転角度算出用パターンとを備えるホイールと、移動された前記テンションガイド板の位置を検出する位置検出手段とを含み、前記位置検出手段により検出された前記位置と前記ホームポジションパターンと前記回転角度算出用パターンとから得られる回転角度から前記弛み量を計算する、請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
ロール紙に印刷を行う印刷装置の消費電力を抑制するために、該ロール紙の搬送を制御する方法であって、前記印刷装置は、給紙手段と、搬送手段と、テンション付加手段とを含み、
前記給紙手段が、前記ロール紙を給紙するステップと、
前記搬送手段が、主走査方向への印刷中、前記ロール紙の搬送を停止させるステップと、
前記テンション付加手段が、前記搬送手段が給紙を停止させたことにより弛む前記ロール紙にテンションを付加するステップと、
前記搬送手段が、前記主走査方向への印刷終了後、副走査方向へ前記ロール紙を所定の送り量ほど搬送するステップとを含む、制御方法。
【請求項8】
解像度を含む印刷設定情報に基づいて前記送り量を計算し、計算した該送り量から前記給紙手段を連続動作させるか、間欠動作させるかを決定するステップをさらに含む、請求項7に記載の制御方法。
【請求項9】
前記決定するステップにおいて前記連続動作させると決定されたことに応答して、前記送り量と、前記搬送手段が該送り量ほど搬送する搬送時間と前記主走査方向へ印刷する印刷時間とからなる1回の間欠動作時間とから、前記ロール紙の給紙速度を計算し、前記給紙手段を前記給紙速度で動作させるステップをさらに含む、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記決定するステップにおいて前記間欠動作させると決定されたことに応答して、前記給紙手段により所定の弛み量とさせた後、前記給紙手段を停止させ、定期的に前記送り量と前記弛み量とを比較し、前記送り量が前記弛み量以上になったことを検知して、前記給紙手段を起動させ、前記所定の弛み量になるまで動作させるステップをさらに含む、請求項8に記載の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−88366(P2011−88366A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244162(P2009−244162)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】