説明

印刷装置および印刷装置の制御方法

【課題】交換可能なインクカートリッジを用いる印刷装置等を提供すること。
【解決手段】MFPは、インクが収容されているカートリッジのインク供給口66Cに接続されるインク供給針と、インクを吐出するインクノズルを備えた記録ヘッドと、インク供給針と記録ヘッドとを接続するインク供給チューブと、カートリッジに記憶されているカートリッジ情報を読み出す電極と、を備える。MFPは、電極で読み出されるカートリッジ情報が変化したことを条件として、カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を変化後のカートリッジ情報が示している場合に、インク供給チューブに所定量の空気を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に記載の技術は、交換可能なインクカートリッジを用いる印刷装置および印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクカートリッジ交換時に、記録ヘッドの吐出口からインクを排出する動作を繰り返すことで、インク供給系内に侵入した気泡を除去するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−238952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正規業者が製造した正規カートリッジと、非正規業者によって製造された互換カートリッジとの間で交換を行うと、正規業者によって製造されたインクと非正規業者によって製造されたインクとが、プリンタ内で直接混合してしまう。非正規業者によって製造されたインクは、化学組成が不明であるため、インクの混合によって化学反応が発生し、不測の事態(インク詰まり、部品の腐食、など)が発生するおそれがある。本明細書では、このような不便性を解消することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願に記載の印刷装置は、インクが収容されているカートリッジのインク供給部に接続される接続部と、インクを吐出するインクノズルを備えたヘッド部と、接続部とヘッド部とを接続するインク供給路と、カートリッジに記憶されているカートリッジ情報を読み出す通信部と、を備えた印刷装置において、通信部で読み出されるカートリッジ情報が変化した場合に、カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を変化後のカートリッジ情報が示していることを条件として、インク供給路に所定量の空気を導入する空気導入手段を備えることを特徴とする。
【0006】
本願に係る印刷装置では、カートリッジが交換された場合に、交換後のカートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨が検出された場合には、インク供給路に所定量の空気を導入することができる。これにより、インク供給路に残存している交換前のカートリッジから供給されたインク(交換前インク)と、交換後のカートリッジからインク供給路に供給されるインク(交換後インク)とが、導入された空気によって、インク供給路内において互いに隔離される。よって、交換前インクと交換後インクとが直接混合してしまう事態を防止することが可能となる。
【0007】
また、請求項2に記載の印刷装置では、インク供給路に導入される空気の量が、インク供給路の径方向の全面に空気が行き渡るために十分な量とされる。これにより、インク供給路に導入された空気によって、交換前インクと交換後インクとを完全に隔離することができる。
【0008】
また、請求項3に記載の印刷装置では、カートリッジからインク供給路にインクを導入するための接続部を、インク供給路に空気を導入するための部位としても流用することができる。これにより、インク供給路に空気を導入するための、別途専用の機構を備える必要を無くすことが可能となる。
【0009】
また、請求項4に記載の印刷装置では、印刷ジョブで消費されるインク消費量が、気泡部からヘッド部までのインク供給路上に存在する残存インク量よりも多い場合には、印刷ジョブの実行前に、残存インク量よりも多い量のインクを排出することで、気泡部をインク供給路から除去することができる。これにより、インクの使用によって気泡部がヘッド部まで移動してしまうことに起因して印刷不良が発生する事態を、防止することができる。また、インク供給路に残存したインクを有効に利用して、印刷ジョブを実行することが可能となる。
【0010】
また、請求項5に記載の印刷装置では、制御手段によって、接続部の用途を、インク供給路に空気を導入する用途とインク供給路にインクを導入する用途との間で切り替えることができる。これにより、自動でインク供給路に空気を導入することが可能となる。
【0011】
また、請求項6に記載の印刷装置では、カートリッジが収容部から取り外されているか否かによって、接続部の用途を、インク供給路に空気を導入する用途とインク供給路にインクを導入する用途との間で切り替えることができる。これにより、インク供給路に空気を導入するための、別途専用の機構を備える必要を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】MFPの構成を示すブロック図である。
【図2】カートリッジ交換処理の動作フローチャートである。
【図3】印刷ジョブ実行処理の動作フローチャートである。
【図4】印刷ジョブ実行処理の動作フローチャートである。
【図5】テーブルの一例である。
【図6】インク供給チューブの模式図である。
【図7】空気注入の変形例の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<MFPの構成>
図1に、本願に係る実施形態として例示されるMFP(Multifunction Peripheral)51のブロック図を示す。MFP51は、CPU32、記憶部33、無線送受信部36、無線アンテナ部37、ボタン入力部38、パネル39、プリンタ19、スキャナ20、を主に備えている。これらの構成要素は、入出力ポート43を介して互いに通信可能とされている。CPU32は、後述する各種の処理を実行する。ボタン入力部38は、MFP51の各機能を実行するためのキーである。パネル39は、MFP51の各種機能情報を表示する。スキャナ20は、読み取りを実行する部位である。
【0014】
プリンタ19は、印刷を実行する部位である。プリンタ19は、プリンタ制御回路67、カートリッジ装着部68、キャリッジ71、インク排出部80、を備える。図1において模式的に示されるように、カートリッジ装着部68は、挿入口61C、61M、61Y、61Kを備える。挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色に対応する挿入口である。そして、挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々に対応して、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kが着脱自在に取付けられる。カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、の各色のインクが収容されているカートリッジである。よって、挿入口61Cとカートリッジ64Cの組合せ、挿入口61Mとカートリッジ64Mの組合せ、挿入口61Yとカートリッジ64Yの組合せ、挿入口61Kとカートリッジ64Kの組合せ、が正しい色の組合せである。またカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々には、カートリッジに収容されているインクを外部へ供給するためのインク供給口66C、66M、66Y、66Kが備えられている。
【0015】
カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々は、ICチップ63C、63M、63Y、63Kを備える。これらのICチップは、カートリッジ情報110を記憶するための記憶素子である。カートリッジ情報110は、カートリッジ色情報111、適合情報112、カートリッジ識別情報113を含んでいる。カートリッジ色情報111は、カートリッジに収容されているインクの色種類についての情報である。適合情報112は、カートリッジがMFP51に適合しているか否か(すなわち、純正品のカートリッジであるか否か)についての情報である。純正品のカートリッジとは、予め定められた所定の製造者(正規業者)によって製造されているカートリッジである。非純正品のカートリッジとは、所定の製造者以外の製造者(非正規業者)によって製造されているカートリッジである。カートリッジから読み出されたカートリッジ識別情報113に正規業者情報が含まれている場合には、当該カートリッジについての適合情報112が「純正品」に設定される。一方、カートリッジ識別情報113に正規業者情報が含まれていない場合には、当該カートリッジについての適合情報112が「非純正品」に設定される。なお、カートリッジから読み出されたカートリッジ識別情報113に正規業者情報が含まれているかの判断は、カートリッジから読み出されたカートリッジ識別情報113に、記憶部33に記憶された正規業者情報と同じ正規業者情報が含まれているかに基づいて判断するとよい。カートリッジ識別情報113は、カートリッジを識別するための情報である。カートリッジ識別情報113の例としては、製造シリアル番号が挙げられる。
【0016】
キャリッジ71は、記録ヘッド72C、72M、72Y、72K、および、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kを備える。記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kのノズル形成面には、多数個のインクノズルが直線状に配列されている。
【0017】
インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kは、キャリッジ71に搭載された記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kの各々にインクを供給するための、インク供給路である。インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの一端はキャリッジ71に接続されおり、他端にはインク供給針74C、74M、74Y、74Kが備えられている。またインク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kは、キャリッジ71の往復動作を阻害しないように、たわみ易い材質で形成されている。
【0018】
インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの各々には、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々を前進・後退させるための、駆動モータ75C、75M、75Y、75Kが備えられている。駆動モータ75C、75M、75Y、75Kの各々によって、インク供給針74C、74M、74Y、74Kが後退させられると、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々と、インク供給口66C、66M、66Y、66Kの各々とが非接続状態とされる。この場合、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの先端部は、大気中に開放されている状態となる。また、駆動モータ75C、75M、75Y、75Kの各々によって、インク供給針74C、74M、74Y、74Kが前進させられると、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々と、インク供給口66C、66M、66Y、66Kの各々とが接続された状態とされる。この場合、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの内部と、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kとが、気密性を保ちながら接続されている状態となる。
【0019】
キャリッジ71に搭載されている記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kのノズル形成面に対峙する位置に沿って、紙送り機構(不図示)によって記録紙(不図示)が搬送される。そして、キャリッジ71を駆動機構(不図示)によって主走査方向に往復移動させながら、記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kのインクノズルから記録紙の表面にインク液滴を吐出する。これにより、記録紙の表面に所望の画像を形成することができる。
【0020】
インク排出部80は、記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kの各々のインクノズルから、インクや気泡を吸引して外部に排出するための機構である。インク排出部80は、キャリッジ71がホームポジションに移動したときに、記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kの各々と対峙する位置に配置されている。
【0021】
カートリッジ装着部68が備える挿入口の構造について、挿入口61Cを例として説明する。挿入口61Cには、カートリッジのICチップに対応して、電極62Cが備えられている。そして、カートリッジ64Cが挿入口61Cに正しく装着されたとき、ICチップ63C上のパッドが電極62Cと接触し、通信可能となる。また、挿入口61Cには、取付センサ65Cが備えられている。取付センサ65Cは、挿入口61Cに対するカートリッジの取付けおよび取外しを検出するセンサである。電極62Cおよび取付センサ65Cは、ケーブルを介してプリンタ制御回路67に接続されている。なお、挿入口61M、61Y、61Kの各構成についても、挿入口61Cと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0022】
プリンタ制御回路67は、挿入口に取付けられているカートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に備えられているICチップ63C、63M、63Y、63Kと通信し、カートリッジ情報110を取得する。
【0023】
記憶部33は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDD(ハードディスク)、などが組み合わされて構成されている。また記憶部33は、テーブルTB1を記憶する。図5に、テーブルTB1の一例を示す。テーブルTB1は、挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々について、カートリッジ情報110(カートリッジ色情報111、適合情報112、カートリッジ識別情報113)、カートリッジ取付情報114、交換前適合情報115、交換前カートリッジ識別情報116、空気注入履歴117、インク積算使用量118、注入後インク使用量119、を記憶する。
【0024】
カートリッジ取付情報114は、挿入口にカートリッジが取付けられているか否かを示す情報である。カートリッジ取付情報114は、取付センサ65C、65M、65Y、65Kによって、リアルタイムに取得される。交換前適合情報115は、カートリッジの交換操作(後述)が行われる前に挿入口に取付けられていたカートリッジの、適合情報である。交換前カートリッジ識別情報116は、カートリッジの交換操作が行われる前に挿入口に取付けられていたカートリッジの、識別情報である。空気注入履歴117は、空気がインク供給チューブに注入されているか否かを示す情報である。インク積算使用量118は、カートリッジから供給されたインク量の累積加算値である。インク積算使用量118は、印刷が実行されるたびにICチップ63C、63M、63Y、63Kに書き込まれる。注入後インク使用量119は、インク供給チューブに空気が注入されてからの、インクの使用量の累積加算値である。インク積算使用量118や注入後インク使用量119は、ドットカウント等の技術によって算出することができる。
【0025】
またテーブルTB1では、挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々に、カートリッジ色情報111〜注入後インク使用量119の各情報が対応付けられている。しかし本明細書では、便宜上、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々に、カートリッジ色情報111〜注入後インク使用量119の各情報が対応付けられているとして説明する場合がある。例えば、「挿入口61Cについての空気注入履歴117」と記載すべきところを、「カートリッジ64Cについての空気注入履歴117」と記載している場合がある。
【0026】
また、記憶部33には、チューブ容積、カートリッジ容積、正規業者情報などの各種情報が記憶される。チューブ容積は、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの各々における、インク供給口から記録ヘッドまでの経路の容積(例えば、4cc)である。なお、チューブ容積として、インク供給口から記録ヘッドまでの経路の容積(例えば、4cc)に所定の量(α)を加算した容積(例えば、4cc+α)としてもよい。カートリッジ容積は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kに収容することができるインク量の最大容積である。正規業者情報は、純正品のカートリッジを製造する正規業者を示す情報である。チューブ容積、カートリッジ容積、正規業者情報などの情報は、予めMFP51の製造業者によって記憶されるとしてもよい。
【0027】
<カートリッジ交換処理>
図2のフローを用いて、カートリッジ交換処理を説明する。図2のフローは、MFP51の電源が投入されている間、実行され続けるフローである。S6においてCPU32は、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの何れかを交換する旨の入力が、ボタン入力部38で受け付けられたか否かを判断する。入力が受け付けられていない場合(S6:NO)にはS6へ戻り、受け付けられた場合(S6:YES)にはS8へ進む。本実施形態の説明例では、説明の簡略化のために、カートリッジ64Cについての交換操作が行なわれる場合の動作例を、以下に説明する。また、カートリッジ64Cが純正品から非純正品に交換される場合の動作例を、以下に説明する。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kについての交換操作の処理内容も、カートリッジ64Cについての交換操作の処理内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0028】
S8において、CPU32は、交換対象のカートリッジに対応しているインク供給針(インク供給針74C)を後退させる。これにより、インク供給針74Cとインク供給口66Cとの接続が解除される。そしてインク供給針74Cの先端部は、大気中に開放されている状態になる。
【0029】
S10において、CPU32は、電極62Cによって、ICチップ63Cからカートリッジ情報110を読み出すことができたか否かを判断する。具体的には、カートリッジ64Cが挿入口61Cに正しく装着されたとき、ICチップ63C上のパッドが電極62Cと接触し、カートリッジ情報110を読み出すことが可能となる。カートリッジ情報110が読み出せない場合(S10:NO)には、S10へ戻る。カートリッジ情報110が読み出せた場合(S10:YES)には、カートリッジが取付けられたと判断され、S11へ進む。S11においてCPU32は、読み出したカートリッジ情報110をテーブルTB1に記憶する。具体的には、テーブルTB1に記憶されていた適合情報112(交換前のカートリッジ64Cの適合情報)を、テーブルTB1の交換前適合情報115の欄にコピーする。また、テーブルTB1に記憶されていたカートリッジ識別情報113(交換前のカートリッジ64Cのカートリッジ識別情報)を、テーブルTB1の交換前カートリッジ識別情報116の欄にコピーする。そして、読み出したカートリッジ情報110に含まれているカートリッジ識別情報113と記憶部33から読み出した正規業者情報とを用いて適合情報112(交換後のカートリッジ64Cの適合情報)を設定し、テーブルTB1の適合情報112の欄に上書き記憶する。また、読み出したカートリッジ情報110に含まれているカートリッジ識別情報113(交換後のカートリッジ64Cのカートリッジ識別情報)を、テーブルTB1のカートリッジ識別情報113の欄に上書き記憶する。これにより、カートリッジ64Cの交換前および交換後における適合情報112およびカートリッジ識別情報113が、テーブルTB1に記憶される。
【0030】
S12においてCPU32は、カートリッジ64Cが、別の新たなカートリッジ64Cに交換されたか否かを判断する。具体的には、テーブルTB1の挿入口61Cの行に記憶されている、交換前カートリッジ識別情報116とカートリッジ識別情報113とが一致するか否かを判断する。両情報が一致する場合には、カートリッジ64Cが別の新たなカートリッジ64Cに交換されていない場合(例:カートリッジ64Cが取り外され、当該取外されたカートリッジ64Cが再度取付けられた場合)であると判断され(S12:NO)、S24へ進む。一方、両情報が一致しない場合には、カートリッジ64Cが別の新たなカートリッジ64Cに交換されたと判断され(S12:YES)、S16へ進む。
【0031】
S16において、CPU32は、交換前のカートリッジ64Cが非純正品であったか否かを判断する。具体的には、テーブルTB1の挿入口61Cの行に記憶されている、交換前適合情報115が「純正品」であるか「非純正品」であるかを読み出す。非純正品であった場合(S16:YES)にはS20へ進み、純正品であった場合(S16:NO)にはS18へ進む。
【0032】
S18においてCPU32は、現在取付けられているカートリッジ64Cに収容されているインクは、正規業者によって製造されたインクではないか否かを判断する。具体的には、挿入口61Cの適合情報112が「非純正品」である場合には、現在取付けられているカートリッジ64Cに収容されているインクが、非正規業者によって製造されたインクであると判断される。また、挿入口61Cのインク積算使用量118が、記憶部33に記憶されているカートリッジ64Cのカートリッジ容積を超えている場合には、カートリッジ64Cにインクが再充填されている場合であると判断される。よって、現在取付けられているカートリッジ64Cに収容されているインクが、非正規業者によって製造されたインクであると判断される。正規業者によって製造されたインクである場合(S18:NO)にはS24へ進み、正規業者によって製造されたインクではない場合(S18:YES)にはS20へ進む。
【0033】
S20においてCPU32は、インク供給チューブ73C内のインクを所定量排出する。具体的には、インク供給針74Cの先端部が大気中に開放されている状態で、所定量の空気に対応する量のインクを、インク排出部80によってインク供給チューブ73C内から排出する。これにより、インク供給針74Cからインク供給チューブ73C内へ、所定量の空気を注入することができる。ここで、所定量の空気の量は、インク供給チューブ73Cの最大内径を直径とする球体の体積以上とすることが好ましい。これにより、インク供給チューブ73Cに導入された空気を、インク供給チューブ73Cの径方向の全面に行き渡らせることが可能となる。また、所定量の空気の量は、インク供給チューブ73Cのチューブ容積よりも少ない。これにより、空気の導入によってインク供給チューブ73C内に形成される気泡は、記録ヘッド72Cまで到達することがない。
【0034】
図6の説明図を用いて、インク供給チューブ73C内に空気を注入する効果を説明する。なお図6の状態は、インク供給チューブ73C内に空気を注入後、インク供給針74Cとインク供給口66Cとを接続させ、印刷ジョブにより印刷を複数枚実行した状態である。よって図6では、空気の注入後におけるインクの使用量に応じて、気泡部B1が記録ヘッド72C側に移動した状態を示している。図6に示すように、インク供給路73Cに導入された空気によって、インク供給チューブ73Cの径方向の全面に行き渡るように、気泡部B1が形成される。気泡部B1に対して記録ヘッド72C側のインク供給チューブ73C内には、交換前インクIK1が充填されている。気泡部B1に対してカートリッジ64C側のインク供給チューブ73C内には、交換後インクIK2が充填されている。気泡部B1により、交換前インクIK1と交換後インクIK2とを完全に隔離することができるため、交換前インクIK1と交換後インクIK2とが直接に混合することを防止することが可能となる。
【0035】
S22においてCPU32は、テーブルTB1の空気注入履歴117に「注入あり」を記憶させる。S23において、CPU32は、気泡部から記録ヘッド72Cまでの残存インク量を算出する。具体的には、注入後インク使用量119にインク排出処理(S20)で消費されたインク使用量を加算することで、注入後インク使用量119を更新する。そして、更新後の注入後インク使用量119を、記憶部33に記憶されているチューブ容積から減算することで、残存インク量を算出する。またCPU32は、インク積算使用量118にインク排出処理(S20)で消費されたインク消費量を加算することで、インク積算使用量118を更新する。
【0036】
S24においてCPU32は、駆動モータ75Cを駆動させ、インク供給針74Cを前進させる。これにより、インク供給針74Cとインク供給口66Cとが接続される。カートリッジ64Cの内部とインク供給チューブ73Cとが、気密性を保ちながら接続されている状態となる。そしてフローが終了する。
【0037】
<印刷ジョブ実行処理>
図3のフローを用いて、印刷ジョブ実行処理を説明する。図3のフローは、MFP51の電源が投入されている間、実行され続けるフローである。S112において、CPU32は、印刷ジョブの実行指示がボタン入力部38で受け付けられたか否かを判断する。印刷ジョブは、印刷用紙の1枚に印刷するジョブに限られず、複数枚の印刷用紙に印刷するジョブであってもよい。実行指示が受け付けられていない場合(S112:NO)にはS112へ戻り、受け付けられた場合(S112:YES)にはS114へ進む。S114において、CPU32は、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの何れかに、空気が注入されているか否かを判断する。具体的には、テーブルTB1において、挿入口61C、61M、61Y、61Kの何れかについての空気注入履歴117が「注入あり」になっているか否かを判断する。全てのカートリッジの空気注入履歴117が「注入なし」である場合(S114:NO)には、S146(図4)へ進み、印刷を開始する。一方、何れかのカートリッジについての空気注入履歴117が「注入あり」である場合(S114:YES)には、S116へ進む。
【0038】
本実施形態の説明例では、説明の簡略化のために、カートリッジ64Cについての空気注入履歴117が「注入あり」であり、カートリッジ64M、64Y、64Kについての空気注入履歴117が「注入なし」である場合の動作例を、以下に説明する。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kについての空気注入履歴117が「注入あり」である場合の処理内容も、カートリッジ64Cについての空気注入履歴117が「注入あり」である場合の処理内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。また複数のカートリッジにおいて、空気注入履歴が「注入あり」とされている場合には、S116、S118、S120、S126、S128、S131、S140、S142、S144、S148、S150の処理を、複数のカートリッジの各々について実行すればよい。
【0039】
S116において、CPU32は、気泡部から記録ヘッド72Cまでの残存インク量を算出する。具体的には、記憶部33に記憶されているチューブ容積から、カートリッジ64Cについての注入後インク使用量119を減算することで、残存インク量を算出する。図6の説明例では、インク供給チューブ73C内において、気泡部B1から記録ヘッド72Cまでの領域に充填されている交換前インクIK1の量が、残存インク量に相当する。S118において、CPU32は、実行指示を受け付けた印刷ジョブの実行によるインク消費量を算出する。このとき、空気注入履歴117が「注入あり」とされているカートリッジについて、インク消費量の算出が行われる。空気注入履歴117が「注入あり」とされているカートリッジが複数存在する場合には、複数のカートリッジの各々について、インク消費量の算出が行われる。本実施形態の説明例では、カートリッジ64Cについて、インク消費量の算出が行われる。インク消費量は、例えば、既に提案されている技術を用いて算出することができる。例えば、CPU32は、印刷ジョブに含まれる画像データ等を解析等し、インクを吐出する画素数等を特定し、インク消費予測量を算出する。
【0040】
S120においてCPU32は、S118で算出されたインク消費量が、S116で算出された残存インク量よりも多いか否かを判断する。インク消費量が残存インク量よりも多くない場合(S120:NO)には、印刷実行によるインク消費量に応じて気泡部が記録ヘッド72C側に移動した場合においても、気泡部が記録ヘッド72Cまで到達しない場合であると判断される。よってS146(図4)へ進み、印刷が実行される。一方、インク消費量が残存インク量よりも多い場合(S120:YES)には、印刷実行によって気泡部が記録ヘッド72Cまで到達し、当該気泡部が原因となって空打ち等の印字不良が発生するおそれがある場合であると判断され、S122へ進む。
【0041】
S122においてCPU32は、印刷ジョブが、複数枚の印刷用紙に印刷するジョブであるか否かを判断する。複数枚の印刷用紙に印刷するジョブではない場合(S122:NO)にはS140(図4)へ進み、複数枚の印刷用紙に印刷するジョブである場合(S122:YES)にはS124(図4)へ進む。
【0042】
S124においてCPU32は、1つの印刷ジョブを、複数枚の印刷用紙の各々へ印刷を実行する、複数の分割印刷ジョブに分割する。S126において、CPU32は、1枚目の分割印刷ジョブのインク消費量を算出する。このとき、空気注入履歴117が「注入あり」とされているカートリッジについて、インク消費量の算出が行われる。
【0043】
S128において、CPU32は、分割印刷ジョブのインク消費量が、S116で算出された残存インク量よりも多いか否かを判断する。分割印刷ジョブのインク消費量が残存インク量よりも多い場合(S128:YES)には、印刷実行によって気泡部が記録ヘッド72Cまで到達する場合であると判断され、S140へ進む。一方、分割印刷ジョブのインク消費量が残存インク量よりも多くない場合(S128:NO)には、分割印刷ジョブの実行によって気泡部が記録ヘッド72Cまで到達しない場合であると判断され、S130へ進む。S130において、CPU32は、分割印刷ジョブを実行する。これにより、1枚の印刷用紙への印刷が実行される。
【0044】
S131において、CPU32は、気泡部から記録ヘッド72Cまでの残存インク量を再算出する。具体的には、注入後インク使用量119に分割印刷ジョブ(S130)で消費されたインク使用量を累積加算することで、注入後インク使用量119を更新する。そして、更新後の注入後インク使用量119を、記憶部33に記憶されているチューブ容積から減算することで、残存インク量を再算出する。これにより図6の例では、インク供給チューブ73C内において、気泡部B1から記録ヘッド72Cまでの領域に充填されている、交換前インクIK1の量(残存インク量)を再算出することができる。
【0045】
S132において、CPU32は、全ての分割印刷ジョブを実行したか否かを判断する。全ての分割印刷ジョブが実行されていない場合(S132:NO)にはS134へ進み、CPU32は、次の分割印刷ジョブのインク消費量を算出する。そしてS128へ戻る。一方S132において、全ての分割印刷ジョブが実行された場合(S132:YES)には、S140へ進む。
【0046】
S140において、CPU32は、インク排出処理を実行する。インク排出処理は、インク排出部80によって行われる。インク排出処理によって排出されるインクの量は、気泡部から記録ヘッド72Cまでの残存インク量よりも多い量とされる。これにより、気泡部をインクノズルから外部に排出することができる。
【0047】
S142において、CPU32は、インク積算使用量118にインク排出処理(S140)で消費されたインク消費量を加算することで、インク積算使用量118を更新する。S144においてCPU32は、テーブルTB1に記憶されている挿入口61Cの空気注入履歴117を、「注入あり」から「注入なし」に変更する。
【0048】
S146において、CPU32は、残存する印刷ジョブを実行する。何れのカートリッジにも空気が注入されていない場合(S114:NO)や、印刷ジョブの実行によるインク消費量が残存インク量よりも多くない場合(S120:NO)には、S146において初めて印刷ジョブが実行される。また、分割印刷ジョブのインク消費量が残存インク量よりも多くなる場合(S128:YES)には、S146において当該分割印刷ジョブから処理が再開される。
【0049】
S148において、CPU32は、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの何れかに、空気が注入されているか否かを判断する。全てのカートリッジの空気注入履歴117が「注入なし」である場合(S148:NO)には、フローを終了する。一方、何れかのカートリッジについての空気注入履歴117が「注入あり」である場合(S148:YES)には、S150へ進む。S150において、CPU32は、注入後インク使用量119に印刷ジョブ(S146)で消費されたインク使用量を累積加算することで、注入後インク使用量119を更新する。そしてフローを終了する。
【0050】
<効果>
本願に係るMFP51の効果を説明する。本願に係るMFP51では、カートリッジが交換された場合に(S12:YES)、交換後のカートリッジに収容されているインクの製造者が非正規業者であることが検出された場合には(S18:YES)、インク供給チューブに所定量の空気を導入することができる。これにより、インク供給チューブ内に残存している交換前のカートリッジから供給されたインク(交換前インクIK1)と、交換後のカートリッジからインク供給チューブ内に供給されるインク(交換後インクIK2)とが、導入された空気で形成される気泡部B1によって、インク供給チューブ内において互いに隔離される。よって、交換前インクと交換後インクとが直接混合してしまう事態を防止することが可能となる。非正規業者によって製造されたインクは、化学組成が不明であるため、正規業者によって製造されたインクと混合すると化学反応が発生し、不測の事態(インク詰まり、部品の腐食、など)が発生するおそれがあるが、このおそれを回避することができる。
【0051】
また、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの先端部が大気中に開放されている状態でインクを排出することにより(S20)、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kにインクを導入するためのインク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々を、インク供給チューブに空気を導入するための部位としても流用することができる。これにより、インク供給チューブに空気を導入するための、別途専用の機構を備える必要を無くすことが可能となる。また、駆動モータ75C、75M、75Y、75Kによって、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々の用途を、インク供給チューブに空気を導入する用途(S8)とインク供給チューブにインクを導入する用途(S24)との間で切り替えることができる。これにより、自動でインク供給チューブに空気を導入することが可能となる。
【0052】
印刷ジョブで消費されるインク消費量が、気泡部から記録ヘッドまでのインク供給チューブの経路上に存在する残存インク量よりも多い場合には(S120:YES)、印刷ジョブの実行前に、残存インク量よりも多い量のインクを排出する(S140)。これにより、気泡部をインク供給チューブ内から除去することができる。よって、インクの使用によって気泡部が記録ヘッドまで移動してしまい、当該気泡部が原因となって空打ち等の印字不良が発生してしまう事態を防止することができる。また、印刷ジョブで消費されるインク消費量が、残存インク量よりも少ない場合には(S120:NO)、残存インクを用いて印刷ジョブを実行することができる(S146)。これにより、インク供給チューブ内に残存したインクを有効に利用して、印刷ジョブを実行することが可能となる。
【0053】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下に変形例を説明する。
【0054】
<変形例>
カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々と、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kの各々とを接続する操作および非接続とする操作は、駆動モータ75C、75M、75Y、75Kを用いた自動操作に限られない。例えば、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々が挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々にユーザによって正しく装着されたときに、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々がインク供給口66C、66M、66Y、66Kと接続される構造であってもよい。そして、カートリッジ64C、64M、64Y、64Kの各々が挿入口61C、61M、61Y、61Kの各々からユーザによって取外されることで、インク供給針74C、74M、74Y、74Kの各々がインク供給口66C、66M、66Y、66Kの各々と非接続状態にされる構造であってもよい。この場合、ユーザによる手動操作によって、カートリッジとインク供給チューブとを接続する操作および非接続とする操作を実現することができるため、駆動モータ75C、75M、75Y、75Kを不要とすることができる。
【0055】
上述した手動操作を行う場合に、インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kに空気を注入するには、S20(図2)のステップを、図7に示すフローに変更すればよい。この場合、S8およびS24のステップは不要になるため、これらのステップを省略すればよい。なお、図7のフローの説明では、説明の簡略化のために、カートリッジ64Cについての交換操作が行なわれる場合の動作例を、以下に説明する。なお、カートリッジ64M、64Y、64Kについての交換操作の処理内容も、カートリッジ64Cについての交換操作の処理内容と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0056】
図2のS18において、カートリッジ64Cに収容されているインクが正規業者によって製造されたインクではないと判断された場合(S18:YES)には、図7のS210へ進む。S210において、CPU32は、カートリッジ64Cを所定時間(例:1分間)取外す旨を、パネル39に表示する。S212において、CPU32は、カートリッジ64Cがユーザによって取外されたか否かを判断する。当該判断は、カートリッジ取付情報114を参照することにより行われる。カートリッジ64Cが取外されていない場合(S212:NO)にはS212へ戻り、カートリッジ64Cが取外された場合(S212:YES)にはS214へ進む。S214において、CPU32は、インク供給チューブ73C内のインクを所定量排出する。カートリッジ64Cが取外されており、インク供給針74Cの先端部が大気中に開放されているため、インク供給針74Cからインク供給チューブ73C内へ所定量の空気を注入することができる。S216において、CPU32は、カートリッジ64Cがユーザによって取付けられたか否かを判断する。カートリッジ64Cが取付けられていない場合(S216:NO)にはS216へ戻り、カートリッジ64Cが取付けられた場合(S216:YES)にはS22(図2)へ進む。これにより、ユーザによってカートリッジが挿入口から取り外されているか否かによって、インク供給針の用途を、インク供給チューブに空気を導入する用途とインク供給チューブにインクを供給する用途との間で切り替えることができる。これにより、インク供給チューブに空気を導入するための、別途専用の機構を備える必要を無くすことが可能となる。
【0057】
インク供給チューブ内に形成される気泡部は、1個に限られず、2個であってもよい。この場合、空気注入履歴117は、空気がインク供給チューブに注入されている個数を示す情報とすればよい。また、1個目の気泡部と2個目の気泡部との間のインク量である、気泡部間インク量をテーブルTB1に記憶させればよい。
【0058】
また、気泡部を2個作成する場合には、図2および図4のフローは、以下に説明するように変形すればよい。図2のフローにおいて、気泡部が1個形成されている状態で、カートリッジが別の新たなカートリッジに交換されると(S12:YES)、交換前のカートリッジ64Cが非純正品であるため(S16:YES)、S20へ進む。インク供給チューブ内に2個目の気泡部が形成され(S20)、テーブルTB1の空気注入履歴117が「注入あり(1個)」から「注入あり(2個)」に変更される(S22)。またこのときの注入後インク使用量119が、1個目の気泡部と2個目の気泡部の間のインク量である気泡部間インク量として、テーブルTB1に記憶される。図4のフローにおいて、1個目の気泡部がインクノズルから外部に排出されると(S140)、テーブルTB1に記憶されていた気泡部間インク量が、注入後インク使用量119としてコピーされる(S142)。また、空気注入履歴117が、「注入あり(2個)」から「注入あり(1個)」に変更される(S144)。以後の動作は、本実施形態で説明した動作と同様であるため、説明を省略する。これにより、交換前インクと1回目交換後インクとが直接混合してしまう事態や、1回目交換後インクと2回目交換後インクとが直接混合してしまう事態を、防止することが可能となる。
【0059】
なお、気泡部をインク供給チューブ内に3個以上作成する場合にも対応することが可能である。この場合には、気泡部間インク量を、気泡部と気泡部との間の領域数の分だけテーブルTB1に記憶させればよい。また、空気注入履歴117は、3個以上の気泡部を認識できるようにすればよい。詳細な処理内容は、気泡部を2個作成する場合の処理内容と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
S20において、インクを排出する方法は、インク排出部80によってインクを吸引する方法に限られない。単に記録ヘッドからインクを吐出する方法も、インクを排出する方法に含まれる概念である。
【0061】
本願の技術を適用することができるインク供給路は、インク供給チューブに限られない。主走査方向に往復移動するキャリッジにカートリッジを搭載する方式(オンキャリッジ方式)においても、カートリッジと記録ヘッドとを接続するインク供給路が存在する。そして、当該インク供給路に対しても本願の技術を適用することが可能である。
【0062】
純正品のカートリッジには、ある特定の非正規業者が製造しているカートリッジが含まれていてもよい。この場合、ある特定の非正規業者によって製造されたカートリッジから、その他の非正規業者によって製造されたカートリッジに交換された場合に、インク供給チューブ内に空気が注入される(S20)としてもよい。
【0063】
使用されるインク種類はシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4種類の場合を説明したが、この形態に限られず、3種類以下または5種類以上の場合においても本願の技術を適用可能である。また、カートリッジに収容されている印刷材料はインクに限られず、トナーなどの他の材料であってもよい。
【0064】
ICチップ63C、63M、63Y、63Kは接触式ICであるとしたが、非接触式ICを適用してもよい。
【0065】
インク供給口66C、66M、66Y、66Kはインク供給部の一例である。インク供給針74C、74M、74Y、74Kは接続部の一例である。記録ヘッド72C、72M、72Y、72Kはヘッド部の一例である。インク供給チューブ73C、73M、73Y、73Kはインク供給路の一例である。電極62C、62M、62Y、62Kは通信部の一例である。S20を実行するCPU32は空気導入手段の一例である。インク排出部80はインク排出手段の一例である。S116を実行するCPU32は第1算出手段の一例である。S118を実行するCPU32は第2算出手段の一例である。駆動モータ75C、75M、75Y、75Kは制御手段の一例である。挿入口61C、61M、61Y、61Kは収容部の一例である。取付センサ65C、65M、65Y、65Kはカートリッジ収容検出手段の一例である。パネル39は表示部の一例である。S210を実行するCPU32は表示手段の一例である。
【符号の説明】
【0066】
51:MFP、61C、61M、61Y、61K:挿入口、64C、64M、64Y、64K:カートリッジ、66C、66M、66Y、66K:インク供給口、73C、73M、73Y、73K:インク供給チューブ、74C、74M、74Y、74K:インク供給針、80:インク排出部、110:カートリッジ情報、117:空気注入履歴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが収容されているカートリッジのインク供給部に接続される接続部と、
インクを吐出するインクノズルを備えたヘッド部と、
前記接続部と前記ヘッド部とを接続するインク供給路と、
カートリッジに記憶されているカートリッジ情報を読み出す通信部と、
を備えた印刷装置において、
前記通信部で読み出されるカートリッジ情報が変化したことを条件として、前記カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を変化後のカートリッジ情報が示している場合に、前記インク供給路に所定量の空気を導入する空気導入手段を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記空気導入手段によって導入される空気の前記所定量は、前記インク供給路の最大内径を直径とする球体の体積以上であることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記インクノズルから前記インク供給路内のインクを排出するインク排出手段をさらに備え、
前記接続部は、前記インク供給部に接続されている場合にはカートリッジ内部と前記インク供給路とを気密性を保ちながら接続し、
前記接続部は、前記インク供給部に接続されていない場合には大気中に開放されている状態であり、
前記空気導入手段は、前記接続部が前記インク供給部に接続されていない状態で、前記インク排出手段によって前記所定量の空気に対応するインク量を排出することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記空気導入手段によって前記インク供給路内に導入された空気によって形成されている気泡部から前記ヘッド部までのインク供給路上に存在する残存インク量を算出する第1算出手段と、
受け付けた印刷ジョブで消費されるインク消費量を算出する第2算出手段と、
をさらに備え、
前記インク排出手段は、前記第2算出手段で算出された前記インク消費量が前記第1算出手段で算出された前記残存インク量よりも多い場合には、前記印刷ジョブの実行前に、前記残存インク量よりも多い量のインクを排出することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記接続部を前記インク供給部に対して接続自由に制御する制御手段と、
前記カートリッジを固定可能に収容する収容部と、
をさらに備え、
前記通信部は、前記カートリッジが前記収容部に収容されたことに応じて前記カートリッジ情報を読み出し、
前記空気導入手段は、前記通信部で読み出されたカートリッジ情報が前記カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を示している場合には、前記制御手段によって前記接続部が前記インク供給部に接続されていない状態で前記インク排出手段によって前記所定量の空気に対応するインク量を排出し、その後に、前記制御手段によって前記接続部を前記インク供給部に接続することを特徴とする請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記カートリッジを固定可能に収容する収容部と、
前記収容部に前記カートリッジが収容されているか否かを検出するカートリッジ収容検出手段と、
表示部に所定の表示を行う表示手段と、
をさらに備え、
前記収容部は、カートリッジが収容されている場合には当該カートリッジの前記インク供給部と前記接続部とを接続状態とし、カートリッジが取り外されている場合には当該カートリッジの前記インク供給部と前記接続部とを非接続状態とし、
前記通信部は、前記カートリッジが前記収容部に収容されたことに応じて前記カートリッジ情報を読み出し、
前記表示手段は、前記通信部で読み出されたカートリッジ情報が前記カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を示している場合には、前記カートリッジを取り外す旨の表示を行い、
前記空気導入手段は、前記カートリッジ収容検出手段によりカートリッジが前記収容部から取り外されたことを検出することを条件として、前記インク排出手段によって前記所定量の空気に対応するインク量を排出することを特徴とする請求項3または4に記載の印刷装置。
【請求項7】
インクが収容されているカートリッジのインク供給部に接続される接続部と、
インクを吐出するインクノズルを備えたヘッド部と、
前記接続部と前記ヘッド部とを接続するインク供給路と、
カートリッジに記憶されているカートリッジ情報を読み出す通信部と、
を備えた印刷装置の制御方法であって、
前記通信部で読み出されるカートリッジ情報が変化した場合に、前記カートリッジに収容されているインクの製造者が予め定められた所定の製造者とは異なる旨を変化後のカートリッジ情報が示していることを条件として、前記インク供給路に所定量の空気を導入する空気導入ステップを備えることを特徴とする印刷装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71425(P2013−71425A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214306(P2011−214306)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】