説明

印刷装置および印刷物生産方法

【課題】細線の画質を向上させる。
【解決手段】1画素分の太さによる所定角度の細線を印刷するためのドットを対象にして、奇数番目のドットであって、印刷ヘッドの往路において形成されるドットを、復路において形成されるようにドットデータに変更を加える。さらに、偶数番目のドットであって、印刷ヘッドの復路において形成されるドットを、往路において形成されるようにドットデータに変更を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷をする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されたシリアル方式のインクジェット式プリンターは、複数のノズルを備えた印刷ヘッドを印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に移動させながら、そのノズルからインクを吐出して、印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−130003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のインクジェット式プリンターは、印刷ヘッドのノズルから吐出されたインクの印刷媒体への着弾位置が目標位置からずれる位置ずれを起こすことがある。例えば、このインクジェット式プリンターは、印刷ヘッドの主走査における往路と復路との両方においてインクを吐出する場合、印刷ヘッドの往路において形成されるドット(以下「往路ドット」と言う。)と、復路において形成されるドット(以下「復路ドット」と言う。)との相対的な位置関係が目標からずれることがある。このようなずれが生じると、画質の劣化につながる。
【0005】
このずれによる画質の劣化は、細い線(以下「細線」と言う。)の場合に特に視認されやすい。また、このずれの原因は、印刷ヘッドの往復によるものだけではなく、4パス方式など、画素を複数の印刷条件に分類して印刷する手法に共通するものである。本発明は上記に鑑み、画素を複数の印刷条件に分類して印刷する場合に、細線の画質を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためのものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
適用例1:画素のドット形成の有無を示すドットデータによって印刷をする際に、画素を印刷条件が異なる複数のグループに分類して印刷をする印刷装置であって、
1画素分の太さの線を印刷するための複数のドットからなる細線ドット群について、前記線の角度が所定角度の場合に、隣接するドット同士が異なる前記グループに分類されるようにドットデータに変更を加えることを要旨とする。
この発明によれば、細線の画質を向上させることができる。そもそも、細線の画質が劣化する原因の一つは、同じ印刷条件によって印刷されるドットが隣接することである。例えば、印刷ヘッドの往復によるずれの場合、ランダムな数の往路ドットが連続したり、ランダムな数の復路ドットが連続したりすると、往路ドットと復路ドットとの切り替わり箇所もランダムに生じる。切り替わり箇所がランダムに生じると、所定角度の細線においては切り替わり箇所におけるずれが視認されやすい。それに対してこの発明によれば、所定角度の細線においては往路ドットと復路ドットとを交互に形成するのでずれが視認されにくくなる。よって、画質が向上する。
【0008】
適用例2:適用例1に記載の印刷装置であって、
前記「所定範囲の角度」とは、印刷をする際の主走査方向に対して、45から135度または、225から315度までの範囲であることを要旨とする。
この発明によれば、本実施形態においてはラスター交互方式を採用しているので、この範囲外の角度においては、ドットが交互に配置される可能性が高く、処理を行わずとも問題が発生しにくい故、処理の対象から除くことによって、より効果が期待できる細線を対象に処理を行い、処理に要する時間を短縮する。
【0009】
適用例3:適用例1または2に記載の印刷装置であって、
前記複数のグループは、第1グループと第2グループとの2つであり、
前記細線ドット群の何れか一端から数えて奇数番目のドットであって、前記第1グループに分類された画素に形成されるように規定されたドットである第1特定ドットを、前記第2グループに分類された画素において形成されるようにドットデータに変更を加える第1変更部と、
前記細線ドット群の何れか一端から数えて偶数番目のドットであって、前記第2グループに分類された画素に形成されるように規定されたドットである第2特定ドットを、前記第1グループに分類された画素において形成されるようにドットデータに変更を加える第2変更部とを備えることを要旨とする。
適用例1または2の発明は、例えば上記のようにして実現できる。
【0010】
適用例4:適用例3に記載の印刷装置であって、
前記第1変更部は、変更後の前記第1特定ドットが形成される画素を、前記第2グループに属する画素の中で、変更前のドットデータにおいて該第1特定ドットが形成される画素から最短距離の画素の集合である第1隣接画素群の中から選択し、
前記第2変更部は、変更後の前記第2特定ドットが形成される画素を、前記第1グループに属する画素の中で、変更前のドットデータにおいて該第2特定ドットが形成される画素から最短距離の画素の集合である第2隣接画素群の中から選択することを要旨とする。
この発明によれば、ドットデータの変更による影響を小さくできる。
【0011】
適用例5:適用例4に記載の印刷装置であって、
前記第1変更部は、前記第1隣接画素群の中で、隣接する一方のドットまでの距離と、他方のドットまでの距離との差が最短となる画素を、前記変更後の第1特定ドットが形成される画素として選択し、
前記第2変更部は、前記第2隣接画素群の中で、隣接する一方のドットまでの距離と、他方のドットまでの距離との差が最短となる画素を、前記変更後の第2特定ドットが形成される画素として選択することを要旨とする。
この発明によれば、ドットの偏在が緩和されるので、画質を向上させることができる。
【0012】
適用例6:適用例3から適用例5の何れか一つに記載の印刷装置であって、
前記第1変更部によって変更された細線ドット群を、前記第1グループの印刷条件によって生じるドット形成位置のずれを補正する位置の画素に形成させる第1補正部と、
前記第2変更部によって変更された細線ドット群を、前記第2グループの印刷条件によって生じるドット形成位置のずれを補正する位置の画素に形成させる第2補正部とを備えることを要旨とする。
この発明によれば、各グループの印刷条件によって生じるドット形成位置のずれを補正できる。
【0013】
適用例7:画素のドット形成の有無を示すドットデータによって印刷をする際に、画素を印刷条件が異なる複数のグループに分類して印刷をする印刷物生産方法であって、
1画素分の太さの線を印刷するための複数のドットからなる細線ドット群について、前記線の角度が所定角度の場合に、隣接するドット同士が異なる前記グループに分類されるようにドットデータに変更を加えることを要旨とする。
この発明によれば、適用例1と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】印刷装置10の概略図。
【図2】印刷処理を示すフローチャート。
【図3】細線ドット群変更処理を示すフローチャート。
【図4】ラスター交互方式において、細線ドット群の形成位置が変更される様子。
【図5】カラム交互方式において、細線ドット群の形成位置が変更される様子。
【図6】たすき方式において、細線ドット群の形成位置が変更される様子。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ハードウェア構成(図1):
図1は、印刷装置10の概略構成図である。印刷装置10は、カラーインクジェット式であり、紙送りモーター74によって印刷用紙Pを搬送する機構と、キャリッジモーター70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド81を駆動してインクを吐出することによってドット形成を行う機構と、制御対象(紙送りモーター74、キャリッジモーター70及び印刷ヘッド81)を制御する制御ユニット30と、コンピューターや記憶媒体(図示なし)から入力画像データを取得すると共に制御ユニット30に供給する画像データ供給部91とを備える。
【0016】
キャリッジ80は、カラーインク用のインクカートリッジ82〜85を搭載する。インクカートリッジ82はシアンインクCを、インクカートリッジ83はマゼンタインクMを、インクカートリッジ84はイエローインクYを、インクカートリッジ85はブラックインクKを収容する。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド81には、先述の各インクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にインクカートリッジ82〜85を上方から装着すると、インクカートリッジ82〜85から印刷ヘッド81へのインク供給が可能となる。
【0017】
制御ユニット30は、CPU40と、ROM51と、RAM52と、EEPROM60とを備える。CPU40は、ROM51に予め記憶された制御プログラムをRAM52に展開すると共に実行することで、紙送りやキャリッジ80の往復動を制御すると共に、印刷ヘッド81を駆動して、印刷用紙Pへのインク吐出を制御する。各ノズルを制御するために、インク吐出用のプログラム(ドライバー)が用いられる。
【0018】
画像データ供給部91が供給する入力画像データは、ベクターデータとしての描画要素データの組み合わせによって構成されている。ベクターデータは、基本図形の何れかによって描画要素を表現するものである。基本図形には、折れ線(線分を含む)、多角形、楕円(円を含む)、ベジエ曲線などがある。これら基本図形には、描画開始座標情報、描画終了座標情報、色情報(RGB値)、太さ情報(線幅を示す数値:単位mm)が含まれる。
【0019】
EEPROM60は、色変換LUT61を記憶している。色変換LUT61は、描画要素データに含まれるRGB形式の色情報を、インクカートリッジ82〜85に収容されたインク(C,M,Y,K)それぞれのインク量を示すインク量セットに変換するためのテーブルである。
【0020】
印刷装置10は、先述した構成を用いて、印刷ヘッド81の往路(図1の矢印F向きへの移動時)と復路(図1の矢印B向きへの移動時)とのそれぞれにおいてインクを吐出することによって印刷を行う。本実施形態においては、往路においてドット形成をするための画素(以下「往路画素」と言う。)と、復路においてドット形成をするための画素(以下「復路画素」と言う。)とが、ラスター交互方式によって分類される。次から、印刷のための処理を詳しく説明する。
【0021】
2.印刷処理(図2):
図2は、印刷処理を示すフローチャートである。この印刷処理は、入力画像データによって表される画像を印刷するためにCPU40が主体となって実行する処理であり、画像データ供給部91から制御ユニット30に入力画像データが供給されたことを契機に実行される処理である。
【0022】
印刷処理を開始すると、入力画像データに対してラスタライズ処理を実行する(ステップS100)。つまり、入力画像データとしてのベクターデータを、各画素について、RGB各色の階調値を示すドットデータに変換する。なお、図2には、ステップS100がサブルーチンを有する処理として示されているが、ラスタライズ処理は既知なのでサブルーチンの内容は説明しない。このことは、下記の色変換処理とハーフトーン処理とについても同じである。
【0023】
続いて、色変換処理を実行する(ステップS200)。つまり、RGB各色の階調値によって示された色情報を、色変換LUT61を用いてCMYK値に変換する。続いて、この色変換されたデータを対象にしてハーフトーン処理を実行する(ステップS300)。つまり、各画素について、CMYKの各色のドットを形成する/しないを示すドットデータを生成する。次に、細線ドット群変更処理を実行する(ステップS400)。
【0024】
図3は、細線ドット群処理を示すフローチャートである。細線ドット群処理を開始すると、ベクターデータを利用して、何れか一つの細線を選択する(ステップS405)。ここで言う細線とは、1画素分の太さを有する線分のことである。複数の細線がある場合における細線の抽出の順番は、描画開始座標のX座標が小さいものから順に選択する。X座標が同じものについてはY座標が小さいものから順に選択する。
【0025】
ただし、所定範囲の角度を持つ細線のみステップS410における抽出対象を行う。ここで言う角度の定義は、通常のX−Y座標系における定義と同じである。図4に示した細線(灰色で着色された画素によって示される線分。詳細後述。)は、始点に対して終点がY方向の負の向きに延びるので、角度が270度である。上記「所定範囲の角度」とは、印刷をする際の主走査方向に対して、45から135度または、225から315度までの範囲である。本実施形態においてはラスター交互方式を採用しているので、この範囲外の角度においては、ドットが交互に配置される可能性が高く、処理を行わずとも問題が発生しにくい故、処理の対象から除くことによって、より効果が期待できる細線を対象に処理を行い、処理に要する時間を短縮する。
【0026】
次に、選択された細線を印刷するための細線ドット群を選択する(ステップS410)。続いて、選択された細線ドット群について、CMYKのうちで、下記のドット形成位置の変更(ステップS430からステップS450)が未処理のものを選択する(ステップS420)。Cを最初に選択し、以下、MYKの順に選択する。
【0027】
次に、選択した細線ドット群について、奇数番目の往路ドットを、復路画素に移動させることによって復路ドットに変更する(ステップS430)。図4を参照して詳しく説明する。
【0028】
図4は、ある一本の細線について、ステップS430からステップS450によって、細線ドット群の形成位置が変更される様子を示す。図4(A)はステップS430前の、図4(B)はステップS430後の、図4(C)はステップS440後の、図4(D)はステップS450後の細線ドット群の形成位置を示す。
【0029】
図4の複数の四角形それぞれは、画素を示す。各画素内のF向きを指す矢印は、その画素が往路画素であることを示す。一方、各画素内のB向きを指す矢印は、その画素が復路画素であることを示す。灰色によって着色された四角形は、ベクターデータによって示された画像の形状を示す。図4に示すように、その形状は、1画素分の太さを持ち、上下方向に延びる線分である。
【0030】
図4の丸付き数字は、CMYK各色のドットによって構成される細線ドット群の中で、C(シアン)のドットの形成位置を示す。黒地に白抜き文字のものは往路ドットを、白地に黒の文字のものは復路ドットを示す。「丸付き数字」の数は、ドットの順番を示す。ドットの順番は、ベクターデータによって示された始点の位置に最も近いものを1番とし、終点位置のドットに向かって順に数えていくことで定められる。なお、図4に示すように、細線ドット群を構成するドットがまばらである理由は、入力画像データにおいて指定された細線の色が中間階調であり、その中間階調をドットの有無で表現するからである。
【0031】
図4(A)に示すように、ステップS430前、つまりハーフトーン処理を行った後の状態においては、1、2、5、6、7番目のドットが往路ドット、3、4番目のドットが復路ドットである。
【0032】
先述したようにステップS430においては、奇数番目の往路ドットを復路ドットに変更する。よって、図4(A)の場合、ステップS430における変更対象となるドットは、1、5、7番目である。本実施形態はラスター交互方式を採用しているので、復路ドットに変更するために、1画素分、上または下の復路画素にドットを移動させる。上と下との何れに移動させるかは、両隣のドットの中間位置にできるだけ近づく方を選択するものとする。つまり、着目しているドットから上隣のドットまでの距離と、着目しているドットから下隣のドットまでの距離との差が、できるだけ小さくなる方を選択する。端のドット(1、7番)については、隣のドットと重なることがないように、隣のドットから離れる向きに移動させる。
【0033】
図4(B)は、このようにして変更を加えた結果を示す。つまり、図4(A)に対して、1、5番のドットが上に、7番のドットが下に1画素分、移動することによって、復路ドットに変更させられたことを示す。
【0034】
続いて、抽出した細線の偶数番目の復路ドットを往路ドットに変更する(ステップS440)。変更方法は、ステップS430の説明における「奇数」を「偶数」に読み替え、「往路」と「復路」とを互いに入れ替えて読み替えたものである。図4(C)は、ステップS440において4番のドットが上に移動することによって、往路ドットに変更させられた様子を示す。
【0035】
次に、位置ずれを補正する位置にドットを移動させる(ステップS450)。本実施形態においては、往路ドットがF向きに1画素分ずれることが、出荷時における検査によって予め分かっている。よって、往路ドットをB向きに1画素分、移動させる。復路ドットは、位置ずれしないことが予め分かっているので、移動させない。図4(D)は、このようにして往路ドットの位置を変更した様子を示す。
【0036】
続いて、対象としている細線ドット群について、CMYK全てのドット形成位置の変更処理(ステップS430からステップS450)を実行したかを判定する(ステップS460)。未処理の色のドットがある場合は(ステップS460、NO)、ステップS420に戻り、未処理の色のドットを選択する。
【0037】
一方、CMYK全てのドット形成位置の変更処理を実行した場合は(ステップS460、YES)、全ての細線について上記変更処理を実行したかを判定する(ステップS470)。抽出されていない細線ドット群の細線が残っている場合は(ステップS470、NO)、ステップS410に戻って、全ての細線の細線ドット群を対象にステップS420からステップS460を実行する。全ての細線の細線ドット群を対象に、細線ドット群を抽出した場合(ステップS470、YES)、細線ドット群変更処理を終える。
【0038】
最後に、変更が加えられた細線ドット群を含むドットデータを用いた印刷を実行する(ステップS500)。具体的には、上記ドットデータに従ったインク吐出が実行されるように、制御対象(紙送りモーター74、キャリッジモーター70及び印刷ヘッド81)を制御する。
【0039】
以上説明した印刷装置10によれば、細線の画質を向上させることができる。画質が向上する理由は、次の通りである。
・細線ドット群において、往路ドットと復路ドットとが交互に現れること。
・往路ドットと復路ドットとの既知の形成位置ずれを補正すること。
・往路ドットと復路ドットとを入れ替える際に、ドットが偏在することを緩和すると共に、入れ替えによる影響ができるだけ小さくなるように、入れ替え先を選択すること。
・所定範囲の角度を有する細線を処理対象から除外し、効果が見込める角度の細線に処理対象を絞ること。
また、このような効果を得るための細線ドット群処理は、規則的な処理で実現されており、上記のように対象とする細線を絞っているので、小さい処理負荷で実施できる。
【0040】
3.実施形態と適用例との対応関係:
ステップS430が第1変更部を、ステップS440が第2変更部を、ステップS450が第1及び第2補正部を実現するためのソフトウェアに各々対応する。
【0041】
4.他の実施形態:
本発明は、先述した実施形態になんら限定されるものではなく、発明の技術的範囲内における種々の形態により実施できる。例えば、実施形態の構成要素の中で付加的なものは、実施形態から省略できる。ここで言う付加的な構成要素とは、実質的に独立している適用例においては特定されていない事項に対応する要素のことである。例えば、位置ずれがないことが分かっている場合、ステップS450を省いて、位置ずれの補正を実行しなくても良い。また、例えば、以下のような実施形態でも良い。
【0042】
4−1.カラム交互方式(図5):
先述した実施形態は、往路画素と復路画素との配置にラスター交互方式を採用したが、カラム交互方式を採用しても良い。図5(A)(B)(C)は、カラム交互方式の場合に、ステップS430及びステップS440によって細線ドット群の形成位置が変更される様子を示している。図5(A)(B)(C)のドット形成位置は、図4(A)(B)(C)の細線ドット群の形成位置を、細線の垂直二等分線を対称軸として線対称に移動させ、さらに、反時計回りに90度回転させたものに相当する。よって、図5(A)(B)(C)の細線ドット群の形成位置は、図4(A)(B)(C)の細線ドット群の形成位置と実質同じことを示しているので、詳しく説明しない。
【0043】
ところで本実施形態においては、位置ずれ補正(ステップS450)を実行しない。位置ずれ補正を実行しない理由は、カラム交互方式において位置ずれ補正を実行する場合、往路ドットをFB何れかの向きに1画素分移動させると復路ドットになってしまうので、2画素単位で移動させる必要があるからである。よって、1画素分の位置ずれが生じることが予め分かっている場合には、位置ずれ補正を実行しない。図4(D)に相当する図が図5には示されていないのは、このためである。一方、2画素単位の位置ずれが生じることが分かっている場合であれば、位置ずれ補正を実行する。
【0044】
4−2.たすき方式(図6):
図6(A)(B)(C)は、往路画素と復路画素との配置にたすき方式を採用した場合において、ステップS430とステップS440とによって細線ドット群の形成位置が変更される様子を示している。対象とする細線ドット群は、画素の配列に対して斜めに延びる細線を印刷するためのものである。以下、ラスター交互方式及び/又はカラム交互方式に対して異なる点を中心に説明する。
【0045】
ラスター交互方式と異なる点は、位置ずれ補正を実行する場合、カラム交互方式と同じように2画素単位で移動させる必要があることである。一方、ラスター交互方式ともカラム交互方式とも異なるのは、往路画素の上下左右の4ドットが復路画素である点である。よって、往路ドットを復路ドットに変更する際に、往路ドットに隣接する4つの復路画素から何れか一つを移動先として選択することになる。復路ドットを往路ドットに変更する際も同様である。選択する復路画素は、ラスター交互方式およびカラム交互方式と同じで、両隣のドットの中間位置に最も近い復路画素である。
【0046】
さらに、このように4つの隣接ドットから選択できることによって、細線の角度が何れであっても線があまりガタガタにならないような画素を選択できるので、全ての角度の細線を対象に細線ドット群の形成位置を変更する。
【0047】
4−3.その他:
上記何れの実施形態においても、変更後のドット形成位置として画素は、粒状性を良くするために、両隣のドットの中間位置にできるだけ近づく方を選択した。一方、細線の再現性を良くするために、ベクターデータによって表される直線との距離が最短となる位置の画素を選択するようにしても良い。上記2つの選択方法は、何れか一つを採用しても良いし、両方を加味する方法を採用しても良い。両方を加味する場合は、異なる係数を用いた重み付けをしても良い。
【0048】
上記何れの実施形態においても、端のドットについては、隣のドットと重なることがないように、隣のドットから離れる向きに移動させた。一方、細線の長さをできるだけ変化させないようにするために、両端のドットを移動させる向きを揃えても良い。
【0049】
プリンターは、モノクロ印刷用でも良い。また、レーザープリンターでも良いし、サーマルプリンターでも良い。
ハーフトーン処理を用いなくても良い。例えば、二値化を用いても良い。
RIP(ラスターイメージプロセッサー)を用いても良い。
【符号の説明】
【0050】
10…印刷装置
30…制御ユニット
40…CPU
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
61…色変換LUT
70…キャリッジモーター
74…紙送りモーター
75…プラテン
80…キャリッジ
81…印刷ヘッド
82〜85…インクカートリッジ
91…画像データ供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素のドット形成の有無を示すドットデータによって印刷をする際に、画素を印刷条件が異なる複数のグループに分類して印刷をする印刷装置であって、
1画素分の太さの線を印刷するための複数のドットからなる細線ドット群について、前記線の角度が所定角度の場合に、隣接するドット同士が異なる前記グループに分類されるようにドットデータに変更を加える
印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記所定角度は、印刷をする際の主走査方向に対して、45から135度または、225から315度までの範囲であることを特徴とする
印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記複数のグループは、第1グループと第2グループとの2つであり、
前記細線ドット群の何れか一端から数えて奇数番目のドットであって、前記第1グループに分類された画素に形成されるように規定されたドットである第1特定ドットを、前記第2グループに分類された画素において形成されるようにドットデータに変更を加える第1変更部と、
前記細線ドット群の何れか一端から数えて偶数番目のドットであって、前記第2グループに分類された画素に形成されるように規定されたドットである第2特定ドットを、前記第1グループに分類された画素において形成されるようにドットデータに変更を加える第2変更部と
を備える印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷装置であって、
前記第1変更部は、変更後の前記第1特定ドットが形成される画素を、前記第2グループに属する画素の中で、変更前のドットデータにおいて該第1特定ドットが形成される画素から最短距離の画素の集合である第1隣接画素群の中から選択し、
前記第2変更部は、変更後の前記第2特定ドットが形成される画素を、前記第1グループに属する画素の中で、変更前のドットデータにおいて該第2特定ドットが形成される画素から最短距離の画素の集合である第2隣接画素群の中から選択する
印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置であって、
前記第1変更部は、前記第1隣接画素群の中で、隣接する一方のドットまでの距離と、他方のドットまでの距離との差が最短となる画素を、前記変更後の第1特定ドットが形成される画素として選択し、
前記第2変更部は、前記第2隣接画素群の中で、隣接する一方のドットまでの距離と、他方のドットまでの距離との差が最短となる画素を、前記変更後の第2特定ドットが形成される画素として選択する
印刷装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れか一つに記載の印刷装置であって、
前記第1変更部によって変更された細線ドット群を、前記第1グループの印刷条件によって生じるドット形成位置のずれを補正する位置の画素に形成させる第1補正部と、
前記第2変更部によって変更された細線ドット群を、前記第2グループの印刷条件によって生じるドット形成位置のずれを補正する位置の画素に形成させる第2補正部と
を備える印刷装置。
【請求項7】
画素のドット形成の有無を示すドットデータによって印刷をする際に、画素を印刷条件が異なる複数のグループに分類して印刷をする印刷物生産方法であって、
1画素分の太さの線を印刷するための複数のドットからなる細線ドット群について、前記線の角度が所定角度の場合に、隣接するドット同士が異なる前記グループに分類されるようにドットデータに変更を加える
印刷物生産方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−91282(P2013−91282A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235726(P2011−235726)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】